(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネルを備えるテンプレートへのバルブ金属層の変換、及びそこにおける所定間隔を有する構造物の形成
(51)【国際特許分類】
C25D 1/08 20060101AFI20221116BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20221116BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20221116BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20221116BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20221116BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20221116BHJP
C25B 11/03 20210101ALI20221116BHJP
C25D 11/04 20060101ALI20221116BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20221116BHJP
H01M 8/0208 20160101ALI20221116BHJP
H01M 8/0221 20160101ALI20221116BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20221116BHJP
H01M 8/0236 20160101ALI20221116BHJP
H01M 8/0245 20160101ALI20221116BHJP
【FI】
C25D1/08
B01J35/04 A
B01J37/00 K
B01J37/02 301F
B01J37/02 301N
B01J37/08
B01J37/34
C25B11/03
C25D11/04 E
H01M8/0206
H01M8/0208
H01M8/0221
H01M8/0228
H01M8/0236
H01M8/0245
(21)【出願番号】P 2020502127
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2018068683
(87)【国際公開番号】W WO2019016036
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-04-22
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(73)【特許権者】
【識別番号】599098493
【氏名又は名称】カトリーケ・ユニフェルシテイト・ルーヴァン
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラフ・ピョートル・ザンコフスキー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・エム・フェレーケン
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-076137(JP,A)
【文献】特開平06-192887(JP,A)
【文献】特開2010-021075(JP,A)
【文献】特開2011-179103(JP,A)
【文献】特開2016-053212(JP,A)
【文献】国際公開第2015/012234(WO,A1)
【文献】米国特許第04189357(US,A)
【文献】米国特許第05069763(US,A)
【文献】米国特許第05277788(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0297913(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104947167(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第2562851(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/08
C25D 11/00 - 11/38
H01M 8/0206
H01M 8/0236
H01M 8/0245
H01M 8/0228
H01M 8/0208
H01M 8/0221
B01J 37/02
B01J 37/08
B01J 37/34
B01J 35/04
B01J 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ金属層(11)の少なくとも一部を、第1の方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数のチャネル(13)を備えるテンプレート(20)に変換する方法(100)であって、上記方法
(100)は、
上記バルブ金属層(11)の少なくとも一部を厚さ方向に陽極処理し、複数のチャネル(13)を備えるバルブ金属酸化物の多孔質層(12)を形成する第1の陽極処理ステップ(101)であって、各チャネルは、上記第1の方向に沿って長手方向を有して整列したチャネル壁(14)を有し、かつ、チャネル底部(15)を有し、上記チャネル底部(15)は、上記第1の陽極処理ステップ(101)の結果として得られる第1の絶縁性金属酸化物バリヤ層(21)によってコーティングされる第1の陽極処理ステップ(101)と、
上記チャネル壁(14)及び上記チャネル底部(15)に疎水面を誘導する保護処置(102)と、
上記保護処置の後の第2の陽極処理ステップ(103)であって、上記チャネル底部(15)から上記第1の絶縁性金属酸化物バリヤ層(21)を実質的に除去し、上記複数のチャネル(13)の底部(15)のみにおいて陽極処理を誘導し、上記チャネル底部(15)において第2の絶縁性金属酸化物バリヤ層(22)を生成する第2の陽極処理ステップ(103)と、
上記チャネル底部(15)から上記第2の絶縁性金属酸化物バリヤ層(22)を除去するエッチング液におけるエッチングステップ(104)と含
み、
上記保護処置(102)は、上記チャネル壁(14)及び上記チャネル底部(15)の上に保護層(31)を堆積すること(1022)を含み、
上記第2の陽極処理ステップ(103)は、上記チャネル底部(15)からのみ上記保護層(31)をさらに除去し、
上記保護層(31)は、疎水性のシラン、エッチング液に耐性を有するポリマー、ポリスチレン、ポリ(メチル2-メチルプロパノアート)、又はポリ(ジメチルシロキサン)を含む、
方法
(100)。
【請求項2】
上記バルブ金属層(11)は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、タンタル、又はタンタル合金の層を備える、
請求項1記載の方法(100)。
【請求項3】
上記保護処置(102)は、300°C及び550°Cの間の範囲の温度においてアニーリング(1021)を行うことを含む、
請求項1又は2記載の方法(100)。
【請求項4】
上記エッチング液は、リン酸、硫酸、シュウ酸、クロム酸、アンモニア、過酸化水素、又は水酸化カリウムを含む水性のエッチング液である、
請求項1~
3のうちの1つに記載の方法(100)。
【請求項5】
上記エッチング液は表面張力調整剤を含む、
請求項1~
4のうちの1つに記載の方法(100)。
【請求項6】
上記第2の陽極処理ステップ(103)の間に超音波を提供することをさらに含む、
請求項1~
5のうちの1つに記載の方法(100)。
【請求項7】
上記第1の陽極処理ステップ(101)は、上記バルブ金属層(11)の一部のみを上記厚さ方向に陽極処理し、それによって、上記テンプレート(20)と、上記テンプレートを支持する基板(10)とを形成し、
上記基板(10)は、上記バルブ金属層(11)の残りの陽極処理されなかった部分を含む、
請求項1~
6のうちの1つに記載の方法(100)。
【請求項8】
第1の方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数のチャネル(13)を備えたテンプレート(20)
を製造するテンプレート製造方法であって、
請求項1~7のうちの1つに記載の方法(100)を用いてバルブ金属層(11)の少なくとも一部を上記テンプレート(20)に変換することを含む、
テンプレート製造方法。
【請求項9】
上記第1の方向は、上記バルブ金属層(11)の面に対して60度及び90度の間の範囲の角度にある、
請求項
8記載のテンプレート
製造方法。
【請求項10】
上記テンプレートは、上記第1の方向とは異なる第2の方向に向けられた相互接続する複数のチャネルをさらに備えた、
請求項
8~9のうちの1つに記載のテンプレート
製造方法。
【請求項11】
上記第2の方向は上記第1の方向に実質的に直交する、
請求項
10記載のテンプレート
製造方法。
【請求項12】
上記第1の方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数のチャネル(13)は、それらの長さ全体にわたって実質的に一定の直径を有し、
上記チャネル底部(15)は導電性層を露出する、
請求項
8~11のうちの1つに記載のテンプレート
製造方法。
【請求項13】
上記第1の方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数のチャネル(13)は、互いに隣接するチャネル間の間隔よりも小さな直径を有する、
請求項
8~12のうちの1つに記載のテンプレート
製造方法。
【請求項14】
互いに所定間隔を有する複数の構造物(40)を基板(10)の上に形成する
構造物形成方法(200)であって、上記
構造物形成方法
(200)は、
請求項1~
7のうちの1つに記載の方法(100)を用いて、バルブ金属層(11)の少なくとも一部を、第1の方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数のチャネル(13)を備えるテンプレート(20)に変換(201)し、それによって、上記テンプレート(20)及び上記基板(10)を形成し、上記テンプレート(20)のチャネル(13)の内部に固体機能材料を堆積させ(202)、それによって、互いに所定間隔を有する複数のチャネル(13)の内部に、上記第1の方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数の構造物(40)を形成することを含む、
構造物形成方法(200)。
【請求項15】
上記固体機能材料を堆積すること(202)は、導電性材料、半導体材料、電気絶縁性材料、又はそれらの組み合わせを堆積することを含む、
請求項
14記載の互いに所定間隔を有する複数の構造物(40)を形成する
構造物形成方法(200)。
【請求項16】
上記固体機能材料を堆積すること(202)は、定電流又は定電位の電着又はめっきによって導電性材料を堆積し、それによって、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物(40)を形成することを含む、
請求項
14記載の互いに所定間隔を有する複数の構造物(40)を形成する
構造物形成方法(200)。
【請求項17】
上記基板(10)は導電性基板であり、
上記互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物と、上記基板との間において、1オーム cm
2未満の接触抵抗を有する電気的な接触が確立される、
請求項
16記載の互いに所定間隔を有する複数の構造物(40)を形成する
構造物形成方法(200)。
【請求項18】
上記テンプレート(20)をエッチングによって除去することをさらに含む、
請求項
14~17のうちの1つに記載の互いに所定間隔を有する複数の構造物(40)を形成する
構造物形成方法(200)。
【請求項19】
基板(10)と、上記基板(10)の上における互いに所定間隔を有する複数の構造物(51)
とを備えるエンティティ(50)
を製造するエンティティ製造方法であって、
上記互いに所定間隔を有する複数の構造物(51)は、第1の方向に沿って長手方向を有して整列し、
上記エンティティ製造方法は、請求項14~18のうちの1つに記載の構造物形成方法(200)を用いて、上記互いに所定間隔を有する複数の構造物を上記基板(10)の上に形成することを含む、
エンティティ製造方法。
【請求項20】
上記第1の方向は、上記基板(10)の面に対して60度及び90度の間の範囲の角度にある、
請求項
19記載のエンティティ
製造方法。
【請求項21】
上記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って方向付けられた相互接続する複数の構造物(52)をさらに備えた、
請求項
19~20のうちの1つに記載のエンティティ
製造方法。
【請求項22】
上記第2の方向は上記第1の方向に実質的に直交する、
請求項
21記載のエンティティ
製造方法。
【請求項23】
上記互いに所定間隔を有する複数の構造物は(51)導電性材料、半導体材料、電気絶縁性材料、又はそれらの組み合わせを含む、
請求項
19~22のうちの1つに記載のエンティティ
製造方法。
【請求項24】
請求項
16~23のうちの1つに記載の
エンティティ製造方法を用いてエンティティ(50)を製造することを含む、
エンティティ(50)を備えた装置
を製造する装置製造方法。
【請求項25】
上記装置は、バッテリー、燃料電池、センサ、スーパーキャパシタ、電解槽、光電解槽、又は化学反応器である、
請求項
24記載の装置
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属層を、互いに所定間隔を有する複数のチャネル、例えばナノチャネルを備えるテンプレートに変換する方法に関し、また、そのような方法によって入手可能なテンプレートに関する。本開示は、そのようなテンプレートの互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネルの内部に、互いに所定間隔を有する複数の構造物、例えばナノ構造物を形成する方法に関して、また、そのような互いに所定間隔を有する複数(ナノ)構造物を備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ソリッドステートバッテリー、より具体的には薄膜ソリッドステートバッテリーは、魅力的なエネルギー貯蔵装置である。ソリッドステートバッテリーは、典型的には、第1の集電体層、第1の電極層(例えば正の活性材料層又は陰極層)、固体電解質層、第2の電極層(例えば負の活性材料層又は陽極層)、及び第2の集電体層のスタックを備えるソリッドステートバッテリーセルに基づく。バッテリーはさらに、例えばポリマーパッケージにカプセル化されてもよい。
【0003】
ソリッドステートリチウムイオン挿入バッテリーセルの例において、集電体層は、アルミニウム、ニッケル、又は銅の箔のような金属箔を備えてもよく、また、活性陰極層は、例えば、マンガン酸リチウム(LMO)、コバルト酸リチウム(LCO)、又はリン酸鉄リチウム(LPO)のような、リチウム化された遷移金属酸化物又は塩を備えてもよい。陽極層は、例えば、炭素、ケイ素、スピネル型チタン酸リチウム(LTO)、又は金属リチウムを備えてもよい。固体電解質は、ガラス質、セラミック、結晶、又はポリマーのリチウム含有材料を備えてもよい。活性材料の高い電気抵抗率及びイオン抵抗率に起因して、陽極層及び陰極層の厚さは5マイクロメートル未満に制限される。これにより、薄膜ソリッドステートバッテリーセルの制限されたエネルギー密度及び電力密度をもたらす。
【0004】
これらの制限を克服するために、電極の表面積を増大してバッテリーセルの単位面積中に存在する活性材料の量を増大するために、3次元的電極構造が提案されている。そのような3次元的アプローチにおいて、製造時の主な挑戦のうちの1つは、3次元的電極面に対するバッテリー材料のコンフォーマルコーティングである。もう1つの挑戦は、3次元的電極構造物を製造するための、高度な、好ましくは低コストの方法に対する必要性を満たすことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3次元的電極構造物は、例えば、同じ方向に沿った向きを有して互いに近接した間隔で設けられた複数の導電性ナノワイヤを備えるか、又はそのような複数の導電性ナノワイヤからなるものであってもよい。ここで、隣接ナノワイヤ間の間隔は、例えば、ナノワイヤの長さよりも小さく、例えば、ナノワイヤの長さよりも1.2~10倍小さい。そのような複数の導電性ナノワイヤを製造するための既知の、比較的に安価な方法は、アルミニウム箔の陽極処理によって形成された多孔性の陽極酸化アルミニウム(AAO)のテンプレートにおける金属の電気めっきを含む。最大で100マイクロメートルまでの厚さを有する多孔性の酸化アルミニウムのテンプレートを生成することができる。しかしながら、アルミニウム箔の陽極処理によって生成されたテンプレートの細孔又はチャネルは、常に、数十~数百ナノメートルの厚さを有する絶縁酸化アルミニウムバリヤ層で覆われている。このバリヤ層は、後に電気めっきによって複数の導電性ナノワイヤの形成を可能にするために、チャネル底部から除去される必要がある。
