(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】水素エネルギー制御システムおよび水素エネルギー制御システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20221116BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20221116BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20221116BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20221116BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20221116BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20221116BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20221116BHJP
【FI】
H02J3/38 120
H02J15/00 G
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
H01M8/04 Z
H01M8/0656
H02J3/38 170
(21)【出願番号】P 2020559609
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2018045709
(87)【国際公開番号】W WO2020121441
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2016年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 剛史
(72)【発明者】
【氏名】山根 史之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 新
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】田上 哲治
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/078875(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/158762(WO,A1)
【文献】特開2017-076611(JP,A)
【文献】特開2011-182516(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187153(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 15/00
H02J 3/00
H02J 3/32
H02J 13/00
H01M 8/04
H01M 8/0656
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力により少なくとも水素を生成する水素エネルギーシステムと、
電力網に電力を供給する発電設備の発電計画を行う電力網制御システムと、
水素輸送を管理する水素輸送システムと、
前記
水素エネルギーシステムと、
前記電力網制御システムとの通信情報に基づき、前記水素エネルギーシステムを制御する水素エネルギー統合管理システムと、
を備える、水素エネルギー制御システムであって、
前記水素エネルギー統合管理システムは、
前記水素エネルギーシステムにおいて電力を水素に変換する充電要求のデ
ータを前記電力網制御システム
から前記水素エネルギー統合管理システムへと通信する第1通信部と、
水素需要デー
タを前記水素輸送システムから
前記水素エネルギー統合管理システムへと通信する第2通信部と、
前記水素需要データに基づき、目標水素生成量を取得する目標水素量取得部と、
前記目標水素生成量と前記充電要求のデータとに基づき、前記水素エネルギーシステム
において電力を水素に変換する運転計画を生成する運転計画部と、を有する、
水素エネルギー制御システム。
【請求項2】
前記電力網制御システムは、複数の充電要求を有し、
前記電力網の電力供給が需要を超える充電時間帯に対して、前記複数の充電要求の中のいずれかを前記水素エネルギー統合管理システムに前記第2通信部を介して予め要求し、
前記運転計画部は、前記充電時間帯において、前
記複数の充電要求の中のいずれかの充電要求に対応する水素製造工程を計画する、請求項1に記載の水素エネルギー制御システム。
【請求項3】
再生可能エネルギーによる発電を制御する再生可能エネルギー制御システムを更に備え、
前記水素エネルギー統合管理システムは、
再生可能エネルギー発電予測結果のデー
タを前記再生可能エネルギー制御システム
から前記水素エネルギー統合管理システムへと通信する第3通信部を更に有し、
前記運転計画部は、前記再生可能エネルギー発電予測結果のデータにも基づき、前記水素エネルギーシステムにおける運転計画を生成する、請求項1又は2に記載の水素エネルギー制御システム。
【請求項4】
前記水素エネルギー統合管理システムは、
前記水素エネルギーシステムの水素生成特性に少なくとも基づき、前記目標水素生成量を生成するための時系列な水素システムの制約条件を演算する制約条件演算部を更に有し、
前記電力網制御システムは、
前記時系列な水素システムの制約条件に基づき、時系列な
充電要求を計画する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の水素エネルギー制御システム。
【請求項5】
前記水素需要データには、出荷日、出荷時刻、及び出荷量の内の少なくとも一つが含まれ、
前記目標水素生成量は、前記水素エネルギーシステムが有する水素タンクの目標残量に対応し、1日の所定時刻、及び出荷時刻の内の少なくとも一方に対する目標残量である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水素エネルギー制御システム。
【請求項6】
制約計算用パラメータとし
