(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】自動緊急停止式電動切断工具
(51)【国際特許分類】
B26B 15/00 20060101AFI20221116BHJP
B23D 33/00 20060101ALI20221116BHJP
B23D 47/00 20060101ALI20221116BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20221116BHJP
B27G 19/04 20060101ALI20221116BHJP
B27G 19/06 20060101ALI20221116BHJP
B26D 7/24 20060101ALN20221116BHJP
【FI】
B26B15/00
B23D33/00 A
B23D47/00 C
B23Q11/00 D
B27G19/04 Z
B27G19/06 Z
B26D7/24
(21)【出願番号】P 2020528343
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 FR2018052914
(87)【国際公開番号】W WO2019102129
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-05-27
(32)【優先日】2017-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519087251
【氏名又は名称】ペランク
【氏名又は名称原語表記】PELLENC
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ペランク,ロジェ
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,ベルナール
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許第2825811(EP,B1)
【文献】国際公開第2013/136311(WO,A1)
【文献】特開2004-160822(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0017336(US,A1)
【文献】特開平05-023897(JP,A)
【文献】特開平11-128561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 15/00
B23D 33/00
B23D 47/00
B23Q 11/00
B27G 19/04
B27G 19/06
B26D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-導電性の切断部材(12)、
-電気的に制御される、切断部材の作動用原動機(20)、
-利用者の手による切断の工具の把握用柄(30)であって、切断部材(12)から電気的に絶縁されている把握用柄、
-把握用柄(30)を握る利用者の手によって作動可能な切断始動用部材(28)であって、切断部材(12)から電気的に絶縁されている切断始動用部材、
-切断部材との利用者の接触を感知できる緊急停止装置(40)、
を含む、安全確保された切断工具(10)であって、
-少なくとも1つの第一の手接触電極および少なくとも1つの第二の手接触電極(32、34)であって、互いに電気的に絶縁されており、また利用者が把握用柄を握るとき利用者の手によって同時に触られるように、工具の把握用柄(30)と切断始動用部材(28)とのうちの少なくとも1つの上に設けられる第一の手接触電極(32)および第二の手接触電極(34)、
-監視用電気回路(42)であって、第一の手接触電極(32)と切断部材(12)とを含み、監視用電気回路(42)は、利用者が前記第一の手接触電極(32)と切断部材(12)とに同時に接触するとき閉じられる可能性がある電気回路、
-
監視用電気回路(42)における監視用電流の発電機(56)、
-切断部材(12)と第二の手接触電極(34)との間の監視用電圧(V
E2)の測定装置(44)、
-監視用電圧によって決まる少なくとも1つの監視用電気的特性と、人体の導電インピーダンスの値を超えるインピーダンスの値によって決まる閾値の電気的特性とのコンパレータ(74)であって、監視用電気的特性が閾値の電気的特性を越えるとき緊急停止を引き起こすための、切断部材の作動用原動機(20)の緊急停止装置(40)に接続されているコンパレータ(74)、
によって特徴づけられる切断工具。
【請求項2】
監視用電気的特性が、監視用電圧によって決まる電圧であり、また閾値の電気的特性が、人体の導電インピーダンスの値を超えるインピーダンスの値と監視用電流によって決まる閾値電圧である、請求項1に記載の切断工具。
【請求項3】
監視用電気的特性が、監視用電圧であり、また閾値の電気的特性が、人体の導電インピーダンスの値を超えるインピーダンスの値と監視用電流との積に等しい、請求項1または2に記載の切断工具。
【請求項4】
監視用電気的特性が、監視用電圧と監視用電流とによって決まるインピーダンスの値であり、また閾値特性が、人体の導電インピーダンスの値を超えるインピーダンスの値によって決まるインピーダンスの値である、請求項1に記載の切断工具。
【請求項5】
監視用電気的特性が、監視用電流に対する監視用電圧の比率に等しく、また閾値特性が、人体の導電インピーダンスの値を超えるインピーダンスの値に等しい、請求項1または4に記載の切断工具。
【請求項6】
発電機(56)が、交流電流を発生させる発生器である、請求項1から5のいずれか一つに記載の切断工具。
【請求項7】
発電機(56)が電流源を有する、請求項1から6のいずれか一つに記載の切断工具。
【請求項8】
発電機(56)が電圧源を有する、請求項1から6のいずれか一つに記載の切断工具。
【請求項9】
監視用電気回路内に直列に、予め決められたインピーダンスの値を有する調整の電気インピーダンスと、調整の電気インピーダンスの端子に電圧測定装置(53)とを含む、請求項1から8のいずれか一つに記載の切断工具。
【請求項10】
電流源が、調整の
電気インピーダンスに並列に接続される、請求
項9に記載の切断工具。
【請求項11】
切断部材の電位の監視装置(78)を含み、電位の監視装置が、切断部材の電位が設定範囲外であるときに緊急停止を引き起こすための緊急停止装置(40)に接続されている、請求項1から10のいずれか一つに記載の切断工具。
【請求項12】