【0006】
アルミニウム箔の基礎をなす残りの部分(陽極処理されていない部分)からテンプレートを分離することなくチャネル底部からバリヤ層を除去するための様々な方法が知られている。例えば、陽極処理で使用される電圧は、陽極処理の最終段階の間に次第に低減されてもよい。これにより、バリヤ層の厚さがより小さく、例えば1nm以下になり、チャネルの底部における細孔間の距離及び細孔のサイズの低減をもたらす。そのようなバリヤ層の厚さは、チャネル又は細孔の内部において金属の電気めっきを可能にする程度に十分に小さい。しかしながら、このアプローチによれば、長い(数百ナノメートルの長さを有する)根のような、細い(数nmの直径を有する)ナノワイヤを介して、ナノワイヤは基板に不十分にしか接続されない。このことは、基板から層間剥離しやすいナノワイヤネットワークの不十分な機械的安定性をもたらす可能性がある。
【0007】
テンプレートのチャネル底部からバリヤ層を除去するもう1つの既知の方法は、テンプレートをH3PO4溶液に浸漬してバリヤ層をゆっくりとエッチングすることで、バリヤ層を薄くすることを含む。しかしながら、このことは、細孔の過度の拡大をもたらし、その結果、むしろ大きな直径を有し、ほとんどの体積を充填するテンプレートに形成されたナノワイヤをもたらす。このことは、その上に活性電極材料をコーティングするために利用可能な残りの体積を制限し、その結果、電極のエネルギー密度を制限する。
【0008】
チャネル底部からバリヤ層を除去するためのさらにもう1つの方法は、アルミニウム箔の基礎をなす残りの部分(陽極処理されていない部分)からテンプレートを分離することを含む。この方法によれば、アルミニウム箔は、多孔性のテンプレートを形成した後に除去、例えば溶解される。これにより、一方の側において露出したバリヤ層を有し、もう1つの側において開いた細孔を有する、こわれやすい自立型のテンプレートをもたらす。その後、露出したバリヤ層は、例えば希釈されたH3PO4溶液において一方の側をエッチングすることによって除去される。また、後にテンプレートにおける金属ナノワイヤを電着するときに作用電極として機能するように、薄い金属層が堆積される。しかしながら、自立型のテンプレートのこわれやすさは、この方法を大規模な製造で実施することを困難にする。
【0009】
従って、互いに所定間隔を有する複数のナノワイヤを例えば電気めっきによって後に形成する場所を設けるために、多孔性の陽極のテンプレートにおけるチャネル底部からバリヤ層を除去することを可能にする方法が必要とされる。ここで、一方で、細孔の拡大が回避され、他方で、細孔を狭くすることが回避され、本方法は大規模製造の実施に適している。
【0010】
3次元的電極構造を有するソリッドステートバッテリーを製造する方法において、3次元的電極構造物の上に活性電極材料層を形成する必要がある。活性電極材料層は、好ましくは、コンフォーマルな堆積を可能にする処理によって形成される。有利に使用可能である既知の方法は、電気めっきである。例えば、リチウムイオン挿入電極の場合、陰極前駆体材料としてマンガン酸化物(MnOx、ここで1≦x≦2)が使用されてもよく、それは次いでさらに、リチウムを用いた変換(リチウム化)により、活性マンガン酸リチウム(LMO)電極材料に変換される。
【0011】
商用バッテリーの大規模製造では、MnOxの合成のために、典型的には、MnSO4及びH2SO4を含む高温の酸浴槽が使用される。しかしながら、浴槽の酸性の性質に起因して、陽極電流が流れたときの酸性環境における金属の固有の酸化及び溶解に起因して、大部分の金属の上に電着を行うことができない。酸浴槽からMnO2の陽極堆積を行うことに適している金属は、Pt又はAuのような貴金属、又は、チタンのような、安定かつ稠密な不動態酸化物層をその表面に形成する金属のみである。しかしながら、これらの金属は、非常に高価(貴金属)であるか、電着することが非常に困難(チタン)である。
【0012】
酸化マンガンの陰極前駆体を製造するための他の方法は、Mn2+の有機錯体、例えば酢酸塩又はクエン酸塩に基づいた中性マンガン浴槽を用いる。これらの浴槽は、7に近いpHを有し、Niのような卑金属の上にMnOx前駆体の電気めっきを行うために使用可能である。しかしながら、そのような浴槽のほぼ中性のpHに起因して、かつ、溶存酸素の存在に起因して、これらの溶液は安定したものではなく、時間が経過すると、浴槽においてMnOx沈殿物が形成される。このことは、経済的及び工業的な観点から見て浴槽の安定性が重要である大規模製造へのこれらの浴槽の適用可能性を実質的に制限する。浴槽の組成の変化もまた、電気めっきの動力学の変化をもたらす可能性があり、これにより不十分な再現性がもたらされる。
【0013】
さらに、ソリッドステートバッテリーを製造するための方法では、典型的には、電極構造物の上に陰極前駆体材料を堆積した後にアニーリングステップ(リチウム化ステップ)が行われ、これにより、陰極前駆体材料を活性化(リチウム化)し、活性化(リチウム化)された陰極材料を形成する。電極構造物を形成するために例えば遷移金属などの非貴金属を用いる場合、そのようなアニーリングステップは、電極構造物の望ましくない熱劣化(例えば、酸化又はもう1つの化学反応に起因した)をもたらす可能性がある。
【0014】
従って、広範囲の金属の上に活性電極材料の層を形成することを可能にする方法であって、好ましくは、大規模製造に適した低コストの処理であり、実質的にコンフォーマルな堆積を可能にする方法が必要とされる。さらに、アニーリングのような後の処理の間において電極材料の劣化のリスクを低減した方法が必要とされる。
【0015】
本開示の実施形態の目的は、金属層の少なくとも一部、より具体的にはバルブ金属層の少なくとも一部を、互いに所定間隔を有する複数のチャネル、例えば互いに所定間隔を有する複数のナノチャネルを備えるテンプレートへ変換する、陽極処理に基づく方法を供給することにある。ここで、陽極処理によって得られるバリヤ層は、一方では、細孔の拡大なしで、又は限られた細孔の拡大とともに除去されてもよく、他方では、細孔を狭める作用なしで、又は限られた細孔を狭める作用とともに除去されてもよい。本開示の実施形態の目的は、そのような方法によって入手可能なテンプレートを提供することにある。
【0016】
本開示のさらなる目的は、そのようなテンプレートの互いに所定間隔を有する複数のチャネル、例えばナノチャネルの内部に、良好な機械的安定性を有する互いに所定間隔を有する複数の構造物、例えばナノ構造物を形成する方法を提供することにある。本開示のさらなる目的は、そのようなテンプレートの互いに所定間隔を有する複数のチャネル、例えばナノチャネルの内部に、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物、例えば導電性ナノ構造物を形成する方法を提供することにある。ここで、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物と、基礎をなす導電性基板との間に、良好な電気的接触が確立される。本開示の目的は、そのような互いに所定間隔を有する複数の構造物を備える装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的は、本開示に係る方法及び装置によって少なくとも部分的に達成される。
【0018】
第1の態様によれば、本開示は、バルブ金属層の少なくとも一部を、第1の方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数のチャネルを備えるテンプレートに変換する方法に関する。本開示の第1の態様に係る方法は、バルブ金属層の少なくとも一部を厚さ方向に陽極処理し、複数のチャネルを備えるバルブ金属酸化物の多孔質層を形成する第1の陽極処理ステップであって、各チャネルは、第1の方向に沿って長手方向を有して整列してチャネル底部を有するチャネル壁を有し、チャネル底部は、第1の陽極処理ステップの結果として得られる第1の絶縁性金属酸化物バリヤ層によってコーティングされる第1の陽極処理ステップと、チャネル壁及びチャネル底部に疎水面を誘導する保護処置と、保護処置の後の第2の陽極処理ステップであって、チャネル底部から第1の絶縁性金属酸化物バリヤ層を実質的に除去し、複数のチャネルの底部のみにおいて陽極処理を誘導し、チャネル底部において第2の絶縁性金属酸化物バリヤ層を生成する第2の陽極処理ステップと、チャネル底部から第2の絶縁性金属酸化物バリヤ層を除去する酸性エッチング液又はアルカリ性エッチング液におけるエッチングステップとを含む。互いに所定間隔を有する複数のチャネルは、例えば、互いに所定間隔を有する複数のナノチャネルを備えてもよい。
【0019】
本開示のコンテキストでは、バルブ金属は、アルミニウム、タングステン、チタン、タンタル、ハフニウム、ニオブ、バナジウム、及びジルコニウムのグループから選択された金属である。本開示のコンテキストでは、バルブ金属層は、バルブ金属又はバルブ合金を含む層である。バルブ金属層は、単一の層であってもよく、又は、それは、少なくとも2つのバルブ金属層を含む層スタックであってもよい。本開示の第1の態様に係る方法の好ましい実施形態では、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、タンタル、又はタンタル合金の層を含むバルブ金属層が使用されてもよい。
【0020】
第1の態様に係る方法の実施形態では、保護処置を実行することは、300°C及び550°Cの間の範囲の温度においてアニーリングすることを含んでもよい。
【0021】
第1の態様に係る方法の実施形態では、保護処置を実行することは、チャネル壁の上及びチャネル底部の上に保護層を堆積することを含んでもよい。そのような実施形態において、第2の陽極処理ステップはさらに、チャネル底部からのみ保護層を除去する。
【0022】
本開示の第1の態様に係る方法の実施形態の利点は、陽極処理によって形成されたテンプレートのチャネル底部からバリヤ層を除去できるようになることにある。ここで、一方では細孔の拡大は限定的であるが、他方では細孔を狭める作用も限定的であるように、バリヤ層は除去可能である。その結果、それらの全長に沿って、すなわち底部まで実質的に一定の直径を有し、互いに所定間隔を有する複数のチャネルを備えるテンプレートをもたらす。
【0023】
細孔を狭める作用が限定的であることによる利点は、良好な機械的安定性を有して、かつ、基礎をなす基板、例えば導電性の基礎をなす基板からの層間剥離の発生に関する限定的なリスクを有して、かつ、基礎をなす基板との良好な電気的及び機械的な接触を有して、複数のチャネルの内部に複数の構造物を後に形成できるようになることにある。
【0024】
細孔の拡大が限定的であることの利点は、互いに隣接のチャネル間の間隔よりも小さく、例えば実質的に小さい直径を有し(最終的な細孔の直径に対応する)、互いに所定間隔を有する複数のチャネルを備えるテンプレートをもたらしうるということにある。ここで、間隔は、互いに対向するチャネル壁の間の距離として定義される。これは、従来技術のテンプレートと比較して低減した体積を有する、テンプレートの複数のチャネルの内部における複数の構造物を後に形成できるようになるという利点を有する。ここで、細孔の拡大は、典型的にはチャネルの直径よりも小さな間隔を有する複数のチャネルをもたらす。複数の構造物が低減した体積を有することの利点は、増大した体積が、例えば追加の1つ又は複数の層を堆積するために、構造物の間において利用可能なままであるということにある。例えば、複数のチャネルの内部に形成された複数の構造物は、例えば、電気化学的センサ、バッテリー、スーパーキャパシタ、燃料電池、(光)電解槽、又は化学反応器などの電気化学装置における集電体として使用されてもよい。次いで、構造物の間で利用可能である増大した体積は、例えば、活性電極材料又は電解質材料の層のような機能材料の層を提供するために利用されてもよいが、本開示はそれに限定されない。
【0025】
本開示の第1の態様に係る方法の利点は、比較的に簡単であるということにある。それは非常に複雑な機器又は真空機器を必要とせず、従って、それは潜在的に低コストである。それは大規模製造の実施に適している。
【0026】
本開示の第1の態様に係る方法の利点は、テンプレートを形成するために陽極処理に基づく処理を使用することで、陽極処理中に使用される電圧又は電流を制御して、互いに所定間隔を有する複数のチャネルの直径と、互いに隣接するチャネル間の距離とを良好に制御できるようになることにある。本開示の第1の態様に係る方法の利点は、テンプレートを形成するために陽極処理に基づく処理を使用することで、第1の陽極処理ステップの継続時間を制御して、互いに所定間隔を有する複数のチャネルの深さを良好に制御できるようになることにある。
【0027】
保護処置を実行することがチャネル壁及びチャネル底部の上に保護層を堆積することを含む、第1の態様に係る方法の実施形態において、保護層は、例えば、疎水性のシラン、又は、エッチング液に耐性を有するポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリ(メチル2-メチルプロパノアート)、又はポリ(ジメチルシロキサン)を備えてもよい。
【0028】
本開示の第1の態様に係る方法の実施形態では、エッチング液は水溶液であってもよい。このことは、テンプレートが有機溶媒を使用することなく形成可能であり、環境にやさしい方法をもたらすという点で有利である。水性のエッチング液は、例えば、リン酸、硫酸、シュウ酸、クロム酸、又はそれらの組み合わせを含む酸性のエッチング液であってもよい。代替として、エッチング液は、例えば、アンモニア、過酸化水素、水酸化カリウム、又はそれらの組み合わせを含むアルカリ性のエッチング液であってもよい。
【0029】
第1の態様に係る方法の実施形態では、エッチング液は表面張力調整剤をさらに含んでもよい。このことは、表面張力調節剤が、複数のチャネルの内部におけるエッチング液のチャネル底部に向かう浸透を容易にしうるという点で有利である。表面張力調節剤は、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、及びドデシル硫酸ナトリウムから選択されてもよいが、本開示はそれらに限定されない。
【0030】
本開示の第1の態様に係る方法の実施形態は、第2の陽極処理ステップの間に超音波を提供することをさらに含んでもよい。このことは、第2の陽極処理ステップの間に、チャネル底部から、第1の絶縁性金属酸化物バリヤ層を除去し、また、存在すれば、保護層を除去することを容易にしうるという点で有利である。
それはさらに、エッチングステップの間に、チャネル底部から第2の絶縁性金属酸化物バリヤ層を除去することを容易にしうる。
本開示の第1の態様に係る方法の実施形態は、第1の陽極処理ステップの間に超音波を提供することを含んでもよい。
本開示の第1の態様に係る方法の実施形態は、第1の陽極処理ステップ及び第2の陽極処理ステップの両方の間に超音波を提供することを含んでもよい。
【0031】
本開示の第1の態様に係る方法の実施形態では、第1の陽極処理ステップは、厚さ方向においてバルブ金属層の一部のみを陽極処理し、それにより、テンプレートを形成し、テンプレートを支持する基板を定義してもよい。ここで、基板は、バルブ金属層の残りの陽極処理されなかった部分を含む。このことは、自立型の金属箔、例えば自立型のアルミニウム箔のような、自立型の金属層から良好なテンプレートを形成できるようになるという点で有利である。そのような実施形態において、バルブ金属層を支持する別個の基板を提供する必要性が低減されてもよく、これにより低減したコストをもたらしうる。自立型の金属層を用いることの別の利点は、2つの反対側又は反対面において層を陽極処理することを可能にし、従って、バルブ金属酸化物の第1の多孔質層(第1のテンプレート)と、陽極処理されていないバルブ金属層(基板)と、バルブ金属酸化物の第2の多孔質層(第2のテンプレート)とを備えるスタックを形成できるようになることにある。基板の反対側において第1のテンプレート及び第2のテンプレートを備えるそのようなスタックは、例えば、バッテリーセルのスタックを備えるソリッドステートバッテリーの製造処理において互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物を形成するために有利に使用されうる。そのような実施形態において、単一の基板が基板の両方の側においてナノ構造物(例えば、集電体の機能を有するナノ構造物)のサポートを提供し、従って、1つのバッテリーセル当たりの基板材料によって占有される体積を低減させるという利点がある。
【0032】
本開示の第1の態様に係る方法の他の実施形態では、導電性基板の上にバルブ金属層が提供されてもよい。このコンテキストにおいて、「導電性基板」は、その露出した面において導電性層を備える任意の基板も含む。そのような実施形態において、第1の陽極処理ステップは、バルブ金属層を厚さ方向において層の全体にわたって陽極処理し、それにより、複数のチャネルを備えるバルブ金属酸化物の多孔質層を形成してもよく、各チャネルは、第1の方向に沿って長手方向を有して整列したチャネル壁を有し、かつ、チャネル底部を有し、チャネル底部は、バルブ金属層と、基礎をなす導電性層又は基板との間のインターフェースに位置する。そのような実施形態において、エッチングステップは、チャネル底部において導電性層を露出させる。導電性層は、例えば、窒化チタン層、チタン層、ニッケル層、インジウムスズ酸化物層、金層、又はプラチナ層であってもよく、本開示はそれらに限定されない。
