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特許7177784着色プロセスで用いるための培養微細藻類を含む組成物
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  • 特許-着色プロセスで用いるための培養微細藻類を含む組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】着色プロセスで用いるための培養微細藻類を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   D06P 1/34 20060101AFI20221116BHJP
   D06P 1/36 20060101ALI20221116BHJP
   C09B 61/00 20060101ALI20221116BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20221116BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20221116BHJP
   D21H 21/28 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
D06P1/34
D06P1/36
C09B61/00 Z
C09B67/20 Z
D06P5/00 101
D21H21/28 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019552497
(86)(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 IL2018050320
(87)【国際公開番号】W WO2018173051
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】62/473,549
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519337950
【氏名又は名称】アルガライフ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレブス、レナナ
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106049094(CN,A)
【文献】特開昭57-047476(JP,A)
【文献】特開平07-166480(JP,A)
【文献】特開平09-195178(JP,A)
【文献】特開平01-123865(JP,A)
【文献】国際公開第2015/090697(WO,A1)
【文献】特開平07-034387(JP,A)
【文献】特開平09-313167(JP,A)
【文献】特開昭56-068388(JP,A)
【文献】特開平11-075771(JP,A)
【文献】特開2016-067313(JP,A)
【文献】特開2009-248049(JP,A)
【文献】特表2017-509316(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108060589(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P 1/34
C09B 61/00
C09B 67/20
D06P 1/36
D06P 5/00
D21H 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの培養微細藻類と、少なくとも1つの媒染剤とを含み、
前記少なくとも1つの培養微細藻類は、紅藻類、褐藻類、緑藻類、藍藻類、及びそれらの任意の組み合わせから選択され、
少なくとも1つの酵素、少なくとも1つの染色バインダ、少なくとも1つの増粘剤、及びそれらの任意の組み合わせからなる添加剤リストのうち少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記組成物は、少なくとも前記培養微細藻類を0.5重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの前記媒染剤は、タンニン酸、酒石酸、硫酸鉄(II)七水和物、硫酸カリウムアルミニウム十二水和物、FeSO、及びそれらの任意の組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、繊維及び布のうちの少なくとも一方の着色に使用されることを特徴とする請求項1~請求項のいずれか1つの項に記載の組成物。
【請求項5】
前記繊維は、天然繊維、人工繊維、又はそれらの任意の組み合わせから選択されることを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記布は、織布又は不織布であることを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~請求項のいずれか1つの項に記載の組成物を含む繊維。