切断部材(12)が、工具のアース電位(18)に接続されている、請求項1から11のいずれか一つに記載の切断工具。
【請求項13】
作動用原動機(20)が熱機関である、請求項1から12のいずれか一つに記載の切断工具。
【請求項14】
切断部材の作動用原動機が電動機であり、緊急停止装置が、原動機の操作用電子基板を含む、請求項1から12のいずれか一つに記載の切断工具。
【請求項15】
1MΩ以上の値の接地インピーダンス(80)を含み、接地インピーダンスは第二の手接触電極を切断部材に電気的に接続し、また測定装置(44)によって測定される監視用電圧(V
E2)がゼロのとき、そのうえ緊急停止と動作停止のうちの1つを引き起こすように設定される、請求項1から14のいずれか一つに記載の切断工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動緊急停止装置を備えた、安全確保された電気制御の切断工具に関するものである。緊急停止装置は、工具が作動中のときの、切断工具の切断部材との利用者の不意の接触の場合に、切断工具による利用者の深刻な怪我を防ぐことを目的とする。本発明は少なくとも、場合によってはありうる怪我を、軽い怪我に抑えることを目的とする。
【0002】
例えば、電動剪定ばさみについて、深刻な怪我は、深い傷口、さらには利用者の指の一部の完全な切断によって特徴づけられる。それに対して、軽い怪我は、少量の出血を発生させ得るイバラの中での手の表皮のひっかき傷に例えることができる。
【0003】
緊急停止装置は、緊急停止が、利用者の自発的な介入なく、怪我のリスクのある状況を検出しただけで始動するならば、自動であると見なされる。
【0004】
本発明は、さまざまな切断工具のための用途、および、とりわけ剪定ばさみや大ばさみ、さらにはチェーンソー、丸鋸、ドリルやグラインダーのような可動刃を有する携帯用電動切断工具のための用途を見出すことができる。
【背景技術】
【0005】
現状技術の説明は、以下の文献によって示されている。
仏国特許出願公開第2712837号明細書、
仏国特許出願公開第2779669号明細書、
仏国特許出願公開第2831476号明細書、
仏国特許出願公開第2838998号明細書、
仏国特許出願公開第2846729号明細書、
仏国特許出願公開第2963081号明細書、
仏国特許出願公開第3001404号明細書、
欧州特許出願公開第2490865号明細書、
欧州特許出願公開第2825811号明細書、この文献は、柄上に手接触電極を備えた安全装置を用いた剪定ばさみを示しており、
米国特許第5025175号明細書、
米国特許第7365955号明細書、
国際公開第2012/025456号、この文献は、柄上に接触電極を備えた容量性の安全装置を用いたチェーンソーを示している。
【0006】
これらの文献は、利用者が負傷しないようにするための緊急停止装置を備えた電気制御の機械および工具に関している。これらの文献の中で、植生を切るために片手だけでつかまれる電動剪定ばさみのような工具を多数確認することができる。
【0007】
この例において、利用者は、電動剪定ばさみを片手でつかみ、そして空いているもう一方の手を、切られたまたは切られるべき植物の取扱いのために利用する。その場合、剪定ばさみをつかんでいない手が切断の際に、切断部材のすぐ近くにくるまたは切断部材と接触するようになるとき、負傷するリスクがある。剪定ばさみまたは大ばさみの場合において、切断部材は多くは、固定刃すなわちフック、および枢動刃の形を呈している。枢動刃は、フックの上での開いた位置と閉じた位置との間で枢動し、枢動刃とフックとの間でのせん断効果を伴う。特定の剪定ばさみの切断部材は、刃が開いた位置から閉じた位置へ移る際にせん断効果を実現するために互いの間で協働する2つの可動刃から成るともあり得る。
【0008】
ドリル、グラインダー、丸鋸またはチェーンソーの場合において、切断部材は、軸の周りを回転する鋭い部分を有する。
【0009】
せん断機、粉砕機または丸鋸のような工作機械の場合において、切断部材は、固定フレームとの関係において軸の周りを回転するまたは平行移動する鋭い部分の形を呈している。
【0010】
手が切断部材のすぐ近くにあること、または、手が切断部材と接触したことを検出するために、さまざまな手段が用いられる。とりわけ、電波手段、刃上の電位検出手段、容量性手段、あるいはまた、インピーダンス測定手段が際立ち得る。
【0011】
既知の安全装置は、通信の連係によって安全装置に電気的に接続される手袋、靴、あるいはまた、ビーコンを利用している。連携は、有線による、または場合によっては、電波手段による連携であり得る。
【0012】
手袋が利用される場合、手袋は、電気伝導体を備えており、また手袋と切断部材との間の測定回路を作り出す役目を持っている。同様に、導電性の靴は、地面に接続され、また、利用者の体を含む測定回路を作り出すために利用されることができる。
【0013】
切断工具に電気的に接続される電子ビーコン、導電性の手袋、導電性の靴、またはより一般的には、導電性の服の利用は、利用者の切断部材との接触を検出することを可能にする。例えば、導電性の服の切断部材との接触の検出に反応しての、切断作業の緊急停止は、場合によっては起こりうる怪我を回避する、または、怪我の重症度を抑えることを可能にする。
【0014】
既知の安全装置はしかしながら、利用者にとっての困難または不都合をいくつか有する。それらの中でとりわけ以下を指摘することができる。
-導電性の服、またとりわけ導電性の手袋の着用によって生じる不自由、
-導電性の服と剪定ばさみとの間の有線の連携によって生じる不自由、
-導電性の服と剪定ばさみとの間の有線の連携を切断するリスク、
-導電性の服や検出用ビーコンの着用を忘れた場合、またはこれらの付属品の不適切な着用の場合の負傷リスク、
-安全装置と切断部材との間の接触障害に関連するリスク。例えば、長時間使用しすぎたことに起因する導電性の手袋の損耗、メンテナンス不良、偶発的な破損、さらには手袋や切断部材のところでの樹液、油やグリースのような絶縁体の堆積は、安全装置によって感知される信号を変更さらには隠すリスクがある。このことは、短期的に、利用者が前もって気づくことなく安全装置を効果のないものにし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】仏国特許出願公開第2712837号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2779669号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2831476号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2838998号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2846729号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2963081号明細書
