(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】無線給電センシングシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20221116BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20221116BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20221116BHJP
【FI】
H02J7/00 301D
H02J7/00 302B
H02J7/00 B
H02J50/20
H02J50/80
(21)【出願番号】P 2020521829
(86)(22)【出願日】2019-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2019018926
(87)【国際公開番号】W WO2019230355
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018104302
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 博之
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-513681(JP,A)
【文献】国際公開第2015/099159(WO,A1)
【文献】特開2007-089341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 50/20
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間に電力を発振し、情報を受信する送受信器と、
前記電力を受信し、センシングを行う受電センサと、を含み、
前記送受信器は、
前記電力を生成する発振部と、
前記電力を前記空間に放射させるとともに、前記受電センサにおける前記電力の供給動作を指示する第2制御部と、を有し、
前記受電センサは、
前記電力を蓄積する電池と、
前記センシングを行うセンサ部と、
前記センサ部の消費電力量を計測する制御部と、を有し、
前記情報は、
所定の時刻における前記消費電力量を含み、
前記第2制御部は、
前記消費電力量および前記情報の電波強度から前記電池の充電量を推定し、
前
記電池の充電量が予め定められた閾値以上である第1モードの場合、前記受電センサで受電された前記電力が前記センサ部に供給されるように指示する制御情報を前記受電センサに送信し、
前記電池の充電量が前記閾値未満である第2モードの場合、前記受電センサで受電された前記電力が前記電池に供給されるように指示する制御情報を前記受電センサに送信する、
無線給電センシングシステム。
【請求項2】
前記第2制御部は、
複数の前記受電センサの前記電池の充電量を比較し、
前記充電量が最も多い受電センサに対し、前記電池に蓄積された電力が前記センサ部に供給されるように指示する制御情報を送信し、
前記充電量が最も多い受電センサ以外の受電センサに対し、受電された前記電力が前記電池へ供給されるように指示する制御情報を送信する、
請求項
1に記載の無線給電センシングシステム。
【請求項3】
前記第2制御部は、
前記受電センサから前記センサ部によるセンシングの結果を示すセンシング情報を受信した場合、該センシング情報を所定の記憶部に記憶させる、
請求項
1に記載の無線給電センシングシステム。
【請求項4】
前記受電センサは、ウェアラブルセンサである、
請求項
1に記載の無線給電センシングシステム。
【請求項5】
前記受電センサは、
前記電池に蓄積された電力を、前記センサ部へ供給する第1制御部を更に備え、
前記第1制御部は、
前記制御情報が前記第1モードを示す場合、前記受電センサで受電された前記電力を前記センサ部に供給するように制御し、
前記制御情報が前記第2モードを示す場合、前記受電センサで受電された前記電力を前記電池に供給するように制御する、
請求項
1に記載の無線給電センシングシステム。
【請求項6】
前記送受信器1つに対して、前記受電センサが複数ある、
請求項
1に記載の無線給電センシングシステム。
【請求項7】
前記受電センサ1つに対して、前記センサ部が複数種類ある、
請求項
1に記載の無線給電センシングシステム。
【請求項8】
前記送受信器は、
前記電力を前記空間に放射し、前記受電センサと情報の送受信を行うアンテナを有する、
請求項
1に記載の無線給電センシングシステム。
【請求項9】
前記受電センサは、
前記送受信器からの電力を受ける受電用アンテナと、
前記送受信器と情報の送受信を行う通信用アンテナと、を有する、
請求項
1に記載の無線給電センシングシステム。
【請求項10】
前記受電用アンテナと、前記通信用アンテナとは、共通する1つのアンテナである、
請求項
9に記載の無線給電センシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信を用いて電力供給および情報送信を行う無線給電センシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人の身体に装着されるウェアラブルセンサが開発されている。ウェアラブルセンサは、人の動きまたは健康状態などを示す情報を自動的に収集する。その情報を分析することで、危険予知(見守り)または健康管理などに活用されることが期待されている。
