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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】多段式流体圧シリンダ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20221116BHJP
   F15B 15/16 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
F15B15/14 380B
F15B15/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020141116
(22)【出願日】2020-08-24
(65)【公開番号】P2022036748
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2022-09-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船戸 泰志
(72)【発明者】
【氏名】谷川 夏樹
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172681(JP,A)
【文献】特開2012-86666(JP,A)
【文献】特開平9-277814(JP,A)
【文献】特開2016-148361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
F15B 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブの内周面に沿って摺動し前記シリンダチューブ内をロッド側室と反ロッド側室とに区画する外側ピストン部が端部に設けられた筒状の外側ロッド部材と、
前記外側ロッド部材の内側に前記シリンダチューブの軸方向に移動自在に設けられる内側ロッド部材と、
前記反ロッド側室に対して作動流体を給排する第1給排路と、
前記ロッド側室に対して作動流体を給排する第2給排路と、を備え、
前記内側ロッド部材は、内部に前記第2給排路が形成された内側ロッド部と、前記内側ロッド部の端部に設けられた環状の内側ピストン部と、を有し、
前記内側ロッド部には、前記第2給排路から前記反ロッド側室へ向かう作動流体の流れのみを許容する逆流防止機構が設けられることを特徴とする多段式流体圧シリンダ。
【請求項2】
前記内側ロッド部には、前記軸方向に貫通して形成され一端が前記第2給排路に開口し他端が前記反ロッド側室に開口する貫通孔が設けられ、
前記逆流防止機構は、前記貫通孔に設けられた逆止弁またはリリーフ弁であることを特徴とする請求項1に記載の多段式流体圧シリンダ。
【請求項3】
前記内側ピストン部には、前記内側ピストン部を前記内側ロッド部に組み付けるために用いられる締結部材が挿通可能な挿通孔が前記軸方向に貫通して複数形成されており、
複数の前記挿通孔のうちの1つは、前記貫通孔の一部を構成することを特徴とする請求項2に記載の多段式流体圧シリンダ。
【請求項4】
前記内側ロッド部には、前記軸方向に貫通して形成され一端が前記第2給排路に開口し他端が前記反ロッド側室に開口する貫通孔が設けられ、
前記内側ロッド部材は、前記貫通孔に挿通され、内部に前記第1給排路が形成された管状部材をさらに有し、
前記逆流防止機構は、前記管状部材の外周と前記貫通孔の内周との間に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のチェックシールである多段式流体圧シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段式流体圧シリンダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリンダチューブと、シリンダチューブの内周面に沿って摺動する外側ピストン部が端部に設けられた筒状の外側ロッド部材と、外側ロッド部材の内側に配置され、ロッド側室に対して作動流体を給排する流路と反ロッド側室に対して作動流体を給排する流路とを有する内側ロッド部材と、を備えた多段式流体圧シリンダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-172681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような多段式流体圧シリンダが伸長作動している最中に、伸長速度を超えて多段式流体圧シリンダを強制的に伸長させるような外力が急に作用すると、反ロッド側室への作動流体の供給が追い付かず反ロッド側室の圧力が低下ないし負圧となる一方、ロッド側室からの作動流体の排出が追い付かずロッド側室の圧力が上昇する。そして、反ロッド側室の圧力が低下する一方でロッド側室の圧力が上昇した状態において、多段式流体圧シリンダに作用していた外力が解除されると、多段式流体圧シリンダは瞬間的に僅かに収縮した後、その反動による伸長と収縮とをある程度繰り返してから再び伸長作動へと戻ることになる。このように比較的短い時間の間に多段式流体圧シリンダが伸縮を繰り返すと多段式流体圧シリンダが設置される装置が振動するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、外力に応じて生じる多段式流体圧シリンダの瞬間的な作動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多段式流体圧シリンダが、シリンダチューブと、シリンダチューブの内周面に沿って摺動しシリンダチューブ内をロッド側室と反ロッド側室とに区画する外側ピストン部が端部に設けられた筒状の外側ロッド部材と、外側ロッド部材の内側にシリンダチューブの軸方向に移動自在に設けられる内側ロッド部材と、反ロッド側室に対して作動流体を給排する第1給排路と、ロッド側室に対して作動流体を給排する第2給排路と、を備え、内側ロッド部材は、内部に第2給排路が形成された内側ロッド部と、内側ロッド部の端部に設けられた環状の内側ピストン部と、を有し、内側ロッド部には、第2給排路から反ロッド側室へ向かう作動流体の流れのみを許容する逆流防止機構が設けられることを特徴とする。
【0007】
この本発明では、第2給排路から反ロッド側室へ向かう作動流体の流れのみを許容する逆流防止機構が、第2給排路が設けられた内側ロッド部材、すなわち、シリンダチューブ内に設けられるロッド部材の中で最も内側に配置されるロッド部材に設けられる。このように、内側ロッド部材に逆流防止機構を設けておくことで、多段式流体圧シリンダが伸長作動している最中に、伸長速度を超えて多段式流体圧シリンダを強制的に伸長させるような外力が急に作用し、ロッド側室の圧力が反ロッド側室の圧力よりも高くなった場合、作動流体は逆流防止機構を通じて第2給排路から反ロッド側室へと速やかに流入する。これにより、ロッド側室の圧力が反ロッド側室の圧力よりも高い状態に維持されにくくなり、かつ、ロッド側室から反ロッド側室へ作動流体が供給され、反ロッド側室の圧力が負圧となることが抑制されることで、多段式流体圧シリンダは、多段式流体圧シリンダに作用していた外力が解除されても瞬間的に収縮することなく、再び伸長作動へと比較的円滑に戻ることになり、結果として、外力に応じて生じる多段式流体圧シリンダの瞬間的な伸縮作動を抑制することができる。
【0008】
また、本発明は、内側ロッド部には、軸方向に貫通して形成され一端が第2給排路に開口し他端が反ロッド側室に開口する貫通孔が設けられ、逆流防止機構は、貫通孔に設けられた逆止弁またはリリーフ弁であることを特徴とする。
【0009】
この発明では、逆流防止機構が、内側ロッド部材に形成された貫通孔に設けられた逆止弁またはリリーフ弁である。このように逆止弁またはリリーフ弁という簡素な構成を内側ロッド部材に付加することによって、外力に応じて生じる多段式流体圧シリンダの瞬間的な伸縮作動を抑制することができる。
【0010】
また、本発明は、内側ピストン部には、内側ピストン部を内側ロッド部に組み付けるために用いられる締結部材が挿通可能な挿通孔が軸方向に貫通して複数形成されており、複数の挿通孔のうちの1つは、貫通孔の一部を構成することを特徴とする。