【文献】仏国特許出願公開第3001404号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2490865号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2825811号明細書
【文献】米国特許第5025175号明細書
【文献】米国特許第7365955号明細書
【文献】国際公開第2012/025456号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上に言及された不都合を有しない、安全確保された切断工具を提案することを目的とする。
【0017】
実際に本発明は、手袋のような導電性の衣類に助けを求めず、かつビーコンの着用を必要としない安全確保された切断工具を提案することを目的とする。
【0018】
本発明は、利用者と切断部材との間の接触の存在を検出し、またこのように怪我のリスクを警告するために、安全装置のすぐ近くにある、または安全装置と接触している利用者の体の導電率を単純に利用する安全装置を有する切断工具を提案する。
【0019】
とりわけ人体のインピーダンスによって測定できる、人体の単純な導電率の利用はしかしながら、利用者の体と安全装置、または切断部材との間の電気的接触の質に起因する困難を有する。人体の固有のインピーダンスは実際、低い値であり、利用者に依るが有意に変化しない。利用者の体と、例えば手接触電極や導電性の切断刃の刃先のような導電性の部分との間の接触インピーダンスの場合は、同様ではない。このインピーダンスは実際に、大幅に変化しうる。該インピーダンスは、利用者の皮膚の特性に応じて、皮膚が濡れているかいないかに応じて、手接触電極の表面特性(寸法、粗さ、導電率など)に応じて、気候条件に応じて、あるいはまた利用者によってかけられる接触圧力に応じて変化し得る。
【0020】
例えば、乾燥した皮膚の手は、非常に低い導電率を有する。手接触電極上での、弱い圧力を用いてのその接触は、数十万オームの値に達し得る大きな接触インピーダンスを生み出し得る。逆に、とりわけ、海辺の塩分を含んだ空気中での、湿った手を用いての接触は、数千オーム、さらには、たった数百オーム、またはさらに、数オームの低い接触インピーダンスしかもたらさない。
【0021】
切断部材との利用者の体の一部の接触は、接触が例えば、剪定ばさみの刃の刃先のように鋭くかつ導電率の良い領域において起こる場合、かけられる接触圧力に応じて、数オーム、さらには、数百オームのインピーダンス値で表現され得る。それに対して、接触が切断部材の別の一部で起こる場合、例えば、薄い絶縁被覆を有する切断刃の面で起こる場合、インピーダンス値は数百オーム、さらには、数千オームまたはそれ以上であり得る。
【0022】
これらの不確実性は、値の狭い範囲にわたってのみ変化する接触インピーダンスに導く導電性の服、および/または、導電性の有線の連携の使用によって予防されることが可能である。そうでない場合、これらの不確実性は、切断工具の安全を危険にさらさないように、考慮されなければならない。
【0023】
実際に、利用者が安全装置と切断部材とに同時に接触する場合、切断部材と安全装置を有する工具との間で可能なインピーダンス値の非常に広い範囲が生じ得る。この場合、利用者と切断部材との間の実際の接触リスクを、信頼できる仕方で確立することはできない。
【0024】
これらの困難を乗り越えるために、本発明は、以下を含む安全確保された切断工具を提案する。
-導電性の切断部材、
-電気的に制御される、切断部材の作動用原動機、
-利用者の手による切断の工具の把握用柄であって、切断部材から電気的に絶縁されている把握用柄、
-把握用柄を握る利用者の手によって作動可能な切断始動用部材であって、切断部材から電気的に絶縁されている切断始動用部材、
-切断部材との利用者の接触を感知できる緊急停止装置。
【0025】
本発明によると、安全確保された切断工具は、以下によって特徴づけられる。
-少なくとも1つの第一の手接触電極および少なくとも1つの第二の手接触電極であって、互いに電気的に絶縁されており、また利用者が把握用柄を握るとき利用者の手によって同時に触られるように、工具の把握用柄と切断始動用部材のうちの少なくとも1つの上に設けられる第一の手接触電極および第二の手接触電極、
-監視用電気回路であって、第一の手接触電極と切断部材とを含み、利用者が前記第一の手接触電極と切断部材とに同時に接触するとき閉じうる監視用電気回路、
-第一の電気回路における監視用電流の発電機、
-切断部材と第二の手接触電極との間の監視用電圧の測定装置、
-監視用電圧によって決まる少なくとも1つの監視用電気的特性と、人体の導電インピーダンスの値を超えるインピーダンス値によって決まる閾値の電気的特性とのコンパレータであって、監視用電気的特性が閾値の電気的特性を越えるとき緊急停止を引き起こすための、切断部材の作動用原動機の緊急停止装置に接続されているコンパレータ。
【0026】
本発明の切断工具は、剪定ばさみ、大ばさみ、ドリル、グラインダー、丸鋸、チェーンソー、または安全確保すべき切断部材を有する他のあらゆる工具もしくは工作機械のうちの1つであり得る。本発明の実施は、とりわけ剪定ばさみについて検討される。しかしながら、言葉の便宜上または単純化による、続く明細書における剪定ばさみの言及は、切断工具の性質について決めてかかるものではない。
【0027】
把握用柄および切断始動用部材は、柄および切断始動用部材の少なくとも一部分、またとりわけ利用者が把握用柄を握るときまたは切断始動用部材を作動させるときに利用者によって触られうる、手接触電極を有する部分が切断部材から電気的に絶縁されているとき、切断部材から電気的に絶縁されていると考えられる。それはまた、柄または切断始動用部材が、工具の動作および緊急停止の始動における問題のインピーダンスの値を桁違いに越えるインピーダンス、例えば数百万オームの値を介して切断部材に接続されているときのケースでもあると考えられる。
【0028】
