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特許7177779磁気共鳴イメージングシステムの勾配コイルの冷却
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージングシステムの勾配コイルの冷却
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20221116BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A61B5/055 360
A61B5/055 362
G01N24/00 600Y
G01N24/00 620Y
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019546151
(86)(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2018054227
(87)【国際公開番号】W WO2018153889
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】17167289.2
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/074996
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】パン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン リーンチェーン
(72)【発明者】
【氏名】リン ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ヂオウ ユン
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-011476(JP,A)
【文献】特開2010-088619(JP,A)
【文献】特開2016-067449(JP,A)
【文献】特開2007-330777(JP,A)
【文献】特開2005-065752(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0025329(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 -24/14
G01R 33/20 -33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの勾配コイル、前記勾配コイルを冷却する冷却装置、及びRFシールドを有する磁気共鳴イメージングシステムの勾配コイルアセンブリであって、
前記勾配コイル、前記冷却装置、及び前記RFシールドは円形断面を有し、
前記冷却装置は、前記勾配コイル上に配置される少なくとも1つの冷却管を有し、前記少なくとも1つの冷却管は、前記冷却流体を輸送するように構成され、
前記アセンブリは更に、
前記RFシールドと前記少なくとも1つの冷却管との間に配置され、それにより、前記少なくとも1つの冷却管から前記RFシールドへ前記円形断面の半径方向に延びる熱接続を提供する第1の熱コネクタ、
を具備する熱コネクタ装置を有する、勾配コイルアセンブリ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの冷却管に固定され、それにより、前記少なくとも1つの冷却管の第1の冷却管の複数の巻回の間に及び/又は複数の前記冷却管の間に前記円形断面の円周方向に延びる熱接続を提供する第2の熱コネクタ、
を更に有する、請求項1に記載の勾配コイルアセンブリ。
【請求項3】
前記第1の熱コネクタは、前記勾配コイルアセンブリ内において、前記勾配コイルの2つの長手方向端部において前記勾配コイルの外側で前記円形断面の半径方向に配置される、請求項1又は2に記載の勾配コイルアセンブリ。
【請求項4】
前記第2の熱コネクタが、前記第2の熱コネクタの長手方向に少なくとも1つの切り欠き部を有し、それにより冷却フィンを形成する、請求項に記載の勾配コイルアセンブリ。
【請求項5】
