IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7177787センサ用途向けレーザービーム透過性基材材料
<>
  • 特許-センサ用途向けレーザービーム透過性基材材料 図1
  • 特許-センサ用途向けレーザービーム透過性基材材料 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】センサ用途向けレーザービーム透過性基材材料
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20221116BHJP
   B60R 19/52 20060101ALI20221116BHJP
   B62D 29/04 20060101ALI20221116BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221116BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20221116BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20221116BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20221116BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
G01S7/481 A
B60R19/52 C
B62D29/04 Z
C08K3/04
C08K3/22
C08K5/18
C08L33/12
C08L69/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019557618
(86)(22)【出願日】2018-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2018060306
(87)【国際公開番号】W WO2018197398
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】17167701.6
(32)【優先日】2017-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ、グロッサー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス、クライン
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-267023(JP,A)
【文献】特開平07-280939(JP,A)
【文献】特開2004-198617(JP,A)
【文献】特表2016-507607(JP,A)
【文献】特開2015-081769(JP,A)
【文献】特開2013-148393(JP,A)
【文献】特開平07-099339(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006022925(DE,A1)
【文献】英国特許出願公開第02287817(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
B60R 19/00 - 19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
a)800~2500nmの範囲の波長を有するレーザーパルスを放出するLiDARセンサ、ならびにb)芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、および/またはポリメチルメタクリレートをベースとする熱可塑性組成物で作られた領域を含んでなる基材層を有する、前記LiDARセンサを部分的または完全に囲むカバーを含んでなり、
前記組成物が、DIN ISO13468-2:2006(D65、10°)に従って4mmの層厚で測定して25.0%未満の380~780nmの範囲の光透過率を有し、 そのそれぞれの厚さの前記熱可塑性組成物で作られた前記基材層の前記領域が、DIN ISO13468-2:2006に従って測定して少なくとも40%の800nm~2500nmの範囲のIRに対する透過率を有し、
前記基材層の前記熱可塑性組成物が、
i)少なくとも70重量%の、芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、および/またはポリメチルメタクリレートからなる群からの熱可塑性ポリマー、ii)式(1)、(2a~c)、(3)、(4a)、(4b)、(5)、および/または(6)の着色剤からなる群より選択される少なくとも1つの緑色および/または1つの青色着色剤、
【化1】
〔式中、
-RcおよびRdは、互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲンを表し、-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルが水素である〕
【化2】
iii)式(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12a)、(12b)、および/または(13)の着色剤からなる群より選択される少なくとも1つの赤色および/または紫色着色剤、
【化3】
〔式中、Rは、Hおよびp-メチルフェニルアミンラジカルからなる群より選択される〕
【化4】
〔式中、
-RaおよびRbは、互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲンを表し、-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルが水素である〕
【化5】
iv)任意選択で、式(14)、(15)、(16)、(17)、および/または(18)の黄色およびオレンジ色の着色料からなる群より選択される1つまたは複数の更なる着色剤、
【化6】
を含有し、
前記着色剤ii)~iv)の合計が>0.05重量%であり、
前記組成物が、
0%~30.0重量%未満の更なる熱可塑性ポリマーおよび
0%~0.02重量%未満のカーボンブラック
を含有し、
前記組成物が、ii)~iv)の着色剤の群にくわえて、
0.1重量%未満の更なる着色剤および
0.1重量%未満の二酸化チタン
を含有し、
前記熱可塑性組成物で作られた前記基材層の前記領域の厚さが1.0~7.0mmである、車両。
【請求項2】
前記基材層の前記熱可塑性組成物が、0.0005重量%未満のカーボンブラックを含有する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記組成物がカーボンブラックを含有しない、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記熱可塑性組成物の着色剤ii)~iv)の合計が、基材層が少なくとも0.10重量%である、請求項のいずれか一項に記載の車両。
【請求項5】
前記組成物が更なる熱可塑性ポリマーを含有しない、請求項1~のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記組成物が0.1重量%未満の白色顔料を含有する、請求項のいずれか一項に記載の車両。
【請求項7】
成分i)、ii)、iii)、および任意選択でiv)、カーボンブラック、更なる熱可塑性ポリマー、および/またはii)~iv)の着色剤の群とは異なる着色剤に加えて、前記基材層の前記組成物が、
v)任意選択で、熱安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、および/または流動性向上剤を除いて更なる成分を含有しない、請求項のいずれか一項に記載の車両。
【請求項8】
車両であって、
a)800~2500nmの範囲の波長を有するレーザーパルスを放出するLiDARセンサならびにb)基材層を有する前記LiDARセンサを部分的または完全に囲むカバー
を含んでなり、
前記基材層が、DIN ISO13468-2:2006(D65、10°)に従って4mmの層厚で測定して0.1%未満の380~780nmの範囲の光の透過率を有する熱可塑性組成物で作られる領域を含んでなり、かつそのそれぞれの厚さの前記基材層の前記領域が、DIN ISO13468-2:2006に従って測定して少なくとも50%の800nm~2500nmの範囲のIRに対する透過率を有し、
前記組成物が、
i)少なくとも85重量%、芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、および/またはポリメチルメタクリレートからなる群より選択される熱可塑性ポリマー、ii)式(1)、(2a~c)、(3)、(4a)、(4b)、(5)、および/または(6)の着色剤からなる群より選択される少なくとも1つの緑色および/または1つの青色着色剤、
【化7】
〔式中、
-RcおよびRdは、互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲンを表し、-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルが水素である〕
【化8】
ならびに
iii)式(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12a)、(12b)、および/または(13)の着色剤からなる群より選択される少なくとも1つの赤色および/または紫色着色剤、
【化9】
〔式中、Rは、Hおよびp-メチルフェニルアミンラジカルからなる群より選択される〕
【化10】
〔式中、
-RaおよびRbは、互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲンを表し、-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルが水素である〕
【化11】
iv)式(14)、(15)、(16)、(17)、および/または(18)の着色剤からなる群より選択される任意選択で更なる着色剤、
【化12】
v)任意選択で、熱安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、および/または流動性向上剤、vi)0%~30.0重量%未満の更なる熱可塑性ポリマー、
vii)0%~0.02重量%未満のカーボンブラック、
0.1重量%未満の更なる着色剤、および
0.1重量%未満の二酸化チタン
からなり、
着色剤ii)~iv)の合計が>0.10重量%であり、
前記熱可塑性組成物で作られた前記基材層の前記領域の厚さが、1.0~6.0mmである、車両。
【請求項9】
前記組成物が0%~5.0重量%未満の更なる熱可塑性ポリマーを含有する、請求項1~またはのいずれか一項に記載の車両。
【請求項10】
前記熱可塑性組成物で作られた前記基材層の前記領域の厚さが2mm~4mmである、請求項1~のいずれか一項に記載の車両。
【請求項11】
1つまたは複数の側面に任意選択で存在する前記基材層および耐擦傷性コーティングにくわえて、前記カバーが更なる層を含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載の車両。
【請求項12】
前記カバーが、フロントパネル、リアパネル、バンパー、ラジエーターグリル、車両ルーフ、車両ルーフモジュール、または車両側要素である、請求項1~11のいずれか一項に記載の車両。
【請求項13】
芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、および/またはポリメチルメタクリレートをベースとする熱可塑性組成物で作られた領域を含んでなる基材層を有し、前記基材層のこの領域の厚さが1.0~7.0mmである成形物の、800~2500nmの範囲の波長を有するレーザーパルスを放出するLiDARセンサを部分的または完全に覆うための使用であって、
前記組成物が、DIN ISO13468-2:2006(D65、10°)に従って4mmの層厚で測定して25%未満の380~780nmの範囲の光の透過率を有し、そのそれぞれの厚さの前記熱可塑性組成物で作られた前記基材層の前記領域が、DIN ISO13468-2:2006に従って測定して少なくとも50%の800nm~2500nmの範囲のIRに対する透過率を有し、
前記組成物が、
i)少なくとも70重量%の、芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、および/またはポリメチルメタクリレートからなる群からの熱可塑性物質、ii)式(1)、(2a~c)、(3)、(4a)、(4b)、(5)、および/または(6)の着色剤からなる群より選択される少なくとも1つの緑色および/または1つの青色着色剤、
【化13】
〔式中、
-RcおよびRdは、互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲンを表し、-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルが水素である〕
【化14】
ならびに
iii)式(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12a)、(12b)、および/または(13)の着色剤からなる群より選択される少なくとも1つの赤色および/または紫色着色剤、
【化15】
〔式中、RがHおよびp-メチルフェニルアミンラジカルからなる群より選択される〕
【化16】
〔式中、
-RaおよびRbは、互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲンを表し、-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルが水素である〕
【化17】
iv)任意選択で、式(14)、(15)、(16)、(17)、および/または(18)の黄色およびオレンジ色の着色料からなる群より選択される1つまたは複数の更なる着色剤、
【化18】
を含有し、