手接触電極は、導電性の金属製電極でもあり得るし、または、やはり導電性の、柄または引き金のプラスチック材料領域によって形成されることもできる。それは例えば、ポリピロールのような固有の導電性ポリマーで作られる電極、または例えば炭素や銀の粒子を含有した付随的な導電性のプラスチック材料で作られる電極である。
【0029】
本明細書は2つの電極に関わっているが、より多い数の手接触電極が利用されることができる。明細書の続きにおいて、第一のまたは第二の手接触電極への言及は、これらの電極のそれぞれが単一であるのか複数であるのかの特徴について決めてかかるものではない。複数の第一の手接触電極および複数の第二の手接触電極の利用は、利用者の手との電気的接触を改善するためにとりわけ考慮され得る。
【0030】
作動用原動機は、電動機でもあり得るし、または場合によっては電気的制御式熱機関でもあり得る。本発明の好ましい実施において、それはただし電動機である。それはとりわけ、一方向における回転およびその反対方向における回転の機能、また場合によっては電磁ブレーキの機能を制御することができる電子基板によって操作される電動機であり得る。
【0031】
切断始動用部材は、例えばレバーでもあり得るし、または接触を伴う部材、もしくは利用者の作動用の指の位置を測定する光学センサのような、接触を伴わない部材でもあり得る。始動用部材は、把握用柄を握る利用者の手によって作動されることができるように、把握用柄の上にまたは柄の近くに位置する。切断始動用部材はとりわけ作動用原動機を作動させることを可能にし、そして例えば、剪定ばさみの切断部材の開放または閉鎖を引き起こすことを可能にする。
【0032】
緊急停止装置は、利用者の怪我を回避するため、または発生しかかっている怪我の悪化を回避するために、切断工具およびとりわけ切断部材の瞬時の停止を実行することができる装置である。緊急停止は、以下の作業のうちの1つの即時の始動を含み得る。
-作動用原動機の動力供給停止、とりわけ、作動用電動機の場合におけるその電気供給停止、
-作動用原動機および/または直接切断部材に作用する緊急ブレーキ、
-切断工具の緊急の動きの始動であって、例えば、剪定ばさみや大ばさみの場合には切断部材の開放、または切断部材の可動部品の動力学的な慣性を補う動きのようなものである。
【0033】
緊急停止装置はとりわけ、ブレーキを含み得る。
【0034】
それは、原動機に作用する、原動機のフライホイールに作用するまたは切断部材に直接作用する電磁ブレーキであり得る。
【0035】
作動用原動機が電動機であるとき、電磁ブレーキ、緊急の動きの始動、さらには単純な電気供給停止は、単純に原動機の制御用電子基板を介して、原動機の相の電気供給を操作することによって行われることができる。この場合、緊急停止装置は、原動機の操作用電子基板を含む。
【0036】
切断部材と第二の手接触電極との間の監視用電圧の測定装置は、電圧計のような、高インピーダンス測定装置である。その内部インピーダンスは、監視用電気回路内を循環する電流を妨害しないように、監視用電気回路内の問題のインピーダンスを桁違いに上回る。それは例えば、10MΩを上回る内部インピーダンスである。監視用電圧は、好ましくは、工具のアース電位に相当する切断部材の電位との関係において測定される。監視用電圧はまた、アースに対する、または切断部材に対する固定電位との関係において、測定、または決定されることもできる。
【0037】
監視用電気的特性は、電圧、電流、インピーダンス値、あるいはまたコンダクタンス値の形で表されることができる特性であり得る。監視用電気的特性は、オームの法則を適用して、監視用電圧から確立される。
【0038】
人体の導電インピーダンスから確立される、またとりわけ人体のインピーダンス値を超える値から確立される閾値の特性についても同様である。閾値の特性はまた、オームの法則を適用して、電圧、電流、インピーダンス値またはコンダクタンス値、および電気回路のインピーダンス値の形で確立されることもできる。
【0039】
監視用電気的特性、および、閾値の電気的特性のさまざまな表現の形が、本明細書の続きにおいて明確に述べられている。
【0040】
監視用電気回路は、先に言及されたように、第一の手接触電極と、導電性の切断部材とを含む。監視用電気回路は、利用者が、切断工具の第一の手接触電極と切断部材とに同時に触るときに閉じる。
【0041】
単純化により、利用者が、柄を握る片手を使って第一の手接触電極に触ること、また利用者がもう片方の手の指を使って切断部材に触り、この場合、指は怪我をするリスクがあることが考えられる。この選択はしかしながら、切断部材に触る体の部分について、いかなる制限も意味するものではない。緊急停止装置の動作および始動は、切断部材と接触するようになる人体の部分がどこであろうと同様である。それは例えば、指や、手、脚、前腕であり得る。
【0042】
このように利用者が、第一の手接触電極と切断部材とに同時に触るとき、いくつかのインピーダンスが第一の手接触電極と切断部材との間の測定回路において直列になる。それは以下である。
-手と第一の手接触電極との間の接触インピーダンスであって、ZM1と書き留められている、
-第一の手接触電極に触っている手ともう一方の手の指との間の、利用者の体のインピーダンスであって、ZCと書き留められている、および
-指と切断部材との間の接触インピーダンスであって、ZDと書き留められている。
【0043】
また、工具が剪定ばさみの具体的事例において、ZVは、植生のインピーダンス例えばブドウの若枝のインピーダンスと、切断部材によって切られる利用者の空いている手によって掴まれる物体上の、または植生上の指、またより一般的には、手の接触インピーダンスとの合計と指摘される。掴まれる物体は、その場合には固定用鉄線であり得る。他の工具について大きさZVは、切られるまたは加工される資材の、この資材が利用者の空いている手によって触られると仮定して、この資材と指の接触に接続したインピーダンスを特徴づける。
【0044】
第一の手接触電極の固有インピーダンス値および切断部材の固有インピーダンス値を無視することによって、監視用電気回路のZTと書き留められる総インピーダンスは、以下の3つの値を採用することができるであろう。
-切断部材が触られていないときの値、無限大ZT=∞
-指が切断部材に触っているときの値、ZT=ZM1+ZC+ZD
-空いている手によって掴まれている資材が切断部材に触っているときの値、ZT=ZM1+ZC+ZV
【0045】
