(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】キノリン誘導体およびチロシンキナーゼ阻害剤としてのそれらの応用
(51)【国際特許分類】
C07D 215/22 20060101AFI20221116BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20221116BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221116BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221116BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
C07D215/22 CSP
A61K31/47
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P37/02
(21)【出願番号】P 2020517877
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2018106674
(87)【国際公開番号】W WO2019062637
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】201710900497.6
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810732319.1
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521309282
【氏名又は名称】チョンチン ファーマシューティカル インダストリアル リサーチ インスティテュート カンパニー リミティド
(73)【特許権者】
【識別番号】521309293
【氏名又は名称】ヤオファーマ カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チェン チョンシア
(72)【発明者】
【氏名】タイ メイピー
(72)【発明者】
【氏名】リー ウェンチュイ
(72)【発明者】
【氏名】リー チエン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シューホイ
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/161952(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II
-1)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
[ただし、
R
1は、1、2または3個のRで任意に置換されたC
1-6アルコキシであり;
R
2は、-C(=O)NH
2および-C(=O)NH-C
1-3アルキルからなる群から選択され;
Rは、F、Cl、Br、I、OH、およびNH
2からなる群から選択される。]
【請求項2】
前記R
1は
【化2】
である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記R
2は-C(=O)NH
2である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
以下の式:
【化3】
で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
チロシンキナーゼ阻害剤に関連する疾患を治療のための医薬の製造における、請求項1~
4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
の使用。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、チロシンキナーゼ阻害剤に関連する疾患を治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一種のキノリン誘導体、およびチロシンキナーゼ阻害剤に関連する疾患を治療するための薬剤の調製におけるその応用に関する。具体的には、式(II)で表される化合物およびその薬学的に許容される塩に関する。
<関連出願の相互参照>
本出願は、次の優先権を主張する:
CN201710900497.6、出願日2017-09-28;
CN201810732319.1、出願日2018-07-05;
【背景技術】
【0002】
プロテインチロシンキナーゼ(PTK)は一種の酵素であり、基質としてのATPとともに、ペプチドおよびタンパク質におけるチロシン残基をリン酸化する。これらの酵素は、細胞の増殖や分化など、細胞のシグナル伝達の調節における重要な要素である。PTKには、特に、肝細胞成長因子(HGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、および血管新生に役割を果たすキナーゼ(FGFおよびVEGF)を含む受容体チロシンキナーゼが含まれ;また、LCK、ABLなどを含む非受容体型チロシンアミノキナーゼも含まれる。
c-Metタンパク質(肝細胞成長因子(HGF)受容体とも称される)は、c-Met癌遺伝子によってコードされるチロシンキナーゼ活性を持つ膜貫通190 kDaヘテロダイマーである。HGF / c-Metシグナル伝達経路は、マイトジェン活性、増殖活性、形態形成活性及び血管新生活性などさまざまな細胞応答を実証することが示された。HGF / c-Met経路の阻害剤には、癌治療の顕著な可能性がある。
【0003】
ABLは、癌原遺伝子によってコードされるチロシンキナーゼであり、活性化されたABLは、細胞の増殖、分化、EMTなどを促進することができる。血腫では、主にBCR-ABLなどの遺伝子融合によって活性化される。固形腫瘍では、主に遺伝子増幅、過剰発現、および、PDGFRとEGFRなどの上流受容体チロシンキナーゼによって活性化される。TNIKはセリン/スレオニンキナーゼであり、wntシグナル経路におけるβ-カテニン/ TCFと結合し、wntシグナルの下流標的遺伝子を活性化し、腫瘍の成長を促進することができる。MINKはSTE20プロテインキナーゼファミリーのメンバーであり、中枢神経系で高度に発現され、JNKおよびp38シグナル経路を活性化することができる。
【0004】
FGFRは、生物学的シグナルの伝達、細胞成長の調節、組織修復に参与等の機能を有する生物活性物質の一種であり、近年、FGFRファミリーの多くのメンバーが腫瘍形成と発達に重要な役割を果たすことが分かった。線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)は、線維芽細胞成長因子(FGF)に特異的に結合できる受容体タンパク質の一種で、FGFRファミリーには次のタイプが含まれる:FGFR1b、FGFR1c、FGFR2b、FGFR2c、FGFR3b、FGFR3c、FGFR4。異なるサブタイプのFGFRと結合するFGFは異なり、FGFsとFGFRsが結合した後、細胞内の複数チロシン残基の自己リン酸化を招き、リン酸化されたFGFRsは、MEK / MAPK、PLCy / PKC、PI3K / AKT、STATSなどを含む下流シグナル伝達経路を活性化する。その中で、FGFR4は肝臓癌、結腸癌、胃癌、食道癌、および精巣癌で高発現するが、FGFR4に特異的に結合するFGF19は、ヒトの結腸癌細胞、肝臓癌細胞、肺癌細胞で高発現し、FGFR4とFGF19との特異的結合シグナルの異常は多種な腫瘍の形成と転移の重要な要因である。
【0005】
血管内皮細胞成長因子(VEGF)と血小板由来成長因子(PDGF)は、腫瘍の血管新生に重要な役割を果たし、これらはこれらの受容体であるVEGFRおよびPDGFRと結合し、シグナルを細胞内領域へ伝達し、そして、リン酸化二量体化を起こし、このシグナル経路を活性化し、且つ、エネルギーを下流に移動することによって、腫瘍細胞の成長、転移、および増殖が制御されないことを招く。
【0006】
ABL、C-Met、TNIK、FGFR1-4、VEGFR(FLT1、KDR、FLT4)およびPDGFRなどの上記のいくつかの標的は腫瘍細胞の治療において、分子の作用機序から、標的の間が相互に協力、補いをして、腫瘍細胞の脱出を低下させ、薬剤耐性を低下させ、治療効果を改善することができるため、これらの標的に同時に作用する薬剤が非常に期待されている。
【0007】
現在、市販されているマルチキナーゼ阻害剤であるロバチニブは、ABL、TNIK、FGFR、VEGFR、およびPDGFRに対する活性を同時に持つことができ、臨床治療効果に優れており、患者への反応率が高い。
【化1】
【発明の概要】