着色剤ii)~iv)の合計が>0.05重量%であり、 前記組成物が、0%~30.0重量%未満の更なる熱可塑性ポリマー、0%~0.02重量%未満のカーボンブラック、ii)~iv)の着色剤の群にくわえて、0.1重量%未満の更なる着色剤および0.1重量%未満の白色顔料を含有する、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、800nm~2500nmの範囲の波長を有するレーザーパルスを放出するLiDARセンサおよびそのLiDARセンサ用の熱可塑性組成物で作られたカバーを含んでなる車両に関する。本発明はさらに、800nm~2500nmの範囲の波長を有するレーザーパルスを放出するLiDARセンサを部分的または完全に覆うための熱可塑性組成物で作られた領域を含む基材層を有する成形体の、周囲状況を走査する(scanning)ための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性材料をベースとする部品は、例えば自動車部門で使用されるガラスなどの従来の材料に比べて多くの利点を提供する。これらの利点としては、例えば耐破壊性の向上および/または軽量化が挙げられ、それによって、自動車の場合、道路交通事故での乗員の安全性を向上させ、燃料消費を少なくすることができる。最後に、熱可塑性ポリマーを含有する材料は、その容易な成形性のために、設計の自由度を大幅に向上させることを可能にする。
【0003】
緊急ブレーキアシスタント、車線逸脱警告システム、交通標識認識システム、適応速度制御システム、および距離制御などのドライバー支援システムが知られており、現在の車両で採用されている。列挙された機能を実装するために、一般にレーダー、LiDAR、およびカメラセンサーに基づく周囲検出センサが使用される。本発明に記載の基材材料は、特にLiDARセンサに適している。
【0004】
LiDAR(光検出と測距(light detection and ranging)の略)またはLaDAR(レーザー検出と測距(laser detection and ranging))は、レーダーに関連する光学距離と速度の測定の方法である。レーダーでは電波の代わりにレーザービームが使用される。
【0005】
ドライバー支援システムの分野において、特に車間距離制御装置(ACC)向けにレーダーセンサーが確立されてきた。車線逸脱アシスタント、渋滞アシスタント、死角監視、ジャンクションアシスタント、プリクラッシュセンサーシステムなどの更なるシステムは、大きな水平検出ゾーン(最大180°)を確保しつつ、良好な角度分解能も有し、<20m未満の近距離カバレッジを提供し、データの繰り返し率が高く、生産するのに費用対効果が高いセンサを必要とする。LiDARセンサシステムはそれらの用途に適している。
【0006】
本発明の目的は、800~2500nmの波長の範囲で動作するLiDARセンサと車両の周辺監視に使用される熱可塑性基材材料で作られた好適なカバーの組み合わせを含んでなる車両/車両用装置を提供することである。
【0007】
熱可塑性材料は一般的に赤外線を透過するため、それらの材料は原則としてそのようなセンサシステムに適しているはずである。しかし、驚くべきことに、自動車の外側に採用されている従来の熱可塑性プラスチックのほとんどは、そのようなセンサに適していない。したがって、多くの熱可塑性プラスチックでは、1mm未満の薄い壁厚でさえ、LiDARセンサの信号強度を著しく低下させ、その結果そのようなシステムに適さないことが示された。それらの例としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ABS、PC/ABS混合物、および自動車の外装で一般的に使用される他の熱可塑性材料が挙げられる。これは驚くべきことであり、入手可能な先行技術から導き出すことはできなかった。しかし、特に色の濃い材料で作られたカバーは、LiDARセンサをその後ろに隠すことができうるので、興味深いものであった。
【0008】
先行技術には、原則として電磁波に対する透過性を示すさまざまな熱可塑性システムが記載されている。
【0009】
CN105400189Aには、ポリウレタンポリエステル系をベースとするレーザー光線透過性不透明基材材料が記載されている。これらのポリウレタンポリエステルをベースとするシステムおよびレーザービームに適した特別な着色剤の組み合わせが特定されている。そのような組成物は、特にレーザー溶接に適している。ポリカーボネートをベースとする基材材料は記載されていない。センサに適した基材材料も同様に記載されていない。
【0010】
国際公開第2016/037865A1号には、ガラス様の外観をもつ自動車の外装部品が記載されている。LiDARシステムに適した基材材料は、そこには記載されていない。
【0011】
国際公開第2008/12775A1号には、自動車用のレーダーセンサーが記載されている。しかし、これらのセンサは20~25GHzの範囲で動作し、IR領域のレーザー援用システムに適した基材材料について結論を引き出すことはできない。
【0012】
国際公開第2008/149093A1号には、特にLiDARセンサに適した積層および着色ガラスシステムが記載されている。ポリカーボネート組成物中の顔料は、レーザービーム透過性を著しく妨げることが示された。したがって、ポリカーボネートをベースとする基材材料の解決策はこの文献から導き出すことができない。
【0013】
国際公開第2007/131491A2号には、隠しセンサを含んでなる車両構成部品が記載されている。該出願では、そのような構成部品、特にセンサのホルダーの構造が記載されている。ポリカーボネート含有基材材料の特別な組成は記載されていない。
【0014】
欧州特許出願公開第1772667A2号には、隠された光学部品を含んでなるプラスチック構成部品が記載されている。そこでは、プラスチック構成部品は光学部品を隠しているが、関連する放射線に対して透明または半透明である。これを実現するために、基材は光輝性顔料が含有している。そのような顔料は、散乱を引き起こすので、レーザー援用システムには適していない。
【0015】
特開第2003-004942A号には、異なる屈折率を有する材料の様々な層(piles)からなる多層物品が記載されている。これらのシステムは赤外線を透過する。しかし、レーザー援用IRセンサのカバーの材料には、著しく高い要求が課される。レーザー援用センサは記載されていない。
【0016】
米国特許出願公開第2016/0291134A1号には、自動/半自動運転のための自動車部門でのLiDARセンサの使用が報告されている。この文献では、LiDARセンサを覆うまたは収容するのに適した基材材料について詳しく述べられていない。
【0017】
よって、先行技術には、熱可塑性基材で作られたIR透過性システムが記載されている。このような基材は、例えば赤外線カメラやレーザー溶接に適している。しかし、IR範囲で動作するレーザー援用センサシステムは著しく高い感度を有するので、それらの先行技術から作用の教示はない。したがって、わずかな散乱によってセンサシステムにエラーが発生し、対応する基材材料が使用できなくなる。さらに、IRに対する透過性を示す非常に多くの基材材料は、LiDARセンサには適さないことが示された。さらに、明らかに先行技術は、正確なポリカーボネート組成について詳しく述べておらず、したがって当業者はそれらから情報を得てLiDARセンサに適したポリカーボネート含有基材材料を形成することができない。
【0018】
したがって、自動車、鉄道車両、および航空機の外装部品などに使用でき、LiDARセンサを介した車両の周辺監視に適した不透明な熱可塑性材料、特に芳香族ポリカーボネートをベースにしたものは記載されていない。
【0019】
自動車、鉄道車両、航空機部門、またはインフラ部門で使用される熱可塑性材料で作られた自動車外装部品はまた、理想的には長い耐用年数を有し、その耐用年数中に脆化すべきではなく、すなわちそれらは、可能な限り最大の耐候安定性を有するべきである。色と表面(光沢効果)が受ける変化は、可能な限りわずかなもののみであるべきである。熱可塑性部品はまた理想的には十分な耐擦傷性を示すべきである。
【発明の概要】
【0020】
したがって、本発明の目的は、好適な熱可塑性基材材料で作られた好適なカバーと、800nm~2500nmのIR範囲で動作するLiDARセンサとの周囲監視のための組み合わせを含んでなる、対応する車両を提供することである。さらに、理想的には、更なる上記の要件の少なくとも1つが満たされること/欠点が克服されることが意図されている。
【0021】
今般、驚くべきことに、その目的は、
a)800~2500nmの範囲の波長を有するレーザーパルスを放出するLiDARセンサおよび
b)芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、もしくはポリメチルメタクリレートをベースとする熱可塑性組成物で作られた領域を含んでなる基材層を有する、LiDARセンサを部分的または完全に囲むカバー
を含んでなり、
組成物は、DIN ISO13468-2:2006(D65、10°)に従って4mmの層厚で測定して380~780nmの範囲の光の透過率が、25.0%未満、好ましくは最大で20%、より好ましくは5.0%未満、特に好ましくは1.0%未満、非常に特に好ましくは0.1%未満であり、
そのそれぞれの厚さの熱可塑性組成物で作られた基材層の領域は、DIN ISO13468-2:2006(この規格に基づき、記載の波長範囲を使用)に従って測定して800nm~2500nmの範囲のIRに対する透過率が、少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%、特に好ましくは少なくとも50%、とりわけ好ましくは55%超である
システムによって、
またはそのようなシステムを含んでなる車両によって
達成されることが見出された。
【発明の具体的説明】
【0022】
「システム」はここでは、個々の部品を機械的に接合したパッケージという狭い意味だけでなく、(単に)機能的な意味で接合してユニットを形成した個々の部品の単なる組み合わせとしてより広く使用される。LiDARセンサは、それぞれの車両に個々に設置でき、カバーは、LiDARセンサのパルスが通過することが意図される車両の所望の位置に設けられる。機械的に接合された組み合わせも同様に該当しうる。
【0023】
ここで「をベースとする」とは、組成物がこのポリマーを主成分として、いずれの場合にも熱可塑性組成物の組成物全体に対して、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも84重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%の割合でそれぞれのポリマーを含むことを意味すると理解されるべきである。
【0024】
「800nm~2500nmの範囲の透過率」とは、この範囲のすべての波長で平均化された、この範囲の平均透過率を意味すると理解されるべきである。
【0025】
「カバー」または「カバーの使用」とは、本発明によれば、記載の熱可塑性組成物で作られた、または記載の熱可塑性組成物で作られたサブ領域を含んでなるカバーが、LiDARセンサの前に配置されて、衝撃、汚れなどからそれを保護するように使用されることを意味すると理解される。したがって、本発明の意味の範囲内のカバーは、ケーブルダクトなどとは別に、完全にまたは実質的に完全にLiDARセンサを包含する筐体でありうる。そのような筐体とLiDARセンサの組み合わせは、同様に、車両の上位概念のシステムにくわえて、本発明の主題対象の一部を形成する。好ましいと記載されたすべての実施形態および構成は、この組み合わせのみにも適用されることが理解されるであろう。しかし、同様に、カバーは、好ましくは車両の外板として、車両の外板の方向でLiDARセンサの前に配置される唯一の要素でありうる。そのようなカバーは、例えばフロントパネルまたはバンパー、好ましくはフロントパネルである。本発明によれば、フロントパネルは、車体外殻の一部として前部領域で車両に取り付けられた車体部分を意味すると理解されるべきである。これは、車両の前部の形成可能な構成部品または車両の前部に取り付けられる設計部品でありうる。さらに、「フロントパネル」は、例えばラジエーターグリルの代替品を意味するものとして理解されるべきである。新しいモビリティ方式、例えばエレクトロモビリティの結果として、多数の開口部で構成されるラジエーターグリルはもはや不要である。したがって、フロントパネルは、自己完結型(self-contained)フロントカバーまたは予備(occasional)通風スロットのみを含んでなりうる車体部品で、設計上の理由のためだけにラジエーターグリルの外観を保持し、さまざまな機能を組み合わせた車体部分であることが好ましい。そのような構成部品は、シームレスに一体化することができ、したがって、フロントウィング、ボンネット、および任意選択で他の車体部分の間の一体化された設計を可能にする。熱可塑性組成物で作られたカバーの領域は、周囲の検出のためにLiDARセンサのレーザーパルスが通過する部品である。さらに、本発明によるカバーとしては、サイドパネル、例えばドア部品、または後部に取り付けられた任意の必要な横センサ(lateral sensors)またはセンサを覆うことができるリアパネルが挙げられる。
【0026】
「熱可塑性組成物で作られた領域を含んでなる基材層」は、基材層のかなりの部分、つまりLiDARセンサの前に配置された部分は、すなわち車両の周囲に関してLiDARセンサを覆い、かかる熱可塑性組成物で作られており、つまり基材層はそのような熱可塑性組成物で作られた領域を含んでなるという意味として理解されるべきであり、そこにおいて、その領域はLiDARセンサの前、すなわちLiDARセンサの信号パルスが通過する領域に配置される。しかし、基材層はまた、本発明による特徴を有さない別の熱可塑性組成物で作られた他のサブ領域を含んでなることもできる。例えばフロントパネルの場合、これらの領域は、例えば黒、すなわち不透明ではなくむしろ透明であるヘッドライトカバー用である。そのようなカバーは、特に二成分または多成分射出成形法で生産可能である。同様に、カバーは、本発明による特徴を有する異なる組成物で作られたサブ領域を含んでなることができる。しかし、本発明によれば、基材層が熱可塑性組成物で作られている場合が好ましい。
