(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度バイオセンサチップ、測定システム、及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/21 20060101AFI20221116BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
G01N33/543 595
(21)【出願番号】P 2021509915
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 KR2019010521
(87)【国際公開番号】W WO2020040509
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0096767
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515111060
【氏名又は名称】韓国標準科学研究院
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESERCH INSTITUTE OF STANDARDS AND SCIENCE
【住所又は居所原語表記】267 Gajeong-ro,Yuseong-gu,Daejeon 34113,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒョンモ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヨンジェ
(72)【発明者】
【氏名】チェガル,ウォン
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-315052(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0064917(KR,A)
【文献】特開2011-209097(JP,A)
【文献】特表2018-503810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G01N 33/00-33/46
C12Q 1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定システムにおいて、
偏光を発生させる偏光発生部と、
前記偏光発生部で発生した偏光が特定の入射角で入射されるバイオセンサチップと、
前記バイオセンサチップより反射された反射光から、偏光信号を測定する偏光検出部とを含み、
バイオセンサチップは、高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度バイオセンサチップであって、特定の入射角で入射光が入射して反射される誘電体基板と、前記基板上に固定される分析物質部と、前記分析物質部に結合され、楕円偏光信号を増幅させる
高消光係数標識子とを含
み、前記標識子は、特定の波長領域の光において、消光係数が特定値(k)である1.000以上であり、前記分析物質部は、前記誘電体基板の表面は、自己組立薄膜に機能化して、捕獲抗体を固定化し、標識子に付着される探知抗体と、前記探知抗体と前記捕獲抗体の間に結合して、分析対象となる生体結合物質とを含み、
前記入射角は、誘電体基板に対するブリュースター角、又は、誘電体基板のpsi値と標識子のpsi値の最大差の値となるときの入射角であることを特徴とする高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度測定システム。
【請求項2】
前記生体結合物質は、タンパク質、DNA、RNA、細胞、ペプチド、又はバクテリアであることを特徴とする請求項
1に記載の高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度バイオセンサチップ。
【請求項3】
前記偏光発生部は、光源と、偏光子とを含むことを特徴とする請求項
1に記載の高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度測定システム。
【請求項4】
前記偏光検出部は、検光子と、光検出器と、演算処理器とを含むことを特徴とする請求項
1に記載の高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度測定システム。
【請求項5】
請求項
1による高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度測定システムを用いた測定方法であって、
偏光発生部で偏光を発生させるステップと、
前記偏光発生部で発生した偏光が、特定の入射角でバイオセンサチップに入射されるステップと、
誘電体基板に付着された分析物質に固定した標識子により、信号が増幅されるステップと、