て、系統から水素システムへの充電を行うべき充電時間帯の開始時間と終了時間、及び前記充電時間帯の重要度
と、充電可能時間帯及び前記充電可能時間帯の重要度と、充電可能電力量及び前記充電可能電力量の需要度と
が少なくとも含まれ、
前記制約条件演算部は、前記時系列な水素システムの制約条件とし
て、充電前最低キープ時間、充電可能時間帯、充電後最低キープ時間、及び充電可能電力量のうちの少なくともいずれかを演算する、請求項4に記載の水素エネルギー制御システム。
【請求項7】
前記運転計画部は、前記電力網制御システムに、前記水素エネルギーシステムの
充電の開始時間と終了時間、前記運転計画の成功又は失敗、及び前記水素エネルギーシステムの対応不能電力の内の少なくともいずれかを含む情報をアンサーバックとし送信する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の水素エネルギー制御システム。
【請求項8】
前記運転計画部は、前記運転計画の作成が失敗した場合に、前記電力網制御システムからの
充電要求を再び受け付け、運転計画を再度実施する、請求項7に記載の水素エネルギー制御システム。
【請求項9】
前記運転計画部は、前記運転計画の作成が失敗した場合に、所定の時間が経過するまでアンサーバックを保留し、返答条件がそろってからアンサーバックを行う、請求項7に記載の水素エネルギー制御システム。
【請求項10】
前記運転計画部は、前記運転計画よりも短周期の運転計画を更に生成する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の水素エネルギー制御システム。
【請求項11】
前記運転計画部は、前記電力網制御システムのアルタイムな
充電要求に対して、前記水素エネルギーシステムにおけるリアルタイムな運転計画を生成する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の水素エネルギー制御システム。
【請求項12】
前記水素エネルギー統合管理システムは、
充電状況の表示画面、及び制約を設定するための表示画面の少なくとも一方を表示部に表示させる表示制御部を更に有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の水素エネルギー制御システム。
【請求項13】
前記水素エネルギーシステムは、蓄電池、及び蓄熱槽の少なくとも一方を有する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の水素エネルギー制御システム。
【請求項14】
前記水素エネルギーシステムは、
前記水素を製造する水素製造装置と、
前記水素を気体として貯蔵する気体水素タンクと、
前記気体水素タンクから気体水素を外部に抽出する気体水素排出装置と、
前記水素から電力と熱を製造する水素発電装置と、
を有する、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の水素エネルギー制御システム。
【請求項15】
電力により少なくとも水素を生成する水素エネルギーシステムと、
電力網に電力を供給する発電設備の発電計画を行う電力網制御システムと、
水素輸送を管理する水素輸送システムと、
前記
水素エネルギーシステムと、
前記電力網制御システムとの通信情報に基づき、前記水素エネルギーシステムを制御する水素エネルギー統合管理システムと、
を備え
前記水素エネルギー統合管理システムは、
前記水素エネルギーシステムにおいて電力を水素に変換する充電要求の
データを前記電力網制御システム
から前記水素エネルギー統合管理システムへと通信する第1通信部と、
水素需要デ
ータを前記水素輸送システムから
前記水素エネルギー統合管理システムへと通信する第2通信部と、
を有する水素エネルギー制御システムの制御方法であって、
前記水素需要データに基づき、目標水素生成量を取得する目標水素量取得工程と、
前記目標水素生成量と前記充電要求のデータとに基づき、
前記水素エネルギーシステムにおいて電力を水素に変換する運転計画を生成する運転計画工程と、を有する、
水素エネルギー制御システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水素エネルギー制御システムおよび水素エネルギー制御システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新たなエネルギーとして水素エネルギーが注目されつつある。水素システムの水素製造装置により水素が生成され、水素タンクに貯蔵される。この水素タンクに貯蔵された水素を、水素発電装置により再び電力に変換することが可能である。このため、水素システムの装置群を電力網に接続することで、電力網から電力を供給されることも、電力網に電力を供給することも可能である。水素発電装置の例として、燃料電池がある。こように、水素システムにより、電力網の安定化と、水素需要への対応を行うことが可能となる。
【0003】
さらに将来、水素を燃料とする燃料電池車両の増加や、家庭用の純水素燃料電池の増加などにより、水素自体の需要も増加していくと予想されている。この場合、水素を輸送したり、パイプラインで送ったりすることになる。このため、水素と電力のエネルギー管理を効率的に行うことが求められている。
【0004】
ところが、電力網の管理、水素需要の管理、水素システムの管理を1つの管理制御システムにより行う場合、処理が複雑になってしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水素エネルギーシステムの運転計画により電力網制御システムと水素輸送システムとの独立した要求処理の調整が可能な水素エネルギー制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る水素エネルギー制御システムは、電力により少なくとも水素を生成する水素エネルギーシステムと、電力網に電力を供給する発電設備の発電計画を行う電力網制御システムと、水素輸送を管理する水素輸送システムと、前記電力網制御システムと、電力網制御システムとの通信情報に基づき、前記水素エネルギーシステムを制御する水素エネルギー統合管理システムと、を備える、水素エネルギー制御システムであって、前記水素エネルギー統合管理システムは、充放電要求の内の少なくとも充電要求のデータの通信を前記電力網制御システムとの間で行う第1通信部と、水素需要データの通信を前記水素輸送システムとの間で行う第2通信部と、前記水素需要データに基づき、目標水素生成量を取得する目標水素量取得部と、前記目標水素生成量と前記充電要求のデータとに基づき、前記水素エネルギーシステムにおける運転計画を生成する運転計画部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、電力網制御システムと水素輸送システムとの独立した要求処理の調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】水素エネルギー制御システムの構成を示すブロック図。