【請求項8】
請求項1~請求項のいずれか1つの項に記載の組成物を含む布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布等の面を着色するプロセスで用いるための、培養微細藻類を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
微細藻類は、光合成によって太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換する能力を有する微細な単細胞生物である。微細藻類は、商業的に利用可能な多数の生物活性化合物を含んでいる。微細藻類は、高等植物と比べて太陽光エネルギーをより効率的に利用することができるので、微細藻類が有益な化合物を生産するための又はエネルギー的な利用をするための光合成の潜在能力を有することが広く認識されている。微細藻類は、健康、食品及び飼料添加物、化粧品、及びエネルギー生産用のタンパク質、脂質、炭水化物、カロテノイド、又はビタミン等の幅広い代謝産物を生産するために使用され得る。
【0003】
今日では、微細藻類は、その化学的な組成物によって食品及び動物用飼料の栄養価を増加させるために使用され、水産養殖において重要な役割を果たしたり、化粧品に取り入れられたりする等の、数々の商業利用をされている。さらに、微細藻類は、非常に貴重な分子の源として培養されている。例えば、乳児用調製粉乳及び栄養剤には、ポリ不飽和脂肪酸油脂が添加されており、天然の染料として色素が重要となる。
【0004】
微細藻類は、技術的及び商業的な優位性に変換可能な3つの基本的特性を有する。微細藻類は、幅広い生理学的及び生物学的特性を有する生物の、遺伝学的に極めて異なるグループであり、そのため、微細藻類は、多くの異なる、独自の脂質、糖、生物活性化合物等を自然に生産する。微細藻類は、微細藻類のバイオマスに、それによって微細藻類が生産する様々な化合物に安定同位体13C、15N、及びHを費用効果的に組み込むことができる。微細藻類には、巨大な、未調査の生物のグループが含まれており、そのため、まだ活用されていない資源の生産物を提供する。
【0005】
近年では、微細藻類は、単細胞タンパクとして用いられることとは別に、様々な価値ある化合物の存在によって、バイオ燃料や、食品、水産養殖、家禽、及び調剤産業で使用される様々な有益な生化学的物質を生産させるために、微細藻類を生細胞工場(living-cell factories)とするような計画が行われている(非特許文献1)。
【0006】
微細藻類中の色素濃度は、それぞれの種毎に固有の特徴である。微細藻類中の色素濃度の評価は、間接的な細胞増殖の尺度としてだけでなく、水の栄養段階(trophic level)を確認するためのパラメータとしても不可欠である。藻類の成分は、化粧品に、増粘剤、水結合物質、及び酸化防止剤としてしばしば使用される。いくつかの微細藻類の種はスキンケア市場に定着しており、主な種はアルスロスピラ(Arthrospira)及びクロレラ(Chlorella)である。微細藻類の抽出成分は、フェイス及びスキンケア商品に主に見ることができる(例えば、アンチエイジングクリーム、リフレッシュ又はリジェネラント(regenerant)ケア商品、柔軟化粧水、及びピーラー(peeler)における抗刺激剤)。微細藻類は、日焼け防止用品及びヘアケア用品中にも存在している。化粧品に使用される代表的な種は、コンドルス・クリスプス(Chondrus crispus)、マストカーパス・ストラタス(Mastocarpus stellatus)、アスコフィラム・ノドサム(Ascophyllum nodosum)、アラリア・エスクレンタ(Alaria esculenta)、スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)、ナンノクロロプシス・オクラタ(Nannochloropsis oculata)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、及びドナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)である。微細藻類は、水域環境において観測される高レベルの紫外線(UV)放射で大部分が発見される、酸素発生型光合成の能力を有するクロロフィルaを有する微生物の、多系統かつ生物学的に異なる集まりである。
【0007】
微細藻類顔料は、天然の食品着色料及び化粧品の成分として商業利用されている。ある微細藻類は、(ベータカロテンに加えて)相当量のカロテンを含む。他の種類の着色料もまた、微細藻類中に見られる。ベータカロテンは、食品着色料(マーガリンに黄色を提供することに主に利用されている)として、魚肉及び卵黄の色を増加するための食品添加物として、及び家畜牛の健康及び繁殖力を向上させるために用いられる。天然ベータカロテンは、合成物より優れた物理的性質を有する。具体的には、天然ベータカロテンは脂溶性である。