【0003】
例えば、介護施設等において、ウェアラブルセンサにより高齢者の動きを検知することで、転倒事故にいち早く気づくことができ、さらには、動きの兆候を分析して、転倒を事前に防ぐことが可能となる。また、ウェアラブルセンサにより体温や脈などを継続的にセンシングすることで、病気や体調不良の兆候に気づくことが可能となる。
【0004】
このようなウェアラブルセンサの形態は様々である。例えば、バンドタイプで腕に巻くものや、絆創膏や湿布のように身体に貼り付けるものなどがある。ウェアラブルセンサは、常時身に着けられることを想定して、できるだけ身体への負担がないように開発されている。例えば、特許文献1には、身体に貼り付けるタイプであって、様々な生体情報をセンシングできるウェアラブルセンサが開示されている。
【0005】
このようなウェアラブルセンサの多くは、電池を電源としている。よって、定期的に電池の充電や交換が必要となる。現在市販されているセンサでは、常時センシングを行った場合、数10時間程度で電池が切れることが一般的である。例えば見守り用のウェアラブルセンサでは、常時センシングを行う必要があることから、電池の充電や交換を定期的に行うことは困難である。
【0006】
したがって、ウェアラブルセンサでは、電池の充電や交換の必要なく、永続的にセンシングを実行できることが求められている。
【0007】
そのために、例えば、エナジーハーベスト(環境発電)による電力をウェアラブルセンサの電源として活用する方法が考えられる。光や振動、熱などから電気を生み出された電力をウェアラブルセンサに供給することで、電池を備えないウェアラブルセンサを実現できる可能性がある。
【0008】
しかしながら、エナジーハーベストで用いられる発電デバイスは、所定の条件下でなければ十分な発電を行うことができない。そのため、必要な電力を常にウェアラブルセンサに供給することは難しい。
【0009】
そこで、無線給電方法をウェアラブルセンサに適用することが考えられる。無線給電方法は、例えば、屋内の所定の場所に設置された送電器から無線送信された電力を、その送電器から見通しの良い範囲内に存在するセンサが受電する方法である。
【0010】
図5を用いて、従来の無線給電センシングシステムについて説明する。
図5は、従来の無線給電センシングシステムの一例を示す模式図である。
【0011】
図5に示すように、無線給電センシングシステムは、送電器101と、複数の受電機能付きセンサ104とを有する。
【0012】
送電器101は、高周波の発振部102およびアンテナ103を有する。受電機能付きセンサ104は、アンテナ105およびセンサ106を有する。
【0013】
発振部102で生成された高周波電力は、アンテナ103から電磁波として放射され、空間を伝わり、各受電機能付きセンサ104へ到達し、アンテナ105で受電される。受電された高周波電力は、直流電力に変換された後、情報収集を行うセンサ106の電源として活用される。
【0014】
図5に示した無線給電センシングシステムでは、送電器101から電波が届く範囲にある受電機能付きセンサ104へ電力を供給することが可能となる。よって、受電機能付きセンサ104では、電池の充電および交換が不要となり、さらには、給電用の配線も不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述した従来の無線給電センシングシステムでは、送電器101のアンテナ103と受電機能付きセンサ104のアンテナ105との位置関係に応じて、供給電力にばらつきが生じる。
【0017】
すなわち、アンテナ103の送電方向とアンテナ105の受電方向とが一致している場合、供給電力は多くなる。その一方で、アンテナ103の送電方向とアンテナ105の受電方向と一致していない場合(例えば、両方向が反対である場合)、供給電力は少なくなる。
【0018】
受電機能付きセンサ104をウェアラブルセンサに適用した場合、人の動きに伴ってアンテナ105の受電方向の変化が多くなる。よって、アンテナ105の受電方向がアンテナ103の送電方向と一致しない場合が多発する。その結果、センサ106の動作に必要な電力が供給されず、センサ106が情報収集を行うことができないおそれがある。
【0019】