【
図2】水素エネルギーシステムの構成を電池として表した概念図。
【
図3】水素エネルギー統合管理システムの詳細な構成を示すブロック図。
【
図5A】制約計算用パラメータ中の放電時間帯の重要度を示す図。
【
図5B】制約計算用パラメータ中の充電時間帯の重要度を示す図。
【
図5C】放電、充電の制約に対する重要度を示す図。
【
図6】液体水素需要と目標液体水素残量計算の処理概念図。
【
図8】
図7内で使用される制約条件の数値例を示す図。
【
図10】
図9内で使用される制約条件の数値例を示す図。
【
図11】電力網制御システムからの充放電要求の一例を示す図。
【
図12】再生可能エネルギー発電予測結果のデータの一例を示す図。
【
図13】アンサーバック(OK/NG)の一例を示す図。
【
図14】データのプロトコルと処理の流れを示す図。
【
図15】リアルタイムにシステム間で送受信するデータ例を示す図。
【
図16C】アルタイム短周期電力要求の無効電力要求の例を示す図。
【
図16E】リアルタイム短周期電力要求のLFC要求の例を示す図。
【
図17】リアルタイム処理のシーケンスの例を示す図。
【
図18】リアルタイムにシステム間で送受信するデータのプロトコルと処理の流れを示す図。
【
図19】一実施形態の変形例1に係る水素エネルギー統合管理システムの詳細な構成を示すブロック図。
【
図20】水素エネルギーシステムの充放電状況の表示画面例を示す図。
【
図21】水素エネルギーシステムの制約の表示画面例を示す図。
【
図22】一実施形態の変形例2に係る水素エネルギーシステムの詳細な構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る水素エネルギー制御システムおよび水素エネルギー制御システムの制御方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0011】
(一実施形態)
図1は、一実施形態に係る水素エネルギー制御システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る水素エネルギーシステム1は、水素エネルギーシステム10と、電力網制御システム20と、水素輸送システム30と、再生可能エネルギー制御システム40と、水素エネルギー統合管理システム50と、再生可能エネルギー由来発電設備60とを備えて構成されている。
図1では、更に化石燃料由来発電設備70と、水素流通網80と、温水網90とが図示されている。
【0012】
水素エネルギーシステム10は、電力により少なくとも水素を生成する。水素エネルギーシステム10の詳細な構成は、後述する。
【0013】
電力網制御システム20は、電力網74に電力を供給する発電設備、例えば火力発電所72の発電計画を行う。この電力網制御システム20は、充放電要求の内の少なくとも充電要求のデータの通信を水素エネルギー統合管理システム50との間で行う。
【0014】
水素輸送システム30は、水素輸送を管理する。この水素輸送システム30は、水素需要データの通信を水素エネルギー統合管理システム50との間で行う。
【0015】
再生可能エネルギー制御システム40は、再生可能エネルギー由来発電設備60を制御する。この再生可能エネルギー制御システム40は、再生可能エネルギー発電予測結果のデータの通信を水素エネルギー統合管理システム50との間で行う。
【0016】
水素エネルギー統合管理システム50は、電力網制御システム20と、水素輸送システム30と、再生可能エネルギー制御システム40との通信情報に基づき、水素エネルギーシステム10を制御する。水素エネルギー統合管理システム50の詳細な構成は、後述する。
【0017】
再生可能エネルギー由来発電設備60は、自然エネルギー由来の発電設備を有する。この再生可能エネルギー由来発電設備60は、太陽光を用いた太陽光発電装置62と、風力を用いて発電する風力発電装置64とを有する。この再生可能エネルギー由来発電設備60は、化石燃料などの燃料が不要であるが、その発電量は天候や風力などの環境の影響を受けるため不安定である。なお、再生可能エネルギー由来発電設備60は、バイオマスやバイオマス由来廃棄物などの新エネルギーを利用した発電設備でもよい。
【0018】
化石燃料由来発電設備70は、火力発電所72と、電力網74とを有する。火力発電所72は、化石燃料を用いて発電する。電力網74は、再生可能エネルギー由来発電設備60、化石燃料由来発電設備70、及び水素発電装置114が接続された電力網であり、再生可能エネルギー由来発電設備60、化石燃料由来発電設備70、及び水素発電装置114が発電した電力が供給される。
【0019】
水素流通網80は、液体水素流通網82と、気体水素流通網84とを有する。液体水素流通網82は、水素を液体として輸送して、水素需要に対して供給する流通網である。気体水素流通網84は、水素を気体として輸送して、水素需要に対して供給する流通網である。
【0020】
ここで、水素エネルギーシステム10の詳細な構成を説明する。水素エネルギーシステム10は、パワーコンディショナ装置100と、水素製造装置102と、気体水素タンク104と、液化装置106と、液体水素タンク108と、液体水素排出装置110と、気化装置112と、水素発電装置114とを備えて構成されている。
【0021】
パワーコンディショナ装置100は、例えばコンバータを含んで構成される。このコンバータは、再生可能エネルギー由来発電設備60が出力した直流電力を所定の交流電力に変換する。