前記バイオセンサチップより反射された反射光が偏光検出部に入射されて、偏光信号を測定するステップとを含むことを特徴とする高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度測定方法。
【請求項6】
前記標識子は、特定の波長領域の光において、消光係数kが1.000以上であることを特徴とする請求項
5に記載の高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度測定方法。
【請求項7】
前記誘電体基板の表面は、
自己組立薄膜に機能化して、捕獲抗体を固定化し、標識子に付着される探知抗体と、前記探知抗体と前記捕獲抗体の間に結合して、分析対象となる生体結合物質とを含むことを特徴とする請求項
6に記載の高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度バイオセンサチップ、測定システム、及び測定方法に関し、より詳しくは、エリプソメトリ基盤の高感度バイオセンサ技術であって、高消光係数を有する標識子と誘電体基板により、楕円偏光信号を増幅する技術、又はこれを用いた測定方法に関し、本発明で用いた標識子と基板は、超低濃度生体物質(抗体又はDNA)に対して、ブリュースター角(Brewster's angle)の移動を測定するか、楕円偏光計測角度を測定するバイオセンサ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エリプソメトリは、基板の表面から反射した反射光の偏光状態を測定し、その測定値を分析して、基板の厚さや光学的物性を見出す測定技術である。このような測定技術は、半導体産業のナノ薄膜製造工程において、様々なナノ水準の薄膜厚さと物性の評価に活用されている。また、バイオ産業へその活用範囲を拡げて、タンパク質、DNA、ウイルス、新薬物質などのようなバイオ物質の界面分析に応用しようとする努力が続けている。
【0003】
一般に、エリプソメトリは、薄膜厚さnmまで測定することができるが、低分子又は超低濃度生体物質の分析のために必要な測定感度0.01nm以下では不足して、測定値に対する信頼性が低下するという問題がある。これを改善するために、短波長光源を用い、基板の厚さ変化に敏感なブリュースター角で楕円偏光信号を測定する方法が使われている。ブリュースター角では、基板の厚さ変化による屈折率変化がないため、周囲環境(温度)に影響されず、生体物質による楕円偏光信号を敏感に測定することができる。また、センサチップの表面厚さの変化を大きくして測定敏感度を向上させるため、サイズの大きい標識子を用いて、生体反応の楕円偏光信号を増幅することができる。
【0004】
表面プラズモン共鳴(以下、'SPR'という)は、光波により、金属表面に存在する電子が励起して、表面の縦方向(normal)に集団振動することになり、この際、光エネルギーが吸収される現象である。これを用いたSPRセンサは、リアルタイムでモニタリングが可能であり、標識子を用いた信号増幅により、疾病診断又は新薬検索に利用されている。SPRセンサチップは、一般に、ガラス基枚に数十ナノメートルの金薄膜をコートして製作され、金薄膜の表面上に生体物質が接合することになると、共鳴角と反射率が変わって、接合動特性又は定量分析が行われる。しかし、緩衝溶液の屈折率変化が共鳴角の移動に直接影響して、低分子又は超低濃度生体物質の測定に際して困難がある。また、これを補正するために、高価の更なる装置と高度の分析アルゴリズムが求められる。
【0005】
標識子を用いたSPR信号増幅方法には、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)現象を用いる場合もある。これは、標識子(金ナノ粒子)と光が結合して、測定信号が増加する技術である。しかし、ナノ標識子の表面から一定の間隔範囲(200nm以内)ずれた生体反応に対する信号は、その距離によって減少し、結果として、生体物質測定に制限がある。また、標識子として金属粒子を用いても、金属粒子のサイズ増加による効果が増幅信号の主な要因である。
【0006】
このように、センサ表面の質量変化に敏感なバイオセンサ(SPRセンサ、エリプソメトリ)は、標識子のサイズを、信号増幅方法において主として用いる。しかし、標識子のサイズにより、生体物質結合反応性が阻害される立体障害現象で、測定及び信号増幅に限界を有している。
【0007】
既存の酵素標識子(例えば、Horseradish peroxidase、HRP)を用いた信号増幅方法は、基質溶液と共に酵素反応において、生体物質に対する測定信号を増加することができる。しかし、酵素反応を起こすために、基質溶液を更に注入しなければならず、酵素の保管条件(温度、期間)によって、その反応の半減期が短くて、バイオセンサの測定再現性が低下する。
【0008】
蛍光標識子の場合は、酵素よりも安定し、多量の蛍光体を探知物質(探知抗体)に結合することで、測定信号を向上することができる。しかし、蛍光体間の間隔が近いと、光により生じた蛍光エネルギーの消滅現象(quenching effect)が生じて、蛍光信号が減少する。
