(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20221116BHJP
【FI】
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2020046104
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000241957
【氏名又は名称】北海道電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】二俣 耕哉
(72)【発明者】
【氏名】盛 正憲
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-042234(JP,A)
【文献】特開平08-098402(JP,A)
【文献】国際公開第2016/207976(WO,A1)
【文献】特開昭57-046631(JP,A)
【文献】特開2018-137858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42~ 7/98
H02J 1/00~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1変換所及び第2変換所と、
前記第1変換所及び前記第2変換所を接続する、第1極本線、第2極本線、及び、帰線を備え、
前記第1変換所には、直流/交流変換器である第1の第1極変換器及び第1の第2極変換器が設けられ、
前記第2変換所には、直流/交流変換器である第2の第1極変換器及び第2の第2極変換器が設けられ、
前記第1の第1極変換器には、前記第1極本線と前記帰線が接続され、
前記第1の第2極変換器には、前記第2極本線と前記帰線が接続され、
前記第2の第1極変換器には、前記第1極本線と前記帰線が接続され、
前記第2の第2極変換器には、前記第2極本線と前記帰線が接続され、
前記帰線は、前記第1変換所において、第1接地点スイッチを経て第1接地点に接続され、及び、前記第2変換所において、第2接地点スイッチを経て第2接地点に接続され、
前記第1の第1極変換器、及び、前記第1の第2極変換器は、変圧器、交流側遮断器を経て、第1の交流母線に接続され、
前記第2の第1極変換器、及び、前記第2の第2極変換器は、変圧器、交流側遮断器を経て、第2の交流母線に接続され、
前記第1変換所が送電端であり、前記第2変換所が受電端である場合には、前記第1接地点スイッチが投入状態であり、前記第2接地点スイッチが開放状態であり、
前記第1変換所が受電端であり、前記第2変換所が送電端である場合には、前記第1接地点スイッチが開放状態であり、前記第2接地点スイッチが投入状態である
電力変換装置。
【請求項2】
前記第1変換所が送電端であり、前記第2変換所が受電端である状態から、前記第1変換所が受電端であり、前記第2変換所が送電端である状態に変わった場合には、
前記第2接地点スイッチが投入された後、前記第1接地点スイッチが開放される
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1接地点スイッチ及び第2接地点スイッチは、強制的に接地して直流電流を大地に流すとともに、当該スイッチを経て大地に流れる直流電流を自励振動させ、強制的に開放して当該スイッチに流れる直流電流を転流する直流用開閉器である
請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1の第1極変換器、前記第1の第2極変換器、前記第2の第1極変換器及び前記
第2の第2極変換器は、それぞれ、
直列に接続された2つのスイッチング素子と、
前記2つのスイッチング素子に、それぞれ並列に接続されていて、順方向が、前記スイッチング素子の順方向とは反対向きに接続されている2つのダイオードと、
前記直列に接続された2つのスイッチング素子と並列に接続されているコンデンサと
を備えて構成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関し、例えば、交流系統と直流系統を連系する自励式変換器を有する多極構成の交直変換装置、並びに、交流系統と交流系統を連系する、自励式変換器を有する周波数変換装置及び非同期連系(BTB:Back To Back)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4を参照して、多極構成の電力変換装置において発生する可能性のある事故の一例として、第2極本線に地絡事故が発生した場合について説明する。ここでは、+極である第1極、及び、-極である第2極の2極構成の例を説明する。また、第1変換所が送電端であり、第2変換所が受電端である場合について説明する。
【0003】
送電端である非接地端の第1変換所100には、直流/交流変換器である第1極変換器110及び第2極変換器120が設けられる。また、受電端である接地端の第2変換所200には、直流/交流変換器である第1極変換器210及び第2極変換器220が設けられる。第1変換所100と第2変換所200の間は、第1極本線11、第2極本線12及び帰線10で接続される。帰線10は、接地端の第2変換所200に設けられた接地点290に接続されて、接地される。