【0008】
海洋微細藻類は、極端な条件(例えば、塩分濃度、温度、栄養素、紫外線-可視光の照射量等の変化)に置かれる複合的な生息環境に生息する生物である。したがって、海洋微細藻類は、生存するために新しい環境条件に迅速に適合する必要があり、他の生物には見ることができない非常に多様な(生化学的活性を有する)二次代謝産物を生成する。
【0009】
微細藻類の性質は、それらの生息環境及び培養条件による影響を大きく受けるため、工業的に適切な市販の標準バルク試薬(standardized bulk reagent)を調製することを目的とした、エネルギー源に屋外の太陽光を用いる培養様式で微細藻類を増殖させる方法が必要となる。特許文献1には、栄養素及び空気が二酸化炭素と共に運ばれる垂直の透明なチューブ状のアセンブリ内において、微細藻類を密閉増殖させるための装置が開示されている。微細藻類は、チューブから定期的に採取されている。特許文献2には、食品及び化粧品の着色に使用する基礎着色物質として、乾式粉砕された紅微細藻類から得られる材料を含む非水溶性微粒子の着色物質が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第5、534、417号明細書
【文献】米国特許第5、643、585号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】「Journal of Algal Biomass Utilization」、PHYCOSPECTRUM社、2012年10月、第3巻、第4号、p.88-100
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願の発明者らは、培養微細藻類が、例えば、紙、繊維、布、生地、衣服、ウール、シルク、コットン、革、樹脂製材料、及びそれらの任意の組み合わせ等の面の着色に使用可能であることを見出した。
【0013】
したがって、本発明は、少なくとも1つの培養微細藻類と、少なくとも1つの媒染剤とを含む組成物を提供する。
【0014】
本発明は、面を着色するプロセスで用いるための、少なくとも1つの培養微細藻類と、少なくとも1つの媒染剤とを含む組成物をさらに提供する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、繊維及び布のうちの少なくとも一方を着色するための、少なくとも1つの培養微細藻類と、少なくとも1つの媒染剤とを含む組成物を提供する。
【0016】
本発明は、少なくとも1つの培養微細藻類を、少なくとも1つの媒染剤、及び、任意選択で少なくとも1つの酵素、少なくとも1つの湿潤剤、少なくとも1つの染色バインダ、少なくとも1つの増粘剤、及びそれらの任意の組み合わせのうち少なくとも1つと混合するステップを含む、前述した請求項のいずれか1つの項に記載の組成物を調製するための方法を提供する。
【0017】
本発明の他の態様では、本発明は、本発明の組成物を含む繊維を提供する。他の態様では、本発明は、本発明の組成物を含む布を提供する。
【0018】
他の態様では、本発明は、本発明の組成物を用意するステップと、該組成物を布と混ぜるステップとを含む、面を着色する方法を提供する。ある実施形態では、組成物と布との混合物は、30℃~100℃の温度に加熱される。他の実施形態では、布は前処理されている。ある実施形態では、該前処理は、布のカチオン化である(すなわち、布にカチオン化溶液を含侵させるステップ)。他の実施形態では、本発明の組成物は、布にプリンタ又は模様型(pattern mold)を用いてパターンをプリントするために使用される。ある実施形態では、プリントされた布は、該布にパターンを固定するためにオーブン内で加熱される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明と見なされる主題は、特に、本明細書の結び部分に具体的に指し示され、明確に請求されている。しかしながら、本発明は、機構及び操作の方法の両方について、本発明の目的、特徴、及び利点と共に、添付の図面と併せ読み、以下の詳細な説明を参照することにより、最も良く理解されるだろう。
【0020】
図1】本明細書の実施例に記載された、本発明の組成物を用いた着色プロセスの結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、少なくとも1つ(1種類)の培養微細藻類と、少なくとも1つ(1種類)の媒染剤とを含む着色及び/又は染色組成物を提供する。
【0022】
本発明の文脈において使用される用語「組成物」は、着色及び/又は染色、すなわち、例えば繊維、布等の面(surface)に色を移すのに適切な、任意の組成物を包含することを理解されたい。