【0011】
この発明では、締結部材が挿通可能な複数の挿通孔のうちの1つが、逆止弁またはリリーフ弁が設けられる貫通孔の一部を構成する。このように逆止弁またはリリーフ弁が設けられる貫通孔の一部を、締結部材が挿通する挿通孔と同様に加工することによって、逆流防止機構が設けられる多段式流体圧シリンダの製造コストの増大を抑制することができる。
【0012】
また、本発明は、内側ロッド部には、軸方向に貫通して形成され一端が第2給排路に開口し他端が反ロッド側室に開口する貫通孔が設けられ、内側ロッド部材は、貫通孔に挿通され、内部に第1給排路が形成された管状部材をさらに有し、逆流防止機構は、管状部材の外周と貫通孔の内周との間に設けられたチェックシールであることを特徴とする。
【0013】
この発明では、逆流防止機構が、内部に第1給排路が形成された管状部材の外周と貫通孔の内周との間に設けられたチェックシールである。このようにチェックシールという簡素な構成を内側ロッド部材に付加することによって、外力に応じて生じる多段式流体圧シリンダの瞬間的な伸縮作動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外力に応じて生じる多段式流体圧シリンダの瞬間的な作動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る多段式流体圧シリンダの断面図であり、最収縮状態を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る多段式流体圧シリンダを示す断面図であり、第1ロッドアッシーが伸長位置にあり、第2ロッドアッシー及び第3ロッドアッシーが収縮位置にある状態を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る多段式流体圧シリンダを示す断面図であり、第1ロッドアッシー及び第2ロッドアッシーが伸長位置にあり、第3ロッドアッシーが収縮位置にある状態を示す。
図4】本発明の第1実施形態に係る多段式流体圧シリンダを示す断面図であり、最伸長状態を示す図である。
図5図1のA部を拡大して示した拡大図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る多段式流体圧シリンダを示す図であり、図5に相当する部分を示す図である。
図7A】本発明の第2実施形態に係る多段式流体圧シリンダのチェックシールの平面図である。
図7B図7AのB-B線に沿う断面を示す断面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る多段式流体圧シリンダを示す図であり、図5に相当する部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1~5を参照して、本発明の第1実施形態に係る多段式流体圧シリンダ100について説明する。以下では、多段式流体圧シリンダ100が作動油を作動流体として駆動する多段式油圧シリンダ100(以下、単に「油圧シリンダ100」と称する。)である場合について説明する。
【0020】
図1に示すように、油圧シリンダ100は、有底筒状のシリンダチューブ10と、シリンダチューブ10の内側に摺動自在に挿入される外側ロッド部材としての第1ロッドアッシー30と、第1ロッドアッシー30の内側にシリンダチューブ10の中心軸方向(以下、単に「軸方向」と称する。)に移動自在に設けられる内側ロッド部材としての第3ロッドアッシー50と、第1ロッドアッシー30と第3ロッドアッシー50との間において軸方向に移動自在に設けられる中間ロッド部材としての第2ロッドアッシー40と、を備える。なお、図1は、油圧シリンダ100が最も収縮した状態を示す断面図である。
【0021】
油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10の底部に設けられる第1取付部61と、シリンダチューブ10から突出する第3ロッドアッシー50の端部に設けられる第2取付部62と、を介して、シリンダチューブ10が鉛直方向上方側に位置し、第3ロッドアッシー50が鉛直方向下方側に位置するようにして駆動対象機器に取り付けられる。つまり、油圧シリンダ100は、第2取付部62に対して第1取付部61が略鉛直方向、すなわち上下方向に沿って変位するように駆動対象機器に取り付けられる。なお、油圧シリンダ100が取り付けられる方向はこれに限定されず、シリンダチューブ10が鉛直方向下方側に位置し、第3ロッドアッシー50が鉛直方向上方側に位置するように取り付けられてもよい。また、油圧シリンダ100は、第2取付部62に対して第1取付部61が水平方向に沿って変位するように駆動対象機器に取り付けられてもよい。
【0022】
第1ロッドアッシー30は、筒状の外側ロッド部31と、外側ロッド部31の一端部に設けられシリンダチューブ10の内周面10aに沿って摺動しシリンダチューブ10内をロッド側室2と反ロッド側室5とに区画する環状の外側ピストン部32と、外側ロッド部31の他端部から径方向内側に突出して形成され第2ロッドアッシー40を摺動自在に支持する円筒状の第1支持部33と、を有する。
【0023】
第1ロッドアッシー30の外側ピストン部32側の内周面30aには第1スナップリング35が装着される環状凹部30bが形成される。第1スナップリング35は、略環状に形成された金属製の線材であり、一部が分断された図示しない合口部を有する。第1スナップリング35は、縮径された状態で第1ロッドアッシー30内に挿入され、拡径方向に作用する弾性力によって、その外径側が内周面30aに押し付けられ、環状凹部30bに嵌め込まれる。このように第1スナップリング35が第1ロッドアッシー30に組み付けられた状態において、第1スナップリング35の内径側は、第1ロッドアッシー30の内周面30aから径方向内側に突出した状態となる。なお、第1スナップリング35の装着は、第1ロッドアッシー30に第2ロッドアッシー40が挿入されてから行われる。
【0024】
第2ロッドアッシー40は、第1ロッドアッシー30と同様の形状を有しており、外側ロッド部31に挿入される筒状の第1内側ロッド部41と、反ロッド側室5に臨むように第1内側ロッド部41の一端部に設けられ、第1ロッドアッシー30の内周面30aに沿って摺動する環状の第1内側ピストン部42と、第1内側ロッド部41の他端部から径方向内側に突出して形成され第3ロッドアッシー50を摺動自在に支持する円筒状の第2支持部43と、を有する。
【0025】
第2ロッドアッシー40の第1内側ピストン部42側の内周面40aには第2スナップリング45が装着される第2環状凹部40bが形成される。第2スナップリング45は、第1スナップリング35と同様に、略環状に形成された金属製の線材であり、一部が分断された図示しない合口部を有する。第2スナップリング45は、縮径された状態で第2ロッドアッシー40内に挿入され、拡径方向に作用する弾性力によって、その外径側が内周面40aに押し付けられ、第2環状凹部40bに嵌め込まれる。このように第2スナップリング45が第2ロッドアッシー40に組み付けられた状態において、第2スナップリング45の内径側は、第2ロッドアッシー40の内周面40aから径方向内側に突出した状態となる。なお、第2スナップリング45の装着は、第2ロッドアッシー40に第3ロッドアッシー50が挿入されてから行われる。
【0026】
第3ロッドアッシー50は、第1内側ロッド部41に挿入される内側ロッド部としての第2内側ロッド部51と、反ロッド側室5に臨むように第2内側ロッド部51の端部に設けられ、第2ロッドアッシー40の内周面40aに沿って摺動する内側ピストン部としての環状の第2内側ピストン部52と、を有する。第2内側ピストン部52は、複数のボルト53を介して第2内側ロッド部51の一端部に結合される。
【0027】
このように、シリンダチューブ10には、第1ロッドアッシー30、第2ロッドアッシー40及び第3ロッドアッシー50の3つのロッド部材が挿入される。
【0028】
シリンダチューブ10の開口部には、第1ロッドアッシー30の外側ロッド部31を摺動自在に支持するシリンダヘッド11が設けられ、軸方向において各ピストン部32,42,52と対抗するシリンダチューブ10の底部には、第1取付部61に向かって凹む凹部10bが形成される。凹部10bの内径は第1ロッドアッシー30の外側ピストン部32の内径よりも大きく設定される。