【0022】
水素製造装置102は、電気と水から、水電解により水素を製造する。すなわち、この水素製造装置102は、再生可能エネルギー由来発電設備60、及び電力網74の少なくともいずれかから供給された電力を用いて、水の電気分解により水素を製造し、この製造した水素を気体水素タンク104に蓄える。水素製造装置102は、例えば、アルカリ性の溶液に電流を流すことにより、水素と酸素とを製造する電気水分解装置である。また、水素製造装置102は、水素配管を介して、生成した水素を気体水素タンク104に蓄える。
【0023】
気体水素タンク104は、水素製造装置102により製造された気体の水素を蓄える。この気体水素タンク104は、水素製造装置102と、液化装置106と、気体水素流通網6に配管を介して接続されている。また、この気体水素タンク104は、液化装置106と、気体水素流通網84に気体の水素を供給する。
【0024】
液化装置106は、気体水素タンク104から供給された気体水素を液体水素に変換する。この液化装置106は、気体水素タンク104から供給された水素を液体水素に変換し、配管を介して液体水素タンク108に供給する。
【0025】
液体水素タンク108は、液化装置106から供給された液体水素を貯蔵する。この液体水素タンク108は、液化装置106から供給された液体水素を蓄えると共に、液体水素排出装置110に配管を介して液体水素を供給する。
【0026】
液体水素排出装置110は、液体水素タンク108から供給された液体水素を液体水素流通網82、及び気化装置112に供給する。なお、液体水素排出装置110は、液体水素タンク108と一体的に構成されてもよい。
【0027】
気化装置112は、液体水素排出装置110から供給された液体水素を気体の水素に変換する。すなわち、この気化装置112は、液体水素排出装置110から供給された液体水素を気体の水素に変換し、配管を介して気体水素タンク104に供給する。
【0028】
水素発電装置114は、気体水素タンク104から供給される水素を用いて、電力と、熱とを生成する。ここでの熱は、例えば温水として温水網90へ供給される。水素発電装置114は、例えば燃料電池を有している。すなわち、この水素発電装置114は、気体水素タンク104から供給される水素を用いて電気を発電すると共に、熱を生成する。酸素は空気中の酸素を利用してもよいし、水素製造装置102が水素製造に伴い生成する酸素を酸素タンクに蓄積したものを使用してもよい。
【0029】
図2は、水素エネルギーシステム10の構成を電池として表した概念図である。
図2に示すように、水素エネルギーシステム10は、再生可能エネルギー由来発電設備60及び化石燃料由来発電設備70から供給される電力により水素を生成することにより充電する。すなわち、本実施形態に係る水素エネルギーシステム10の充電とは、電力を気体の水素に変換することを意味する。充電可能電力量は、気体水素タンク104の空き容量に依存する。
【0030】
一方で、放電可能電力量は、気体水素タンク104及び液体水素タンク108の蓄積容量に依存する。この場合、気体水素の需要及び液体水素の需要の影響を受ける。また、水素エネルギーシステム10の放電可能電力量は、温水網90への温水の供給量の影響も受ける。また、本実施形態に係る水素エネルギーシステム10の放電とは、気体水素タンク104の水素を電力に変換することを意味する。
【0031】
このように、水素エネルギーシステム10の充放電は、電力だけではなく、熱量や水素量を考慮する必要があるため、常に電力需給要求に応えられるとは限らない。そのため、水素エネルギーシステム10には、充電可能時間帯、放電可能時間帯、充電可能電力量、放電可能電力量などの制約が設けられる。
【0032】
図3は、水素エネルギー統合管理システム50の詳細な構成を示すブロック図である。
図3に示すように、水素エネルギー統合管理システム50は、第1通信部502と、第2通信部504と、第3通信部506と、管理部508と、記憶部510とを、有する。
【0033】
第1通信部502は、電力網制御システム20と水素エネルギー統合管理システム50との間の第1インターフェースである。
第2通信部504は、水素輸送システム30と水素エネルギー統合管理システム50との間の第2インターフェースである。
第3通信部506は、再生可能エネルギー制御システム40と水素エネルギー統合管理システム50との間の第3インターフェースである。なお、第1通信部502、第2通信部504、及び第3通信部506の詳細な通信内容は後述する。
【0034】
管理部508は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、水素エネルギーシステム10と、電力網制御システム20と、水素輸送システム30と、再生可能エネルギー制御システム40と、を管理する。この管理部508は、目標水素量取得部508aと、制約条件設定部508bと、運転計画部508cと、を有する。
目標水素量取得部508aは、水素輸送システム30から送信された水素需要データに基づき、目標水素生成量を取得する。
【0035】
制約条件設定部508bは、水素エネルギーシステム10の水素生成特性、又は水素発電特性に少なくとも基づき、目標水素生成量を生成するための時系列な水素システムの制約条件を演算する。
運転計画部508cは、目標水素量取得部508aが取得した目標水素生成量と、電力網制御システム20から送信された充電要求のデータとに基づき、水素エネルギーシステム10における運転計画を生成する。なお、目標水素量取得部508a、制約条件設定部508b、及び運転計画部508cの詳細も後述する。
【0036】
記憶部510は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク等により実現される。この記憶部510は、管理部508が実行するプログラムと、各種の制御用のデータを記憶する。
【0037】
図4に基づき、第1通信部502、第2通信部504、及び第3通信部506の通常制御時の詳細な通信情報に関して説明する。
図4は、電力網制御システム20と、水素輸送システム30と、再生可能エネルギー制御システム40と、水素エネルギー統合管理システム50との間の通信情報を示す図である。これらの通信情報は、事前にシステム間で送受信される情報である。