【0004】
第1変換所100において、第1極本線11と帰線10は、第1変換所100の第1極変換器110を介して接続され、第2変換所200において、第1極本線11と帰線10は、第2変換所200の第1極変換器210を介して接続されている。同様に、第1変換所100において、第2極本線12と帰線10は、第1変換所100の第2極変換器120を介して接続され、第2変換所200において、第2極本線12と帰線10は、第2変換所200の第2極変換器220を介して接続されている。
【0005】
地絡事故が発生する前は、第1極については、第1変換所100の第1極変換器110、第1極本線11、第2変換所200の第1極変換器210、帰線10及び第1変換所100の第1極変換器110の順で、電流が流れる(
図4中、Iで示す)。また、第2極については、第1変換所100の第2極変換器120、帰線10、第2変換所200の第2極変換器220、第2極本線12及び第1変換所100の第2極変換器120の順で、電流が流れる(
図4中、IIで示す)。
【0006】
ここで、第2極本線12に地絡事故が発生し、直流送電システムの保護装置が地絡事故を検出すると、第1変換所100の第2極変換器120及び第2変換所200の第2極変換器220は速やかに停止する。また、この時、第1の交流母線21と第1変換所100の第2極変換器120の間に設けられた交流側遮断器と、第2の交流母線22と第2変換所200の第2極変換器220の間に設けられた交流側遮断器は速やかに開放される。この結果、事故極である第2極本線12に由来する電流源はなくなる。
【0007】
しかし、健全な第1極本線11に由来する電流が、第1変換所100の第1極変換器110、第1極本線11、第2変換所200の第1極変換器210、帰線10及び第1変換所100の第1極変換器110の順の第1のルート(I)の他に、第1変換所100の第1極変換器110、第1極本線11、第2変換所200の第1極変換器210、接地点290、地絡事故点12a、第2極本線12、第1変換所100の第2極変換器120、及び、第1変換所100の第1極変換器110の順の第2のルート(
図4中、Iaで示す。)で、流れる。このように、第2のルートにも電流が流れるため、健全極である第1極も
停止する必要がある。
【0008】
これに対し、従来例として、
図5に示す、帰線10と、第1変換所100の第1極変換器110及び第1変換所100の第2極変換器120との、それぞれの間に、バイパススイッチを設ける技術がある(例えば、特許文献1参照)。第1バイパススイッチ141は、第1変換所100の第1極変換器110と帰線10の間に設けられ、第1変換所100の第1極変換器110と帰線10の間を開放できる。また、第2バイパススイッチ142は、第1変換所100の第2極変換器120と帰線10の間に設けられ、第1変換所100の第2極変換器120と帰線10の間を開放できる。
【0009】
この
図5に示す従来例の多極構成の電力変換装置では、第2極本線12に地絡事故が発生した場合、第2バイパススイッチ142を開放できる。第2バイパススイッチ142を開放することにより、
図4中Iaで示す第2ルートの閉回路がなくなる。この結果、第2ルートを通って、健全極の第1極本線11から接地点290に流れた電流が地絡事故の発生箇所を経て第1極に流入することを防ぎ、第1ルートに健全極の電流が全量流れるようにすることができる。このように、多極構成の電力変換装置の1つの極において地絡事故が発生した場合、他の地絡事故が発生していない健全極の停止を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、多極構成の電力変換装置において1つの極に事故が発生した場合、速やかな、事故の検出及び除去、並びに、事故極の再起動が要求される。
【0012】
しかしながら、
図5を参照して説明した従来例では、事故極の事故除去と運転の再開には,待機時間を含む複数の手順を経る必要があり,電力系統が要求する運転再開時間を満足しない可能性がある。
図6を参照して、第2極本線において、落雷などによる一時的事故が発生した場合の、従来例での、運転再開の手順の一例を説明する。
図6では横軸に時間を取って示し、縦軸に事故極のバイパススイッチ(SW)に流れる直流電流を取って示している。また、
図6において、事故極由来の直流電流をIで示し、健全極由来の直流電流をIIで示している。
【0013】
ステップ31(以下、ステップをSで表す。)において、第2極本線12で、地絡事故が発生する。地絡事故が発生すると、S32において、地絡事故を検出し、第2変換所200の第2極変換器220及び第1変換所100の第2極変換器120が停止し、第2変換所200の第2極変換器220及び第1変換所100の第2極変換器120の交流側に設けられる交流側遮断器(CB)が開放される。
【0014】
その後、S33において、事故電流が減衰する。その後、S34において、第2バイパススイッチ142が開放される。
【0015】
次に、S35において、事故点におけるアーク放電がなくなるまで一定時間待機する。