【0027】
「最大で(Up to)」は、記載の値を含むと理解されるべきである。したがって、「最大で20%」には「20%」も含んでなり、同様にして、丸め範囲にある値、例えば「20.3%」も含んでなる。
【0028】
「そのそれぞれの厚さの熱可塑性組成物で作られた領域の基材層は...のIRに対する透過率を有する」は、それぞれの成形品のIR透過率が決定されることを意味すると理解されるべきである。ここでは、800~2500nmの範囲のIRに対する構成部品の実際の透過性が考慮される。
【0029】
記載の熱可塑性組成物は、LiDARセンサのレーザーパルスに対して十分な透過性がある。
【0030】
本発明によれば、好ましいのは、
車両であって、
a)800~2500nmの範囲の波長を有するレーザーパルスを放出するLiDARセンサ、および
b)芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、および/またはポリメチルメタクリレートをベースとする熱可塑性組成物で作られた領域を含んでなる基材層を有するLiDARセンサを部分的または完全に囲むカバー
を含んでなり、
組成物が、DIN ISO13468-2:2006(D65、10°)に従って4mmの層厚で測定して、最大で20%、好ましくは5.0%未満、より好ましくは1.0%未満、さらにより好ましくは0.1%未満の380~780nmの範囲の光の透過率を有し、
かつ、そのそれぞれの厚さの熱可塑性組成物で作られた基材層の領域が、DIN ISO13468-2:2006に従って測定して、少なくとも50%の、800nm~2500nmの範囲のIRに対する透過率を有し、
かつ、熱可塑性組成物が、
i)少なくとも70重量%の、芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、および/またはポリメチルメタクリレートからなる群からの熱可塑性ポリマー、
ii)式(1)、(2a~c)、(3)、(4a)、(4b)、(5)、および/または(6)の着色剤からなる群より選択される少なくとも1つの緑色および/または1つの青色着色剤、
【化1】
【化2】
〔式中、
-RcおよびRdは、互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲンを表し、
-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルが水素である〕
【化3】
ならびに
iii)式(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12a)、(12b)、および/または(13)の着色剤からなる群より選択される少なくとも1つの赤色および/または紫色着色剤、
【化4】
〔式中、Rは、Hおよびp-メチルフェニルアミンラジカルからなる群より選択される〕
【化5】
〔式中、
-RaおよびRbは、互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲンを表し、
-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルが水素である〕
【化6】
iv)任意選択で、式(14)、(15)、(16)、(17)、および/または(18)の着色剤からなる群より選択される更なる着色剤、
【化7】
【化8】
ならびに0%~30.0重量%未満、好ましくは20.0重量%未満、より好ましくは10.0重量%未満、特に好ましくは5.0重量%未満の更なる熱可塑性ポリマー
ならびに0%~0.02重量%未満、好ましくは0.0005重量%未満のカーボンブラック、
0.1重量%未満の更なる着色剤-ii)~iv)の着色剤の群とは異なる着色剤-および0.1重量%未満の二酸化チタン、好ましくは全部で0.1重量%未満の白色顔料、
を含有し、
熱可塑性組成物中の着色剤ii)、iii)、および任意選択でiv)の合計が>0.005重量%、好ましくは>0.05重量%であり、
熱可塑性組成物で作られた基材層の領域の厚さが、1.0~7.0mm、好ましくは1.5~6.0mm、より好ましくは2~4mm、特に好ましくは2.0~4.0mmである、車両である。
【0031】
特に好ましいのは、
車両であって、
a)800~2500nmの範囲の波長を有するレーザーパルスを放出するLiDARセンサならびに
b)基材層および任意選択で保護層、特に耐擦傷性コーティングを有するLiDARセンサを部分的または完全に囲むカバー
を含んでなり、
基材層が、DIN ISO13468-2:2006(D65、10°)に従って4mmの層厚で測定して、5.0%未満、より好ましくは1.0%未満、さらにより好ましくは0.1%未満の、380~780nmの範囲の光の透過率を有する熱可塑性組成物で作られた領域を含んでなり、
そのそれぞれの厚さの熱可塑性組成物で作られた基材層の領域が、DIN ISO13468-2:2006に従って測定して、少なくとも50%の、800nm~2500nmの範囲のIRに対する透過率を有し、
かつ、熱可塑性組成物が、
i)少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の、芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、および/またはポリメチルメタクリレートからなる群からの熱可塑性ポリマー、より好ましくは芳香族ポリカーボネート、
ii)式(1)、(2a~c)、(3)、(4a)、(4b)、(5)、および/または(6)の着色剤からなる群より選択される少なくとも1つの緑色および/または1つの青色着色剤、
【化9】
〔式中、
-RcおよびRdは、互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲンを表し、
-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルが水素である〕
【化10】
ならびに
iii)式(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12a)、(12b)、および/または(13)の着色剤からなる群より選択される少なくとも1つの赤色および/または紫色着色剤、
【化11】
【化12】
〔式中、Rは、Hおよびp-メチルフェニルアミンラジカルからなる群より選択される〕
【化13】
〔式中、
-RaおよびRbは、互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲンを表し、
-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルが水素である〕
【化14】
iv)任意選択で、式(14)、(15)、(16)、(17)、および/または(18)の着色剤からなる群より選択される更なる着色剤、
v)任意選択で、好ましくは0%~10重量%、より好ましくは0%~3重量%の量で、熱安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、および/または流動性向上剤、
vi)0%~30.0重量%未満、より好ましくは0%~5.0重量%未満の更なる熱可塑性ポリマー、
vii)0%~0.02重量%未満、より好ましくは0.0005重量%未満のカーボンブラック、
0.1重量%未満の更なる着色剤-ii)~iv)の着色剤の群とは異なる-および0.1重量%未満の白色顔料、
からなり、
着色剤ii)~iv)の合計が>0.05重量%、より好ましくは≧0.10重量%、さらにより好ましくは>0.12重量%であり、
熱可塑性組成物で作られた基材層の領域の厚さが、1.0~6.0mm、好ましくは2~4mm、より好ましくは2.0~4.0mmである、車両である。
【0032】
非常に特に好ましいのは、
車両であって、
a)800~2500nmの範囲の波長を有するレーザーパルスを放出するLiDARセンサならびに
b)基材層および任意選択で保護層、特に耐擦傷性コーティングを有するLiDARセンサを部分的または完全に囲むカバー
を含んでなり、
基材層が、DIN ISO13468-2:2006(D65、10°)に従って4mmの層厚で測定して0.1%未満の、380~780nmの範囲の光の透過率を有する熱可塑性組成物で作られた領域を含んでなり、
そのそれぞれの厚さの基材層の領域が、DIN ISO13468-2:2006に従って測定して、少なくとも50%の、800nm~2500nmの範囲のIRに対する透過率を有し、
熱可塑性組成物が、
i)少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の、芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、および/またはポリメチルメタクリレートからなる群からの熱可塑性ポリマー、より好ましくは芳香族ポリカーボネート、
ii)式(1)、(2a~c)、(3)、(4a)、(4b)、(5)、および/または(6)の着色剤からなる群より選択される少なくとも1つの緑色および/または1つの青色着色剤、
【化15】
【化16】
〔式中、
-RcおよびRdは、互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲンを表し、
-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルが水素である〕
【化17】
ならびに
iii)式(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12a)、(12b)、および/または(13)の着色剤からなる群より選択される少なくとも1つの赤色および/または紫色着色剤、
【化18】
〔式中、Rは、Hおよびp-メチルフェニルアミンラジカルからなる群より選択される〕
【化19】
〔式中、
-RaおよびRbは、互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲンを表し、
-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルが水素である〕
【化20】
iv)任意選択で、式(14)、(15)、(16)、(17)、および/または(18)の着色剤からなる群より選択される更なる着色剤、
v)任意選択で、好ましくは0%~3重量%の量で、熱安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、および/または流動性向上剤、
vi)0%~30.0重量%未満、好ましくは0%~5.0重量%未満の更なる熱可塑性ポリマー、
vii)0%~0.02重量%未満、より好ましくは0%~0.0005重量%未満、のカーボンブラック、
0.1重量%未満の更なる着色剤-ii)~iv)の着色剤の群とは異なる-および0.1重量%未満の二酸化チタン
からなり、
着色剤ii)~iv)の合計が>0.10重量%、さらにより好ましくは>0.12重量%であり、
かつ、熱可塑性組成物で作られた基材層の領域の厚さが、1.0~6.0mm、好ましくは2~4mm、より好ましくは2.0~4.0mmである、車両である。
【0033】
耐擦傷性コーティングの構成は、LiDARセンサの放射に対するカバーの透過性を大幅に低下させないようなものである。「有意ではない」とは、DIN ISO13468-2:2006に従って測定して、カバーを通過してきた800nm~2500nmの範囲のレーザーIR放射の強度が、耐擦傷性コーティングのない同じカバーと比較して、最大で8%、好ましくは最大で5%、特に好ましくは最大で2%減少することを意味すると理解されるべきである。耐擦傷性コーティングの代わりに、またはそれに加えて、基材層に更なる層がさらに存在する場合、これらの層は全部で、任意選択で1つまたは複数の耐擦傷性コーティングとともに、DIN ISO13468-2:2006に従って測定して、カバーを通過してきた800nm~2500nmの範囲のレーザーIR放射の強度が、耐擦傷性コーティングのない同じカバーと比較して、最大で8%、好ましくは最大で5%、特に好ましくは最大で2%減少する結果になることが好ましい。
【0034】
更なる好ましい実施形態に関しては、他の箇所で説明されている特徴が適用される。
【0035】
本発明はまた、芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、またはポリメチルメタクリレートをベースとする熱可塑性組成物で作られた領域を含んでなり、厚さが1.0~7.0mm、好ましくは1.0~6.0mmである基材層を有する成形品の使用を提供し、そこにおいて、組成物は、DIN ISO13468-2:2006(D65、10°)に従って4mmの層厚で測定して380~780nmの範囲の光透過率が25.0%未満、好ましくは最大で20%、より好ましくは5.0%未満、さらにより好ましくは1.0%未満、特に好ましくは0.1%未満であり、そのそれぞれの厚さの熱可塑性組成物で作られた基材層の領域は、800~2500nmの範囲の波長を有するレーザーパルスを放出するLiDARセンサを部分的または完全に覆うために、DIN ISO13468-2:2006に従って測定して800nm~2500nmの範囲のIRに対する透過率が少なくとも50%である。
【0036】
車両に好ましいと記載されている特徴の変形形態も同様にして、記載の使用に適用されることが理解されるであろう。
【0037】
カバー、特に基材層が黒い色感を与える場合が好ましい。色付きカバー、すなわち例えば赤、緑、または青色のカバーも原則として実現可能である。
【0038】
記載の組成物で作られた、または記載の組成物で作られた領域を含んでなるカバーはまた、これらの領域で以下の良い(positive)特性を示す。
-ガラス様の外観;
-車両の重量をできるだけ低く保つために重要である、鋼鉄やガラスに比べて重量が軽い;
-それらのカバーは、車両乗員の安全性および他の道路利用者、特に歩行者の安全性に関する要件を満たし、特に十分な弾力性と変形性を示すだけでなく、分裂の傾向も低い;
