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  • 特許-現像ローラ及び現像ローラの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】現像ローラ及び現像ローラの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20221116BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20221116BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
G03G15/08 235
F16C13/00 B
F16C13/00 A
B32B1/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019551225
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2018039605
(87)【国際公開番号】W WO2019082955
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2017207514
(32)【優先日】2017-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】大迫 章英
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-276698(JP,A)
【文献】特開2008-040241(JP,A)
【文献】特開2013-200505(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136822(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/074610(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/096471(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
F16C 13/00
B32B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、該軸上に形成された弾性層と、該弾性層上に形成された被覆層とを少なくとも備える現像ローラであって、
前記現像ローラの軸方向の前記弾性層上の両端部において、前記弾性層と前記被覆層との間に接着層が設けられており、
前記接着層が、前記弾性層及び前記被覆層に接着し、
前記接着層が、湿気硬化型接着剤及びチクソ性付与剤を含む接着層用組成物を硬化した層であり、
前記湿気硬化型接着剤が、イソシアネート基を2つ以上有するMDIを含有し、
前記弾性層が、シリコーン系整泡剤を含有するウレタンフォームであり、前記シリコーン系整泡剤が官能基を有することを特徴とする、現像ローラ。
【請求項2】
前記チクソ性付与剤が、シリカ、アセチレンブラック及び脂肪族アマイドから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記接着層用組成物のチクソトロピックインデックス(TI値)が、1.8~5.0である、請求項1又は2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記接着層用組成物におけるチクソ性付与剤の含有量が、0.5~15質量%である、請求項1~のいずれか1項に記載の現像ローラ。
【請求項5】
請求項1に記載の現像ローラの製造方法であって、
弾性層用組成物を加熱して、前記軸上に弾性層を形成する、弾性層形成工程と、
前記現像ローラの軸方向の前記弾性層上の両端部において、前記接着層用組成物を塗布して、接着層を形成する、接着層形成工程と、
前記弾性層形成工程で形成された弾性層上及び前記接着層形成工程で形成された接着層上に被覆層用組成物を塗布した後に、前記塗布した被覆層用組成物を硬化して、被覆層を形成する、被覆層形成工程と、を含むことを特徴とする、現像ローラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ及び現像ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現像ローラには、トナー漏れを防ぐために、現像ローラの軸方向の両端部にシール部材が配置されるものがある。このタイプの現像ローラでは、現像ローラが回転すると、現像ローラの端部が摩耗したり、現像ローラを形成している層が剥がれたりすることがあった。
特許文献1では、現像ローラの軸方向の少なくとも一端部において、層間の接着を高めるための接着層を設けることにより、現像ローラの端部における、層の剥離を防止し、更に、現像ローラの端部での摩耗を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-040241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術のように、接着層を形成するための接着剤成分を、ロールコート法で均一な厚さで塗布しようとすると、接着剤成分が垂直方向にたれるため、均一な厚みで硬化することができず、そのため、ローラ端部での層の厚みが不均一となり、現像ローラとして画質に不具合を生じてしまうという課題が明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、層間の接着性を確保しつつ、画像不良を抑制した現像ローラを提供することを目的とする。また、本発明は、本発明の現像ローラを効率良く製造できる、現像ローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の現像ローラは、軸と、該軸上に形成された弾性層と、該弾性層上に形成された被覆層とを少なくとも備える現像ローラであって、前記現像ローラの軸方向の前記弾性層上の両端部において、前記弾性層と前記被覆層との間に接着層が設けられており、前記接着層が、前記弾性層及び前記被覆層に接着し、前記接着層が、湿気硬化型接着剤及びチクソ性付与剤を含む接着層用組成物を硬化した層である、ことを特徴とする。
