IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カワサキモータース株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-乗物 図1
  • 特許-乗物 図2
  • 特許-乗物 図3
  • 特許-乗物 図4
  • 特許-乗物 図5
  • 特許-乗物 図6
  • 特許-乗物 図7
  • 特許-乗物 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】乗物
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20221116BHJP
   B62J 50/26 20200101ALI20221116BHJP
   B62J 45/42 20200101ALI20221116BHJP
   B62K 5/027 20130101ALI20221116BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20221116BHJP
【FI】
B62M6/45
B62J50/26
B62J45/42
B62K5/027
B62J45/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021016490
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119402
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2022-01-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】岩本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 健志
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏志
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 将
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6806398(JP,B1)
【文献】中国実用新案第208842522(CN,U)
【文献】特開2012-111278(JP,A)
【文献】国際公開第2021/002391(WO,A1)
【文献】特開2005-153850(JP,A)
【文献】特開2008-110741(JP,A)
【文献】特表2017-526576(JP,A)
【文献】実開昭57-88690(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45
B62J 45/42
B62J 45/00
B62J 50/25- 50/26
B62K 5/027
B60R 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機が出力した動力で走行する駆動モードと、前記駆動モードでの出力よりも出力が抑制された抑制モードと、が走行モードとして切替可能な乗物であって、
外方に存在する視認者から視認可能な位置に設けられ、前記視認者に実行中の走行モードを識別させるための走行モード識別体と、
前記走行モード識別体を被覆可能なカバー体と、
前記カバー体が前記走行モード識別体を被覆する被覆位置で前記カバー体を固定する固定部と、
前記カバー体が前記走行モード識別体を被覆した被覆状態を検出するモード切替用センサと、
前記モード切替用センサが前記カバー体による被覆状態を検出する場合には前記抑制モードを実行し、前記モード切替用センサが前記カバー体による被覆状態を検出しない場合には前記駆動モードを実行するように制御を行う制御装置と、
を備え、
前記走行モード識別体は、前記視認者から視認可能な表面と、前記表面と反対側に配置された裏面と、を有し、
前記モード切替用センサは、前記走行モード識別体の裏面側であって、前記被覆位置に位置する前記カバー体に対して対向する位置に設けられて、前記カバー体の接近を検出するセンサであることを特徴とする乗物。
【請求項2】
請求項に記載の乗物であって、
前記モード切替用センサは、上下方向において、前記走行モード識別体の上端部と下端部との間に配置されることを特徴とする乗物。
【請求項3】
原動機が出力した動力で走行する駆動モードと、前記駆動モードでの出力よりも出力が抑制された抑制モードと、が走行モードとして切替可能な乗物であって、
外方に存在する視認者から視認可能な位置に設けられ、前記視認者に実行中の走行モードを識別させるための走行モード識別体と、
前記走行モード識別体を被覆可能なカバー体と、
前記カバー体が前記走行モード識別体を被覆する被覆位置で前記カバー体を固定する固定部と、
前記カバー体が前記走行モード識別体を被覆した被覆状態を検出するモード切替用センサと、
前記モード切替用センサが前記カバー体による被覆状態を検出する場合には前記抑制モードを実行し、前記モード切替用センサが前記カバー体による被覆状態を検出しない場合には前記駆動モードを実行するように制御を行う制御装置と、
を備え、
前記走行モード識別体は、前記視認者から視認可能な表面と、前記表面と反対側に配置された裏面と、を有し、
前記モード切替用センサは、前記走行モード識別体の裏面側に設けられ、
前記モード切替用センサの検出子は、上下方向において、前記被覆位置に位置する前記カバー体の上端部と下端部との間の中間位置に配置され、
前記カバー体は、前記被覆位置では前記固定部によって当該カバー体の上端部及び下端部のそれぞれで位置を規制されることを特徴とする乗物。
【請求項4】
請求項1からまでの何れか一項に記載の乗物であって、
前記カバー体は、前記走行モード識別体の裏面側で前記固定部に固定可能であることを特徴とする乗物。
【請求項5】
原動機が出力した動力で走行する駆動モードと、前記駆動モードでの出力よりも出力が抑制された抑制モードと、が走行モードとして切替可能な乗物であって、
外方に存在する視認者から視認可能な位置に設けられ、前記視認者に実行中の走行モードを識別させるための走行モード識別体と、
前記走行モード識別体を被覆可能なカバー体と、
前記カバー体が前記走行モード識別体を被覆する被覆位置で前記カバー体を固定する固定部と、
前記カバー体が前記走行モード識別体を被覆した被覆状態を検出するモード切替用センサと、
前記モード切替用センサが前記カバー体による被覆状態を検出する場合には前記抑制モードを実行し、前記モード切替用センサが前記カバー体による被覆状態を検出しない場合には前記駆動モードを実行するように制御を行う制御装置と、
を備え、
前記走行モード識別体は、前記視認者から視認可能な表面と、前記表面と反対側に配置された裏面と、を有し、
前記モード切替用センサは、前記走行モード識別体の裏面側に設けられ、
前記カバー体は、前記走行モード識別体の裏面側で前記固定部に固定可能であり、
前記固定部は、前記被覆位置で前記走行モード識別体の表面側に位置する前記カバー体を固定するために着脱可能に設けられる着脱部品を有し、
前記着脱部品は、前記走行モード識別体の裏面側で前記カバー体を前記固定部に固定するための部品を兼ねることを特徴とする乗物。
【請求項6】
請求項1からまでの何れか一項に記載の乗物であって、
運転者が着座するシートと、
前記シートの後方に配置され、荷物を載せることができる荷台と、
を備え、
前記荷台よりも下方に前記走行モード識別体が設けられることを特徴とする乗物。
【請求項7】
請求項1からまでの何れか一項に記載の乗物であって、
前記走行モード識別体を照らす照明部を備え、
前記カバー体には、前記抑制モードを示す標識が付与され、
前記照明部は、前記カバー体が前記被覆位置にあるとき、前記カバー体の標識を照らすことが可能な位置に設けられることを特徴とする乗物。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の乗物であって、
車長方向における一方側に、車幅方向に並ぶ複数の車輪が配置され、他方側に、1又は2の車輪が配置されることを特徴とする乗物。
【請求項9】
請求項に記載の乗物であって、
前記複数の車輪のうち車幅方向で隣り合う車輪の輪距が500mm以上であることを特徴とする乗物。
【請求項10】
請求項1からまでの何れか一項に記載の乗物であって、