【0038】
図4に示すように、第1通信部502(
図3)は、充放電要求の内の少なくとも充電要求のデータの通信を電力網制御システム20との間で行う。より具体的には、第1通信部502は、電力網制御システム20から制約計算用パラメータと、充放電要求を受信する。
【0039】
一方で、この第1通信部502は、水素エネルギー統合管理システム50から水素システム制約と、アンサーバック(OK/NG)とを電力網制御システム20へ送信する。制約計算用パラメータ、充放電要求、水素システム制約、およびアンサーバック(OK/NG)は、例えば、1日に1回などの決められた周期で通信される。
【0040】
第2通信部504(
図3)は、水素需要データの通信を水素輸送システム30との間で行う。水素需要データは、例えば、週に1回などの決められた周期で通信される。
【0041】
第3通信部506(
図3)は、再生可能エネルギー発電予測結果のデータの通信を再生可能エネルギー制御システム40との間で行う。再生可能エネルギー発電予測結果のデータは、例えば、1日に1回などの決められた周期で通信される。なお、リアルタイム制御時の第1通信部502、第2通信部504、及び第3通信部506の通信情報に関しては、後述する。
【0042】
ここで、
図5A乃至5Cに基づき、上述の制約計算用パラメータの詳細を説明する。
図5Aは、制約計算用パラメータ中の放電時間帯の重要度を示す図である。
図5Bは、制約計算用パラメータ中の充電時間帯の重要度を示す図である。
図5Cは、制約計算用パラメータ中の放電、充電の制約に対する重要度を示す図である。
図5A乃至5Cに示すように、電力網制御システム20側から水素エネルギー統合管理システム50に送信する制約計算用パラメータには、放電時間帯の重要度、充電時間帯の重要度、放電、充電の制約に対する重要度が含まれる。
【0043】
図5Aに示すように、放電時間帯の重要度は、電力網74に放電可能な時間帯を重要度で示す制約条件である。例えば、10:00~11:59に放電する場合には、重要度がAであり最も望ましいことを示している。すなわち、電力網74での電力需要が10:00~11:59で最も高くなる。次が重要度Bである17:00~18:59であり、その次が重要度Cである8:00~9:59である。これらから分かるように、電力需要が多く、電力不足がある時間帯には放電の重要度が上がる。
【0044】
図5Bに示すように、充電時間帯の重要度は、水素エネルギーシステム10に充電可能な時間帯を重要度で示す制約条件である。例えば、13:00~15:59に充電する場合には、重要度がAであり最も望ましいことを示している。すなわち、電力網74での供給過多になる時間帯が13:00~15:59である。次に電力供給が過多になる時間帯が重要度Bである16:00~16:59である。これらから分かるように、電力需要が少なく、供給過多になる時間帯には充電の重要度が上がる。
【0045】
図5Cに示すように、放電、充電の制約に対する重要度は、放電可能時間帯、放電可能電力量、充電可能時間帯、充電可能電力量を重要度で示す制約条件である。例えば、放電可能時間帯の重要度は100、放電可能電力量の重要度は20、充電可能時間帯の重要度は1、充電可能電力量の重要度は2の場合、放電可能時間帯の重要度が最も高く、次に放電可能電力量、充電可能電力量、充電可能時間帯という順になることが分かる。
【0046】
図6は、液体水素需要と目標液体水素残量計算の処理概念図であり、
図6に基づき、目標水素量取得部508a(
図3)の処理概念を説明する。
図6に示すように、目標水素量取得部508aは、例えば第2通信部504(
図3)が
水素輸送システム30から受信した液体水素の水素需要に基づき、日ごとの所定時刻、例えば1日の始まりである0:00の液体水素タンク108(
図1)の目標水素残量と出荷時刻での目標水素残量を設定する。ここで、水素需要には、出荷日、出荷時刻、出荷量の情報が含まれる。また、目標水素残量は、出荷量+余裕量である。この余裕量は任意に設定可能である。すなわち、目標水素量取得部508aは、出荷時の目標液体水素残量を水素エネルギーシステム10の稼働可能日数で当分割りして、1日の始まり、例えば0:00の液体水素タンク108(
図1)の目標液体水素残量を取得する。
【0047】
同様に、目標水素量取得部508aは、例えば第2通信部504(
図3)が
水素輸送システム30から受信した気体水素の水素需要に基づき、日ごとの所定時刻、例えば1日の始まり、例えば0:00の気体水素タンク104(
図1)の目標水素残量と出荷時刻とでの目標水素残量を設定する。すなわち、目標水素量取得部508aは、出荷時の目標気体水素残量を水素エネルギーシステム10の稼働可能日数で当分割りして、1日の始まり、例えば0:00の気体水素タンク104の目標気体水素残量を取得する。なお、このような稼働可能日数での当分割りよる方法に限らず、他の方法で目標液体水素残量、目標気体水素残量を設定しても良い。また、目標液体水素残量、及び目標気体水素残量の内の一方だけを設定してもよい。
【0048】
まず、
図7及び
図8に基づき、制約条件設定部508b(
図3)における放電時の水素エネルギーシステム10の水素システム制約について説明する。
図7は、水素システム制約の例(放電)を示す図である。
図7の縦軸はプラス側が水素エネルギーシステム10の放電電力を示し、マイナス側が充電電力を示している。また、横軸は放電動作時の経過時間を示している。
図8は、
図7内で使用される制約条件の数値例を示す図である。
【0049】
図7に示すように、制約条件設定部508bは、目標水素量取得部508aにより得られた目標液体水素残量、及び目標気体水素残量と、電力網制御システム20から供給された制約計算用パラメータと、を用いて、経過時間に対する放電可能電力を制約条件として設定する。アンダーバーが引かれている「放電前最低キープ時間」、「放電可能時間帯」、「放電後最低キープ時間」、「放電可能電力量」は水素需要などによって動的に変化する制約である。
【0050】
すなわち、「放電前最低キープ時間」は、水素発電装置114(
図1)の駆動を開始する時間を含み、例えば気体水素タンク104(