利用者の体の、柄を握るように仕向けられるその第一の手と切断部材に触りうるもう一方の手のその指との間のインピーダンス値ZCのおおよその大きさは、容易に評価されることができる。それは、インピーダンスが10000オームより低い値、またいずれにせよ1000オームのおおよその大きさの値を有する人体の導電率である。
【0046】
第一の手接触電極との手の接触インピーダンスZM1の値、ならびに指と切断部材との間の接触インピーダンスZDの値、または切断部材と接触している資材の介在インピーダンスを含むインピーダンスZVの値は、高い可変性を有し得、また大抵の場合、低い導電率を有する手の皮膚の一部を用いた弱い接触圧力の場合とりわけ、利用者の体のインピーダンスの値を大きく上回る。
【0047】
明細書の続きにおいて、切断部材との指の直接接触にしか関わらない。実際に、介在資材との指の接触の状況は、利用者に対するリスクを発生させない。該状況は場合によっては、インピーダンスZVの値がZDに近いとき、すなわち介在資材が優れた導電体であるとき、緊急停止装置を始動させる可能性がある。
【0048】
しかしながら、切断部材との指の接触による怪我をするリスクがあるとき、指の接触インピーダンスZDの値は、利用者の体のインピーダンスZCの値と同じおおよその大きさであると評価され得、さらには該値より低くなり得ることが、本出願人によって行われたさまざまな試験によって示されている。指は実際に、刃が指に接触するようになるとき大きな弾力性を有するので、刃が指の表皮をまず切って軽い怪我を引き起こし得るには有意な圧力が伴われることとなり、その後で、切断し続けることによって深刻な怪我を負わせることになる。表皮レベルのひっかき傷のような軽い切り傷の場合、切断部材と指の皮下部分との間の接触インピーダンスZDの値はそのとき、人体のインピーダンスZCの値を大きく下回っている。
【0049】
重大な接触の場合の切断部材のところでの接触インピーダンスの値が、人体のインピーダンスの値を下回ることが推定される。人体のインピーダンスのおおよその大きさのインピーダンスの検出はそのとき、利用者の切断部材との瞬時の望まれない接触の存在を、非常に高い可能性をもって特定することを可能にする。
【0050】
利用者の手と第一の手接触電極との間の接触インピーダンスZM1については同様ではなく、その値はより大幅に変化し得、また事実、利用者の指と切断部材との間の接触の状況を覆い隠し得る。
【0051】
本発明の測定装置は、利用者の手と第一の手接触電極との間の接触インピーダンスZM1から解放されることを可能にする。このことは、第二の手接触電極での電圧を測定することにより行われる。
【0052】
第二の手接触電極は、柄を握りまたしたがって第一および第二の手接触電極に触る利用者の手を介して第一の手接触電極に接続される。手接触電極はこのように、2つの潜在的に高いインピーダンスによって直列に接続される。それは、第一の手接触電極との手の接触インピーダンスZM1と、第二の手接触電極との手の接触インピーダンスZM2である。
【0053】
このように、第二の手接触電極が、第二の手接触電極との手の接触インピーダンスによって、利用者の体のインピーダンスに接続されることもまた考えられる。電圧測定装置の高い内部インピーダンスのため、第二の手接触電極で測定される電圧VE2、またより具体的には、この電極と工具のアースとの間の電位差は、Cと書き留められる利用者の手の内部の仮想点と、工具のアースに接続される切断部材との間で測定されうる電位差VCとほぼ等しい。実際に、ゼロ、または、ほぼゼロの電流が、この内部の仮想点と第二の手接触電極との間を循環し、電位VE2と電位VCがほぼ等価であることを保証し、これらの2つの電圧は、監視用電圧を構成するとみなされることができる。
【0054】
監視用電流の発電機は、監視用回路が閉じるとき、すなわち切断部材との利用者の直接または間接の接触の際に、監視用電流Isを監視用回路内で循環させる役目を持っている。
【0055】
発電機は、例えば電流源を有することができる。発電機は、電圧源を有することもできる。電流源、または、電圧源は、監視用回路内で直列に接続されることができる。
【0056】
監視用電流の発電機は、自律電源、例えば電池を利用することができる。それは、切断工具が作動用電動機を備えた工具であるとき、切断工具の電気供給源、例えばバッテリ電源によってエネルギー供給されることもできる。
【0057】
発電機が電流源を有するとき、回路が閉じているときの電流の強さは、知られている。電流の強さはそのとき、監視用電流Isの強さに相当する。
【0058】
切断工具は、電気回路内に直列に、Z1と認識される予め決められたインピーダンス値を有する調整の電気インピーダンス、ならびに調整の電気インピーダンスの端子に電圧V1の測定装置を有することもできる。この電圧の測定はそのとき、監視用電流Isの強さを認識することもまた可能にする。実際に、監視用電流Isは、調整の電気インピーダンスの値に対する、調整の電気インピーダンスの端子で測定される電圧の比率に等しい。
【0059】
Is=V1/Z1
【0060】
調整のインピーダンスの値Z1の選択は、監視用回路内を循環する電流の強さに影響を及ぼしうる。
【0061】
それはしかしながら、重大ではなく、その機能は本質的に、監視用電流の強さを決定することである。例えば、調整のインピーダンスの値は、1Ωと200kΩとの間で選択されることができる。
【0062】
測定装置は、例えば電圧計であり、またとりわけ、コンパレータをそのうえ含む電子基板に組み込まれた電圧計である。
【0063】
利用者の体の累積インピーダンスZを、VE2の測定および監視用電気回路内を循環する監視用電流Isの測定から認識することがこのように可能である。
【0064】
Z=ZC+ZDであり、また
【0065】
VE2=Is×Zである。すなわち
【0066】
Z=VE2/Isである。
【0067】
このインピーダンスは、人体のインピーダンス値Zcを超える、また好ましくは人体のインピーダンス値Zcを3倍超えるインピーダンス閾値Zseuilと比較されることができる。インピーダンスを超える値はとりわけ、20kΩに等しく、また好ましくは、100kΩより大きく選択されることができる。それはこのように、切断部材の作動の際に怪我を発生させる可能性のほとんどない、利用者の指と切断部材との間の接触の値をそのうえ考慮に入れる。
【0068】
本発明の一特定実施によると、監視用電気的特性は、監視用電圧によって決まる電圧であり得、また閾値の電気的特性は、人体の導電インピーダンス値を超えるインピーダンス値Zseuilと監視用電流によって決まる閾値電圧であり得る。