車幅方向において全幅が600mm以下であることを特徴とする乗物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ナンバープレートが取り付けられた原動機付の乗物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-217721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原動機付きの乗物は、原動機出力を用いて走行し、ナンバープレートの装着が要求される。これに対して運転者の踏力で走行する自転車は、ナンバープレートを有していなくても、走行が許容されていることが多い。
【0005】
これらの原動機付の乗物と、踏力駆動式の乗物とは、外観が同じであれば、乗物の外方に存在する視認者がどちらの走行形態の乗物かを区別しにくいために、1つの車両で2つの走行形態の両方を実現させることが困難である。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、2つの走行形態を実現できる1つの乗物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の乗物が提供される。即ち、この乗物は、原動機が出力した動力で走行する駆動モードと、駆動モードでの出力よりも出力が抑制された抑制モードと、が走行モードとして切替可能な乗物である。前記乗物は、走行モード識別体と、カバー体と、固定部と、モード切替用センサと、制御装置と、を備える。前記走行モード識別体は、前記乗物の外方に存在する視認者から視認可能な位置に設けられ、前記視認者に実行中の走行モードを識別させるためのものである。前記カバー体は、前記走行モード識別体を被覆可能である。前記固定部は、前記カバー体が前記走行モード識別体を被覆する被覆位置で前記カバー体を固定する。前記モード切替用センサは、前記カバー体が前記モード識別を被覆した被覆状態を検出する。前記制御装置は、前記モード切替用センサが前記カバー体による被覆状態を検出する場合には前記抑制モードを実行し、前記モード切替用センサが前記カバー体による被覆状態を検出しない場合には前記駆動モードを実行するように制御を行う。前記走行モード識別体は、前記視認者から視認可能な表面と、前記表面と反対側に配置された裏面と、を有する。前記モード切替用センサは、前記走行モード識別体の裏面側であって、前記被覆位置に位置する前記カバー体に対して対向する位置に設けられて、前記カバー体の接近を検出するセンサである
【0009】
これにより、視認者は、走行モード識別体の状態を視認することで、乗物が2つの走行モード(駆動モード及び抑制モード)のうち何れの走行モードで走行しているかを、容易に視認することができる。具体的には、走行モード識別体を被覆した状態では抑制モードが実行され、走行モード識別体が露出した状態では駆動モードが実行される。視認者は、被覆状態を視認することで、乗物が抑制モードで走行することを判断することができる。また視認者は、露出状態を視認することで、乗物が駆動モードで走行することを判断することができる。視認者は、視認によって乗物の走行モードを推測して、乗物の挙動を予想したり、自身の行動を修正したりすることができる。従って、2つの走行形態(走行モード)を実現できる1つの乗物を提供することができる。カバー体に対して厚み方向に対向する位置にモード切替用センサが配置されることによって、被覆位置に位置するカバー体に近接した位置にモード切替用センサを配置することができる。これにより、カバー体が被覆位置にあることを、モード切替用センサによって精度よく検出できる。また、モード切替用センサの検出子は、表側からカバー体で覆われることで保護される。従って、検出子の障害物への接触を防いで、モード切替用センサの損傷を更に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モード切替用センサの保護性を向上して、2つの走行形態(走行モード)を実現できる1つの乗物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る3輪型車両(カバー体非被覆状態)の斜視図。
図2】3輪型車両の電気的構成を示すブロック図。
図3】カバー体が非被覆状態である識別装置の斜視図。
図4】カバー体が被覆状態である識別装置の斜視図。
図5】カバー体を固定部から取り外す様子を示す斜視図。
図6】カバー体を反転させる作業を示す斜視図。
図7】3輪型車両の前部を示す正面図。
図8】3輪型車両の前部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係る3輪型車両1の概要について説明する。図1は、ナンバープレートが露出状態の3輪型車両1を示す斜視図である。図2は、3輪型車両1の電気的構成を示すブロック図である。
【0013】
以下の説明では、3輪型車両1に乗車した運転者から見た方向で、3輪型車両1の左右方向を定義する。従って、3輪型車両1が図1及び図2に示すように直立している状態では、前後方向は車長方向に一致し、左右方向は車幅方向に一致する。また、上下方向(鉛直方向)は高さ方向に一致する。3輪型車両は、前後方向寸法が、車幅方向寸法よりも大きく形成される。
【0014】
本実施形態に係る乗物は、3輪型車両1である。3輪型車両1は、前側(車長方向における一方側)に2つの前輪3,5を備え、後側(車長方向における他方側)に1つの後輪7を備える。
【0015】
図1に示すように、3輪型車両1の2つの前輪は、車幅方向に間隔をあけて配置される左前輪3及び右前輪5を備える。また、3輪型車両1は、車体9を備える。車体9は、左前輪3、右前輪5及び後輪7を支持している。
【0016】
車体9は、3輪型車両1の骨格となるフレーム11を有する。フレーム11は、ベース部分11aと、左右輪連結部分11bと、シート支持部分11cと、ハンドル支持部分11dと、を有する。
【0017】
ベース部分11aは、前輪3と後輪7との間を車長方向に延びて、前後輪を支持する。左右輪連結部分11bは、ベース部分11aに接続されて、左前輪と右前輪とを連結して車幅方向に延びる。シート支持部分11cは、ベース部分11aから上方に延びて、シート15を支持する。ハンドル支持部分11dは、ベース部分11aから上方に延びて、ハンドル13を支持する。
【0018】
本実施形態では、3輪型車両1は、リーン型車両の一種である。リーン型車両とは、車体9の路面に対する姿勢を変更可能であり、操舵による旋回走行に伴って車体9が路面に対して傾斜状態となる車両を意味する。図1及び図2では、3輪型車両1は、操舵のためのハンドル13が中立位置に操作され、かつ、車体9が路面に対して直立となっている状態(言い換えれば、通常の直進走行の状態)となっている。以下では、特に説明がない限り、この状態を前提として説明する。言い換えると、直立状態とは、上面視において、車両重心が車両の車幅方向中心位置に位置する状態である。例えば直立状態とは、車輪軸が水平に延びる状態である。また傾斜状態とは、正面視において、直立状態に対して車体が接地点を中心に傾斜した状態であって、上面視において車両重心が車両の車幅方向中心位置から車幅方向にずれた状態であり、例えば後輪7の車軸が水平面に対して傾斜する状態である。
【0019】
左前輪3と右前輪5とは、車幅方向に間隔をあけて隣り合うように並べられている。左前輪3は、車幅方向で車体9の中央位置よりも左側に配置されている。右前輪5は、車幅方向で車体9の中央位置よりも右側に配置されている。本実施形態では、それぞれの前輪3,5は、従動輪として機能する。左前輪3及び右前輪5は、車体9の路面に対する姿勢が変更可能となるように、フレーム11の前部に支持されている。
【0020】
具体的には、フレーム11の左右輪連結部分は、図7及び図8に示す平行リンク構造を有している。平行リンク構造は、各前輪3,5を、フレーム11のベース部分11aにそれぞれ連結する。平行リンク構造は、車幅方向に延びて関節長さが等長の2つのリンク部材を有し、リンク部材の両端の関節位置で、車軸支持部分とベース部分11aとをそれぞれ連結する。これによって、正面視において、ベース部分11aの姿勢変化に応じて、各前輪3,5の姿勢が連動して変化する。従って、正面視において、ベース部分11aが上下方向に延びる向きと、各前輪3,5が上下方向に延びる向き(車軸に対する垂直方向)とが平行状態に維持される。
【0021】
各前輪3,5は、操舵輪として機能し、ハンドル13の回動操作に応じて向きが変化する。本実施形態では、各前輪3,5が、左右連結部分に対して、操舵軸線まわりに角変位可能に構成される。具体的には、各前輪3は、ハンドル13に連動して角変位する角変位部分に対して、リンク部材を介してリンク接続される。これによって各前輪3,5は、運転者のハンドル13の角変位操作に応じて、リンク部材を介して、操舵軸周りに角変位する。