【0008】
本発明は、式(II)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【化2】
ただし、
R
1は、1、2または3個のRで任意に置換されたC
1-6アルコキシから選択されるものであり;
R
2は、-C(=O)NH
2および-C(=O)NH-C
1-3アルキルから選択されるものであり;
環BはC
3-6シクロアルキルから選択されるものであり;
Rは、F、Cl、Br、I、OH、およびNH
2から選択されるものである。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、上記R
1は
【化3】
から選択されるものであり、他の変数は本明細書で定義した通りである。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態において、上記R2は-C(=O)NH2から選択されるものであり、他の変数は本発明で定義した通りである。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態において、上記環Bはシクロプロピルから選択されるものであり、他の変数は本発明で定義した通りである。
本発明は、式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する:
【化4】
ただし、
R
1は、1、2または3個のRで任意に置換されたC
1-6アルコキシから選択されるものであり;
R
2は、-C(=O)NH
2および-C(=O)NH-C
1-3アルキルから選択されるものである;
R
3は、H、F、Cl、Br、I、OHおよびNH
2から選択されるものであり;
環BはC
3-6シクロアルキルから選択されるものであり;
nは2および3から選択されるものであり;
Rは、F、Cl、Br、I、OHおよびNH
2から選択されるである。
本発明のいくつかの実施形態において、上記R
1は
【化5】
から選択されるものであり、他の変数は本明細書で定義した通りである。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、上記R2は-C(=O)NH2から選択されるものであり、他の変数は本発明で定義した通りである。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、上記R3はFおよびClから選択されるものであり、他の変数は本発明で定義した通りである。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、上記環Bはシクロプロピルから選択されるものであり、他の変数は本発明で定義した通りである。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、上記nは2から選択されるものであり、他の変数は本発明で定義した通りである。
【0016】
本発明のさらに他の実施形態は、上記変数が任意に組み合わせられるにより得たものである。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、上記化合物またはその薬学的に許容される塩は、
【化6】
から選択されるものであり、ただし、R
1、R
2、およびR
3は、本発明で定義した通りである。
【0018】
本発明は、以下から選択される以下の化合物も提供する。
【化7】
【0019】
本発明はさらに、活性成分である治療有効量の上記化合物またはその医薬的に許容される塩および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0020】
本発明はさらに、チロシンキナーゼ阻害剤に関連する疾患を治療するための薬剤の製造における上記化合物またはその薬学的に許容される塩または上記組成物の応用を提供する。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、上記応用では、上記チロシンキナーゼ阻害剤に関連する疾患が腫瘍疾患および免疫失調を指す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義と説明
別に説明しない限り、本明細書で使用される以下の用語およびフレーズは、以下の意味を有する。特定の用語またはフレーズは、特定の定義がない限り、確定されていないか、または不明瞭であると見なされるべきではなく、通常の意味で理解されるべきである。本明細書に商品名が記載されている場合、その商品またはその有効成分を表すことを意図する。ここで使用される「薬学的に許容される」という用語は、それらの化合物、材料、組成物および/または剤型に対する言うことであり、信用できる医学的判断の範囲内において、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応または他の問題または合併症が起きずに、ヒトおよび動物の組織と接触し使用することに適しており、妥当な利益/リスク比に見合うものを意味する。
【0023】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明で見出される特定の置換基を有する化合物と比較的非毒性の酸またはアルカリから調製された本発明の化合物の塩を指す。本発明の化合物に比較的酸性の官能基が含まれる場合には、純粋な溶液または適当な不活性溶媒中で、十分な量のアルカリをこのような化合物の中性形態と接触させることにより塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アンモニアまたはマグネシウム塩または類似な塩が含まれる。本発明の化合物に比較的アルカリ性の官能基が含まれる場合、純粋な溶液または適切な不活性溶媒中で、十分な量の酸を、このような化合物の中性形態と接触させることにより酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、重炭酸イオン、リン酸、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸、硫酸水素、ヨウ化水素酸、亜リン酸などを含む無機酸の塩;及び、例えば酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの類似の酸と、アルギニンなどのアミノ酸とグルクロン酸などを含む有機酸の塩を含む。本発明のある特定の化合物は、アルカリ性および酸性官能基の両方を含むため、塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換することができる。
【0024】
本発明の薬学的に許容される塩は、酸基または塩基を含む親化合物から通常の化学的方法によって合成することができる。一般に、このような塩は、水または有機溶媒またはこれらの混合物中で、化学量論量の適切な塩基または酸と、遊離酸またはアルカリ形態にあるこれらの化合物を反応させることによって調製される。
【0025】
本発明のある化合物は、非溶媒和形態および溶媒和形態で存在し得る(水和形態を含む)。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であり、本発明の範囲内に含まれる。
【0026】
本発明の化合物は、特定の幾何学的形態または立体異性形態で存在し得る。シス及びトランス異性体、(-)-及び(+)-エナンチオマー、(R)-及び(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、およびそのラセミ混合物、ならびに例えばエナンチオマーまたはジアステレオマーに富む混合物のような他の混合物が含まれる本発明で想定されるすべての化合物は、本発明の範囲内にある。アルキルなどの置換基に他の不斉炭素原子が存在してもよい。これらの全ての異性体、及びそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0027】
別に説明しない限り、「エナンチオマー」或いは「光学異性体」という用語は、互いに鏡像関係にある立体異性体を指す。
【0028】
別に説明しない限り、「シス-トランス異性体」或いは「幾何異性体」という用語は、二重結合或いは環形成炭素原子単結合が自由に回転できないことによって引き起こされるものである。
【0029】
別に説明しない限り、「ジアステレオマー」という用語は、分子が2つ以上のキラル中心を持ち、分子間で非鏡像関係にある立体異性体を指す。
【0030】
別に説明しない限り、「(D)」または「(+)」は右旋、「(L)」または「(-)」は左旋、「(DL)」または「(±)」はラセミ体を意味する。
【0031】
別に説明しない限り、くさび形の実線キー
【化8】
とくさび形の破線キー