前記第2の熱コネクタは、前記少なくとも1つの冷却管の第1の冷却管の複数の巻回の間に及び/又は前記少なくとも1つの冷却管のうち複数の異なる冷却管の間に配置される複数の第1の熱部品と、前記第1の熱部品を熱的に相互接続する複数の第2の熱部品と、を有する、請求項2又は4に記載の勾配コイルアセンブリ。
【請求項6】
前記第2の熱コネクタは、前記少なくとも1つの冷却管を配置する面内に面状の延在部を有する、請求項に記載の勾配コイルアセンブリ。
【請求項7】
前記第2の熱コネクタが、前記少なくとも1つの冷却管の間に千鳥状に配置される複数の熱部品を有する、請求項に記載の勾配コイルアセンブリ。
【請求項8】
前記第1の熱コネクタ及び/又は前記第2の熱コネクタは、前記少なくとも1つの冷却管に接合及び/又は溶接及び/又は接着される、請求項1、2、4乃至のいずれか1項に記載の勾配コイルアセンブリ。
【請求項9】
前記第1の熱コネクタ及び/又は前記第2の熱コネクタは、前記少なくとも1つの冷却管の周りを囲むリング上に溶接される、請求項1、2、4乃至のいずれか1項に記載の勾配コイルアセンブリ。
【請求項10】
前記第1の熱コネクタ及び/又は前記第2の熱コネクタは、熱伝導率がエポキシよりも高い材料で作られている、請求項1、2、4乃至のいずれか1項に記載の勾配コイルアセンブリ。
【請求項11】
前記第1の熱コネクタ及び/又は前記第2の熱コネクタが、可撓性の熱伝導材料から作られている、請求項1、2、4乃至10のいずれか1項に記載の勾配コイルアセンブリ。
【請求項12】
前記第1の熱コネクタ及び/又は前記第2の熱コネクタが、銅ストラップを有する、請求項1、2、4乃至11のいずれか1項に記載の勾配コイルアセンブリ。
【請求項13】
前記第1の熱コネクタ及び/又は前記第2の熱コネクタは、熱伝導性セラミック材料から作られる、請求項1、2、4乃至10のいずれか1項に記載の勾配コイルアセンブリ。
【請求項14】
前記請求項1乃至13のいずれか1項に記載の勾配コイルアセンブリを有する磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項15】
磁気共鳴イメージングシステムの勾配コイルを冷却する方法であって、
勾配コイルを冷却する冷却装置とRFシールドとを有する勾配コイルアセンブリを提供するステップであって、前記勾配コイル、前記冷却装置、及び前記RFシールドは円形断面を有する、ステップと、
前記勾配コイル上に配置され、冷却流体を輸送するように構成される少なくとも1つの冷却管を、前記冷却装置に提供するステップと、
前記RFシールドと前記少なくとも1つの冷却管との間に前記円形断面の半径方向に延びる熱接続を、前記冷却装置に提供するステップと、
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの勾配コイル、勾配コイルを冷却する冷却装置及びRFシールドを有する磁気共鳴イメージング(MRI)システムのアセンブリ、及びそのようなアセンブリを備えた磁気共鳴イメージングシステム、並びに磁気共鳴イメージングシステムの勾配コイルを冷却する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
勾配コイルは通常、MRIシステムのボアのすぐ内側にある円筒シェルに設けられたワイヤのループ又は薄い導電性シートで構成される。電流がこれらのコイルを通過する際、2次磁界が生成される。この2次磁界は、主磁界に重なる勾配磁界を構成し、それにより、陽子の共鳴周波数が、位置の関数としてさまざまに変化する。このようにして、磁気共鳴信号の空間符号化が可能になる。更に、勾配コイルは、磁気共鳴血管造影、拡散イメージング、灌流イメージングなどのさまざまな生理学的技法にも使用される。
【0003】
これまで、MRIシステムの勾配コイルは、ファイバーグラス製のエポキシ樹脂でコーティングされたシリンダに巻かれた個々のワイヤで構成されていた。一部の用途ではこのような勾配コイルがまだ使用されているが、今日のMRIシステムは通常、複雑なパターンにエッチングされシリンダに適用される複数の薄い金属ストリップ又は大きな銅シートで構成される指紋パターンで分布する巻線を有する。
【0004】
