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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】光治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20221116BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20221116BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20221116BHJP
   A61B 18/20 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61M25/14 518
A61M25/00 530
A61B18/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020565097
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2019000470
(87)【国際公開番号】W WO2020144799
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小島 美穂
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-276499(JP,A)
【文献】実開平01-135901(JP,U)
【文献】米国特許第05409483(US,A)
【文献】米国特許第06159236(US,A)
【文献】特表2013-534148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
A61B 18/20
A61M 25/14
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する透明部を有する管状の第1シースと、
該第1シース内に配置され、光不透過性材料から形成されるとともに、光を透過させる光透過領域を側壁の一部分に有する管状の第2シースと、
前記第2シース内に配置され、光不透過性材料から形成されるとともに、光を透過させる光透過領域を側壁の一部分に有する管状の第3シースと、
前記第2シース内および前記第3シース内を長手方向に貫通し、前記第2シースおよび前記第3シースの径方向に光を射出する光治療部材と、を備え、
前記第2シースおよび前記第3シースは、長手軸回りの相対的な回転と該長手軸に沿う方向の相対的な移動との少なくとも一方が可能であり、
前記第3シースの前記光透過領域と前記第2シースの前記光透過領域とは、前記相対的な回転または前記相対的な移動によって重複可能である、光治療装置。
【請求項2】
前記第2シースは、前記第1シースに対して前記長手軸回りの回転と該長手軸に沿う方向の移動との少なくとも一方が可能である、請求項1に記載の光治療装置。
【請求項3】
前記透明部が、前記第1シースの先端から前記第2シースの光透過領域を覆う位置まで設けられている請求項1に記載の光治療装置。
【請求項4】
前記第2シースおよび前記第3シースが、各々の基端部に標識を有し、該標識が、前記第2シースの前記光透過領域および前記第3シースの前記光透過領域の前記長手軸回りの相対角度および前記長手軸に沿う方向の相対位置の少なくとも一方を示す、請求項1に記載の光治療装置。
【請求項5】
前記第1シースおよび前記第2シースの長手方向の相対移動を阻止する第1ストッパと、
前記第2シースおよび前記第3シースの長手方向の相対移動を阻止する第2ストッパとを備え、
前記第1ストッパおよび前記第2ストッパが、標識をそれぞれ有し、該標識が、前記第2シースの前記光透過領域および前記第3シースの前記光透過領域の前記長手軸回りの相対角度を示す、請求項2に記載の光治療装置。
【請求項6】
前記第1シースに固定された感圧センサを備え、該感圧センサが、生体組織との接触圧力を感知する請求項1に記載の光治療装置。
【請求項7】
前記第1シースに固定された第1近接センサと、
前記第2シースまたは前記第3シースに固定された第2近接センサとを備え、
前記第1近接センサおよび前記第2近接センサが、相互に近接したことを感知する請求項1に記載の光治療装置。
【請求項8】