【0016】
次に、S36において、第2バイパススイッチ142を投入する。さらに、S37において、事故極の電力変換器である、第2変換所200の第2極変換器220及び第1変換所100の第2極変換器120の運転を再開して、地絡事故が除去されていることを確認する。
【0017】
地絡事故が継続している場合は、地絡事故を検出し、第2変換所200の第2極変換器220及び第1変換所100の第2極変換器120を停止し、または、第2変換所200の第2極変換器220及び第1変換所100の第2極変換器120の交流側に設けられる交流側遮断器(CB)を開放、若しくは、その両方を行った後、S33及びS34を行い、運転再開しない。
【0018】
一方、地絡事故が除去されている場合は、S38において、第2変換所200の第2極変換器220及び第1変換所100の第2極変換器120の交流側に設けられる交流側遮断器を投入する。その後、S39において、第2変換所200の第2極変換器220及び第1変換所100の第2極変換器120の出力が地絡事故の発生前の状態に復帰する。
【0019】
上述の従来例では、迅速に事故を検出し除去することができるが、運転再開時間のさらなる短縮が求められる。また、電力変換装置が有する開閉器の数は、少ない方が良い。
【0020】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものである。この発明の目的は、電力変換装置において、開閉器の数を従来技術よりも減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した目的を達成するために、この発明の電力変換装置は、第1変換所及び第2変換所と、前記第1変換所及び第2変換所を接続する、第1極本線、第2極本線、及び、帰線を備え、前記第1変換所には、直流/交流変換器である第1の第1極変換器及び第1の第2極変換器が設けられ、前記第2変換所には、直流/交流変換器である第2の第1極変換器及び第2の第2極変換器が設けられ、前記第1の第1極変換器の両端には、それぞれ、前記第1極本線と前記帰線が接続され、前記第1の第2極変換器の両端には、それぞれ、前記第2極本線と前記帰線が接続され、前記第2の第1極変換器の両端には、それぞれ、前記第1極本線と前記帰線が接続され、前記第2の第2極変換器の両端には、それぞれ、前記第2極本線と前記帰線が接続され、前記帰線は、前記第1変換所において、第1接地点スイッチを経て第1接地点に接続され、及び、前記第2変換所において、第2接地点に接続されている。
【発明の効果】
【0022】
この発明の電力変換装置によれば、代用を含めて開閉器の数を、従来技術よりも減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の電力変換装置の第1実施例を説明するための模式図である。
【
図2】多極構成の直流/交流変換器を説明するための模式図である。
【
図3】この発明の電力変換装置の第2実施例を説明するための模式図である。
【
図4】多極構成の電力変換装置における事故を説明するための模式図である。
【
図5】多極構成の電力変換装置の従来例を説明するための模式図である。
【
図6】多極構成の電力変換装置の従来例の課題を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0025】
(第1実施例)
図1及び
図2を参照して、この発明の電力変換装置の第1実施例について説明する。ここでは、一例として、交流系統と直流系統を連系する自励式変換器を有する多極構成の交直変換装置の場合を説明する。なお、この発明は、交流系統と交流系統を連系する自励式変換器を有する周波数変換装置及び非同期連系(BTB)装置などにも適用できる。また、ここでは、+極である第1極、及び、-極である第2極の2極構成の例を説明する。
【0026】
電力変換装置の第1実施例は、第1変換所100及び第2変換所200と、第1変換所100と第2変換所200を接続する第1極本線11、第2極本線12及び帰線10を備えて構成される。この例では、第1極本線11は、+極の直流送電線であり、第2極本線12は、-極の直流送電線である。
【0027】
第1変換所100には、直流/交流変換器である第1極変換器110及び第2極変換器120が設けられる。また、第2変換所200には、直流/交流変換器である第1極変換器210及び第2極変換器220が設けられる。
【0028】
第1変換所100の第1極変換器110の両端には、第1極本線11と帰線10が接続されている。また、第1変換所100の第2極変換器120の両端には、第2極本線12と帰線10が接続されている。同様に、第2変換所200の第1極変換器210の両端には、第1極本線11と帰線10が接続されている。また、第2変換所200の第2極変換器220の両端には、第2極本線12と帰線10が接続されている。
【0029】
帰線10は、第1変換所100において、第1接地点スイッチ130を経て第1接地点190に接続される。この第1接地点スイッチ130は、通常運用時には開放されている。すなわち、通常運用時には、第1変換所100において帰線10は接地されていない。また、帰線10は、第2変換所200において、第2接地点290に接続されて、接地されている。