【0022】
本実施形態の車両は、車幅方向に隣接する左右の車輪の中心間距離である輪距が500mmを超える大きさに設定される。輪距は、具体的には図7に示すように、左車輪の接地面の車幅方向中心位置から、右車輪の接地面の車幅方向中心位置までの距離を意味する。左前輪3と右前輪5とは、輪距が調整可能となるように構成されてもよい。輪距が500mmを超える大きさに設定されることで、左右輪の接地位置の間の距離を十分大きくすることができ、前後に車輪が並ぶ2輪車に比べて走行安定性を向上することができる。
【0023】
また、3輪型車両1の車幅方向における最大幅、即ち全幅が、600mm以下に設定される。本実施形態では、各前輪3,5の車幅方向外側端の間の距離が全幅となる。全幅が600mm以下に設定されることによって、全幅が更に大きい場合に比べて、比較的狭い道を走行し易い。例えば3輪型車両1が車道を走行する場合、3輪型車両1に対して、他の車両が幅方向に間隔をあけて追い抜き走行し易くすることができる。また3輪型車両1が歩道を走行する場合、3輪型車両1は、障害物や歩行者に対して、間隔をあけて走行し易くすることができる。
【0024】
後輪7は、車幅方向で車体9の中央位置に配置されている。後輪7は、フレーム11の後部に回転可能に支持されている。本実施形態では、後輪7は走行駆動力を路面に伝達する駆動輪として機能する。後述するとおり、3輪型車両1は、原動機による出力を走行駆動力として路面に伝達する走行形態と、運転者の踏力による出力を走行駆動力として路面に伝達する走行形態と、の2つの形態での走行が可能に構成される。
【0025】
また、3輪型車両1は、シート15と、左右のペダル17と、原動機として機能する電動モータ19と、バッテリー21と、コントローラ(制御装置)23と、前かご25と、荷台27と、を備える。
【0026】
シート15は、フレーム11の車長方向中間部分のうち上側に設けられている。運転者は、シート15に着座することができる。運転者は、シート15に跨って、左右のペダル17に足を載せることができる。このように、3輪型車両1は、本実施形態では、運転者がシート15に跨って乗る種類の車両(鞍乗型車両)である。
【0027】
左右のペダル17は、シート15の下方に設けられている。シート15に跨った運転者が足でペダル17を踏む力を後輪7に伝達して、後輪7を人力で回転駆動することができる。具体的には、3輪型車両1は、ペダル17に接続されるクランク軸の回転を後輪に伝達する動力伝達機構を有する。従って、3輪型車両1は、運転者の人力で走行駆動する、いわゆる自転車としての機構を備える。3輪型車両1には、後輪7の回転がクランク軸に伝達されることを防ぐワンウェイクラッチ機構が設けられる。
【0028】
電動モータ19は、本実施形態では、後輪7の車軸部分に設けられている。電動モータ19は、図3に示すように、コントローラ23に電気的に接続されている。電動モータ19は、コントローラ23により制御され、後輪7を回転駆動することができる。
【0029】
電動モータ19は、運転者の人力が与えられていない状態で、駆動輪に動力を伝達させることができる。また電動モータ19は、運転者の人力が与えられた状態に加えて、駆動輪に動力を伝達させることもできる。また、コントローラ23は、電動モータによる出力指令を調整可能に構成される。本実施形態では、コントローラ23は、運転者の与える人力に応じて、電動モータ19が駆動力を出力することによる支援が可能に構成される。即ち、本実施形態では、3輪型車両1は、運転者の人力を必要とせず走行可能な電動車として機能するとともに、運転者による走行駆動を電動支援する電動アシスト自転車としても機能する。
【0030】
このように本実施形態の3輪型車両1は、コントローラ23のモータ制御によって、運転者の人力が不要な電動車モードと、運転者の人力が必要な自転車モードとの2つの走行形態を切替可能に構成される。
【0031】
電動車モードは、原動機である電動モータ19が出力した動力で走行する駆動モードのうちの1つとなる。自転車モードは、駆動モードにおける電動モータ19の出力よりも出力が抑制される抑制モードのうちの1つとなる。抑制モードについては、駆動モードに対して、利用域全域でなくとも少なくとも一部の利用域において出力が抑制される場合も含まれる。例えば抑制モードは、原動機によって出力される最大出力が抑制されてもよいし、原動機によって走行可能な最大車速が抑制されていてもよい。また、抑制モードには、所定車速を超えると、人力に対する電動モータ19の支援比率を下げるよう設定される場合も含まれる。抑制モードには、駆動モードに比べて電動モータ19が動作可能な車速域が低く設定される場合も含まれる。
【0032】
電動車モードでは、3輪型車両1が電動車として走行することが可能な出力条件を満足するように出力が設定される。例えば日本の場合、電動モータ19の出力範囲は、道路交通法に規定される普通自動車、かつ道路運送車両法に規定される原動機付自転車としての出力範囲を満たす出力範囲(いわゆるミニカーの出力範囲)に設定される。具体的には、電動車モードでは、3輪型車両1は、制限車速が時速60km/h、かつ定格出力として0.6kW以下に設定される。
【0033】
自転車モードでは、3輪型車両1が自転車、本実施形態では電動アシスト自転車として走行することが可能な出力条件を満足するように出力が設定される。例えば日本の場合、人力と電力補助の最大比率は、車速が、時速10km/h以下の利用域で、1:2に設定され、車速が時速10km/hを超えて24km/h未満の利用域で、1:2から時速が増加するにつれて最大比率が線形で逓減し、時速24km/h以上で、1:0に設定される。このようなモードごとの出力の違いは、3輪型車両1が走行する各国ごとの法規によって適宜設定されてもよい。
【0034】
バッテリー21は、フレーム11の前後途中部のうち下側に設けられている。バッテリー21は、電動モータ19、コントローラ23及び各種の補器類121等に電力を供給することができる。なお、バッテリー21の装着位置は、フレーム11のうち上下方向に延びる部分に沿って配置されるなど、他の位置に設けられてもよい。
【0035】
コントローラ23は、車体9の適宜の位置に設けられている。コントローラ23は、公知のコンピュータで構成されており、電動モータ19を制御することができる。
【0036】
前かご25は、荷物を収納することができる。前かご25は、ハンドル13の前方であって、車幅方向で左前輪3と右前輪5との間に配置されている。前かご25は、左前輪3と右前輪5との間で上方に延びるように設けられた支持部材29により支持されている。前かご25の下端は、左前輪3及び右前輪5よりも上端に配置されている。
【0037】
平面視で、3輪型車両1の重心は、左前輪3、右前輪5及び後輪7からなる3角形の内側に位置している。これにより、3輪型車両1の転倒しにくい構成が実現されている。前かご25の重心についても、前記3角形の内側に位置することが好ましい。本実施形態では、電動モータ19が後輪7の位置に設けられることで、前かご25に荷物が収容されたとしても、乗物全体としての重心位置を前記3角形の内側に位置し易くすることができる。
【0038】
荷台27は、荷物を載せることができる。荷台27は、ハンドル13の後方に設けられたシート15の後方であって、後輪7の上方に配置されている。荷台27は、フレーム11の後部に取り付けられている。荷台27は、車幅方向において、全幅寸法及び輪距寸法よりも小さい幅を有する。
【0039】
3輪型車両1は、運転者が例えば手で操作可能な操作子を備える。図面では描かれていないが、操作子は、ハンドル13の近傍に配置される。3輪型車両1が電動車モードで走行する場合、運転者が操作子を操作することで、電動モータ19が制御される。一方、3輪型車両1が自転車モードで走行する場合、運転者の踏力に基づいて電動モータ19が制御される。
【0040】
図2に示すように、3輪型車両1は、アクセルセンサ111と、ブレーキセンサ113と、を備える。前述の操作子が、ハンドル13にそれぞれ設けられる。操作子の操作は、適宜のセンサによって検出される。3輪型車両1には、補器類121、例えば、ホーン、シグナルランプ、ブレーキランプ、ヘッドライト等が設けられている。補器類121には、後述のライセンスライト77が含まれる。また、3輪型車両1には、車速センサ131及びメータ141が設けられている。メータ141は、少なくとも、上記の走行形態(走行モード)及びバッテリー21の状態を表示することができる。バッテリー21の状態は、バッテリー状態センサ133によって検出することができる。3輪型車両1には、更に、アシスト自転車モードでアシスト量を演算するためのセンサ(例えば、踏力センサ135)が設けられる。
