(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】マルチスケールスキャニング画像化システムおよびマルチスケールスキャニング画像化方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
A61B3/10 300
A61B3/10 100
A61B3/10 ZDM
(21)【出願番号】P 2019558403
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2018059854
(87)【国際公開番号】W WO2018197288
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-16
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504053298
【氏名又は名称】イマジン・アイズ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】レベック、ザビエル
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108212(JP,A)
【文献】特表2013-517842(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0252951(US,A1)
【文献】特表2014-504529(JP,A)
【文献】特表2015-534482(JP,A)
【文献】特開2016-028674(JP,A)
【文献】特表2016-500530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜のマルチスケールスキャニング画像化システム(200)であって、
-所定のサイズの直径(Φ
ecl)を持つ少なくとも1つの第1の照射ビーム放出するように構成された少なくとも1つの第1の照射モジュールと、少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームを検出するように構成された少なくとも1つの第1の検出モジュール(210)と、
-前記少なくとも1つの第1の照射ビームおよび前記少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームのための、少なくとも1つの第1のスキャニングモジュール(231)と、
-前記少なくとも1つの第1の照射ビームを網膜上にフォーカスし、前記少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームを受光するための、「広領域」光路と呼ばれる第1の光路と、
-前記少なくとも1つの第1の照射ビームを網膜上にフォーカスし、前記少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームを受光するための、「小領域」光路と呼ばれる第2の光路と、
-少なくとも部分的には反射要素である、少なくとも1つの第1の光学偏向要素(241、242)と、を備え、
前記第1の光路は、
○前記少なくとも1つの第1のスキャニングモジュールの回転面近くに設けられた面を目(10)の入射瞳の面(17)に共役させるように構成された、第1の倍率(g
1)を持つ第1の光学システム(205、201)を備え、
前記第2の光路は、
○所定のサイズ(Φ
DM)の有効面(251)を有する波面補正デバイス(250)と、
○前記少なくとも1つの第1のスキャニングモジュールの回転面近くに設けられた面を波面補正デバイスの有効面に共役させるように構成された、第2の倍率(g
2)を持つ第2の光学システム(257、256、253)と、
○前記第1の光学システムの一部を備え、波面補正デバイスの有効面(251)を目(10)の入射瞳の面(17)に共役させるように構成された、第3の倍率(g
3)を持つ第3の光学システムと、を備え、
前記第1の光学偏向要素は、前記少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームを、第1の画像化経路および第2の画像化経路の一方および/または他方に送るように構成され、前記第1の画像化経路上であって、前記第1の光学システムおよび前記第3の光学システムの共通部分(201、205)と、前記少なくとも1つの第1のスキャニングモジュール(210)との間、または、前記第2の画像化経路上であって、前記第1の光学システムおよび前記第3の光学システムの共通部分と、前記波面補正デバイスとの間に位置づけられることを特徴とするマルチスケールスキャニング画像化システム。
【請求項2】
前記第1の光学偏向要素は、前記少なくとも1つの第1の照射ビームを、前記第1の画像化経路および前記第2の画像化経路の一方および/または他方に送るように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のマルチスケールスキャニング画像化システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の照射ビームを、前記第1の画像化経路および前記第2の画像化経路の一方および/または他方に送るように構成された第2の光学偏向要素をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のマルチスケールスキャニング画像化システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光学偏向要素は、前記第1の画像化経路および前記第2の画像化経路の一方を他方に切り替えるように構成された、取り外し可能な反射面であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマルチスケールスキャニング画像化システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1の光学偏向要素は、前記少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームを、前記第1の画像化経路および前記第2の画像化経路の一方に送り、少なくとも1つの網膜による第2の再放出ビームを、前記第1の画像化経路および前記第2の画像化経路の他方に送るように構成されたダイクロイックプレートであり、