【0033】
第2の態様によれば、本開示は、第1の方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数のチャネルを備えるテンプレートに関する。ここで、テンプレートは、本開示の第1の態様の実施形態に係る方法によって入手可能である。
【0034】
概して、本開示の第2の態様の特徴は、本開示の第1の態様に関して上に議論されたものと同様の利点を提供する。
【0035】
本開示の第2の態様に係るテンプレートの実施形態の利点は、互いに所定間隔を有する複数のチャネルがそれらの長さ全体に沿って(すなわち底部まで)実質的に一定の直径を有してもよく、かつ、それらがいかなるバリヤ層も持たない(すなわち、基礎をなす基板を露出する)チャネル底部を有してもよいということにある。このことには、良好な機械的安定性を有して、かつ、基礎をなす基板、例えば導電性の基礎をなす基板からの層間剥離発生に関する限定的なリスクを有して、かつ、基礎をなす基板との良好な電気的及び機械的な接触を有して、複数のチャネルの内部に複数の構造物を後に形成できるようになるという利点がある。
【0036】
本開示の第2の態様に係るテンプレートの実施形態の利点は、互いに所定間隔を有する複数のチャネルが、互いに隣接するチャネル間の間隔より小さい、例えば実質的により小さい直径を有してもよいということにある。ここで、間隔は、互いに対向するチャネル壁の間の距離として定義される。これは、従来技術のテンプレートと比較して低減した体積を有する、テンプレートの複数のチャネルの内部における複数の構造物を後に形成できるようになるという利点を有する。ここで、細孔の拡大は、典型的にはチャネルの直径よりも小さな間隔を有する複数のチャネルをもたらす。複数の構造物が低減した体積を有することの利点は、増大した体積が、例えば追加の1つ又は複数の層を堆積するために、構造物の間において利用可能なままであるということにある。例えば、複数のチャネルの内部に形成された複数の構造物は、例えば、電気化学的センサ、バッテリー、スーパーキャパシタ、燃料電池、(光)電解槽、又は化学反応器などの電気化学装置における集電体として使用されてもよい。次いで、構造物の間で利用可能である増大した体積は、例えば、活性電極材料又は電解質材料の層のような機能材料の層を提供するために利用されてもよいが、本開示はそれに限定されない。
【0037】
本開示の第2の態様に係るテンプレートの実施形態では、第1の方向は、テンプレートが形成されるバルブ金属層の面に関して、60°及び90°の範囲における角度、例えば80°及び90°の範囲における角度であってもよい。例えば、第1の方向は、バルブ金属層の面に実質的に直交してもよい。
【0038】
本開示の第2の態様に係るテンプレートの実施形態では、テンプレートは、第1の方向とは異なる第2の方向に向けられた相互接続する複数のチャネルをさらに備えてもよい、ここで、相互接続するチャネルは、第1の方向に向けられた、互いに所定間隔を有して隣接する複数のチャネル間の接続を形成する。第2の方向は、例えば、第1の方向に実質的に直交してもよい。このような相互接続するチャネルを備えるテンプレートの利点は、テンプレートの複数のチャネルの内部において相互接続された複数の構造物を後に形成できるようになることにある。そのように相互接続された複数の構造物は、例えば、メッシュ形状を有する構造物を形成してもよい。
【0039】
第3の態様によれば、本開示は、互いに所定間隔を有する複数の構造物を基板の上に形成する方法に関する。本開示の第3の態様に係る方法は、本開示の第1の態様の実施形態に従って、バルブ金属層の少なくとも一部を、第1の方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数のチャネルを備えるテンプレートに変換することと、それにより、テンプレートを形成して基板を定義することと、テンプレートのチャネルの内部に固体機能材料を堆積し、それにより、互いに所定間隔を有する複数のチャネルの内部において互いに所定間隔を有する複数の構造物を形成することとを含む。これにより、第1の方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数の構造物をもたらす。本方法は、エッチングによってテンプレートを除去することをさらに含んでもよい。本開示の第3の態様に係る方法を用いて形成されうる互いに所定間隔を有する導電性構造物の例は、ピラー(柱)、ナノピラー、ワイヤ、ナノワイヤ、チューブ(又は「中空」のワイヤ)、ナノチューブ、メッシュ、及びナノメッシュである。
【0040】
本開示の第3の態様のコンテキストでは、機能材料又は機能材料層は、一体化される装置のために調整された、定義された機能を満足もしくは提供する、及び/又は、定義された特性を有する材料又は材料層である。
【0041】
本開示の第3の態様に係る方法の実施形態では、テンプレートのチャネルの内部に固体機能材料を堆積することは、導電性材料、半導体材料、電気絶縁性材料、又はそれらの組み合わせを堆積することを含んでもよい。
【0042】
実施形態では、テンプレートのチャネルの内部に固体機能材料を堆積することは、固体機能材料でチャネルを充填すること、例えば、第1の方向に直交する横方向において完全にチャネルを充填することを含んでもよい。実施形態では、チャネルの内部に固体機能材料を堆積することは、チャネル壁の上に固体機能材料の層を堆積し、それにより、チャネルをその横方向において部分的にのみ固体機能材料で充填し、内部に隙間を残すことを含んでもよい。
【0043】
本開示の第3の態様に係る方法の実施形態では、テンプレートのチャネルの内部に固体機能材料を堆積することは、定電流(galvanostatic)又は定電位(potentiostatic)の電着又はめっきによって導電性材料を堆積し、それによって、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物を形成することを含んでもよい。そのような実施形態において、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物と、基礎をなす導電性基板との間に、良好な低抵抗の電気的接触が確立されてもよい。電気的接触は、例えば、1Ω cm2より低い接触抵抗を有してもよい。
【0044】
概して、本開示の第3の態様の特徴は、本開示の前述の態様に関して上に議論されたものと同様の利点を提供する。
【0045】
本開示の第3の態様に係る方法の利点は、良好な機械的安定性を有して、かつ、基礎をなす基板からの層間剥離発生に関する限定的なリスクを有して、かつ、基礎をなす基板との良好な機械的接触を有して、互いに所定間隔を有する複数の構造物を基板の上に形成できるようになることにある。本開示の第3の態様に係る方法の利点は、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物を、基礎をなす導電性基板に、良好な電気的接触を有して、例えば1Ω cm2未満の接触抵抗を有して形成できるようになることにある。本開示の第3の態様に係る方法の利点は、比較的に限られた体積を有して、互いに所定間隔を有する複数の構造物、例えば導電性構造物を形成できるようになり、これにより、互いに所定間隔を有する複数の構造物の間において、例えば、追加の層、例えば、活性電極材料の層のような追加の機能材料の層を堆積するために利用可能である、増大した体積を残しうるということにある。
【0046】
本開示の第3の態様に係る方法の利点は、比較的に簡単になりうるということにある。それは非常に複雑な機器又は真空機器を必要とせず、従って、潜在的に低コストである。それは大規模製造の実施に適している。
【0047】
本開示の第3の態様に係る方法の利点は、互いに所定間隔を有する複数の構造物、例えば導電性構造物の直径及び長さ(高さ)と、互いに隣接する構造物の間の距離とを良好に制御できるようになることにある。これにより、例えば、そのような互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物を備える集電体を有するバッテリーセルのエネルギー密度及び電力密度の良好な制御をさらに可能にするという利点がある。
【0048】
本開示の第3の態様に係る方法の実施形態では、テンプレートのチャネルの内部に堆積されてそれによって互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物を形成する導電性材料は、低減したコストをもたらしうるという点で有利である遷移金属であってもよい。これにより、そのような互いに所定間隔を有する複数の導電性遷移金属構造物を備える集電体を有するバッテリーセルのコストをさらに削減できるようになるという利点がある。本開示の第3の態様の実施形態では、遷移金属は、例えば、ニッケル、銅、及びクロムから選択されてもよい。
【0049】
第4の態様によれば、本開示は、互いに所定間隔を有する複数の構造物であって、第1の方向に沿って長手方向を有して整列し、本開示の第3の態様の実施形態に係る方法によって入手可能である複数の構造物を上に有する基板を備えたエンティティに関する。
【0050】
概して、本開示の第4の態様の特徴は、本開示の前述の態様に関して上に議論されたものと同様の利点を提供する。
【0051】
本開示の第4の態様に係るエンティティの実施形態では、第1の方向は、基板の面に関して、60及び90の範囲における角度、例えば80及び90の範囲における角度であってもよい。例えば、第1の方向は、基板の面に実質的に直交してもよい。
【0052】
本開示の第4の態様に係るエンティティの実施形態では、エンティティは、第1の方向とは異なる第2の方向に向けられた相互接続する複数の構造物をさらに備えてもよい、ここで、相互接続する構造物は、第1の方向に向けられた、互いに所定間隔を有して隣接する複数の構造物の間の接続を形成し、それにより、例えばメッシュ形状を有する構造物を形成する。第2の方向は、例えば、第1の方向に実質的に直交してもよいが、本開示はそれに限定されない。
【0053】
本開示の第4の態様の実施形態では、互いに所定間隔を有する複数の構造物と、もし存在すれば相互接続する複数の構造物とは、導電性材料、半導体材料、電気絶縁性材料、又はそれらの組み合わせを備えてもよい。
【0054】
第5の態様によれば、本開示は、本開示の第4の態様によるエンティティを備えた装置に関する。本開示の第5の態様の実施形態では、本装置は、例えば、電気化学的センサ、バッテリー、スーパーキャパシタ、燃料電池、電解槽、光電解槽、又は化学反応器のような、電気化学装置であってもよいが、本開示はそれらに限定されない。
【0055】
概して、本開示の第5の態様の特徴は、本開示の前述の態様に関して上に議論されたものと同様の利点を提供する。
【0056】
第6の態様によれば、本開示は、例えば遷移金属基板のような導電性基板の上に機能材料の層を形成する方法に関する。本開示の第6の態様に係る方法は、基板の上に中間層を堆積することを含み、中間層は、遷移金属酸化物、貴金属、又は貴金属酸化物を含み、中間層は、0.5nm及び30nmの範囲における厚さ、例えば0.5nm及び10nmの範囲における厚さを有し、また、本方法は、中間層の上に機能材料前駆体層を堆積することと、アニーリングによって機能材料前駆体層を活性化し、それによって機能材料の層を形成することとを含む。
【0057】
本開示の第6の態様に係る方法の実施形態では、機能材料の層は、例えば、活性電極材料の層であってもよい。そのような実施形態では、機能材料前駆体層を堆積することは、電極材料前駆体層を堆積することを含む。電極材料前駆体層を活性化するアニーリングステップは、例えば、リチウムを含む前駆体、ナトリウムを含む前駆体、又はマグネシウムを含む前駆体のような、イオンを含む前駆体の存在下で行われてもよいが、本開示はそれに限定されない。本開示の第6の態様の実施形態では、電極材料は、陰極材料又は陽極材料であってもよい。機能材料前駆体層は、例えば、酸化マンガン、二酸化マンガン、酸化コバルト、マンガンニッケル酸化物、リン酸鉄を含む陰極前駆体材料の層であってもよく、又は、それは陽極前駆体材料の層であってもよい。
【0058】
概して、本開示の第6の態様の特徴は、本開示の前述の態様に関して上に議論されたものと同様の利点を提供する。
【0059】
本開示の第6の態様に係る方法に従って中間層を提供することの利点は、基礎をなす導電性基板材料の劣化のリスクを低減すること、例えば、導電性基板材料の酸化の低減されたリスクをもたらすということにある。導電性基板は、例えば、バッテリーセルの集電体として使用されてもよい。本開示の第6の態様に係る方法に従って中間層を提供することの利点は、例えば、アニーリングにより電極前駆体材料の層を活性化するステップの影響下で、集電体材料の劣化(例えば酸化)のリスクを低減するということにある。
【0060】
本開示の第6の態様に係る方法に従って中間層を提供することの別の利点は、例えば機能材料前駆体層の堆積のために使用されうる電気化学堆積処理の影響下で、基礎をなす導電性基板材料、例えば集電体材料の劣化のリスクを低減しうるということにある。そのような電気化学の堆積処理は、例えば電極前駆体材料の層(電極材料前駆体層)の堆積のために、例えば、酸浴槽における堆積を含んでもよいが、本開示はそれに限定されない。
【0061】
本開示の第6の態様の実施形態では、機能材料前駆体層、例えば電極前駆体材料の層を堆積することは、酸性溶液又はアルカリ性溶液から陽極を電着することを含んでもよい。このことは、陽極の電着が大規模製造に適した低コストの処理であるという点で有利である。いくつかの実施形態では、酸性溶液を使用することは、電着浴槽の良好な安定性を提供するという利点をもたらしうる。
【0062】
本開示の第6の態様に係る方法の利点は、例えば比較的に安価な遷移金属を含む広範囲の金属の上に、活性電極材料の層のような機能材料層を形成できるようになることにある。このことはさらに、例えば、そのような互いに所定間隔を有する複数導電性遷移金属構造物を備える集電体構造物を有するバッテリーセルのコストを低減できるようにする。
【0063】
本開示の第6の態様に係る方法の利点は、遷移金属基板を含む非常に多様な金属基板の上に、例えば、3次元的遷移金属基板の上に、機能材料の層をコンフォーマルに形成できるようになることにある。より具体的には、本開示の第6の態様に係る方法の利点は、遷移金属基板を含む非常に多様な金属基板の上に、例えば、3次元的遷移金属基板の上に、活性陰極材料の層をコンフォーマルに形成できるようになることにある。このことは、3次元的基板の上に活性陽極材料が形成される製造方法と比較して、向上したエネルギー密度及び電力密度を有するソリッドステートバッテリーセルを製造できるようになるという点で有利である。このことは、陽極材料と比較して、陰極材料の概してより小さな容積に関連する。従って、陰極層ではなく陽極層のみが3次元的に構造化されるアプローチと比較して、陰極層を3次元的に構成することは、バッテリーセルの容積、エネルギー密度、及び電力密度に関して、より有利な効果がある。
【0064】
本開示の第6の態様の実施形態では、導電性基板は、第1の方向に沿って実質的に整列した互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物を備える3次元的基板であってもよい。このことは、平坦な基板と比較して実質的に増大した電極表面積をもたらすという点で有利であり、このことはさらに、そのような3次元的電極構造物を備えるソリッドステートバッテリーセルの実質的により高い充電レートをもたらしうる。本開示の第6の態様の実施形態では、導電性基板は、例えば第1の方向に実質的に直交するような、第1の方向とは異なる第2の方向に向けられた、相互接続する複数の導電性構造物をさらに備えてもよい。ここで、相互接続する導電性構造物は、第1の方向に向けられた、互いに隣接する導電性構造物間の接続を形成する。
【0065】
互いに所定間隔を有する導電性構造物の例は、ピラー、ナノピラー、ワイヤ、ナノワイヤ、チューブ(又は「中空」のワイヤ)、ナノチューブ、メッシュ、及びナノメッシュである。曲げに対する低減された機械的な応力に起因して、そのような構造物が可撓性のバッテリーセルの形成を可能にすることは有利である。
【0066】
中間層が遷移金属酸化物を備える本開示の第6の態様の実施形態において、中間層を堆積することは、例えば、7~12の範囲におけるpHを有する溶液における電着を含んでもよい。基板、例えば遷移金属基板の上に中間層を堆積するために中性又はアルカリ性の溶液を使用することは、中間層堆積処理の影響下で、基板、例えば遷移金属基板の劣化のリスクを低減して中間層を形成できるようなるという点で有利である。中間層を堆積するために電着処理を用いることの利点は、低コストの大規模製造に適していることにある。遷移金属酸化物は、例えば、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化チタン、又は酸化マンガンを含んでもよい。
【0067】