本開示の一態様の目的は、受電方向が変化しても、安定して情報収集を行うことができる無線給電センシングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本開示の一態様に係る無線給電センシングシステムは、空間に電力を発振し、情報を受信する送受信器と、前記電力を受信し、センシングを行う受電センサと、を含み、前記送受信器は、前記電力を生成する発振部と、前記電力を前記空間に放射させるとともに、前記受電センサにおける前記電力の供給動作を指示する第2制御部と、を有し、前記受電センサは、前記電力を蓄積する電池と、前記センシングを行うセンサ部と、前記センサ部の消費電力量を計測する制御部と、を有し、前記情報は、所定の時刻における前記消費電力量を含み、前記第2制御部は、前記消費電力量および前記情報の電波強度から前記電池の充電量を推定し、前記電池の充電量が予め定められた閾値以上である第1モードの場合、前記受電センサで受電された前記電力が前記センサ部に供給されるように指示する制御情報を前記受電センサに送信し、前記電池の充電量が前記閾値未満である第2モードの場合、前記受電センサで受電された前記電力が前記電池に供給されるように指示する制御情報を前記受電センサに送信する。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、受電方向が変化しても、安定して情報収集を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の実施の形態に係る無線給電センシングシステムの構成例を示す模式図
【
図2】本開示の実施の形態に係る無線給電センシングシステムの動作例を示すフローチャート
【
図3】本開示の実施の形態に係る受電センサの構成例を示すブロック図
【
図4】本開示の変形例2に係る受電センサの構成例を示すブロック図
【
図5】従来の無線給電センシングシステムの一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0026】
<無線給電センシングシステム1の構成>
まず、本開示の実施の形態に係る無線給電センシングシステム1の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施の形態の無線給電センシングシステム1の構成例を示す模式図である。
【0027】
無線給電センシングシステム1は、送受信器201および受電センサ204(ともに無線給電センシング装置の一例)を有する。受電センサ204は、例えば、ウェアラブルセンサである。なお、
図1では例として、2つの受電センサ204を図示しているが、受電センサ204の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0028】
送受信器201は、発振部102、アンテナ203、および制御部202を有する。
【0029】
発振部102は、水晶振動子、位相同期回路(PLL(Phase Locked Loop)回路)、増幅回路(AMP)などの電気回路で構成され、例えば商用電源から高周波電力を生成する。生成される周波数は、送電する距離や送受信器201のサイズに応じて、選択される。選択される周波数としては、900MHz帯、2.45GHz帯、5.8GHz帯などのマイクロ波帯が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
アンテナ203は、発振部102で生成された高周波電力を電波(電磁波)として空間へ放射する。
【0031】
また、アンテナ203は、受電センサ204から送信された通知情報を受信する。通知情報は、例えば、受電センサ204を識別可能なID情報と、センサ部207による検知結果を示すセンシング情報または2次電池208の充電量を示す充電量情報のいずれかと、を含む。
【0032】
また、アンテナ203は、受電センサ204の動作を制御する制御情報を、受電センサ204へ送信する。制御情報は、受電センサ204を第1モードまたは第2モードのいずれかで動作させるための情報である。第1モードおよび第2モードについては後述する。
【0033】
なお、アンテナ203としては、指向性アンテナまたは無指向性アンテナのいずれかを用いることができる。ある特定の方向へ長距離送電したい場合には、指向性アンテナを用いればよく、近距離で広い範囲に送電したい場合には、無指向性アンテナを用いればよい。
【0034】
指向性アンテナとしては、例えば、誘電体基板をGND板とアンテナ板とで挟んだ平面状のパッチアンテナが挙げられる。一方、無指向性アンテナとしては、例えば、電気を流す導線などを直線状に伸ばした線状のダイポールアンテナまたはモノポールアンテナが挙げられる。
【0035】
制御部202(第2制御部の一例)は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、RAM(Random Access Memory)等の作業用メモリ、および通信回路(いずれも図示略)を有する。後述する制御部202の各機能は、CPUがコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0036】
制御部202は、発振器102で生成された高周波電力をアンテナ203へ出力し、その高周波電力を電磁波として空間へ放射するようにアンテナ203を制御する。
【0037】
また、制御部202は、アンテナ203が通知情報を受信した場合、その通知情報に基づいて、受電センサ204に指示すべき電源モードを判定する。電源モードとしては、受電した電力をセンサ部207に供給する第1モードと、受電した電力を2次電池208に供給する第2モードとがある。
【0038】
そして、制御部202は、第1モードまたは第2モードのいずれかを示す制御情報を受電センサ204へ送信するようにアンテナ203を制御する。
【0039】
また、制御部202は、受信した通知情報を所定の記憶部(図示略)に記憶させてもよい。この記憶部は、送受信器201(制御部202)に備えられた記憶デバイスであってもよいし、送受信器201の外部に設けられた記憶デバイスであってもよい。