図1)の蓄積水素量を考慮した時間である。「放電可能時間帯」は、制約計算用パラメータ中の放電時間帯の重要度に基づく時間帯である。「放電後最低キープ時間」は、水素発電装置114(
図1)の駆動を停止する時間を含み、例えば気体水素タンク104(
図1)の蓄積水素量を考慮した時間である。「放電可能電力量」は、制約計算用パラメータ中の放電可能電力量の重要度、気体水素タンク104(
図1)の蓄積水素量などを考慮した電力量である。
【0051】
一方で、「放電電力変化速度上限値」、「放電最低キープ時間」、「放電電力変化速度下限値」、は水素エネルギーシステム10における放電特性の静的な仕様で決まる制約である。より具体的には、水素発電装置114(
図1)における放電特性の静的な仕様で決まる制約である。
【0052】
次に、
図9及び
図10に基づき、制約条件設定部508b(
図3)における充電時の水素エネルギーシステム10の水素システム制約について説明する。
図9は、水素システム制約の例(充電)を示す図である。
図9の縦軸はプラス側が水素エネルギーシステム10の放電電力を示し、マイナス側が充電電力を示している。また、横軸は11動作時の経過時間を示している。
図10は、
図9内で使用される制約条件の数値例を示す図である。
【0053】
図9に示すように、制約条件設定部508bは、目標水素量取得部508aにより得られた目標液体水素残量、及び目標気体水素残量と、電力網制御システム20から供給された制約計算用パラメータとを用いて、経過時間に対する充電可能電力を制約条件として設定する。アンダーバーが引かれている「充電前最低キープ時間」、「充電可能時間帯」、「充電後最低キープ時間」、「充電可能電力量」は水素需要などによって動的に変化する制約である。
【0054】
すなわち、「充電前最低キープ時間」は、例えば水素製造装置102(
図1)の稼働状態や気体水素タンク104における残量の状態などにより求めることができる。「充電可能時間帯」は、制約計算用パラメータ中の充電時間帯の重要度に基づく時間帯である。「充電後最低キープ時間」は、水素製造装置102(
図1)の駆動を停止する時間を含み、例えば気体水素タンク104(
図1)の蓄積水素量を考慮した時間である。「充電可能電力量」は、制約計算用パラメータ中の充電可能電力量の重要度、気体水素タンク104(
図1)の蓄積水素量などを考慮した電力量である。
【0055】
一方で、「充電変化速度下限値」、「放電最低キープ時間」、及び「充電変化速度上限値」、は水素エネルギーシステム10における充電特性の静的な仕様で決まる制約である。より具体的には、「充電変化速度下限値」、「放電最低キープ時間」、及び「充電変化速度上限値」、は水素製造装置102(
図1)における充電特性の静的な仕様で決まる制約である。
【0056】
図11は、電力網制御システム20からの充放電要求の一例を示す図である。
図11に示すように、電力網制御システム20は、制約条件設定部508bにより設定された水素システム制約に基づき、時系列な充放電要求を計画する。この充放電要求の中には、時間帯と放電量が異なる複数の放電要求と、時間帯と充電量が異なる複数の充電要求とが含まれる。すなわち、電力網制御システム20は、複数の放電要求と、複数の充電要求を有することが可能である。例えば、電力網制御システム20は、電力網74の電力供給が需要を超える充電時間帯に対して、複数の充電要求の中のいずれかを水素エネルギー統合管理システム50に第2通信部504を介して予め要求する。これにより、電力網74の供給状態に応じた水素エネルギーシステム10への電力供給が可能となる。なお、この例では単位をMWとしたが、MWhでも良い。また充放電要求は、デマンドレスポンスでも良い。
【0057】
図12は、再生可能エネルギー制御システム40の再生可能エネルギー発電予測結果のデータの一例を示す図である。
図12に示すように、再生可能エネルギー制御システム40は、時系列な再生可能エネルギー発電予測結果のデータを水素エネルギー統合管理システム50に送信する。
【0058】
図13は、運転計画部508c(
図3)による運転計画に基づくアンサーバック(OK/NG)の一例を示す図である。
図13に示すように、運転計画部508cは、電力網制御システム20からの充放電要求と、再生可能エネルギー制御システム40の再生可能エネルギー発電予測結果とに基づき、時系列な充放電電力の計画を行う。そして、水素エネルギー統合管理システム50は、電力網制御システム20からの充放電要求に答えられる場合には、アンサーバックとしてOKの情報を含む信号を電力網制御システム20に送信する。一方で、水素エネルギー統合管理システム50は、電力網制御システム20からの充放電要求に答えられない場合には、アンサーバックとしてNGと足りない電力量の情報を含む信号を電力網制御システム20に送信する。なお、運転計画部508cは、前日に翌日の運転計画を立てても良いし、水素需要と再生可能エネルギー発電予測が長期分のデータを入手できる場合は、翌日に限らず、数週間、数か月、数年、という長期の運転計画を行っても良い。
【0059】
図14は、事前にシステム間で送受信するデータのプロトコルと処理の流れを示す図である。
図14に示すように、まず、水素輸送システム30は、第2通信部504を介して気体水素、及び液体水素の需要量と、出荷日時を水素エネルギー統合管理システム50に送信する(プロトコルP100)。
【0060】
次に、水素エネルギー統合管理システム50の目標水素量取得部508aは、気体水素、及び液体水素の需要量に基づき、日ごとの所定時刻における液体水素タンク108の目標水素残量と、出荷時刻での目標水素残量を設定する(プロトコルP102)。また、電力網制御システム20は、制約計算パラメータを算出し、水素エネルギー統合管理システム50に送信する(プロトコルP104)。
【0061】
次に、水素エネルギー統合管理システム50の制約条件設定部508bは、制約計算パラメータと目標水素残量とを用いて水素エネルギーシステム10の時系列な水素システム制約を演算し、設定する(プロトコルP106)。続いて、制約条件設定部508bは、演算した水素システム制約を電力網制御システム20に送信する。
【0062】