本発明の現像ローラによれば、層間の接着性を確保しつつ、画像不良を抑制することができる。
【0007】
本発明の現像ローラは、前記チクソ性付与剤が、シリカ、アセチレンブラック及び脂肪族アマイドから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
この構成によれば、接着層をより均一にでき、画像不良の発生をより低減できる。
【0008】
本発明の現像ローラは、前記湿気硬化型接着剤が、イソシアネート基を2つ以上有するMDI、プレポリ化MDI及びトリフェニルメタントリイソシアネートから選択される少なくとも1種を含有し、前記弾性層が、シリコーン系整泡剤を含有するウレタンフォームであり、前記シリコーン系整泡剤が、官能基を有することが好ましい。
この構成によれば、シリコーン系整泡剤の使用により、得られる弾性体の泡の均一性が良好となり、現像ローラに適した弾性の現像ローラとなる。シリコーン系整泡剤を用いると、一般的には、層間の接着性が低下する場合が多いが、上記要件を満たすことにより、層間で化学反応が生じ、弾性層と被覆層との間の接着性が向上する。
【0009】
本発明の現像ローラは、前記接着層用組成物のチクソトロピックインデックス(TI値)が、1.8~5.0であることが好ましい。
この構成によれば、接着層を特に均一にでき、画像不良の発生を特に低減できる。
【0010】
本発明の現像ローラは、前記接着層用組成物におけるチクソ性付与剤の含有量が、0.5~15質量%であることが好ましい。
この構成によれば、接着層用組成物がチクソ性を十分示しつつ、高い塗装性(ムラになりにくい)を実現できる。
【0011】
本発明の、現像ローラの製造方法は、本発明の現像ローラの製造方法であって、弾性層用組成物を加熱して、前記軸上に弾性層を形成する、弾性層形成工程と、前記現像ローラの軸方向の前記弾性層上の両端部において、前記接着層用組成物を塗布して、接着層を形成する、接着層形成工程と、前記弾性層形成工程で形成された弾性層上及び前記接着層形成工程で形成された接着層上に被覆層用組成物を塗布した後に、前記塗布した被覆層用組成物を硬化して、被覆層を形成する、被覆層形成工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の、現像ローラの製造方法によれば、本発明の現像ローラを効率良く製造できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、層間の接着性を確保しつつ、画像不良を抑制した現像ローラを提供することができる。また、本発明によれば、本発明の現像ローラを効率良く製造できる、現像ローラの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の現像ローラの一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、必要に応じて図面を用いて説明する。
【0015】
(現像ローラ)
本発明の現像ローラは、軸と、該軸上に形成された弾性層と、該弾性層上に形成された被覆層と、を少なくとも備える。
本発明の現像ローラは、前記現像ローラの軸方向の前記弾性層上の両端部において、前記弾性層と前記被覆層との間に接着層が設けられている。
図1は、本発明の現像ローラの一実施形態の断面図である。図1に示す現像ローラ1は、長さ方向両端部を、図示しないフランジで軸支されて取り付けられる軸2と、該軸2の半径方向外側に配設された弾性層3を備えている。また、図1に示す現像ローラ1は、弾性層3の半径方向外側に隣接して被覆層4を備えている。更に、図1に示す現像ローラ1は、軸方向の弾性層3上の両端部において、弾性層3と被覆層4との間に接着層5を備えている。
【0016】
接着層用組成物をロールコート法により弾性層上に塗布する場合、接着層用組成物の粘度が低いと、塗布された接着層用組成物が垂直方向に液だれするため、均一な厚みの接着層を形成することができなくなる。一方、接着層用組成物の粘度が高いと、接着層用組成物を製造する際の撹拌効率が悪くなったり、接着層用組成物の塗布の制御が難しくなったりして、作業効率が低下する。接着層用組成物の粘度について、単一の粘度条件では、作業効率を維持しつつ、液だれを防ぐことは、困難であるとわかった。
発明者は、鋭意検討をした結果、湿気硬化型接着剤を主成分とする接着層用組成物にシリカを加えたところ、接着層用組成物にチクソ性が付与されることを見出した。チクソ性とは、静置時は高粘度の状態であるが、攪拌したりすると、その間だけ粘度が低下する物性である。発明者は、斯かるチクソ性を応用すれば、接着層用組成物の粘度状態を適宜調整することができる点に着目して、製造時の作業内容に応じて、塗布や撹拌の際には粘度を低くして作業性を高め、塗布後には粘度を高くして液だれを防ぐという技術思想を見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
本発明の現像ローラは、接着層の厚みが均一となるため、現像ローラの厚みも均一になる。厚みが均一となると、現像ローラから感光体へ搬送されるトナーの量が一定となり、画像不良が抑制される。