前記第1シースの先端部に設けられた光透過性のバルーンを更に備え、
前記光治療部材の先端部分が、前記バルーン内に配置される請求項1に記載の光治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光力学的治療法を用いてがんのような体腔の疾患を治療するデバイスが知られている(例えば、特許文献1参照。)。光力学的治療は、薬剤が集積した病変部に光を照射し、薬剤の光化学反応によって病変部を治療する方法である。特許文献1に記載のデバイスは、光ファイバと、光ファイバの先端部分を覆い体腔内で膨張させられるバルーンとを備えている。体腔内で膨張したバルーンの内部で光ファイバから放射状に光が射出され、光がバルーンを経由して腔壁に照射される。バルーンは、腔壁に照射される光を均一化する役割を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第6364874号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のデバイスは、バルーンと密着する腔壁の広範囲に一度に光を照射することができるため、腔壁の広範囲の治療には向いているが、腫瘍のような局所的な病変組織の治療には不向きである。すなわち、特許文献1のデバイスは、病変組織のみに選択的に光を照射することができず、病変組織の周辺の正常組織にも光が同時に照射されてしまう。さらに、体腔内の腫瘍が形成される位置および腫瘍の大きさは、患者毎に異なる。したがって、管腔の様々な位置の病変部に選択的に光を照射することができる装置が望まれている。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、管腔の様々な位置の病変部に選択的に治療光を照射することができる光治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、光を透過する透明部を有する管状の第1シースと、該第1シース内に配置され、光不透過性材料から形成されるとともに、光を透過させる光透過領域を側壁の一部分に有する管状の第2シースと、前記第2シース内に配置され、光不透過性材料から形成されるとともに、光を透過させる光透過領域を側壁の一部分に有する管状の第3シースと、前記第2シース内および前記第3シース内を長手方向に貫通し、前記第2シースおよび前記第3シースの径方向に光を射出する光治療部材と、を備え、前記第2シースおよび前記第3シース、長手軸回りの相対的な回転と該長手軸に沿う方向の相対的な移動との少なくとも一方が可能であり、前記第3シースの前記光透過領域と前記第2シースの前記光透過領域とは、前記相対的な回転または前記相対的な移動によって重複可能である、光治療装置である。
【0007】
本発明の参考例としての他の態様は、光不透過性材料から形成された管状のシース本体と、該シース本体の先端部に設けられた光透過性のバルーンとを有するシースと、前記シース本体内を貫通し先端部分が前記バルーン内に配置され、前記シース本体の径方向に光を射出する光治療部材とを備え、前記シース本体が、光を透過させる光透過領域を側壁の一部分に有する、光治療装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、管腔の様々な位置の病変部に選択的に治療光を照射することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る光治療装置の全体構成を示す側面図である。
図2A図1の光治療装置の外側遮光シースおよび内側遮光シースの側面図である。
図2B】外側遮光シース内に内側遮光シースが配置された状態を示す側面図である。
図3】外側遮光シースの窓と内側遮光シースの窓との位置関係を説明する図である。
図4】ストッパに設けられる標識の一例を示す図である。
図5A図1の光治療装置の使用方法を説明する図である。
図5B図1の光治療装置の使用方法を説明する図である。
図5C図1の光治療装置の使用方法を説明する図である。
図5D図1の光治療装置の使用方法を説明する図である。
図5E図1の光治療装置の使用方法を説明する図である。
図5F図1の光治療装置の使用方法を説明する図である。
図5G図1の光治療装置の使用方法を説明する図である。
図5H図1の光治療装置の使用方法を説明する図である。
図6A】外側遮光シースおよび内側遮光シースに設けられる標識の一構成例を示す図である。