【0029】
シリンダチューブ10に挿入される第1ロッドアッシー30の最収縮位置は、外側ピストン部32がシリンダチューブ10の底部に当接することによって規定され、最伸長位置は、外側ピストン部32がシリンダヘッド11に当接することによって規定される。なお、シリンダヘッド11の内周面には、外部への作動油の漏れを防止するために、シリンダヘッド11の内周面と外側ロッド部31の外周面との間の隙間を封止する図示しないシール部材が設けられる。
【0030】
第1ロッドアッシー30に挿入される第2ロッドアッシー40の最収縮位置は、第1ロッドアッシー30に装着された第1スナップリング35に第1内側ピストン部42が当接することによって規定され、最伸長位置は、第1内側ピストン部42が第1支持部33に当接することによって規定される。なお、第1スナップリング35は、第2ロッドアッシー40の収縮方向への移動を制限しているとともに、油圧シリンダ100が収縮した際に、第1ロッドアッシー30がシリンダチューブ10から抜け落ちてしまうことを防止している。
【0031】
また、第1支持部33の内周面には、外部への作動油の漏れを防止するために、第1支持部33の内周面と第1内側ロッド部41の外周面との間の隙間を封止する図示しないシール部材が設けられる。
【0032】
第2ロッドアッシー40に挿入される第3ロッドアッシー50の最収縮位置は、第2ロッドアッシー40に装着された第2スナップリング45に第2内側ピストン部52が当接することによって規定され、最伸長位置は、第2内側ピストン部52が第2支持部43に当接することによって規定される。なお、第2スナップリング45は、第3ロッドアッシー50の収縮方向への移動を制限しているとともに、油圧シリンダ100が収縮した際に、第2ロッドアッシー40がシリンダチューブ10から抜け落ちてしまうことを防止している。
【0033】
また、第2支持部43の内周面には、外部への作動油の漏れを防止するために、第2支持部43の内周面と第2内側ロッド部51の外周面との間の隙間を封止する図示しないシール部材が設けられる。また、第2支持部43の内周面には、第3ロッドアッシー50が最も伸長した際に第2内側ロッド部51に形成された後述の連通孔51bの開口部が臨む環状凹部43aが形成される。なお、環状凹部43aは、後述の第2内側ロッド側室4に開口するように形成されている。
【0034】
また、上記形状の第1ロッドアッシー30、第2ロッドアッシー40及び第3ロッドアッシー50が挿入されるシリンダチューブ10内には、シリンダチューブ10、シリンダヘッド11、外側ロッド部31及び外側ピストン部32によって区画されるロッド側室2と、外側ロッド部31、第1支持部33、第1内側ロッド部41及び第1内側ピストン部42によって区画される第1内側ロッド側室3と、第1内側ロッド部41、第2支持部43、第2内側ロッド部51及び第2内側ピストン部52によって区画される第2内側ロッド側室4と、シリンダチューブ10、外側ピストン部32、第1内側ピストン部42及び第2内側ピストン部52によって区画される反ロッド側室5と、が形成される。
【0035】
第1ロッドアッシー30の外側ピストン部32の外周面32aには、第1シール部材34が設けられ、外側ピストン部32の外周面32aとシリンダチューブ10の内周面10aとの間の隙間を通じたロッド側室2と反ロッド側室5との連通は、第1シール部材34により遮断される。
【0036】
また、第1ロッドアッシー30の外側ピストン部32には、ロッド側室2に対して作動油を給排するための給排ポート32bが径方向に貫通して複数形成される。
【0037】
第2ロッドアッシー40の第1内側ピストン部42の外周面42aには、第2シール部材44が設けられ、第1内側ピストン部42の外周面42aと第1ロッドアッシー30の内周面30aとの間の隙間を通じた第1内側ロッド側室3と反ロッド側室5との連通は、第2シール部材44により遮断される。
【0038】
また、第2ロッドアッシー40の第1内側ピストン部42には、第1内側ロッド側室3に対して作動油を給排するための内側給排ポート42bが径方向に貫通して複数形成される。
【0039】
第3ロッドアッシー50の第2内側ピストン部52の外周面52aには、第3シール部材54が設けられ、第2内側ピストン部52の外周面52aと第2ロッドアッシー40の内周面40aとの間の隙間を通じた第2内側ロッド側室4と反ロッド側室5との連通は、第3シール部材54により遮断される。
【0040】
第3ロッドアッシー50の第2内側ロッド部51には、油圧シリンダ100に対して作動油を給排する図示しない外部装置に接続される第2給排路51aと、第2給排路51aと第2内側ロッド側室4とを連通する連通孔51bと、が形成される。また、第2内側ロッド部51には、第2取付部62に形成された通路64と、第2給排路51aと、を接続する接続通路51cが形成される。
【0041】
第2給排路51aは、連通孔51bを通じて第2内側ロッド側室4と連通するとともに、内側給排ポート42b及び連通孔51bを通じて第1内側ロッド側室3と連通し、給排ポート32b、内側給排ポート42b及び連通孔51bを通じてロッド側室2と連通する。
【0042】
つまり、ロッド側室2、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4への作動油の供給と、ロッド側室2、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4からの作動油の排出とは、第2内側ロッド部51に形成された第2給排路51aを通じて行われる。
【0043】
また、第2内側ロッド部51には、油圧シリンダ100に対して作動油を給排する外部装置に接続される第1給排路55aが内部に形成されるパイプ状の給排管55が設けられる。給排管55は、一端が反ロッド側室5に臨んで開口するように第2内側ロッド部51に組み込まれており、具体的には、第2給排路51aを軸方向に貫通するようにして第2内側ロッド部51に接合されている。また、第2内側ロッド部51には、第2取付部62に形成された通路63と、給排管55の他端側と、を接続する接続通路51dが形成される。
【0044】
このように給排管55は、その一端が反ロッド側室5において開口するように設けられているため、反ロッド側室5への作動油の供給及び反ロッド側室5からの作動油の排出は、給排管55内の第1給排路55aを通じて行われることになる。
【0045】
次に、図1~4を参照して、油圧シリンダ100の作動について説明する。なお、以下では、油圧シリンダ100が、第1取付部61が鉛直方向上方側に位置し、第2取付部62が鉛直方向下方側に位置するようにして駆動対象機器に取り付けられている場合について説明する。
【0046】
油圧シリンダ100が伸長作動する際には、給排管55内の第1給排路55aを通じて図示しないポンプ等の油圧源から反ロッド側室5に作動油が供給され、ロッド側室2、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4内の作動油が第2給排路51aを通じて図示しないタンクに排出される。
【0047】
油圧シリンダ100が図1に示す最収縮状態から伸長作動する際には、第1給排路55aを通じて反ロッド側室5に作動油が供給される。ここで、反ロッド側室5の圧力を受ける受圧面積は、第1ロッドアッシー30が伸長する際に最も大きく、第3ロッドアッシー50が伸長する際に最も小さい。よって、油圧シリンダ100が最収縮状態から伸長作動する際には、まず、第1ロッドアッシー30に対してシリンダチューブ10が相対移動することになる。具体的には、図2に示すように、シリンダチューブ10が第1ロッドアッシー30に対して上方(図2中上側)へ移動する。なお、シリンダチューブ10の底部に形成された凹部10bは、第1ロッドアッシー30の外側ピストン部32の内径よりも大きな内径を有するため、反ロッド側室5に導かれた作動油の圧力は、凹部10bを通じて外側ピストン部32に作用する。
【0048】