-それらのカバーは、車両とその乗員、および外部環境の両方の機能を著しく損なうことなく、電気的、電子的、光電子的、光学的機能要素を統合することができる;
-それらのカバーは、車両とその乗員、および外部環境の両方の機能を著しく損なうことなく、電気的、電子的、光電子的、光学的機能要素を覆うことができる;
-それらのカバーは、魅力的なデザイン、特に途切れのないシームレスなデザインを有することができ、理想的に2次元、好ましくはすべて3次元で形成されている;
-それらのカバーは、簡単な方法で、特に可能な限り少ない製造工程で生産でき、特に、製造工程はすべて、1つの金型に少なくともいくつかの機能要素を統合して実現でき、あとに続く機能要素の取り付けと封止作業は省略することができる;
-それらのカバーは、LiDARセンサの前に記載の熱可塑性組成物を含む領域と、LiDARセンサの前にない他の熱可塑性組成物を含む領域でオーバーモールドに供することができる;
-それらのカバーは、少なくとも車両の外側に面する部分に、環境の影響、例えば風化などだけでなく石の衝撃にも耐える魅力的な表面を有する。
【0039】
さらに、そのようなカバーは非常に容易に製造可能であり、すべての製造工程は、1つの金型に機能要素を統合して実現でき、あとに続く機能要素の取り付けと封止作業は省略することができる。
【0040】
LiDARセンサにくわえて、更なる機能的な要素や装置を覆うこと、例えば駐車支援としての距離センサ、例えばボンネットを開くことができる例えばモーションセンサ、照明ストリップ、ヘッドライト、インジケーター、カメラ、およびディスプレイを覆うことができる。上記のように、カバーおよび基材層も、この目的のために透明な領域を含んでなることができる。さらに、この解決策は、原理上、レーダー援用センサにも好適である。
【0041】
本発明によれば、「車両」は、商品および/または人の輸送のすべての手段、すなわち陸上艇(landcraft)、船舶、および航空機を意味すると理解されるべきである。
【0042】
カバーは、車両の前部領域または後部領域に使用される成形品、例えばバンパー、ラジエーターグリル、フロントパネル、またはリアパネル、特に自動車のフロントパネルが好ましいが、同様に車両側面部品であってもよい。しかし、カバーは同様に自動車用のルーフまたはルーフモジュールであってもよい。LiDARセンサの動作を損なう可能性のあるビーム軌道の経路に沿って、カバーとLiDARセンサの間に更なる要素が存在しない場合が特に好ましい。
【0043】
本発明に従って使用されるLiDARセンサは、800~2500nmの範囲、好ましくは820~1500nmの範囲、特に好ましくは850~1300nmの範囲、非常に特に好ましくは880nm~930nmの範囲のレーザーパルスを放出する。
【0044】
好ましくは、LiDARセンサからカバーまでの距離は0.1~1000mm、好ましくは1~500mm、より好ましくは10~300mm、特に好ましくは50~300mmである。選択された距離は、センサが衝撃事象から十分に保護されるように選択する必要があるので、本質的に構造に関連している。
【0045】
センサが車両のコーナー領域に配置されるやり方でセンサは最も多く「見ることができる」ので、そのように配置されるようにLiDARセンサの位置が選択されるのが好ましい。
【0046】
記載の熱可塑性組成物の領域、好ましくは基材層の全領域における本発明に記載のカバーの基材層は1.0~7.0mmの厚さ、好ましくは1.6~6.0mm、特に好ましくは2.0~4.0mmの厚さであることが好ましい。この領域の基材層の厚さは、LiDARセンサの信号が通過する熱可塑性組成物で作られた基材層の領域の最も厚い点の厚さである。
【0047】
熱可塑性組成物は、好ましくは不透明材料であり、「不透明」とは、DIN ISO13468-2:2006(D65、10°)に従って4mmの層厚で測定して、380~780nmの領域で、すなわちVIS領域で、5.0%未満、好ましくは1.0%未満、より好ましくは0.1%未満、特に好ましくは0%の光透過率を有する材料を意味すると理解されるべきである。4mmの層厚でISO13837:2008に従って決定されたTDS値が40%未満である場合が好ましい。そのような材料は視覚的な透明性を示さない。すなわち背景を見せず、黒として認識される。
【0048】
記載の組成物で作られた基材層の領域の熱可塑性ポリマーとして使用されるのは、芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、および/またはポリメチルメタクリレートであり、芳香族ポリカーボネートが特に好ましい。
【0049】
ポリエステルカーボネートに関しては、原料のハイドロキノンおよび/またはテレフタル酸および/またはイソフタル酸から構成されるタイプが好ましい。芳香族ポリカーボネートに関しては、すべての既知の芳香族ポリカーボネートが好適である。これには、ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートが含まれる。本発明の文脈において、「ポリカーボネート」に言及するいずれの箇所でも、特に芳香族ポリカーボネートが意味される。
【0050】
好ましくは、本発明に適したポリカーボネートは、DIN55672-1:2007-08に従ってゲル浸透クロマトグラフィーで測定し、溶離液としてジクロロメタンを使用してビスフェノールAポリカーボネート標準に対して較正した平均分子量Mが10 000~50 000g/mol、より好ましくは14 000~40 000g/mol、特に好ましくは16 000~32 000g/molである。較正は、PSS Polymer Standards Service GmbH、ドイツの既知のモル質量分布の直鎖ポリカーボネート(ビスフェノールAとホスゲンで作られたもの)を用いるCurrenta GmbH&Co. OHG、レバークーゼンの方法2301-0257502-09D(ドイツ語2009年版)による。溶離液はジクロロメタンである。架橋スチレンジビニルベンゼン樹脂のカラムの組み合わせ。分析カラムの直径:7.5mm;長さ:300mm。カラム材料の粒径:3μm~20μm。溶液の濃度:0.2重量%。流量:1.0ml/分、溶液の温度:30℃。屈折率(RI)検出器を使用して検出。
【0051】
ポリカーボネートは、文献に何度も記載されてきたように界面法または溶融エステル交換法によって製造されることが好ましい。
【0052】
界面法に関しては、例えば、H. Schnell, “Chemistry and Physics of Polycarbonates”, Polymer Reviews, Vol. 9, Interscience Publishers, New York 1964 p. 33 et seq., to Polymer Reviews, Vol. 10, "Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods", Paul W. Morgan, Interscience Publishers, New York 1965, Chapt. VIII, p. 325, to Dres. U. Grigo, K. Kircher und P. R- Mueller "Polycarbonate" in Becker/Braun, Kunststoff-Handbuch, Volume 3/1, Polycarbonate, Polyacetale, Polyester, Celluloseester, Carl Hanser Verlag Munich, Vienna 1992, p 118-145およびさらに欧州特許出願公開第0517044A1号が参照される。
【0053】
溶融エステル交換法は、例えば、“Encyclopedia of Polymer Science”, Vol. 10 (1969), Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, H. Schnell, Vol. 9, John Wiley and Sons, Inc. (1964)、ならびに特許明細書独国特許出願公開第1031512A号および米国特許第6,228,973B1号に記載されている。
【0054】
ポリカーボネートは、ビスフェノール化合物と炭酸化合物、特にホスゲンの反応、または溶融エステル交換法での炭酸ジフェニルもしくは炭酸ジメチルの反応によって調製されることが好ましい。
【0055】
ここで特に好ましいのは、ビスフェノールAをベースとするホモポリカーボネートおよび、ビスフェノールAと1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンをベースとするコポリカーボネート、例えばCovestro Deutschland AG製のApec(登録商標)である。
【0056】
ポリカーボネート合成に使用可能なこれらおよび更なるビスフェノール/ジオール化合物は、特に国際公開第2008/037364A1号(7ページ、21行目~10ページ、5行目)、欧州特許出願公開第1582549A1号([0018]~[0034])、国際公開第2002/026862A1号(2ページ、20行目~5ページ、14行目)、および国際公開第2005/113639A1号(2ページ、1行目~7ページ、20行目)に記載されている。
【0057】
ポリカーボネートは直鎖でもよく、分枝状でもよい。分枝ポリカーボネートと非分枝ポリカーボネートの混合物を使用することも可能である。
【0058】
分枝ポリカーボネートの製造に適した分岐剤は文献から既知であり、例えば特許文献米国特許第4,185,009B号および独国特許出願公開第2500092A1号(3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール‐オキシインドール)、いずれも文書全体を参照)、独国特許出願公開第4240313A1号(3ページ、33~55行目を参照)、独国特許出願公開第19943642A1号(5ページ、25~34行目を参照)、および米国特許第5,367,044B号、ならびにそれらの中に引用されている文献に記載されている。
【0059】
さらに、使用されるポリカーボネートはそれ自体分枝していてもよく、その場合、ポリカーボネートの調製中に分岐剤は添加されない。本質的な分枝の例は、欧州特許出願公開第1506249A1号に溶融ポリカーボネートについて記載されているような、いわゆるフリース(Fries)構造のものである。
【0060】
さらに、ポリカーボネート調製に連鎖停止剤を使用することができる。好ましくは、使用される連鎖停止剤は、フェノールなどのフェノール類、クレゾールおよび4-tert-ブチルフェノールなどのアルキルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、クルミフェノール、またはそれらの混合物である。
【0061】
原則として、記載の基材層の組成物は、列挙された熱可塑性ポリマー、芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、および/またはポリメチルメタクリレートだけでなく、更なる熱可塑性ポリマー、すなわち、芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、および/またはポリメチルメタクリレートとは異なるものも含有しうる。そのような熱可塑性ポリマーは、ポリスチレン、スチレン共重合体、環状ポリオレフィン、スチレンを含んでなる共重合体、例えば透明ポリスチレンアクリロニトリル(PSAN)、熱可塑性ポリウレタン、環状オレフィンをベースとするポリマー(例えばTOPAS(登録商標)、Ticona製の市販品)、オレフィン系共重合体またはグラフト重合体、例えばスチレン/アクリロニトリル共重合体を含んでなるポリカーボネート混合物である。
【0062】
更なる熱可塑性ポリマーは、LiDARセンサのレーザーパルスに対する透過性が、システムがその機能を失うほど破壊されないような量でのみ存在しうる。したがって、基材層は、0%~30.0重量%未満、好ましくは0%~20.0重量%未満、より好ましくは0%~10.0重量%未満、特に好ましくは0%~5.0重量%未満、非常に特に好ましくは0%~1.0重量%未満の更なる熱可塑性ポリマーを含有し、非常に特に好ましくは更なる熱可塑性ポリマーを全く含有しない。本発明によれば、「未満」は、それぞれの成分も全く存在しない可能性があることを意味すると理解されるべきである。
【0063】
組成物は、緑色および/または青色着色剤(成分ii)ならびに赤色および/または紫色着色剤(成分iii):式(1)、(2a~c)、(3)、(4)、(5)、または(6)(群ii)、特に好ましくは(1)、(2a~c)、(3)、または(4)の少なくとも1つの着色剤と、式(7)~(13)(群iii)の着色剤から選択される、好ましくは式(7)、(11)、または(12)から選択される少なくとも1つの着色剤を含有する。更なる着色剤(成分iv)、特に好ましくは黄色着色剤が任意選択で使用される。
【0064】
群ivの任意選択の更なる着色剤は、式(14)~(18)の着色剤から選択され、特に好ましくは式(14)および(15)の着色剤から選択される。
【0065】
特に好ましくは、緑色着色剤は式(1)および(2a/2b/2c)の着色剤である。
【0066】
【化21】
【0067】
式(1)の着色剤は、Lanxess Deutschland GmbH製のカラーインデックス番号61565、CAS登録番号:128-90-3のマクロレックスグリーン5Bという名称で知られ、アントラキノン染料である。
【0068】
式(2a)、(2b)、および(2c)の着色剤は、マクロレックスGrueunG(ソルベントグリーン28)という名称で知られている。
【0069】
好ましくは、使用される青色着色剤は、式(3)および/または(4a/4b)の着色剤であり、
【0070】
【化22】
【0071】
「キープラストブルーKR」(CAS登録番号116-75-6)という名称で入手可能であり、
【0072】
【化23】
【0073】
式中、