【0040】
受電センサ204は、アンテナ205、センサ部207、2次電池208、および制御部206を有する。
【0041】
アンテナ205は、アンテナ203と同じ種類のアンテナである。
【0042】
アンテナ205は、送受信器201から放射された電磁波を受信する。
【0043】
また、アンテナ205は、通知情報を送受信器201へ送信する。
【0044】
また、アンテナ205は、送受信器201から制御情報を受信する。
【0045】
センサ部207は、1つ以上のセンサデバイス(
図3参照)で構成される。センサデバイスは、例えば、人の動きを検知する加速度センサでもよいし(見守り用の場合)、体温を検知するセンサや心拍数を検知するセンサ(健康管理用の場合)でもよい。
【0046】
センサ部207は、検知の結果を示す信号を、制御部206へ出力する。
【0047】
2次電池208(電池の一例)は、制御部206から供給された直流電力(詳細は後述)を蓄積する。また、2次電池208は、制御部206の制御により、蓄積している電力をセンサ部207へ供給する。
【0048】
2次電池208としては、例えば、短時間で小容量の電力を蓄積し、その電力を放出するキャパシタ、または、長期間蓄電しながら電力の放出を行う蓄電デバイス(リチウムイオン電池等)が挙げられる。
【0049】
制御部206(第1制御部の一例)は、制御部202と同様に、例えば、CPU、制御プログラムを格納したROM等の記憶媒体、RAM等の作業用メモリ、および通信回路(いずれも図示略)を有する。後述する制御部206の各機能は、CPUがコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0050】
制御部206は、アンテナ205により受信された高周波電力を直流電力へ変換し、その直流電力をセンサ部207または2次電池208に供給する。
【0051】
直流電力の供給先は、送受信器201から受信した制御情報に基づいて決定される。すなわち、制御部206は、制御情報が第1モードを示す場合、センサ部207に直流電力を供給し、制御情報が第2モードを示す場合、2次電池208に直流電力を供給(充電)する。
【0052】
なお、直流電力は、制御部206自身を作動させる電源としても使用される。
【0053】
また、制御部206は、2次電池208に蓄積(充電)された電力をセンサ部207に供給するように制御する。
【0054】
また、制御部206は、センサ部207から受け取った信号に基づいて、センサ部207による検知結果を示すセンシング情報を生成する。
【0055】
また、制御部206は、2次電池208の充電量を計測し、計測結果を示す充電量情報を生成する。
【0056】
また、制御部206は、通知情報を送受信器201へ送信するようにアンテナ205を制御する。上述したとおり、この通知情報には、ID情報のほか、センシング情報または充電量情報のいずれかが含まれる。ID情報は、例えば、制御部206自身が保有している。
【0057】
制御部206の構成の詳細については、
図3を用いて後述する。
【0058】
<無線給電センシングシステム1の動作>
次に、無線給電センシングシステム1の動作について、
図2を用いて説明する。
図2は、無線給電センシングシステム1の動作例を示すフローチャートである。以下では、送受信器201と、1つの受電センサ204との間で処理が行われる場合を例に挙げて説明する。
【0059】
まず、送受信器201は、初期動作を実行するか否かを判定する(ステップS1)。
【0060】
初期動作とは、送受信器201が、受電センサ204から2次電池208の充電量情報を取得する動作である。初期動作は、例えば、無線給電センシングシステム1(または、送受信器201)の立ち上げ時、または、一日の所定の時刻に実行される。実行のタイミングは、ユーザが任意に設定できる。
【0061】
初期動作を実行しない場合(ステップS1:NO)、フローは、後述のステップS5へ進む。
【0062】
初期動作を実行する場合(ステップS1:YES)、送受信器201は、送電(高周波電力の放射)を開始するとともに、受電センサ204に2次電池208の充電量を問い合わせる(ステップS2)。
【0063】
受電センサ204は、電力の受電により動作を開始し、2次電池208の充電量を計測する(ステップS3)。
【0064】
受電センサ204は、通知情報を送受信器201へ送信する(ステップS4)。ここでの通知情報には、ID情報および充電量情報が含まれる。
【0065】
送受信器201は、受信した充電量情報に基づいて、受電センサ204の電源モードを判定する(ステップS5)。この電源モードの判定方法の詳細については、後述する。
【0066】
送受信器201は、判定された電源モード(第1モードまたは第2モード)を示す制御情報を受電センサ204へ送信する(ステップS6)。
【0067】
受電センサ204は、受信した制御情報に示される第1モードまたは第2モードのいずれかでの動作を開始する(ステップS7)。
【0068】
受電センサ204は、通知情報を送受信器201へ送信する(ステップS8)。ここでの通知情報には、ID情報およびセンシング情報が含まれる。