第7の態様によれば、本開示は、ソリッドステートバッテリーセルを製造する方法に関する。本開示の第7の態様に係る方法は、本開示の第3の態様に係る方法に従って、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物を基板の上に形成することと、複数の導電性構造物の面をコンフォーマルにコーティングする活性電極材料の第1の層を、複数の導電性構造物の上に形成することと、活性電極材料の第1の層の上に電解質層を堆積することと、電解質層の上に活性電極材料の第2の層を形成することとを含み、活性電極材料の第1の層及び活性電極材料の第2の層のうちの一方は、ソリッドステートバッテリーセルの陰極層を形成し、他方は陽極層を形成する。互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物は、ソリッドステートバッテリーセルの第1の集電体を形成してもよい。本方法は、活性電極材料の第2の層の上に第2の集電体又は集電体層を堆積することをさらに含んでもよい。
【0068】
本開示の第7の態様に係る方法の実施形態では、複数の導電性構造物の上に活性電極材料の第1の層を形成することは、本開示の第6の態様の実施形態に従って行われてもよい。
【0069】
概して、本開示の第7の態様の特徴は、本開示の前述の態様に関して上に議論されたものと同様の利点を提供する。
【0070】
本開示の第7の態様に係る方法の利点は、簡単かつ低コストの電気化学堆積処理によって製造ステップの実質的部分が行われてもよいということにある。より具体的には、テンプレートを形成する方法における陽極処理ステップ、テンプレートの内部に導電性材料を堆積するステップ、及び電極材料前駆体層を堆積するステップは、電気化学堆積処理によって行われてもよい。これらのステップが同じ機器で行われてもよいという利点がある。本開示の第7の態様に係る方法の利点は、電気化学堆積処理が有機溶媒なしに水溶液中において行われてもよく、環境にやさしい製造方法をもたらしうるということにある。
【0071】
第8の態様によれば、本開示は、ソリッドステートバッテリーセルを製造する方法に関する。本開示の第8の態様に係る方法は、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物を基板の上に形成することと、本開示の第6の態様の実施形態に従って、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物の面をコンフォーマルにコーティングする活性電極材料の第1の層を、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物の上に形成することと、活性電極材料の第1の層の上に固体電解質層を堆積することと、固体電解質層の上に活性電極材料の第2の層を形成することとを含み、活性電極材料の第1の層及び活性電極材料の第2の層のうちの一方は、ソリッドステートバッテリーセルの陰極層を形成し、他方は陽極層を形成する。互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物は、ソリッドステートバッテリーセルの第1の集電体層を形成してもよい。本方法は、活性電極材料の第2の層の上に第2の集電体層を堆積することをさらに含んでもよい。
【0072】
概して、本開示の第8の態様の特徴は、本開示の前述の態様に関して上に議論されたものと同様の利点を提供する。
【0073】
第9の態様によれば、本開示は、ソリッドステートバッテリーを製造する方法に関する。本開示の第9の態様に係る方法は、本開示の第7又は第8の態様の実施形態に従って、複数のソリッドステートバッテリーセルを製造することと、互いに隣接するソリッドステートバッテリーセルの間に固体電解質を提供して、複数のソリッドステートバッテリーセルのスタックを形成することとを含む。
【0074】
概して、本開示の第9の態様の特徴は、本開示の前述の態様に関して上に議論されたものと同様の利点を提供する。
【0075】
第10の態様によれば、本開示は、ソリッドステートバッテリーセルに関する。本開示の第10の態様に係るソリッドステートバッテリーセルは、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物と、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物の面をコンフォーマルにコーティングする活性電極材料の第1の層と、活性電極材料の第1の層の上における固体電解質層と、固体電解質層の上における活性電極材料の第2の層とを備え、活性電極材料の第1の層及び活性電極材料の第2の層のうちの一方は、ソリッドステートバッテリーセルの陰極層を形成し、他方は陽極層を形成し、ソリッドステートバッテリーセルはさらに、複数の導電性構造物及び活性電極材料の第1の層の間における0.5nmから10nmの厚さを有する中間層を備え、中間層は、遷移金属酸化物、貴金属、又は貴金属酸化物を含む。本開示の第10の態様の実施形態では、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物は、ソリッドステートバッテリーセルの第1の集電体層を形成してもよい。ソリッドステートバッテリーセルは、活性電極材料の第2の層の上における第2の集電体層をさらに備えてもよい。
【0076】
概して、本開示の第10の態様の特徴は、本開示の前述の態様に関して上に議論されたものと同様の利点を提供する。
【0077】
第11の態様によれば、本開示は、本開示の第10の態様に係る少なくとも1つの、例えば複数のソリッドステートバッテリーセル、例えばソリッドステートバッテリーセルのスタックを備えるソリッドステートバッテリーに関する。
【0078】
概して、本開示の第11の態様の特徴は、本開示の前述の態様に関して上に議論されたものと同様の利点を提供する。
【0079】
本開示の特定の態様及び好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載される。従属請求項の特徴は、独立請求項の特徴及び適切であれば他の従属請求項の特徴と組み合わされてもよく、請求項において明示的に記載されたものだけではない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】本開示の第1の態様の実施形態に従って、バルブ金属層の少なくとも一部を、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネルを備えるテンプレートに変換する方法の例示的な処理シーケンスを示す。
【
図2】
図1の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す。
【
図3】
図1の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す。
【
図4】
図1の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す。
【
図5】
図1の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す。
【
図6】
図1の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す。
【
図7】
図1の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す。本開示の第2の態様の実施形態に係る例示的なテンプレートの断面図を概略的に示す。
【
図8】
図1の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す。本開示の第2の態様の実施形態に係る例示的なテンプレートの断面図を概略的に示す。
【
図9】本開示の第3の態様の実施形態に従って、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物を基板の上に形成する方法の例示的な処理シーケンスを示す。
【
図10】
図9の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す。
【
図11】
図9の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す。本開示の第4の態様の実施形態に係る例示的なエンティティの断面図を概略的に示す。
【
図12(a)】本開示の第4の態様の実施形態に係る例示的なエンティティの断面図を概略的に示す。
【
図12(b)】本開示の第4の態様の実施形態に係る例示的なエンティティの断面図を概略的に示す。
【
図13】本開示の第6の態様の実施形態に従って、導電性基板の上に機能材料の層を形成する方法の例示的な処理シーケンスを示す。
【
図14】
図13の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す。
【
図15】
図13の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す。
【
図16】
図13の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す。
【
図17】Niナノメッシュサンプルの上にMnO
x陰極前駆体層の定電流的堆積を行う間に測定される電位の過渡状態を示す。ラベル(a)を有する曲線は、中間層なしのサンプルに対応し、ラベル(b)を有する曲線は、本開示の第3の態様の実施形態に係る中間層によって覆われたサンプルに対応する。
【
図18】ニッケル基板とその上に堆積されたMnO
x層とを備える構造物に関するサイクリックボルタンメトリ実験の結果を示す。ラベル(a)を有する曲線は、中間層なしの構造物に対応し、ラベル(b)を有する曲線は、本開示の第3の態様の実施形態に係る、MnO
x層を堆積する前にその上に提供された中間層を有する構造物に対応する。
【
図19】本開示の第10の態様の実施形態に係る例示的なソリッドステートバッテリーセルの断面図を概略的に示す。
【
図20】本開示の第11の態様の実施形態に係る例示的なソリッドステートバッテリーの断面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本開示の上述及び他の特性、特徴、及び利点は、本開示の原理を例示として示す添付の図面に関連して参照される、以下の詳細な説明から明らかになる。この説明は、本開示の範囲を制限することなく、例示としてのみ与えられる。以下で引用される図面は添付の図面を参照する。
【0082】
異なる図面において、同じ符号は同じ又は同様の構成要素を参照する。
【0083】
本開示は、特定の実施形態に関して、ある図面を参照して説明されるだろう。しかし、本開示は、それのみに限定されず、請求項によってのみ限定される。説明された図面は単に概要であり、限定するものではない。図面では、一部の構成要素のサイズは、説明の目的のための縮尺で誇張されることがあり、また、図示されないことがある。寸法及び相対寸法は、本開示の実際の具体化に対応しない。
【0084】
本明細書及び請求項の用語「第1」、「第2」、「第3」などは、同様の構成要素を識別するために使用され、必ずしも、時間的、空間的、序列、又は他の任意の方法で、順序を記述するために使用されるのではない。このように使用された用語は適切な状況下で交換可能であること、及び、ここに説明された本開示の実施形態は、ここに説明又は図示されたものとは異なる順序の動作が可能であることは、理解されるべきである。
【0085】
請求項で使用した用語「備える」又は「含む」は、その後に列挙した手段に限定するように解釈されるべきでないことに注意すべきであり、それは他の構成要素あるいはステップを除外しない。従って、それは、言及したように記載した特徴、整数、ステップ、あるいは構成要素の存在を特定すると解釈されるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、あるいは構成要素、あるいはそれらのグループの存在もしくは追加を除外することを妨げない。従って、「手段A及びBを備える装置」という表現の範囲は、構成要素A及びBからのみ構成される装置に限定されるべきではでない。それは、本開示に関して、装置の関連する構成要素がA及びBのみであることを意味する。
【0086】
この明細書の全体にわたって「1つの実施形態」あるいは「ある実施形態」と言及するとき、実施形態に関して説明された特定の特徴、構造、あるいは特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、この明細書の全体にわたる様々な場所において「1つの実施形態において」又は「ある実施形態において」という言い回しが現れることは、必ずしもすべて同じ実施形態に言及しているのではないが、そうである可能性もある。更に、特定の特徴、構造、あるいは特性は、本開示の1つ以上の実施形態から当業者には明らかになるように、任意の適切な方法において組み合わされてもよい。
【0087】
同様に、本開示の例示の実施形態の詳細な説明において、開示を合理化し、本発明の様々な態様の1つ以上についての理解を援助する目的で、本開示の様々な特徴が、単一の実施形態、図あるいはその説明にまとめられているということは認識されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、請求項に記載された開示が各請求項において明示的に記載したものより多くの特徴を必要とする意図を反映しているとは解釈されるべきではない。むしろ、添付の請求項が反映するように、本発明の態様は、前に開示した単一の実施形態のすべての特徴未満のものにある。従って、詳細な説明に続く請求項は、これによって、各請求項が本開示の個別の実施形態として独自に成立するように、この詳細な説明に明示的に組み込まれる。
【0088】
更に、ここに説明されたいくつかの実施形態が他の実施形態に含まれた一部の特徴を含み、他の特徴を含んでいないが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者によって理解されるように、本開示の範囲内にあり、かつ異なる実施形態を形成することを意図している。例えば、添付の請求項において、請求項に記載された実施形態のうちのどれも任意の組み合わせとして使用することができる。
【0089】
ここに提供される説明では、多数の特定の詳細事項が述べられる。しかしながら、本開示の実施形態はこれらの特定の詳細事項なしで実施されてもよいことが理解される。他の例において、この説明についての理解を不明瞭にしないようするために、公知の方法、構造、及び技術は詳細には示していない。
【0090】
以下の用語は、本開示についての理解を支援するためにのみ提供される。
【0091】
本開示のコンテキストでは、バッテリーセルは、電解質層を間に挟む2つの電極層を備える構造物、すなわち、第1の電極層(活性電極材料の第1の層)/電解質層/第2の電極層(活性電極材料の第2の層)のスタックを備える構造物である。第1の電極層及び第2の電極層は逆極性を有する。バッテリーは単一のバッテリーセルを備えてもよく、又は、それは複数の、例えば少なくとも2つのバッテリーセルを備えてもよい。バッテリーは、直列又は並列に接続された2つ以上のバッテリーセルを備えてもよく、又は、直列及び並列に接続されたバッテリーセルの組み合わせを備えてもよい。バッテリーは、逆極性を有する第1の集電体層及び第2の集電体層をさらに備える。
【0092】
本開示のコンテキストでは、イオン挿入バッテリーセルは、バッテリーセルの動作中にカチオン又はアニオンを受容又は解放することができる電極を備えるバッテリーセルである。イオン挿入バッテリーセルは、1つのみのカチオン要素、複数のカチオン要素、アニオンのみ、又はアニオン及びカチオン要素の混合物の挿入/脱離に依存することができる。イオン挿入バッテリーセルは、使用された電極材料に関して(電気)化学的に安定でありながら、使用される各イオンのイオン伝導を可能にする電解質をさらに備える。
【0093】
再充電可能なバッテリーセルにおいて、電極の各々は、放電中(すなわちバッテリー動作中)における第1の極性を有し、また、充電中における第2の逆の極性を有する。しかしながら、技術的な点では、負電極は、放電中の陽極かつ充電中の陰極である。逆に、正電極は、放電中の陰極かつバッテリーの充電中の陽極である。本開示のコンテキストでは、用語として、放電(すなわちバッテリー動作)が使用される。ここではさらに、陽極により負電極を意味し、陰極により正電極を意味する。本開示の全体にわたって、「陽極材料」に言及したとき、負電極材料を意味し、また、「陰極材料」に言及したとき正電極材料を意味する。
【0094】
本開示のコンテキストでは、活性電極材料は、バッテリー電極層の構成要素である材料である。活性電極材料では、実際の電気化学的変換(原子の原子価又は酸化状態の変化)が生じ、これにより、電極において化学エネルギーを蓄えさせる。電極層は、典型的には、活性電極材料及び支持材料からなる。
【0095】