【0023】
用語「微細藻類」は、数マイクロメートル~数百マイクロメートル(μm)の範囲の寸法を有する、個々又は鎖状若しくはグループで存在する、光合成を行う単細胞種を包含することを理解されたい。微細藻類は根、茎及び葉を有しない。微細藻類バイオマスは、一般的に、クロロフィル濃度で測定される。
【0024】
ある実施形態では、培養微細藻類は、紅藻類、褐藻類、緑藻類、紅藻類、藍藻類、及びそれらの混合物から選択される。他の実施形態では、培養微細藻類は紅微細藻類である。さらなる実施形態では、培養紅微細藻類は、チノリモ属(Porphyridium)、ロデラ属(Rhodella)、ヘマトコッカス(プルビアリス)属(Hematococus (pluvialis))、ドナリエラ(バーダウィル)属(Dunaliella (bradawil))、及びそれらの任意の混合物から選択される。
【0025】
天然タイプの微細藻類は、淡水系及び海水系における水柱及び堆積物の両方でしばしば見られるが、本発明で使用される微細藻類は「培養微細藻類」である。そのため、微細藻類は、天然海洋環境の外部の、調節及び管理された環境において増殖及び培養される。ある実施形態では、培養微細藻類は、海洋水源以外の水源に由来する。さらなる実施形態では、培養微細藻類は、非天然的に増殖された微細藻類である。さらなる実施形態では、培養微細藻類は、海洋以外で増殖された微細藻類である。ある他の実施形態では、培養微細藻類は、海洋環境の外部で増殖/培養される(本発明で使用される培養微細藻類は、海洋水源又は天然の水源から採取されない)。例えば、ある実施形態では、培養微細藻類は、微生物培養装置で増殖/培養される。微生物培養装置の一例としては、その全体が本明細書に組み込まれている特許文献1に記載された装置内で微細藻類を増殖するプロセスが挙げられる。
【0026】
ある実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つの培養微細藻類を少なくとも0.5重量%含有する。他の実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つの培養微細藻類を少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20重量%含有する。さらなる実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つの培養微細藻類を約5~約40重量%含有する。さらなる実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つの培養微細藻類を約1~約20重量%含有する。さらなる実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つの培養微細藻類を約5~約25重量%含有する。
【0027】
本明細書で使用されている用語「媒染剤」は、任意の種類の染料固定剤、本発明の着色組成物を繊維及び/又は布に固定する(すなわち、結合する)ために使用される物質を包含することを理解されたい。
【0028】
ある実施形態では、少なくとも1つの媒染剤は、天然資源に由来する。ある実施形態では、少なくとも1つの媒染剤は、没食子、石榴皮、杜松、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。他の実施形態では、タンニン酸、酒石酸、硫酸鉄(II)七水和物、硫酸カリウムアルミニウム十二水和物、FeSO、及びそれらの任意の組み合わせから選択された人工資源に由来する。他の実施形態では、少なくとも1つの媒染剤はタンニン酸である。
【0029】
ある実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つの酵素(例えばセルロース分解酵素等)、少なくとも1つの染色バインダ(AVCO BINDER D等の、布の繊維に着色組成物を結合させる物質)、少なくとも1つの増粘剤(染色組成物を、毛管引力によって布又は繊維に拡散されることから保護する物質)、及びそれらの任意の組み合わせから成る添加剤リストのうち、少なくとも1つをさらに含む。ある実施形態では、少なくとも1つの酵素は、セルロース分解酵素である。
【0030】
一般的な増粘剤は、でん粉誘導体、小麦粉、アラビアゴム、グアーガム誘導体、タマリンド、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、セネガルゴム及びトラガカントゴム、ブリティッシュゴム、又はデキストリン及びアルブミンである。他の増粘剤としては、アルギン酸ベースの増粘剤(AVCO-PRINT ESO等)及びセルロースベースの増粘剤(THICKENER CM-7等)が挙げられる。
【0031】