第1ロッドアッシー30に対してシリンダチューブ10が相対移動すると、ロッド側室2の作動油は、給排ポート32b、内側給排ポート42b及び連通孔51bを通じて第2給排路51aに導かれて外部へと排出される。
【0049】
そして、図2に示すように、第1ロッドアッシー30に対してシリンダチューブ10が最も伸長した状態、すなわち、シリンダヘッド11が第1ロッドアッシー30の外側ピストン部32に当接するまでシリンダチューブ10が上方へと移動した状態となると、次は、反ロッド側室5の圧力によって、第2ロッドアッシー40に対してシリンダチューブ10及び第1ロッドアッシー30が相対移動することになる。具体的には、図3に示すように、シリンダチューブ10及び第1ロッドアッシー30が第2ロッドアッシー40に対して上方(図3中上側)へ移動する。
【0050】
第2ロッドアッシー40に対して第1ロッドアッシー30が相対移動すると、第1内側ロッド側室3の作動油は、内側給排ポート42b及び連通孔51bを通じて第2給排路51aに導かれて外部へと排出される。
【0051】
そして、図3に示すように、第2ロッドアッシー40に対して第1ロッドアッシー30が最も伸長した状態、すなわち、第1ロッドアッシー30の第1支持部33が第2ロッドアッシー40の第1内側ピストン部42に当接するまでシリンダチューブ10及び第1ロッドアッシー30が上方へと移動した状態となると、次は、反ロッド側室5の圧力によって、第3ロッドアッシー50に対してシリンダチューブ10、第1ロッドアッシー30及び第2ロッドアッシー40が相対移動することになる。具体的には、図4に示すように、シリンダチューブ10、第1ロッドアッシー30及び第2ロッドアッシー40が第3ロッドアッシー50に対して上方(図4中上側)へ移動する。
【0052】
第3ロッドアッシー50に対して第2ロッドアッシー40が相対移動すると、第2内側ロッド側室4の作動油は、連通孔51bを通じて第2給排路51aに導かれて外部へと排出される。
【0053】
そして、図4に示すように、第3ロッドアッシー50に対して第2ロッドアッシー40が最も伸長した状態、すなわち、第2ロッドアッシー40の第2支持部43が第3ロッドアッシー50の第2内側ピストン部52に当接するまでシリンダチューブ10、第1ロッドアッシー30及び第2ロッドアッシー40が上方へと移動した状態となると、油圧シリンダ100は最伸長状態となる。
【0054】
一方、油圧シリンダ100が収縮作動する際には、第2給排路51aを通じて油圧源からロッド側室2、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4に作動油が供給され、反ロッド側室5の作動油が第1給排路55aを通じてタンクに排出される。なお、油圧シリンダ100の収縮作動は、第1取付部61に連結される駆動対象機器の自重によるものであってもよい。この場合、ロッド側室2、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4に作動油を供給する必要はなく、ロッド側室2、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4には、タンクから作動油が吸い込まれることになる。
【0055】
油圧シリンダ100が最伸長状態から収縮作動する際には、まず、図4に示す状態から図3に示す状態へと第3ロッドアッシー50に対してシリンダチューブ10、第1ロッドアッシー30及び第2ロッドアッシー40が相対移動し、続いて、図3に示す状態から図2に示す状態へと第2ロッドアッシー40に対してシリンダチューブ10及び第1ロッドアッシー30が相対移動する。そして、さらに、図2に示す状態から図1に示す状態へと第1ロッドアッシー30に対してシリンダチューブ10が相対移動することによって、油圧シリンダ100は最収縮状態となる。
【0056】
ここで、上記構成の油圧シリンダ100が伸長作動している最中に、伸長速度を超えて上記構成の油圧シリンダ100を強制的に伸長させるような外力が急に作用すると、容積が拡大する反ロッド側室5への作動油の供給が追い付かず反ロッド側室5の圧力が低下ないし負圧となる一方、容積が縮小途中であるロッド側室2,3,4からの作動油の排出が追い付かずロッド側室2,3,4の圧力が上昇する。
【0057】
そして、反ロッド側室5の圧力が低下する一方でロッド側室2,3,4の圧力が上昇した状態において、油圧シリンダ100に作用していた外力が解除されると、油圧シリンダ100は瞬間的に僅かに収縮した後、その反動による伸長と収縮とをある程度繰り返してから再び伸長作動へと戻ることになる。このように比較的短い時間の間に油圧シリンダ100が伸縮を繰り返すと油圧シリンダ100が設置される装置、例えば油圧シリンダ100が搭載される車両が振動してしまうおそれがある。
【0058】
また、ロッド側室2,3,4内の圧力が急激に上昇すると、ロッド側室2,3,4をシールするシール部材が外れたり、シリンダチューブ10が膨張したりすることで油圧シリンダ100が破損するおそれもある。
【0059】
これに対して、本実施形態の油圧シリンダ100では、図5に示すように、反ロッド側室5から第2給排路51aへ向かう作動油の流れを遮断し、第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する逆流防止機構71が、第3ロッドアッシー50に設けられている。なお、図5は、最収縮状態にある油圧シリンダ100を示した図1において、矢印Aで指し示される破線で囲まれた部分を拡大して示した図である。
【0060】
図5に示される逆流防止機構71は、第2内側ピストン部52の内側を軸方向に貫通して形成され一端が第2給排路51aに開口し他端が反ロッド側室5に開口する貫通孔に設けられた逆止弁72である。
【0061】
逆止弁72は、弁体72aと、弁体72aを付勢するスプリング72bと、を有し、反ロッド側室5から第2給排路51aへ向かう作動油の流れを遮断し、第2給排路51aの圧力が反ロッド側室5の圧力よりも大きくなったときに第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れを許容するように作動する。
【0062】
ここで、第3ロッドアッシー50に設けられた第2給排路51aは、第1ロッドアッシー30が伸長する際には、連通孔51bを通じて第2内側ロッド側室4と連通し、内側給排ポート42b及び連通孔51bを通じて第1内側ロッド側室3と連通し、給排ポート32b、内側給排ポート42b及び連通孔51bを通じてロッド側室2と連通している。また、第2ロッドアッシー40が伸長する際には、連通孔51bを通じて第2内側ロッド側室4と連通し、内側給排ポート42b及び連通孔51bを通じて第1内側ロッド側室3と連通している。また、第3ロッドアッシー50が伸長する際には、連通孔51bを通じて第2内側ロッド側室4と連通している。
【0063】
したがって、第3ロッドアッシー50に設けられた逆止弁72は、油圧シリンダ100が伸長状態にある間、各ロッド側室2,3,4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも大きくなったときに第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れを許容することが可能である。
【0064】
換言すると、例えば、ロッド側室2から反ロッド側室5へ向かう作動油の流れを許容する逆止弁を第1ロッドアッシー30に設けた場合、第1ロッドアッシー30が伸長している間は、給排ポート32bを通じて連通する第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも大きくなったときに逆止弁を通じて反ロッド側室5へ作動油を流入させることは可能である。しかしながら、第2ロッドアッシー40が伸長するときには、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4とロッド側室2とは連通しない状態となっていることから、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも大きくなっても第1ロッドアッシー30に設けられた逆止弁を通じて反ロッド側室5へ作動油を流入させることはできない。