【0009】
ナノ粒子を標識子として用いる場合は、主に、表面プラスモン共鳴(SPR)と、水晶振動子マイクロバランス(quartz crystal microbalance、QCM)のような質量センサで標識子のサイズを用いて、測定信号を増幅することができる。しかし、ナノ粒子のサイズが大きくなると、生体結合反応に際して、立体障害現象を誘発して、反応効率を低下させる。
【0010】
また、特定のナノ粒子(金ナノ粒子)の表面で発生する局在表面プラズモン共鳴(LSPR)現象は、ナノ粒子と光が結合して測定信号が増加するが、ナノ粒子の表面から一定間隔ずれた生体反応は、その距離によって測定信号が減少し、結果として、生体物質の高感度測定に際して制限となり得る。
【0011】
前述した信号増幅方法の限界を克服するために、本発明では、誘電体基板のセンサチップに結合された生体物質を、高消光係数の標識子を用いて高屈折率変化を誘導し、楕円偏光信号を増幅している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、前記のような従来の問題点を解決するためになされたものであって、生体物質の楕円計測バイオセンサの測定信号を増幅するための技術であって、既存の標識子(酵素、蛍光、ナノ粒子)を用いた信号発生方法の技術的制限を解決することができる高消光係数の標識子と誘電体基板を用いた楕円計測バイオセンサ技術を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、高消光係数標識子と誘電体基板を用いて、基板表面の生体反応に対する楕円偏光信号を測定することで、測定感度を極大化することができ、誘電体基板上に、バイオ薄膜の厚さ変化は、楕円偏光信号の変化が極めて小さく現れるが、高消光係数の標識子をバイオ物質に付着する場合、高屈折率変化によって、ブリュースター角の移動が大きく起きることになり、誘電体基板において、高消光係数標識子を付着した生体物質の接合により誘発されるブリュースター角の移動を測定するか、楕円偏光計測角度を測定することで、超高感度生体物質の接合特性を得る高消光係数の標識子と誘電体基板を用いた楕円計測バイオセンサ技術を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、生体物質分析は、既存の標識子サイズを用いたエリプソメトリよりも楕円偏光信号を大きく増幅して、生体結合反応(抗原-抗体)間の特異反応を敏感に検出することができ、標識子による高屈折率変化を測定して、生体結合反応において、標識子のサイズによる立体障害現象を最小化し、反応効率を極大化することができる高消光係数の標識子と誘電体基板を用いた楕円計測バイオセンサ技術を提供することにある。
【0015】
更に、本発明の他の目的は、高消光係数標識子と誘電体基板を用いたブリュースター角の楕円偏光信号測定において、標識子の質量よりも消光係数の屈折率変化によるブリュースター角の移動が大きく起きることで、既存のSPR測定方法よりも数十倍の増幅効果を得る高消光係数の標識子と誘電体基板を用いた楕円計測バイオセンサ技術を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、生体物質を測定するバイオセンサの信号増幅のために、センサ基板と標識子の光物性を用いて、高感度、高精度の分析を誘導し、特に、誘電体基板に結合する高消光係数標識子量の小差(<0.1nm)でも信号が大きく変わって、極微量存在する生体物質や超低分子物質の新薬を検索するに信号増幅の効果を極大化することができる、高消光係数の標識子と誘電体基板を用いた楕円計測バイオセンサ技術を提供することにある。
【0017】
更に、本発明の他の目的は、医療、環境、食品など様々な分野の分析物質を検出するバイオセンサは、測定信号を増幅させて、敏感度、正確度、精密度などの分析性能を向上することができ、楕円計測バイオセンサの測定信号を約50-100倍向上させて、生体内で超低濃度で存在するバイオマーカを敏感に検出して、初期段階の疾病を診断するか、手術後の予後をモニタリングすることができ、また、超低分子新薬の生化学的反応を精密にモニタリングすることができるので、高価な新薬物質の検索にかかる試料の量を最小化することができ、本発明の測定対象物質は、タンパク質と細胞、そして、遺伝子のような生体物質だけでなく、環境、食品を通じて感染を誘発する細菌及びウイルス、そして、毒性化学物質など、様々な分析物質に対するバイオセンサの測定信号を、誘電体基板と高消光係数標識子を用いた楕円計測技術により増幅することができる高消光係数の標識子と誘電体基板を用いた楕円計測バイオセンサ技術を提供することにある。
【0018】