-RcおよびRdは、互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲンを表し、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、テキシル、またはCl、より好ましくはメチル、Cl、特に好ましくはClを表し、
-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルは水素である。
【0074】
好ましい実施形態では、Rcおよび/またはRdはClであり、アミン官能基をもつ炭素原子に対してo-および/またはp-位置にあり、例えば、ジ-オルトクロロナフタリノ、ジ-オルト、モノ-パラ-クロロナフタリノ、およびモノ-オルトナフタリノである。さらに、好ましい実施形態では、RcおよびRdはそれぞれ、好ましくは窒素官能基をもつ炭素原子に対してメタ位にあるtert-ブチルラジカルを表す。
【0075】
特に好ましい実施形態では、すべての環においてn=0であり、その結果すべてのRcおよびRd=Hである。
【0076】
さらに、青色着色剤として使用可能なのは、「マクロレックスブルー3R Gran」という名称で入手可能な式(5)の着色剤
【0077】
【化24】
【0078】
および/または「マクロレックスブルーRR」(CAS登録番号32724-62-2;ソルベントブルー97;カラーインデックス615290)という名称で入手可能な式(6)の着色剤である。
【0079】
【化25】
【0080】
赤色着色剤として好ましく使用されるのは、CAS登録番号81-39-0を有する名称「マクロレックスレッド5B」という名称で入手可能な式(7)の着色剤である。
【0081】
【化26】
【0082】
CAS登録番号71902-17-5を有する式(8)およびCAS登録番号89106-94-5を有する式(9)の着色剤も使用可能である。
【0083】
【化27】
【0084】
紫色着色剤として好ましく使用されるのは、CAS登録番号61951-89-1を有する式(10)、CAS登録番号81-48-1を有するLanxess AG製の「マクロレックスバイオレットB」という名称で入手可能な式(11)、またはアマプラストバイオレットPKという名称で入手可能な式(12a/12b)の着色剤である。
【0085】
【化28】
【0086】
そこにおいて、RはHおよびp-メチルフェニルアミンラジカルからなる群より選択され、好ましくはR=Hであり、
【0087】
【化29】
【0088】
式中、
-RaおよびRbは互いに独立して、直鎖もしくは分枝アルキルラジカルまたはハロゲン、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、テキシル、またはCl、より好ましくはメチル、Cl、特に好ましくはClを表し、
-nは、それぞれのRとは独立して、0~3の整数を表し、n=0のラジカルは水素である。
【0089】
好ましい実施形態では、Raおよび/またはRbはClであり、アミン官能基をもつ炭素原子に対してo-および/またはp-位置にあり、例えば、ジ-オルトクロロナフタリノ、ジ-オルト、モノ-パラ-クロロナフタリノ、およびモノ-オルトナフタリノである。さらに、好ましい実施形態では、RaおよびRbはそれぞれ、好ましくは窒素官能基をもつ炭素原子に対してメタ位にあるtert-ブチルラジカルを表す。
【0090】
特に好ましい実施形態では、すべての環においてn=0であり、その結果すべてのRaおよびRb=Hである。
【0091】
「マクロレックスレッドバイオレットR」という名称で入手可能な、CAS登録番号6408-72-6の式(13)に適合する着色剤も使用可能である。
【0092】
【化30】
【0093】
好ましくは、黄色着色剤として、CAS登録番号4702-90-3を有する「マクロレックスイエロー3G」という名称で入手可能な式(14)および/または「マクロレックスオレンジ3G」(CAS登録番号6925-69-5、カラーインデックス564100)という名称で入手可能な式(15)の着色剤が使用される。
【0094】
【化31】
【0095】
さらに、CAS登録番号13676-91-0を有する「オラセットイエロー180」という名称で入手可能な式(16)、CAS登録番号30125-47-4を有する式(17)、および/またはCAS登録番号669005-94-1を有する「オラセットオレンジ220;ソルベントオレンジ116」という名称で入手可能な式(18)の着色剤を使用することも可能である。
【0096】
【化32】
【0097】
群ii)、iii)、および任意選択でiv)の着色剤にくわえて、組成物は0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満の更なる着色剤を含有する。群iv)の「更なる」着色剤は、構造(14)~(18)を有する着色剤からのみなる。
【0098】
しかし、原則として、上記の群ii)~iv)の着色剤にくわえて、任意選択で更なる着色剤を使用することもできる。これらは、好ましくは、アントラキノンをベースとする、ペリノンをベースとする、フタロシアニンをベースとするか、これらの構造に由来する着色剤である。特に好ましい着色剤は、国際公開第2012/080395A1号に記載されている。また、着色剤として使用できるのは、アマプラストイエローGHS(CAS登録番号13676-91-0;ソルベントイエロー163;カラーインデックス:58840);キープラストブルーKR(CAS登録番号116-75-6;ソルベントブルー104;カラーインデックス61568)、ヘリオゲンブルー系統(varieties)(例えばヘリオゲンブルーK6911;CAS登録番号147-14-8;ピグメントブルー15:1;カラーインデックス74160)、およびヘリオゲングリーン系統(varieties)(例えば、ヘリオゲングリーンK8730;CAS登録番号1328-53-6;ピグメントグリーン7;カラーインデックス74260)である。
【0099】
しかし、基材層のサブ領域の熱可塑性組成物の着色剤が、式(1)~(18)の着色剤のみから選択される場合が好ましい。
【0100】
DIN ISO13468-2:2006(D65、10°)に従って4mmの層厚で測定して380~780nmの範囲の光の透過率が少なくとも5%のとき、すべての着色剤の合計は、組成物全体に対して、好ましくは>0.005重量%、特に好ましくは>0.01重量%であり、すべての着色剤の合計量は、好ましくは<0.05重量%、特に<0.04重量%である。
【0101】
DIN ISO13468-2:2006(D65、10°)に従って4mmの層厚で測定して380~780nmの範囲の光の透過率が5%未満のとき、成分ii、iii、およびivのすべての着色剤の合計は、基材材料の組成物全体に対して、>0.05重量%、好ましくは>0.08重量%、より好ましくは≧0.10重量%、特に好ましくは>0.11重量%、非常に特に好ましくは>0.12重量%である。
【0102】
組成物は、特に好ましくは0.0005重量%未満のカーボンブラックを含有し、非常に特に好ましくはカーボンブラックを含まない。
【0103】
例えば、次の着色剤の組み合わせを含有する組成物について、記載された低透過率が得られる。
Lanxess AG製のマクロレックスバイオレット3R(CAS登録番号61951-89-1、ソルベントバイオレット36、カラーインデックス番号61102)、アントラキノン着色剤
【0104】
【化33】
【0105】
およびLanxess AG製のマクロレックスグリーン5B(CAS登録番号128-80-3、ソルベントグリーン3、カラーインデックス番号61565)、同様にアントラキノン着色剤。
【化34】
【0106】
例えば、これら両方の着色剤のいずれの場合にも、組成物全体に対して0.1重量%。
【0107】
基材層材料用の組成物は、理想的には熱可塑性物質にとって慣用の温度で、すなわち300℃を超える温度、例えば350℃で、光学的特性、例えば深い光沢、または加工中の機械的特性の著しい変化を経ずに、加工可能であるべきである。
【0108】
基材層の領域を形成し、熱可塑性ポリマー、好ましくは芳香族ポリカーボネートをベースとする組成物は、着色剤にくわえて、1つまたは複数の更なる慣用の添加剤を含有することが好ましい。そのような添加物は、例えば、欧州特許出願第0839623A号、国際公開第96/15102A号、欧州特許出願第0500496A号、または“Plastics Additives Handbook”, Hans Zweifel, 5th Edition 2000, Hanser Verlag, Munichに記載の慣用の添加剤、例えば離型剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、および/または流動性向上剤である。
【0109】
ここでも、原則として、組成物はセンサシステムの機能を著しく損なわないものをそれらに追加しうる。
【0110】
組成物は、基材層の組成物は、散乱添加剤、例えば、アクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ガラス、酸化アルミニウム、および/または二酸化ケイ素をベースとするものを、特に好ましくは0.1重量%未満含有し、非常に特に好ましくはそれらを含まない。さらに、特に好ましくは、組成物は、白色顔料など、例えば二酸化チタン、カオリン、硫酸バリウム、硫化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、石英粉などの顔料、干渉顔料および/または真珠光沢顔料、すなわちコーティングされたおよび/もしくはコーティングされていない、雲母、グラファイト、タルク、SiO、チョーク、および/または二酸化チタンなどの血小板状(platelet-shaped)粒子を、合計で0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満を含有し、非常に特に好ましくはそれらを含まない。さらに、特に好ましくは、組成物は、カーボンブラック、ナノチューブ、金属粒子、金属水酸化物粒子などのナノ粒子系を、合計で0.1重量%未満を含有し、非常に特に好ましくは、組成物はそれらを含まない。好ましくは、組成物はまた、例えば独国特許出願公開第10057165A1号および国際公開第2007/135032A2号に記載のような不溶性顔料をベースとする顔料を0.1重量%未満含有し、特に好ましくはそれを含まない。
【0111】
組成物は以下を除いて難燃剤を含まないことが特に好ましい。
a)モノマーおよび/またはオリゴマーリン酸/ホスホン酸エステル、すなわち一般式(V)のリン化合物
【0112】
【化35】
【0113】
式中、
、R、R、およびRは互いに独立して、いずれの場合も任意選択でハロゲン化され、いずれの場合も分枝もしくは非分枝したC-~C-アルキル、および/またはいずれの場合も任意選択で分枝もしくは非分枝アルキル、および/もしくはハロゲン、好ましくは塩素および/もしくは臭素で置換されたC-~C-シクロアルキル、C-~C20-アリール、もしくはC-~C12-アラルキルを表し、
nは出現ごとに独立して、0または1を表し、
qは0~30の整数を表し、
Xは6~30個の炭素原子を有する単環式もしくは多環式芳香族ラジカルまたは2~30個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝脂肪族ラジカルを表し、それぞれは、置換または非置換、かつ架橋または非架橋でありうる。
【0114】
好ましくは、R、R、R、およびRは互いに独立して、分枝もしくは非分枝C-~C-アルキル、フェニル、ナフチル、またはC-~C-アルキル置換フェニルを表す。芳香族R、R、R、および/またはR基の場合、次にこれらは、ハロゲンおよび/またはアルキル基、好ましくは塩素、臭素、および/または分枝もしくは非分枝C-~C-アルキルで置換されうる。特に好ましいアリール部分は、クレシル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニル、およびブチルフェニル、ならびにそれらの対応する臭素化および塩素化誘導体である。
【0115】
式(V)のXは、好ましくはジフェノールに由来する。
【0116】
式(V)のnは1が好ましい。
【0117】
qは、好ましくは0~20、より好ましくは0~10を表し、混合物の場合、0.8~5.0、好ましくは1.0~3.0、より好ましくは1.05~2.00、特に好ましくは1.08~1.60の平均値を有する。
【0118】
一般式Vのリン化合物として好ましいのは、式Iの化合物である。
【0119】
【化36】
【0120】
式中、
、R、R、およびRは互いに独立して、直鎖もしくは分枝C-~C-アルキルおよび/または任意選択で直鎖もしくは分枝アルキル置換C-~C-シクロアルキル、C-~C10-アリール、またはC-~C12-アラルキルを表し、
nは出現ごとに独立して、0または1を表し、
qは出現ごとに独立して、0、1、2、3、または4を表し、
Nは1~30の数を表し、
およびRは互いに独立して、直鎖または分枝C-~C-アルキル、好ましくはメチルを表し、
Y は、直鎖もしくは分枝C-~C-アルキリデン、直鎖もしくは分枝C-~C-アルキレン、C-~C12-シクロアルキレン、C-~C12-シクロアルキリデン、-O-、-S-、-SO-、SO、または-CO-を表す。
【0121】
式VのXは、特に好ましくは、
【化37】
または塩素化および/または臭素化誘導体を表す。Xは(隣接する酸素原子と一緒に)、好ましくはハイドロキノン、ビスフェノールA、またはジフェニルフェノールから誘導される。Xがレゾルシノールに由来する場合も同様に好ましい。XがビスフェノールAに由来するのが特に好ましい。
【0122】
式(V)のリン化合物は、特に、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、リン酸ジフェニルクレジル、リン酸ジフェニルオクチル、リン酸ジフェニル2-エチルクレシル、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)、レゾルシノール架橋オリゴリン酸エステル(oligophosphate)、およびビスフェノール架橋オリゴリン酸エステル(oligophosphate)である。ビスフェノールAに由来する式(V)のオリゴマーリン酸エステルの使用が特に好ましい。