【0065】
同様に、例えば、第1内側ロッド側室3から反ロッド側室5へ向かう作動油の流れを許容する逆止弁を第2ロッドアッシー40に設けた場合も、第3ロッドアッシー50が伸長するときには、第1内側ロッド側室3と第2内側ロッド側室4とは連通しない状態となっていることから、第2内側ロッド側室4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも大きくなっても第2ロッドアッシー40に設けられた逆止弁を通じて反ロッド側室5へ作動油を流入させることはできない。
【0066】
一方、第3ロッドアッシー50に設けられた上記構成の逆止弁72であれば、第1ロッドアッシー30が伸長している間は、ロッド側室2、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4の何れかのロッド側室2,3,4の圧力が、反ロッド側室5の圧力よりも大きくなったときに、第2ロッドアッシー40が伸長している間は、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4の何れかのロッド側室3,4の圧力が、反ロッド側室5の圧力よりも大きくなったときに、第3ロッドアッシー50が伸長している間は、第2内側ロッド側室4の圧力が、反ロッド側室5の圧力よりも大きくなったときに、逆止弁72を通じて反ロッド側室5へ作動油を流入させることが可能である。
【0067】
このように、第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁72を第3ロッドアッシー50に設けておくことで、上述のように、油圧シリンダ100が伸長作動している最中に、伸長速度を超えて油圧シリンダ100を強制的に伸長させるような外力が急に作用し、何れかのロッド側室2,3,4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも高くなった場合、作動油は逆止弁72を通じて第2給排路51aから反ロッド側室5へと速やかに流入することになる。
【0068】
これにより、ロッド側室2,3,4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも高い状態に維持されにくくなり、かつ、ロッド側室2,3,4から反ロッド側室5へ作動油が供給され、反ロッド側室5の圧力が負圧となることが抑制されることで、油圧シリンダ100は、油圧シリンダ100に作用していた外力が解除されても瞬間的に収縮することなく、再び伸長作動へと比較的円滑に戻ることになる。
【0069】
このように、外力に応じて生じる油圧シリンダ100の瞬間的な伸縮作動が抑制されることで、油圧シリンダ100が設置される装置が振動してしまうことを防止することができる。また、容積が縮小途中であるロッド側室2,3,4内の圧力が急激に上昇することも抑制されるため、ロッド側室2,3,4をシールするシール部材が外れたり、シリンダチューブ10が膨張したりすることを防止することができる。
【0070】
また、逆止弁72は、第1給排路55a及び第2給排路51aが設けられた第3ロッドアッシー50、すなわち、シリンダチューブ10内に設けられるロッド部材の中で最も内側に配置されるロッド部材に設けられている。最も内側に配置される第3ロッドアッシー50の受圧面の断面形状は、円環状ではなく円形状となる。このため、受圧面の断面形状が円環状である第1ロッドアッシー30や第2ロッドアッシー40に逆止弁72を設ける場合と比較し、ロッド部材の外径を大きくしなくとも、逆止弁72を配置するためのスペースを容易に確保することができる。
【0071】
また、逆止弁72が設けられる貫通孔は、図5に示すように、第2内側ロッド部51に形成された第1貫通孔51eと、第2内側ピストン部52に形成された挿通孔としての第2貫通孔52bと、からなる。第2内側ピストン部52に形成された第2貫通孔52bは、第2内側ピストン部52を第2内側ロッド部51に組み付けるために用いられる締結部材としてのボルト53が挿通する挿通孔として形成された複数の第2貫通孔52bのうちの1つである。
【0072】
このように、ボルト53が挿通する挿通孔として形成された貫通孔を逆止弁72が設けられる貫通孔として利用することによって、貫通孔を別途形成する場合と比較し、油圧シリンダ100の製造コストを低減することができるとともに、逆止弁72をコンパクトに配置することができる。
【0073】
なお、逆止弁72は、第2内側ピストン部52と第2内側ロッド部51とを締結するボルト53に内蔵されたものであってもよく、この場合、第2内側ピストン部52と第2内側ロッド部51とを締結する締結力を十分確保することができる。
【0074】
また、油圧シリンダ100の収縮作動が、第1取付部61に連結される駆動対象機器の自重により行われる場合、油圧シリンダ100に外力が作用しなければ、反ロッド側室5の圧力の方が各ロッド側室2,3,4の圧力よりも常に高い状態となるため、逆流防止機構71を単なる逆止弁72としても油圧シリンダ100の作動に影響を及ぼすことはない。しかしながら、各ロッド側室2,3,4に加圧された作動油を供給することによって油圧シリンダ100を収縮させる場合には、反ロッド側室5の圧力が各ロッド側室2,3,4の圧力よりも低くなり、逆流防止機構71を単なる逆止弁72とすると、油圧シリンダ100を収縮させることができないおそれがある。
【0075】
このため、このような場合は、収縮作動時に逆流防止機構71を通じて第2給排路51aから反ロッド側室5へと作動油が流れないように、逆流防止機構71を、各ロッド側室2,3,4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも所定値以上大きくなった場合のみに開弁するリリーフ弁とすればよい。具体的には、弁体72aを付勢するスプリング72bの荷重を適宜変更することによって、弁体72aの開弁圧を変化させることができる。このように逆流防止機構71をリリーフ弁とした場合も、ロッド側室2,3,4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも異常に高くなると、作動油はリリーフ弁を通じて第2給排路51aから反ロッド側室5へと速やかに流入するため、逆流防止機構71を逆止弁72とした場合と同様の効果を奏する。このため、第1取付部61に連結される駆動対象機器の自重によって収縮作動が行われる形式の油圧シリンダ100に対しても、逆流防止機構71としてリリーフ弁を採用してもよい。
【0076】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0077】
上記構成の油圧シリンダ100では、第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する逆流防止機構71としての逆止弁72が、第1給排路55a及び第2給排路51aを有する第3ロッドアッシー50、すなわち、シリンダチューブ10内に設けられるロッド部材の中で最も内側に配置されるロッド部材に設けられている。
【0078】
このように、第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁72を設けておくことで、例えば、油圧シリンダ100が伸長作動している最中に、伸長速度を超えて油圧シリンダ100を強制的に伸長させるような外力が急に作用し、何れかのロッド側室2,3,4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも高くなった場合、作動油は逆止弁72を通じて第2給排路51aから反ロッド側室5へと速やかに流入する。
【0079】
これにより、ロッド側室2,3,4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも高い状態に維持されにくくなり、かつ、ロッド側室2,3,4から反ロッド側室5へ作動油が供給され、反ロッド側室5の圧力が負圧となることが抑制されることで、油圧シリンダ100は、油圧シリンダ100に作用していた外力が解除されても瞬間的に収縮することなく、再び伸長作動へと比較的円滑に戻ることになる。