【0030】
第1変換所100の第1極変換器110、及び、第1変換所100の第2極変換器120は、変圧器、交流側遮断器(CB)を経て、第1の交流母線21に接続されている。また、第2変換所200の第1極変換器210、及び、第2変換所200の第2極変換器220は、変圧器、交流側遮断器を経て、第2の交流母線22に接続されている。
【0031】
図2に一例として、第2変換所200の第1極変換器210の構成例を示しているが、第1変換所100及び第2変換所200の第1極変換器110及び210、並びに、第1変換所100及び第2変換所200の第2極変換器120及び220(以下、変換器と総称することもある。)は、2つのスイッチング素子と、2つのダイオードと、コンデンサを備えて構成される。2つのスイッチング素子は、直列に接続されている。2つのダイオードは、2つのスイッチング素子にそれぞれ並列に接続されている。なお、ダイオードの順方向は、スイッチング素子の順方向とは反対向きに接続されている。また、コンデンサは、直列に接続された2つのスイッチング素子と並列に接続されている。
【0032】
なお、ここでは、2つのスイッチング素子が直列に接続されている例を示しているが、これに限定されない。素子の定格電流によっては、それぞれ、複数のスイッチング素子が並列接続されたスイッチング素子回路を、直列に接続する場合もある。その他、素子の定格と、要求される仕様に応じて、変換器を構成することができる。
【0033】
例えば、第1の交流母線21を流れる交流電力は、第1変換所100において直流電力に変換される。変換された直流電力は、第1極本線11及び第2極本線12を経て、第2変換所200に送られる。また、第2変換所200において第1変換所100から送られ
た直流電力は、交流電力に変換される。変換された交流電力は、第2の交流母線22に送られる。このようにして、第1及び第2の交流母線21及び22を流れる交流電力は、第1及び第2の変換所100及び200を経て送受される。
【0034】
地絡事故が発生する前は、第1極については、第1変換所100の第1極変換器110、第1極本線11、第2変換所200の第1極変換器210、帰線10及び第1変換所100の第1極変換器110の順で、電流が流れる(
図1中、Iで示す)。また、第2極については、第1変換所100の第2極変換器120、帰線10、第2変換所200の第2極変換器220、第2極本線12及び第1変換所100の第2極変換器120の順で、電流が流れる(
図1中、IIで示す)。
【0035】
ここで、第1接地点スイッチ130は、帰線用強制消弧装置(MRTB:Metallic Return Transfer Breaker)と呼ばれる、帰線の事故対応用開閉器として採用されることのある開閉器で代替する。このMRTBは、帰線10での地絡事故発生時に強制的に接地して直流電流を大地に流すとともに、当該スイッチを経て大地に流れる直流電流を自励振動させ、強制的に開放して当該スイッチに流れる直流電流を帰線に転流する直流用開閉器である。
【0036】
電力変換装置の動作の一例として、第2極本線に地絡事故が発生したときの動作を説明する。制御保護装置が、少なくとも、第1極本線11及び第2極本線12での地絡事故の有無を監視しているものとする。また、制御保護装置は、電力変換装置が有する各機器の動作を制御、保護および必要な測定を適宜行う。
【0037】
先ず、S1において、第2極本線12で、地絡事故が発生する。地絡事故が発生すると、S2において、地絡事故が検出され、第1変換所100の第2極変換器120及び第2変換所200の第2極変換器220が停止し、第1変換所100の第2極変換器120及び第2変換所200の第2極変換器220の交流側に設けられる交流側遮断器が開放される。
【0038】
また、S2に引き続いて、S3において、第1接地点スイッチ130を投入し、帰線を第1接地点190において接地させる。
【0039】
この場合、健全な第1極本線11に由来する電流が、第1変換所100の第1極変換器110、第1極本線11、第2変換所200の第1極変換器210、帰線10及び第1変換所100の第1極変換器110の順の第1のルートの他に、第1変換所100の第1極変換器110、第1極本線11、第2変換所200の第1極変換器210、第2接地点290、第1接地点190、及び、第1変換所100の第1極変換器110の順の第2のルートで、流れる。これにより、従来例のS33の地絡電流の減衰を待つ過程が、この電力変換装置では必要ない。
【0040】
その後、S4において、事故点におけるアーク放電がなくなるまで一定時間待機する。
【0041】
次に、S5において、事故極の電力変換器である、第1変換所100及び第2変換所200の第2極変換器120及び220を運転して、地絡事故が除去されていることを確認する。
【0042】
地絡事故が継続している場合は、運転再開しない。なお、この場合、第1接地点スイッチ130を開放し、第2変換所200のみで接地されている状態に復帰させる。
【0043】