一方、本発明で達成しようとする技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及していない更に他の技術的課題は、下記の記載から、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって、明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の目的は、バイオセンサチップであって、特定の入射角で入射光が入射して反射される誘電体基板と、前記基板上に固定される分析物質部と、前記分析物質部に結合され、楕円偏光信号を増幅させる標識子とを含むことを特徴とする高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度バイオセンサチップとして達成される。
【0020】
前記標識子は、特定の波長領域の光において、消光係数が特定値以上である。
【0021】
前記特定値(k)は、1.000である。
【0022】
前記分析物質部は、前記誘電体基板の表面は、自己組立薄膜に機能化して、捕獲抗体を固定化し、標識子に付着される探知抗体と、前記探知抗体と前記捕獲抗体の間に結合して、分析対象となる生体結合物質とを含む。
【0023】
前記生体結合物質は、タンパク質、DNA、RNA、細胞、ペプチド、又はバクテリアである。
【0024】
本発明の第1の目的は、測定システムであって、偏光を発生させる偏光発生部と、前記偏光発生部で発生した偏光が特定の入射角で入射される前記第1の目的によるバイオセンサチップと、前記バイオセンサチップより反射された反射光から、偏光信号を測定する偏光検出部とを含むことを特徴とする高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度測定システムとして達成される。
【0025】
前記入射角は、誘電体基板に対するブリュースター角である。
【0026】
前記入射角は、誘電体基板のpsi値と標識子のpsi値の最大差の値である。
【0027】
前記偏光発生部は、光源と、偏光子とを含む。
【0028】
前記偏光検出部は、検光子と、光検出器と、演算処理器とを含む。
【0029】
本発明の第3の目的は、前記第2の目的による高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度測定システムを用いた測定方法であって、偏光発生部で偏光を発生させるステップと、前記偏光発生部で発生した偏光が、特定の入射角でバイオセンサチップに入射されるステップと、誘電体基板に付着された分析物質に固定した標識子により、信号が増幅されるステップと、前記バイオセンサチップより反射された反射光が偏光検出部に入射されて、偏光信号を測定するステップとを含むことを特徴とする高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度測定方法として達成される。
【0030】
前記標識子は、特定の波長領域の光において、消光係数kが1.000以上である。
【0031】
前記誘電体基板の表面は、自己組立薄膜に機能化して、捕獲抗体を固定化し、標識子に付着される探知抗体と、前記探知抗体と前記捕獲抗体の間に結合して、分析対象となる生体結合物質とを含む。
【発明の効果】
【0032】
本発明の実施例による高消光係数の標識子と誘電体基板を用いた楕円計測バイオセンサ技術によると、生体物質の楕円計測バイオセンサの測定信号を増幅するための技術であって、既存の標識子(酵素、蛍光、ナノ粒子)を用いた信号発生方法の技術的制限を解決することができる。
【0033】
本発明の実施例による高消光係数の標識子と誘電体基板を用いた楕円計測バイオセンサ技術によると、高消光係数標識子と誘電体基板を用いて、基板表面の生体反応に対する楕円偏光信号を測定することで、測定感度を極大化することができ、誘電体基板上にバイオ薄膜の厚さ変化は、楕円偏光信号の変化が極めて小さく現れるが、高消光係数の標識子をバイオ物質に付着する場合、高屈折率変化により、ブリュースター角の移動が大きく起きることになり、誘電体基板で、高消光係数標識子を付着した生体物質の接合により誘発されるブリュースター角の移動を測定するか、楕円偏光計測角度を測定することで、超高感度生体物質接合の特性を得ることができる。
【0034】
本発明の実施例による高消光係数の標識子と誘電体基板を用いた楕円計測バイオセンサ技術によると、生体物質分析は、既存の標識子サイズを用いたエリプソメトリよりも、楕円偏光信号を大きく増幅して、生体結合反応(抗原-抗体)間の特異反応を敏感に検出することができ、標識子による高屈折率変化を測定して、生体結合反応で、標識子のサイズによる立体障害現象を最小化して、反応効率を極大化することができる。
【0035】
本発明の実施例による高消光係数の標識子と誘電体基板を用いた楕円計測バイオセンサ技術によると、高消光係数標識子と誘電体基板を用いたブリュースター角(Brewster's angle)の楕円偏光信号測定において、標識子の質量より消光係数の屈折率変化によるブリュースター角の移動が大きく起きるので、既存のSPR測定方法よりも数十倍の増幅効果を得ることができる。
【0036】