【0080】
このように、第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する逆流防止機構71を、第1給排路55a及び第2給排路51aを有する第3ロッドアッシー50に設けることによって、外力に応じて生じる油圧シリンダ100の瞬間的な伸縮作動を抑制することができる。また、ロッド側室2,3,4内の圧力が急激に上昇することが抑制されるため、ロッド側室2,3,4をシールするシール部材が外れたり、シリンダチューブ10が膨張したりすることを防止することができる。
【0081】
また、シリンダチューブ10内に設けられるロッド部材の中で最も内側に配置される第3ロッドアッシー50の受圧面の断面形状は、円環状ではなく円形状となる。このため、受圧面の断面形状が円環状である第1ロッドアッシー30や第2ロッドアッシー40に逆止弁72を設ける場合と比較し、ロッド部材の外径を大きくしなくとも、逆止弁72を配置するためのスペースを容易に確保することができる。
【0082】
<第2実施形態>
次に、図6を参照して、本発明の第2実施形態に係る多段式流体圧シリンダ200(以下、「油圧シリンダ200」と称する。)について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0083】
上記第1実施形態に係る油圧シリンダ100の逆流防止機構71は、第2内側ピストン部52の内側を軸方向に貫通して形成された貫通孔に設けられた逆止弁72であるのに対して、油圧シリンダ200の逆流防止機構171は、図6に示すように、管状部材としての給排管55の外周と貫通孔51fの内周との間に設けられたチェックシール172である点で相違する。図6は、第2実施形態に係る油圧シリンダ200を示す図であって、図5に相当する部分を示す図である。なお、油圧シリンダ200の基本的な構成及び作動は、第1実施形態に係る油圧シリンダ100と同様であるため、その説明を省略する。
【0084】
図6に示すように、貫通孔51fは、第2内側ピストン部52の内側を軸方向に貫通して形成され一端が第2給排路51aに開口し他端が反ロッド側室5に開口する孔であり、第2内側ピストン部52が結合される第2内側ロッド部51の端部に設けられる。貫通孔51fには、所定の隙間を介して給排管55の一端が挿入されており、貫通孔51fに挿入される給排管55の外周には、給排管55の外周面55bに沿って摺動するチェックシール172が設けられている。また、貫通孔51fには、チェックシール172を収容するために、径方向外側に向かって凹んで形成された収容溝51gが設けられる。
【0085】
チェックシール172は、ゴムなどの樹脂材または金属といった弾性を有する材料により形成された環状部材であり、図7A及び図7Bに示すように、給排管55の外周面55bに接する内周面172aと、収容溝51gの底面と対向する外周面172bと、径方向に切り欠かれた切欠溝172cが複数形成された流通面172dと、平坦に形成されたシール面172eと、周方向において一部が分断された合口部172fと、を有する。なお、図7Aは、チェックシール172の平面図であり、図7Bは、図7AのB-B線に沿う断面を示した断面図である。
【0086】
上記形状のチェックシール172は、合口部172fの隙間を拡げるようにして給排管55の外周面55bに取り付けられ、縮径方向に作用する弾性力によって、内周面172aが給排管55の外周面55bに僅かに押し付けられ、給排管55の外周面55bを軸方向に沿って摺動可能な状態となる。この状態において、外周面172bと収容溝51gの底面との間に所定の大きさの隙間が形成されるようにチェックシール172の外径の大きさは設定される。なお、図7Aに示される合口部172fは、軸方向において重なる部分を有するように階段状にカットされているが、合口部172fの形状はこれに限定されず、チェックシール172の周方向に対して直角または斜めにカットされた形状であってもよい。
【0087】
そして、チェックシール172は、流通面172dが反ロッド側室5側に位置し、シール面172eが第2給排路51a側に位置するように、収容溝51g内に収容される。
【0088】
チェックシール172がこのように設けられることによって、第2給排路51aの圧力、すなわち、ロッド側室2,3,4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも高くなると、チェックシール172は、流通面172dが収容溝51gの側面に押し付けられた状態となる。そして、この状態では、作動流体は、チェックシール172の外周面172bと収容溝51gの底面との間に形成される隙間と、流通面172dに形成された切欠溝172cと、を通じて、第2給排路51aから反ロッド側室5へと流れることが可能である。
【0089】
一方、第2給排路51aの圧力、すなわち、ロッド側室2,3,4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも低くなると、チェックシール172は、平坦面であるシール面172eが収容溝51gの側面に押し付けられた状態となる。この状態では、作動油が流通可能な隙間が形成されず、反ロッド側室5から第2給排路51aへと向かう作動油の流れは遮断された状態となる。
【0090】
このように、第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容するチェックシール172を、第2給排路51aと反ロッド側室5とを連通可能な貫通孔51fと給排管55の外周面55bとの間に形成される流路上に配置することによって、何れかのロッド側室2,3,4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも高くなった場合、作動油はチェックシール172を通じて反ロッド側室5へと速やかに流入可能である。
【0091】
したがって、油圧シリンダ200においても、上記第1実施形態と同様に、外力に応じて生じる油圧シリンダ200の瞬間的な伸縮作動を抑制することができる。また、油圧シリンダ200では、第2内側ロッド部51に形成された貫通孔51fと、貫通孔51fに挿入される給排管55と、の間にチェックシール172が設けられることから、給排管55を第2内側ロッド部51に溶接接合する必要がなくなる。このため、温度変化によって給排管55が膨張ないし収縮することで溶接部が割れて反ロッド側室5から第2給排路51aへと作動油が漏れ出すことへの対策を講じることも不要となる。
【0092】
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0093】
上記構成の油圧シリンダ200では、第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する逆流防止機構171としてのチェックシール172が、第1給排路55a及び第2給排路51aを有する第3ロッドアッシー50、すなわち、シリンダチューブ10内に設けられるロッド部材の中で最も内側に配置されるロッド部材に設けられている。
【0094】
このように、第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する逆流防止機構171を、第1給排路55a及び第2給排路51aを有する第3ロッドアッシー50に設けることによって、上記第1実施形態と同様に、外力に応じて生じる油圧シリンダ200の瞬間的な伸縮作動を抑制することができる。また、ロッド側室2,3,4内の圧力が急激に上昇することが抑制されるため、ロッド側室2,3,4をシールするシール部材が外れたり、シリンダチューブ10が膨張したりすることを防止することができる。
【0095】
<第3実施形態>
次に、図8を参照して、本発明の第3実施形態に係る多段式流体圧シリンダ300(以下、「油圧シリンダ300」と称する。)について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0096】