【0041】
3輪型車両1は、モード切替用センサ101を備える。本実施形態では、モード切替用センサ101は、走行態様を切り替えるためのスイッチとして機能する。モード切替用センサ101は、後述するカバー体45がナンバープレート43を露出させる非被覆位置(図3参照)に位置することを検出すると、電動車モード指令をコントローラ23に与える。またモード切替用センサ101は、後述するカバー体45がナンバープレート43を被覆する被覆位置(図4参照)に位置することを検出すると、自転車モード指令をコントローラに与える。
【0042】
コントローラ23は、モード判定部151と、モータ指令出力部153と、モータ駆動回路155と、補器制御指令部157と、を備える。
【0043】
モード判定部151は、モード切替用センサ101の検出値に基づいて、選択すべき走行モードを判定する。
【0044】
モータ指令出力部153は、電動車モードの場合、アクセルセンサ111、ブレーキセンサ113の検出値に基づいてモータ指令を演算する。このとき、車速、バッテリー21の状態、電動モータ19の状態等に基づいて、モータ指令が補正されても良い。モータ指令出力部153は、自転車モードの場合、踏力センサ135の検出値に基づいてモータ指令を演算する。車速、バッテリー21の状態、電動モータ19の状態に基づいて、モータ指令が補正されても良い。自転車モードでは、電動車モードに比べて、電動モータ19の駆動による最大車速又は最大出力の何れかが制限されている。自転車モードにおいて、モータ指令出力部153は、電動車モードと同様に、操作子の操作の検出情報に基づいてモータ指令を生成してもよい。この場合、同じ指令が与えられたとしても、モータ指令出力部153は、電動車モードに比べて抑制したモータ指令を生成する。
【0045】
モータ駆動回路155は、電力供給回路として構成されている。モータ駆動回路155は、モータ指令出力部153から与えられるモータ指令に応じた電力を電動モータ19に供給する。
【0046】
補器制御指令部157は、操作子の操作をセンサで検出した検出値に基づいて、それぞれの補器類121への動作指令を出力する。図示しないが、このようなセンサとして、例えば、方向指示センサ及びホーン指示センサ等を挙げることができる。補器制御指令部157は、少なくとも電動車モードにおいて、補器類121への動作指令を与える。補器制御指令部157は、走行モードにかかわらず補器類121への動作指令を与えてもよいし、電動車モードのみにおいて補器類121への動作指令を与えてもよい。補器類121の操作を検出するセンサからの信号が各補器への動作指令として直接与えられる場合は、コントローラ23から補器制御指令部157を省略してもよい。
【0047】
3輪型車両1は、その走行モードを当該3輪型車両1の周囲(外方)から識別させるための識別装置31を備える。識別装置31は、車体9の後端部に配置されている。識別装置31は、3輪型車両1が実行している走行モードを表すことができる。図1に示すように、識別装置31は、シート15に対して荷台27を挟んだ後方に配置され、荷台27よりも下方に設けられる。識別装置31は、後面視で、後輪7と重なる位置で後輪7の後方に配置される。これにより、識別装置31は、後輪7に邪魔されることなく、3輪型車両1の外方に存在する人々(視認者)に視認されるように、3輪型車両1の外方、本実施形態では後方に向かって露出している。
【0048】
次に、図3及び図4を参照して、識別装置31について説明する。図3は、ナンバープレート43を露出状態とした識別装置31の斜視図である。図4は、ナンバープレート43を被覆状態とした識別装置31の斜視図である。
【0049】
図3及び図4に示すように、識別装置31は、固定部41と、走行モード識別体として機能するナンバープレート43と、カバー体45と、を備える。ナンバープレート43は、電動車両として走行許可されるために、車両に装備されて、車両個別の識別番号が付されたプレートである。本実施形態では、ナンバープレート43が、実行中の走行モードを視認者に識別させるための走行モード識別体としても機能する。
【0050】
識別装置31は、図3に示すように、ナンバープレート43が周囲の者から見える位置で車体に固定されて、3輪型車両1の外方に向かってナンバープレート43を露出させることができる。また、図4に示すように、識別装置31は、後述する構成によって、ナンバープレート43が周囲の者から見えなくなるように、カバー体45により隠すことができる。識別装置31は、ナンバープレート43を支持する支持部を有する。本実施形態では、ナンバープレート43を支持する支持部は、後述する固定部41によって兼用される。
【0051】
固定部41は、フレーム11の後端部に固定されている。固定部41は、板状に形成されている。固定部41は、厚み方向一側の面が後方、正確には後ろ斜め上方を向くように配置されている。固定部41において後方を向く面は、ナンバープレート43を支持する支持面としても機能する。固定部41は、厚み方向に垂直な少なくとも1方向に対して、ナンバープレート43よりも外側に突出する形状に形成される。本実施形態では、固定部41は、ナンバープレート43に対して一回り大きく形成される。即ち固定部41は、ナンバープレート43に対して、左右方向両側及び上下方向両側に広く形成される。以下、固定部41及びナンバープレート43において後方から視認可能な面を表面と呼ぶことがある。
【0052】
固定部41は、図3に示すように、ナンバープレート43に付された文字49が表れる面となる表面が露出するように、ナンバープレート43を保持している。固定部41は、ナンバープレート43を覆うためのカバー体45を車両に対して固定する。本実施形態では、固定部41は、カバー体45を2か所の位置で選択的に固定可能である。具体的には、固定部41は、カバー体45がナンバープレート43を覆う被覆位置(図4参照)と、カバー体45がナンバープレート43を露出させた非被覆位置(図3参照)とで選択的に固定可能である。図3に示すようにカバー体45が非被覆位置で固定部41に固定される場合、カバー体45はナンバープレート43を被覆しないため、ナンバープレート43及びナンバープレート43に付された文字49が視認可能に露出する。
【0053】
例えば図3に示すように、固定部41は、第1板状部51と、第1突出部53と、第2突出部55と、第3突出部57と、第4突出部59と、軸状部61と、を有する。
【0054】
第1板状部51は、後輪7の斜め後ろ上方に配置されている。第1板状部51は、固定部41の主要部である。第1板状部51は、概ね矩形の板状に形成されている。第1板状部51は、上下方向に対して傾斜姿勢となるように配置されている。第1板状部51の表面には、ナンバープレート43を取り付けるためのマウント面が形成されている。
【0055】
本実施形態では、識別装置31が表す走行モードにかかわらず、第1板状部51(言い換えれば、固定部41)の姿勢は一定である。従って、走行モードが何れであっても、後方から斜めに見下ろす場合、斜めに見上げる場合の両方において、識別装置31に対する視認性が良好である。また、識別装置31は3輪型車両1の後端に配置され、視線を遮るものが識別装置31の左右脇等に配置されていない。従って、識別装置31を後方から左右斜めに見る場合でも視認性が高い。
【0056】
第1突出部53は、図4に示すように、第1板状部51の車幅方向一方側、本実施形態では左側の上端部から、第1板状部51と平行な向きに前上方へ突出するように設けられている。第2突出部55は、図4に示すように、第1板状部51の車幅方向他方側、本実施形態では右側上端部から、第1板状部51と平行な向きに前上方へ突出するように設けられている。第1突出部53及び第2突出部55は、何れも小さな板状に形成される。第1突出部53を厚み方向で貫通するように第1開口部63が形成され、第2突出部55を厚み方向で貫通するように第2開口部65が形成される。第1開口部63及び第2開口部65のそれぞれには、カバー体45における後述のピン状部91を挿入することができる。
【0057】
第3突出部57は、第1板状部51の車幅方向一方側である左側の上端部から、第1板状部51と垂直な向きに後上方へ突出するように設けられている。第4突出部59は、第1板状部51の車幅方向他方側である右側の端部から、第1板状部51と垂直な向きに前下方へ突出するように設けられている。このように、第3突出部57と第4突出部59が突出する向きは、互いに逆となっている。第3突出部57及び第4突出部59は、何れも小さな板状に形成される。第3突出部57には第1ボルト挿入孔71が貫通状に形成され、第4突出部59には第2ボルト挿入孔73が貫通状に形成される。第1ボルト挿入孔71及び第2ボルト挿入孔73は、それぞれ、軸線を車幅方向に向けて配置されている。第1ボルト挿入孔71及び第2ボルト挿入孔73のそれぞれには、メネジが形成されている。従って、第1ボルト挿入孔71及び第2ボルト挿入孔73に対して、締結部品(着脱部品)67のボルト69を捩じ込んで固定することができる。締結部品67は、固定部41に対してカバー体45を固定するために用いられるものであり、詳細は後述する。本実施形態では、ナットを溶接することでメネジを実現しているが、他の構成のメネジとすることもできる。