本開示のコンテキストでは、用語「陽極処理」は、(例えばアルミニウムのような)バルブ金属又はバルブ金属層に適用されるとき、酸性の電解質の存在下で、一方の作用電極として機能するバルブ金属層(陽極処理される材料)と、他方の対電極との間に電位又は電流を印加することを含む電気化学処理を示す。この方法は、バルブ金属酸化物の多孔質層の形成をもたらし、この多孔質層は、層の面に対して垂直に、かつ、規則的(例えば六角形)に配置された複数の細孔又はチャネル、例えば、チャネルのクラスタを備える。このクラスタは、配置の規則的な性質により、アレイと呼ばれてもよい。
【0096】
本開示のコンテキストでは、バルブ金属は、陽極処理(陽極酸化処理)によって酸化され、それにより、安定したバルブ金属酸化物を形成することができる金属である。より具体的には、本開示のコンテキストでは、バルブ金属は、アルミニウム、タングステン、チタン、タンタル、ハフニウム、ニオブ、バナジウム、及びジルコニウムのグループから選択された金属である。本開示のコンテキストでは、バルブ金属層は、バルブ金属又はバルブ合金(又は「ドープした」バルブ金属)を含む層である。例えば本開示のコンテキストにおいて使用されうるアルミニウム合金の一例は、例えば1%及び10%の間の範囲におけるドーピング濃度で、銅をドープしたアルミニウム層であるが、本開示はそれに限定されない。
【0097】
本開示のコンテキストでは、基板に言及するとき、基板は、平坦な基板であってもよく、又は、非平面の、例えば3次元的(3D)な基板であってもよい。本開示のコンテキストでは、3D基板は、複数の3D特徴、3D構造物、例えば、3Dマイクロ構造物又はナノ構造物、例えば、複数のマイクロピラー又はナノピラー、複数のマイクロワイヤ又はナノワイヤ、又は3D(ナノ)メッシュ、(ナノ)チューブ、及び/又は他の多孔性構造物、例えば、多孔性の陽極処理されたアルミナを備えてもよい。3D特徴は、例えば規則的なアレイパターンのような規則的なパターンとして存在してもよく、又は、基板上にランダムに分配されてもよい。
【0098】
本開示のコンテキストでは、互いに所定間隔を有する複数のチャネルは、空間的に互いに分離された、すなわち互いに所定距離を有して配置された複数のチャネルを示す。互いに所定間隔を有する複数のチャネルは、例えば周囲の媒体によって、互いに完全に分離されてもよく、又は、例えば周囲の媒体を介して相互接続する複数のチャネルによって、相互接続される、例えば部分的に相互接続されてもよい。相互接続する複数のチャネルは、例えば、互いに所定間隔を有する複数のチャネルの長手方向の向きに実質的に直交する長手方向の向きを有してもよい。
【0099】
本開示のコンテキストでは、所定方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数のチャネルを備えるテンプレートは、互いに完全に分離された複数のチャネルを備えるテンプレートを示してもよく、又は、相互接続された、例えば相互接続する複数のチャネルによって部分的に相互接続された複数のチャネルを備えるテンプレートを示してもよい。相互接続するチャネルは、互いに所定間隔を有する複数のチャネルの長手方向に実質的に直交する方向に向けられてもよい。本開示のコンテキストでは、所定方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数のチャネルを備えるテンプレートは、長手方向に沿って連続して配置された2つ以上の領域を備えるテンプレートを示してもよく、少なくとも第1の領域は、完全に分離された(相互接続されていない)、互いに所定間隔を有する複数のチャネルを備え、少なくとも第2の領域は、相互接続された、互いに所定間隔を有する複数のチャネル(相互接続するチャネルによって相互接続されている)を備える。
【0100】
本開示のコンテキストでは、所定方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数の構造物、例えばナノ構造物は、互いに所定距離を有して配置された複数の構造物、例えばナノ構造物を示す。複数の(ナノ)構造物は、例えば、(ナノ)ピラー、(ナノ)ワイヤ、(ナノ)メッシュ、又は(ナノ)チューブを備えてもよい。複数の構造物、例えばナノ構造物は、例えば、空気のような、又は、(ナノ)構造物材料とは異なる固体材料のような周囲の媒体)によって、互いに完全に分離されてもよく、又は、それらは、例えば、複数の相互接続する構造物、例えば相互接続するナノ構造物によって、相互接続される、例えば部分的に相互接続されてもよい。相互接続する複数の(ナノ)構造物は、例えば、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物の長手方向の向きに実質的に直交する長手方向の向きを有してもよい。相互接続する(ナノ)構造物は、典型的には、互いに所定間隔を有する(ナノ)構造化自体と同じ材料からなる。本開示のコンテキストでは、所定方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物は、長手方向に沿って連続して配置された2つ以上の領域を備える構造物を示してもよく、少なくとも第1の領域は、完全に分離された(相互接続されていない)、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物を備え、少なくとも第2の領域は、相互接続された、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物(例えば、相互接続する(ナノ)構造物によって相互接続されている)を備える。
【0101】
本開示のコンテキストでは、機能材料又は機能材料層は、一体化される装置のために調整された、定義された機能を満足もしくは提供する、及び/又は、定義された特性を有する材料又は材料層である。機能材料は、例えば、金属、合金、半導体、酸化物、金属水素化物、セラミック材料、有機金属結晶、ポリマー、又は有機超分子固体を含んでもよいが、本開示はそれらに限定されない。それは、例えば、高い電気伝導度、化学反応に向かう触媒活性、イオン挿入に向かう電気化学活性、高い光吸収度、虹色変色現象(iridescence)、フォトルミネセンス、高い磁気異方性、又は圧電気のような、定義された機能又は特性を提供するが、本開示はそれらに限定されない。これは、使用されるアプリケーションの最終的な装置又は意図される分野のために調整される。機能材料又は機能材料層は、例えば、電極、集電体、触媒、エネルギー貯蔵材料、光吸収器、フォトニック結晶、発光体、情報記憶媒体、イオントラップ、又はガス吸収装置の機能を有してもよいが、本開示はそれらに限定されない。
【0102】
本開示は、ここで、本開示の複数の実施形態の詳細な説明によって説明される。本開示の技術的な教示内容から外れることなく当業者の知識によって本開示の他の実施形態を構成できることは明らかであり、本開示は、添付された請求項の用語によってのみ限定される。
【0103】
第1の態様によれば、本開示は、バルブ金属層の少なくとも一部を、第1の方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネルを備えるテンプレートに変換する方法に関する。本開示の第1の態様の実施形態に係る方法の一例は、例示的な処理シーケンスを含むフローチャートを示す
図1において概略的に示され、また、
図1の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す
図2~
図8において概略的に図示される。
【0104】
図1に示す実施例に図示したように、本開示の第1の態様の実施形態に係る方法100は、バルブ金属層の少なくとも一部に対する第1の陽極処理ステップ101を含み、第1の陽極処理ステップ101は、第1の絶縁性金属酸化物バリヤによってコーティングされた底面を有し、互いに所定間隔を有して整列した複数の(ナノ)チャネルを備えるバルブ金属酸化物の多孔質層の形成をもたらす。第1の陽極処理ステップの結果として形成された複数の(ナノ)チャネルは、第1の方向に沿って長手方向を有して実質的に整列する。複数の(ナノ)チャネルは各々、第1の方向に沿って長手方向を有して実質的に整列した(ナノ)チャネル壁と、バルブ金属層の面に対して実質的に平行な(ナノ)チャネル底部とを有する。第1の陽極処理ステップの結果、(ナノ)チャネル底部の面は、第1の絶縁性金属酸化物バリヤ層によって、例えば第1のバルブ金属酸化物バリヤ層によって覆われる。
【0105】
本開示の第1の態様の実施形態では、バルブ金属層は、自立型の層、例えば金属箔のような可撓性の自立型の層であってもよく、又は、バルブ金属層は、基板、例えばリジッド基板又はフレキシブル基板において提供されてもよい。
図2は、バルブ金属層11が自立型の層である実施形態の例を示すが、本開示はそれに限定されない。第1の陽極処理ステップ101は、
図3に概略的に示すような構造物をもたらしうる。それは、第1の方向に沿って長手方向を有して実質的に整列した互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネル13を備える、陽極処理された金属の多孔質層12の形成を示す。本開示の実施形態では、第1の方向は、
図3に示す実施例において概略的に図示するように、バルブ金属層の厚さ方向に対応する、すなわち、バルブ金属層の面に対して実質的に直交してもよい。しかしながら、本開示はそれに限定されず、第1の方向は、バルブ金属層の面に関して所定角度を有する、例えば、60°及び90°の範囲における所定角度を有してもよい。
図3は、第1の方向がバルブ金属層11の面に直交する例を示す。言いかえれば、第1の方向は、バルブ金属層11の厚さ方向Yに対応する。複数の(ナノ)チャネル13は各々、厚さ方向Yに沿って長手方向を有して実質的に整列した(ナノ)チャネル壁14と、(ナノ)チャネル底部15とを有する。第1の陽極処理ステップ101の結果、
図3の挿入図により詳しくは示すように、(ナノ)チャネル底部15の面は第1の絶縁性金属酸化物バリヤ層21によって覆われる。
【0106】
図3に示す例では、複数のチャネル13を備える多孔質層12は、バルブ金属層の一部のみにおいて形成される。しかしながら、本開示はそれに限定されない。例えば、基板(図示せず)の上にバルブ金属層11が提供される第1の態様に係る実施形態では、複数の(ナノ)チャネル13を備える多孔質層12は、バルブ金属層11の全体にわたって形成され、それによって、基礎をなす基板をチャネル底部において露出する。
【0107】
本開示の実施形態(図示せず)では、第1の陽極処理ステップは、自立型のバルブ金属層11を陽極処理液における完全に浸漬することを含んでもよい。そのような実施形態において、第1の陽極処理ステップは、バルブ金属層の第1の側において、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネルを備えるバルブ金属酸化物の第1の多孔質層の形成をもたらし、それと同時に、バルブ金属層の逆側の第2の側において、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネルを備えるバルブ金属酸化物の第2の多孔質層の形成をもたらしてもよい。第1の多孔質層及び第2の多孔質層の間において、陽極処理されていないバルブ金属層が残る。
【0108】
本開示の第1の態様の実施形態に係る方法100は、第1の陽極処理ステップ101の後に、保護処置102(
図1)を実行することを含む。保護処置は、(ナノ)チャネル壁14及び(ナノ)チャネル底部15に疎水性の面を誘導する、すなわち、疎水性の(ナノ)チャネル壁の面と、疎水性の(ナノ)チャネル底部の面とを有する(ナノ)チャネル13をもたらす。
【0109】
本開示の第1の態様の実施形態では、保護処置を実行することは、アニーリングすること102,1021(
図1)、例えば、300°C及び550°Cの間の範囲の温度においてアニーリングすることを含んでもよい。アニーリングは、例えば窒素又はアルゴンのような不活性雰囲気中において、又は、空気中において行われてもよい。アニーリングは、雰囲気圧力下で、又は、真空のような減圧下において行われてもよい。
【0110】
本開示の第1の態様の実施形態では、保護処置を行うことは、(ナノ)チャネル壁及び(ナノ)チャネル底部の上に保護層を堆積すること102,1022(
図1)を含んでもよい。このことは
図4に概略的に示され、
図4では、保護層31が、(ナノ)チャネル壁14に提供され、また、(ナノ)チャネル底部15に存在する第1の絶縁性金属酸化物バリヤ層21において提供されることを示す。保護層31は、多孔質層12の上面にも形成される。
【0111】
実施形態では、保護層は、例えば80°C及び120°Cの間の範囲の温度において、例えば空気又は真空において、例えば気相堆積法によって形成された疎水性のシランを含む層であってもよい。他の実施形態では、保護層はポリマー層であってもよく、これは、例えば、テンプレートの細孔の壁及び底部の上にポリマー溶液を塗布して乾燥することによって形成される。そのような保護ポリマー層は、例えば、アセトン、トルエン、又はジクロロメタンのような塩素系溶剤に溶けた、ポリスチレン又はPMMA(ポリ(メチル2-メチルプロパノアート))又はPDMS(ポリ(ジメチルシロキサン))の1%~20%の溶液にサンプルを浸漬し、溶液の過剰分をスピンコーティングにより処理し、その後、例えば空気中又は真空中で、例えば20°C及び60°Cの間の範囲の温度において乾燥させることで形成される。
【0112】
本開示の第1の態様の実施形態では、保護処置を行うことは、(ナノ)チャネル壁の上及び(ナノ)チャネル底部の上に、例えばそれらの上に直接に、保護層31を堆積すること102,1022(
図1)と、アニーリングすること102,1021(
図1)との両方を含んでもよい。
【0113】
保護処置は、(ナノ)チャネル壁及びチャネル底部(ナノ)の上における疎水面の形成をもたらす。そのような疎水面は、濡れに対する保護、例えば後の処理ステップで用いられるエッチング液による濡れに対する保護を提供するという利点をもたらしうるので、それはエッチングに対する保護を提供しうる。
【0114】
本開示の第1の態様の実施形態に係る方法100は、保護処置102、1021、及び1022の後に、第2の陽極処理ステップ103(
図1)を含む。第2の陽極処理ステップは、例えば、第1の陽極処理ステップに使用されるものと同様の陽極処理条件を用いて、好ましくは比較的短い期間にわたって、例えば1分から30分にわたって行われてもよい。本開示の第1の態様の実施形態では、この第2の陽極処理ステップは(ナノ)チャネル底部のみに影響し、(ナノ)チャネル底部のみにおいて親水面を誘導する。保護層31が堆積された実施形態(
図1、ステップ1022;
図4)では、第2の陽極処理ステップ103を行うことにより、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネルの底部から保護層31が除去される。従って、第2の陽極処理ステップは、親水性の、保護されていない(ナノ)チャネル底部(例えば、濡れに対して保護されていない)の形成をもたらす。第2の陽極処理ステップはさらに、(ナノ)チャネル底部から第1の絶縁性金属酸化物バリヤ層21の除去をもたらす。第2の陽極処理ステップは、複数の(ナノ)チャネル壁が実質的に影響されないままにし、すなわち、複数の(ナノ)チャネル壁は実質的に保護され続ける。第2の陽極処理ステップは、複数の(ナノ)チャネル底部においてのみさらなる陽極処理をもたらし、(ナノ)チャネル底部において第2の(保護されていない)絶縁性金属酸化物バリヤ層を生成する。
【0115】
図5は、保護処置がアニーリングを含む本開示の第1の態様の実施形態に係る方法において、第2の陽極処理ステップを実行した後に取得されうる構造物の断面図を概略的に示す。より具体的には、
図5は、第1の金属酸化物バリヤ層21がチャネル底部15から除去され、第2の陽極処理ステップ103の結果、チャネル底部15において第2の金属酸化物バリヤ層22で置き換えられている状態を示す。
【0116】
図6は、保護処置が保護層31を堆積することを含む本開示の第1の態様の実施形態に係る方法において、第2の陽極処理ステップを実行した後に取得されうる構造物の断面図を概略的に示す。より具体的には、
図6は、保護層31及び第1の金属酸化物バリヤ層21がチャネル底部15から除去され、第2の陽極処理ステップ103の結果、チャネル底部15において第2の金属酸化物バリヤ層22で置き換えられている状態を示す。
図6はさらに、チャネル壁14が保護層31によって保護されたままである状態を示す。
【0117】
本開示の第1の態様の実施形態に係る方法100はさらに、例えば酸性のエッチング液又はアルカリ性のエッチング液における、エッチングステップ104(
図1)を含む。処理のこの段階において、(ナノ)チャネル壁14は、以前に行った保護処置102の結果、エッチングに対して、例えば濡れに対して実質的に保護され、その結果、(ナノ)チャネル壁における疎水面をもたらす。処理のこの段階において、(ナノ)チャネル底部15のみ(より具体的には、第2の絶縁性金属酸化物バリヤ層(ナノ)チャネル底部15における22)が、濡れに対して、従ってエッチングに対してさらされる。従って、このエッチングステップ104は、複数の(ナノ)チャネル底部15から第2の絶縁性金属酸化物バリヤ層22を除去するのみであり、多孔質層12に影響することはない。このことは、このエッチングステップの間に複数の(ナノ)チャネル13を拡大することを実質的に回避するという利点を有する。エッチングステップは、例えば、H