【化9】
で、ステレオセンターの絶対的な配置を示し、直形の実線キー
【化10】
と直形の破線キー
【化11】
で、ステレオセンターの相対的な配置を示し、波線
【化12】
で、くさび形の実線キー
【化13】
或いはくさび形の破線キー
【化14】
を表し、或いは、波線
【化15】
で、直形の実線キー
【化16】
と直形の破線キー
【化17】
を表す。
【0032】
本発明の化合物に特異的ものが存在し得る。別に説明しない限り、「互変異性体」または「互変異性体形態」という用語は、室温で、異なる官能基の異性体が動的平衡状態にあり、互いに迅速に変換できることを意味する。互変異性体が可能である場合(例えば、溶液中など)、互変異性体の化学平衡に到達できる。例えば、プロトン互変異性体(proton tautomer)(プロトトロピック互変異性体(prototropic tautomer)としても知られている)には、ケト-エノール異性化とイミン-エナミン異性化などのプロトン移動による相互変換が含まれる。原子価互変異性体(valence tautomer)には、いくつかの結合電子の再結合により行われる相互変換が含まれる。ここで、ケト-エノール互変異性化の具体例は、ペンタン-2,4-ジオンと4-ヒドロキシペント-3-エン-2-オンとの2つの互変異性体の間の相互変換である。
【0033】
別に説明しない限り、「1つの異性体に富む」、「異性体に富む」、「1つのエナンチオマーに富む」または「エナンチオマーに富む」という用語は、1つの異性体またはエナンチオマーの含有量が100%未満であり、且つ、当該異性体またはエナンチオマーの含有量が60%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上、または95%以上、または96%以上、または97%以上、または98%以上、または99%以上、または99.5%以上、または99.6%以上、または99.7%以上、または99.8%以上、または99.9%以上である。
【0034】
別に説明しない限り、「異性体過剰量」または「エナンチオマー過剰量」という用語は、2つの異性体または2つの鏡像異性体の相対百分比の間の差を指す。たとえば、一つの異性体またはエナンチオマーの含有量が90%で、他の異性体またはエナンチオマーの含有量が10%である場合、異性体またはエナンチオマー過剰量(ee値)は80%である。
【0035】
光学活性な(R)-および(S)-異性体ならびにDおよびL異性体は、キラル合成またはキラル試薬または他の従来技術によって調製することができる。本発明のある化合物の一種のエナンチオマーが所望される場合、それは、不斉合成によって、または不斉補助剤を具備する誘導体化することによって調製することができ、それにおいて、得られたジアステレオマーの混合物を分離し、補助基を切断して純粋な所望のエナンチオマーを得る。或いは、分子が塩基性官能基(例えば、アミノ基)または酸性官能基(例えばカルボキシル基)を含む場合、適切な光学活性酸またはアルカリとジアステレオマー塩を形成し、続いて当該分野では周知の通常方法でジアステレオマーの分割を行い、純粋なエナンチオマーを回収する。さらに、エナンチオマーおよびジアステレオマーの分離は、一般に、キラル固定相を用いたクロマトグラフィー法によって完成するが、任意に化学的誘導体化法(例えば、アミンからのカルバメートの形成)との組み合わせをしてもよい。本発明の化合物は、化合物を構成する1つまたは多数の原子に不自然な割合の原子同位体を含むことができる。例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)またはC-14(14C)などの放射性同位元素で化合物を標識することができる。別の例として、重水素で水素を置換し重水素化薬物を形成することができ、重水素と炭素の結合は、通常の水素と炭素の結合より強力であり、非重水素化薬物と比較して、重水素化薬物は毒性が低く、薬物の安定性が高く、有効性が高く、薬物の生物学的半減期が延長するなどの利点を持ち。本発明の化合物のすべての同位体組成物の変換は、放射性であるか否かにかかわらず、本発明の範囲内に含まれる。
【0036】
薬物または薬理学的に活性な薬剤について、「有効量」または「治療的有効量」という用語は、毒性がならず所望の効果を達成するには薬物または薬剤の十分な量を指す。本発明の経口剤形について、組成物におけるの1つの活性物質の「有効量」とは、組成物におけるの別の活性物質と組み合わせて使用する場合に所望の効果を達成するために必要な量を指す。有効量の確定は、人によって異なり、レシピエントの年齢および一般的な状態に依存し、また具体的な特定の活性物質に応じており、具体的な場合に、適切な有効量は、当業者によって通常実験で確定することができる。
【0037】
「活性成分」、「治療剤」、「活性物質」または「活性剤」という用語は、標的障害、疾患または病症の治療に有効な化学実体を指す。
【0038】
「任意の」または「任意に」は、その後に記載される事象または状態が発生する可能性があるが、必ずしも起こらないことを意味し、その記載は、当該事象または当該状態が生じる例および当該事象または当該状態が生じない例を含むことを意味する。
【0039】
「置換された」という用語は、特定の原子の原子価が正常であって置換された化合物が安定である限り、特定の原子上のいずれの1つ以上の水素原子が重水素および水素の変種を含む置換基で置き換えられていることを意味する。置換基がオキシ(すなわち、=O)である場合は、2つの水素原子が置換されていることを意味する。オキシ置換はアリール基上には起こらない。「任意に置換された」という用語は、置換されていても置換されていなくてもよいことを意味し、別に規定しない限り、化学上に実現できれば、置換基の種類および数は任意である。
【0040】
変数のいずれか(例えば、R)が化合物の組成または構造中に1回以上現れる場合、それぞれの場合にその定義は独立している。したがって、例えば、基が0~2個のRで置換された場合、その基は、多くとも2個のRで任意に置換されており、且つ、それぞれの場合にRが独立する選択肢を有する。さらに、置換基および/またはその変異体の組み合わせは、そのような組合せが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。
【0041】
結合基の数が0である場合、例えば、-(CRR)0-の場合、当該結合基が単結合であることを示す。
【0042】
変数の1つが単結合から選択される場合、それにより結合する2つの基が直接結合していることを意味し、例えば、A-L-Zにおいて、Lが単結合を表す場合、その構造は実際にはA-Zである。
【0043】
一つの置換基が空きである場合、置換基が存在しないことを意味する。例えば、A-Xにおいて、Xが空きである場合、その構造は実際にAである。列挙された連結基がその結合方向を示さない場合、その連結方向は任意である。例えば、
【化18】
において連結基Lは-M-W-であり、この時、-M-W-は左から右への読み順と同じ方向で、リングAとリングBを連結し
【化19】
を形成してもよく、左から右への読み順と反対する方向で、環Aと環Bを連結し
【化20】
を形成してもよい。上記連結基、置換基および/またはその変異体の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。
【0044】
別に規定しない限り、「ヘテロ」という用語は、ヘテロ原子またはヘテロ原子団(即ち、ヘテロ原子を含む原子団)を指し、炭素(C)および水素(H)以外の原子およびこれらのヘテロ原子を含有する原子団を含み、例えば、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、-O-、-S-、=O、=S、-C(=O)O-、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)、-S(=O)2-、及び、任意に置換された-C(=O)N(H)-、-N(H)-、-C(=NH)-、-S(=O)2N(H)-または-S(=O)N(H)-が含まれる。
【0045】
別に規定しない限り、「環」は、置換または非置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロシクロアルキニル、アリールまたはヘテロアリールを意味する。いわゆる環には、単環、環集合、スピロ環、縮合環または架橋環が含まれる。環上の原子数は、通常、環員数として定義され、例えば、「5~7員環」とは、5~7個の原子が環状配置されていることを意味する。別に規定しない限り、当該環は任意に1~3個のヘテロ原子を含む。したがって、「5~7員環」には、例えば、フェニル基、ピリジル基、およびピペリジニル基が含まれ、一方、「5~7員ヘテロシクロアルキル環」には、ピリジル基およびピペリジニル基が含まれるが、フェニルは含まれない。「環」という用語は、さらに少なくとも1つの環を含有する環系を含み、ここで、それぞれの環は、上記定義に独立的に適合する。