【0058】
締結部品67は、被覆位置でカバー体45を固定部41に固定することができ、非被覆位置でカバー体45を固定部41に固定することもできる。締結部品67のボルト69は、固定部41(具体的には、第1ボルト挿入孔71及び第2ボルト挿入孔73のうち何れか)に対して着脱可能にネジ固定されている。締結部品67は、カバー体45の位置の変更のために取り外すことができる。
【0059】
軸状部61は、細長い丸棒状の部材である。軸状部61は、第1板状部51の下端部に配置されている。軸状部61は、車幅方向において、第1板状部51の略全体にわたって延びるように配置されている。軸状部61は、第1板状部51(固定部41)に対してカバー体45の位置を規定するために用いられる。
【0060】
本実施形態においては、図1に示すように、荷台27の後端部付近にライセンスライト(照明部)77が設けられている。ライセンスライト77のすぐ下方に、固定部41が配置されている。固定部41は、車幅方向において、輪距よりも小さい左右幅を有する。ライセンスライト77は、固定部41の左右幅よりも小さい左右幅を有し、固定部41の車幅方向中央部の上方に配置されている。
【0061】
言い換えれば、ライセンスライト77は、カバー体45が被覆位置にあるとき、固定部41上に位置する当該カバー体45を照明可能である。
【0062】
また、ライセンスライト77は、カバー体45が非被覆位置にあるとき、固定部41上に位置するナンバープレート43を照明可能である。ライセンスライト77は、ナンバープレート43の上方に配置されており、カバー体45は、非被覆位置では、ナンバープレート43の裏面側に位置する。従って、カバー体45がライセンスライト77の光を遮りにくい。
【0063】
カバー体45が図3に示すように非被覆位置にある場合、モード切替用センサ101から与えられるカバー体45の位置情報に基づいて、コントローラ23は、電動車モードで電動モータを制御する。カバー体45が非被覆位置にある状態、即ちナンバープレート43が周囲の者に見える場合、識別装置31を見た者は、3輪型車両1の走行モードが電動車モードであると判別することができる。カバー体45が図4に示すように被覆位置にある場合、モード切替用センサ101から与えられるカバー体45の位置情報に基づいて、コントローラ23は、自転車モードで電動モータ19を制御する。カバー体45が被覆位置にある状態、即ちナンバープレート43がカバー体45により隠されて周囲の者から見えない場合、識別装置31を見た者は、3輪型車両1の走行モードが自転車モードであると判別することができる。
【0064】
ナンバープレート43は、荷台27よりも下方に配置されている。また、ナンバープレート43は、荷台27の後端部付近で、ライセンスライト77のすぐ下方に配置されている。ナンバープレート43を照明するライセンスライト77は、コントローラ23により制御される。コントローラ23は、電動車モードでの走行であると判断した場合、少なくともライセンスライト77、ヘッドライト等の補器類121を動作させる。またコントローラ23は、自転車モードでの走行であると判断した場合は、運転者の操作に基づいてライセンスライト77の点灯及び消灯を任意に変更してもよい。
【0065】
カバー体45は、板状に形成されている。カバー体45は、ナンバープレート43の表面を広範囲にわたって被覆することができる。本実施形態では、カバー体45は、固定部41に対して着脱可能である。カバー体45を固定部41から取り外した後、前述の被覆位置と非被覆位置との間で切り替えて固定部41に再び固定することができる。
【0066】
被覆位置では、カバー体45がナンバープレート43の表面側で対向する位置となる。非被覆位置では、カバー体45が固定部41の裏面側で対向する位置となる。非被覆位置では、カバー体45は、固定部41と後輪7との間に位置する。
【0067】
カバー体45は、第2板状部81と、第5突出部83と、第6突出部85と、保持部87と、を有する。
【0068】
第2板状部81は、カバー体45の主要部である。第2板状部81は、概ね矩形の板状に形成されている。第2板状部81は、固定部41の第1板状部51よりも若干小さく形成されている。また、第2板状部81は、ナンバープレート43に付される文字49が露出しないように、ナンバープレート43の十分な範囲を被覆できるように形成されている。
【0069】
第5突出部83は、第2板状部81の端部から、第2板状部81と平行な適宜の向きに突出するように設けられている。第5突出部83は、図3のようにカバー体45が非被覆位置で固定部41に取り付けられた状態では、第2板状部81における車幅方向一側である左側の端部に配置される。第5突出部83は、図4のようにカバー体45が被覆位置で固定部41に取り付けられた状態で、第2板状部81における車幅方向他方側である右側の端部に配置される。第5突出部83が突出する方向は、後述の保持部87から遠ざかる方向である。第5突出部83は、小さな板状に形成されている。第5突出部83にはピン状部91が設けられている。ピン状部91は、第5突出部83が第2板状部81から突出する方向とは垂直な方向に、第5突出部83から突出している。ピン状部91は、固定部41の第1開口部63及び第2開口部65に挿入することができる。
【0070】
第6突出部85は、第2板状部81の端部から、第2板状部81と垂直な向きに突出するように設けられている。第6突出部85は、図3及び図4のようにカバー体45が固定部41に取り付けられた状態で、車幅方向で第5突出部83と反対側の端部に配置される。第6突出部85には貫通孔93が形成されている。貫通孔93の軸線は車幅方向に向けられている。貫通孔93は、第1ボルト挿入孔71及び第2ボルト挿入孔73に対応する位置に配置されている。
【0071】
第6突出部85の貫通孔93を、非被覆位置では第1ボルト挿入孔71に、被覆位置では第2ボルト挿入孔73に一致させた状態で、締結部品67のボルト69を捩じ込んで固定することができる。手で回すことを容易にするため、締結部品67は、ボルト69に固定されたつまみ79を有している。本実施形態では、つまみ79は、ボルト軸部分よりも十分大きい径方向寸法を有し、軸方向に垂直な断面形状が非円形に形成される。
【0072】
保持部87は、カバー体45の縁部に設けられている。保持部87はJ字状に形成されており、前述の軸状部61を引っ掛けるフックとして機能する。保持部87は、車幅方向で間隔をあけて複数配置されている。保持部87は、軸状部61に引っ掛けられた状態で、軸状部61を挟んでナンバープレート43の厚み方向両側で対向する部分を有する。これによって、カバー体45の下端部側で、カバー体45が固定部41から厚み方向に離反することを防止できる。
【0073】
識別装置31には、上述したモード切替用センサ(検出装置)101が設けられている。モード切替用センサ101は、カバー体45がナンバープレート43を被覆した状態であるか否かを検出する。本実施形態では、モード切替用センサ101は、カバー体45が被覆位置にあることを検出する。
【0074】
モード切替用センサ101は、ナンバープレート43の裏面側に設けられている。モード切替用センサ101は、3輪型車両1の外方に露出しないように、ナンバープレート43及び/又は固定部41により保護されている。本実施形態では、モード切替用センサ101の大部分が、固定部41の第1板状部51及び第4突出部59により覆われている。
【0075】
モード切替用センサ101は、被覆位置へのカバー体45の取付け状態を検出するためのセンサである。カバー体45の第2板状部81は、ナンバープレート43よりも車幅方向一側に少しハミ出して覆う部分を有する。モード切替用センサ101の検出子103は、被覆位置に位置するカバー体45のうち、上記のハミ出した部分に対向する位置に設けられている。
【0076】