通常、MRIシステムのボアに沿った壁は、検査対象が検査される際に加熱される。この加熱は、主に渦電流と、電流が勾配コイルを通過する際の抵抗加熱によって引き起こされる。このような勾配コイルは通常、最大コイル駆動電圧2000V及び600Aを超える電流により、強力なパルス幅変調増幅器によって駆動される。したがって、最大内部コイル温度が55~60℃に達すると激しい熱が生成される。勾配コイルの動作に必要な電力は、半径の5乗に比例し、これは、勾配コイルの設計及び勾配コイルの冷却が、今日の広口径ボアのシステムの場合に一層困難であることを意味する。
【0005】
この状況では、MRIシステムのすべての勾配コイルに対して、通常、加熱効果を低減するために流体冷却が使用される。通常、熱交換ポンプからの水又は水-エチレングリコール溶液が、MRIシステムの冷却装置の冷却管を通して循環される冷却流体として使用され、冷却管は、勾配コイルと熱伝導接触する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
勾配コイル自体の加熱に加えて、熱は、MRIシステムの高周波シールド(RFシールド)の渦電流加熱からも発生する。RFシールドは一般に、検査対象に最も近い金属構造であり、通常、MRIシステムのボアの内側樹脂壁のすぐ下のRFコイルの表面に配置されたグリッドで構成される。
【0007】
変動する大電流が、狭い間隔で配置された勾配コイル巻線に供給されると、樹脂材料のオーム加熱及び低い熱伝導率によって、不均一な温度場及びホットスポットがもたらされる。コンポーネントベンチレベルで熱を放散し、勾配コイルのホットスポットを減らす従来の方法は、勾配コイル巻線の設計を変更するか、勾配コイルが提供されるシリンダに対して比較的良好な熱伝導特性をもつアルミナセラミック材料を使用することによって、実現されることができる。
【0008】
更に、勾配コイルアセンブリの樹脂材料の熱伝導率は、米国特許出願公開第2013/0075068A1号公報に記載されているように改善されることができる。この文献によれば、勾配コイルの2つのフラットコイル間に配置される冷却装置は、冷却流体用の連続冷却チャネルが形成される領域で互いに接続される少なくとも1つの第1のフォイル及び少なくとも1つの第2フォイルを有する。冷却チャネルは分岐しており、それにより、冷却装置の薄い厚さで冷却効果が生成される。
【0009】
更に、米国特許出願公開第2008/0024134A1号公報には、この問題に対処するための改善された冷却回路が記述されている。この文献は、勾配コイル用の冷却装置を製造する方法を記載しており、冷却装置は、予め決められたパターンに従って構成されたキャリアプレート上に配置される少なくとも1つの可撓性冷却管を有し、少なくとも1つの冷却管は、元々円形断面を有し、予め決められた所パターンに従って配置され、その断面を永久に変形させるように平坦化される。米国特許出願公開第2011/0074419A1号公報は、被検体が載置される撮像領域に静磁場を生成する静磁場磁石を有するMRI装置を開示する。パイプ内の冷却剤を循環させる複数の冷却パイプを有するRFコイル側冷却システムが、主コイルの内側に設けられている。しかし、これらの方法では、邪魔なホットスポット及び不均一な温度場の影響を十分に効率的な方法で低減することができない。米国特許第2005093543号公報は、勾配コイルと蛇行冷却管との間に非磁性の熱伝導スプレッダ基板を組み込み、電気部品の局所的なホットスポットを減らしてコイルの温度を下げ、温度分布をより均一にすることを開示している。しかしながら、スプレッダ基板を組み込みは、勾配コイルアセンブリの厚さを増加させ、MRI装置のボアのサイズを減少させ、勾配コイルアセンブリの製造を複雑にし、それに応じてコストも増加させる。
【0010】