本発明の実施例による高消光係数の標識子と誘電体基板を用いた楕円計測バイオセンサ技術によると、生体物質を測定するバイオセンサの信号増幅のために、センサ基板と標識子の光物性を用いて、高感度、高精密分析を誘導し、特に、誘電体基板に結合する高消光係数標識子の量の小さな差(<0.1 nm)でも、信号が大きく変わって、極微量存在する生体物質や超低分子物質の新薬を検索することに信号増幅の効果を極大化することができる。
【0037】
本発明の実施例による高消光係数の標識子と誘電体基板を用いた楕円計測バイオセンサ技術によると、医療、環境、食品など様々な分野の分析物質を検出するバイオセンサは、測定信号を増幅させて、敏感度、正確度、精密度などの分析性能を向上させることができ、楕円計測バイオセンサの測定信号を約50-100倍向上させて、生体内で超低濃度で存在するバイオマーカを敏感に検出して、初期段階の疾病を診断するか、手術後の予後をモニタリングすることができ、また、超低分子新薬の生化学的反応を精密にモニタリングすることができるので、高価な新薬物質を検索することに消耗する試料の量を最小化することができ、本発明の測定対象物質は、タンパク質と細胞、そして、遺伝子のような生体物質だけでなく、環境、食品を通じて感染を誘発する細菌及びウイルス、そして、毒性化学物質など様々な分析物質に対するバイオセンサの測定信号を、誘電体基板と高消光係数標識子を用いた楕円計測技術で測定信号を増幅することができる。
【0038】
一方、本発明より得られる効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及していないさらに他の効果は、以下の記載から本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって、明確に理解されるだろう。
【0039】
本明細書に添付する下記の図面は、本発明の好適な一実施例を例示することであり、発明の詳細な説明と共に、本発明の技術思想をより理解させる役割を果たすので、本発明は、このような図面に記載された事項に限定して解析してはいけない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本発明の実施例によるバイオセンサを用いた測定システムの構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例による高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度バイオセンサチップの模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例による標識子による楕円偏光信号の増幅を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の実施例による高い消光係数を有する標識子を選別するための基準によって分類された候補物質の屈折率と消光係数の表である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例による高い消光係数を有する標識子を選別するための基準によって分類された候補物質の屈折率と消光係数の表である。
【
図6】
図6は、誘電体基板とRu標識子を適用した場合、楕円偏光信号の増幅を示すグラフである。
【
図7】
図7は、誘電体基板信号と、本発明の実施例による標識子種類による標識子信号及び信号増幅サイズを示す表である。
【
図8】
図8は、本発明の実施例による標識子種類による楕円偏光信号増幅を示すグラフである。
【
図9】
図9は、本発明の実施例による信号増幅効果を確認するために、特定の波長領域で消光係数が低い標識子(SiO
2)の厚さによって、楕円偏光信号を比較する図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施例による信号増幅効果を確認するために、特定の波長領域で消光係数が低い標識子(SiO
2)の厚さによって、楕円偏光信号を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以上の本発明の目的、特徴、及び利点は、添付の図面に関する以下の好適な実施例により容易に理解されるだろう。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態に具体化することができる。むしろ、ここで紹介される実施例は、開示内容が徹底で且つ完全になるように、そして、通常の技術者に本発明の思想が十分伝達されるようにするため、提供されている。
【0042】
本明細書において、ある構成要素が他の構成要素上にあるとする場合、それは、他の構成要素上に直接形成されるか、又は、それらの間に第3の構成要素が挟まれることもできることを意味する。また、図面において、構成要素の厚さは、技術的内容の効果的な説明のために、誇張されている。
【0043】