次に、電力網制御システム20は、水素システム制約を用いて時系列な充放電要求を計画し、水素エネルギー統合管理システム50の運転計画部508cに送信する(プロトコルP108)。また、再生可能エネルギー制御システム40は、再生可能エネルギー発電予測結果を水素エネルギー統合管理システム50の運転計画部508cに送信する(プロトコルP110)。
【0063】
次に、運転計画部508cは、時系列な充放電要求と再生可能エネルギー発電予測結果とに基づき、水素エネルギーシステム10の運転計画を生成し、アンサーバックを電力網制御システム20に送信する(プロトコルP112)。
次に、電力網制御システム20は、アンサーバックが全ての時間でOKであるか否かを判定する(プロトコルP114)。全てがOKであれば(プロトコルP114のOK)、プロトコルP108で計画した運転計画に従った制御を行う。一方で、一部にNGが含まれていれば(プロトコルP114のNG)、運転計画の変更を含むプロトコルP108からの処理を繰り返す。なお、運転計画部508cは、運転計画の作成が失敗した場合に、所定の時間が経過するまでアンサーバックを保留し、返答条件がそろってからアンサーバックを行ってもよい。所定の時間が経過するまでに、再生可能エネルギー発電予測結果が変更され、運転計画の全てがOKになる場合がある。この場合、運転計画の変更を含むプロトコルP202からの処理を繰り返すよりも、所定時間待った方が、全体としての処理効率があがる可能性があるためである。
【0064】
次に、
図15に基づき、リアルタイムにシステム間で送受信するデータについて説明する。
図15は、リアルタイムにシステム間で送受信するデータ例を示す図である。
図15に示すように、第1通信部502(
図3)は、電力網制御システム20からリアルタイム放電要求、リアルタイム充電要求、リアルタイム短周期電力要求を受信する。ここで、周期Ta>周期Tdの関係があり、例えば周期Taは数分のオーダである。これらリアルタイム放電要求、およびリアルタイム充電要求は、周期Taでの要求信号であり、リアルタイム短周期電力要求は、周期Tdでの要求信号である。
【0065】
図16Aは、リアルタイム放電要求の例を示す図である。
図16Bは、リアルタイム充電要求の例を示す図である。
【0066】
また、第1通信部502(
図3)は、水素エネルギー統合管理システム50からリアルタイム水素システム制約と、リアルタイムのアンサーバック(OK/NG)とを電力網制御システム20へ送信する。これらリアルタイム水素システム制約と、リアルタイムのアンサーバック(OK/NG)とは周期Taでの送信信号である。
【0067】
図16Cは、リアルタイム短周期電力要求の無効電力要求の例を示す図である。
図16Dは、リアルタイム短周期電力要求の無効電力要求の異なる例を示す図である。
図16Eは、リアルタイム短周期電力要求のLFC(負荷周波数制御:load frequency control)要求の例を示す図である。
図16C乃至
図16Eに示すように、リアルタイム短周期電力要求は、例えば、Td分後のTd分間の短周期電力要求を表す。無効電力要求については、
図16Cに示すように有効電力と無効電力の対でもよいし、
図16Dに示すように力率と無効電力の対でも良い。
【0068】
このように、リアルタイム短周期電力要求は、例えば系統の電圧安定化のための無効電力要求や、周波数安定化のための短周期要求であるLFCなどを指す。これらは制約や運転計画の計算が間に合わない可能性があるため、対応可能か否かのチェックにとどめ、対応不可能であれば対応しない。このため、周期Tdでは、リアルタイム水素システム制約と、リアルタイムのアンサーバック(OK/NG)とは電力網制御システム20へ送信されない場合がある。
【0069】
図15に示すように、第3通信部506(
図3)は、再生可能エネルギー制御システム40からリアルタイム再生可能エネルギー発電予測結果を受信する。このリアルタイム再生可能エネルギー発電予測結果は、周期Taでの通信により受信される。
【0070】
図17は、リアルタイム処理のシーケンスの例を示す図である。ここでは、処理周期をTa分とする。Taは任意である。すなち、t0~t1、t1~t2、t2~t3、t3~t4の間隔はTa分である。また、水素発電装置114が発電を行うために停止状態から発電可能状態に至るまでの時間に余分時間を加算した時間をTb分とする。さらにまた、水素製造装置が停止状態から充電を行うために製造可能状態に至るまでの時間に余分時間を加算した時間をTc分とする。そして、TbとTcの小さい方の値をTbcとする。
【0071】
リアルタイム水素システム制約は、Tbc分後以降の制約を表す。例えばt0分に電力網制御システム20に送信されたリアルタイム水素システム制約は、t0+Tbc分後以降の制約として設定される。制約条件設定部508b(
図3)は、リアルタイムの制約計算の際には、実際の水素製造実績、再生可能エネルギー発電実績、現在以降の放電要求、現在以降の充電要求を用いてリアルタイム水素システム制約を演算し、設定する。例えば、現在以降の放電要求は、Tb分前の、リアルタイム放電要求を利用し、現在以降の充電要求は、Tc分前の、リアルタイム充電要求を利用する。一方で、リアルタイム放電要求は、Tb分後以降の要求を行い、リアルタイム充電要求は、Tc分後以降の要求を行う。リアルタイム再生可能エネルギー発電予測結果は、再生可能エネルギー発電予測結果と同様であるが、現在以降の予測結果である。
【0072】
図18は、リアルタイムにシステム間で送受信するデータのプロトコルと処理の流れを示す図である。ここでは、まず周期Taの場合のリアルタイム処理のプロトコルを説明し、次に周期Tdの場合のリアルタイム処理のプロトコルを説明する。
【0073】
周期Taの場合、まず水素エネルギー統合管理システム50の制約条件設定部508bは、制約計算パラメータ、目標水素残量、現在以降の充電要求、および放電要求を用いてリアルタイム水素システム制約を演算し、設定する(プロトコルP200)。続いて、制約条件設定部508bは、演算したリアルタイム水素システム制約を電力網制御システム20に送信する。
【0074】