【0046】
別に規定しない限り、用語である「炭化水素基」またはその下位概念(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニルなど)は、それ自体または別の置換基の一部として直鎖状、分枝状または環状炭化水素原子団またはそれらの組み合わせを意味し、完全飽和(例えば、アルキル)、一価または多価不飽和(例えば、アルケニル、アルキニル、アリール)であってもよく、一置換または多置換されていてもよく、一価(例えば、メチル)、二価(例えば、メチレン)または多価(例えば、メチン)であってもよく、二価または多価原子団を含んでもよく、特定の数の炭素原子(例えば、C1~C12が1乃至12個炭素原子を表し、C1~C12は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11およびC12から選択され、C3-12は、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11およびC12から選択される)を有する。「炭化水素基」として、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基が含まれるが、これらに限らない。上記脂肪族炭化水素基として、鎖状と環状であるものが含まれ、具体的にはアルキル、アルケニル、アルキニル基が含まれるが、これらに限らない。上記芳香族炭化水素基として、6~12員の芳香族炭化水素例えば、ベンゼン、ナフタレン等が含まれるが、これらに限らない。ある実施例において、「炭化水素基」という用語は、完全飽和、一価または多価不飽和であってもよく、二価および多価原子団を含んでもよい、直鎖または分枝鎖の原子またはそれらの組み合わせを意味する。飽和炭化水素基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、イソブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル基、シクロプロピルメチル基、およびn-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの原子団の同族体または異性体が含まれるが、これらに限定されない。不飽和炭化水素基は、1つまたは多数の二重または三重結合を有し、例として、例えば、ビニル基、2-プロペニル基、ブテニル基、クロチル基、2-イソペンテニル基、2-(ブタジエニル基)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、およびより高次の同族体および異性体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
特に規定しない限り、用語である「ヘテロ炭化水素基」またはその下位概念(例えば、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリールなど)は、それ自体、または別の用語と組み合わせて安定な直鎖状、分枝状または環状炭化水素原子団またはそれらの組み合わせを意味し、一定の数目の炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子から構成される。ある実施例において、「ヘテロ炭化水素基」という用語は、それ自体または別の用語と組み合わせて直鎖状、分枝鎖状炭化水素原子団またはその組成物を意味し、一定の数目の炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子から構成される。一つの典型的な実施形態では、ヘテロ原子はB、O、NおよびSから選択され、窒素および硫黄原子は任意に酸化され、窒素ヘテロ原子は任意に四級化されてもよい。ヘテロ原子またはヘテロ原子団は、ヘテロ炭化水素基の内部位置のいずれ(炭化水素基における分子と繋がった位置の他の位置を含む)に位置することができるが、「アルコキシ」、「アルキルアミノ」および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)という用語は慣用表現に該当し、一つの酸素原子、アミノ基または硫黄原子を介して分子の残りの部分にそれぞれ結合しているアルキルを意味する。例としては、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2、-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-CH2-CH=N-OCH3および-CH=CH-N(CH3)-CH3が挙げられるが、これらに限らない。-CH2-NH-OCH3のように、多くとも2個のヘテロ原子が連続していてもよい。
【0048】
別に規定しない限り、用語である「環式炭化水素基」、「ヘテロ環式炭化水素基」またはその下位概念(例えば、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロシクロアルキニル等)は、それ自体、または他の用語と組み合わせて、環化された「炭化水素基」または「ヘテロ炭化水素基」をそれぞれ意味する。さらに、ヘテロ炭化水素基またはヘテロ環式炭化水素基(例えば、ヘテロアルキルまたはヘテロ環式炭化水素基)の場合、ヘテロ原子は、当該ヘテロ環における分子と繋がった位置の他の位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロ環式基の非限定的な例には、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフランインドール-3-イル、テトラヒドロチオフェン-2-イル、テトラヒドロチオフェン-3-イル、1-ピペラジニルおよび2-ピペラジニルが含まれる。
【0049】
別に規定しない限り、「アルキル」という用語は、一置換(例えば、-CH2F)または多置換(例えば-CF3)されていてもよく、一価(例えば、メチル)、二価(例えばメチレン)または多価(例えばメチン)であってもよい直鎖または分枝鎖飽和炭化水素基を示す。アルキルの例には、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n-プロピルおよびイソプロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)などが含まれる。
【0050】
別に規定しない限り、シクロアルキルは、安定な環式または多環式炭化水素基のいずれを含み、炭素原子のいずれも飽和であり、一置換または多置換されていてもよく、一価、二価または多価であってもよい。このようなシクロアルキルの例としては、シクロプロピル、ノルボルニル、[2.2.2]ビシクロオクタン、[4.4.0]ビシクロノナンなどが挙げられるが、これらに限らない。
【0051】
別に規定しない限り、「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」という用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルの両方を含むことが意図される。例えば、「ハロ(C1~C4)アルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むことが意図される。別に規定しない限り、ハロアルキルの例としては、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチルおよびペンタクロロエチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
「アルコキシ」は、酸素架橋を介して結合した特定の数の炭素原子数を有する上記アルキルを表し、別に規定しない限り、C1~C6のアルコキシにはC1、C2、C3、C4、C5、C6のアルコキシが含まれる。アルコキシの例には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシおよびS-ペンチルオキシが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
「脱離基」という用語は、置換反応(例えば、親和性置換反応)によって別の官能基または原子で置換されることができる官能基または原子を意味する。例えば、代表的な脱離基としては、トリフルオロメタンスルホネート;塩素、臭素、ヨウ素;メタンスルホネート、トルエンスルホネート、p-ブロモベンゼンスルホネート、p-トルエンスルホネートなどのスルホネート基等;アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基などのアシルオキシ基。