【0069】
とりわけ、監視用電気的特性は監視用電圧VE2に等しくあり得、また閾値の電気的特性は、人体の導電インピーダンス値を超えるインピーダンス値と監視用電流との積に等しい電圧Vseuilに等しくあり得る。
【0070】
この場合VE2とVseuilが比較される。
【0071】
ここでVseuil=Zseuil×Isである。
【0072】
VE2>Vseuilであるとき、工具の動作は正常である。
【0073】
VE2<VseuilまたはVE2=Vseuilであるとき、緊急停止装置は始動する。
【0074】
別の特定実施可能性によると、監視用電気的特性は、監視用電圧と監視用電流とによって決まるインピーダンス値であり得、また閾値特性は、人体の導電インピーダンス値を超えるインピーダンス値Zseuilによって決まるインピーダンス値であり得る。
【0075】
とりわけ、監視用電気的特性は、監視用電流に対する監視用電圧の比率に等しいインピーダンスZに等しくあり得、また閾値特性は、人体の導電インピーダンス値を超えるインピーダンス値Zseuilに等しくあり得る。
【0076】
この場合、Z>Zseuilであるとき、工具の動作は正常である。
【0077】
しかしながら、Z<ZseuilまたはZ=Zseuilであるとき、緊急停止装置は始動する。
【0078】
上述の大きさの一次関数のような別の監視用特性および別の閾値特性もまた取り上げられることができる。コンダクタンスを比較することがさらに可能である。
【0079】
インピーダンスZとインピーダンスZseuilとの間の比較、または先に言及されたように、監視用電圧VE2の電圧Vseuilとの比較、あるいはまた、より一般的には、監視用電圧によって決まる別の監視用電気的特性の、人体のインピーダンスを超えるインピーダンスによって決まる閾値の電気的特性との比較は、コンパレータによって行われる。
【0080】
このために、Zseuil値、Vseuil値、またはより一般的には、人体のインピーダンスを超えるインピーダンスによって決まる閾値の電気的特性の値は、コンパレータに接続されるメモリの中に記憶されることができる。メモリ内に含まれる閾値は、工具の製造時に固定されることができる。メモリへのアクセスもまた、必要な場合には、緊急停止装置の始動の感度を変更するように閾値を変更するために設けられることができる。
【0081】
発電機が電流源を有するとき、監視用電気回路内に直列に接続される調整のインピーダンスに、電流源は、並列に接続されることができる。先に言及されたように、オームの法則はそのとき、監視用回路内を循環する電流の値Isを決定することを可能にする。
【0082】
発電機は、交流電流式発電機でもあり得るし、または直流電流式発電機でもあり得る。交流電流式発電機は例えば、10kHzの動作周波数を有する。監視用交流電流の利用は、導電性の切断部材が、電気絶縁薄層、例えば腐食防止層や防汚層で覆われるときに装置が作動することを可能にする。例えば、剪定ばさみの刃は、その腐食を回避しつつ切断時のカウンターブレードでのその滑りを容易にするように、PTFE製の薄い被覆で覆われ得る。この場合実際に、利用者の指と切断部材との間の接触は、主に容量性の接触であり得る。しかしながらここで、刃の刃先がこのタイプの被覆から解放されることに注目する必要があり、刃の刃先は、尖っていすぎて、そのような保護用被覆がそこに付着することはできないのである。
【0083】
切断工具はそのうえ、切断部材の電位の監視装置を有し得る。電位の監視装置は、切断部材の電位が設定範囲外であるときに緊急停止を引き起こすための緊急停止装置に接続されている。監視装置は、監視用電気的特性の確立が、切断部材の変更された電位によって、またとりわけ切断部材のゼロでない電位によって悪影響を及ぼされる状況を回避することを可能にする。
【0084】
実際に、また既に言及されたように、切断部材は好ましくは、工具のアース電位に接続されている。
【0085】
切断部材の電位の変更は、例えば電気柵のような、課電中の金属製の伝導体との切断部材の不意の接触の際に例えば生じ得る。
【0086】
付属的に、切断工具は、人体のインピーダンス値を超えるインピーダンスの値を桁違いに超える値の接地インピーダンスを有することができ、接地インピーダンスは、第二の手接触電極を切断部材に電気的に接続する。この場合、切断工具は、測定装置によって測定される監視用電圧がゼロのとき、そのうえ緊急停止と動作停止のうちの1つを引き起こすように設定されることができる。接地インピーダンスは、第二の手接触電極の浮遊電位を回避することを可能にする。その値は、第二の手接触電極に有意な電流を導入しないように、またこのように監視用電圧の測定に悪影響を及ぼさないように、非常に高く、例えば数百万オームである。
【0087】
また、接地インピーダンスのおかげで、手が第一と第二の手接触電極に同時に接触しなくても、監視用電圧が第二の電極のところでゼロであることが可能である。ゼロの電圧VE2の測定はそのとき、上に示されたように、工具の利用を禁止するために緊急停止装置を始動させること、または単純に動作停止を始動させることを可能にする。このように、利用者は、切断時に第二の電極に触らないこと、または例えば絶縁手袋を用いて第二の電極に触ることがあるとしたら、工具を作動させることができないであろうし、緊急停止装置の実行手段はそのとき、切断部材との指の接触リスクを検出することに対する効果はない。
【0088】
必要な場合には、利用者が、とりわけ寒さから自分を守るために、導電性の手袋を着用し得ることに注目する必要がある。しかしながら、手袋との手の接触が、有意なインピーダンスの変化を発生させないこと、またとりわけ手接触電極との手の直接接触の変化を上回るインピーダンスの変化を発生させないことが重要である。
【0089】
本発明の他の特徴および利点は、図面を参照して続く説明から明らかになる。この説明は、単に例証としてかつ限定されないものとして与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】本発明にかなった切断工具の主な特徴および機能の簡略化された概略図である。
【
図2】本発明にかなった剪定ばさみの簡略化された概略図である。
【0091】
図1および
図2の同一部分または類似部分は、図面間での転記を容易にするように、またそれで説明を繰り返すように同じ参照記号を有している。
【発明を実施するための形態】
【0092】
図1は、切断部材12を備えた切断工具10を概略的に示している。
【0093】