前記第2の再放出ビームの波長は、前記第1の再放出ビームの波長と異なることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマルチスケールスキャニング画像化システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の照射ビームおよび前記第1の検出モジュールは、少なくとも1つの点光源(211)と、少なくとも1つの共焦点検出システムと、を備え、
AOSLO型の網膜画像化のために構成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマルチスケールスキャニング画像化システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の照射ビームおよび前記第1の検出モジュールは、少なくとも1つの点光源(221)と、少なくとも1つの干渉計と、を備え、
OCT型の網膜画像化のために構成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマルチスケールスキャニング画像化システム。
【請求項8】
-所定のサイズの直径を持つ少なくとも1つの第2の照射ビームを放出するように構成された第2の照射モジュールと、少なくとも1つの網膜による第2の再放出ビームを検出するように第2の検出モジュール(220)と、
-前記第2の照射ビームおよび前記網膜による第2の再放出ビームのための、第2のスキャニングモジュール(232)と、をさらに備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のマルチスケールスキャニング画像化システム。
【請求項9】
網膜によって再放出されて前記第2の画像化経路に送られるビームの光学欠損の少なくとも一部を解析するように構成された波面解析モジュールをさらに備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のマルチスケールスキャニング画像化システム。
【請求項10】
前記波面解析モジュールは、シャック-ハルトマン型の解析器を備えることを特徴とする請求項9に記載のマルチスケールスキャニング画像化システム。
【請求項11】
光学欠損を測定するために網膜を照射するための照射ビームを放出するように構成された照射モジュールをさらに備えることを特徴とする請求項9または10に記載のマルチスケールスキャニング画像化システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のマルチスケールスキャニング画像化システムを使用することを特徴とするマルチスケールスキャニング画像化方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第1の光学偏向要素は、取り外し可能な反射板であり、
前記第1の画像化経路および前記第2の画像化経路の一方から他方に切り替えるために、前記少なくとも1つの第1の光学偏向要素を取り外すステップを備えることを特徴とする請求項12に記載のマルチスケールスキャニング画像化方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第1の光学偏向要素は、ダイクロイックプレートであり、
前記少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームを、前記第1の画像化経路および前記第2の画像化経路の一方に送るステップと、少なくとも1つの網膜による第2の再放出ビームを、前記第1の画像化経路および前記第2の画像化経路の他方に送るステップと、を備え、
前記第2の再放出ビームの波長は、前記第1の再放出ビームの波長と異なることを特徴とする請求項12に記載のマルチスケールスキャニング画像化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチスケール網膜画像化システムおよび方法に関し、特に異なるサイズの網膜の領域を同時にまたは連続的に画像化するための網膜スキャニングシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜を高解像度で(すなわち細胞レベルで)画像化することにより、網膜疾患の早期診断が可能となる。網膜疾患の最初の結果は、網膜構造の光学的組織に影響を与えることが知られている。最も一般的で最も深刻な3つの網膜疾患(AMD(加齢黄斑変性)、緑内障および糖尿病網膜症)の影響を受けた網膜は光受容体である。これらの光受容体の間には、2μmから5μmのサイズの錐体と、人体で最も小さいサイズ(直径約6μm)の血管である網膜血管と、直径約2μmの神経細胞とがある。
【0003】
いくつかの研究機関により、細胞レベルの解像度の網膜画像を得るための異なる画像化システムが提案されている。「補償光学のための検視鏡」とも呼ばれるこれらのシステムは、網膜を照射または検出するための異なるモジュールを実装する。
しかしこれらはすべて、
目の光学欠損を測定するための補償光学モジュール、画像化システム、解像度向上のために網膜からの光と検出システム上への入射光を補正するシステムを含む。
【0004】
図1Aに、補償光学レーザースキャニングまたはAOSLO(補償光学レーザー検視鏡)を備えた検視鏡技術に基づく網膜画像化システムのブロック図を示す。これは例えば以下の文献に記載されている。
A. Roorda et al. "Adaptive optics scanning laser ophthalmoscopy" Optics Express 405, Vol. 10, No. 9, 2002。
AOSLOのアセンブリは主に、網膜の照射モジュール11、検出モジュール12、スキャニングモジュール13、入射光線の補正面を備えた補正モジュール14、波面解析モジュール15および画像化光学システム16を含む。照射モジュールは、点光源との点光源から照射ビームを生成するための光学レンズとを形成するために、例えば光ファイバに接続されたレーザーダイオードを備える。照射モジュール11の絞りは瞳を定義する。照射ビームは、例えば1組のミラー(図示せず)を用いて、補正モジュール14(例えば、可変ミラー)上に送られ、被験者の目10を垂直および水平方向にスキャンするためのスキャニングモジュール14に導かれる。照射ビームは、網膜をスキャンする準点ビームを網膜上で形成するためにフォーカスされる。続いて光は、例えば網膜によって後方散乱され、同じ光学スキャニングを受け、可変ミラー14と検出モジュール12に送られる。この検出モジュール12は、例えば共焦点検出孔と、光電子増倍管やアバランシェフォトダイオードなどで構成された検出器を備える。画像化システム16に象徴される1組の光学要素16が、網膜面と検出器の共焦点孔とを光学的に共役させる。波面解析モジュール15は、例えばシャック-ハルトマン型の解析器を備える。この波面解析モジュール15は、網膜によって後方散乱された光を受光し、照射ビームと後方散乱ビームとを補正するために可変ミラーを制御する。照射ビームの瞳の面、可変ミラーの面および波面解析モジュールの解析面は、目17の予め定められた面(例えば、目の瞳の面)に光学的に共役される。