モード切替用センサ101は、検出子103を備える。モード切替用センサ101及び検出子103は、矩形状のナンバープレート43の上端と下端の間に対応するように配置され、ナンバープレート43に対して厚み方向に上方に突出する。検出子103は、棒状に形成された小さな部品である。検出子103は、固定部41が備える板状の第1板状部51を厚み方向で貫通して、ナンバープレート43の表面側に突出するように配置されている。検出子103はモード切替用センサ101のハウジングに対してスライド移動可能に支持されており、突出量を増減させる方向に移動することができる。検出子103は、図示しないバネによって突出方向に付勢されている。
【0077】
カバー体45が被覆位置に固定されると、カバー体45は、ナンバープレート43の表面側から検出子103に接触して、検出子103を裏面側へ押し込む。これによって、モード切替用センサ101は、カバー体45によるナンバープレート43の被覆状態を検出する。カバー体45が取り外されたり、非被覆位置に固定されると、検出子103は、ナンバープレート43からの突出状態を維持する。これによって、モード切替用センサ101は、検出子103の没入変位を検出せず、カバー体45によるナンバープレート43の非被覆状態を検出する。
【0078】
本実施形態では、電動車モードと自転車モードの切替を、例えばハンドル13に配置されるスイッチではなく、シート乗車状態の運転者からは届かない、ナンバープレート43の近傍のモード切替用センサ101によってのみ行う。これにより、電動車モードと自転車モードの切替は、3輪型車両1を必ず停車させた状態で、運転者が降車して車両の後方に移動して行う必要がある。従って、運転者による誤操作による意図しないモード切替を防ぐことができる。
【0079】
モード切替用センサ101は、車幅方向において、ナンバープレート43よりも左右方向で外側、具体的には右側に配置されている。本実施形態において、図3に示すように、モード切替用センサ101のハウジングは、ある程度の厚みを有する板状に形成されている。モード切替用センサ101は、この板状のハウジングの厚み方向が車幅方向に向くように配置されている。従って、モード切替用センサ101の前後方向の寸法よりも、また、上下方向の寸法よりも、左右方向の寸法が小さい。この配置により、小型化が実現されている。
【0080】
モード切替用センサ101の車幅方向外側には、固定部41の第4突出部59が配置されている。図5に示すように、カバー体45が被覆位置にある場合、モード切替用センサ101の車幅方向外側には、第4突出部59に加えて、締結部品67のつまみ79が配置される。これにより、3輪型車両1が右側に倒れたとしても、3輪型車両1の外方に存在するもの(障害物等)にモード切替用センサ101が接触することを、第4突出部59、又は第4突出部59及びつまみ79により防ぐことができる。
【0081】
次に、図3から図6を参照して、固定部41に対するカバー体45の取付位置を変更する作業について説明する。ここでは、カバー体45が非被覆位置から被覆位置に移動する場合を例に挙げて説明する。図5は、非被覆位置のカバー体45を固定部41から取り外す様子を示す斜視図である。図6は、後輪7側からみたカバー体45を示し、カバー体45を反転させる作業を示す斜視図である。
【0082】
非被覆位置(図3参照)では、カバー体45の2つの保持部87は、固定部41の軸状部61にそれぞれ引っ掛けられている。また、カバー体45のピン状部91は、固定部41の第2開口部65に挿入されている。ピン状部91の先端は若干太く形成されている。また、図示しないが、第2開口部65には弾性変形可能な部材であるリング状のグロメットが取り付けられる。従って、ピン状部91を第2開口部65に差し込むと、比較的弱い力ではあるが、ピン状部91が第2開口部65から抜けないように保持される。更に、カバー体45の第6突出部85に形成される貫通孔93には、締結部品67のボルト69が差し込まれ、このボルト69が、固定部41の第1ボルト挿入孔71に捩じ込まれている。このように非被覆位置(図3)では、カバー体45の上側部分及び下側部分で固定部41に引っ掛けられるとともに、左右方向一端部で固定部41に対してボルト締結される。このように上下及び左右に離れた箇所での引掛け、締結部品67による締結等によって、カバー体45の固定部41に対する位置ずれや脱離を防ぐことができる。
【0083】
非被覆位置(図3参照)のカバー体45を被覆位置(図4参照)に移動させる場合の作業について説明する。電動車モードから自転車モードへ切り替えたい場合、運転者は、非被覆位置でカバー体45を締結する締結部品67のつまみ79を回して、締結部品67をカバー体45及び固定部41から外す。次に、図5に示すように、カバー体45を固定部41から離す。具体的には、図5の矢印A1で示すように、カバー体45を、軸状部61を中心として下方へ少し回転させる。この結果、図5に示すように、ピン状部91が第2開口部65から抜ける。この状態で、矢印A2で示すように、カバー体45を固定部41の裏面に沿って後ろ斜め下方向に引き抜く。これにより、保持部87が軸状部61から外れ、カバー体45が固定部41から分離する。
【0084】
次に、運転者は、図6(1)の矢印A3で示すように、カバー体45の表面に平行で車幅方向に直交する中心線C1まわりにカバー体45を180度角変位させる。この結果、カバー体45は、図6(2)に示すように、上下面及び左右端が反転する姿勢になる。このように、カバー体45は、非被覆位置及び被覆位置の何れに取り付けるかに応じて、左右反転が行われる。
【0085】
図6で示すようにカバー体45が左右反転するのに伴って、カバー体45のうち、被覆位置で検出子103に対向する部分は、非被覆位置では、モード切替用センサ101から車幅方向に反対側となる位置に位置する。従って、単純にカバー体45を裏返した場合に比べて、非被覆位置でのカバー体45とモード切替用センサ101との干渉を防ぐことができる。
【0086】
続いて、運転者は、反転後のカバー体45が備える保持部87を、図4の固定部41が備える軸状部61に引っ掛ける。このとき、カバー体45がナンバープレート43の表面側に位置するようにする。
【0087】
次に、運転者は、カバー体45の第2板状部81をナンバープレート43及び固定部41に近づけるように、軸状部61を中心として下方へ回転させる。この結果、ピン状部91が第1開口部63に差し込まれる。第1開口部63にも第2開口部65と同様にグロメットが取り付けられているので、ピン状部91は、第1開口部63から抜けないように保持される。この状態で、カバー体45の第2板状部81は、ナンバープレート43の表面側に重ねられる。これとほぼ同時に、カバー体45の第2板状部81が、モード切替用センサ101の検出子103を押し込む。
【0088】
運転者は、カバー体45が有する第6突出部85の貫通孔93を、固定部41の第4突出部59の第2ボルト挿入孔73に一致させた状態とする。次に、運転者は、先ほど取り外した締結部品67のボルト69を貫通孔93に差し込み、第2ボルト挿入孔73に捩じ込んで固定する。これにより、被覆位置(図4参照)でカバー体45を固定部41に固定することができる。このように被覆位置(図4)では、カバー体45の上側部分及び下側部分で固定部41に引っ掛けられるとともに、左右方向他端部で固定部41に対してボルト締結される。このように上下及び左右に離れた箇所での引掛け、締結部品67による締結等によって、カバー体45の固定部41に対する位置ずれや脱離を防ぐことができる。
【0089】
非被覆位置(図3参照)、被覆位置(図4参照)の何れにおいても、カバー体45の上端は締結部品67及びピン状部91によって固定部41に固定され、カバー体45の下端は2つの保持部87によって固定部41に固定される。従って、カバー体45が固定部41から意図せず外れることを防止することができる。被覆位置のカバー体45を非被覆位置に移動させる場合は、実質的に上記と逆の作業を行えば良いので、説明を省略する。
【0090】
次に、モード切替用センサ101の構成について説明する。本実施形態においてモード切替用センサ101は、検出子103が押し込まれないときは回路が閉じて電気信号を出力し、検出子103が押し込まれた状態では回路が開いて電気信号の出力を停止するスイッチとして構成されている。コントローラ23は、モード切替用センサ101から与えられる電気信号出力があることを判断することにより、電動車モード(駆動モード)に切り替える。コントローラ23は、モード切替用センサ101から与えられる電気信号出力がないことを判断することにより、自転車モード(抑制モード)に切り替える。
【0091】
カバー体45を非被覆状態としても、異物の挟み込み等によって、検出子103が押し込まれた状態に維持されてしまう復帰異常が生じることがある。本実施形態では、このような検出子103の復帰異常が生じたとしても、自転車モードが実行され続けるので、意図せずにモータ出力が抑制解除されることを防ぐことができる。