本発明の目的は、熱管理が改善された磁気共鳴イメージング(MRI)装置の勾配コイルアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、少なくとも1つの勾配コイル、勾配コイルを冷却する冷却装置、及びRFシールドを有する磁気共鳴イメージングシステムのアセンブリであって、冷却装置は、冷却流体を輸送するように構成されるとともに勾配コイルと熱接触するように勾配コイル上に配置される少なくとも1つの冷却管を有し、アセンブリは更に、第1の熱コネクタ及び第2の熱コネクタの少なくとも一方を有する熱コネクタ装置を有し、第1の熱コネクタが、RFシールドと少なくとも1つの冷却管との間に配置され、RFシールド及び少なくとも1つの冷却管と熱接触し、それにより、RFシールドと少なくとも1つの冷却管との間に半径方向に延びる熱接続を提供し、第2の熱コネクタが、少なくとも1つの冷却管に取り付けられ、該冷却管と熱接触し、それにより、少なくとも1つの冷却管の複数の異なる巻回の間に及び/又は少なくとも1つの冷却管のうち複数の異なる冷却管の間に円周方向に延びる熱接続を提供する、アセンブリにより対処される。
【0012】
したがって、本発明は、少なくとも第1の熱コネクタ及び/又は第2の熱コネクタを提供することにより熱管理を改善することを提案する。本発明の一態様によれば、冷却装置とRFシールドとの間に第1の熱コネクタによるヒートブリッジを構築することにより、RFシールドを冷却することを目指す。本発明は、断熱を考慮して最も熱い層の周りに半径方向にヒートブリッジを構築することを可能にする。本発明の別の態様によれば、勾配コイルのコイルパターンに依存して、勾配コイルのワイヤ配置領域の温度が、勾配コイルの他の場所よりも高くなる。したがって、ホットスポットの周囲の円周方向に第2の熱コネクタによりヒートブリッジを構築することは、温度分布のより良好な均一性を達成することの助けとなる。好適には冷却管を横切って接合、溶接又は接着することによりヒートブリッジを冷却管に直接貼り付けることによって、ヒートブリッジは、冷却管を配置するための平面に実質的に位置付けられるため、勾配コイルアセンブリの厚さは、増大されない。コンパクトな熱配置により、温度場の均一性が改善され、MRIシステムのボアサイズを大きくすることなくホットスポットが減少される。
【0013】
加えて、本発明による冷却設計は、少なくとも2つの異なる方法で使用されることができる。勾配コイルが特定の仕様に従ってすでに製造されており、使用中にホットスポットが見つかった場合、勾配コイルの識別されたホットスポットに従って熱コネクタを配置することにより、その性能を改善させることができる。代替的又は追加的に、勾配コイルの設計段階でシミュレーションによりホットスポットが識別されることができ、冷却を改善するために、シミュレーションにより識別されたホットスポットに熱コネクタが配置されることができる。当業者によって認められているように、本発明による冷却装置は、勾配コイルアセンブリの従来の製造プロセスに全く又はほとんど変更を加えずに適用されることができる。
【0014】
一般に、本発明によれば、第1の熱コネクタは、さまざまな異なる方法で設計され構成されることができる。本発明の実施形態によれば、熱コネクタ装置は、少なくとも2つの第1の熱コネクタを有し、少なくとも2つの第1の熱コネクタは、勾配コイルの2つの長手方向端部において勾配コイルの外側に半径方向に配置され、それによりRFシールドを冷却管と熱接続する。したがって、この設計では、2つの第1の熱コネクタは、勾配コイルを通過しない。これに関して、勾配コイル及びRFシールドは、好適には樹脂材料であるエポキシ材料に埋め込まれ、2つの第1の熱コネクタのために、両端及び勾配コイルの外側の樹脂材料がない空間が使用される。このようにして、一層の冷却が、効率的な方法で達成されることができる。
【0015】
本発明によれば、第2の熱コネクタは、多様なやり方で設計され配置されることができる。しかしながら、本発明の好適な実施形態によれば、冷却管の間及び/又は特定の冷却管の複数の異なる巻回の間の第2の熱コネクタは、第2の熱コネクタの長手方向に少なくとも1つの切り欠き部を有し、それによって、第2の熱コネクタと接触する冷却管のスポットから延びる冷却フィンを形成する。したがって、この設計によれば、熱コネクタは、アセンブリの一部からアセンブリの別の部分に熱を伝導する代わりに、アセンブリの周囲に熱を放出する役目を果たし、ゆえに、冷却領域のサイズを増大させることによって冷却フィンとして機能する。
【0016】