さらに、本発明の現像ローラは、摩耗が生じやすい、現像ローラの軸方向の端部において接着層を備えていることから、端部での層間の剥離も生じにくくなり、層間の接着性が確保される。
【0018】
<弾性層>
上記弾性層は、本発明の現像ローラのうち、軸上に形成された弾性を有する層のことである。前記弾性層は、弾性層用組成物を加熱して形成される。
【0019】
上記弾性層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン樹脂、ゴム弾性体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ポリウレタン樹脂は、現像ローラに適した弾性となる点で、好ましい。
【0020】
<<ポリウレタン樹脂>>
上記ポリウレタン樹脂は、ポリオールとイソシアネートとを既知の反応方法で重付加反応させて得ることができる。前記ポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、整泡剤で発泡させて得られるポリウレタンフォーム、発泡させないで得られる非フォームのポリウレタン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ポリウレタンフォームは、現像ローラに特に適した弾性となる点で、有利である。
【0021】
<<ゴム弾性体>>
上記ゴム弾性体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレン-プロピレンゴム、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、及びこれらのブレンドゴム、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
<<弾性層用組成物>>
上記弾性層用組成物としては、上記弾性層を形成できる組成物である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
上記ポリウレタン樹脂の弾性層を形成する場合には、前記弾性層用組成物として、ポリオール、イソシアネート、ウレタン結合触媒、溶媒、充填剤、などの成分を含むことが好ましい。また、上記ポリウレタンフォームの弾性層を形成する場合には、整泡剤を更に含むことが好ましい。
前記弾性層用組成物は、上記成分の他に、必要に応じて、イオン導電剤、可塑剤、軟化剤、粘着付与剤、粘着防止剤、分離剤、離型剤、増量剤、着色剤、架橋剤、加硫剤、重合禁止剤、などを含んでもよい。
【0023】
-ポリオール-
上記ポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、アルキレンオキサイド変性ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ポリエーテルポリオールは、樹脂の柔軟性、永久圧縮ひずみが少ない点で、好ましい。
【0024】
-イソシアネート-
上記イソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、プレポリマー化トリレンジイソシアネート(プレポリマー化TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート(クルードMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI);これらのイソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、グリコール変性物等;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、プレポリマー化トリレンジイソシアネート(プレポリマー化TDI)は、ウレタン反応活性が高く、弾性層ひいては現像ローラの弾性を向上させやすい等の点で、好ましい。
【0025】
-ウレタン結合触媒-
上記ウレタン結合触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫アセテート、ジオクチル錫ビス(エチルマレート)、ジブチル錫ビス(オレイルマレート)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレート、ジオクチル錫チオカルボキシレート、オクテン酸錫、モノブチル錫オキシド、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ジブチル錫ジラウレートは、触媒活性が高い点で、好ましい。
【0026】
-溶媒-
上記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸ブチル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルスルホン;ジメチルスルホキシド;テトラヒドロフラン;ジオキサン;トルエン;キシレン;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、酢酸ブチルは、揮発速度が速い点で、好ましい。
【0027】
-整泡剤-
上記整泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン系整泡剤、イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、シリコーン系整泡剤は、発泡体の泡の均一性が良好となる観点で、好ましい。一方で、シリコーン系整泡剤を弾性層用組成物に用いると、隣接する他の層との接着性が低減することがある。