3PO
4又はKOHの水溶液におけるエッチングを含んでもよい。エッチング液は、都合のよいことには、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、又はドデシル硫酸ナトリウムのような表面張力調整剤を含んでもよいが、本開示はそれらに限定されない。例えば、H
3PO
4の1~30質量パーセント濃度及びイソプロピルアルコールの1~60質量パーセント濃度の水溶液がエッチングステップにおいて使用されてもよい。
【0118】
図7は、保護処置がアニーリングを含む本開示の第1の態様の実施形態に係る方法100において、エッチングステップ104を実行した後に取得されうる構造物の断面図を概略的に示す。より具体的には、
図7は、このエッチングステップ104の後、(ナノ)チャネル底部15が露出される(すなわち、(ナノ)チャネル底部15から第2の金属酸化物バリヤ層22が除去された)状態を示す。(ナノ)チャネル壁14は影響されないままであり、(ナノ)チャネル13は拡大されない。
【0119】
図8は、保護処置が保護層を堆積することを含む本開示の第1の態様の実施形態に係る方法100において、エッチングステップ104を実行した後に取得されうる構造物の断面図を概略的に示す。より具体的には、
図8は、このエッチングステップ104の後、(ナノ)チャネル底部15が露出される(すなわち、(ナノ)チャネル底部15から第2の金属酸化物バリヤ層22が除去された)状態を示す。それは、(ナノ)チャネル壁14が保護層31によってなお覆われている状態を示す。
【0120】
図7及び
図8に示すように、エッチングステップを実行した後に得られる構造物は、第1の方向(図示した実施例では、バルブ金属層の厚さ方向Y)に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネル13を備えるテンプレート20と、テンプレート20を支持する基板10とを備える。
図7及び
図8は、本開示の第2の態様の実施形態に係るテンプレート20の例を示す。
図7及び
図8に示される実施例において、基板10は、バルブ金属層11の残りの陽極処理されなかった部分に対応する。
【0121】
エッチングステップ104の後、基板10及びテンプレート20を備える構造物(
図7、
図8)は、酸化亜鉛のアルカリ性溶液に浸漬され、それによって、(ナノ)チャネル底部において薄い導電性亜鉛層を生成してもよい。(ナノ)チャネル底部におけるそのような薄い導電性亜鉛層の存在は、後のステップで、複数の(ナノ)チャネルにおけるさまざまな金属の電気めっきを可能にしたり、容易にしたりする。
【0122】
本開示の実施形態では、バルブ金属層11は単一の層からなってもよく、又は、それは、1つよりも多くの層、例えば複数の(スタックされた)層を備えてもよく、複数の(スタックされた)層は例えば異なる組成を有してもよい。例えば、バルブ金属層は、例えば1マイクロメートル及び1mmの間の範囲の厚さを有する、アルミニウム層、例えば99%以上の純度のアルミニウム層からなってもよい。他の実施形態では、それは、例えば、ドープしたアルミニウム層、例えば銅をドープしたアルミニウム層からなってもよく、例えば1%及び10%の間の範囲のドーピング濃度と、例えば1マイクロメートル及び1mmの間の範囲の厚さとを有してもよい。他の実施形態では、それは、第1の層及び第2の層を備える層のスタックであってもよく、第1の層は例えば99%以上の純度のアルミニウム層であり、第2の層は、例えばドープした、例えば銅でドープしたアルミニウム層である。ドープしたアルミニウム層は、例えば1%及び10%の間の範囲のドーピング濃度を有してもよく、この層の厚さは、例えば1マイクロメートル及び100マイクロメートルの間の範囲にあってもよい。
【0123】
本開示の実施形態では、バルブ金属層11は、自立型の箔、例えばアルミニウム箔のような自立型の層であってもよく、それは、例えば、10マイクロメートル及び1ミリメートルの間の範囲の厚さを有する。本開示の他の実施形態では、層バルブ金属層は非自立型の層であってもよく、それは、例えば、フレキシブル基板のような基板において提供されてもよい。可撓性のソリッドステートバッテリーの製造を可能にすることが、フレキシブル基板を用いることの利点である。使用可能なフレキシブル基板の例は、金属箔(例えば、アルミニウム、ニッケル、又は銅箔)、雲母、及びポリイミドテープである。基板は、(ニッケル層、チタン層、又は窒化チタン層のような導電性層によってコーティングされてもよい。
【0124】
バルブ金属層が自立型の層である実施形態では、第1の陽極処理ステップは、好ましくは、層の一部が影響されないままであるように、層の一部においてのみ行われる、すなわち、バルブ金属層の全体にわたって行われるのではない。そのような実施形態では、バルブ金属層の残りの(陽極処理されなかった)部分は、陽極処理された部分(テンプレート20)のためのキャリア(又は基板10)として維持することができる。別の説明では、基板に関して言えば、これはバルブ金属層が最初に提供される基板を示してよく、又は、自立型のバルブ金属層が使用される実施形態では、それは、例えば
図7及び
図8に示すように、陽極処理ステップの後に残っているバルブ金属層の一部(すなわち、陽極処理されず、多孔質層に変換されない部分)に対応する基板10を示してもよい。陽極処理ステップが、陽極処理液に自立型のバルブ金属層11を完全に浸漬することを含み、それにより、バルブ金属層の第1の側におけるバルブ金属酸化物の第1の多孔質層の形成をもたらし、それと同時に、バルブ金属層の反対の第2の側におけるバルブ金属酸化物の第2の多孔質層の形成をもたらす実施形態では、第1の多孔質層及び第2の多孔質層の間に基板10(陽極処理されていない部分)が存在する。言いかえれば、「第1の多孔質層/基板/第2の多孔質層」のスタックが形成される。
【0125】
バルブ金属層、例えばアルミニウムを含む層の第1の陽極処理ステップは、バルブ金属層alを陽極処理液に、例えば、硫酸、蓚酸、又はリン酸の溶液のような酸性媒質に浸漬し、バルブ金属層と、チタン電極(例えばシート又はメッシュ)又は白金電極のような対電極との間に定電位差を印加することで行われてもよい(定電圧的陽極処理)。電位差は、例えば、10V及び500Vの間の範囲にあってもよい。代替として、陽極処理液を介してバルブ金属層に定電流が印加されてもよい(定電流的陽極処理)。陽極処理パラメータを選択及び制御することによって、複数の(ナノ)チャネルのサイズ(例えばそれらの直径)と、複数の(ナノ)チャネルの分布(例えば、互いに隣接する(ナノ)チャネルの間の距離)がうまく制御されてもよい。
【0126】
例えば、アルミニウム層の陽極処理を行うために、30°Cの0.3Mのシュウ酸において、アルミニウム層(作用電極)及び対電極の間に40Vの電位が印加される実験が行われた。これにより、アルミニウム層の面に実質的に直交する長手方向を有し、40nmの幅を有し(すなわち、40nmの直径を有する)、互いに所定間隔を有する複数のナノチャネルであって、アルミニウム層の面に実質的に平行な方向に約100nm分だけ互いに距離(ナノチャネルの中心の間の距離)を有して配置された複数のナノチャネルが形成される。
【0127】
互いに所定間隔を有する複数のナノチャネルの長手方向のサイズ(すなわち、バルブ金属層の中への陽極処理の深さに対応するナノチャネルの長さ、すなわち、ナノチャネル底部とバルブ金属層の上面との間の距離)は、第1の陽極処理ステップの継続時間に依存する。それは、例えば、100nm及び100マイクロメートルの間の範囲にあってもよいが、本開示はそれに限定されない。第1の陽極処理ステップは、例えば、1時間及び12時間の間の範囲の継続時間を有してもよい。
【0128】
バルブ金属層が、例えば99%以上の純度のアルミニウム層のような高純度のアルミニウム層を含む場合、第1の陽極処理ステップは、互いに分離された、相互接続されていない、複数の(ナノ)チャネルの形成をもたらす。バルブ金属層が、例えば1%及び10%の間の範囲のドーピング濃度を有する、ドープしたアルミニウム層、例えば銅でドープしたアルミニウム層を含む場合、第1の陽極処理ステップは、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネルの長手方向の向きに実質的に直交する長手方向の向きを有する(ナノ)チャネルを相互接続することによって相互接続された、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネルの形成をもたらす。バルブ金属層が第1の層及び第2の層を備える層スタックであり、第1の層が例えば99%以上の純度のアルミニウム層であり、第2の層がドープした、例えば銅でドープしたアルミニウム層である実施形態では、第1の領域(第1の層に対応する)において互いに分離され(相互接続されず)、かつ、第2の領域(第2の層に対応する)において相互接続された、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネルが形成される。相互接続する(ナノ)チャネルを形成することは、後にテンプレートの内部において形成されうる(ナノ)構造物の増大した表面積及び改善された機械的安定性をもたらしうる。
【0129】
例えば、30°Cの0.3Mのシュウ酸において、Cuでドープしたアルミニウム層(作用電極)及び対電極の間に40Vの電位が印加される実験が行われた。これにより、金属層の面に実質的に直交する長手方向を有し、40nmの幅を有し、互いに所定間隔を有する複数のナノチャネルであって、金属層の面に実質的に平行な方向に約100nm分だけ互いに距離を有して配置された複数のナノチャネルが形成され、さらに、金属層の面に実質的に平行な長手方向を有し、40nmの幅を有する複数の枝又は相互接続ナノチャネルであって、金属層の面に実質的に直交する方向に約100nmの距離だけ互いに分離した複数の枝又は相互接続ナノチャネルが形成される。
【0130】
バルブ金属層が、例えば、ニッケル、チタン、又は窒化チタン層のような導電性層によってコーティングされた、フレキシブル基板のような基板において提供される実施形態では、第1の陽極処理ステップは、複数の(ナノ)チャネルがバルブ金属層の全体にわたって形成されるまで進行してもよい。そのような実施形態では、このように形成された複数の(ナノ)チャネルの底部は、バルブ金属層と、基礎をなす導電性層との間の界面、すなわち、第1の陽極処理ステップの結果として得られる多孔質層と、基板10との間の界面に位置する。第1の陽極処理ステップの間に複数の(ナノ)チャネルの底部が基礎をなす基板10に達する場合、このことは、定電圧的陽極処理の場合には電流の減少をもたらし、又は、定電流的陽極処理の場合には電位の増大をもたらす。こうして、このように形成された互いに所定間隔を有する(ナノ)チャンネル13が基板10にいつ達したのか、すなわち、どの瞬間において互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャンネルがバルブ金属層の全体にわたって形成されたのかを容易に検出しうる。
【0131】
実施形態では、第2の陽極処理ステップ103は超音波の放射の下で行われてもよい。そのような超音波は、例えば、陽極処理液に浸漬された超音波発生ホーンによって生成されてもよい。超音波を供給することの利点は、第2の陽極処理ステップ103の間に、(ナノ)チャネル底部から第1の絶縁性金属酸化物バリヤ層21を除去し、存在すれば保護層31を除去することを容易にしうるということにある。超音波を供給することの利点は、エッチングステップ104の間に、(ナノ)チャネル底部から第2の絶縁性金属酸化物バリヤ層22を除去することをさらに容易にしうるということにある。
【0132】
第3の態様によれば、本開示は、例えば互いに所定間隔を有する複数の導電性(ナノ)構造物のような、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物を基板に形成する方法に関する。本開示の第3の態様に係る方法の一例は、例示的な処理シーケンスを含むフローチャートを示す
図9において概略的に示され、また、
図9の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す
図7、
図8、
図10、及び
図11において概略的に図示される。
【0133】
図9に示す実施例に図示したように、本開示の第3の態様の実施形態に係る方法200は、まず、本開示の第1の態様の方法100により、バルブ金属層11の少なくとも一部を、第1の方向に沿って長手方向を有して整列した互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネル13を備えるテンプレート20に変換すること201を含む。
図7及び
図8に、このステップ201の結果として得られる構造物の例を概略的に示す。
【0134】
本方法200は、テンプレート20の(ナノ)チャネル13の内部に固体機能材料を堆積すること(202)をさらに含む。これにより、互いに所定間隔を有する複数のチャネル13の内部において、
図10に概略的に示すように、第1の方向に沿って長手方向に整列している互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物40が形成される。
図10に示す実施例では、複数の(ナノ)チャネル13は固体機能材料によって完全に充填され、その結果、テンプレート20の厚さに実質的に等しい長さ(それらの長手方向Yにおけるサイズ)を有する複数の(ナノ)ワイヤ40をもたらす。しかしながら、本開示はそれに限定されず、本開示の第2の態様の実施形態では、複数の(ナノ)チャネル13が部分的にのみ充填されてもよい。例えば、実施形態では、機能材料は、長手方向Yの一部でのみ複数の(ナノ)チャネル13の内部に堆積されてもよく、その結果、テンプレート20の厚さより小さな長さを有する複数の(ナノ)構造物40をもたらす。これは、堆積時間を制御することにより制御可能である。
【0135】
本開示の第3の態様に係る方法の実施形態では、固体機能材料は、横方向Xにおいて複数の(ナノ)チャネル13を完全に充填するように複数の(ナノ)チャネル13の内部に堆積されてもよく、それにより、例えば、複数の(ナノ)チャネルの内部において複数の(ナノ)ワイヤ又は(ナノ)ピラーを形成してもよい。他の実施形態では、固体機能材料は、横方向Xにおいて複数の(ナノ)チャネル13を部分的にのみ充填するように複数の(ナノ)チャネル13の内部に堆積されてもよく、それにより、例えば、複数の(ナノ)チャネル13の内部において複数の(ナノ)チューブ又は中空の(ナノ)ワイヤを形成してもよい。
【0136】
固体機能材料を堆積した後に、テンプレート20はエッチング203によって除去されてもよい(
図9)。このエッチングステップ203では、例えば、0.1M~1MのKOHを含む溶液が使用されてもよい。エッチング時間は、例えば、20分及び90分の間の範囲にあってもよく、エッチングは、例えば、20°C及び60°Cの間の範囲の温度において行われてもよい。
図11に、結果として得られる構造物を概略的に示す。それは、基板10の上における、より具体的には導電性基板10の上における、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物40を含む。複数の(ナノ)構造物40の直径、すなわち横方向Xにおけるそれらのサイズと、それらの分離(すなわち、互いに隣接する(ナノ)構造物40の中心間の距離)とは、テンプレート20の(ナノ)チャネル13の直径及び分離に依存する。複数の(ナノ)ワイヤの直径は、例えば、10nm及び500nmの間の範囲、例えば10nm及び300nmの間、好ましくは15nm及び200nmの間又は50nm及び200nmの間の範囲にあってもよく、それらの分離距離は、例えば、15nm及び500nmの間の範囲、好ましくは50nm及び250nmの間の範囲にあってもよいが、本開示はそれらに限定されない。
【0137】
自立型のバルブ金属層を用いる実施形態のように、バルブ金属層11の一部のみの陽極処理によってテンプレートが形成される(すなわち、バルブ金属層11の厚さ方向Yにおいて部分的にのみ陽極処理が行われる)実施形態では、バルブ金属層の陽極処理されていない部分は、テンプレートの内部に形成された互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物40のためのキャリア又は基板の10として残る。そのような実施形態では、テンプレート20を除去することは、バルブ金属層の残りの部分(ここでは基板10とも呼ぶ)の上における、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物40をもたらし、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物40は、例えば、バルブ金属層(基板)の面に対して実質的に直交する、すなわち、方向Xに対して実質的に直交する方向Yのような第1の方向に沿って長手方向を有して実質的に整列される。
【0138】