更に、本発明の好適な実施形態によれば、第2の熱コネクタは、少なくとも1つの冷却管(4)上に配置される複数の長手方向熱部品と、長手方向熱部品を互いに熱接続する複数の水平方向熱部品とを有する。これは、アセンブリの冷却を改善するために熱放散を増加させる他の手段であり得る。これに関して、複数の冷却管の間及び/又は冷却管の複数の巻回の間の第2の熱コネクタは、特に好適には、少なくとも1つの冷却管(4)を配置する面内に面状の延在部を有する。
【0017】
更に、本発明の好適な実施形態によれば、第2の熱コネクタ(5)は、少なくとも1つの管(4)上に千鳥状に配置される複数の熱部品を有する。更に、第1の熱コネクタ及び第2の熱コネクタを固定するために異なる可能性が適用される。好適には、第1の熱コネクタ及び/又は第2の熱コネクタは、冷却管に接合及び/又は溶接及び/又は接着される。この方策は、製造が容易でありながら効率的な冷却を可能にする。この点で、第1の熱コネクタ及び/又は第2の熱コネクタは、少なくとも1つの冷却管(4)の周りを包む金属リング上に溶接されることが特に好適である。
【0018】
本発明の好適な実施形態によれば、第1の熱コネクタ及び/又は第2の熱コネクタは金属から作られる。より好適には、第1の熱コネクタ及び/又は第2の熱コネクタは、可撓性の熱伝導体材料から作られる。好適には、第1の熱コネクタ及び/又は第2の熱コネクタは、銅ストラップを有する。銅ストラップは閉ループを構成せず、通常、誘導熱を生成しない。
【0019】
代替として、本発明の好適な実施形態によれば、第1の熱コネクタ及び/又は第2の熱コネクタは、熱伝導性セラミック材料から作られる。この設計には、金属成分が含まれていないため、勾配の均一性に影響を与えないことが期待される。
【0020】
一般に、第1の熱コネクタ及び/又は第2の熱コネクタと、冷却管との接続は、さまざまなやり方で設計されることができる。しかしながら、本発明の好適な実施形態によれば、冷却管に固定される第1の熱コネクタ及び/又は第2の熱コネクタの部分は、冷却管を円周方向に覆う。このようにして、大きな接触面積が得られ、これは、熱の放散を一層助ける。
【0021】
更に、本発明は、上記のようなアセンブリを備えた磁気共鳴イメージングシステムにも関する。
【0022】
更に、本発明は、磁気共鳴イメージングシステムの勾配コイルを冷却する方法に関し、方法は、勾配コイルを冷却する冷却装置及びRFシールドを備えたアセンブリを提供するステップと、冷却流体を輸送し及び勾配コイルと熱接触する少なくとも1つの冷却管を、冷却装置に設けるステップと、を有し、第1の熱コネクタ及び第2の熱コネクタの少なくとも一方を有する熱コネクタ装置が提供され、第1の熱コネクタは、RFシールドと少なくとも1つの冷却管との間に配置され、RFシールドと少なくとも1つの冷却管と熱接触し、それにより、RFシールドを少なくとも1つの冷却管に熱接続し、第2の熱コネクタ(5)は、少なくとも1つの冷却管上に配置され、少なくとも1つの冷却管と熱接触し、それにより、少なくとも1つの冷却管のうち第1の冷却管の複数の巻回を熱接続し、及び/又は少なくとも1つの冷却管のうち第2の冷却管を少なくとも1つの冷却管のうち第3の冷却管に熱接続する。
【0023】
この方法の好適な実施形態は、上記のような磁気共鳴イメージングシステムのアセンブリの好適な実施形態に関する。
【0024】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記述される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。そのような実施形態は、必ずしも本発明の範囲全体を表すものではなく、したがって本発明の範囲を解釈するために特許請求の範囲及び本願明細書が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態によるMRIシステムの概略縦断面図。
図2】本発明の実施形態による冷却システムを有する別のアセンブリの概略正面断面図。
図3】本発明の別の実施形態による第2の熱コネクタを備えた冷却管の概略斜視図。
図4】本発明の別の実施形態による第2の熱コネクタを備えた冷却管の概略斜視図。
図5】本発明の別の実施形態による第2の熱コネクタを備えた冷却管の概略斜視図。