本発明は、面を着色するプロセスにおいて使用する、培養微細藻類を含む組成物を提供し、面を着色するプロセスについて言及するとき、該プロセスは、任意の種類の色又は模様を面に染色及びプリント(printing)し、それによって面に色又はパターンを付与することを含む任意の種類の着色プロセスを包含することを理解されたい。
【0032】
ある実施形態では、着色するプロセスは染色である(すなわち、布の一部分又は全体が、本発明の着色組成物に浸漬され、それによって均一な色を付与されるプロセス)。他の実施形態では、着色するプロセスはプリントである(すなわち、所定のパターン又はデザインで布に色を付与するプロセス。プリントでは、木版、型抜き染め、凹版、ローラー、又はシルクスクリーン捺染法若しくはプリンタを使用して、組成物を布に固定することができる)。
【0033】
ある実施形態では、面は、紙、繊維、糸、布、生地、衣服、ウール、シルク、コットン、革、樹脂製材料及びこれらの任意の組み合わせである。
【0034】
さらなる態様では、本発明は、繊維を着色するプロセスで使用するための、培養微細藻類を含む組成物を提供する。
【0035】
用語「繊維」は、糸、布、ニット、織布、不織布、生地、及び紙を製作するために使用可能な繊維を包含し、その幅より長い長さを有することを理解されたい。
【0036】
ある実施形態では、繊維は天然繊維である。このような繊維としては、セルロースベースの繊維、プロテインベースの繊維、無機物ベースの繊維が挙げられる。このような天然繊維としては、これに限定されないが、種子繊維(例えば、コットンやカポックの種子又は果皮(seed case)から集められた繊維)、葉繊維(例えば、サンセベリア、フィケ、サイザルアサ、バナナ、及びリュウゼツランの葉から集められた繊維)、靭皮繊維(それぞれの植物の茎を囲む表皮又は靭皮から集められた繊維。これらの繊維は、他の繊維と比べて高い引張り強度を有する。したがって、これらの繊維は、高耐久性の糸、布、梱包材、及び紙として使用される。ある例示は、亜麻、ジュート、ケナフ、工業用大麻、ラミー、ラタン椰子、及びつる草の繊維である。)、表皮繊維(Skin fiber)、果実繊維(ココナッツ(の外皮の)繊維等の植物の果実から集められた繊維)、茎繊維(Stalk fiber)(小麦、稲、大麦のわら、及び竹、草本、樹木を含む他の作物等の植物の実質的に茎の部分である繊維)、動物繊維(一般的に、コラーゲン、ケラチン、及びフィブロイン等のたんぱく質を含み、例えば、シルク、腱(sinew)、ウール、ガット(catgut)、アンゴラ、モヘア及びアルパカ毛、羊のウール、ヤギのヘア(カシミア、モヘア)、アルパカのヘア、馬のヘア等の動物又は毛深い哺乳類から採取される繊維又はウールである獣毛(ウール又はヘアー)、蛹になる途中の昆虫の(大抵は口の付近に配置されている)腺によって分泌される繊維であるシルク繊維、羽根及び羽根繊維等の鳥からの繊維である鳥類繊維(avian fiber)を含む)が挙げられる。
【0037】
他の実施形態では、繊維は製造された繊維である。このような繊維としては、これに限定されないが、天然糖ベースの製造された繊維-PLA、キトサン、タンパク質ベースの製造された繊維-ゴム、アズロン、セルロースベースの製造された繊維-レイヨン、リヨセル、アセテート、トリアセテート、合成ポリマー-アクリル系、アニデックス(anidex)、アラミド、エラストエステル(elastoester)、ふっ素ポリマー、ラストリル(lastrile)、メラミン、モダクリル、ノボロイド(novoloid)、ナイロン、ニトリル、オレフィン、PBI、ポリエステル、(合成)ゴム、サラン、スパンデックス、サルファ(sulfar)、バイナル(vinal)、ビニヨン(vinyon)等が挙げられる。
【0038】
他の実施形態では、繊維は、合成又は人工繊維である(例えば、ナイロン、オレフィン、アクリル系、ポリエステル、レイヨン、人造絹糸、ビニヨン、サラン、スパンデックス、ビナロン(Vinalon)、アラミド、ノーメックス、ケブラー、トワロン、モーダル、ダイニーマ/スペクトラ、PBI(ポリベンゾイミダゾール繊維)、サルファ(Sulfar)、リヨセル、PLA、M-5(PIPD繊維)、オーロン、ザイロン(PBO繊維)、ベクトラLCP樹脂から製作されたベクトラン(TLCP繊維)、ダクロン、アクリロニトリルゴム、ガラス繊維、金属繊維、発泡スチロールフレーク、尿素ホルムアルデヒド発泡樹脂、ポリウレタン発泡体、フェノール樹脂発泡体、及びそれらの任意の組み合わせ等)。
【0039】
本発明は、さらに、布を着色するプロセスで使用するための、少なくとも1つの培養微細藻類を含む組成物を提供する。ある実施形態では、布は、織布、不織布、編地、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0040】
ある他の実施形態では、本発明の組成物は、抗刺激物質、抗菌性物質、ビタミン、防腐剤、抗炎症剤、酸化防止剤、防腐物質、軟化剤から選択されるさらなる物質を少なくとも1つをさらに含む。