【0123】
成分Cとして最も好ましいのは、式(Va)のビスフェノールAをベースとするオリゴリン酸エステル(oligophosphate)である。
【0124】
【化38】
【0125】
qが1.0~1.2である式(Va)に類似したオリゴリン酸エステル(oligophosphate)もまた特に好ましい。
【0126】
同一構造で異なる鎖長の混合物を使用することが好ましく、明記されたq値は平均q値である。平均q値は、アセトニトリルと水(50:50)の混合物で40℃の高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、リン化合物混合物の組成(分子量分布)を決定し、これを用いてqの平均値を計算することによって決定される。
【0127】
組成物が、難燃剤も、ドリップ防止剤(anti-drip agents)も含有しない場合が、非常に特に好ましい。
【0128】
特に好ましくは、組成物は、脂肪酸エステルをベースとする離型剤、好ましくはステアリン酸エステルをベースとする離型剤、特に好ましくはペンタエリスリトールをベースとする離型剤を含有する。ペンタエリトリトールテトラステアラート(PETS)および/またはグリセロールモノステアレート(GMS)を用いることが好ましい。
【0129】
任意選択で、基材層の領域/基材層に使用される組成物は、紫外線吸収剤をさらに含有する。好適な紫外線吸収剤は、400nm未満で可能な限り低い透過率および400nm超で可能な限り高い透過率を有する化合物である。そのような化合物およびその製造は文献から既知であり、例えば欧州特許出願公開第0839623A1号、国際公開第1996/15102A2号、および欧州特許出願公開第EP0500496A1号に記載されている。本発明による組成物での使用に特に適した紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾフェノン、および/またはアリール化シアノアクリレートである。
【0130】
特に好ましい実施形態では、基材層に使用される組成物は紫外線吸収剤を含有する。
【0131】
例えば、以下の紫外線吸収剤が好適である。ヒドロキシベンゾトリアゾール、例えば、2-(3’,5’-ビス(1,1-ジメチルベンジル)-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)234、BASF AG.ルートヴィヒスハーフェン)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-(2-ブチル)-5’-(tert-ブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)350、BASF AG.ルートヴィヒスハーフェン)、ビス(3-(2H-ベンゾトリアゾリル)-2-ヒドロキシ-5-tert-オクチル)メタン、(Tinuvin(登録商標)360、BASF AG.ルートヴィヒスハーフェン)、(2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール(Tinuvin(登録商標)1577、BASF AG.ルートヴィヒスハーフェン)、ベンゾフェノン類2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(Chimasorb(登録商標)22、BASF AG.ルートヴィヒスハーフェン)もしくは2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(Chimassorb(登録商標)81、BASF AG.ルートヴィヒスハーフェン)、2-シアノ-3,3-ジフェニル-2-プロペン酸、2,2-ビス[[(2-シアノ-1-オキソ-3,3-ジフェニル-2-プロペニル)オキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル(9CI)(Uvinul(登録商標)3030、BASF AG ルートヴィヒスハーフェン)、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-エチルヘキシル)オキシ]フェニル-4,6-ジ(4-フェニル)フェニル-1,3,5-トリアジン(CGX UVA 006、BASF AG.ルートヴィヒスハーフェン)、またはテトラエチル-2,2’-(1,4-フェニレンジメチリデン)ビスマロネート(Hostavin(登録商標)B-Cap、Clariant AG)。これらの紫外線吸収剤の混合物を使用することも可能である。
【0132】
より好ましくは、熱可塑性組成物はまた、少なくとも1つの熱安定剤/加工安定剤を含有する。
【0133】
したがって、ホスファイトおよびホスホナイト(phosphonites)、さらにホスフィンが好ましい。例としては、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニルアルキル、亜リン酸フェニルジアルキル、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)、亜リン酸トリラウリル、亜リン酸トリオクタデシル、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-クミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリス(tert-ブチルフェニル))ペンタエリトリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、6-イソオクチルオキシ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12H-ジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト、6-フルオロ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12-メチル-ジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、2,2’,2”-ニトリロ[トリエチルトリス(3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)亜リン酸塩]、2-エチルヘキシル(3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)亜リン酸塩、5-ブチル-5-エチル-2-(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノキシ)-1,3,2-ジオキサホスフィラン、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリフェニルホスフィン(TPP)、トリアルキルフェニルホスフィン、ビスジフェニルホスフィノエタン、またはトリナフチルホスフィンが挙げられる。特に好ましく使用されるのは、トリフェニルホスフィン(TPP)、Irgafos(登録商標)168(トリス(2,4-ジ-tert-ブチル-フェニル)ホスファイト)、または亜リン酸トリス(ノニルフェニル)、またはそれらの混合物である。さらに、リン酸アルキル、例えばリン酸モノ-、ジ-、およびトリヘキシル、リン酸トリイソオクチル、ならびにリン酸トリノニルも使用可能である。
【0134】
アルキル化モノフェノール、アルキル化チオアルキルフェノール、ハイドロキノン、アルキル化ハイドロキノンなどのフェノール系酸化防止剤も使用可能である。特に好ましく使用されるのは、Irganox(登録商標)1010(ペンタエリスリトール-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、CAS登録番号6683-19-8)および/またはIrganox1076(登録商標)(2,6-ジ-tert-ブチル-4-(オクタデカノキシカルボニルエチル)フェノール)である。
【0135】
組成物は、いずれの耐衝撃性改良剤も含まないことが好ましい。
【0136】
着色剤および他の添加剤は、例えば、ポリカーボネートベース材料と、着色剤および他の添加剤を含有するポリカーボネート粉末の組成物全体に対して2%~5重量%を混合することによって組成物に導入でき、そこにおいて粉末形態のポリカーボネートは、ベース材料とは異なるMVRを有してもよい。
【0137】
カバーは比較的大きく、インフラストラクチャまたは輸送部門にとって複雑な幾何学的構造を有する場合があるので、基材層に使用される熱可塑性組成物は、理想的には、射出成形法、例えば、特に射出圧縮成形法で、対応する成形物に加工できる十分な流動性を有する必要がある。したがって、メルトボリュームフローレイトMVRは、ISO1133-1:2011に従って300℃および1.2kgの荷重で測定して、好ましくは7~20cm/(10分)、より好ましくは9~19cm/(10分)である。
【0138】
カバーは、基材層にくわえて保護層も含んでなることが好ましい。この保護層は、車両に取り付けられたとき、カバーの外側になるように設計されたカバーの側面、すなわち周囲に向かっている側に塗布される。しかし、カバーは付加的または代替的に反対側、すなわち車両の内部に向かうように設計された側面に保護層を有してもよい。
【0139】
保護層は、好ましくは耐擦傷性ラッカー(ハードコート、トップコート)を含んでなり、特に好ましくはそれからなる。これは、ゾルゲル法によって製造されたポリシロキサンラッカーであることが好ましい。特に好ましくは、保護層は少なくとも1つの紫外線吸収剤も含有する。保護層は、高い耐摩耗性と耐擦傷性を有し、したがって、特に耐擦傷性コーティングの機能を実現する。
【0140】
市販の系としては、例えばMomentive Performance Materials製のAS4000、SHC5020、およびAS4700が挙げられる。そのような系は、例えば米国特許出願公開第5,041,313A号、独国特許出願公開第3,1213,85A1号、米国特許出願公開第5,391,795A号、および国際公開第2008/109072A1号に記載されている。典型的には、これらの材料の合成は、酸または塩基触媒下でのアルコキシおよび/またはアルキルアルコキシシランの縮合によって行われる。ナノ粒子が任意選択で組み込まれてもよい。好ましい溶媒は、ブタノール、イソプロパノール、メタノール、エタノール、およびそれらの混合物などのアルコールである。
【0141】
プラスチック製品に耐擦傷性コーティングを施すさまざまな方法が知られている。これらの系は、例えば浸漬法、スピンコーティング、スプレー法、またはフローコーティングにより、好ましくは浸漬法またはフロー法によって塗布することができる。硬化は、熱的に、または紫外線照射によって行われる。耐擦傷性コーティングは、例えば、直接に、またはプライマーで基材表面を調製した後に塗布することができる。耐擦傷性コーティングは、プラズマ援用(assisted)重合法、例えばSiOプラズマを介して塗布することもできる。防曇コーティングまたは反射防止コーティングを、同様にして、プラズマ法によって生成することができる。ある特定の射出成形法、例えば、表面処理フィルムのオーバーモールドを使用して、得られた成形物に耐傷性コーティングを施すことも可能である。例えば、トリアゾールまたはトリアジンから誘導されたさまざまな添加剤、例えば紫外線吸収剤が耐擦傷性の層に存在しうる。
【0142】
したがって、保護層は単層でもよく、または多層系、したがって2つ以上の層a’、層a’’などの組み合わせでもよい。特に、保護層は、トップコート層a’およびプライマー層a’’の層からなることができ、プライマー層はトップコート層と基材層の間に配置される。
【0143】
特に良好な耐候安定性を達成する好ましい実施形態では、保護層は、
i.ベンゾフェノン、レゾルシノール、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニル-s-トリアジン、2-シアノアクリレート、オキサラニリドの群からの少なくとも1つの紫外線吸収剤
および/または立体障害アミン(HALS)、特に2,2,6,6-テトラメチルピペリジンもしくはその誘導体をベースとするものの群からのUV阻害剤、
ii.好ましくはメチルトリアルコキシ-またはジメチルジアルコキシシランである有機修飾シランとシリカゾルの少なくとも1つの組み合わせ
を含有する
A)ポリシロキサンをベースとする耐擦傷性コーティング(層a’)
ならびに任意選択で、より好ましい実施形態ではさらに、基材層上に配置され、ポリシロキサンをベースとする耐擦傷性コーティングと基材層の間の接着促進剤として機能するプライマー層(層a’’)
ベンゾフェノン、レゾルシノール、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニル-s-トリアジン、2-シアノアクリレート、オキサラニリド、および/または立体障害アミン(HALS)、特に2,2,6,6-テトラメチルピペリジンおよびその誘導体をベースとするものの群からの少なくとも1つの紫外線吸収剤
を含んでなり、
そこにおいて、
プライマー層の厚さが0.3μm~8μm、好ましくは1.1μm~4.0μmである。
【0144】
本発明によれば、「誘導体」とは、分子構造がH原子もしくは官能基の位置に異なる原子もしくは異なる原子群を含んでなり、または1つもしくは複数の原子/原子群が取り除かれた化合物を意味すると理解されるべきである。したがって、親化合物は依然として認識可能である。
【0145】