【0028】
上記シリコーン系整泡剤は、官能基を有することが好ましい。
前記シリコーン系整泡剤の官能基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、OH(水酸)基、チオール基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、アクロイル基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、OH(水酸)基は、後述する接着層用組成物にイソシアネートが含まれると、該イソシアネートが、弾性層のシリコーン系整泡剤に由来するOH(水酸)基とウレタン結合を形成するため、弾性層と接着層との間の接着性がより向上できる点で、好ましい。後述する湿気硬化型接着剤にイソシアネート基を2つ以上有するMDIを含んでいると、MDIは電子求引性が高く、整泡剤のOHと化学反応しやすいため、反応効率が高く、接着性を特に向上できる。
【0029】
<<弾性層の厚み>>
上記弾性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5~7.0μmが好ましい。
【0030】
<接着層>
上記接着層は、上記現像ローラの軸方向の上記弾性層上の両端部において前記弾性層と上記被覆層との間に設けられた層である。
前記接着層は、湿気硬化型接着剤及びチクソ性付与剤を含む接着層用組成物を硬化して得られる層である。
前記接着層が、前記弾性層及び前記被覆層に接着している。
【0031】
<<両端部>>
本明細書で、弾性層上の端部とは、弾性層上の軸方向の端を含む部分を意味する。本発明の現像ローラの軸方向には、端が2箇所存在するため、本明細書で両端部とは、2箇所の端部を意味する。
各端部の軸方向の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、弾性層の軸方向の長さを1としたときに、1/4以下の長さ、1/10以下の長さ、1/20以下の長さ、1/40以下の長さ、1/80以下の長さ、とすることができる。
なお、電子写真用トナーカートリッジの部品として、シール部材を現像ローラ端部と接触する部位に配置するときは、シール部材を現像ローラとの接触部位の長さに応じて、本発明において設ける端部接着層の幅を適宜選択すると、現像ローラとシール部材との摩擦によって生じやすい層の剥離を効率よく回避でき、現像ローラの製品寿命を長くすることができる。具体的には、端部接着層の軸方向の長さを配置するシール部材のとの接触部分に対して+1mm~+15mmの範囲の長さであると、現像ローラの製品寿命を長くする点で有効である。
【0032】
<<接着層用組成物>>
上記接着層用組成物は、少なくとも、湿気硬化型接着剤及びチクソ性付与剤を含み、必要に応じてその他の成分を含む。
【0033】
-湿気硬化型接着剤-
上記湿気硬化型接着剤は、水分によって硬化反応(架橋反応)が進行し、2以上の被着体を接着するものである。
前記湿気硬化型接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記湿気硬化型接着剤がイソシアネート基を2つ以上有するMDIを含むと、整泡剤の官能基と化学反応しやすいため、接着性を特に向上できる点で、有利である。
【0034】
--イソシアネート基を2つ以上有するMDI--
上記イソシアネート基を2つ以上有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、プレポリ化MDI、トリフェニルメタントリイソシアネートが好ましく挙げられる。前記MDIとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,2’-MDI、2,4’-MDI、4,4’-MDI、ポリメッリックMDI等が挙げられる。また、前記プレポリ化MDIについては、MDIと2官能以上のポリオールをイソシアネートインデックス1.5以上にて反応させたものを好適に使用することができる。
さらに、上述した化合物の中でも、4,4’-MDI、プレポリ化4,4’-MDI及びトリフェニルメタントリイソシアネートについては、反応が早く接着力の点でより好ましい。
【0035】
-チクソ性付与剤-
チクソ性とは、静置時は高粘度の状態であるが、攪拌したりすると、その間だけ粘度が低下する物性のことをいう。
上記チクソ性付与剤を接着層用組成物に含むと、接着層用組成物のチクソ性が向上し、弾性層上に塗布した後に、接着層用組成物が垂直方向に垂れないようにできる。
前記チクソ性付与剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、アセチレンブラック、脂肪族アマイド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、シリカ及びアセチレンブラックは、ブリードアウトの点で、好ましい。
【0036】
--シリカ--
上記シリカとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面に水酸基を有するシリカ、表面吸収シリカ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、水酸基を有するシリカは、添加量が少なくてもチクソ性が生じやすい点で、好ましい。
【0037】
--チクソ性付与剤の含有量--
上記接着層用組成物中のチクソ性付与剤の含有量(質量%)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.5~15質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