【0054】
「保護基」という用語には、「アミノ保護基」、「ヒドロキシ保護基」或いは「メルカプト保護基」が含まれるが、これらに限定されない。「アミノ保護基」という用語は、アミノ窒素位置での副反応を防ぐことに適した保護基を指す。代表的なアミノ保護基には、ホルミル;アルカノイルアシル(アセチル、トリクロロアセチル或いはトリフルオロアセチルなど)などのアシル;tert-ブトキシカルボニル(Boc)などのアルコキシカルボニル;ベンジルオキシカルボニル(Cbz)と9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などのアリールメトキシカルボニル;ベンジル(Bn)、トリチル(Tr)、1,1-ジ-(4'-メトキシフェニル)メチルなどのアリールメチル;トリメチルシリル(TMS)およびtert-ブチルジメチルシリル(TBS)などのシリルなどが含まれるが、これらに限定されない。「ヒドロキシ保護基」という用語は、ヒドロキシル基の副反応を防ぐことに適した保護基を指す。代表的なヒドロキシ保護基には、メチル、エチル、tert-ブチルなどのアルキル基;アルカノイル基(アセチルなど)などのアシル基;ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル(PMB)、9-フルオレニルメチル(Fm)およびジフェニルメチル(ジフェニルメチル、DPM)などのアリールメチル基;トリメチルシリル(TMS)およびtert-ブチルジメチルシリル(TBS)などのシリル基などが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明の化合物は、以下に列挙される特定の実施形態、それらと他の化学合成方法と組み合わせにより得た実施形態、および当業者に周知のものに同等する置換形態を含む、当業者に周知の様々な合成方法によって調製することができる。好ましい実施形態には、本発明の実施例が含まれるが、これに限定されない。
【0056】
本発明に用いられる溶媒は市販で購入で
きる。本発明は、以下の略語を用いる。aqは水;HATUはO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N、N、N'、N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;EDCはN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩;m-CPBAは3-クロロペルオキシ安息香酸;eqは当量、等量;CDIはカルボニルジイミダゾール;DCMはジクロロメタン;PEは石油エーテル;DIADはアゾジカルボン酸ジイソプロピル;DMFはN、N-ジメチルホルムアミド;DMSOはジメチルスルホキシド;EtOAcは酢酸エステル;EtOHはエタノール;MeOHはメタノール; CBzはアミン保護基であるベンジルオキシカルボニル;BOCはアミン保護基であるt-ブチルカルボニル; HOAcは酢酸;NaCNBH3はシアノ水素化ホウ素ナトリウム;r.tは室温;O/Nは一晩過ごす;THFはテトラヒドロフラン;Boc2Oはジ-tert-ブチルジカーボネート;TFAはトリフルオロ酢酸;DIPEAはジイソプロピルエチルアミン;SOCl2は塩化チオニル;CS2は二硫化炭素;TsOHはp-トルエンスルホン酸;NFSIは、N-フルオロ-N-(フェニルスルホニル)ベンゼンスルホンアミド;NCSは1-クロロピロリジン-2,5-ジオン;n-Bu4NFはテトラブチルアンモニウムフルオライド;iPrOHは2-プロパノール;mpは融点;LDAはリチウムジイソプロピルアミド;EDCIは1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、dppfは1,1'-ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン、HATUは2-(7-ベンゾトリアゾールオキシド)-N、N、N'、N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート; Ti(i-PrO)4はチタンテトライソプロポキシド;NBSはN-ブロモスクシンイミド、dastは三フッ化ジエチルアミノ硫黄、LiHMDSはリチウムヘキサメチルジシラジド;AIBNはアゾビスイソブチロニトリル;POCl3はオキシ塩化リン;PEG400はポリエチレングリコール400;NMPはN-メチルピロリドン;MOPSは3-モルホリンプロパンスルホン酸を表す。
【0057】
化合物は、手作業またはChemDraw(登録商標)ソフトウェアによって命名され、市販の化合物について、サプライヤのカタログ名を用いる。
【0058】
<技術的効果>
対照化合物1と比較して、本発明の化合物は、同じ多作用性標的を有するだけでなく、ABL、TNIK、FGFR1、FGFR3、FGFR4などの標的において活性が5~10倍向上され、同時に新しいc-Metアクティビティが導入され、IC50値は100nMであった。
【0059】
対照化合物2と比較して、本発明の化合物は、ABL活性がほぼ70倍向上され、TNIKが8倍向上され、これは非常に有意かつ予想外であり;対照化合物3、4、5、6、7と比較して、本発明の化合物において、フッ素と塩素がベンゼン環の同じ側にある場合、他の位置にある場合に比べて、FGFR1とFGFR4、ABLキナーゼに対する阻害活性が有意に向上された。
【0060】
本発明の化合物は、BCR-ABLなど遺伝子融合の癌においてより優れた治療活性を有することができ;これらの幾つかの重要な標的に対する活性の向上により、化合物1Bはより優れた腫瘍治療効果を有することができ、特に、FGFR、c-Metに対する活性の向上は、FGFRおよびc-Metの高発現を伴う胃癌および肺癌の患者においてより優れた治療効果を有する。
【0061】
本発明の化合物は、マウスおよびラット種でより低いクリアランス、より高い経口バイオアベイラビリティ、および優れたドラッガビリティーを有する。
【実施例】
【0062】
本発明は、以下の実施例により詳細に記載されるが、本発明の範囲をこれらに限定することを意図するものではない。本明細書に、本発明を詳細に説明し、本発明の実施形態も開示したが、当業者にとって、本発明の実施形態に対して本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形、変更を行ることは明らかである。
【0063】
【0064】
実施例1A
【化22】
20~30℃で、4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-ホルムアミド(550.0 g)を反応釜に加えた。DMSO(16.5 L)を20~30℃で反応釜に添加した。20~30℃で反応釜に2-フルオロ-3クロロ-4-アミノフェノールを入れた。20~35℃で撹拌しながら反応釜にナトリウムtert-ブトキシド(229 g)をゆっくりと10~15分間かけて加えた。反応釜を1.5時間かけて96℃(内部温度)まで加熱した。反応物を96~100℃で6.5時間撹拌し、4-アミノ-3-クロロ-2フルオロフェノールが残さなかった。反応物を20~30℃までに冷却した。攪拌しながら、23.1 Lの水を反応液にゆっくりと加え、その間で、内部温度を40℃未満に保ちながら、暗褐色の固体が沈殿し出た。30~40℃で0.5時間攪拌した。20~30℃までに冷却し、ろ過した。20~30℃で、ろ過ケーキと水3.5Lを反応釜に加えた。20~30℃で0.5時間攪拌した。ろ過を行った。20~30℃で、ろ過ケーキと水4.0Lを反応釜に加えた。20~30℃で0.5時間攪拌した。ろ過を行い、ろ過ケーキを真空乾燥機で40℃で18時間乾燥した(乾燥剤として五酸化リンを使用し、オイルポンプを使用して真空にした)。固体を粉砕して得た758gのオフホワイトの固体をさらに40℃で18時間乾燥させ(乾燥剤として五酸化リンを使用し、オイルポンプを使用して真空にした)、実施例1Aを得た。
LCMS (ESI) m/z:362.0[M+1]
+
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.68 (br s, 2 H), 7.82 - 7.96 (m, 1 H), 7.67 - 7.82 (m, 1 H), 7.46 - 7.59 (m, 1 H), 7.12 - 7.26 (m, 1 H), 6.67 - 6.80 (m, 1 H), 6.43 - 6.58 (m, 1 H),5.84 (s, 2 H), 4.04 (s, 3 H).