本開示の第3の態様の実施形態では、固体機能材料を堆積することは、導電性材料、半導体材料、電気絶縁性材料、又はそれらの組み合わせを堆積することを含んでもよい。固体機能材料を堆積することは、例えば、化学蒸着法、例えば原子層堆積法を含んでもよいが、本開示はそれに限定されない。導電性材料を堆積することは、例えば、定電流的又は定電圧的な電着又はめっきによって材料を堆積することを含んでもよいが、本開示はそれらに限定されない。
【0139】
例えば、本開示の第3の態様の実施形態に係る方法200では、ニッケルの(ナノ)構造物40は、20°C及び60°Cの間の範囲の温度において、ニッケルスルファマート及びホウ酸及び/又は塩化ニッケルの溶液から定電流処理により(galvanostatically)成長されてもよい。この成長は、導電性基板10(又は、基板10の一部である導電性層)と、ニッケル又はプラチナの対電極のような金属の対電極との間において、カソード電流(例えば、1~20mA/cm2)を流すことによって行われてもよい。(ナノ)構造物は、テンプレートの互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チャネルの内部に形成される。また、(ナノ)構造物は、テンプレートの(ナノ)チャネルのアーキテクチャに依存して、互いに所定間隔を有して長手方向に整列した(ナノ)ワイヤ又は(ナノ)ピラーを形成してもよく、又は、互いに所定間隔を有して長手方向に整列した(ナノ)ワイヤと、互いに所定間隔を有する(ナノ)ワイヤを相互接続する(ナノ)構造物とを備える3次元的ネットワークを形成してもよい。(ナノ)ワイヤの長さは、堆積時間を制御することにより制御可能である。例えば、銅でドープしたアルミニウムから形成された多孔性のテンプレートのチャネルの内部においてニッケルを10mA/cm2で150秒間にわたって堆積することは、2マイクロメートルの高さを有する相互接続されたニッケル(ナノ)ワイヤの形成をもたらすことが実験的にわかった。
【0140】
例えば、本開示の第3の態様の実施形態に係る方法200では、まず、例えば金のような触媒材料が、例えばめっきによって、テンプレートの複数の(ナノ)チャネル底部において提供されてもよく、その後、例えば、Si、Ge、InP、GaP、又はGaAsのような半導体機能材料が、例えば化学蒸着法によって、(ナノ)チャネルの内部に堆積されてもよく、それにより、複数の(ナノ)チャネルの内部に複数の半導体(ナノ)ワイヤを形成する。
【0141】
例えば、本開示の第3の態様の実施形態に係る方法200では、金属・絶縁体・金属のスタックは、例えば原子層堆積法によって、複数の(ナノ)チャネルの内部に堆積されてもよい。そのような実施形態では、絶縁体材料は例えばアルミナ又はHfO2を含んでもよく、金属層は例えばTiN又はRuを含んでもよいが、本開示はそれらに限定されない。
【0142】
本開示の第3の態様の好ましい実施形態において、複数の(ナノ)構造物は、バルブ金属層(基板)面に実質的に直交する、すなわち、方向Xに実質的に直交する長手方向Yを有して整列されるが、本開示はそれに限定されない。本開示の実施形態では、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物の長手方向は、(ナノ)ワイヤが接する基板の面に対して例えば60°~90°の角度をなしてもよい。好ましくは、この角度は、80°~90°であり、より好ましくは実質的に90°、すなわち実質的に直交する。
【0143】
第4の態様によれば、本開示は、基板と、基板の上において互いに所定間隔を有する複数の構造物であって、第1の方向に沿って長手方向を有して整列し、本開示の第3の態様の実施形態に係る方法を用いて入手可能である複数の構造物とを備えたエンティティに関する。
図11、
図12(a)、及び
図12(b)はそれぞれ、本開示の第4の態様の実施形態に係る例示的なエンティティの断面図を概略的に示す。
図12(a)は、基板10と、基板10の面に対して約90°の角度を形成する第1の方向に沿って長手方向を有して整列した、すなわち、基板の面に実質的に直交するように方向付けられた、互いに所定間隔を有する複数の構造物51とを備えるエンティティ50の例を示す。
図12(a)は、基板10と、基板10の面に対して約90°の角度を形成する第1の方向に沿って長手方向を有して整列した、互いに所定間隔を有する複数の構造物51とを備え、さらに、第1の方向に実質的に直交する第2の方向に沿って方向付けられた複数の相互接続構造物52を備えたエンティティ50の例を示す。
【0144】
第5の態様によれば、本開示は、本開示の第4の態様の実施形態に係るエンティティを備える装置に関する。そのようなエンティティが有利に使用されうる装置の例は、バッテリー、燃料電池、センサ、スーパーキャパシタ(例えば、金属・絶縁体・金属のスーパーキャパシタ)、電解槽、光電解槽、及び化学反応器である。
【0145】
第6の態様によれば、本開示は、導電性基板の上に機能材料の層を形成する方法に関する。本開示の第6の態様の実施形態に係る方法は、例えば、活性電極材料を、例えば遷移金属基板の上に堆積するために有利に使用されうる。本開示の第6の態様に係る方法300の一例は、例示的な処理シーケンスを含むフローチャートを示す
図13において概略的に示され、また、
図13の処理シーケンスの連続ステップの結果を示す断面図を概略的に示す
図14~
図16において概略的に図示される。
【0146】
図13に示す実施例に図示したように、本開示の第6の態様の実施形態に係る方法300は、導電性基板の上に中間層を堆積すること301を含む。中間層は、例えば、0.5nm及び30nmの間の範囲の厚さを有してもよく、例えば0.5nm及び5nmの間の範囲、好ましくは0.5nm及び3nmの間の範囲の厚さを有してもよい。
【0147】
本開示の第6の態様の実施形態では、中間層の材料は、さらなる処理ステップの間に、例えば基礎となる導電性基板材料の酸化のような、熱による劣化に対する保護を提供する(すなわち酸化を防ぐ)ように選択される。例えば、中間層の材料は、酸素の低い拡散率を有するように選択されてもよい。それは、機能材料前駆体のメッキ浴に関して化学的に不活性になり、それによって、電着中に、基礎をなす基板材料、例えば遷移金属の電解酸化を防ぐように選択されてもよい。それは、さらなる処理ステップにおいて上に堆積される及び/又はさらなる処理ステップにおいてアニーリングされる機能材料前駆体の層に関して化学的に不活性になり、それによって、基礎をなす金属の熱による酸化を防ぐように選択されてもよい。本開示のコンテキストでは、酸素の低い拡散率は、300°C及び500°Cの間の範囲の温度において、NiOの酸素拡散率より低い酸素拡散率を示してもよい。本開示の第6の態様の実施形態では、機能材料前駆体層は、例えば、電極材料前駆体層であってもよく、導電性基板の上に形成された機能材料の層、例えば、活性電極材料、例えば、ソリッドステートバッテリーセル又はバッテリーの活性陰極材料又は活性陽極材料であってもよい。
【0148】
本開示の第6の態様の実施形態では、異なる中間層が組み合わせられてもよい、すなわち、異なるタイプの中間層のスタックが堆積されてもよく、それによって、熱酸化及び電解酸化の両方に対して基板の保護を提供する。
【0149】
中間層は、例えば、遷移金属酸化物、貴金属、又は貴金属酸化物を含んでもよい。例えば、中間層は、NiOx、Cr2O3、TiO2、RuO、RuO2、Ru、Au、又はPtを含んでもよいが、本開示はそれらに限定されない。例えば、酸化ニッケルの中間層又は酸化クロムの中間層のような遷移金属酸化物の中間層は、好ましくは7~12の範囲のpHを有する弱アルカリ性またはアルカリ性溶液において、電着処理によって堆積されてもよい。例えば、中間層31は、クエン酸ナトリウムの0.1M~1Mの溶液に基板を浸漬することと、例えば1~10分にわたって、基板(例えば、複数のニッケル(ナノ)ワイヤを備える)及び金属の対電極の間において、例えば1mA/cm2及び100mA/cm2の間の範囲の一定の陽極電流を流すこととによって堆積されてもよい。
【0150】
特に、導電性基板が遷移金属基板である実施形態では、中間層は、(例えば、バッテリーセルを製造するための)さらなる処理ステップの間における遷移金属の酸化を実質的に防止又は低減しうる。例えば、それは、例えば陽極の電着によって、MnOx陰極前駆体材料層の堆積中におけるニッケル(ナノ)構造物の溶解を防止する可能性があり、及び/又は、それは、例えば陰極前駆体材料の層を活性化するためにアニーリングするような、後の熱処理中における酸化に対するニッケル(ナノ)構造物の耐性を改善する可能性がある。
【0151】
本開示の第6の態様の実施形態に係る方法は、例えば、本開示の第3の態様の方法200に従って形成されてもよい、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物を備える構造物の上に、例えば、互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)ワイヤ又は互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)チューブの上に、例えば、導電性遷移金属から形成された互いに所定間隔を有する複数の(ナノ)構造物の上に、活性陰極材料の層をコンフォーマルに形成するために有利に使用されてもよい。
図11、
図12(a)、及び
図12(b)に、そのような構造物のいくつかの例(3次元的基板)を概略的に示すが、本開示はそれらに限定されない。
【0152】
本開示の第6の態様のコンテキストにおける基板を参照する場合、導電性基板が示される。これは、一方で、全体的に導電性材料からなる基板又は構造物を含み、他方で、例えばニッケル層のような導電性層を表面に露出した、異なる材料又は異なる材料層を備える基板又は構造物をさらに含む。
図11、
図12(a)及び
図12(b)において、導電性基板の例、より具体的には、本開示の第6の態様で活性陰極材料の層が上に形成されうる3次元的導電性基板を概略的に示す。
【0153】
図14は、本開示の第6の態様に係る方法に従って中間層41を堆積301した後における導電性基板60を概略的に示す。
【0154】
次のステップにおいて、中間層41を堆積した後、本開示の第6の態様に係る方法300は、中間層41の上に機能材料前駆体層を堆積すること302(
図13)を含む。機能材料前駆体層は、例えば、陽極の電着のような定電圧又は直流電気の電着によってコンフォーマルに堆積されてもよい。
図15は、中間層41の上に機能材料前駆体層42をコンフォーマルに堆積302した後の構造物を示す。コンフォーマルに堆積された層は、基礎をなす層のトポグラフィーに正確に追従した、一様な厚さを有する層である。
【0155】
後のステップにおいて、本開示の第6の態様に係る方法300は、機能材料前駆体層42をアニーリングによって活性化302し(
図13)、それによって、機能材料43の層を形成することを含む。
図16において、結果として得られる構造物を概略的に示す。ここでは、中間層41の上に提供された機能材料43の層によってコンフォーマルにコーティングされた複数の導電性(ナノ)構造物61を備える実施例において導電性基板60を示す。
【0156】
機能材料前駆体層42は、例えば、陰極前駆体材料の層であってもよく、陰極前駆体材料は、例えば、酸化マンガン、二酸化マンガン、酸化コバルト、マンガンニッケル酸化物、リン酸鉄を含む。機能材料43の層は、例えば、活性陰極材料の層であってもよく、活性陰極材料は、例えば、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、又は硫化リチウムの層であってもよいが、本開示はそれらに限定されない。
【0157】
例えば、中間層41の上に陰極前駆体材料42の層を堆積すること(302)は、例えば、0.1M~10MのMnSO4、好ましくは0.1M~1MのMnSO4、及び0.1M~10MのH2SO4、好ましくは0.1M~1MのH2SO4を含む溶液において、20°C及び100°Cの間の範囲、好ましくは20°C及び50°Cの間の範囲の温度で、中間層を備えた基板を浸漬した後、導電性基板及び金属の対電極の間に一定陽極電流(例えば、1mA/cm2及び100mA/cm2の間の範囲における)を流すことで、中間層の上に二酸化マンガン(MnO2)層を堆積することを含んでもよい。陰極前駆体材料の層の厚さは、電着の時間を制御することで制御されうる。上述したように堆積されたMnOx材料の層は、典型的には、10%及び80%の間の範囲における間隙率を有する。そのような多孔性の利点は、陰極前駆体材料(MnOx)、例えばリチウムを含む前駆体の層を活性化して、リチウム化された酸化マンガンに変換するために、イオン前駆体の収容を可能にするということにある。多孔性のさらなる利点は、さらなる処理ステップで提供されうる電解質の収容を可能にするということにある。
【0158】
陰極前駆体材料の層をアニーリングによって活性化すること302は、イオン挿入/脱離のために陰極前駆体材料の層を活性化することを含む。このアニーリングは、イオンを含む前駆体、例えば、リチウムを含む前駆体、ナトリウムを含む前駆体、又はマグネシウムを含む前駆体の存在下で行われてもよく、それによって、活性陰極材料の層を形成する。この活性化ステップは、例えば、リチウムを含む前駆体、例えばリチウムを含む塩によって陰極前駆体材料の層をコーティングすることと、その後、アニーリングすること、例えば250°C及び600°Cの間の範囲の温度においてアニーリングすることとを含んでもよい。
【0159】
以下に実施例を示す。ここでは、導電性遷移金属基板の上に活性陰極材料の層を形成するために、本開示の第6の態様の実施形態に係る方法を用いた実験を示す。これらの実施例は、本開示の第3の態様の実施形態の特徴及び利点を示すために、また、当業者が開示内容を実施することを支援するために提供される。しかしながら、これらの実施例は、いかなる意味でも開示内容の制限として解釈されるべきでない。
【0160】
NiOを含む中間層を形成することは、自己停止する挙動を示すことがわかった。この中間層の厚さは、約1nmに限定されることがわかった。
【0161】
中間層41は、電気めっきによるMnOxの堆積がなお可能でありながら、後のMnOx電気めっきの間に、基礎をなすニッケル基板40の電解酸化を防止しうることが実験的に示された。
【0162】
図17にこのことを示し、ここでは、Niナノメッシュサンプルの上にMnO
x陰極前駆体層の定電流的堆積を行う間に測定される電位の過渡状態を示す。実験で使用したサンプルは、TiN/Siウェハの上における、3.3マイクロメートルの厚さを有するNiナノメッシュ層を備える。サンプルの第1の部分(1)については、中間層41は、Niナノメッシュ層の上において、30°Cの0.4Mのクエン酸ナトリウム溶液において電着を行い、その後、2.4mA/cm
2及び6mA/cm
2の電流密度で60秒ずつ陽極電流を流すことによって提供された。Ptの対電極を使用した。サンプルの第2の部分(2)については、中間層は提供されず、Niナノメッシュ層を露出したままにされた。MnO
xの定電流的堆積は、16mA/cm
2のフットプリント(又は、0.16mA/cm
2のナノメッシュの実エリア)の電流密度を用いて、30°Cにおいて、0.3MのMnSO
4及び0.55MのH
2SO
4の浴槽において行われた。Niナノメッシュ層は作用電極として機能し、プラチナメッシュは対電極として使用され、Ag/AgClは基準電極として使用された。
【0163】
図17において(b)でラベル付けされた曲線は、本開示の第3の態様の実施形態に係る、中間層41によって覆われたNiナノメッシュ基板において測定された電位の過渡状態を示す。この曲線は、MnO
xの電位に対応し、Niナノメッシュ基板の上におけるMnO
xの堆積を示す。SEM分析は、ナノメッシュのいかなる可視の劣化も示さなかった。
図17において(a)でラベル付けされた曲線は、中間層が提供されなかったNiナノメッシュ基板において測定された電位の過渡状態を示し、ここで、Niは電気めっき溶液にさらされた。それはNi溶解の電位に対応する。SEM分析は、Niナノメッシュの劣化を示したが、MnO
xの堆積を示さなかった。
【0164】
図18にこのことをさらに示し、ここでは、サイクリックボルタンメトリ実験の結果を示す。これらの実験において、Siウェハの上における150nmの厚さを有するTiN層の上に物理蒸着法によって提供された平坦な150nmの厚さを有するNi層を備えるサンプルを使用した。
図18において(a)でラベル付けされたサンプルは、アセトン及びIPAによって洗浄され、N
2によって乾燥され、一方、(b)でラベル付けされたサンプルは、20%のHCl、水、及びIPAによって洗浄され、N
2によって乾燥された。続いて、サンプル(b)の上に電気化学堆積によって中間層が提供された。30°Cのクエン酸ナトリウム浴槽に浸漬されたニッケル層を介して、6mA/cm
2の陽極電流が180秒間にわたって流れた。これは、ニッケル層の表面の上に形成され、おそらくはクエン酸塩部分によって機能化される、NiO/Ni(OH)
2の非常に薄い層をもたらすことがわかった:Ni+3H
2O→NiO+2e
-+2H
3O
+。MnO
x層の電着のために、サンプルが作用電極として使用され、プラチナメッシュが対電極として使用され、Ag/AgCl(3MのKCL)が基準電極として使用された。溶液は0.3MのMnSO
4及び0.55MのH
2SO
4からなるものであった。