図6B】外側遮光シースおよび内側遮光シースに設けられる標識の他の構成例を示す図である。
図7図1の光治療装置の変形例の全体構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態に係る光治療装置1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る光治療装置1は、膀胱および尿道の治療を対象としている。光治療装置1は、図1に示されるように、シース本体(第1シース)2aおよびシース本体2aの先端部に設けられたバルーン2bを有する透明シース2と、透明シース2内に挿入される外側遮光シース(第2シース)3と、外側遮光シース3内に挿入される内側遮光シース(第3シース)4と、内側遮光シース4内に挿入され遮光シース3,4の径方向に治療光を射出する光ファイバ(光治療部材)5と、感圧センサ6と、近接センサ71,72と、ストッパ81,82とを備えている。
【0011】
シース本体2aおよび遮光シース3,4は、長尺の管状の部材であり、尿道Bの形状に沿って湾曲可能な可撓性を有する。光治療装置1の使用時、シース本体2aおよび遮光シース3,4は略同軸に配置され、内側遮光シース4内を貫通する光ファイバ5の先端部分5aは、バルーン2b内に配置される。シース本体2aの内径は外側遮光シース3の外径よりも大きく、シース本体2a内の外側遮光シース3は、シース本体2aに対して長手軸回りの回転および長手軸に沿う方向の移動が可能である。外側遮光シース3の内径は内側遮光シース4の外径よりも大きく、外側遮光シース3内の内側遮光シース4は、外側遮光シース3に対して長手軸回りの回転および長手軸に沿う方向の移動が可能である。
【0012】
シース本体2aは、光透過性材料から形成され、シース本体2aの全体が、光を透過させる透明部である。バルーン2bは、シース本体2aの先端部を覆い、シース本体2aの内部とバルーン2bの内部は相互に連通している。バルーン2bは、光透過性を有する弾性材料から形成され、図1に二点鎖線で示されるように、内部に流体が供給されることによって、膀胱の内壁の形状に沿って変形しながら膨張することができる。流体は、例えば、空気または水のような液体である。バルーン2bは、光拡散性を有し、バルーン2b内の光ファイバ5の先端部分5aから射出された治療光を拡散し腔壁に照射される治療光の強度を均一化する役割を果たす。また、バルーン2bが膨らんでいる間、シース本体2aの位置は固定される。
【0013】
光ファイバ5は、側面から側方に放射状に治療光を射出する側面発光型である。光ファイバ5の基端は、光源(図示略)に接続され、光源から光ファイバ5に治療光Lが供給される。光ファイバ5は、光ファイバ5の前方にも治療光を照射することができるように、側面に加えて先端面からも治療光を射出してもよい。光ファイバ5は、全長にわたって側面から光を射出してもよいが、膀胱および尿道内に配置される先端側部分のみ治療光を射出するように構成されていてもよい。
【0014】
外側遮光シース3は、図2Aに示されるように、側壁の周方向および長手方向の一部分に窓(光透過領域)3aを有する。窓3aは、側壁を径方向に貫通する開口部、または、光学的に透明な部材から構成され、外側遮光シース3の内側から外側へ光を透過させる。外側遮光シース3は、光不透過性材料から形成され、窓3aを除く外側遮光シース3の全体が遮光性を有する。窓3aは、好ましくは、尿道に形成される腫瘍のような病変部の大きさに相当する大きさを有する。
【0015】
内側遮光シース4は、図2Aに示されるように、側壁の周方向および長手方向の一部分に窓(光透過領域)4aを有する。窓4aは、側壁を径方向に貫通する開口部、または、光学的に透明な部材から構成され、内側遮光シース4の内側から外側へ光を透過させる。内側遮光シース4は、光不透過性材料から形成され、窓4aを除く内側遮光シース4の全体が遮光性を有する。
【0016】
図3に示されるように、外側遮光シース3内での内側遮光シース4の長手軸回りの回転または長手軸に沿う方向の移動によって、窓4aを窓3aと重複する位置に配置することができる。窓4aが窓3aの少なくとも一部分と重複しているとき、窓4aと窓3aとの重複領域P(図3のハッチング領域参照。)を経由して内側遮光シース4内の光ファイバ5から外側遮光シース3の外側の生体組織に治療光を照射することができる。このときに、外側遮光シース3の窓3aを除く部分は遮光性を有するので、生体組織における治療光の照射領域は、重複領域Pと対向する領域に限定される。