基材層に使用される組成物のベースとなる熱可塑性ポリマーが芳香族ポリカーボネートである場合、基材層への耐擦傷性コーティングの接着性を改善するために、UV吸収剤含有プライマーを使用することが好ましい。プライマーは、更なる安定剤、例えばHALSシステム(立体障害アミンをベースとする安定剤)、接着促進剤、および/または流動性向上剤を含有するのが好ましい。プライマー層のベース材料を形成するそれぞれの樹脂は、多数の材料から選択でき、例えば、Ullmann’s Encylopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition, Vol. A18, pp. 368-426, VCH, Weinheim 1991に記載されている。ポリアクリレート、ポリウレタン、フェノールをベースとするシステム、メラミンをベースとするシステム、エポキシシステム、およびアルキドシステム、またはこれらのシステムの混合したものを用いることができる。樹脂は通常、好適な溶媒、多くの場合アルコールに溶解される。選択された樹脂に応じて、硬化は室温または高温で行われうる。多くの場合、溶媒の大部分が室温で短時間除去された後、50℃~140℃の温度を使用することが好ましい。市販のプライマー系としては、例えばMomentive Performance Materials製のSHP470、SHP470-FT2050、およびSHP401が挙げられる。そのようなコーティングは、例えば米国特許第6,350,512B1号、米国特許出願公開第5,869,185A号、欧州特許出願公開第1308084A1号、および国際公開第2006/108520A1号に記載されている。
【0146】
ポリシロキサン層は、式RSiX4-nを有する有機ケイ素化合物および/またはその部分縮合物を含有することが好ましい。
ここで、ラジカルRは同一または異なり、直鎖または分枝、飽和または一価もしくは多価不飽和または芳香族炭化水素ラジカルを表す。
ラジカルXは、同一または異なり、加水分解可能な基またはヒドロキシル基、好ましくはハロゲン、特に塩素もしくは臭素、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、またはアシルオキシ基を表し、
【0147】
nは0、1、2、または3、好ましくは1または2、非常に特に好ましくは1である。
【0148】
好ましくは、Rは、1~20個の炭素原子を有する飽和、分枝もしくは非分枝アルキルラジカルを表す、かつ/または2~20個の炭素原子を有するモノもしくはポリ不飽和分枝もしくは非分枝アルケニルラジカル、もしくは6~12個の炭素原子を有する芳香族基を表す。アルキル/アルケニルラジカルは、より好ましくは最大で12個、さらにより好ましくは最大で8個の炭素原子を有する。すべてのラジカルがメチルおすべてのラジカルがメチルおよび/またはフェニルである場合が特に好ましい。
【0149】
Xは、特に好ましくはアルコキシ基、非常に特に好ましくはC-~C-アルコキシ基、例えばメトキシ基またはエトキシ基を表す。
【0150】
ケイ素化合物RSiX4-nは、ラジカルXを介して加水分解および縮合が可能である。Si-O-Siユニットを含んでなる無機ネットワークは、これらの加水分解的に縮合可能な基を介して構築される。ラジカルXとは対照的に、ラジカルRは典型的な縮合条件下で加水分解に対して安定である。
【0151】
上記のシロキサンをベースとするトップコート系を使用する場合、乾燥層の厚さは3μm~20μmが好ましく、5μm~15μmがより好ましく、6μm~12μmが特に好ましい。「乾燥層の厚さ」とは、塗布、溶媒の蒸発、およびそれに続く熱硬化またはUV硬化後のラッカーの層の厚さを意味すると理解されるべきである。この層の厚さは一般に、好ましい層の厚さに塗布される。層の厚さは、例えば白色光干渉法(例えばEta Optic製の白色光干渉計、ETA-SST)によって決定することができ、これが好ましい。層の断面調製および顕微鏡検出(光学顕微鏡または走査電子顕微鏡による)を用いて、材料のコントラストによって厚さを検出することもできる。
【0152】
上記のように、プライマー/耐擦傷性コーティングの組み合わせの代わりに、カバーを形成する多層製品に熱硬化性またはUV硬化性の1成分ハイブリッドシステムを採用することもできる。
【0153】
これらは、例えば欧州特許出願公開第0570165A2号、国際公開第2008/071363A2号、または独国特許出願公開第2804283A号に記載されている。市販のハイブリッド系は、例えば、熱硬化性ラッカーとしてPHC587、PHC587Cという名称で、およびMomentive Performance Materials製UV硬化性ラッカーとしてUVHC3000およびUVHC5000という名称で入手可能である。さらに、本発明による原則として好適な市販のUV硬化性ラッカーシステムには、Redspot製のUVT610およびUVT820、ならびに現在プラスチックカバーパネルにも使用されているようなすべてのラッカーが挙げられる。
【0154】
本発明による車両用カバーを製造するための特に好ましい方法では、保護層の塗布はフローコーティング法によって行われる。なぜなら、それは高い光学品質を有するコーティング部品をもたらすからである。
【0155】
フローコーティング法は、ホースまたは好適なコーティングヘッドを用いて手動で行うか、フローコーティングロボットと任意選択でスロットダイを用いて連続運転で自動的に行うことができる。
【0156】
さらに可能な塗布方法は、浸漬、ブレードコーティング、ローリング、スプレーまたは、スピンコーティングである。ここで、構成部品は、吊り下げられているか、適切なグッズキャリア(goods carrier)に保存されうる。
【0157】
大型および/または3D構成部品、すなわち、シートの形状から逸脱する形状をも有する三次元表面を有する構成部品の場合、コーティングされる部品は、好適なグッズキャリア(goods carrier)に吊り下げられる、またはその上に置かれる。
【0158】
小さい部品の場合、コーティングは手作業で行うこともできる。ここで、保護層を形成するための、層にされる液体プライマーまたはラッカー溶液が、小さな部品の上縁から開始して縦方向にシート上に注がれ、同時にシート上のラッカーの開始点がシート幅にわたって左から右に通される。ラッカー塗装されたシートは、クランプで垂直に吊り下げられながら、それぞれの製造業者の取扱説明書に従って乾燥および硬化される。
【0159】
上記の組成物、特に芳香族ポリカーボネートをベースとする組成物の使用は、非常に多種多様な電気的、電子的、光電子的、光学的機能要素を、それらの機能を車両とその乗員、および外部環境との両方に関して損なって、その結果意図したとおりに機能が満たされないようなことなく、覆うことができ、光の可視スペクトル範囲の魅力的な色彩、特にガラスのような黒い色感を同時に得ることができる、LiDARセンサのカバーをもたらす。
【0160】
上記成分を含有する上記ポリマー組成物から出発する三次元基材層だけでなく、シート状層の製造は、組み合わせ、混合、および均質化による一般的に使用される組み込み方法で行われ、特に、均質化は溶融物中でせん断力の作用下で行われるのが好ましい。この目的のために、熱可塑性ポリマー、好ましくは芳香族ポリカーボネート、およびポリマー成形材料、好ましくはポリカーボネート成形材料の任意の更なる成分は、慣用の条件下で、例えば単軸もしくは多軸押出機または混練機などの慣用の溶融混合アセンブリにおいて、溶融物中で混合、押出、および造粒される。添加物は、計量天秤またはサイドフィード装置を介して顆粒/ペレットとして個別に計量するか、あるいは計量ポンプを用いて押出機の固体搬送領域または溶融物として高温のポリマー溶融物に好適な位置で計量することができる。顆粒またはペレットの形態のマスターバッチを他の粒子状化合物と組み合わせて予備混合物を得た後、押出機の固体搬送領域または計量ホッパーもしくはサイドフィード装置を介して押出機内のポリマー溶融物に一緒に供給することもできる。コンパウンディングアセンブリは、好ましくは二軸スクリュー押出機、特に好ましくは同方向回転スクリューを有する二軸スクリュー押出機であり、二軸スクリュー押出機は好ましくは20~44、特に好ましくは28~40のスクリュー長さ/直径比を有する。そのような二軸スクリュー押出機は、溶融ゾーンおよび混合ゾーンまたは複合溶融混合ゾーン、ならびに任意選択で、好ましくは800ミリバール以下、より好ましくは500ミリバール以下、特に好ましくは200ミリバール以下の絶対圧力pが確立される脱気ゾーンを含んでなる。押出機における混合組成物の平均滞留時間は、好ましくは120秒以下、特に好ましくは80秒以下、特に好ましくは60秒以下に制限される。好ましい実施形態では、押出機出口でのポリマー/ポリマー合金の溶融物の温度は、200℃~400℃である。
【0161】
押出にくわえて、基材層に使用される組成物は、ホットプレス成形、スピニング、ブロー成形、深絞り、または射出成形によって基材層に変換することができる。ここでは、射出成形または射出圧縮成形が好ましい。
【0162】
射出成形法は当業者に公知であり、例えば"Handbuch Spritzgiessen", Friedrich Johannnaber/Walter Michaeli, Munich; Vienna: Hanser, 2001, ISBN 3-446-15632-1または"Anleitung zum Bau von Spritzgiesswerkzeugen", Menges/Michaeli/Mohren, Munich; Vienna: Hanser, 1999, ISBN 3-446-21258-2に記載されている。
【0163】
射出成形は、ここで、多成分射出成形および射出圧縮成形法を含むすべての射出成形法を含むと理解されるべきである。
【0164】
射出圧縮成形法は、射出および/または凝固手順に金型プレートの移動が含まれるという点で、従来の射出成形法とは異なる。既知の射出成形法では、その後の凝固中に発生する収縮を補償し、必要な射出圧力を下げるために、射出手順の前に金型プレートがすでにわずかに開かれている。したがって、射出手順の開始時には、予め拡大されたキャビティがすでに存在している。金型のフラッシュ面は、金型プレートが多少開いていても、予め拡大されたキャビティが依然として漏れないようにするのに十分であることを確実にする。プラスチック組成物は、この予め拡大されたキャビティに射出され、金型が閉位置に向かって移動すると、同時に/その後に圧縮される。特に、表面積が大きく、流路が長い薄壁成形品の製造では、より複雑な射出圧縮成形技術が好ましいか、場合によっては不可欠である。大きな成形品に必要な射出圧力の低減は、このやり方でのみ達成される。さらに、高い射出圧力から生じる射出成形部品の応力/反りは、射出圧縮成形によって回避することができる。
【0165】
カバーは、非IR透過領域を介して車体に一体化されることが好ましい。ここで「非IR透過」は、DIN ISO13468-2:2006に従って測定して、800nm~2500nmの範囲で、そのそれぞれの厚さの非IR透過領域における透過率が50%未満であることを意味することが理解されるべきである。これらは、好ましくはポリマー混合物で作られた、より好ましくはポリカーボネート混合物で作られた、好ましくは主に存在する成分としてポリカーボネートを含んでなり、非常に特に好ましくは混合パートナー(partner)としてABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)またはポリエステルを含んでなる非透明層である。そのような非透明層は、基材層および任意選択で存在する保護層で作られた上記の層構造と直接接触する大きな領域の上にある。
【0166】
本発明に従って使用されるカバーに適合するように非IR透過性材料を成形すると、材料間の接合部は、いずれの不規則性も隠されるように縁部領域(edge regions)にあること好ましい。どの場合においても、基材層が非IR透過層上に配置されるか、または非IR透過層が基材層上に配置される領域が存在する。ここで「上に配置される」とは、カバーが個々の層の接合面(joint face)に対して垂直に見たときに、層が重なっていることを意味すると理解されるべきである。非IR透明層は、更なる層の背後に配置されうるので、基材層と直接接触している必要はないが、直接接触していてもよいことが理解されるであろう。
【0167】
これらの非IR透過材料は、特に補強フレーム要素として機能する。補強フレーム要素は、充填剤および/または強化剤を含有する熱可塑性物質を使用して製造されることが好ましい。
【0168】
典型的には、使用される充填剤および/または強化剤は、繊維、血小板(platelets)、チューブ、ロッドの形状であるか、または球状もしくは粒子状である。好適な充填剤および強化剤としては、例えばタルク、珪灰石、雲母、カオリン、珪藻土、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、ガラスもしくはセラミック球、中空ガラス球もしくは中空セラミック球、ガラスもしくはミネラルウール、炭素繊維、またはカーボンナノチューブが挙げられる。好ましい充填剤は、組成物の等方性収縮挙動をもたらす充填剤である。
【0169】
本発明の文脈において、タルクおよび短いガラス繊維の使用が特に好ましい。
【0170】
ガラスまたはセラミック球または中空球は、この表面の耐擦傷性を高めることができる。
【0171】
LiDARセンサの前に配置されていない、すなわち周囲の状況に関して前記センサを覆わない基材層の部分では、基材層はまた、充填剤および強化剤を含有する材料を含んでなることができる。好ましくは、その割合は5重量%~40重量%、好ましくは7重量%~30重量%、より好ましくは8重量%~25重量%であり、重量分率は基材層の組成物全体に対する。基材層は、記載の熱可塑性組成物で作られた領域に充填剤および強化剤を含まない。
【0172】
任意選択で保護層を有する不透明基材層を含んでなる/で作られたカバーは、車両構造の金属またはプラスチックで作られた任意の所望の搬送システム(carrier system)に適用することができる。これは、特殊な接着系、例えばポリウレタンをベースとする接着システムによって実現することができる。LiDARセンサとカバーの組み合わせは、1つのユニットとして車両に取り付けてもよいが、同様にLiDARセンサとカバーを個別に取り付けてもよい。LiDARセンサを最初に取り付けてから、次に続いて、カバー、特にフロントパネルをLiDARセンサの前に配置する場合が好ましい。
【0173】
本発明の文脈において、個々の特徴について列挙された好ましい実施形態は、それらが矛盾しない限り、互いに組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0174】