【0069】
上述したステップS1~S8は、一定の間隔をおいて繰りかえし行われる。その間隔は、ユーザが任意に設定できる。例えば、受電センサ204が見守り用ウェアラブルセンサである場合、送受信器201は、常時センシング情報を収集する必要があるため、設定される間隔は、数秒程度が望ましい。
【0070】
なお、
図1に示すように、1つの送受信器201に対して複数の受電センサ204が存在する場合、上述したステップS1~S8は、受電センサ204毎に順次行われる。
【0071】
<電源モードの判定方法>
送受信器201の制御部202が行う電源モードの判定方法(
図2に示したステップS5)の具体例について説明する。
【0072】
まず、送受信器201は、所定の時刻における2次電池208の充電量を推定する。
【0073】
この推定処理には、受電センサ204から受信した充電量情報に示される初期状態での充電量(以下、単に「充電量」という)、受電センサ204が受電した電力量(以下、受電電力量という)、および、センサ部207が消費した電力量(以下、消費電力量という)が用いられる。初期状態での充電量とは、受電センサ204が送受信器201から充電量の問い合わせを受けたときに計測された2次電池208の充電量である。また、消費電力量は、例えば、電源モードの判定の度に、制御部206によって、センサ部207の電圧値および電流値に基づいて計測される。そして、計測された消費電力量は、例えば、送受信器201へ送信される充電量情報に含まれる。
【0074】
受電電力量は、送受信器201が受信する通知情報(ID情報および充電量情報)の電波強度と相関がある。よって、送受信器201は、受信した通知情報の電波強度に一定の相関係数を乗算することで、受電電力量を推定できる。
【0075】
そして、所定の時刻tにおける充電量P(t)は、以下の式(1)により算出される。
【数1】
【0076】
上記式(1)において、P(0)は、初期状態での充電量である。また、Pi(t)は、時刻tにおける通知情報の電波強度である。また、Ps(t)は、時刻tにおける消費電力量である。また、Kは、相関係数である。
【0077】
次に、送受信器201は、上記式(1)を用いて算出した充電量に基づいて、受電センサ204に指示すべき電源モードを判定する。
【0078】
この判定処理には、予め実施された実験やシミュレーションの結果に基づいて定められた閾値が用いられる。
【0079】
送受信器201は、算出された充電量が閾値以上である場合、指示すべき電源モードが第1モード(センサ部207へ電力を供給するモード)であると判定する。一方、送受信器201は、算出された充電量が閾値未満である場合、指示すべき電源モードが第2モード(2次電池208へ電力を供給するモード)であると判定する。
【0080】
<受電センサ204の構成>
受電センサ204の構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、受電センサ204の構成例を示すブロック図である。
【0081】
図3に示すように、アンテナ205は、受電用アンテナ301および通信用アンテナ302を含む。
【0082】
受電用アンテナ301は、送受信器201から放射された高周波電力の受電に用いられる。
【0083】
通信用アンテナ302は、送受信器201との間でやり取りされる情報(例えば、通知情報、制御情報)の送受信に用いられる。
【0084】
図3に示すように、センサ部207は、センサデバイス207a、207bを含む。
【0085】
上述したとおり、センサデバイス207a、207bは、例えば、人の動き、体温、または、心拍数などを検知(センシング)するセンサデバイスである。なお、
図3の例では、2つのセンサデバイスを示したが、センサデバイスの数は2つに限定されない。センサデバイスの数は、供給される電力の範囲内で増やすことができる。
【0086】
図3に示すように、制御部206は、整流部303、電源制御部304、情報処理部305、および通信部306を有する。
【0087】
整流部303は、受電用アンテナ301で受電された高周波電力を直流電力に変換する。
【0088】
電源制御部304は、整流部303からの直流電力を、情報処理部305および通信部306へ供給する。
【0089】
また、電源制御部304は、通信用アンテナ302で受信された制御情報が第1モードを示す場合、整流部303からの直流電力をセンサ部207(センサデバイス207a、207b)へ供給する。一方、電源制御部304は、通信用アンテナ302で受信された制御情報が第2モードを示す場合、整流部303からの直流電力を2次電池208へ供給する。
【0090】
また、電源制御部304は、整流部303からの直流電力が受電センサ204(例えば、情報処理部305、通信部306、センサ部207)の動作に必要な電力量に満たない場合、2次電池208に蓄えられている電力を、情報処理部305、通信部306、およびセンサ部207に供給する。
【0091】
また、電源制御部304は、2次電池208の充電量を計測し、計測結果を示す信号を情報処理部305へ出力する。
【0092】
通信部306は、通知情報を送受信器201へ送信するように通信用アンテナ302を制御する。
【0093】