次に、電力網制御システム20は、リアルタイム水素システム制約を用いてリアルタイムな充放電要求を計画し、リアルタイム充電要求、およびリアルタイム放電要求を水素エネルギー統合管理システム50の運転計画部508cに送信する(プロトコルP202)。また、再生可能エネルギー制御システム40は、リアルタイム再生可能エネルギー発電予測結果を水素エネルギー統合管理システム50の運転計画部508cに送信する(プロトコルP204)。
【0075】
次に、運転計画部508cは、リアルタイム充放電要求とリアルタイム再生可能エネルギー発電予測結果とに基づき、水素エネルギーシステム10のリアルタイム運転計画を生成し、アンサーバックを電力網制御システム20に送信する(プロトコルP206)。このように、運転計画部508cは、運転計画(
図14)よりも短周期の運転計画を更に生成する。
【0076】
次に、電力網制御システム20は、アンサーバックが全ての時間でOKであるか否かを判定する(プロトコルP208)。全てがOKであれば(プロトコルP208のOK)、プロトコルP202で計画した発電計画に従ったリアルタイム制御を行う。一方で、一部にNGが含まれていれば(プロトコルP208のNG)、運転計画の変更を含むプロトコルP202からの処理を繰り返す。運転計画部508cは、運転計画の作成が失敗した場合に、所定の時間が経過するまでアンサーバックを保留し、返答条件がそろってからアンサーバックを行ってもよい。所定の時間が経過するまでに、リアルタイム再生可能エネルギー発電予測結果が変更され、運転計画の全てがOKになる場合がある。この場合、運転計画の変更を含むプロトコルP202からの処理を繰り返すよりも、所定時間待った方が、全体としての処理効率があがる可能性があるためである。
【0077】
周期Tdの場合、電力網制御システム20は、短周期電力需要を算出し、水素エネルギー統合管理システム50の運転計画部508cに送信する(プロトコルP210)。運転計画部508cは、電力網制御システム20から短周期電力要求をチェックし(プロトコルP212)、対応可能か否かを判定する(プロトコルP214)。対応可能な場合(プロトコルP214の可能)、電力網制御システム20は、短周期電力への対応制御行う(プロトコルP216)。一方で、対応が不可能な場合(プロトコルP214の不可能)、制御を保留にして所定の時間が経過するまで待機する。
【0078】
以上のように本実施形態によれば、水素エネルギー統合管理システム50の目標水素量取得部508aが水素輸送システム30の水素需要データに基づき、目標水素生成量を取得し、水素エネルギー統合管理システム50の運転計画部508cが目標水素生成量と電力網制御システム20の充電要求のデータとに基づき、水素エネルギーシステム10における運転計画を生成することとした。これにより、電力網制御システム20と水素輸送システム30とが独立した制御を行っている場合にも、水素エネルギーシステム10の運転計画に基づく制御により電力網制御システム20と水素輸送システム30との独立した要求処理の調整が可能となる。
【0079】
(一実施形態の変形例1)
一実施形態の変形例1は、モニターに水素エネルギーシステム10の動作状態を表示させる表示制御部512を更に備える点で一実施形態と相違する。以下に一実施形態と相違する点に関して説明する。
【0080】
図19は、一実施形態の変形例1に係る水素エネルギー統合管理システム50の詳細な構成を示すブロック図である。
図19に示すように、水素エネルギー統合管理システム50は、表示制御部512を有する点で一実施形態と相違する。
【0081】
表示制御部512は、表示部、例えばモニターに水素エネルギーシステム10の動作状態を表示させる表示制御を行う。
【0082】
図20は、水素エネルギーシステム10の充放電状況の表示画面例を示す図である。
図20に示すように、表示制御部512は、水素エネルギーシステム10の充放電状況を示す数値と共にモニターに画面を表示する。
【0083】
図21は、水素エネルギーシステム10の制約の表示画面例を示す図である。
図21に示すように、表示制御部512は、水素エネルギーシステム10の放電時の制約を示す数値と共にモニターに画面を表示する。この場合、表示制御部512は、操作部の入力処理により数値の変更を行うことも可能である。表示制御部512は、充電も同等の画面を表示することが可能である。
【0084】
以上のように、一実施形態の変形例1によれば、充放電状況の表示画面をモニターに表示させることで、状況を理解しやすくなり不具合の発見が容易になる。また、放電時の制約を示す数値と共に表示画面をモニターに表示させることで、放電時の制約状況を理解しやすくなると共に、設定誤りを減少させることも可能となる。
【0085】
(一実施形態の変形例2)
一実施形態の変形例2は、水素エネルギーシステム10が蓄電池116と蓄熱槽118とを更に備える点で一実施形態と相違する。以下に一実施形態と相違する点に関して説明する。
【0086】
図22は、一実施形態の変形例2に係る水素エネルギーシステム10の詳細な構成を示すブロック図である。
図22に示すように、水素エネルギーシステム10は、蓄電池116と蓄熱槽118とを有する点で一実施形態と相違する。
【0087】
蓄電池116は、水素発電装置114の発電電力が不足する場合に電力網74への電力供給を補う。これにより、水素発電装置114の電力供給をより安定して行うことができる。また、蓄電池116は、水素発電装置114よりも応答速度が速いため、再生可能エネルギーなどを有効活用することが可能となる。
蓄熱槽118は、水素発電装置114を畜熱する。
【0088】
以上のように、一実施形態の変形例2によれば、水素エネルギーシステム10が蓄電池116を含むことで、再生可能エネルギーなどを有効活用することが可能となり、水素エネルギーシステム10全体の消費電力を抑えることができる。また、水素エネルギーシステム10が蓄熱槽118を含むことで、水素発電装置114からの排熱を、熱利用できる時間に合わせて供給することが可能となる。
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法及びプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法及びプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。