切断部材12は、工具のアース電位18に電気的に接続されている。
【0094】
切断工具はそのうえ、動力伝達機構22によって切断部材12に機械的に接続される電動機20を含む。動力伝達機構は、原動機によって提供される機械的エネルギーを切断部材に伝達する。該動力伝達機構は、切断部材を、切断部材の性質に応じて枢動運動、弧を描く回転運動にしたがって、または並進運動にしたがって駆動させることを可能にする。
【0095】
電動機20は、電源24と原動機の制御用電子基板26とに接続している。制御用電子基板26は、切断工具10の把握用柄30をつかんでいる利用者の手によって作動可能な切断始動用部材28の信号を受け取ることができる。切断始動用部材28、例えばレバーは、柄を握る手によって作動されることができるように、把握用柄30のすぐ近くに配置される。
【0096】
把握用柄30は、絶縁性プラスチック材料製であり、またしたがって切断部材から電気的に絶縁されている。把握用柄はまた、柄のほぼ反対側にある2つの部分にそれぞれ設けられる1組の手接触電極32および34を備える。手接触電極は、剪定ばさみがその柄を握られるとき利用者の手が必然的に接触するようになる金属製電極または導電性のプラスチック材料製の電極である。
【0097】
手接触電極は、互いに電気的に絶縁されており、また切断部材12から電気的に絶縁されている。第一および第二の電極のうちの1つは、柄を握る手によって作動される切断始動用部材のレバー上に配置されることもできる。
【0098】
剪定ばさみの電動機20の緊急停止装置40は、監視用電気回路42によって管理されている。監視用電気回路42は、切断工具の部品を含むだけでなく、剪定ばさみ10を利用する人間の体の部分を含むこともできる。
【0099】
電気回路42はとりわけ、調整のインピーダンス52と、第一の手接触電極32と、切断部材12と、監視用電流の発電機56とを直列で含む。発電機は例えば、電圧源、例えば電池または電流源である。調整のインピーダンスは、電気インピーダンス値が知られている単数または複数の電気部品で形成され得る。調整のインピーダンスは、発電機56の中に含まれ得る。それは例えば、例えば100kΩである値を伴う電気抵抗器である。その値はしかしながら重大ではない。その値は例えば、1Ωと200kΩとの間に含まれ得る。調整のインピーダンスの端子での電圧V1の測定はそのとき、監視用回路の中を循環する監視用電流Isを決定することを可能にする。
【0100】
調整のインピーダンスは、発電機56が、監視用電気回路42の閉鎖時にIsと定義される値の電流を直接発生させる電流源を含むときには、必要ない。
【0101】
利用者との接触がないとき、監視用電気回路42は通常、開いた回路、したがって、ほぼ無限大の総インピーダンス、および、ゼロ電流を有する回路である。
【0102】
利用者が柄を握るとき、その手は、手接触電極、またしたがって、第一の手接触電極32と接触するようになる。第一の電気回路42は、開いたままである。
【0103】
しかしながら、利用者が、例えばその空いている方の手の指で切断部材12にもまた触るとき、監視用電気回路42は閉じられる。この場合、調整のインピーダンス52は、第一の手接触電極、第一の手接触電極32との利用者の手の接触インピーダンス60、利用者の体のインピーダンス62、切断部材との指の接触インピーダンス64、そして最後に切断部材12と、相次いで直列になる。
【0104】
手の接触インピーダンス60の値、体のインピーダンス62の値、および切断部材との指の接触インピーダンス64の値は、それぞれZM1、ZC、そしてZDと書き留められている。
【0105】
このように、第一の回路が閉じるとき、総インピーダンスZTは、以下のようである。
【0106】
ZT=Z1+ZM1+ZC+ZD
【0107】
配線のインピーダンスおよび切断部材のインピーダンスは、ここでは無視されている。
【0108】
ここで電圧源と見なされている発電機56のインピーダンスもまた無視される。
【0109】
監視用電気回路が閉じるとき、発電機56は、監視用電流Isを回路内で循環させる。
【0110】
電流の値Isは、それが電流源を有するとき、電流発生器によって予め定義され得る。それ値は例えば、発電機が電圧源を含むとき、調整のインピーダンス52の端子で行われる電圧測定から決定されることもできる。Z1の値である調整のインピーダンス52の端子での電圧V1の測定は、組み込まれた電圧計53によって行われる。
【0111】
電圧測定装置44、例えば、別の組み込まれた電圧計は、切断工具10のアース18と第二の手接触電極との間に接続される。それは、アース18と第二の手接触電極34との間の電位VE2、またはより具体的には、監視用電圧VE2を測定する。
【0112】
監視用電圧VE2、ならびに組み込まれた電圧計53によって出される電圧は、デジタル管理装置74に提供される。
【0113】
デジタル管理装置、例えば、マイクロコントローラ、または、専用の集積回路は、様々な作業を実行することを可能にする。
【0114】
第一の作業は、比率V1/Z1を実現することにより、監視用電流Isを計算することにある。
【0115】
第二の作業は、監視用電圧、および、監視用電流からインピーダンス値Zを計算することにあることができる。先行の説明を参照することによって、以下のように想起される。
【0116】
Z=ZC+ZD=VE2/Is
【0117】
最後に、また主として、デジタル管理装置74は、コンパレータを構成する。
【0118】
デジタル管理装置はとりわけ、インピーダンス値Zを、人体のインピーダンス値を超える閾値Zseuilと比較するために利用され得る。
【0119】
デジタル管理装置はさらに、監視用電圧VE2を、Vseuil=Zseuil×Isのような閾値電圧Vseuilと比較するために利用され得る。
【0120】
電圧が電圧閾値の下に低下するとき、またはインピータンスがインピーダンス閾値の下に低下するとき、閾値の電気的特性は、それぞれ越えられ、そして緊急停止が始動する。
【0121】
比較は、デジタル管理装置74によってまた計算される上述のパラメータに依存している別のパラメータに基づいて実行されることができる。例えばインピーダンスよりもむしろコンダクタンスを比較することが可能である。
【0122】
比較の後に、また、閾値の電気的特性が、選択される特性に応じて上回る値または下回る値によって越えられるとき、緊急停止装置40は始動する。
【0123】
デジタル管理装置のコンパレータによって利用される閾値の電気的特性、例えばVseuilの値またはZseuilの値は、デジタル管理装置74に接続されたメモリ72内に記憶されることができる。