また、通信部306は、通信用アンテナ302で受信された情報(例えば、充電量の問い合わせ情報、制御情報)を電源制御部304へ出力する。
【0094】
情報処理部305は、センサ部207から検知結果を示す信号を取得し、その信号に基づいてセンシング情報を生成する。
【0095】
また、情報処理部305は、電源制御部304から計測結果を示す信号を取得し、その信号に基づいて充電量情報を生成する。
【0096】
また、情報処理部305は、ID情報を所定の記憶部(図示略)から読み出し、そのID情報と、充電量情報またはセンシング情報のいずれかと、を含む通知情報を生成する。情報処理部305は、通知情報を一定のタイミングで送信するように通信部306に指示する。
【0097】
<効果>
以上説明したように、本実施の形態の受電センサ204では、2次電池208に充電された電力を用いてセンサ部207によるセンシングを実現できる。よって、電池切れの心配がなく、また、無線給電の受電方向の変化によって受電電力が変動する状況であっても、安定して情報収集を行うことができる。
【0098】
また、本実施の形態の送受信器201は、受電センサ204の2次電池208の充電量に応じて受電センサ204の動作を制御する。よって、受電センサ204において効率良く電力を消費することができる。また、ユーザが2次電池208の充電状態を逐次確認する必要がない。
【0099】
本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下、変形例について説明する。
【0100】
[変形例1]
図1に示したように、1つの送受信器201に対して複数の受電センサ204が存在する場合、以下の動作が行われてもよい。
【0101】
送受信器201は、各受電センサ204から受信した充電量情報を比較し、複数の受電センサ204のうち、2次電池208の充電量が最も多い受電センサ204を判定する。
【0102】
そして、送受信器201は、2次電池208の充電量が最も多い受電センサ204に対しては、2次電池208に充電された電力をセンサ部207へ供給するように指示する制御情報を送信する。この制御情報を受け取った受電センサ204は、2次電池208からセンサ部207への電力供給を行う。
【0103】
一方、送受信器201は、2次電池208の充電量が最も多い受電センサ204以外の受電センサ204に対しては、第2モードを示す制御情報を送信する。この制御情報を受け取った受電センサ204は、送受信器201から受電した電力を2次電池208へ充電する。
【0104】
なお、上記説明では、送受信器201が、各受電センサ204に対して制御情報を送信する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、送受信器201は、受電センサ204が2次電池208の充電量が最も多い受電センサ204であるか否かを示す判定結果情報を、各受電センサ204へ送信してもよい。各受電センサ204は、判定結果情報が2次電池208の充電量が最も多い旨を示す場合、2次電池208からセンサ部207への電力供給を行う。一方、各受電センサ204は、判定結果情報が2次電池208の充電量が最も多い旨を示していない場合、送受信器201から受電した電力を2次電池208へ充電する。
【0105】
上述した動作をリアルタイムに行うことで、各受電センサ204の受電電力が変動する環境下においても、安定したセンシング動作を実現することができる。
【0106】
[変形例2]
図3に示したように、受電センサ204のアンテナ205が受電用アンテナ301および通信用アンテナ302で構成される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、受電センサ204は、共通(同一)のアンテナで受電と各種情報の送受信を行ってもよい。この具体例について、
図4を用いて説明する。
【0107】
図4に示すアンテナ205は、受電機能および通信機能を備える。
【0108】
また、
図4に示すように、受電センサ204は、アンテナ205の受電機能と通信機能とを切り替える切替部401を有する。例えば、切替部401は、受電機能と通信機能で使用する周波数が同一または略同一である場合、アンテナ205と整流部303との接続と、アンテナ205と通信部306との接続とを切り替える。
【0109】
2018年5月31日出願の特願2018-104302の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本開示の無線給電センシングシステムは、ウェアラブルセンサなどの各種センサに適用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 無線給電センシングシステム
101 送電器
102 発振部
103 アンテナ
104 受電機能付きセンサ
105 アンテナ
106 センサ
201 送受信器
202 制御部
203 アンテナ
204 受電センサ
205 アンテナ
206 制御部
207 センサ部
207a、207b センサデバイス
208 2次電池
301 受電用アンテナ
302 通信用アンテナ
303 整流部
304 電源制御部
305 情報処理部
306 通信部
401 切替部