本明細書で述べる実施例は、本発明の理想的な例示図である断面図及び/又は平面図を参考して説明される。 図面において、膜及び領域の厚さは、技術的内容の効果的な説明のために誇張されている。そこで、製造技術及び/又は許容誤差などによって、例示図の形状が変わることがある。従って、本発明の実施例は、図示している特定の形状に制限されることではなく、製造工程により生成される形状の変化も含む。例えば、直角に図示された領域は、丸くなるが、所定の曲率を有する形状でもあり得る。そこで、図面で例示した領域は属性を有し、図面で例示した領域の模様は、素子領域の特定の形状を例示するためのものであり、発明の範疇を制限するためのものではない。本明細書の様々な実施例において、第1、第2などの用語が、様々な構成要素を述べるために使用されているが、これらの構成要素がこれらの用語により限定されてはいけない。これらの用語は単に、ある構成要素を他の構成要素と区別するために使用されているだけである。ここで説明・例示される実施例は、その相補的な実施例も含む。
【0044】
本明細書で使われた用語は、実施例を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数型は、特別に言及しない限り、複数型も含む。明細書で使われる「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」と言及された構成要素は、1つ以上の他の構成要素の存在又は追加を排除しない。
【0045】
下記の特定の実施例を述べることに当たり、様々な特定的な内容は、発明をより具体的に説明し、理解を助けるために作成されている。しかし、本発明を理解できる程度に、当該分野の知識を有している読者は、このような様々な特定的な内容がなくても使用できることを認知することができる。ある場合は、発明を述べることにおいて、公知の事項であるが、発明と大きく関係のない部分は、別の理由なく混同することを防ぐために、述べないことを予め言及しておく。
【0046】
以下では、本発明の実施例による高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度測定システム100は、高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度バイオセンサチップ20を含む。
【0047】
まず、
図1は、本発明の実施例によるバイオセンサチップ20を用いた測定システム100の構成図である。
図1に示しているように、本発明の実施例による測定システム100は、偏光を発生させる偏光発生部10と、偏光発生部10で生じた偏光が特定の入射角で入射され、楕円偏光信号を増幅させるバイオセンサチップ20と、バイオセンサチップ20より反射された反射光から、楕円偏光信号を測定する偏光検出部30とを含む。すなわち、本発明の実施例では、誘電体基板21と高消光係数標識子を用いた楕円計測バイオセンサの信号増幅のための技術である。これを行うために、光源11、偏光子12、試片、検光子31、測定器から構成された短波長エリプソメトリを活用する。
【0048】
本発明の実施例による偏光発生部10は、偏光を発生させ、光源11と、偏光子12とを備える。
【0049】
光源11は、赤外線、可視光線、又は紫外線波長帯の単色光又は白色光を放出する各種のランプ、発光ダイオード(LED)、固体-、液体-、ガス-レーザ、及びレーザダイオードを含む半導体レーザダイオード(LD)などが用いられる。また、光源11は、光学系の構造によって、波長を可変させる構造を備える。そして、偏光子12は、回転自在に構成されるか、他の偏光変調手段を更に備える。
【0050】
また、偏光検出部30は、バイオセンサチップ20より反射された反射光から、楕円偏光信号を測定することになる。すなわち、反射光を受光して、その偏光変化を検出する。偏光検出部30は、検光子31(analyzer)と、測定部32とを含み、測定部32は、光検出器及び演算処理器などを含む。その他に、補償器と分光器を備えることができる。
【0051】
検光子31は、偏光子12に対応するものとして偏光板を備えて、反射光を再度偏光させることで、反射光の偏光程度や偏光面の方向を制御することができる。検光子31は、光学系の構造によって、回転自在に構成されるか、偏光成分の位相変化、消去のような機能を行う偏光変調手段を更に備えることができる。
【0052】
光検出器は、偏光された反射光を検出して光学データを得、これを電気的な信号に変わる役割を果たす。ここで、光学データは、反射光において偏光状態の変化に関する情報を含むことになる。光検出器は、CCD型固体撮像素子、光電子増倍管(PMT)、又はシリコンフォトダイオードが用いられる。
【0053】
演算処理器は、電気的な信号を光検出器から得て、測定値を導出する。演算処理器には、反射率測定法及びエリプソメトリを用いた所定の解析プログラムが内蔵されていて、電気的な信号に変換された光学データを、演算処理器が抽出、解析することにより、試料の吸着濃度、吸着層の厚さ、吸着定数、解離定数、屈折率などのような測定値を導出することになる。ここで、演算処理器は、測定感度の向上のために、エリプソメトリの位相差に関する楕円計測定数Ψ、Δを求め、測定値を導出するのが望ましい。
【0054】