上記第1実施形態に係る油圧シリンダ100の逆流防止機構71は、第2内側ピストン部52の内側を軸方向に貫通して形成された貫通孔に設けられた逆止弁72であるのに対して、油圧シリンダ300の逆流防止機構271は、図8に示すように、第3ロッドアッシー50の第2内側ピストン部52の外周面52aと、第2ロッドアッシー40の内周面40aと、の間に設けられたチェックシール172である点で相違する。図8は、第3実施形態に係る油圧シリンダ300を示す図であって、図5に相当する部分を示す図である。なお、油圧シリンダ300の基本的な構成及び作動は、第1実施形態に係る油圧シリンダ100と同様であるため、その説明を省略する。また、油圧シリンダ300において用いられるチェックシール172は、上記第2実施形態に係る油圧シリンダ200において用いられるチェックシール172と径方向の大きさが異なるだけであるため、その詳細な説明を省略する。
【0097】
油圧シリンダ300において用いられるチェックシール172は、第2ロッドアッシー40の内周面40aに沿って摺動自在に設けられており、第2内側ピストン部52の外周面52aには、チェックシール172を収容するために、径方向内側に向かって凹んで形成された収容溝52cが設けられる。
【0098】
チェックシール172は、合口部172fの隙間を狭めるようにして第2ロッドアッシー40の内周面40aに取り付けられ、拡径方向に作用する弾性力によって、外周面172bが第2ロッドアッシー40の内周面40aに僅かに押し付けられ、第2ロッドアッシー40の内周面40aを軸方向に沿って摺動可能な状態となる。この状態において、内周面172aと収容溝52cの底面との間に所定の大きさの隙間が形成されるようにチェックシール172の内径の大きさは設定される。
【0099】
そして、チェックシール172は、流通面172dが反ロッド側室5側に位置し、シール面172eが第2内側ロッド側室4側に位置するように、収容溝52c内に設けられる。
【0100】
チェックシール172がこのように設けられることによって、第2内側ロッド側室4及び第2内側ロッド側室4と連通する第2給排路51aやロッド側室2,3の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも高くなると、チェックシール172は、流通面172dが収容溝52cの側面に押し付けられた状態となる。そして、この状態では、作動流体は、チェックシール172の内周面172aと収容溝52cの底面との間に形成される隙間と、流通面172dに形成された切欠溝172cと、を通じて、第2内側ロッド側室4から反ロッド側室5へと流れることが可能である。
【0101】
一方、第2内側ロッド側室4及び第2内側ロッド側室4と連通する第2給排路51aやロッド側室2,3の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも低くなると、チェックシール172は、平坦面であるシール面172eが収容溝52cの側面に押し付けられた状態となる。この状態では、作動油が流通可能な隙間が形成されず、反ロッド側室5から第2内側ロッド側室4へと向かう作動油の流れは遮断された状態となる。
【0102】
このように、第2内側ロッド側室4を通じて第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容するチェックシール172を、第2給排路51aと反ロッド側室5とを連通可能な第2内側ピストン部52の外周面52aと第2ロッドアッシー40の内周面40aとの間に形成される流路上に配置することによって、何れかのロッド側室2,3,4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも高くなった場合、作動油はチェックシール172を通じて反ロッド側室5へと速やかに流入可能である。
【0103】
したがって、油圧シリンダ300においても、上記第1実施形態と同様に、外力に応じて生じる油圧シリンダ300の瞬間的な伸縮作動を抑制することができる。また、油圧シリンダ300では、従来から摺動面となっている第3ロッドアッシー50の第2内側ピストン部52の外周面52aと、第2ロッドアッシー40の内周面40aと、の間にチェックシール172が設けられることから、設計の変更や追加の加工をあまり要しないため、逆流防止機構271が設けられる油圧シリンダ300の製造コストの増大を抑制することができる。なお、チェックシール172は、第3シール部材54に代えて設けられてもよいし、第3シール部材54とともに設けられてもよい。
【0104】
以上の第3実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0105】
上記構成の油圧シリンダ300では、第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する逆流防止機構271としてのチェックシール172が、第1給排路55a及び第2給排路51aを有する第3ロッドアッシー50、すなわち、シリンダチューブ10内に設けられるロッド部材の中で最も内側に配置されるロッド部材に設けられている。
【0106】
このように、第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する逆流防止機構271を、第1給排路55a及び第2給排路51aを有する第3ロッドアッシー50に設けることによって、上記第1実施形態と同様に、外力に応じて生じる油圧シリンダ300の瞬間的な伸縮作動を抑制することができる。また、ロッド側室2,3,4内の圧力が急激に上昇することが抑制されるため、ロッド側室2,3,4をシールするシール部材が外れたり、シリンダチューブ10が膨張したりすることを防止することができる。
【0107】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の実施形態で説明した構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0108】
上記第1実施形態及び上記第3実施形態において、反ロッド側室5に対して作動油を給排する第1給排路55aは、第3ロッドアッシー50に設けられている。これに代えて、第1給排路55aは、シリンダチューブ10に設けられていてもよく、この場合、シリンダチューブ10内に形成される反ロッド側室5に対して、例えば、シリンダチューブ10の内周面10aにおいて開口する第1給排路55aを通じて直接的に作動油が給排される。
【0109】
また、上記各実施形態において、油圧シリンダ100,200,300は、シリンダチューブ10内に3つのロッド部材(第1ロッドアッシー30,第2ロッドアッシー40,第3ロッドアッシー50)が径方向において重なって設けられた三段式の油圧シリンダ100,200,300であり、外側ロッド部材としての第1ロッドアッシー30と内側ロッド部材としての第3ロッドアッシー50との間には、中間ロッド部材としての第2ロッドアッシー40が1つ設けられている。これに代えて、第1ロッドアッシー30と第3ロッドアッシー50との間には、中間ロッド部材としての第2ロッドアッシー40が2つ以上設けられていてもよい。また、油圧シリンダ100,200,300は、中間ロッド部材としての第2ロッドアッシー40が設けられておらず、外側ロッド部材としての第1ロッドアッシー30の内側に内側ロッド部材としての第3ロッドアッシー50のみが設けられた二段式の流体圧シリンダであってもよい。
【0110】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0111】
油圧シリンダ100,200,300は、シリンダチューブ10と、シリンダチューブ10の内周面10aに沿って摺動しシリンダチューブ10内をロッド側室2と反ロッド側室5とに区画する外側ピストン部32が端部に設けられた筒状の第1ロッドアッシー30と、第1ロッドアッシー30の内側にシリンダチューブ10の軸方向に移動自在に設けられる第3ロッドアッシー50と、反ロッド側室5に対して作動油を給排する第1給排路55aと、ロッド側室2に対して作動油を給排する第2給排路51aと、を備え、第2給排路51aは、第3ロッドアッシー50に設けられ、第3ロッドアッシー50には、第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する逆流防止機構71,171,271が設けられる。