【0005】
図1Bに、補償光学要素と組み合わされたOCT(光干渉断層撮影)型のアセンブリのブロック図を示す。こうしたシステムは、例えば以下の文献に記載されている。
R. Zawadzki "Adaptive-optics optical coherence tomography for high resolution and high speed 3D retinal in vivo imaging" Optics Express 8532, Vol. 13, No. 21, 2005。
OCTは、低コヒーレンスの干渉計を使用することに基づく。この画像化技術により、数ミクロンの解像度で組織切片の生体内画像を得ることができる。眼科学におけるOCTへの関心は、生体内組織を他の組織散乱を通して明らかにできることに由来する。
図1Bのアセンブリは、OCT型のアセンブリの主要な要素を極めて簡略化した形で表す。AOSLOと類似した構成が見られるが、検出モジュール12はOCTに特化されたものであり、干渉計(例えば、マイケルソン型のファイバ干渉計)を含む。ファイバのエントリーポイント(図示せず)は、レンズ16で象徴される光学共役システムを用いて、目10の網膜に共役されている。AOSLOと比べて、OCT技術は、取得スピードを犠牲にして網膜の縦方向のセクションを与える。
【0006】
しかしながら、前述の補償光学要素を備える検視鏡は、解像度に優れる一方、網膜の画像化領域が限定される。典型的にはその領域は、数度(通常は4°×4°より狭い)である。これは、簡単な補償光学システムの場合、目のisoplanetism領域がより広い領域の収差補正ができないことによる。
【0007】
以下の文献には、特別な光学構成を持つAOSLO型の補償光学検視鏡が記載されている。
A. Dubra et al. "First-order design of a reflective viewfinder for adaptive optics ophthalmoscopy" Optics Express, Vol. 20, No. 24 (2012)。
これは、取り外し可能な光レリーシステムにより、高解像度の「小領域」モードと低解像度の「広領域」モードとを切り替えることができる。取り外し可能な光リレーシステムを取り付けることにより、瞳倍率を落とす代わりに、より高角倍率を持つ「広領域」光学構成に切り替えることができる。この「広領域」により、ユーザは、網膜の関心領域をサーチすることができる。その後、取り外し可能な光リレーシステムを取り外し、高解像度で網膜を画像化するための「小領域」モードに戻ることができる。
【0008】
しかし実際は、こうしたシステムの商用化は難しい。実際、複数の光共役要素の組を含む光リレーシステムは、すべての光学設定の再調整を必要とする。これは繊細でしばしば長時間のオペレーションとなるため、経験の浅いユーザには向かない。
【0009】
国際出願公開WO2016/009603も、小領域および広領域の画像化に適したAOSLO型の網膜画像化システムを開示する。より具体的には、開示されたシステムは、それぞれ低解像度広領域画像化および高解像度小領域画像化に適した2つのユニットを備える。これらのユニットは、ビームスプリッタにより分離される。各ユニットは、特定のスキャニングモジュールと、それぞれの画像化システムに関連する照射および検出モジュールと、を備える。ユーザは、調整を必要とすることなく、小領域と広領域の両方を画像化することができる。しかしながらこのシステムは、広領域と小領域のユニットを形成するめに、照射および検出モジュールを二重に持つことが必要である。これは望ましいことではない。
【0010】
米国特許7、758、189は、LSLO(ラインスキャニングレーザー検視鏡)型の第1の広領域ユニットと、AO-SDOCT(補償光学スペクトル領域光断層撮影)型の第2の小領域ユニットと、を備える網膜画像化システムを開示する。この特許は、前述の国際出願公開WO2016/009603と同様に、各ユニットが、特定のスキャニングモジュールに関する照射および検出モジュールと、それぞれの画像化システムと、を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の目的の1つは、マルチスケール網膜スキャニング画像化システムを与えることにある。すなわちこれは、先行技術にあった限定のない、広領域と小領域の画像化に適したシステムである。特に本開示の目的は、同じ照射および検出モジュールと、同じスキャニングモジュールと、を用いて小領域および広領域の画像化が可能な、しかも経験の浅いユーザでも困難を伴わずに使うことのできる、マルチスケール網膜スキャニング画像化システムを与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本開示は、網膜のマルチスケールスキャニング画像化システムに関する。このシステムは、
-所定のサイズの直径を持つ少なくとも1つの第1の照射ビーム放出するように構成された少なくとも1つの第1の照射モジュールと、少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームを検出するように構成された少なくとも1つの第1の検出モジュール:
-少なくとも1つの第1の照射ビームおよび少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームのための、少なくとも1つの第1のスキャニングモジュール:
-少なくとも1つの第1の照射ビームを網膜上にフォーカスし、少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームを受光するための、「広領域」光路と呼ばれる第1の光路:
-少なくとも1つの第1の照射ビームを網膜上にフォーカスし、少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームを受光するための、「小領域」光路と呼ばれる第2の光路:
-少なくとも部分的には反射要素である、少なくとも1つの第1の光学偏向要素:
を備える。
第1の光路は、
○少なくとも1つの第1のスキャニングモジュールの回転面近くに設けられた面を目の入射瞳の面に共役させるように構成された、第1の倍率を持つ第1の光学システム
を備える。
第2の光路は、
○所定のサイズの有効面を有する波面補正デバイス;
○少なくとも1つの第1のスキャニングモジュールの回転面近くに設けられた面を波面補正デバイスの有効面に共役させるように構成された、第2の倍率を持つ第2の光学システム;
○第1の光学システムの一部を備え、波面補正デバイスの有効面を目の入射瞳の面に共役させるように構成された、第3の倍率を持つ第3の光学システム;
を備える。
第1の光学偏向要素は、少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームを、第1の画像化経路および第2の画像化経路の一方および/または他方に送るように構成され、第1の画像化経路上であって、第1の光学システムおよび第3の光学システムの共通部分と、少なくとも1つの第1のスキャニングモジュールとの間に位置づけられ、第2の画像化経路上であって、第1の光学システムおよび第3の光学システムの共通部分と、波面補正デバイスとの間に位置づけられる。
【0013】
本発明者は、本開示の画像化システムにより、単一の照射および検出モジュールと、これら両光路のための単一のスキャニングモジュールと、を用いて、小領域および/または広領域の画像化が可能となること、そしてこれが非常に使いやすいことを見出した。実際、システムの第1の光学偏向要素の特定の構成は、システムに固定された要素を用いて、各光路に特有の瞳倍率を定義することができる。一方の光路から他方の光路に切り替えるとき、光パワーを用いた光学要素の調整は不要である。
【0014】
少なくとも1つの第1の光学偏向要素は、簡易な取り外し可能な反射面(例えば、第1の光路と第2の光路とを切り替えるように構成された、取り外し可能なミラー)であってよい。
【0015】
前記少なくとも1つの第1の光学偏向要素は、少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームを第1および第2の画像化経路の一方に送り、少なくとも1つの第2の網膜による再放出ビーム(少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームとは異なる波長を持つ)を第1および第2の画像化経路の一他方に送るように構成された、ダイクロイックプレートであってもよい。この構成は、異なる波長を持つ複数のビームで動作すること(従って、2つの光源があること、および潜在的には照射および検出モジュールが2つの検出器を持つこと)を必要とするが、単一のスキャニングモジュールで小領域と広領域とを同時に画像化できるという利点を持つ。従って、同じスキャニングモジュールで、小領域および広領域光路での両方の画像化を同時に実行することができる。これらは、同じ角度偏向を持つだろう。これにより、2つの画像の迅速なコロケーションが可能となる。
【0016】
1つ以上の実施の形態によれば、第1の光学偏向要素(例えば、取り外し可能な反射板またはダイクロイックプレート)は、少なくとも1つの第1の照射ビームを、第1の画像化経路および第2の画像化経路の一方および/または他方に送るように構成される。この場合、画像化システム内の光学偏向要素は1つだけでよい。従って、実装が極めて簡易となる。
【0017】
1つ以上の実施の形態によれば、第2の光学偏向要素(例えば、第2の取り外し可能な反射面またはダイクロイックプレート)が、少なくとも1つの第1の照射ビームを、第1の画像化経路および第2の画像化経路の一方または他方に送るように構成される。
【0018】
1つ以上の実施の形態によれば、第1の照射モジュールおよび第1の検出モジュールは、AOSLO型の網膜画像化のために構成される。この場合の第1の照射モジュールおよび第1の検出モジュールは、少なくとも1つの点光源と、少なくとも1つの共焦点検出システムと、を備える。
【0019】
1つ以上の実施の形態によれば、第1の照射モジュールおよび第1の検出モジュールは、OCT型の網膜画像化のために構成される。この場合の第1の照射モジュールおよび第1の検出モジュールは、少なくとも1つの点光源と、少なくとも1つの検出用干渉計と、を備える。
【0020】
1つ以上の実施の形態によれば、網膜のマルチスケールスキャニング画像化システムは、第1の照射モジュールと、第1の検出モジュールと、第2の照射モジュールと、第2の検出モジュールと、を備える。これらの各々は、スキャニングモジュールに関する。例えば、第1の照射および検出モジュールは、AOSLO型の網膜画像化のために構成される。そして第2の照射および検出モジュールは、OCT型の網膜画像化のために構成される。これらはそれぞれ、小領域モードまたは広領域モードで動作する同じシステムを備える。
【0021】
1つ以上の実施の形態によれば、スキャニングモジュールは、2つの異なる方向をスキャンするための2次元スキャニングモジュールである。あるいはスキャニングモジュールは、1次元スキャニングモジュール(例えば、光の線放出の場合、円柱レンズと検出器のストリップが用いられる)であってもよい。
【0022】
従って、1つ以上の実施の形態によれば、網膜のマルチスケールスキャニング画像化システムは、以下をさらに備える。
-所定のサイズの直径を持つ少なくとも1つの第2の照射ビーム放出するように構成された少なくとも1つの第2の照射モジュールと、少なくとも1つの第2の網膜による再放出ビームを検出するように構成された少なくとも1つの第2の検出モジュール;
-少なくとも1つの第2の照射ビームおよび少なくとも1つの第2の網膜による再放出ビームのための、第2のスキャニングモジュール。
【0023】
1つ以上の実施の形態によれば、網膜のマルチスケールスキャニング画像化システムは、網膜により再放出され、第2の画像化経路に送られたビームの光学欠損の少なくとも一部を解析するように構成された、波面解析モジュールをさらに備える。
【0024】