前記接着層用組成物中のチクソ性付与剤の含有量が、0.5質量%以上であると、接着層用組成物がチクソ性を十分示す点で好ましく、15質量%以下であると、塗装性(ムラになりにくい)の点で好ましい。前記接着層用組成物中のチクソ性付与剤の含有量が、前記より好ましい範囲内及び前記特に好ましい範囲内であると、同様の理由で、より有利である。
【0038】
-接着層用組成物に必要に応じて含まれるその他の成分-
上記接着層用組成物に必要に応じて含まれるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光重合開始剤、光重合開始助剤、微粒子、イオン導電剤、充填剤、しゃく解剤、発泡剤、可塑剤、軟化剤、粘着付与剤、粘着防止剤、分離剤、離型剤、増量剤、着色剤、架橋剤、加硫剤、重合禁止剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
-チクソトロピックインデックス(TI値)-
また、上記接着層用組成物のチクソトロピックインデックス(TI値)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.8~5.0が好ましく、2.0~5.0がより好ましく、2.0~4.0が特に好ましい。
前記チクソトロピックインデックスが、1.8以上であると接着層用組成物にチクソ性が付与され、接着層用組成物の撹拌が容易となり、接着層用組成物の調製時間を短縮できることから、作業性が向上する。また、塗布時には、均一に塗布することが容易となる。さらに、接着層用組成物を塗布した後に高粘度となるため、接着層用組成物がローラ-から垂直方向に液だれするのを防ぐことができる。前記チクソトロピックインデックスが、5.0以下であると、塗装性に優れ、むらなく塗装ができる点で好ましい。前記チクソトロピックインデックスが、前記より好ましい範囲内及び前記特に好ましい範囲内であると、同様の理由で、より有利である。
【0040】
上記チクソトロピックインデックス(TI値)は、接着層用組成物の粘度を、東機産業社製のB型粘度計(製品名:TVB-15)を用いて、25℃で測定したときに、回転数30rpmのときの粘度測定値をA、回転数6rpmのときの粘度測定値をBとして、B/Aの計算値で求められる。
【0041】
<<接着層の厚み>>
上記接着層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、薄膜化を実現しつつ、高い接着性を維持する点からは、0.2~20μmであることが好ましく、0.2~10μmであることがより好ましく、0.2~5μmであることが特に好ましい。
【0042】
<被覆層>
上記被覆層は、弾性層上、及び弾性層上に接着層がある場合は接着層上に形成された層のことである。前記被覆層は、被覆層用組成物を硬化して形成される。
【0043】
上記被覆層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ゴム弾性体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ポリウレタン樹脂は、現像ローラに適した弾性となる点で好ましく、特に、ウレタンアクリレート樹脂は、エネルギー線の照射により硬化できるため、製造効率の観点で、より好ましい。
【0044】
<<被覆層用組成物>>
上記被覆層用組成物は、上記被覆層を形成できる組成物である限り、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができる。
上記ウレタンアクリレート樹脂の被覆層を形成する場合には、前記被覆層用組成物として、紫外線硬化型ウレタンアクリレート、光重合開始剤、充填剤、溶媒、などの成分を含むことが好ましい。
前記被覆層用組成物は、前記成分の他に、必要に応じて、イオン導電剤、しゃく解剤、可塑剤、軟化剤、粘着付与剤、粘着防止剤、分離剤、離型剤、増量剤、着色剤、架橋剤、加硫剤、重合禁止剤、などを含んでもよい。
【0045】
-紫外線硬化型ウレタンアクリレート-
上記紫外線硬化型ウレタンアクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線硬化型脂肪族ウレタンアクリレート、紫外線硬化型芳香族ウレタンアクリレート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
-光重合開始剤-
上記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
<<被覆層の厚み>>
上記被覆層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記接着層上の厚みで、0.5~40μmが好ましく、0.5~20μmがより好ましく、0.5~10μmが特に好ましい。
【0048】
<軸>
上記軸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属製又は樹脂製の、中空円筒体、中実円柱体、などが挙げられる。
【0049】
(現像ローラの製造方法)
本発明の、現像ローラの製造方法は、上述の現像ローラの製造方法であって、少なくとも、弾性層形成工程と、該弾性層形成工程の後に行う接着層形成工程と、該接着層形成工程の後に行う被覆層形成工程とを含み、さらに必要に応じて、その他の工程を含む。
本発明の現像ローラの製造方法により、本発明の現像ローラを効率良く製造できる。
【0050】
<弾性層形成工程>
上記弾性層形成工程は、弾性層用組成物を加熱して、前記軸上に弾性層を形成する工程である。
【0051】