【0065】
実施例1B
【化23】
実施例1A(6.05g)を、NMP(60mL)を含む三つ口フラスコに加えた。ピリジン(1.32 g)およびクロロギ酸フェニル(5.20 g)を反応系に加え、反応系は室温(20~30℃)で1時間攪拌し、生成された中間物が完全に反応され、シクロプロピルアミン(2.84g)も反応系に添加し、反応液を室温(25~30℃)で0.5時間撹拌し、反応を完了させた。反応系に20mLのエタノールを加え、攪拌しながら水道水(500 mL)を反応系に加え、固体を沈殿させ、ろ過し、ろ過ケーキを減圧下で回転乾燥させて粗生成物(濃黄色の固体、5.26 g)を得た。粗生成物をクロマトグラフィーカラム(DCM:MeOH = 20/1~10/1)を経って精製して、生成物(濃黄色の固体、3.12 g)を得、この生成物に4mLの無水エタノールを加え、常温で18時間撹拌し、濾過し、ろ過ケーキを1mLのエタノールで洗浄し、減圧下で乾燥させて、実施例1Bを得た。この化合物について、アセトンまたはエタノール溶液に1当量の塩酸または硫酸またはメタンスルホン酸を加えることにより相応する塩を得た。
LCMS (ESI) m/z:445.0[M+1]
+
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) ppm 8.66 - 8.71 (m, 2 H), 8.12 - 8.20 (m, 2 H), 7.72 - 7.93 (m, 2 H), 7.45 (t, J=9.16 Hz, 1 H), 7.28 (d, J=2.76 Hz, 1 H), 6.58 (d, J=5.02 Hz, 1 H), 4.05 (s, 3 H), 2.56 - 2.64 (m, 1 H), 0.38 - 0.77 (m, 4 H)
【0066】
実施例1
【化24】
実施例1B(1.5g、3.37mmol)をEtOH(45mL)に加え、反応温度を60℃に上げた。この温度で、CH
3SO
3H(324.07mg、3.37mmol、240.05μL)を反応液に滴下し、滴下完了後、反応液を溶解し、攪拌しながら反応液を15~20℃までに自然冷却し、この温度で2時間攪拌した。大量の茶色固体が析出され、ろ過し、ろ過ケーキを無水エタノール(5 mL)で濯ぎ、得たろ過ケーキを50℃で減圧下で回転乾燥させ、精製せずに実施例1を得た。
LCMS (ESI) m/z: 445.0[M+1]
+
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 9.02 (d, J=6.53 Hz, 1 H) 8.72 (s, 1 H) 8.18 - 8.27 (m, 2 H) 7.87 - 8.03 (m, 2 H) 7.65 (s, 1 H) 7.53 (t, J=9.03 Hz, 1 H) 7.32 (br s, 1 H) 7.11 (d, J=6.27 Hz, 1 H) 4.08 (s, 3 H) 2.55 - 2.62 (m, 1 H) 2.35 (s, 3 H) 0.34 - 0.75 (m, 4 H)
【0067】
【0068】
対照例3A
【化26】
4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド(200mg、845.12μmol)、4アミノ-2,5-ジフルオロフェノール(184.13mg、1.01mmol)およびカリウムtert-ブトキシド(113.80mg、1.01 mmol)を一緒に窒素メチルピロリドン(5 mL)を入れたマイクロ波チューブ加え、次にマイクロ波シンセサイザーにより窒素ガスの保護で140℃までに加熱し、且つ攪拌しながら1時間反応させた。反応液を水30mLに加え、固体を析出させ、濾過して、対照例3Aを得た。得られた生成物を精製せずに次のステップで使用した。
LCMS(ESI)m/z: 346.1 [M + H]
+
【0069】
対照例3
【化27】
トリホスゲン(34.38 mg、115.84μmol)を対照例3A(200 mg、579.21μmol)およびトリエチルアミン(175.83 mg、1.74 mmol、241.86μL)を入れたジクロロメタン(5 mL)に加え、窒素ガスの保護下15~20℃で15分間攪拌した。次いで、シクロプロピルアミン(66.14 mg、1.16 mmol、80.27 uL)を撹拌している反応液に加え、最後に、反応液を窒素ガスの保護下15~20℃で撹拌しながら45分間反応させた。反応液を直接に回転乾燥させ粗生成物を得た。粗生成物を高速液体クロマトグラフィー(TFAシステム)で分離精製し、対照化合物3を得た。対照化合物3をジクロロメタンにおいて、その後1N炭酸水素ナトリウムで洗浄することにより、遊離塩基が得られた。
LCMS(ESI)m/z: 429.2[M + H]
+
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) δ 9.03 (s, 1H), 8.90 (d, J=6.8 Hz, 1H), 8.29~8.34 (m, 1H), 7.60 (s, 1H), 7.44~7.68 (m, 1H), 7.03 (d, J=6.0 Hz, 2H), 4.21 (s, 3H), 2.63~2.68 (m, 1H), 0.79~0.80 (m, 2H), 0.55 (s, 2H)
【0070】
【0071】
対照例4A
【化29】
対照例4Aは、対照例3Aの調製方法を使用して、製品を得た。
LCMS(ESI)m/z: 346.1 [M + H]
+
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) δ 8.66~8.73 (m, 2H), 7.80 (s, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.49~7.57 (m, 1H), 7.02 (t, J=8.0 Hz, 1H), 6.68 (t, J=8.0 Hz, 1H), 6.49~6.54(m, 1H), 5.63 (s, 2H), 4.03 (s, 3H)
【0072】
対照例4
【化30】
トリホスゲン(34.38 mg、115.84μmol)を、実施例1A(200 mg、579.21μmol)およびトリエチルアミン(175.83 mg、1.74 mmol、241.86μL)を入れたジクロロメタン(5 mL)に加え、窒素ガスの保護下15~20℃で15分間攪拌した後、シクロプロピルアミン(66.14mg、1.16mmol、80.27μL)を攪拌している反応液に加え、最後に、反応液を窒素ガスの保護下15~20℃で攪拌しながら45分間反応させた。反応液を直接に回転乾燥させ粗生成物を得た。粗生成物を高速液体クロマトグラフィー(HCl条件)に導入し、生成物を得た。最終的に対照化合物4を得た。対照化合物4をジクロロメタンにおいて、その後1N炭酸水素ナトリウムで洗浄することにより、遊離塩基が得られた。
LCMS(ESI)m/z: 429.2 [M + H]
+
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) δ 9.05 (s, 1H), 8.97 (d, J=6.8 Hz, 1H), 8.07 (s, 1H), 7.65 (s, 1H), 7.30~7.34 (m, 1H), 7.16 (d, J=6.8 Hz, 2H), 4.24 (s, 3H), 2.63~2.68 (m, 1H), 0.78~0.82 (m, 2H), 0.57 (s, 2H)