図6】本発明の別の実施形態による第2の熱コネクタを備えた冷却管の概略斜視図。
図7】本発明の別の実施形態による第2の熱コネクタを備えた冷却管の概略斜視図。
図8】本発明の別の実施形態による、第2の熱コネクタによりループ状に囲まれた冷却管の概略図。
図9】第2の熱コネクタが金属リングに溶接される本発明の実施形態の概略図。
図10】本発明の別の実施形態による非金属絶縁層を備えた金属層シールド冷却管の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、本発明の一実施形態によるMRIシステム11の概略縦断面図が示されている。このMRIシステム11は、勾配コイル3と、勾配コイル3を冷却する冷却装置2と、RFシールド6とを備えたアセンブリ1を有する。冷却装置2は、水のような流体9が流れる冷却管4を有し、冷却管4は、勾配コイル3と熱接触する。勾配コイル3及び冷却装置2は、樹脂材料19に埋め込まれている。
【0027】
このMRIシステムは更に、磁石14と、RF送信コイル15と、RF受信コイル16と、冷却空気がRF送信コイル15とRFシールド6との間の領域に到達することを可能にする冷却ギャップ17を有する。検査対象10、例えば患者は、患者支持体13上に配置されることができる。この患者支持体13により、検査対象10は、磁石14、冷却勾配コイル3、RFシールド6、MRI検査用のRF送信コイル15及びRF受信コイル16によって囲まれたMRIシステム11の検査領域18に配置されることができる。
【0028】
本発明のこの好適な実施形態によれば、2つの第1の熱コネクタ7が、RFシールド6と少なくとも1つの冷却管4との間に配置され、RFシールド6及びなくとも1つの冷却管4と熱接触することにより、RFシールド6をこの冷却管4に熱接続する。第1の熱コネクタ7は、勾配コイル3の2つの長手方向端部において勾配コイル3の外側に半径方向に配置され、それにより、RFシールド6を冷却管4の1つと熱接続する。したがって、2つの第1の熱コネクタ7は、勾配コイル4を通過しない。このようにして、更なる冷却が、効率的な方法で実現されることができる。
【0029】
図2から、本発明の別の実施形態による別のアセンブリ1の概略正面断面図を見ることができる。図2は、冷却装置2とともに樹脂材料19に埋め込まれた3つのコイル巻線層を有する勾配コイル3を示している。この冷却装置2は、それぞれ異なる冷却管4に固定されることによりそれぞれ異なる冷却管4を熱伝導方式で互いに接続する第2の熱コネクタ5を有する。本発明によれば、第2の熱コネクタ5は、1つの冷却管4の複数の異なる巻回に固定されることも可能であり、それにより、冷却管4のこれらの異なる巻回を熱接続する。単一の実施形態において、両方の可能性が組み合わせられることもできることに留意されたい。
【0030】
更に、図2に示す好適な実施形態によれば、第2の熱コネクタ5に加えて、冷却管4をRFシールド6と熱接続する第1の熱コネクタ7が設けられている。これに関して、図2の実施形態は、図1に示された実施形態に関連する。すでに上述したように、第1の熱コネクタ7は、勾配コイル3を通過しない。その代わりに、第1の熱コネクタ7は、勾配コイル3の外側で、勾配コイル3の長手方向端部に配置される。
【0031】
図3から図7は、本発明のさまざまな好適な実施形態による第2の熱コネクタ7を備えた冷却管の斜視図を示す。図3から分かるように、複数の異なる冷却管4の間の第2の熱コネクタ5は、冷却管4を配置する面内に面状の延在部を有する。図3の構成によれば、第2の熱コネクタ5は、冷却管4の間の熱伝達を可能にするために複数の異なる冷却管4を接続するが、図4の構成では、複数の異なる冷却管4の間の第2の熱コネクタ5は、第2の熱コネクタ5の長手方向に切り欠き部12を有し、それにより冷却フィンを形成する。このようにして、冷却管4から第2の熱コネクタ5に伝達される熱は、勾配コイル3の周囲に放散されることができる。
【0032】