【0017】
遮光シース3,4の長手方向の相対移動および長手軸回りの相対回転によって、窓3a,4aは長手方向および周方向に相対移動し、窓3a,4aの重複領域Pの面積が連続的に変化する。したがって、内側遮光シース4を外側遮光シース3に対して進退または回転させることによって、窓3aからの治療光の射出と非射出とを切り替え、また、生体組織における治療光の照射領域の面積を変化させることができる。特に、窓3a,4aの2方向の相対移動によって、重複領域Pおよび照射領域の面積を容易に微調整することができる。
【0018】
感圧センサ6は、バルーン2bよりも基端側の位置においてシース本体2aの外面に固定されている。感圧センサ6のシース本体2aへの固定位置は膀胱の大きさに応じて決定されており、透明シース2の先端が膀胱の内壁の近傍に配置された状態で感圧センサ6が尿道と膀胱との境目に配置されるようになっている。感圧センサ6は、生体組織との接触圧力を感知する。透明シース2が尿道および膀胱に挿入される過程において、感圧センサ6は、狭い尿道内では腔壁との接触によって圧力を受け、尿道を超えて広い膀胱に到達したときに圧力から解放される。したがって、感圧センサ6によって感知される接触圧力の低下に基づいて、ユーザは、感圧センサ6が膀胱に到達し、バルーン2b全体が膀胱内に配置されたことを認識することがきる。
【0019】
第1近接センサ71は、感圧センサ6の近傍においてシース本体2aに固定されている。第2近接センサ72は、外側遮光シース3の先端または先端近傍に固定されている。近接センサ71,72は、相互に離間しているときには反応せず、相互に近接したときにのみ反応する。したがって、シース本体2a内に外側遮光シース3を挿入する過程において、ユーザは、近接センサ71,72の反応に基づいて、外側遮光シース3の先端が、透明シース2の感圧センサ6の近傍に到達したことを認識することができる。
近接センサ72が、外側遮光シース3ではなく、内側遮光シース4の先端または先端近傍に固定されていてもよい。
【0020】
ストッパ(第1ストッパ)81は、シース本体2aの外側において外側遮光シース3の外周面に着脱可能なクリップである。外側遮光シース3の外周面に取り付けられたストッパ81は、シース本体2aに対する外側遮光シース3の回転を許容しつつ、シース本体2aの基端面に突き当たることによって、外側遮光シース3のシース本体2a内への挿入方向の移動を阻止する。
ストッパ(第2ストッパ)82は、外側遮光シース3の外側において内側遮光シース4の外周面に着脱可能なクリップである。内側遮光シース4の外周面に取り付けられたストッパ82は、外側遮光シース3に対する内側遮光シース4の回転を許容しつつ、外側遮光シース3の基端面に突き当たることによって、内側遮光シース4の外側遮光シース3内への挿入方向の移動を阻止する。
【0021】
ストッパ81,82には、遮光シース3,4の長手軸回りの窓3aおよび窓4aの相対角度を示す標識9a,9bがそれぞれ設けられている。例えば、ストッパ81の標識9aは、図4に示されるように、長手軸回りの回転角度を示す目盛である。同様に、ストッパ82の標識9bは、長手軸回りの回転角度を示す目盛である。ユーザは、体内の2つの窓3a,4aの相対角度を、体外の2つのストッパ81,82の標識9a,9bに基づいて認識し、窓3a,4aの重複領域Pの面積を所望の面積に調整することができる。
【0022】
次に、光治療装置1を使用した膀胱および尿道の治療方法について説明する。
光治療装置1による治療に先立ち、患者の膀胱の大きさと、尿道の病変部(例えば、腫瘍)の位置および大きさが、CT装置等による術前検査によって確認される。また、膀胱および尿道の病変部に、薬剤が予め投与される。薬剤は、病変部に集積する特性を有し、治療光との反応によって病変部に対して治療効果を発揮する。
【0023】
まず、図5Aに示されるように、透明シース2を、尿道口から尿道Bを経由して膀胱Aまで挿入する。透明シース2の挿入中、ユーザは、感圧センサ6によって感知される接触圧力を監視し、接触圧力が低下したときに透明シース2を停止させる。これにより、感圧センサ6が尿道Bと膀胱Aとの境目に配置され、バルーン2b全体が膀胱A内に配置される位置に、透明シース2が位置決めされる。
【0024】