【0073】
【0074】
対照例5A
【化32】
4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-ホルムアミド(200mg、845.12umol)および4-アミノ-5-クロロ-2フルオロ-フェノール(341.35mg、2.11mmol)の窒素メチルピロリドン(2mL)反応液にCs
2CO
3(550.71 mg、1.69 mmol)を加え、マイクロ波条件下140℃までに加熱して2時間反応させた。LCMS(es8146-386-p1a)により原料の一部が反応していないことを検出し、反応液をゆっくりと氷水(10 mL)に滴下し、大量の固体が析出され、ろ過し、ろ過ケーキが真空下で回転乾燥させ、対照例5Aを得た。LCMS (ESI) m/z: 384.1[M+23]
+
【0075】
対照例5
【化33】
対照例5A(50 mg、138.22μmol)をジクロロメタン(5 mL)に加え、攪拌しながらトリホスゲン(32.81 mg、110.57μmol)およびジイソプロピルエチルアミンDIEA(53.59 mg、414.65μmol、72.22μL)を反応液に加え、反応系を15~20℃で15分間攪拌し、シクロプロピルアミン(15.78mg、276.43umol、19.15μL)を反応液に加え、反応液を室温で30分間攪拌し続け、LCMSで、原料の反応が完了したことを示し、反応液を直接に減圧下濃縮して粗生成物を得、粗組成物を高速液体クロマトグラフィー(TFA条件)により分離精製して、対照化合物5を得た。対照化合物5をジクロロメタンにおいて、その後1N炭酸水素ナトリウムで洗浄することにより遊離塩基を得た。
LCMS (ESI) m/z: 467.1[M+23]
+
1H NMR (400 MHz, METHANOL-d4) δ ppm 9.03 (s, 1 H) 8.89 (d, J=6.52 Hz, 1 H) 8.39 (d, J=13.30 Hz, 1 H) 7.68 (d, J=8.03 Hz, 1 H) 7.60 (s, 1 H) 7.01 (d, J=7.03 Hz, 1 H) 4.21 (s, 3 H) 2.61 - 2.72 (m, 1 H) 0.50 - 0.86 (m, 4 H)
【0076】
【0077】
対照例6A
【化35】
対照例6Aについて、対照例5Aの調製方法を使用して、製品を得た。
LCMS (ESI) m/z:328.2[M+1]
+
【0078】
対照例6
【化36】
対照例6A(50 mg、152.76μmol)を塩化メチレン(5 mL)に加え、撹拌しながらトリホスゲン(36.27 mg、122.21μmol)およびDIEA(59.23 mg、458.28μmol、79.82μL)を反応液に加え、反応系を15~20℃で15分間撹拌し、反応液にシクロプロピルアミン(17.44mg、305.52μmol、21.17μL)を入れ、反応液を室温で30分間撹拌し続け、LCMSで、原料の反応が完了したことを示し、反応液を直接に減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を高速液体クロマトグラフィー(TFA条件)で分離精製し、対照化合物6を得た。対照化合物6をジクロロメタンにおいて、その後1N炭酸水素ナトリウムで洗浄することにより遊離塩基を得た。
LCMS (ESI) m/z: 411.0[M+1]
+
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) δ ppm 9.12 (s, 1 H) 8.38 (d, J=7.03 Hz, 1 H) 7.54 (t, J=8.66 Hz, 1 H) 7.41 (s, 1 H) 7.25 - 7.33 (m, 1 H) 7.19 (br d, J=8.78 Hz, 1 H) 6.61 (br d, J=5.27 Hz, 1 H) 4.18 (s, 3 H) 0.55 - 0.90 (m, 4 H)
【0079】
【0080】
対照例7A
【化38】
対照例7Aについて、対照例3Aの調製方法を使用して、製品を得た。
LCMS(ESI)m/z: 362.1 [M + H]
+
【0081】
対照例7
【化39】
トリホスゲン(34.38 mg、115.84μmol)を対照例7A(50 mg、138.22μmol)およびトリエチルアミン(41.96 mg、414.65μmol、57.71μL)を入れたジクロロメタン(2 mL)に加え、窒素ガスの保護下15~20℃で10分間攪拌した後、シクロプロピルアミン(15.78mg、276.43μmol、19.15μL)を攪拌している反応液に加え、最後に、反応液を窒素ガスの保護下で15~20℃で撹拌しながら50分間反応させた。反応液を直接に回転乾燥させて粗生成物を得、これを高速液体クロマトグラフィー(TFA条件)で分離精製して、最終的に対照化合物7を得、LCMSおよびNMRで検出した。対照例7をジクロロメタンにおいて、その後1N炭酸水素ナトリウムで洗浄することにより遊離塩基を得た。
LCMS(ESI)m/z: 445.2 [M + H]
+
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) δ 8.94 (s, 1H), 8.72 (d, J=5.2 Hz, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.34 (m, 1H), 7.20~7.24 (m, 1H), 6.90 (d, J=5.2 Hz, 1H), 4.15 (s, 3H), 2.62~2.68 (m, 1H), 0.80~0.81 (m, 2H), 0.61 (s, 2H)
【0082】
生物学的試験データ:
実験例1:本発明の化合物のインビトロ酵素活性試験
実験目的
Z’-LYTETM Detection Kinase Assayを使用して酵素活性を検出し、化合物のIC50値を、ABL、c-Met、TNIK、FGFR1-4、Flt1、Flt4、KDR、MINK、LCK、cKIT、PDGFRα、PDGFRβ、cKit(V560G)との17種キナーゼに対する化合物1Bとロバチニブ(Lenvatinib)、および対照化合物2の阻害作用を評価するための指標として使用した。
【0083】
実験方法
c-Met、FGFR1、FGFR4の三つのキナーゼの測定において使用した化合物を10μMから0.038nMまで4倍濃度希釈し、残りのキナーゼの測定において使用した化合物をそれぞれに最終濃度が10μM~1nMの9個濃度になるように3倍濃度希釈し、濃度ごとに二重複製ウェルで行い、検出反応におけるDMSOの含有量は2%であった。
一般的な酵素の反応プロセス:
対応する酵素の濃度がXであるプロテインキナーゼ(表1を参照)、ペプチド基質のY濃度、ATP濃度、8 mM MOPS(pH 7.0)、10 mM MgCl
2を加えた。検出プレートはP30フィルターマット(P30 filtermat)であり、室温でT分間反応させ、反応系は10μlであった。
【表1】
【0084】
反応検出:
0.5%濃度のリン酸をキナーゼ反応液に加えることにより反応を終了させ、プレートをEnvision機器で読み取った。