更に、図5の構成は図3の構成に類似しているが、複数の異なる冷却管4の間の第2の熱コネクタ5が、互いに接続されている。これは、効率的な熱伝達を促進し、ゆえに、均一な温度分布を可能にする。図6の好適な実施形態によれば、複数の第2の熱コネクタ5が互いに接続される代わりに、より大きな面積をカバーして効率的な熱伝達を可能にする単一の第2の熱コネクタ5が提供されることができ、それにより、勾配コイル3の効果的な冷却を提供する。
【0033】
複数の第2の熱コネクタ5が設けられる場合、複数の異なる冷却管4の間の熱コネクタ5の少なくとも一部が、千鳥状に配置されることもできる。本発明のこのような好適な実施形態は、図7に示されている。
【0034】
第1の熱コネクタ7及び/又は第2の熱コネクタ5が、好適には冷却管4に接合及び/又は溶接されることが前述のすべての好適な実施形態に共通である。この点で、第1の熱コネクタ7及び/又は第2の熱コネクタ5は、好適には、可撓性のある熱伝導体材料から作られる。図3図7に示す実施形態によれば、銅ストラップが、第1の熱的コネクタ7及び第2の熱的コネクタ5にそれぞれ使用される。第1の熱コネクタ7及び第2の熱コネクタ5のためにそのような銅ストラップが用いられる場合、冷却管4に対しぴったりしたフィットが達成されることができ、冷却管4から第1の熱コネクタ7及び第2の熱コネクタ5それぞれに対する効率的な熱伝達を更に支援する。しかしながら、すでに上述したように、本発明は、第1の熱コネクタ7及び第2の熱コネクタ5の材料としての金属に限定されない。代替として、本発明の好適な実施形態によれば、第1の熱コネクタ7及び/又は第2の熱コネクタ5は、熱伝導率がエポキシよりも高い任意の材料、例えば熱伝導性セラミック材料から作られる。
【0035】
図8から、本発明の別の好適な実施形態によれば、冷却管4は、第2の熱コネクタ5によりループ状に囲まれることが分かる。したがって、この設計によれば、冷却管4に固定される第2の熱コネクタ5の部分は、冷却管4を円周方向に覆う。これは、好適には、第2の熱コネクタ5に可撓性材料を使用することにより実現される。更に、これは、第2の熱コネクタ5だけでなく、第1の熱コネクタ7の設計オプションでもある。
【0036】
図9は、第2の熱コネクタ5が金属リング20に溶接される本発明の実施形態を示す。
【0037】
第2の熱コネクタ5を冷却管4に固定するために、金属リング20が、冷却管4に溶接又は接合される。図8を参照して説明した設計に関して、本設計は、第1の熱コネクタ7にも適用されることができる。
【0038】
最後に、図10は、非金属絶縁層21を備えた金属層シールド冷却管4を表す。第1の熱コネクタ7又は第2の熱コネクタ5を冷却管4に溶接できるように、第1の熱コネクタ7又は第2の熱コネクタ5を固定するための溶接スポット22を提供するために、絶縁層21が部分的に剥離される。この設計オプションでは、第1の熱コネクタ7又は第2の熱コネクタ5はそれぞれ、好適には、銅ストラップのような金属製の可撓性のある熱伝導体から作られる。
【0039】
本発明は、図面及び前述の説明において詳しく図示され説明されたが、そのような図示及び説明は、説明的又は例示的であり、限定的なものではないと考えられるべきである。本発明は開示された実施形態に限定されない。開示される実施形態に対する他の変更形態は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に記載の発明を実施する際に当業者によって理解され、達成されることができる。特許請求の範囲において、「含む、有する(comprising)」という語は、他の構成要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数性を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。請求項における如何なる参照符号も請求項の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。
以下、本発明の各種形態を付記する。
(付記1)
少なくとも1つの勾配コイル、前記勾配コイルを冷却する冷却装置、及びRFシールドを有する磁気共鳴イメージングシステムのアセンブリであって、
前記冷却装置は、前記勾配コイル上に配置される少なくとも1つの冷却管を有し、前記少なくとも1つの冷却管は、前記冷却流体を輸送するように構成され、
前記アセンブリは更に、