【0092】
また、モード切替用センサ101内の回路の断線によって、電気信号がコントローラ23に出力できない異常が生じることがある。本実施形態では、このような断線異常が生じた場合には、電気信号が出力できない状態となることで、自転車モードが実行され続けるので、意図せずにモータ出力が抑制解除されることを防ぐことができる。
【0093】
以上に説明したように、本実施形態の3輪型車両1は、電動車モード(駆動モード)と、自転車モード(抑制モード)と、が走行モードとして切替可能である。電動車モードでは、3輪型車両1は、電動モータ19が出力した動力だけで走行する。自転車モードでは、電動モータ19の出力が、電動車モードよりも抑制される。ナンバープレート43は、カバー体45と協働することで、実行中の走行モードを視認者に識別させる機能も兼ねる。コントローラ23は、モード切替用センサ101がカバー体45による被覆状態を検出する場合には自転車モードを実行し、モード切替用センサ101がカバー体45による被覆状態を検出しない場合には電動車モードを実行するようにモータ制御を行う。モード切替用センサ101は、ナンバープレート43の裏面側に設けられる。
【0094】
これにより、視認者は、ナンバープレート43に対してカバー体45が被覆/非被覆状態の何れであるかを視認することで、3輪型車両1が2つの走行モード(電動車モード及び自転車モード)のうち何れの走行モードで走行しているかを、容易に判断することができる。異なる走行モードでの走行を可能とすることで、走行モードごとに異なる走行エリアを走行可能となったり、1つの車両で、状況に応じた走行を可能としたりすることができる。例えば、本実施形態の3輪型車両1は、電動車での走行が許可されている領域と、自転車での走行が許可されている領域の両方の領域を走行できる場合があり、利便性を向上させることができる。自転車モードでは、出力が抑制される分、走行が許可される領域が広く、移動領域としての自由度が高くなる可能性がある。電動車モードでは、走行が許可される領域が狭いが、出力抑制が解除されることに起因した高速移動性や搬送性を高められる可能性がある。
【0095】
また、モード切替を判断するためのモード切替用センサ101が3輪型車両1の外方に露出しない配置を実現できる。従って、モード切替用センサ101が障害物等と衝突することを回避することができる。これによってモード切替用センサ101の故障を抑えることができ、コントローラ23による走行モードの切替不良が生じることを防いで、視認者の認識と、実際の乗物の走行モードを一致し易くすることができる。視認者は、視認によって乗物の走行モードを推測して、乗物の挙動を予想したり、自身の行動を修正したりすることができる。更に、本実施形態では、モード切替用センサ101が、ナンバープレート43の裏側に配置されることで、モード切替用センサ101でナンバープレート43の露出が阻害されることを防いで、ナンバープレート43の視認性を向上させることができる。また、ナンバープレート43を用いてモード切替用センサ101の保護を図ることができるので、新たにモード切替用センサ101を保護するための専用部品を不要とすることができ、部品点数増加に起因する製造コストの増加を抑えることができる。
【0096】
また、本実施形態の3輪型車両1において、モード切替用センサ101は、被覆位置に位置するカバー体45に対して対向する位置に設けられる。モード切替用センサ101は、カバー体45の接近を検出するセンサである。
【0097】
このようにカバー体45に対して厚み方向に対向する位置にモード切替用センサ101が配置されることによって、被覆位置に位置するカバー体45に近接した位置にモード切替用センサ101を配置することができる。これにより、カバー体45が被覆位置にあることを、モード切替用センサ101によって精度よく検出できる。また、モード切替用センサ101の検出子103は、表側からカバー体45で覆われることで保護される。従って、検出子103の障害物への接触を防いで、モード切替用センサ101の損傷を更に防ぐことができる。
【0098】
また、本実施形態の3輪型車両1において、モード切替用センサ101は、上下方向でナンバープレート43の上端部と下端部との間に配置される。
【0099】
これにより、モード切替用センサ101が、ナンバープレート43に対して上方及び/又は下方に突出することを防ぐことができる。従って、上下方向において、コンパクトな構成を実現することができる。
【0100】
また、モード切替用センサ101は、ナンバープレート43の車幅方向外側に配置される。これによって、ナンバープレート43の裏側にモード切替用センサ101を配置した場合において、モード切替用センサ101と後輪7との干渉を防ぎ易い。またモード切替用センサ101は、略板状に形成されて、その厚み方向に直交する長手方向がナンバープレート43の表面に平行に延びる。即ち、モード切替用センサ101の長手方向は、車幅方向に垂直な平面に沿うとともに、前方に進むにつれて上方に向かう。モード切替用センサ101の短手方向がナンバープレート43の厚み方向に沿うことで、ナンバープレート43から下方に突出する突出量を抑えることができる。
【0101】
また、モード切替用センサ101は、固定部41のうちの第4突出部59で覆われる。従って、モード切替用センサ101の保護効果を更に高めることができる。また、モード切替用センサ101は、着脱用のつまみ79と離れた位置に設けられる。従って、つまみ79との干渉を防ぐとともに、つまみ79が障害物に衝突した際の衝撃が、モード切替用センサ101に伝わることを抑えることができる。
【0102】
また、本実施形態の3輪型車両1において、モード切替用センサ101の検出子103は、上下方向で、被覆位置に位置するカバー体45の上端部と下端部との間の中間位置に配置される。カバー体45は、被覆位置(図4)では、固定部41によって当該カバー体45の上端部及び下端部のそれぞれで位置を規制される。
【0103】
このように、上下端が固定されるカバー体45に対して、上下方向中間部に配置される検出子103によって被覆位置が検出される。従って、被覆位置でのカバー体45の位置のばらつきを防ぐことができるので、誤検出を防ぐことができる。
【0104】
また、本実施形態の3輪型車両1において、カバー体45は、ナンバープレート43の裏面側で固定部41に固定可能である。
【0105】
これにより、非被覆位置に固定されるカバー体45がナンバープレート43の視認性に影響することを防ぐことができる。また、カバー体45をナンバープレート43の近くに固定させておくことで、カバー体45がナンバープレート43と離れた位置に固定される場合に比べて、被覆位置/非被覆位置へのカバー体45の切替作業に必要なカバー体45の移動を少なくして、作業性を向上させることができる。また板状のカバー体45が、板状のナンバープレート43に対して、厚み方向に重ねて固定されることで、設置スペースを縮小化することができ、非被覆位置に固定されるカバー体45の設置スペースの大型化を防ぐことができる。
【0106】
また、本実施形態の3輪型車両1において、固定部41は、締結部品(着脱部品)67を有する。締結部品67は、被覆位置でナンバープレート43の表面側に位置するカバー体45を固定するために、固定部41に着脱可能に設けられる。締結部品67は、ナンバープレート43の裏面側でカバー体45を固定部41に固定するための部品を兼ねる。同様に、固定部41は、ナンバープレート43の支持とともに、カバー体45の固定機能を兼ねる。更に、固定部41は、1つの部材であって、被覆位置と、非被覆位置の2通りのカバー体45を固定する固定構造を有する。
【0107】
これにより、被覆位置と非被覆位置とで異なる部材を用いて固定する構造を採用する場合に比べて、部品点数を減らすことができる。
【0108】
また、本実施形態の3輪型車両1は、運転者が着座するシート15と、荷物を載せることができる荷台27と、を備える。荷台27は、シート15の後方に配置される。荷台27よりも下方にナンバープレート43が設けられる。
【0109】
これにより、3輪型車両1を運転中の運転者に対して下方かつ、荷台27を挟んで後方に離れた位置にカバー体45が設けられる。これによって運転中のカバー体45へのアクセスをしにくくすることができ、3輪型車両1の走行中に運転者が走行モードを切り替えることを防止することができる。
【0110】