以下の説明では、「光学欠損」という用語は、網膜と照射および検出モジュールの検出器との間の光線に発生する擾乱のことと理解される。これらの欠損は、例えば目の光学システムによって発生したものだけでなく、小領域画像化経路の光学領域の少なくとも一部によって発生したものも含む。
【0025】
1つ以上の実施の形態によれば、波面解析モジュールは、シャック-ハルトマン型の解析器を備える。こうした装置により、光学欠損によって損なわれた光学システムを通過した後の光線の名目角度に対する角度の変化の解析が可能となる。こうした装置は、例えばマイクロレンズアレイの焦点面上でのマトリックス検出器の配置を用いて測定を実行する。このように測定された変化は、波面補正デバイスの制御のために直接使うことができる。
【0026】
1つ以上の実施の形態によれば、マルチスケールスキャニング画像化システムは、波面測定のための網膜照射ビームを放出するように構成された照射モジュールをさらに備える。
【0027】
1つ以上の実施の形態によれば、波面補正デバイスは、可変ミラー、液晶空間光変調器(SLM)、MEMS(Micro Electro Mechanical System)またはマルチアクチュエータ液体レンズなどを含む。波面補正デバイスは、波面解析モジュールによって(例えば、スレービングクローズドループ構成で)制御されてもよく、照射および検出モジュールで取得された網膜画像の品質に関する基準に基づくアルゴリズムによって制御されてもよい。
【0028】
第2の態様では、本開示は、第1の態様の画像化システムを用いて、網膜をスキャニングすることにより画像化する方法に関する。
【0029】
1つ以上の実施の形態によれば、少なくとも1つの第1の光学偏向要素は、取り外し可能な反射面である。この方法は、第1および第2の画像化経路の一方を他方に切り替えるために、少なくとも1つの第1の光学要素を取り外すステップを備える。
【0030】
1つ以上の実施の形態によれば、反射面は、反射面と平行な挿入動作または除去動作により、挿入または除去される。これにより、位置決め誤差が、ミラーが停止中に反射面で反射されるビームの調整に影響を与えることを回避することができる。
【0031】
1つ以上の実施の形態によれば、少なくとも1つの第1の光学偏向要素は、ダイクロイックプレートである。この方法は、少なくとも1つの網膜による第1の再放出ビームを、第1の画像化経路および第2の画像化経路の一方に送るステップと、少なくとも1つの第2の網膜による再放出ビームを、他方の画像化経路に送るステップと、を備える。ここで、第1および第2の網膜による再放出ビームは、異なる波長を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明のその他の利点および特徴は、以下の図面を参照することにより明らかとなる。
【
図1A】(すでに説明したとおり)先行技術による既知の網膜スキャニング画像化システムのブロック図である。
【
図1B】(すでに説明したとおり)先行技術による既知の網膜スキャニング画像化システムのブロック図である。
【
図2A】本開示に係る網膜スキャニング画像化システムの第1の実施の形態の動作を示す図である。
【
図2B】本開示に係る網膜スキャニング画像化システムの第1の実施の形態の動作を示す図である。
【
図2A】本開示に係る網膜スキャニング画像化システムの第1の実施の形態の動作を示す図である。
【
図2C】本開示に係る網膜スキャニング画像化システムの第1の実施の形態の動作を示す図である。
【
図3A】AOSLO型の網膜画像化に適した照射および検出モジュールの例を示す図である。
【
図3B】OCT型の網膜画像化に適した照射および検出モジュールの例を示す図である。
【
図4】本開示に係る網膜画像化システムの別の例の動作を示す図である。
【
図5A】本開示に係る網膜画像化システムの別の例の動作を示す図である。
【
図5B】本開示に係る網膜画像化システムの別の例の動作を示す図である。整合性を目的に、すべての図面で同じ要素に同じ符号を付す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図2A-2Cは、マルチスケール網膜スキャニング画像化システムの第1の実施の形態の動作を示す。
【0034】
この例では、単一の取り外し可能な光学偏向要素241(例えば、異なる波長の照射ビームと網膜による再放出ビームとを反射する、取り外し可能な平面ミラー)により、広領域画像化経路(
図2A)と小領域画像化経路(
図2)とを切り替えることができる。
図2Cは、小領域画像化の場合における光学欠損の解析を示す。
【0035】
図2A-2Cに示される画像化システム200は、第1の照射および検出モジュール210と、第2の照射および検出モジュール220と、を備える。このような照射および検出モジュールの例は、
図3A-3Bを参照して詳細に説明する。照射および検出モジュールの各々は、1つ以上の照射ビームを放出し、当該照射ビームを照射された網膜による1つ以上の再放出ビームを検出するのに適する。網膜による再放出ビームは、照射ビームと同じ波長で後方散乱されたビームであってもよいし、照射ビームが網膜の蛍光メカニズムを誘発したとき異なる波長で再放出されたビームであってもよい。
【0036】
図4を参照して後述するように、例えば照射および検出モジュールは、網膜の2つの異なる波長の照射ビームの放出に適してよい。代替的に、
図2A-2Cの例に示されるように、照射および検出モジュールは、所定の波長で照射ビームを放出し、同じ波長の(または、網膜による螢光再放出の場合は異なる波長の)網膜による再放出ビームを検出するのに適する。
【0037】
画像化システム200は、照射および検出モジュール210、220に関連して、例えば2次元スキャニングに適するスキャニングモジュール231、232をさらに含む。
【0038】
各スキャニングモジュールは、照射および検出モジュールによって放出された照射ビームをスキャンすることと、網膜によって再放出されて照射および検出モジュールに送られるビームをスキャンすることに適する。スキャニングモジュールまたは「スキャナー」は、例えばガルバノメトリックモータで駆動されるミラーの組み合わせ、またはMEMSミラー(1軸)の組み合わせもしくは2軸のMEMSミラーを備える。各スキャニングモジュールのために、回転軸を備える回転面を定義することができる。その後この回転面は、ミラー面と併合される。2つの回転を得るために2つの分離したミラーを使う場合は、2つのミラーの回転面が光学的に共役である(例えば、2つの面を共役させる光学システムを用いて)と有利である。スキャニングモジュールが2つの分離した共役でないスキャニングミラーを備えた2次元スキャニングモジュールである場合は、これらのミラーが互いにできる限り接近していると有利である。