次に、図5Bに示されるように、バルーン2b内に流体を供給することによって、膀胱A内でバルーン2bを膨張させる。流体は、例えば、シース本体2aを経由して供給される。膨張したバルーン2bが膀胱Aの内壁に密着することによって、透明シース2は尿道Bおよび膀胱Aに対して固定される。
【0025】
次に、図5Cに示されるように、外側遮光シース3と、外側遮光シース3内に配置されストッパ82が取り付けられた内側遮光シース4とを一体的にシース本体2a内に挿入する。遮光シース3,4の先端が長手方向において同一位置に配置されるように、遮光シース3,4はストッパ82によって位置決めされている。この状態において、窓3a,4aは、長手方向の同一位置に配置される。遮光シース3,4の挿入中、ユーザは、近接センサ71,72の反応の有無を監視し、近接センサ71,72が反応したときに遮光シース3,4を停止させる。これにより、遮光シース3,4の先端が尿道Bと膀胱Aとの境目に配置される位置に、遮光シース3,4が位置決めされる。
【0026】
次に、図5Dに示されるように、外側遮光シース3の外周面のシース本体2aの基端面と隣接する位置にストッパ81を取り付け、ストッパ81によって、シース本体2aに対する遮光シース3,4の挿入方向の移動を阻止する。
次に、内側遮光シース4内を経由して光ファイバ5を膀胱Aへ挿入し、先端部分5aをバルーン2b内に配置する。内側遮光シース4内への光ファイバ5の挿入量は、例えば、尿道口からの遮光シース3,4の挿入量に基づいて調整され、光ファイバ5の先端は、シース本体2aの先端よりも基端側に配置される。したがって、遮光シース3,4の外周面には、尿道口からの挿入量を示す目盛が設けられていてもよい。
【0027】
次に、図5Eに示されるように、外側遮光シース3をシース本体2a内で回転させ、病変部に窓3aを対向させる。病変部の位置に応じて、シース本体2a内で遮光シース3,4を長手方向に移動させてもよい。また、ストッパ81,82の標識9a,9bに基づいて、窓4aが窓3aと重なり合わないように内側遮光シース4の回転角度を調整する。
次に、図5Fに示されるように、光源から光ファイバ5に治療光Lを供給し、バルーン2b内の光ファイバ5の先端部分5aから放射状に治療光Lを射出させる。治療光Lは、バルーン2bを透過し、バルーン2bと対向する膀胱組織に照射される。膀胱組織では、治療光Lとの反応によって薬剤が活性化し、活性化された薬剤によって膀胱組織に対する治療効果が発揮される。このときに、尿道B内では光ファイバ5からの光が遮光シース3,4によって遮られるので、尿道組織に光が照射されることはない。
【0028】
次に、図5Gに示されるように、内側遮光シース4を外側遮光シース3内で回転させ、ストッパ81,82の標識9a,9bに基づいて内側遮光シース4の回転角度を調整し、窓4aを窓3aと重複する位置に配置する。
次に、図5Hに示されるように、光源から光ファイバ5に治療光Lを供給する。光ファイバ5から射出された治療光Lは、窓3aおよび窓4aの重複領域Pを通過し、重複領域Pと対向する尿道Bの病変部に照射される。病変部では、治療光Lとの反応によって薬剤が活性化し、活性化された薬剤によって病変部に対する治療効果が発揮される。このときに、光ファイバ5の先端部分5bは、遮光シース3,4に収納されていてもよく、バルーン2b内に配置されていてもよい。
この後、バルーン2b内から流体が排出されることによってバルーン2bが収縮させられ、透明シース2および遮光シース3,4が膀胱Aおよび尿道B内から抜去される。
【0029】
このように、本実施形態によれば、尿道B内に配置される遮光シース3,4の2つの窓3a,4aが重なり合っているときにのみ、光ファイバ5から射出された治療光Lは、尿道組織に照射される。したがって、内側遮光シース4を回転または移動させるだけの簡単な操作によって、尿道組織への治療光Lの照射と非照射とを切り替えることができる。また、窓3aと対向する病変部に選択的に治療光Lを照射し、病変部の周囲の正常組織に治療光Lが照射されることを防止することができる。
【0030】
また、外側遮光シース3に対して内側遮光シース4を回転または進退させることによって、尿道組織における治療光Lの照射面積が変化する。したがって、病変部の大きさに応じて治療光Lの照射面積を調整し、病変部の周囲の正常組織への治療光Lの照射をさらに確実に防止することができる。