前記RFシールドと前記少なくとも1つの冷却管との間に配置され、それにより、前記少なくとも1つの冷却管から前記RFシールドへ半径方向に延びる熱接続を提供する第1の熱コネクタと、
前記少なくとも1つの冷却管に固定され、それにより、前記少なくとも1つの冷却管の第1の冷却管の複数の巻回の間に及び/又は複数の前記冷却管の間に円周方向に延びる熱接続を提供する第2の熱コネクタと、
を具備する熱コネクタ装置を有する、アセンブリ。
(付記2)
前記第1の熱コネクタは、前記アセンブリ内において、前記勾配コイルの2つの長手方向端部において前記勾配コイルの外側で半径方向に配置される、付記1に記載のアセンブリ。
(付記3)
前記第2の熱コネクタが、前記第2の熱コネクタの長手方向に少なくとも1つの切り欠き部を有し、それにより冷却フィンを形成する、付記1又は2に記載のアセンブリ。
(付記4)
前記第2の熱コネクタは、前記少なくとも1つの冷却管の間に配置される複数の長手方向熱部品と、前記長手方向熱部品を熱的に相互接続する複数の水平方向熱部品と、を有する、付記1乃至3のいずれか1項に記載のアセンブリ。
(付記5)
前記第2の熱コネクタは、前記少なくとも1つの冷却管を配置する面内に面状の延在部を有する、付記1乃至3のいずれか1項に記載のアセンブリ。
(付記6)
前記第2の熱コネクタが、前記少なくとも1つの冷却管の間に千鳥状に配置される複数の熱部品を有する、付記1乃至3のいずれか1項に記載のアセンブリ。
(付記7)
前記第1の熱コネクタ及び/又は前記第2の熱コネクタは、前記少なくとも1つの冷却管に接合及び/又は溶接及び/又は接着される、付記1乃至6のいずれか1項に記載のアセンブリ。
(付記8)
前記第1の熱コネクタ及び/又は前記第2の熱コネクタは、前記少なくとも1つの冷却管の周りを囲むリング上に溶接される、付記1乃至7のいずれか1項に記載のアセンブリ。
(付記9)
前記第1の熱コネクタ及び/又は前記第2の熱コネクタは、熱伝導率がエポキシよりも高い材料で作られている、付記1乃至8のいずれか1項に記載のアセンブリ。
(付記10)
前記第1の熱コネクタ及び/又は前記第2の熱コネクタが、可撓性の熱伝導材料から作られている、付記1乃至9のいずれか1項に記載のアセンブリ。
(付記11)
前記第1の熱コネクタ及び/又は前記第2の熱コネクタが、銅ストラップを有する、付記1乃至10のいずれか1項に記載のアセンブリ。
(付記12)
前記第1の熱コネクタ及び/又は前記第2の熱コネクタは、熱伝導性セラミック材料から作られる、付記1乃至10のいずれか1項に記載のアセンブリ。
(付記13)
前記冷却管に固定された前記第1の熱コネクタ及び/又は前記第2の熱コネクタの一部が、前記冷却管を円周方向に覆う、付記1乃至12のいずれか1項に記載のアセンブリ。
(付記14)
前記付記1乃至13のいずれか1項に記載のアセンブリを有する磁気共鳴イメージングシステム。
(付記15)
磁気共鳴イメージングシステムの勾配コイルを冷却する方法であって、
勾配コイルを冷却する冷却装置とRFシールドとを有するアセンブリを提供するステップと、
前記勾配コイル上に配置され、冷却流体を輸送するように構成される少なくとも1つの冷却管を、前記冷却装置に提供するステップと、
前記RFシールドと前記少なくとも1つの冷却管との間に半径方向に延びる熱接続を、前記冷却装置に提供するステップと、
前記少なくとも1つの冷却管の複数の異なる巻回の間及び/又は前記少なくとも1つの冷却管の複数の異なる冷却管の間に円周方向に延びる熱接続を、前記冷却装置に提供するステップと、
を有する方法。
【符号の説明】
【0040】
1 磁気共鳴イメージング(MRI)システムのアセンブリ
2 冷却配置
3 勾配コイル
4 冷却管
5 第2の熱コネクタ
6 RFシールド
7 第1の熱コネクタ
8 熱コネクタ装置
9 冷却流体
10 検査対象
11 MRIシステム
12 切り欠き部
15 患者支持体
14 磁石
15 RF送信コイル
16 RF受信コイル
17 冷却ギャップ
18 検査領域
19 樹脂材料
20 金属リング
21 絶縁層
22 溶接スポット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10