【0039】
図2A-2Cに示される例では、それぞれ照射および検出モジュール210、220によって放出され、スキャニングモジュール231、232によってスキャンされた照射ビームは、結合され、部分反射プレート206(例えば、照射ビームが異なる波長を保つ場合はダイクロイックプレート)を用いて画像化経路に送られる。同じ部分反射プレートが、網膜による再放出ビームを、照射および検出モジュールの各々に分離する。
【0040】
本開示に係る画像化システム200は、「広領域光路」と呼ばれる第1の光路と、「小領域光路」と呼ばれる第2の光路と、を備える。
図2A-2Cの例では、これらの光路の一方または他方は、取り外し可能な反射面241を取りける、または取り外すことによって実現される。これらの光路の各々により、照射および検出モジュールから来る照射ビームを網膜上にフォーカスし、網膜による再放出ビームを受光することができる。
【0041】
図2Aは、広領域光路が実現された場合を示す。本例ではこの場合は、取り外し可能な反射面241が取り付けられる。取り外し可能な反射面241は平面ミラーのような単純なミラーでよいため、調整が不要である。例えばミラーは、反射面と平行な挿入動作によって挿入される。これにより、位置決め誤差が、ミラーが停止中に反射面で反射されるビームの調整に影響を与えることを回避することができる。
【0042】
広領域光路は、第1の光学システムを備える。本例では第1の光学システムは、光学要素201、205の組を備え、第1の倍率g1を持つ。第1の光学システムは、スキャニングモジュールの回転面近くに位置付けられたプレートを、患者の目10の入射瞳の面17に共役させる。
【0043】
スキャニングモジュールが回転軸を持つミラーまたは互いに光学的に共役な2つのミラーを備える場合は、第1の光学システムは、回転面(またはその1つ)を目10の入射瞳の面17に共役させることができる。スキャニングモジュールが2つの分離した非共役のスキャニングミラーを持つ2次元スキャニングモジュールである場合は、第1の光学システムは、2つのミラーの間の面(例えば、2つのミラーから等距離に位置する面)を目10の入射瞳の面17に共役させることができる。
【0044】
広領域光路は、照射ビームを目10に導くための光学反射要素(本例では、204、203、202)の組をさらに備える。
【0045】
このようにして、「広領域」画像化の場合、目の瞳の面17における光学画像化システムの射出瞳の直径ΦE1は以下で与えられる。
ΦE1=g1Φecl (1)
【0046】
「光学画像化システム」は、目の入射瞳と照射および検出モジュールの検出器との間にある画像化要素の組によって定義される。Φeclは、スキャニングモジュールから出射する照射ビームの直径である。
【0047】
2つの照射および検出モジュールがある場合は、照射ビームに異なる直径があってもよく、従って異なるΦeclの値があってもよいことに注意する。ただしこれらの違いは最小化されるべきである。
【0048】
光学システムの「瞳」という用語は、システム内の光線の入射や伝播を絞るための、より小さい開口のことをいう。物理的な絞り(すなわち、考察している光学システムの瞳)が光または仮想光の入射を絞る場合、開口が光学システムの物理的な瞳の画像であって、当該光学システム内に存在し例えば絞りによって作られる場合、この開口はアクチュアルであってよい。こうして、光学画像化システムの射出瞳が目の瞳面または目の近くの面に位置する場合は、この射出瞳は、当該光学画像化システム内に設けられた物理的絞りの虚像である。
【0049】
図2Bは、小領域光路が実現された場合を示す。本例ではこの場合は、取り外し可能な反射面241が取り外される。
【0050】
「小領域」光路は、所定のサイズの有効面251を有する波面補正デバイス250と、スキャニングモジュールの回転面近くに位置する面を有効面251に共役させるために使われ、第2の倍率g
2を持つ第2の光学システムと、を含む。
図2A-2Cに示される例では、第2の光学システムは、光学要素257、256、253の組を備える。
【0051】
広領域光路に関しては、スキャニングモジュールが回転面を備えたミラーまたは互いに光学的に共役な2つのミラーを備える場合は、第2の光学システムは、回転面(またはその1つ)を波面補正デバイスの有効面251に共役させることができる。スキャニングモジュールが2つの分離した非共役のスキャニングミラーを持つ2次元スキャニングモジュールである場合は、第2の光学システムは、2つのミラーの間の面(例えば、2つのミラーから等距離に位置する面)を波面補正デバイスの有効面251に共役させることができる。
【0052】
「小領域」光路は、補正デバイスの有効面251を目10の入射瞳の面17に共役させることに適し、倍率g
3を持つ第3の光学システムをさらに備える。第3の光学システムは、第1の光学システムの少なくとも一部を備える。
図2A-2Cの例では、第3の光学システムは、第1の光学システムの要素のすべて、すなわち、光学要素205、201を備える。この場合第3の光学システムは、第1の光学システムと同一である(g
3=g
1)。
【0053】
小領域光路は、照射ビームを患者の目10に導くための光学反射要素の組(本例では、255、254、252)をさらに備える。
【0054】
このようにして、「小領域」画像化の場合、目の瞳の面17における光学画像化システムの射出瞳の直径ΦE2は以下で与えられる。
ΦE2=g3ΦDM (2)
【0055】
ここでΦDMは、波面補正デバイスの照射面の直径および波面補正デバイスの有効面の直径のうち小さい方の値であり、以下を満足する。
ΦDM=g2Φecl (3)
【0056】
一般に解像度を最適化するシステムでは、ΦDMは波面補正デバイスの有効面の直径である。
【0057】
結果として、スキャニングモジュールから出射する照射ビームの直径と、目の瞳の面17における光学画像化システムの出射瞳の直径ΦE2との関係は以下のようになる。
ΦE2=g3・g2Φecl (4)
【0058】
式(1)および(4)から、単に反射面241を導入または除去することによって、目の瞳の面(17)における光学画像化システムの出射瞳の直径のサイズを変えることが可能であることが分かる。