また、透明シース2内で外側遮光シース3を回転および進退させることによって、尿道Bに対して窓3aを移動させ、治療光Lの照射領域の位置を選択することができる。したがって、尿道Bの様々な位置の病変部に選択的に治療光Lを照射することができる。
【0031】
本実施形態において、ストッパ81,82の標識9a,9bに代えて、またはこれに加えて、遮光シース3,4の各々に標識が設けられていてもよい。標識は、窓3a,4aの相対角度および長手方向の相対位置のうち少なくとも一方を示すものであり、光治療装置1の使用時に体外に配置される遮光シース3,4の基端部に設けられる。
図6Aおよび図6Bは、遮光シース3,4の標識の例を示している。
【0032】
図6Aの標識10a,10bは、遮光シース3,4の各々の外周面に設けられた目盛である。目盛10a,10bに基づき、窓3a,4aの相対角度を認識することができる。窓3a,4aの長手方向の相対位置を示す目盛が遮光シース3,4の外周面に設けられていてもよい。
【0033】
図6Bの標識11a,11bは、窓3a,4aとそれぞれ対応する窓である。窓11a,11bの形状および寸法は、窓3a,4aとそれぞれ同一である。また、窓11a,11b間の位置関係が、窓3a,4a間の位置関係と同一である。すなわち、外側遮光シース3の周方向において、窓11aは窓3aと同一位置に設けられ、内側遮光シース4の周方向において、窓11bは窓4aと同一位置に設けられている。また、外側遮光シース3の長手方向における窓3a,11a間の距離と、内側遮光シース4の長手方向における窓4a,11b間の距離とが、相互に等しい。したがって、窓11a,11bの重複領域P’の位置および面積は、窓3a,4aの重複領域Pの位置および面積と同一である。ユーザは、窓11a,11bに基づき、窓3a,4aの相対角度および相対位置を認識し、重複領域Pの位置および面積をより直感的に認識することができる。
【0034】
本実施形態において、シース本体2aの全体が透明部であることとしたが、これに代えて、シース本体2aの一部分が透明部であってもよい。この場合、透明部は、膀胱A全体および尿道Bの病変部に治療光Lを照射するために必要な部分に設けられる。具体的には、透明部は、バルーン2b内に配置されるシース本体2aの先端部分と、バルーン2bよりも基端側の一部分である。好ましくは、透明部は、シース本体2aの先端から、光治療装置1の使用時に窓3aを覆う位置まで設けられる。
【0035】
本実施形態において、内側遮光シース4は、必ずしも設けられていなくてもよい。尿道B内に配置される遮光シース3は、窓3aを除いて遮光性を有するので、内側遮光シース4が設けられていない場合、尿道内では窓3aのみから治療光Lが射出される。したがって、窓3aと対向する病変部に選択的に治療光Lを照射し、病変部の周囲の正常組織に治療光Lが照射されることを防止することができる。この場合、バルーン2bおよび窓3aから同時に治療光Lが射出され、膀胱Aおよび尿道Bの病変部に同時に治療光Lが照射される。
【0036】
また、本実施形態において、光治療装置100は、図7に示されるように、3本のシース2,3,4に代えて、単一のシース12を備えていてもよい。シース12は、光不透過性材料から形成されたシース本体12aと、シース本体12aの先端部に設けられた光透過性のバルーン12bとを有する。窓(光透過領域)12cは、シース本体12aの側壁の一部分に形成される。したがって、バルーン12bおよび窓12cから、膀胱Aおよび尿道Bの病変部に同時に治療光Lが照射される。
単一のシース12を用いることによっても、尿道B内でシース本体12aを回転および進退させることによって尿道Bの任意の位置の病変部に対して窓12cを位置決めすることができる。したがって、尿道Bの様々な位置の病変部に選択的に治療光Lを照射することができる。
【符号の説明】
【0037】
1,100 光治療装置
2 透明シース
2a シース本体(第1シース)
12a シース本体
2b,12b バルーン
3a,4a,12c 窓(光透過領域)
3 外側遮光シース(第2シース)
4 内側遮光シース(第3シース)
5 光ファイバ(光治療部材)
6 感圧センサ
71,71 近接センサ
81,82 ストッパ
9a,9b,10a,10b,11a,11b 標識
12 シース
A 膀胱
B 尿道
L 治療光
P 重複領域
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図7