【0085】
データ分析
データをリン酸化率と阻害率に変換し、パラメーター曲線あてはめ(GraphPad Software)により、化合物のIC
50のデータを得た。
実験結果を表2に示した:
【表2】
【0086】
【0087】
実験結論:
表2において、対照化合物1と比較して、実施例1Bは、複数のキナーゼの活性が有意に向上され、そのうち、C-Metの活性が5倍向上され、TNIKの活性が6.5倍向上され、ABLの活性が5倍向上され、FGFRの各サブタイプの活性が有意に向上され、FGFR1が8倍、FGFR2が2倍、FGFR3が5倍、FGFR4が12倍に向上された。これらの重要な標的に対する活性の向上により、化合物1Bがより優れた腫瘍治療効果を持つことができ、特にFGFRおよびc-Metに対する活性の向上は、FGFRおよびc-Metが高発現している胃癌、肺癌等の患者に対してより優れた治療結果を持つことができた。
【0088】
対照化合物2と比較して、実施例1Bは、ABLの活性をほぼ70倍大幅に改善し、TNIKを8倍増加し、これは非常に予想外のことであり、BCR-ABLなど遺伝子融合の癌において、より優れた治療活性を持つことができた。
【0089】
表3は、対照化合物3、4、5、6、および7と比較して、実施例1Bは、フッ素および塩素がベンゼン環の同じ側にある場合が、他の位置にある場合に比べて、FGFR1とFGFR4、ABLキナーゼに対する阻害活性が大幅に向上された。
【0090】
実験例2:化合物の薬物代謝動態学研究
実験目的:マウスへの静脈内および経口投与によって、実施例1の動物経口吸収を評価する。
実験材料:Balb / cヌードマウス、EDTA-K2
実験操作:
実験手順:0.5 mg / ml 5%DMSO / 95%(10%HP-β-CD)試験実施例1の透明な溶液を尾静脈から雄Balb / cマウス体内(一晩絶食、7~9週齢)に1mg / kgの用量で注射した。0.5%Methocel / 0.2%Tween 80に懸濁した0.5 mg / mlの試験化合物を、5 mg / kgの用量で雄Balb / cマウス(一晩絶食、7~9週齢)に胃内投与した。両群の動物の全てに対して、投与後0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、8.0、および24時間で約30μLの血液を頸静脈または尾静脈から採取し、この血液をEDTA-K2を加えた抗凝固チューブに入れ、血漿を遠心分離した。LC-MS / MS法により血漿における薬物濃度を測定し、WinNonlinTM Version 6.3 (Pharsight, Mountain View, CA)である薬物動態学ソフトウェアを用いて、ノンコンパートメントモデル線形対数台形法により、関連する薬物代謝動態学的パラメーターを計算した。
【0091】
実験結果:
雄Balb / cマウスに実施例1を1.0 mg / kgで単回静脈内注射した後、その血漿クリアランス(CL)は11 mL /min/ kgで、定常状態見かけ分布体積(Vdss)は1.48 L /kgで、消失半減期(T1/2)および0から最後一つの定量可能な時点までの薬物血中濃度-時間曲線下面積(AUC0-last)の値は、それぞれ2.68 hおよび3213 nMhであった。
【0092】
雄Balb / cマウスに5 mg / kgで実施例1を単回胃内投与した後、そのバイオアベイラビリティは144%、AUC0-lastは24899 nMh、ピーク濃度(Cmax)は9825 nMであり、ピーク時間は投与0.5時間後の時点に現れた。
【0093】
実験例3:化合物の薬物代謝動態学の評価
実験目的:ラットへの静脈内および経口投与によって、実施例1の動物経口吸収を評価する。
実験材料:雄SDラット、EDTA-K2
実験操作:
実験手順:0.5 mg / ml 5%DMSO / 95%(10%HP-β-CD)の試験実施例1または対照化合物1の透明溶液を雄SDラット体内(一晩絶食、7~11週齢)に尾静脈から1mg / kgの用量で注射した。0.5%Methocel / 0.2%Tween 80に懸濁した0.5 mg / mlの試験化合物を、5 mg / kgの用量で雄SDラット(一晩絶食、7~11週齢)に胃内投与した。両群の動物の全てに対して、投与後0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、8.0、および24時間で約30μLの血液を頸静脈または尾静脈から採取し、この血液をEDTA-K2を加えた抗凝固チューブに入れ、血漿を遠心分離した。LC-MS / MS法を使用して血漿における薬物濃度を測定し、WinNonlinTM Version 6.3 (Pharsight, Mountain View, CA)である薬物動態学ソフトウェアを用いてノンコンパートメントモデル線形対数台形法により、関連する薬物代謝動態学的パラメーターを計算した。
【0094】
実験結果:
実施例1:
雄SDラットに実施例1を1.0mg / kgで単回静脈内注射した後、その血漿クリアランス(CL)は1.6mL / min / kgで、定常状態見かけ分布体積(Vdss)は0.259L / kgで、消失半減期(T1/2)および0から最後一つの定量可能な時点までの薬物血中濃度-時間曲線下面積(AUC0-last)の値は、それぞれ2.64hおよび23441nM・hであった。
【0095】
雄SDラットに5 mg / kgで実施例1を単回胃内投与した後、そのバイオアベイラビリティは60.8%、AUC0-lastは71053 nM・h、ピーク濃度(Cmax)は19600 nMであり、ピーク時間は投与0.375時間後の時点に現れた。
【0096】
対照化合物1:
雄SDラットに1.0 mg / kgで対照化合物1を単回静脈内注射した後、その血漿クリアランス(CL)は2.6 mL / min / kgで、定常状態見かけ分布体積(Vdss)は0.407 L / kgで、消失半減期(T1/2)および0から最後一つの定量可能な時点までの薬物血中濃度-時間曲線下面積(AUC0-last)の値は、それぞれ2.53hおよび15149nM・hであった。
【0097】
雄SDラットに5 mg / kgで対照化合物1を単回胃内投与した後、そのバイオアベイラビリティは58.7%、薬物血中濃度-時間曲線下面積(AUC0-last)は44476 nM・h、ピーク濃度(Cmax)は10095 nMであり、ピーク時間は投与1.25時間後の時点に現れた。
【0098】
対照化合物1と比較して、実施例1のラットの薬物代謝動態学データは、血漿クリアランスが約:(2.6-1.6)/2.6*100%=38%減少したことを示した。静脈内投与の場合、薬物血中濃度-時間曲線下面積¥(AUC0-last)が有意に増加した:(23441-15149)/ 15149 * 100%= 55%;経口吸収の場合、薬物血中濃度-時間曲線下面積(AUC0-last)は有意に増加した:(71053-44476)/ 44476 * 100%= 27%。
結論:本発明の実施例1は、マウスおよびラット種において低いクリアランス、高い経口バイオアベイラビリティ、および優れたドラッガビリティーを有する。対照化合物1(市販薬ロバチニブ)と比較して、キノリンの母核構造のベンゼン環にF原子を導入して、ラット体内の薬物代謝率が大幅に低下させ、薬物の経口吸収曝露が大幅に増加させる。