【0059】
瞳がより大きくなると(
図2B)、1つ以上のスキャニングミラーのレベルにおける同じスキャニング角に関し、視野がより小さくなる代わりに、解像度がより高くなる。実際、解像度の限界は瞳のサイズに直接比例する。これに対し、目の入射瞳におけるスキャニング角は、1つ以上のスキャニングミラーにおけるスキャニング角に、1つ以上のスキャニングミラーと目の入射瞳との間にある光学システムの倍率をかけたものに等しい。しかしながら、拡大度は倍率の逆数である。従って、小領域画像化の場合の入射瞳が広領域画像化の目の入射瞳と比べてX倍大きい場合は、小領域画像化の場合の入射瞳における目へのスキャニング角は、広領域画像化の場合の入射瞳における目へのスキャニング角よりX倍小さくなる(1つ以上のスキャニングミラーの同じ物理的スキャニング角に関して)。小領域画像化の場合の目の入射瞳におけるスキャニング角の減少は全く妥当である。なぜなら、より高い解像度でシークするとき(小領域画像化の場合)は、目のanisoplanatism領域もまた、視野を数度(典型的には、4°×4°)にまで狭めるからである。
【0060】
図2A-2Cの例では、画像化システム200は、網膜によって再放出されて第2の画像化経路に送られるビームの光学欠損の解析に適した、波面解析モジュールをさらに備える。
図2Cに、光学欠損の解析のための光ビームの光路(解析光路)をより具体的に示す。
【0061】
これは、網膜と照射および検出モジュールの検出器との間(より具体的には、網膜と波面解析器の解析面との間)の光線に発生する擾乱の解析を含む。従って本開示における光学欠損は、目の光学システムによって発生した欠損を含むが、解析光路を共有する光学画像化システムの一部によって発生した欠損も含む。しかしながら、解析光路のいかなる欠損も、製造中に測定できたはずであり、補正を考慮できる点に注意する。波面解析モジュールは、マイクロレンズの組によって形成された解析面271と、当該マイクロレンズの焦点面に設置された検出器と、を備える、例えばシャック-ハルトマン型の解析器270(HASO(登録商標)32‐eye Imagine Eyes(登録商標)を含む。
【0062】
図2A-2Cに示される例では、部分反射プレート258により、網膜によって再放出されて波面解析モジュールに送られるビームを収集することができる。本例での光学欠損モジュールは、光学要素265、267の組を含む。これにより、解析面271を、画像化システムの入射瞳の面17および反射ミラー266に共役させることができる。本実施の形態では、プレート258はダイクロイックプレートである。以下に示すように、解析ビームは、1つ以上の網膜による再放出ビームとは異なる波長を持つ。
【0063】
コンピュータ(図示せず)が、システムの光学欠損を決定し、補正コマンドを波面補正デバイス250(例えば、Mirao52-e Imagine Eyesタイプの可変ミラー)に送る。シャック-ハルトマンと関連したコンピュータが、光学欠損によって損なわれた光学システムを通過した後の光線の名目角度に対する角度の偏差を決定すると有利である。このように測定された偏差は、可変ミラーの制御のために直接使うことができる。可変ミラーの面もまた、画像化システム入射瞳の面17に共役される。
【0064】
液晶光を備える空間変調器(SLMまたは「空間光変調器」)、MEMSまたはマルチアクチュエータ液晶レンズのような他の波面補正デバイスが使われてもよい。
【0065】
図2A-2Cに示される例では、マルチスケールスキャニング画像化システムは、光学欠損測定のための網膜の照射ビームを放射するのに適した照射モジュールをさらに備える。
【0066】
本例の照射モジュールは、画像化システムの光学欠損を解析するために、網膜を照射するための光源261を備える。光源261は、患者の目の網膜上に2次光源点を形成することができる。例えば、光学欠損解析のための光源261の中心波長は750nmである。このような波長は、被験者にとって快適であり、1つ以上の画像化波長にできる限り近いものである。光学欠損測定と網膜画像化との光路を分離するために、光源261の波長は、照射および検出モジュール210、220の光源の波長と異なることが望ましい。光源261は、例えばレーザーダイオード、より好ましくはSLEDスーパールミネセントダイオードである。画像化のために網膜を照射し、光学欠損を解析するためのビームを患者の目10に送るために、ビームスプリッタ202が使われる。光学要素262、263、264の組により、網膜上にフォーカスされるビームを光源261から形成することができる。被験者の目の屈折誤差を補償するために、レンズ263は可変パワーの液晶レンズ(例えば、Varioptic(登録商標) Artic(登録商標)25H0タイプ)であってよい。
【0067】
図3Aおよび3Bは、それぞれAOSLO型およびOCT型の網膜画像化の照射および検出モジュールの例を示す。
【0068】
図3Aは、AOSLO型の網膜画像化に適した既知のタイプの照射および検出モジュール210と、モジュール210によって放射された照射ビームおよび当該照射ビームで照射された後に網膜による再放出ビームをスキャンするためのスキャニングモジュール231と、を示す。本例のモジュール210は、光源点を形成するための光源211(例えば、光ファイバに結合されたレーザーダイオード)と、光源点から所定のサイズΦ
eclの直径の照射ビームを形成するための光学レンズ212と、を備える。照射および検出モジュール210は、共焦点検出孔215をさらに備える。網膜による再放出ビームは、光学要素214を用いてこの共焦点検出孔215を通してフォーカスされ、モジュール210に戻る。モジュール210は、信号処理ユニット217に接続された検出器216(例えば、光電子増倍管またはアバランシェフォトダイオード)をさらに備える。信号処理ユニット217はディスプレイ218に接続される。部分反射プレート213が、放射ビームと受光ビームを分離する。
【0069】
図3Bは、OCT型の網膜画像化に適した既知のタイプの照射および検出モジュール220と、モジュール220によって放射された照射ビームおよび当該照射ビームで照射された後に網膜による再放出ビームをスキャンするためのスキャニングモジュール232と、を示す。本例のモジュール220は、SLED型の光源のような時間コヒーレンスの低い光源221と、反射要素225と光学要素224を有するファイバ参照アームを備えた、例えばマイケルソン型のファイバ干渉計干渉計で形成された検出モジュールと、を備える。カプラー223は、それぞれ光源、参照アーム、網膜からのビームをファイバ222-1、222-2、222-3から受光し、検出器226(例えば、光電子増倍管またはアバランシェフォトダイオード)上で干渉を形成する。モジュール220は、ディスプレイ228に接続された信号処理ユニット227をさらに備える。