図18に示すサイクリックボルタモグラムは、25°Cにおいて、10mV/sの走査速度で、作用電極の開回路電位と、1.5V対Ag/AgClとの間で記録された。ラベル(a)を有する曲線は、MnO
x層を堆積する前に中間層が提供されていない構造物に対応し、ラベル(b)を有する曲線は、本開示の第3の態様の実施形態に係る、MnO
x層を堆積する前にその上に提供された中間層を有する構造物に対応する。陽極電位を印加するとき、ニッケル電極の上に中間層が提供されていないサンプル(a)について、-0.1V及び0.3Vの間にニッケル溶解のピークをはっきり見えることができ、また、ニッケル電極及びMnO
x活性陰極材料の間にNiO中間層を有するサンプル(b)については、ニッケル溶解は見られない。サンプル(a)については、MnO
xの堆積は観察されなかった。このことは、酸性媒質におけるニッケルの陽極の溶解が、MnO
xの堆積よりも、熱力学的かつ動力学的により好ましいことを示す。
【0165】
本開示の第6の態様に係る方法の実施形態では、中間層41は、後のアニーリングするステップの間における酸化のために、基礎をなす金属、例えばニッケルをさらに保護してもよい。例えば、陰極前駆体材料42の層を活性化するステップ303は、リチウム化(リチウム挿入/脱離のための活性化)を含んでもよく、これにより、陰極前駆体材料(例えばMnOx)は、リチウムを含む活性陰極材料(例えば酸化マンガン(LMO))に変換される。リチウム化は、電気化学的な変換又は固体の変換を含んでもよい。リチウム化ステップは、例えば、リチウムを含む塩(例えば、Li2CO3、LiOH、LiNO3)でMnOx層をコーティングことと、上昇した温度、例えば250°C及び600°Cの間の範囲の温度においてアニーリングして、電気活性のマンガン酸リチウムを形成することとを含んでもよい。MnOxの酸化する性質に起因して、ニッケルナノワイヤを備える基板の上に直接的に提供されているMnOx層を備えるサンプルの窒素雰囲気においてアニーリングすることで、ニッケルナノワイヤが酸化されることが実験的にわかった。比較的に厚い(例えば、ナノワイヤの直径の25%~100%に対応する5nm~20nmの厚さを有する)酸化ニッケル層が形成された。
この反応は以下のように記述することができる。
【0166】
yNi+2MnOx→yNiO+MnO(x-0.5y)
【0167】
ここで、1<x≦2かつy≦-2(1-x)
【0168】
最も極端な場合(より長いアニーリング回数又はより高い温度)では、ニッケル(ナノ)ワイヤの完全な酸化が観察された。酸化ニッケルはp型半導体であり、従って、負電流及び正電流の両方に対して導電性であるべきバッテリー集電体の材料としては適切でない。
【0169】
本開示の第6の態様の実施形態に係る中間層41を提供することによって、集電体材料(ニッケルなど)のそのような望ましくない酸化は実質的に回避されうる。本開示の第6の態様に係る実施形態の利点は、中間層が、例えば活性陰極材料前駆体、例えばMnOx前駆体によって、基礎をなす金属、例えばニッケルを酸化に対してシールドする有効な酸素拡散バリヤを形成するということにある。中間層は、過度の体積を電極に追加しないことと、妥当な電子伝導性を有することとを考慮して、例えば30nm未満、好ましくは5nm未満の厚さを有する、薄い層であることが好ましい。
【0170】
中間層は、例えば、前述したように酸化ニッケルからなるものであってもよく、又は、それは、チタン又はクロムのような遷移金属、又は、ルテニウム、金、又はプラチナのような貴金属からなるものであってもよい。また、中間層は、そのような金属の酸化物で形成されてもよい。金属又は金属酸化物の中間層は、電着によって、又は、ALD(原子層堆積法)又はCVD(化学蒸着法)のようなガス相法によって、(ナノ)構造物、例えばニッケル(ナノ)構造物の上にコーティングされてもよい。中間層は、概して、電着、物理蒸着法、化学蒸着法、又は原子層堆積法のような様々な方法によって堆積されることが可能であるが、これらに限定されるものではない。原子層堆積法は、高いアスペクト比を有する面の上における堆積された中間層の最高の忠実性(conformality)をもたらすので、この理由により好適とされうる。コーティングの後、金属酸化物をその対応する金属の形式に還元するために、還元雰囲気(例えば、H2/Ar、フォーミングガス)においてアニーリングする追加のステップがオプションで行われてもよい。
【0171】
ある実施形態では、活性陰極材料のスピネルLiMn2O4層が形成されてもよい。前述したようにMnOxの層を堆積した後、堆積されたMnOxを備えた基板は、0.1M~3MのLiOH又はLiNO3又はLi2CO3のようなリチウム塩を含む溶液に浸漬され、過剰な溶液の除去のためにスピンコーティングにより処理されてもよい。次に、例えば350°Cにおけるアニーリングステップが、スピネル相LiMn2O4を形成するために行われてもよい。リチウム塩の過剰分は、水で洗浄することでさらに除去されてもよい。そのように形成された活性材料は、典型的には、10%及び80%の間の間隙率を有し、有利なことには、後に提供される所定堆積の電解質材料を収容することを可能にする。
【0172】
第7の態様によれば、本開示は、ソリッドステートバッテリーセルを製造する方法に関し、本方法は、本開示の第3の態様の実施形態に係る複数の導電性(ナノ)構造物を形成することと、複数の導電性構造物の上に活性電極材料の第1の層を形成することとを含み、活性電極材料の第1の層は、複数の導電性構造物の面をコンフォーマルにコーティングする。次に、活性電極材料の層の上に固体電解質層が堆積され、固体電解質層の上に活性陽極材料の第2の層が形成される。活性電極材料の第1の層及び活性電極材料の第2の層のうちの一方は、ソリッドステートバッテリーセルの陰極層を形成し、他方は陽極層を形成する。活性電極材料の第2の層の上に集電体層が堆積されてもよい。
【0173】
本開示の第7の態様の実施形態では、基板は導電性層を備える。実施形態では、基板は、例えば、金属箔、例えば、アルミニウム、銅、クロム、又はニッケル箔のような導電性層からなるものであってもよい。互いに所定間隔を有する複数の導電性(ナノ)構造物は、例えば、(ナノ)ワイヤ又は(ナノ)チューブを備えてもよい。互いに所定間隔を有する複数の導電性(ナノ)構造物は、例えば、ニッケル、アルミニウム、銅、又はクロムを備えてもよく、また、それらは、基板の面に実質的に直交する長手方向を有してもよい。陰極材料は、例えば、(二)酸化マンガン(例えば、MnO又はMnO2)、マンガン酸リチウム(例えば、LiMn2O4、LiMnO2、又はLi2MnO3)、リチウムマンガンニッケル酸化物、コバルト酸リチウム(例えば、LiCoO2又はLiCo2O4)、リチウムニッケル酸化物(例えば、LiNiO2)、酸化コバルト(II、III)、リン酸リチウムマンガン(例えば、LiMnPO4)、リン酸鉄リチウム(例えば、LiFePO4)、リン酸コバルトリチウム(例えば、LiCoPO4)、硫化リチウム(例えば、Li2S)、リチウムチタン硫化物(例えば、LiTiS2)、リン酸鉄ナトリウム、セレン化タングステン、五酸化バナジウム、二硫化モリブデン又は硫黄を含んでもよい。活性陽極材料の層は、例えば、チタン酸リチウム(例えばLi4Ti5O12)、金属リチウム、二酸化チタン、五酸化バナジウム、ケイ素、グラファイト、一酸化マンガン(II)、金属マグネシウム、金属ナトリウム、金属カリウム、金属ゲルマニウム、又は金属スズを含んでもよい。有利な実施形態では、それは、本開示の第3の態様の実施形態に係る方法によって形成されてもよい。集電体層は、例えば、金属リチウム、又は、ニッケル、アルミニウム、銅、クロム又は亜鉛の箔を含んでもよいが、本開示はそれらに限定されない。
【0174】
本開示の第7の態様の実施形態では、活性電極材料の第1の層の上に固体電解質層が堆積される。固体電解質層は、活性電極材料の第1の層の上にコンフォーマルに堆積されてもよく、又は、それは、非コンフォーマルに堆積される、例えば、実質的に平坦でありかつ基板の面に対して実質的に平行である上面を有して堆積されてもよい。実施形態では、コンフォーマルにコーティングされた固体電解質層及び非コンフォーマルにコーティングされた固体電解質層の組み合わせが使用されてもよい。例えば、第1の固体電解質層は、活性電極材料の第1の層の上にコンフォーマルに堆積されてもよく、次に、第2の固体電解質層は、第1の固体電解質層の上に非コンフォーマルに堆積されてもよい。固体電解質層を堆積することは、例えば、電着によって、電解質前駆体溶液のドロップキャストを行って前駆体溶液の過剰分をスピンコーティングすることによって、又は、原子層堆積法のような気相堆積法によって行われてもよい。
【0175】
例えば、ある実施形態では、固体電解質層は、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)又は固体の複合電解質(例えば、Li2S-P2S5)を含んでもよい。固体のLiPON電解質層は、例えば、堆積チャンバにおいて窒素を追加して、又は追加することなく、リチウムtert-ブトキシド、リン酸トリメチル、及び水のALDサイクルを行うことによって堆積されてもよい。このことは、固体電解質を備えた陰極活性材料の含浸をもたらす。さらに、固体電解質層、例えば、50nm及び1マイクロメートルの間の範囲の厚さを有する固体電解質層は、例えばスパッタコーティング又はスピンコーティングによって、スタックの上に堆積されてもよい。追加の堆積の後で、スタックは、向上したゲル化(gelification)又は焼結の目的で、熱処理、例えば50°C及び350°Cの間の範囲の温度にさらされてもよい。
【0176】
本開示の第7の態様の実施形態では、固体電解質層の上に活性電極材料の第2の層が形成される。活性電極材料の第2の層は、固体電解質層の上にコンフォーマルに堆積されてもよく、又は、それは、非コンフォーマルに堆積される、例えば、実質的に平坦でありかつ基板の面に対して実質的に平行である上面を有して堆積されてもよい。実施形態では、活性電極材料のコンフォーマルにコーティングされた第2の層と、非コンフォーマルにコーティングされた層との組み合わせが使用されてもよい。活性電極材料の第2の層を堆積することは、例えば、DCスパッタリング法、熱蒸着法、原子層堆積法、又は化学蒸着法のような気相堆積法によって行われてもよい。例えば、ある実施形態では、第2の活性電極材料は金属リチウムであってもよい。金属リチウムの層は、例えば、0.5マイクロメートル及び10マイクロメートルの間の範囲の厚さを有してもよい。それは、例えば、固体電解質層の上にリチウムの熱蒸着によって堆積されてもよい。もう1つの実施形態では、活性電極材料の第2の層は、例えば、スピネルLi4Ti5O12又はアモルファスTiO2を含んでもよい。これらの活性陽極材料は、例えば、DCスパッタリング又はALDコーティングを行い、その後、例えば200°C及び400°Cの間の範囲の温度において、アニーリング(焼結)することによって堆積されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば50nm及び1マイクロメートルの間の範囲の厚さを有する、アルミニウム層又はニッケル層のような薄い導電性層は、例えばDCスパッタリング法又は熱蒸着法によって、活性陽極材料の層の上に堆積されてもよい。
【0177】
このように取得されたバッテリーセルは、空気及び水分からそれを保護するために、例えば100nm及び5マイクロメートルの間の範囲の厚さを有する、ポリジメトキシシラン(PDMS)層又はポリ(メタクリル酸メチル)層のようなポリマー層によってコーティングされてもよい。ポリマー層は、スピンコーティング、ブレードコーティング、又はドロップキャストを行い、その後、例えば20°C及び150°Cの間の範囲の温度で硬化させられてもよい。
【0178】
第8の態様によれば、本開示は、ソリッドステートバッテリーセルを製造する方法に関する。上記方法は、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物を基板の上に形成することと、本開示の第6の態様の方法に従って、複数の導電性構造物の面をコンフォーマルにコーティングする活性電極材料の第1の層を、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物の上に形成することと、活性電極材料の第1の層の上に固体電解質層を堆積することと、固体電解質層の上に活性電極材料の第2の層を堆積することとを含む。活性電極材料の第1の層及び活性電極材料の第2の層のうちの一方は、ソリッドステートバッテリーセルの陰極層を形成し、他方は陽極層を形成する。活性電極材料の第2の層の上に集電体層が堆積されてもよい。
【0179】
第9の態様によれば、本開示は、ソリッドステートバッテリーを製造する方法に関する。本開示の第9の態様に係る方法は、本開示の第7又は第8の態様の実施形態に従って、複数のソリッドステートバッテリーセルを製造することと、互いに隣接するソリッドステートバッテリーセルの間に固体電解質層を提供して、複数のソリッドステートバッテリーセルのスタックを形成することとを含む。
【0180】
第10の態様によれば、本開示は、ソリッドステートバッテリーセルに関する。
図19に、本開示の第10の態様の実施形態に係るソリッドステートバッテリーセルの一例を概略的に示す。図示した実施例において、ソリッドステートバッテリーセル80は、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物70を備える。より具体的には、
図19は、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物70が、当該構造物を上に提供する基板10に対して実質的に直交する方向に沿って整列される実施形態を示す。これは単なる実施例であり、本開示の第10の態様の実施形態において、他の向き、形状、及び/又は構成が使用されてもよい。
図19に示すように、互いに所定間隔を有する複数の導電性構造物70は、中間層71でコンフォーマルにコーティングされ、中間層71は、活性電極材料の第1の層72でコンフォーマルにコーティングされる。ソリッドステートバッテリーセル80は、活性電極材料の第1の層72の上に固体電解質層73をさらに備える。図示した実施例において、固体電解質層73は、非コンフォーマルに提供され、実質的に平坦でありかつ基板10の面に対して実質的に平行である上面を有する。しかしながら、これは単なる実施例であり、本開示はこれに限定されない。ソリッドステートバッテリーセル80は、固体電解質層73の上に活性電極材料の第2の層74をさらに備える。
【0181】
本開示の第10の態様の実施形態に係るソリッドステートバッテリーセル80において、中間層71は、例えば、遷移金属酸化物層、貴金属層、又は貴金属酸化物層を備えてもよい。それは、例えば、0.5nm及び30nmの間の範囲の厚さを有してもよい。活性電極材料の第1の層72及び活性電極材料の第2の層74のうちの一方は、ソリッドステートバッテリーセル80の陰極層を形成し、他方は陽極層を形成する。
【0182】
例えば、放電時に供給される装置の電位又は電流を増大させるために、本開示の第10の態様に係る複数のバッテリーセルはさらにバッテリー又はバッテリーパックとしてスタックされてもよい。
【0183】
第11の態様によれば、本開示は、本開示の第10の態様の実施形態に係る少なくとも1つのソリッドステートバッテリーセルを備えるソリッドステートバッテリーに関する。
図20は、そのような例示的なソリッドステートバッテリー90の断面図を概略的に示す。
図20に示す実施例において、ソリッドステートバッテリー90は、
図19に示す実施例に対応する単一のソリッドステートバッテリーセル80を備える。しかしながら、本開示はそれに限定されない。さらに、本開示の第11の態様に係るソリッドステートバッテリー90は、1つよりも多く、例えば2つ、例えば複数のソリッドステートバッテリーセル80を備えてもよい(図示せず)。
【0184】
図20に示すソリッドステートバッテリーにおいて、複数の導電性構造物70は、バッテリー90の第1の集電体の機能を有する。ソリッドステートバッテリー90は、活性電極材料74の第2の層の上における第2の集電体75と、封止層76とをさらに備える。
【0185】
先の説明は、本開示のある実施形態を詳述する。しかしながら、明細書中の説明がどれほど詳細であっても、本開示は多くの方法で実施されてもよいということは認識されるだろう。本開示のある特徴あるいは態様を説明する場合の特定の用語の使用は、その用語が関連付けられた本開示の特徴又は態様の任意の特定の特性を含むように限定されるように当該用語がここに再定義されたということを意味するものとして解釈されるべきでないことに注意すべきである。
【0186】
実施形態、特定の構造及び構成、材料が、本開示に係る方法及び装置についてここに議論されたが、本開示の範囲から外れることなく、形式及び詳細事項における様々な変更又は修正が行なわれてもよいことが理解されるであろう。例えば、本開示の範囲内で説明された方法においてステップが追加又は削除されてもよい。
【0187】
上述した概要及び詳細な説明は、装置を製造する方法に焦点をあてて説明したが、本開示は、さらに、上述した実施形態のうちのいずれかに係る方法を用いて取得されたパターン層を備える装置にも関する。