一方、地絡事故が除去されている場合は、S6において、第1変換所100の第2極変
換器120及び第2変換所200の第2極変換器220の交流側に設けられる交流側遮断器を動作させる。その後、S7において、第1変換所100の第2極変換器120及び第2変換所200の第2極変換器220の出力が地絡事故の発生前の状態に復帰する。
【0044】
その後、S8において、第1接地点スイッチ130が開放され、帰線10が第1接地点190において接地せず、第2接地点290においてのみ接地する状態となり、地絡事故の発生前の状態に復帰する。
【0045】
この第1実施例によれば、第1接地点スイッチ130としてMRTBを用いることで、従来例のバイパススイッチが不要となる。第1実施例におけるMRTBの投入と、従来例におけるバイパススイッチの投入時間は同程度と考えられるため、従来例におけるS33の事故電流減衰時間及びS34のバイパススイッチ開放時間が不要となる分、運転再開時間を短縮できる。この結果、要求される運転再開時間を満足することができる可能性が高まる。
【0046】
(第2実施例)
図3を参照して、この発明の多極構成の電力変換装置の第2実施例について説明する。ここでは、+極である第1極、及び、-極である第2極の2極構成の例を説明する。
【0047】
図1を参照して説明した第1実施例では、帰線10は、第1変換所100において、MRTBで代用できる第1接地点スイッチ130を経て第1接地点190に接続されている。通常、MRTBは開放されており、通常運用時には、第1変換所100において帰線10は接地されていない。また、帰線10は、第2変換所200において、第2接地点290に接続されて、接地されている。
【0048】
これに対し、第2実施例では、第1変換所100において第1接地点スイッチ130を経て、帰線10が第1接地点190に接続され、第2変換所200において第2接地点スイッチ230を経て第2接地点290に接続される。第1接地点スイッチ130及び第2接地点スイッチ230は、MRTBで代用することができる。
【0049】
第1接地点スイッチ130が投入されると、第1変換所100において帰線10が接地される。一方、第2変換所200において第2接地点スイッチ230が投入されると、第2変換所200において帰線10が接地される。通常、第1接地点スイッチ130及び第2接地点スイッチ230の一方は、投入されている。すなわち、帰線10は、第1変換所100及び第2変換所200の一方で接地される。
【0050】
これ以外の構成については、第1実施例と同様なので重複する説明を省略する。
【0051】
例えば、第1変換所100が送電端、第2変換所200が受電端の場合には、第1接地点スイッチ130を投入状態(入)として、帰線10の第1変換所100側を接地端とし、第2接地点スイッチ230を開放して、帰線10の第2変換所200側を非接地端とする。
【0052】
この状態で、第1極本線11または第2極本線12に地絡事故が発生しても、事故極に由来する電流が健全極に流入することはない。これは、送電端が接地端の場合には、事故極に由来する電流が健全極に流入する事象自体が発生しないためである。
【0053】
同様に、この状態で、第1変換所100が受電端、第2変換所200が送電端に変わった場合には、第2接地点スイッチ230を投入した後、第1接地点スイッチ130を開放することにより、送電端を接地端とすれば、第1極本線11または第2極本線に地絡事故
が発生しても、事故極に由来する電流が健全極に流入する事象自体が発生しない。
【0054】
このように送電端と受電端に応じて接地箇所を入れ換えると、一方の極本線に地絡事故が発生したとき、他方の極本線を通り、接地点に流れる電流が、地絡事故の発生箇所において、事故極の極本線に流入する事象が発生しない。
【0055】
上述した、第1実施例及び第2実施例では、多極構成の電力変換装置として2極の場合を説明したが、3極以上の構成にすることもできる。例えば、3極構成にする場合を説明する。3極構成の場合、第3極は、極性切換機能により、+極及び-極の双方を取りうる。
【0056】
第1実施例において、3極構成にする場合は、第1変換所及び第2変換所に、第3極変換器を設ければよい。その他の構成は、
図1を参照して説明した第1実施例と同様にすることができる。従来例では、極数に応じた数のバイパススイッチが必要となるが、第1実施例では、多極構成になった場合でも、非接地端を一時的に接地端にする一台のMRTBで代用できる接地点スイッチがあればよい。4極以上の場合も同様である。
【0057】
第2実施例において、3極構成にする場合は、第1変換所及び第2変換所に、第3極変換器を設ければよい。その他の構成は、
図3を参照して説明した第2実施例と同様にすることができる。3極構成においても、送電端を接地端とし、受電端を非接地端とすることで、事故極に由来する電流が健全極に流入することはない。4極以上の場合も同様である。
【符号の説明】
【0058】
10 帰線
11 第1極本線
12 第2極本線
100 第1変換所
110、210 第1極変換器
120、220 第2極変換器
130、230 接地点スイッチ
190、290 接地点
200 第2変換所