上記弾性層及び上記弾性層用組成物の構成については、前述した通りである。
前記弾性層の形成方法としては、弾性層用組成物を加熱する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱処理に、紫外線、赤外線、可視光、電子線等のエネルギー線の照射を組み合わせて弾性層を得てもよい。
前記弾性層は、軸を配置したモールドの内部に弾性層用組成物を充填してモールド内で加熱して形成してもよいし、上記軸の表面に弾性層用組成物を塗布した後に加熱して形成してもよい。
【0052】
<<加熱>>
上記加熱の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オーブン加熱、などが挙げられる。
前記加熱の条件としては、特に制限はなく、組成物に含まれる成分、組成物の組成、組成物の塗布量等に応じて、加熱温度、加熱時間等を適宜選択することができる。
【0053】
<<紫外線照射>>
上記紫外線照射に用いる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水銀灯、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、などが挙げられる。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、組成物に含まれる成分、組成物の組成、組成物の塗布量等に応じて、照射強度、積算光量等を適宜選択することができる。
【0054】
<接着層形成工程>
上記接着層形成工程は、上記現像ローラの軸方向の上記弾性層上の両端部において、前記接着層用組成物を塗布して、接着層を形成する工程である。
【0055】
上記接着層及び上記接着層用組成物の構成については、前述した通りである。
前記接着層用組成物は、湿気硬化型接着剤を含むため、水分の存在下で硬化するが、更に、加熱処理;紫外線、赤外線、可視光、電子線等のエネルギー線の照射;などと組み合わせて硬化させてもよい。
【0056】
<<塗布>>
上記接着層用組成物の塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロールコート法、スプレー法、ディッピング法、ダイコート法、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
-ロールコート法-
上記ロールコート法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ロールコート法による塗布の方法としては、例えば、接着層用組成物を保持させたロールを、弾性層の表面に圧接させ、弾性層に対して転動させることによって、接着層用組成物を塗布する方法がある。
【0058】
<被覆層形成工程>
上記被覆層形成工程は、上記弾性層形成工程で形成された弾性層上及び上記接着層形成工程で形成された接着層上に上記被覆層用組成物を塗布した後に、前記塗布した被覆層用組成物を硬化して、被覆層を形成する工程である。
【0059】
上記被覆層及び上記被覆層用組成物の構成については、前述した通りである。
前記被覆層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱処理;紫外線、赤外線、可視光、電子線等のエネルギー線の照射;などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
<<塗布>>
上記被覆層用組成物の塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロールコート法、スプレー法、ディッピング法、ダイコート法、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ロールコート法が、塗膜の均一性の点で、好ましい。
【0061】
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、弾性層、被覆層のクリーニング工程、などが挙げられる。
【実施例
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0063】
(実施例~6、比較例1~
現像ローラを下記の方法により作製した。
【0064】
<プレポリマー化TDIの調製>
三口フラスコで、エクセノール5030(製造会社:旭硝子社)及びTDI(製造会社:三井化学社)をイソシアネートINDEX(NCOモル数/OHモル数)が4.5となるように配合し、マントルヒーターを用いて液温70℃で2時間加熱した。水酸基価法により、ポリオールが消失したのを確認して、プレポリマー化TDIを調製した。
【0065】
<弾性層用組成物の調製>
ポリオールとしてのサンニックスFA-951(製造会社:三洋化成工業社)2000質量部と、ポリオールとしてのクラレポリオールF-510(製造会社:クラレ社)5000質量部と、ポリオールとしてのクラレポリオールF-1010(製造会社:クラレ社)2000質量部と、水酸基を有するアクリレートであるライトエステルHOA(製造会社:共栄社化学社)650質量部と、ウレタン結合触媒としてのネオスタンU-100(製造会社:日東化成社)10質量部と、シリコーン系整泡剤としてのSF2937F(製造会社:東レ・ダウコーニング社)410質量部と、を配合して、ポリオール混合物を得た。
イソシアネートとしての上記調製したプレポリマー化TDI(イソシアネート基%=7%)20000質量部と、充填剤としてのデンカブラック(製造会社:電気化学工業社)600質量部とを配合して、イソシアネート混合物を得た。