図2は、本発明の実施例による高消光係数標識子と誘電体基板を用いた高感度バイオセンサチップ20の模式図である。また、
図3は、本発明の実施例による標識子26による楕円偏光信号増幅を示すグラフである。すなわち、
図2は、楕円偏光信号増幅の技術概念図である。楕円計測バイオセンサチップ20の楕円偏光信号を増幅するために、誘電体基板21と高消光係数標識子26を用いることが分かる。
【0055】
本発明の実施例によるバイオセンサチップ20は、誘電体基板21を用い、表面に生体結合物質(捕獲抗体、誘電体)を固定化して、バイオセンサチップ20を製作する。生体試料内の分析物質は、センサ表面に固定された生体結合物質と反応して結合され、高消光係数標識子26は、探知物質23(探知抗体、誘電体)に付着されて、分析物質に対する高い楕円偏光信号を発生する。
【0056】
ここで、標識子26は、特定の波長領域の光において、消光係数の高い標識子26(k>1.000)を用いる。また、レーザビームが誘電体基板21に入射する角度は、基本的に、誘電体基板21に対するブリュースター角を適用し、その他にも、誘電体基板21のpsi値と標識子26のpsi値が最も大きい差を見せる特定の入射角と決めることができる。
【0057】
図2に示しているように、本発明の実施例による高消光係数標識子26と誘電体基板21を用いた高感度バイオセンサチップ20は、特定の入射角で入射光が入射して反射される誘電体基板21と、基板21上に固定される分析物質部22と、分析物質部22に結合されて、楕円偏光信号を増幅させる高消光係数標識子26とを含む。
【0058】
本発明の実施例による分析物質部22は、誘電体基板21の表面は、自己組立薄膜に機能化して、捕獲抗体25を固定化し、標識子26に付着される探知抗体23と、探知抗体23と捕獲抗体25の間に結合して、分析対象となる生体結合物質24とを含む。生体結合物質24は、例えば、タンパク質、DNA、RNA、細胞、ペプチド、又はバクテリアなどであり得る。
【0059】
すなわち、
図2に示しているように、誘電体基板21の表面は、磁気組立薄膜に機能化して、捕獲抗体25を固定化する。高消光係数標識子26には、探知抗体23を付着して、ターゲット物質に対して、サンドイッチ結合反応を誘導することができる。ここで、誘電体基板21に形成された高消光係数標識子26は、特定の入射角(ブリュースター角)を基準に、高屈折率変化を誘発して、楕円偏光信号(psi、Ψ)を増幅する。
【0060】
そして、標識子26は、特定の波長領域の光において、消光係数が特定値以上であり、本発明の実施例において、このような特定値(k)は、1.000に該当する。
【0061】
図4及び
図5は、本発明の実施例による高い消光係数を有する標識子26を選別するための基準によって分類された候補物質の屈折率と消光係数の表を示している。
【0062】
すなわち、
図4及び
図5は、高い消光係数(k)を有する標識子26を選別するための基準を提示している。本発明の実施例では、特定波長(532nm)に対する標識子26の光物性を、屈折率と消光係数を含む複素屈折率に分類した。特に、消光係数k>1.000を基準として、標識子26を選別している。各標識子の候補物質は、光源11の波長によって消光係数が異なるが、他の波長の光源11においても、標識子26の選別のための消光係数の基準は、同一である。
【0063】
図6は、誘電体基板21とRu標識子26を適用した場合、楕円偏光信号増幅を示すグラフであり、
図7は、誘電体基板信号と、本発明の実施例による標識子26種類による標識子26信号及び信号増幅サイズを示す表である。また、
図8は、本発明の実施例による標識子26種類による楕円偏光信号増幅を示すグラフである。
【0064】
すなわち、
図6は、誘電体基板21において、高消光係数標識子26が0.1nm結合されたときに現れる信号増幅のサイズを特定の入射角(入射角45度)で予測したpsi値であって、本発明の実施例によると、標識子26のサイズによる信号増幅ではなく、誘電体基板21との高屈折率変化を誘発する高消光係数標識子26の光物性を用いることで、ナノメートル以下のサイズでも、楕円偏光信号を大きく増幅する。これは、シリコン酸化膜を有するシリコン標識子26の0.1nmよりも100倍の信号増幅が可能である。
【0065】
図9及び
図10は、本発明の実施例による信号増幅の効果を確認するために、特定の波長領域で消光係数が低い標識子(例えば、SiO
2)の厚さによって、楕円偏光信号を比較しており、その結果、
図9及び
図10に示しているように、低消光係数標識子が2nm以上のセンサ表面に結合されることで、楕円偏光信号が0.5000psi以上増加することを確認した。これは、本発明の実施例で提示する高消光係数標識子26よりも100倍以上低い楕円偏光信号を得ることが分かる。
【0066】
前記で説明された装置及び方法は、前述した実施例の構成と方法が限定して適用されることではなく、前記実施例は、様々な変形が行われるように、各実施例の全部又は一部が選択的に組み合わせられて構成可能である。