【0070】
図4は、本開示に係る別の例である網膜画像化システムである網膜画像化システム400の動作を示す。
【0071】
この例では、小領域光路と広領域光路とを分離するための光学偏向要素は、取り外し可能な反射面ではなく、ダイクロイックプレート441である。
図2A-2Cを参照して説明した同じ要素にはすべて同じ符号を付し、改めて説明しない。
【0072】
図の理解を容易にするため、この例では照射および検出モジュール410(例えば、AOSLO型の網膜画像化に適した照射および検出モジュール)のみが動作していると仮定する。
【0073】
この例では、照射および検出モジュール410は、第1の波長で照射および検出するためのサブモジュール410Aと、第1の波長とは異なる第2の波長で照射および検出するためのサブモジュール410Bと、を備える。
【0074】
この例では、第1の波長の照射ビームおよびサブモジュール410Aで再放出されたビーム(太線で示される)は、スキャニングモジュール231によってスキャンされ、その後ダイクロイックプレート441を用いて、第1の光学システム205、201を備える広領域光路に直接反射される。
【0075】
第2の波長の照射ビームおよびサブモジュール410Bで再放出されたビーム(細線で示される)もまた、スキャニングモジュール231によってスキャンされ、その後ダイクロイックプレート441を用いて、第2の光学システム(257、256、253)および第3の光学システム(205、201)を備える小領域光路に送られる。
【0076】
部分反射ミラー413により、目の網膜に送られる照射ビームおよび照射された網膜による再放出ビームを、それぞれ各サブモジュールに送ることができる。
【0077】
この構成により、同じスキャニングモジュール231を用いて、小領域光路と広領域光路に同時にアクセスすることができる。これにより、非常に容易で高信頼な2つの画像のコロケーションが可能となる。2つの領域の角度サイズの関係は、目の瞳のレベルにおける2つのビームの瞳の直径の比に等しい。
【0078】
図5A-5Bは、本開示に係る別の例の網膜画像化システムである網膜画像化システム500の動作を示す。
【0079】
この例では、第1の光学偏向要素541(少なくとも部分的には、反射要素である)により、網膜による第1の再放出ビームを、第1の画像化経路および第2の画像化経路の一方および/または他方に送ることができる。そして第2の光学偏向要素542により、第1の照射ビームの少なくとも1つを、第1の画像化経路および第2の画像化経路の一方および/または他方に送ることができる。
【0080】
再び、
図2A-2Cを参照して説明した同じ要素にはすべて同じ符号を付し、改めて説明しない。
【0081】
例えば、第1の光学偏向要素541および第2の光学偏向要素542は、接続された取り外し可能な反射面である。代替的に、第1の光学偏向要素541および第2の光学偏向要素542は、
図4を参照して説明したダイクロイックプレートであってもよい。
【0082】
図5Aは、第1の光学システム205、201を備える広領域画像化経路が実現されたときの網膜画像化システムの動作を示す。この例では、この構成は、偏向要素541、542を取り外したときに実現される。
図5Bは、小領域画像化経路が実現されたときの網膜画像化システムの動作を示す。この例では、この構成は、偏向要素541、542を取り付けたときに実現される。この特定の構成により、広領域光路における偏向要素の実際の数を制限することができる。
【0083】
前述と同様、「小領域」光路は、所定のサイズの有効面251を有する波面補正デバイス250と、スキャニングモジュールの回転面を有効面251に共役させるために使われ、第2の倍率g
2を持つ第2の光学システムと、を備える。例えば
図5A-5Bに示される第2の光学システムは、光学要素557、556、553の組を含む。前述と同様、「小領域」光路は、補正デバイスの受光面251を目10の入射瞳の面17に共役させるのに適し、第3の倍率g
3を持つ第3の光学システムをさらに含む。小領域光路は、照射ビームを患者の目に導くための光学偏向要素の組(この例では、555、554、552)さらに備える。前述のように、部分反射プレート558(例えば、ダイクロイックプレート)により、網膜による再放出ビームを、解析光源261の波長で、光学欠損解析モジュールに向けて偏向させることができる。
【0084】
複数の詳細な実施の形態の例を説明したが、本発明に係る網膜画像化装置および方法は様々な変形、改造、改良を含む。当業者は、これらの変形、改造、改良も、下記の請求項で定義される本発明の範囲に含まれることを理解するだろう。
【0085】
特に、単一の照射および検出モジュールを使うことができる。この場合、
図2A-2C、4、5A-5Bに示される部分反射プレート206は、もはや不要である。さらに、AOSLO型およびOCT型の網膜画像化に適した、照射および検出モジュールを備える網膜画像化システムの例を説明した。一般に本開示は、適切な光学要素による網膜のスキャニングを用いた任意の画像化装置に適用可能である。
【0086】
選択的に、照射および検出モジュール210、220の1つによる照射に起因して、網膜による再放出ビーム上で光学欠損解析を可能とする、光学欠損解析のための網膜照射モジュールがあってもよい。例えば、取得画像の品質に関する基準に基づく補正方法を実装することにより、波面解析モジュールを割愛することもできる。しかしながら処理速度の観点からは、波面解析モジュールを使うことが望ましい。
【0087】
さらに、説明を目的に光学システムを例示したが、これは応用上の必要に応じて変わってもよい。例えば屈折光学システムは、反射光学システムに置き換えられてもよい。
【0088】
また
図2A-2Cの例では、「広領域」画像化経路は1つ以上の偏向光学要素を取り付けることによって実現され、「小領域」画像化経路は1つ以上の偏向光学要素を取り外すことによって実現された。しかしながら光学システムは、これを逆転することより簡易な設計とすることもできる(
図5A-5Bに示される例のように)。