そして、ポリオール混合物とイソシアネート混合物を別タンクにセットし、イソシアネートINDEXが1.1となるようにメカニカルフロス注入タンク内への流量をコントロールして注入した。
【0066】
<弾性層の形成>
上記弾性層用組成物を、軸が配置されたφ20のモールドに流し込み、オーブンを用いて120℃で30分間加熱し、硬化した弾性層をモールドから取り出した。
【0067】
<接着層用組成物の調製>
実施例~6ついては、300mlのSUSビーカーで、表1に示す湿気硬化型接着剤及びチクソ性付与剤を表1に示す量で配合した。更に、溶媒としての酢酸ブチルを、SUSビーカーに50質量部加え、ホモディスパーを用いて、1500rpmで20分撹拌した。SUSビーカー中の溶液の粘度が20±5mPa・sになるように、酢酸ブチルを更に追加して、接着層用組成物を調製した。溶液の粘度の測定には、東機産業社製のB型粘度計(TVB-15)を用いた。低粘度アダプターを使用し、回転数を30rpmにして25℃の溶液で測定した。
比較例1については、OCM-50(製造会社:亜細亜工業社、固形分:21%)の粘度が低かったため、酢酸ブチルで希釈することなく、OCM-50をそのまま接着層用組成物として用いた。表1中のOCM-50の配合量の数値は、OCM-50中の固形成分の質量部を示す。
比較例2については、300mlのSUSビーカーで、表1に示す湿気硬化型接着剤を表1に示す量で配合し、その他の条件は実施例~6同様の条件で、接着層用組成物を調製した。
【0068】
<チクソトロピックインデックス(TI値)>
得られた接着層用組成物のチクソトロピックインデックスは、接着層用組成物の粘度を東機産業社製のB型粘度計(製品名:TVB-15)を用いて25℃で測定したときに、回転数30rpmのときの粘度測定値をA、回転数6rpmのときの粘度測定値をBとして、B/Aとして求めた。接着層用組成物のチクソトロピックインデックスの結果を表1に示す。チクソトロピックインデックスの値が高いほど、チクソ性が高いといえる。
【0069】
<接着層の形成>
上記弾性層上において軸方向の両端部に、上記接着層用組成物を、ロールコート法により塗布して、接着層を形成した。接着層用組成物は、弾性層上に、0.2~5μmの厚みで塗布した。
【0070】
<被覆層用組成物の調製>
紫外線硬化型ウレタンアクリレートとしてのUV-3200B(製造会社:日本合成化学工業社)100質量部と、光重合開始剤としてのIRGACURE907(製造会社:BASF社)0.5質量部と、光重合開始剤としてのIRGACURE819(製造会社:BASF社)0.5質量部と、充填剤としてのアートパールC800(製造会社:根上工業社)12質量部と、溶媒としての酢酸ブチル200質量部とを配合し、撹拌して、被覆層用組成物を調製した。
【0071】
<被覆層形成>
得られた被覆層用組成物を、弾性層上、及び弾性層上に接着層がある場合は接着層上に、ロールコート法により塗布した。塗布は、接着層上の厚みで、0.5~10μmの厚みで塗布した。塗布された被覆層用組成物を、Fusion製UV装置Dバルブを用いて硬化して被覆層を形成し、現像ローラを得た。
【0072】
層間の接着力は、下記の基盤目試験により評価した。結果を表1に示す。
<基盤目試験>
弾性層及び接着層とからなる部材(以下、積層部材)に、2mm×2mmの幅で縦5×横5の25マスの切り目を入れた。日東電工社製のセロハンテープNo.29を指にて強く押し当て、素早く引き剥がした。マス目が一部でも剥がれれば、剥がれたと判断し、剥がれなかった数をカウントした。仮に、1カ所も剥がれなければ、「25/25」となる。数値が大きいほど、接着力が高いことを示し、25/25であると、現像ローラとしても、接着性に優れた性能を保持できるといえる。
【0073】
<層の均一性評価>
得られた現像ローラの断面を観察することにより、現像ローラを形成する層の均一性を評価した。層の均一性は、接着層の厚みが、均一となっているか否かで判断し、○(厚みが均一になっている)、×(厚みが不均一である)の2段階で評価した。○であると、画像不良が生じにくい性能を保持した現像ローラであるといえる。
【0074】
【表1】
【0075】
*1:PD-200:MDI系湿気硬化型プライマー(亜細亜工業社製)
*2:OCM-50:脂肪族イソシアネート系湿気硬化型プライマー(亜細亜工業社製)
*4:BYK-3650:有機溶媒分散型ナノシリカ(ビックケミージャパン社製)
*5:PMA-ST:有機溶媒分散型ナノシリカ(日産化学工業社製)
*6:PMA-STL:有機溶媒分散型ナノシリカ(電気化学工業社)
*8:デスモジュール(登録商標)RE:トリフェニルメタントリイソシアネートの酢酸エチル溶液(住化コベストロウレタン社製)
*9:脂肪族アマイド(伊藤製油社製)
【0076】
比較例1~及び実施例~6との比較から、湿気硬化型接着剤としてMDI、もしくはプレポリ化MDI若しくはトリフェニルメタントリイソシアネートを有することが、接着性に重要な効果を示すことがわかった。
比較例2と、実施例~4との比較から、チクソ性付与剤を添加することが、相の均一性に重要であり、本発明の効果を奏するのに必要な要素であることがわかった。
実施例~6では、接着層用組成物を容易に塗布することができることがわかった。また、塗布直後に糸をひくこともなかった
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、層間の接着性を確保しつつ、画像不良を抑制した現像ローラを提供することができる。また、本発明によれば、本発明の現像ローラを効率良く製造できる、現像ローラの製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 現像ローラ
2 軸
3 弾性層
4 被覆層
5 接着層
図1