【0112】
この構成では、第2給排路51aから反ロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する逆流防止機構71,171,271が、第2給排路51aが設けられた第3ロッドアッシー50、すなわち、シリンダチューブ10内に設けられるロッド部材の中で最も内側に配置される第3ロッドアッシー50に設けられている。このように、第3ロッドアッシー50に逆流防止機構71,171,271を設けておくことで、例えば、油圧シリンダ100,200,300が伸長作動している最中に、伸長速度を超えて油圧シリンダ100,200,300を強制的に伸長させるような外力が急に作用し、何れかのロッド側室2,3,4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも高くなった場合、作動油は逆流防止機構71,171,271を通じて第2給排路51aから反ロッド側室5へと速やかに流入する。これにより、ロッド側室2,3,4の圧力が反ロッド側室5の圧力よりも高い状態に維持されにくくなり、かつ、ロッド側室2,3,4から反ロッド側室5へ作動油が供給され、反ロッド側室5の圧力が負圧となることが抑制されることで、油圧シリンダ100,200,300は、油圧シリンダ100,200,300に作用していた外力が解除されても瞬間的に収縮することなく、再び伸長作動へと比較的円滑に戻ることになり、結果として、外力に応じて生じる油圧シリンダ100,200,300の瞬間的な伸縮作動を抑制することができる。また、ロッド側室2,3,4内の圧力が急激に上昇することが抑制されるため、ロッド側室2,3,4をシールするシール部材が外れたり、シリンダチューブ10が膨張したりすることを防止することができる。
【0113】
さらに、シリンダチューブ10内に設けられるロッド部材の中で最も内側に配置される第3ロッドアッシー50の受圧面の断面形状は、円環状ではなく円形状となる。このため、受圧面の断面形状が円環状である第1ロッドアッシー30や第2ロッドアッシー40に逆流防止機構71,171,271を設ける場合と比較し、ロッド部材の外径を大きくしなくとも、逆流防止機構71,171,271を配置するためのスペースを容易に確保することができる。
【0114】
また、第3ロッドアッシー50は、内部に第2給排路51aが形成された第2内側ロッド部51と、第2内側ロッド部51の端部に設けられ、反ロッド側室5に臨んで配置される第2内側ピストン部52と、第2内側ピストン部52を軸方向に貫通して形成され一端が第2給排路51aに開口し他端が反ロッド側室5に開口する貫通孔51e,52bと、を有し、逆流防止機構71は、貫通孔51e,52bに設けられた逆止弁72である。
【0115】
この構成では、逆流防止機構71が、第3ロッドアッシー50に形成された貫通孔51e,52bに設けられた逆止弁72である。このように逆止弁72という簡素な構成を第3ロッドアッシー50に付加することによって、外力に応じて生じる油圧シリンダ100の瞬間的な伸縮作動を抑制することができる。また、シリンダチューブ10内に設けられるロッド部材の中で最も内側に配置される第3ロッドアッシー50は、反ロッド側室5に臨む受圧面の断面形状が、円環状ではなく円形状となるため、逆流防止機構71として機能する逆止弁72及び逆止弁72が設けられる貫通孔51e,52bを容易にレイアウトすることができる。
【0116】
また、第2内側ピストン部52には、第2内側ピストン部52を第2内側ロッド部51に組み付けるために用いられるボルト53が挿通可能な第2貫通孔52bが軸方向に貫通して複数形成されており、複数の第2貫通孔52bのうちの1つは、貫通孔51e,52bの一部を構成する。
【0117】
この構成では、ボルト53が挿通可能な複数の第2貫通孔52bのうちの1つが、逆止弁72が設けられる貫通孔51e,52bの一部を構成する。このように逆止弁72が設けられる貫通孔51e,52bの一部を、ボルト53が挿通する挿通孔と同様に加工することによって、逆流防止機構71が設けられる油圧シリンダ100の製造コストの増大を抑制することができる。
【0118】
また、第1給排路55aは、第3ロッドアッシー50に設けられ、第3ロッドアッシー50は、内部に第2給排路51aが形成された第2内側ロッド部51と、第2内側ロッド部51の端部に設けられ、反ロッド側室5に臨んで配置される第2内側ピストン部52と、第2内側ピストン部52を軸方向に貫通して形成され一端が第2給排路51aに開口し他端が反ロッド側室5に開口する貫通孔51fと、貫通孔51fに挿通され、内部に第1給排路55aが形成された給排管55と、を有し、逆流防止機構171は、給排管55の外周と貫通孔51fの内周との間に設けられたチェックシール172である。
【0119】
この構成では、逆流防止機構171が、給排管55の外周と貫通孔51fの内周との間に設けられたチェックシール172である。このようにチェックシール172という簡素な構成を第3ロッドアッシー50に付加することによって、外力に応じて生じる油圧シリンダ200の瞬間的な伸縮作動を抑制することができる。また、チェックシール172は、第2内側ロッド部51に形成された貫通孔51fと、貫通孔51fに挿入される給排管55と、の間に設けられることから、給排管55を第2内側ロッド部51に溶接接合する必要がなくなる。このため、温度変化によって給排管55が膨張ないし収縮することで溶接部が割れて反ロッド側室5から第2給排路51aへと作動油が漏れ出すことへの対策を講じることも不要となり、結果として、逆流防止機構171が設けられる油圧シリンダ200の製造コストの増大を抑制することができる。
【0120】
また、第3ロッドアッシー50は、内部に第2給排路51aが形成された第2内側ロッド部51と、第2内側ロッド部51の端部に設けられ、反ロッド側室5に臨んで配置される第2内側ピストン部52と、を有し、第2内側ピストン部52は、第1ロッドアッシー30と第3ロッドアッシー50との間に設けられる第2ロッドアッシー40の内周面40a、または、第1ロッドアッシー30の内周面30aに沿って摺動し、逆流防止機構271は、第2内側ピストン部52が摺接する第2ロッドアッシー40または第1ロッドアッシー30と、第2内側ピストン部52と、の間に設けられたチェックシール172である。
【0121】
この構成では、逆流防止機構271が、第2内側ピストン部52が摺接する第2ロッドアッシー40または第1ロッドアッシー30と、第2内側ピストン部52と、の間に設けられたチェックシール172である。このようにチェックシール172という簡素な構成を第3ロッドアッシー50に付加することによって、外力に応じて生じる油圧シリンダ300の瞬間的な伸縮作動を抑制することができる。また、この構成では、チェックシール172を、第2内側ピストン部52の外周面52aに従来設けられる第3シール部材54に代えて、または、第3シール部材54とともに設ければよいことから、設計の変更や追加の加工をあまり要しないため、逆流防止機構271が設けられる油圧シリンダ300の製造コストの増大を抑制することができる。
【0122】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0123】
100,200,300・・・多段式油圧シリンダ(多段式流体圧シリンダ)、2・・・ロッド側室、3・・・第1内側ロッド側室、4・・・第2内側ロッド側室、5・・・反ロッド側室、10・・・シリンダチューブ、30・・・第1ロッドアッシー(外側ロッド部材)、40・・・第2ロッドアッシー(中間ロッド部材)、50・・・第3ロッドアッシー(内側ロッド部材)、51・・・第2内側ロッド部(内側ロッド部)、51a・・・第2給排路、51e・・・第1貫通孔(貫通孔)、51f・・・貫通孔、52・・・第2内側ピストン部(内側ピストン部)、52b・・・第2貫通孔(貫通孔)、53・・・ボルト(締結部材)、55・・・給排管(管状部材)、55a・・・第1給排路、71,171,271・・・逆流防止機構、72・・・逆止弁(逆流防止機構)、172・・・チェックシール(逆流防止機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8