【0124】
図1の例において、緊急停止装置は、電動機の制御用電子基板26を有する。制御用電子基板26は、鎖線での連係によって示される緊急停止信号を受ける。原動機の制御用電子基板はこの場合、切断部材の動きを阻むのに適した原動機の動きを始動させるように、かつ/または電動機の誘導性回路を利用することによって原動機および切断部材の電磁ブレーキを引き起こすように設定される。
【0125】
切断工具の動きのほぼ瞬時の停止がこのように得られる。
【0126】
切断部材の停止の後、電気供給停止もまた実行され得る。電気供給停止は、スイッチ27によって、またとりわけデジタル管理装置74によって操作されるトランジスタ式スイッチによって実行され得る。
【0127】
デジタル管理装置74、またとりわけそれが構成するコンパレータ、ならびに作動用原動機の制御用電子基板26が、ただ1つの組み込まれた部品の形で実現されることができることに注目することが望ましい。
【0128】
参照記号80は、接地インピーダンスを示している。それは、
図1の例において、第二の手接触電極34と切断工具のアース18との間に接続された1MΩ以上の電気抵抗器である。それは、第二の手接触電極の浮遊電圧を回避することを可能にする。それはまた、第二の手接触電極が利用者の手と接触していないとき、第二の手接触電極の電圧を、ゼロ値に固定することも、また可能にする。
【0129】
電圧測定装置44によるゼロの監視用電圧の測定はこのように、工具の動作を禁止するために、または、緊急停止を引き起こすために、デジタル管理装置74によって活用されることができる。図の例において、作動用原動機20の電気供給は、監視用電圧の測定値がゼロである場合、単純に抑制されることができる。
【0130】
このことは例えば、切断部材との接触の検出を妨げうる絶縁手袋を着用している利用者によって工具がつかまれるとき、工具の動作を妨げることを可能にする。
【0131】
接地インピーダンスを貫流する電流または、第二の手接触電極と接触している利用者の手の部分を貫流する電流はほぼゼロである。このように、第二の手接触電極で測定される電位VE2は、柄30を握る利用者の体の内部の想像上の点Cと切断部材、またしたがって工具のアースとの間で測定されるであろう電位VCとほぼ同一である。
【0132】
参照記号76は、切断部材12に電気的に接続される検査電極を示している。該検査電極は、切断部材に触らずに緊急停止テストを可能にするために設けられる。実際に、柄30を握っている利用者が、その空いている方の手を使って、緊急停止を引き起こすために検査電極76を同時に触るだけでよい。制御用電子基板26は場合によっては、緊急停止装置の良好な動作を保証するように、そのような定期的な検査作業を求めるように設定されることができる。
【0133】
切断部材の電位の監視用回路78もまた設けられる。該監視用回路は、電圧計の周りに組み立てられ、また切断部材12の電位が設定値と異なるとき緊急停止を引き起こすために、電動機20の制御用電子基板26にも接続されている。示された実施例において、切断部材の電位が、工具のアース電位によることが確認される。電圧計は、デジタル管理装置と同じ電子基板の一部を成す組み込まれた部品であり得る。
【0134】
図2は、部分断面図を用いた剪定ばさみを示しており、該部分断面図は、切断部材12の駆動用電動機、ならびに、切断部材12の原動機20と可動刃14との間の動力伝達機構22を見えるようにしている。
【0135】
切断部材12は、剪定ばさみの場合、固定刃16すなわちフックと、電動機20によって動かされ、またここではレバーである切断始動用部材28の外力に続いて固定刃の上へ閉じる可動刃14とを含む。レバーの信号は、記号で示されている、原動機の制御用基板26の方へ向けられる。
【0136】
図2は、剪定ばさみの機能的利用のために利用者が把握用柄30を握っているときの、第一および第二の手接触電極32および34との手の接触を示している。指、またより具体的には中指、薬指および小指が第一の手接触電極32と、またしたがって監視用電気回路と接触するようになることに注目することができる。第一の手接触電極32はここでは、剪定ばさみの利用位置における、把握用柄30の下部に配置されている。
【0137】
手のひらPが、把握用柄30の上部にここでは配置されている第二の手接触電極34と接触するようになっている。
【0138】
手の人差指は、レバー28を作動させるために空いている。
【0139】
利用者の空いている方の手は、指が切断部材と接触するようになる位置において示されている。剪定ばさみ10の把握用柄をつかんでいる手および切断部材と接触するようになっている手は、人体を象徴する線によって接続されている。
【0140】
電動機の制御用電子基板26は、原動機の異なる相の電気供給を制御するように電動機に接続されている。該制御用電子基板は、フック16への可動刃14の閉鎖を引き起こす方向における原動機の回転を制御するために利用されることができる。該制御用電子基板は、緊急停止の際に、切断部材の開放を引き起こしまたその閉鎖を阻む逆回転方向において利用されることもできる。最後に該制御用電子基板は、例えば原動機の相をショートさせることによる電磁ブレーキとして利用されることができる。
【0141】
制御用電子基板はまた、例えば利用者の背中に着用される電気バッテリのような電源24に接続される。
【0142】
図2はまた、剪定ばさみのアースと第二の手接触電極34との間で測定される監視用電圧V
E2も示している。
【0143】
参照記号13は、剪定ばさみの刃14、16を覆いうるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)層のような、腐食防止かつ/または電気絶縁の、薄い被覆を示している。そのような絶縁層の使用は、発電機56が交流電流発生器であるとき、本発明の工具の動作を妨げるものではなく、またとりわけ緊急停止装置の始動を妨げるものではない。監視用交流電流は実際に、電気絶縁層にもかかわらず、剪定ばさみの刃14、16との利用者の指の接触の場合に循環することができる。この場合、切断工具との指の接触インピーダンスZDは、容量成分を有する。
【符号の説明】
【0144】
10 安全確保された切断工具
12 導電性の切断部材
20 作動用原動機
28 切断始動制御装置
30 把握用柄
32 第一の手接触電極
34 第二の手接触電極
40 緊急停止装置
42 監視用電気回路
44 測定装置
74 コンパレータ