図1図1は、本発明によるカバーの例としてのフロントパネルを示す。
図2図2は、実施例の項で使用された実験のセットアップを示す。
【実施例
【0175】
次に、実施例を参照して本発明の詳細な記載が続き、ここに記載の決定方法は、別段の記述がない限り、本発明の明細書の対応するパラメータすべてに使用される。
【0176】
以下に記載の多くの基材材料は、離型剤、熱安定剤、および/または紫外線吸収剤などの慣用の添加剤を含有した。予備テストを用いて、これらの添加剤がLiDARセンサの信号に影響を与えないことを確認および決定した。
【0177】
基材1:比較例
300℃にて1.2kgの荷重で(ISO1133-1:2012-03に従って)測定して約12cm/10分のMVRを有し、ビスフェノールAをベースとし、フェノールを末端とする99.99984重量%のCovestro Deutschland AG製のポリカーボネートを含有する組成物。組成物はまた、0.00006重量%のマクロレックスバイオレット3R(式(10)の着色剤)および0.0001重量%のマクロレックスブルーRR(式(6)の着色剤)を含有した。
【0178】
基材2:比較例
300℃にて1.2kgの荷重で(ISO1133-1:2012-03に従って)測定して約12cm/10分のMVRを有し、ビスフェノールAをベースとし、フェノールを末端とする99.8重量%のCovestro Deutschland AG製のポリカーボネートを含有する組成物。組成物はまた、0.1重量%のソルベントブルー36および0.1重量%のマクロレックスグリーンG(式(2)の着色剤)を含有した。
【0179】
基材3:比較例
300℃にて1.2kgの荷重で(ISO1133-1:2012-03に従って)測定して約12cm/10分のMVRを有し、ビスフェノールAをベースとし、フェノールを末端とする99.8000重量%のCovestro Deutschland AG製のポリカーボネートを含有する組成物。ポリカーボネートは、0.134重量%のソルベントブルー36(更なる着色剤)、0.044重量%のマクロレックスオレンジ3G(式(15)の着色剤)、および0.022重量%のアマプラストイエローGHS(ソルベントイエロー163、式(16)の着色剤)を含有した。
【0180】
基材4:比較例
300℃にて1.2kgの荷重で(ISO1133-1:2012-03に従って)測定して約12cm/10分のMVRを有し、ビスフェノールAをベースとし、フェノールを末端とする99.84重量%のCovestro Deutschland AG製のポリカーボネートを含有する組成物。材料は0.16重量%のカーボンブラックを含有した。
【0181】
基材5:比較例
300℃にて1.2kgの荷重で(ISO1133-1:2012-03に従って)測定して約18cm/10分のMVRを有し、ビスフェノールAをベースとし、tert-ブチルフェノールを末端とする93.195850重量%のCovestro Deutschland AG製のポリカーボネートを含有する組成物。組成物はさらに、6.756重量%のKronos2230(二酸化チタン)、0.00006重量%のマクロレックスイエロー3G(式(14)の着色剤)、0.00009重量%のマクロレックスバイオレット3R(式(10)の着色剤)、および0.054重量%のTinopal(2,5-チオフェニルジビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゼン(benzoxazene));蛍光増白剤)を含有した。
【0182】
基材6:比較例
300℃にて1.2kgの荷重で(ISO1133-1:2012-03に従って)測定して約12cm/10分のMVRを有し、ビスフェノールAをベースとし、フェノールを末端とする99.435重量%のCovestro Deutschland AG製のポリカーボネートを含有する組成物。ポリカーボネートは、0.1重量%のKronos2230(二酸化チタン)、0.03重量%のシコタンイエローK2107(ピグメントブラウン24、CAS登録番号68186-90-3;更なる着色剤)、0.022重量%のHeubach製ホイコドゥアブルー2R(ピグメントブルー28、コバルトアルミン酸ブルースピネル、CAS登録番号1345-16-0;更なる着色剤)、0.35重量%のマクロレックスレッドEG(構造8)、および0.063重量%のLanxess AG製バイフェロックス110M(Fe;CAS登録番号001309-37-1)を含有した。
【0183】
基材7:比較例
260℃にて5.0kgの荷重で(ISO1133-1:2012-03に従って)測定して約17cm/10分のMVRを有し、ABS割合が約30重量%で、SAN含有量が約10重量%のCovestro Deutschland AG製のポリカーボネート/ABS混合物。材料は着色剤を含有しない。
【0184】
基材8:比較例
300℃にて1.2kgの荷重で(ISO1133-1:2012-03に従って)測定して約12cm/10分のMVRを有し、ビスフェノールAをベースとし、フェノールを末端とする99.96重量%のCovestro Deutschland AG製のポリカーボネートを含有する組成物。組成物は0.04重量%のカーボンブラックを含有した。
【0185】
基材9:比較例
300℃にて1.2kgの荷重で(ISO1133-1:2012-03に従って)測定して約12cm/10分のMVRを有し、ビスフェノールAをベースとし、フェノールを末端とする99.78重量%のCovestro Deutschland AG製のポリカーボネートを含有する組成物。組成物は、0.02重量%のカーボンブラックおよび0.2重量%のマクロレックスバイオレットB(式(11)の着色剤)を含有した。
【0186】
基材10:本発明
300℃にて1.2kgの荷重で(ISO1133-1:2012-03に従って)測定して約18cm/10分のMVRを有し、ビスフェノールAをベースとし、tert-ブチルフェノールを末端とする99.874重量%のCovestro Deutschland AG製のポリカーボネートを含有する組成物。組成物はまた、0.048重量%のマクロレックスオレンジ3G(式(15)の着色剤)、0.01重量%のマクロレックスバイオレットB(式(11)の着色剤)、および0.068重量%の式4a/4bの着色剤(1:1)を含有した。
【0187】
基材11:本発明
300℃にて1.2kgの荷重で(ISO1133-1:2012-03に従って)測定して約12cm/10分のMVRを有し、ビスフェノールAをベースとし、フェノールを末端とし、0.1重量%のマクロレックスバイオレット3R(式(10)の着色剤)および0.1重量%のマクロレックスグリーン5B(式(1)の着色剤)を含有する99.8重量%のCovestro Deutschland AG製のポリカーボネートを含有する組成物。
【0188】
基材12:本発明
300℃にて1.2kgの荷重で(ISO1133-1:2012-03に従って)測定して約12cm/10分のMVRを有し、ビスフェノールAをベースとし、フェノールを末端とし、0.0360重量%のマクロレックスブルーRR(式(6)の着色剤)および0.07重量%のマクロレックスバイオレット3R(式(10)の着色剤)を含有する99.894重量%のCovestro Deutschland AG製のポリカーボネートを含有する組成物。
【0189】
基材13:比較
ポリアミド6,6で作られ、3.0mmの厚さを有する、射出成形着色剤もカーボンブラックも含まないシート。
【0190】
基材14:比較
厚さが0.6mmのアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)フィルム。
【0191】
基材15:比較
Solvay Solexis Inc.製の厚さ0.175mmのAjediumフィルムの形態のポリエーテルスルホン。
【0192】
基材16:比較
シクロヘキサンジメタノール、テレフタル酸、およびテトラメチルシクロブタンジオールで作られた、Eastman Chemical製の商品名Tritanのポリエステル。
【0193】
基材17:比較
シロキサン含有量が5%のビスフェノールA含有ポリカーボネートをベースとし、欧州特許出願公開第3099731A1号に記載のように製造されたシロキサン含有ブロック共縮合物。
【0194】
基材18:比較
厚さが4mmのポリプロピレンシート。
【0195】
基材19:比較
Altuglassブランドのポリメチルメタクリレート(Arkema)で作られたシート。
【0196】
コンパウンディング
基材と成分のコンパウンディングは、260℃のバレル温度、約280℃の溶融温度、100rpmの速度で、例で指定された成分の量を用いて、KraussMaffei Berstorff ZE25二軸押出機で行った。組成物は、5mm厚の射出成形ポリカーボネートシートに加工した。
【0197】
試験片の作製
80mm×2mm(直径×高さ)の寸法を有する丸いシートを光学品質で作製した。溶融温度は280℃、金型温度は80℃であった。それぞれの顆粒を、加工前に真空乾燥キャビネット内で120℃にて5時間乾燥させた。
【0198】
使用LiDARセンサ
Velodyne Puck VLP16 LiDARセンサを用いた。前記センサは、895~915nmの波長範囲(許容範囲)で動作する。公称波長、すなわち実際の動作波長は903nmである。
【0199】
このセンサの重要な特徴としては以下が挙げられる。
垂直検出角度-15°~+15°、スキャン面間の間隔2°、水平検出角度360°。ソフトウェアは、影の影響を最小限にする16ビームのマルチビーム機能を含む。レーザーシステムの水平解像度は、回転速度に応じて0.1°~0.4°である。垂直検出の回転速度は、5~20Hzの間で調整可能である。2Mバイト/秒のデータレートで300 000ポイント/秒が検出される。達成される測定精度は、約+/-3cmであり、1シグマに相当する。検出可能な測定距離は1mm~100mである。センサシステムのエネルギー要件は8Wの電力で、12Vで0.7Aに相当する。センサの全体寸法は、直径100mmおよび高さ65mmである。
【0200】
測定の方法
LiDARセンサ(Velodyne LiDAR VLP-16、903nmの動作波長を有する16レーザー)を部屋に配置し、正確に4.5mの距離にある標的対象物が検出されるように方向付けた。付属のソフトウェア(Velodyne製のVeloview)は「強度モード(intensity mode)」に設定した。この設定では、センサに反射される入力信号は、その強度に応じて多色表示で表される。表示の感度は0~100に設定した。その後、約100mmの距離で、表1に報告されている厚さを有するプラスチックシートをアクティブセンサ領域の前に配置し、その結果出力信号と反射入力信号の両方が試験シートの壁厚を貫通しなければならなかった(図2)。評価ソフトウェアで標的対象物の表示を使用して、個々の試験片(プラスチックシート)について、測定した信号減衰をそれぞれ、使用した調色配合物(colour formulation)に一義的に割り当てることが可能である。
【0201】
記録したレーザー信号の測定強度は0%~100%であった。信号の減衰(弱化)が低いほど、自動車部門でのLiDAR援用センサ用途向けの配合物がより好適になる。800nm~2500nmの範囲のIRに対するそれぞれのシートの透過率は、DIN ISO13468-2:2006に従って測定した。スペクトルのVIS領域の光透過率(380~780nm、透過度Ty)は、DIN ISO13468-2:2006に従って測定した(D65、10°、試料シートの層厚:4mm)に従って測定した。透過率測定はPerkin Elmer Lambda950分光光度計を光度計球とともに使用して行った。
【0202】
LiDARセンサの信号がセンサとカバーの間の距離に応じて変化するかどうかも調査した。調査した5~50cmの距離範囲では、LiDARセンサの信号に関連する変化はなかった。
【0203】
結果
【表1】
【0204】
表1から明らかなように、ある特定の基材材料のみが好適である。不適切な材料、例えばポリプロピレンなどの非常に薄い層の厚さでさえ、測定設定で強度が測定不能な程度にまでセンサ信号を減衰させる。同様に、ポリアミド(例15)やABS(例16)などの異なる基材が、測定設定でLiDARセンサに透過性を示さなかったことも驚くべきことであった。これらの熱可塑性物質はすべて、関連する層の厚さで、IR領域において透明または少なくとも半透明である。驚くべきことに、ポリエーテルスルホンやポリエステルなどの完全に非晶質のポリマーも、LiDARセンサに対して高い減衰を示す。
【0205】
シロキサン含有ポリカーボネートなどの変性ポリカーボネートでも、LiDARセンサと適切に組み合わせることができない。BPA含有ポリカーボネートはLiDARセンサに対して良好な透過性を有するが、微量の顔料で透過性を大幅に減衰させるのに十分である。このように、カーボンブラックは全スペクトル範囲にわたって、すなわちIR範囲でも高い吸収を有することが既知である。それにもかかわらず、微量のカーボンブラックを含有するポリカーボネートは依然として残留透過性を示す。それでもなお、そのような組成物は、LiDARセンサとの組み合わせに適していない(例9)。
【0206】
さらに、場合によってはポリカーボネートマトリックスに可溶な着色剤の組み合わせが、LiDAR信号の大きな減衰をもたらすこともまったく驚くべきことであった(例2および3)。対照的に、ビスフェノールAをベースとするポリカーボネートおよび/またはポリメチルメタクリレートなどの熱可塑性マトリックス中の本発明の着色剤の組み合わせは、LiDARセンサと組み合わせるのに適している。
【0207】
さらに、多くの組成物のメルトボリュームフローレイトを、ISO1133-1:2011に従って、1.2kgの荷重で300℃/320℃にて、特定の時間間隔にわたって測定した(表2)。それらから、比較例の基材材料2および3が、本発明の基材材料11よりも著しく不安定であることは明らかである。
【0208】
【表2】
図1
図2