また、被覆位置に位置するカバー体45の表面には、自転車モードを示す標識、例えば自転車を示すピクトグラムが付される。これによって、視認者に、自転車モードでの走行状態であることを更に容易に視認させることができる。また3輪型車両は、ナンバープレート43を照らすライセンスライト77を更に含み、ライセンスライト77は、被覆位置にあるカバー体45の標識を照らすことが可能な位置に設けられる。これによって、夜間でも、自転車モードであることの視認性を向上することができる。また、ライセンスライト77と、被覆位置にあるカバー体45を照らすライトを共通化することができ、部品点数の増加を防ぐことができる。
【0111】
また、本実施形態の3輪型車両1は、車長方向における一方側が車幅方向に並ぶ複数の車輪としての左前輪3及び右前輪5を含む3輪を備える。
【0112】
これにより、2輪車に比べて、車幅方向に離れた2つの位置で左前輪3及び右前輪5を用いた車輪接地を実現することができる。従って、走行安定性、スリップ抑制効果や制動力を高めることができ、電動車モード(駆動モード)における出力向上を図り易い。本実施形態では、3輪型車両1は、更に旋回時にリーン可能に形成されることで、旋回時に生じる遠心力に抗する向きに傾斜させることができる。従って、高速での旋回性能を高めることができ、電動車モード(駆動モード)における更なる出力向上を図り易い。また、左右輪を連結する部分に対して、左右輪が操舵する構造に構成されることで、連結部分ごとに操舵される場合に比べて、自転車モードとして走行する際の旋回半径を小さくしたり、操舵に要する人力を低減したりすることができる。また、本実施形態の3輪型車両1では、左右輪の車幅方向内側に左右輪それぞれの操舵軸が設定される。言い換えれば、左右輪を操舵支持する構造が片持ち支持構造である。これによって、左右輪それぞれが両端支持構造に形成される場合に比べて、左右輪の外側に突出する支持部分を省略することができ、輪距が500mmを超えつつ、左右輪の車幅方向外側端の間の距離が600mm以下として形成し易くすることができる。
【0113】
また、前かご25が左右輪の上方に配置されることで、左右輪の間に前かご25が配置される場合に比べて、操舵時における前かご25と左右輪との干渉を防いで、操舵角を拡大することができる。従って、低速での旋回半径を小さくできるので、例えば狭い歩道での走行性を向上させることができる。
【0114】
また、本実施形態の3輪型車両1において、車幅方向で隣り合う左前輪3と右前輪5との輪距は500mmを超える大きさに形成される。
【0115】
これにより、接地輪である左前輪3及び右前輪5の車幅方向間隔を広げた状態とすることができる。これによって輪距を十分に確保することができ、走行安定性、スリップ抑制効果や制動力を高めることができ、電動車モード(駆動モード)における出力向上を図り易い。
【0116】
また、本実施形態の3輪型車両1において、車幅方向において全幅は600mm以下とすることができる。
【0117】
これにより、3輪型車両1に関し、車幅方向の大型化を抑えることができる。従って、走行モードを自転車モード(抑制モード)として利用した場合に、比較的幅が狭い歩道を走行し易くなる。
【0118】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0119】
識別装置31は、3輪型車両1以外にも適用が可能である。例えば、前後にそれぞれ左右輪が設けられる4輪型車両でも、識別装置31を同様に適用することができる。この場合、大きいほうの輪距が500mmを超えることが好ましい。また駆動モードを実現するうえで3輪以上が好ましいが、これに限らず、前後にそれぞれ1輪ずつ設けられる2輪型車両でも本発明に含まれ、同様に本発明の効果を得ることができる。
【0120】
上記の実施形態では、車両の前側に左右車輪が設けられる3輪型車両1を示したが、車両の後側に左右車輪が設けられる3輪型車両であっても本発明に含まれる。なお、後輪が1輪の3輪型車両のほうが、後輪が左右輪の3輪型車両に比べて、左右輪の影響を抑えて、ナンバープレート43の視認性向上を図ることができる。同様に非リーン型車両であっても、左右輪の連結部分がハンドル13とともに操舵されるような3輪型車両であっても、本発明に含まれる。
【0121】
上記の実施形態では、原動機として電動モータ19が用いられたが、例えばエンジン(内燃機関)等の、電動モータ19以外の駆動源が原動機として用いられてもよい。また、上記の実施形態では、後輪7に電動モータ19が設けられるとしたが、電動モータ19が後輪7以外、例えばペダル17付近に設けられる場合も本発明に含まれる。
【0122】
上記の実施形態で示した3輪型車両1の輪距についても一例であって、500mm以下であってもよく、例えば460mm以上であってもよい。
【0123】
上記の実施形態では、コントローラ23が、走行モードの識別切替に応じて、駆動モードと、駆動モードに対して抑制された抑制モードと、の2通りの走行モードで電動モータ19を制御する。この場合、上述した電動車モード以外の駆動モードであってもよい。例えば駆動モードとして、普通自動2輪車の条件を満足するような出力を与えるようにモータ制御してもよい。同様に、上述した自転車モード以外の抑制モードが実行される場合も本発明に含まれる。例えば自転車モードとして、利用域全域において、原動機による駆動力を与えないようにモータ制御する場合も抑制モードに含まれる。また抑制モードについて、駆動モードに比べて出力が抑制されればよく、駆動モードと同様の操作子によって操作指令が与えられてもよい。この場合、運転者の踏力を駆動力として与えるペダルが設けられない構成も本発明に含まれる。
【0124】
上記の実施形態では、ナンバープレート43が、走行モードを識別させるための走行モード識別体として機能したが、外方に露出して視認者が識別可能なものであればよく、ナンバープレート43以外の識別体を用いた場合も本発明に含まれる。例えば、電動車モードの走行で装備が要求されるが、自転車モードの走行では装備が要求されない補器類を、カバー体45での被覆/非被覆で識別させることで、走行モード識別体として機能させる場合も本発明に含まれる。
【0125】
上記の実施形態では、固定部41が、カバー体45を非被覆位置/被覆位置の両方で固定するとした。しかし、固定部41は、少なくとも被覆位置でカバー体45を固定する構造であればよく、非被覆位置での固定構造を有しない固定部が採用される場合も本発明に含まれる。
【0126】
モード切替用センサ101は、カバー体45がナンバープレート43に対して何れの位置にあるかを検出可能なものであれば良い。モード切替用センサ101は、リミットスイッチのような接触式のセンサであっても良いし、非接触式のセンサであっても良い。例えば、非接触式のセンサとして、赤外線センサなどの光学式センサ、又は、磁界変化を利用した誘導型センサ等を用いてもよい。
【0127】
カバー体45の保持部87に代えて、固定部41に連結するヒンジ構造を設けても良い。この場合、カバー体45は固定部41から分離不能となる。ヒンジ軸を中心としてカバー体45を回転させることにより、カバー体45を被覆位置と非被覆位置との間で移動させることができる。ただし、この構成は、固定部41と後輪7との間に、カバー体45を回転させるための比較的大きなスペースを確保する必要がある。このように、固定部41の構造については、上述した実施形態に限定されない。
【0128】
カバー体45を上下方向で複数に分割してヒンジ構造によって連結し、カバー体45を折畳み可能に構成しても良い。この場合、カバー体45は、非被覆位置では折り畳まれた状態となるように構成することができる。
【0129】
カバー体45は、その位置変更のために固定部41に対して車幅方向に移動可能に設けても良い。
【0130】
カバー体45には、抑制モードを示す表示内容(標識)を付与しても良い。標識としては、例えば自転車のピクトグラムが考えられるが、これに限定されない。この場合、カバー体45は、被覆位置にあるときに、この表示内容を表面(外部に露出する面)側で表示させる。この表示内容はライセンスライト77により照らすことが可能である。よって、夜間でも、走行モードの視認性を向上させることができる。また、ライセンスライト77をナンバープレート43と共通して用いることができ、部品点数の増加を防ぐことができる。
【0131】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0132】
1 3輪型車両(乗物)
3 左前輪
5 右前輪
15 シート
27 荷台
23 コントローラ(制御装置)
41 固定部
43 ナンバープレート(走行モード識別体)
45 カバー体
67 締結部品(着脱部品)
77 ライセンスライト(照明部)
101 モード切替用センサ
103 検出子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8