【0041】
ある実施形態では、布は、衣服の作製に使用される。他の実施形態では、布は、医療用布の作製に使用される(例えば、包帯、創傷被覆材、ギブス成形、圧迫創傷被覆材、衛生ナプキン、生理用ナプキン、バーンドレッシング(burn dressing)等)。ある実施形態では、布は、着用可能な医療用デバイスの作製に使用される。
【0042】
本発明は、少なくとも1つの培養微細藻類を、少なくとも1つの媒染剤(固着剤)、及び、任意選択で少なくとも1つの酵素、少なくとも1つの湿潤剤、少なくとも1つの結合剤(染色バインダ)、増粘剤、及びそれらの任意の組み合わせのうち少なくとも1つと混合するステップを含む、前述した請求項のいずれか1つの項に記載の組成物を調製するための方法をさらに提供する。
【0043】
さらなる態様では、本発明は、本発明の組成物を含む繊維を提供する。さらなる態様では、本発明は、本発明の組成物を含む布を提供する。
【0044】
実験セクション
【0045】
培養微細藻類:チノリモ属の種の紅微細藻類。該微細藻類は、特許文献1に開示されたような管理条件下で培養され、(液体状、冷凍バイオマス形状、又は粉末状のいずれかの)バイオマスとして提供された。
【0046】
セルロースベースの繊維に対する染色組成物の調製
【0047】
400mlの培養微細藻類バイオマスを200mlの蒸留水と混合した。12gのタンニン酸(媒染剤)を混合液に添加した。
【0048】
染色に向けたセルロースベースの布の準備
【0049】
カチオン化溶液:200mlの水と、1.2gのAVCOPRET Ultra Catとの混合液。
【0050】
カチオン化プロセス:カチオン化溶液を布試料(20gのモーダル、竹、又はコットン等のセルロースベースの布)と共に容器に入れ、50℃のオーブンで20分加熱した。その50分後、布を容器から取り出した。
【0051】
セルロースベースの布に対する染色プロセス
【0052】
本プロセスは、1リットル容器内で行われる。カチオン化プロセスによって調製された20gの布を含む容器に、600mlの染色組成物を添加した。
【0053】
容器を80℃のオーブンに30分以上入れた。30分後、オーブンを止めた。容器を開け、布の小片を取り出した。試料の色はピンクであった。次に、容器を98℃のオーブンに、追加で20分入れた。オーブンを止め、他の布資料を取り出した。それはベージュ/茶色であった。布を容器から取り出した後、布を乾燥した。
【0054】
人工布に対する染色組成物の調製
【0055】
布:ナイロン-セミダル
【0056】
材料:酵素-AVCO、Zim und3548、媒染剤-タンニン酸、バイオマス-紅微細藻類、バイオマス-緑/藍微細藻類。微細藻類は、特許文献1に開示されたような管理条件下で培養された。
【0057】
8種類の組成物を調製した。
【0058】
組成物1:紅色バイオマス(50ml)、酵素(50ml)、水(100ml)
組成物3:紅色バイオマス(50ml)、酵素無し、水(100ml)
組成物5:緑/藍色バイオマス(50ml)、酵素(50ml)、水(100ml)
組成物7:緑/藍色バイオマス(50ml)、酵素無し、水(100ml)
組成物2:紅色バイオマス(50ml)、酵素(50ml)、媒染剤(50ml)、水(100ml)
組成物4:紅色バイオマス(50ml)、酵素無し、媒染剤(50ml)、水(100ml)
組成物6:緑/藍色バイオマス(50ml)、酵素(50ml)、媒染剤(50ml)、水(100ml)
組成物8:緑/藍色バイオマス(50ml)、酵素無し、媒染剤(50ml)、水(100ml)
【0059】
それぞれの組成物を、布試料と共に容器に入れ、98℃のオーブンに120分入れた。オーブン処理が終わったら、布試料を容器から取り出し、2回(40℃の温水で10分、及び水道の冷水で10分)洗浄した。次に、布試料を洗濯機で回転洗浄した。図1に着色結果を示す。以下の表1に、その結果を記載した。
【0060】
【表1】
【0061】
上記の表から理解できるように、媒染剤が添加された組成物によって、洗い流されない安定した色を着色された布が提供されている。
【0062】
布にプリントするための着色組成物の調製
【0063】
材料-(特許文献1に開示されたような管理条件下で培養された)紅微細藻類のバイオマス(冷凍)、酵素:AVCO-Zim und 3548、水:蒸留水、バインダ:Avcobinder D、固定器:UP.繊維-洗濯機で洗浄後のモーダル、コットン-P.G.76/68 677327
【0064】
30gの冷凍バイオマスを溶解し、125mlの水、15mlの酵素と混合した。混合液を40℃で5分攪拌した。混合物に48mlのバインダと、3mlの安定剤とを添加した。
【0065】
組成物をハンドプリント(hand printing)で布に適用し、プリントした布を温風で乾燥させた。それぞれのプリントした布を、120℃に暖められたオーブンで2時間加熱した。
図1