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特許7177928転写装置及び部品作業機並びに転写量補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】転写装置及び部品作業機並びに転写量補正方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20221116BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
H05K3/34 503B
H05K3/34 505B
H05K13/04 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021525477
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2019023325
(87)【国際公開番号】W WO2020250346
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】塚田 謙磁
(72)【発明者】
【氏名】川尻 明宏
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/163331(WO,A1)
【文献】特開平10-75096(JP,A)
【文献】国際公開第2014/068691(WO,A1)
【文献】特開2006-253342(JP,A)
【文献】特開2007-250730(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153616(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/019447(WO,A1)
【文献】特開2018-101726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00―1/20
H05K 1/00―3/46
H05K 13/00―13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写ピンの下端に付着させた半田、導体ペースト、接着剤、フラックスのいずれかの転写材を転写対象面に転写する転写装置において、
前記転写ピンをXYZ方向に移動させるXYZ駆動部と、
前記転写ピンをその軸心の回りを回転させる回転駆動部と、
転写前と転写後に前記転写ピンの転写材付着部分の側面を撮像するカメラと、
転写前に前記カメラで撮像した前記転写ピンの転写材付着部分の側面画像に基づいて転写前の転写材付着量に関する情報を取得すると共に、転写後に前記カメラで撮像した前記転写ピンの転写材付着部分の側面画像に基づいて転写後の転写材付着量に関する情報を取得し、取得した転写前後の転写材付着量に関する情報の差分に基づいて前記転写対象面上の転写材の転写量を測定する転写量測定部と、
前記XYZ駆動部、前記回転駆動部、前記カメラ及び前記転写量測定部の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、転写前後の転写材付着量に関する情報を取得する際に、転写前後にそれぞれ前記回転駆動部により前記転写ピンを回転させて前記カメラで前記転写ピンの転写材付着部分の側面を複数の回転角度で撮像し、
前記転写量測定部は、転写前に複数の回転角度で前記転写ピンの転写材付着部分の側面を撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて転写前の転写材付着量に関する情報を取得すると共に、転写後に複数の回転角度で前記転写ピンの転写材付着部分の側面を撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて転写後の転写材付着量に関する情報を取得し、取得した転写前後の転写材付着量に関する情報の差分に基づいて前記転写対象面上の転写材の転写量を測定する、転写装置であって、
前記制御部は、前記転写量測定部の測定結果に基づいて前記転写対象面上の転写材の転写量が所定の適正範囲内であるか否かを判定し、当該転写材の転写量が前記適正範囲より少ないと判定した場合には補正用の転写ピンを使用して再び転写動作を行って前記転写対象面上の転写材の転写量を増やす増量補正を行い、一方、当該転写材の転写量が前記適正範囲より多いと判定した場合には転写材が付着していない補正用の転写ピンを転写動作させて前記転写対象面上の転写材の一部を当該補正用の転写ピンの下端に付着させることで前記転写対象面上の転写材の転写量を減らす減量補正を行う、転写装置。
【請求項2】
前記複数の回転角度は、90°異なる2つの回転角度である、請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記補正用の転写ピンは、転写材の付着量が異なる複数本の補正用の転写ピンの中から使用する補正用の転写ピンを選択可能に構成され、
前記制御部は、前記増量補正又は前記減量補正を行う際に、前記転写対象面上の転写材の過不足量に応じて前記複数本の補正用の転写ピンの中から使用する補正用の転写ピンを選択して前記増量補正又は前記減量補正を行う、請求項1又は2に記載の転写装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の転写装置を備えた、部品作業機。
【請求項5】
前記転写ピンは、実装ヘッドに吸着ノズルと交換可能に保持され、
前記カメラは、前記吸着ノズルに吸着した部品を側方から撮像する部品撮像用のカメラが使用される、請求項に記載の部品作業機。
【請求項6】
転写ピンの下端に付着させた半田、導体ペースト、接着剤、フラックスのいずれかの転写材を転写対象面に転写したときの当該転写対象面上の転写材の転写量を測定して、その測定結果に基づいて当該転写対象面上の転写材の転写量を補正する転写量補正方法において、
転写前と転写後に前記転写ピンの転写材付着部分の側面を撮像するカメラを使用し、
転写前に前記転写ピンを回転させて前記カメラで前記転写ピンの転写材付着部分の側面を複数の回転角度で撮像し、その複数の回転角度の側面画像に基づいて転写前の転写材付着量に関する情報を取得する工程と、
転写後に前記転写ピンを回転させて前記カメラで前記転写ピンの転写材付着部分の側面を複数の回転角度で撮像し、その複数の回転角度の側面画像に基づいて転写後の転写材付着量に関する情報を取得する工程と、
前記転写前の転写材付着量に関する情報と前記転写後の転写材付着量に関する情報との差分に基づいて前記転写対象面上の転写材の転写量を測定する工程と
を含み、
前記測定した前記転写対象面上の転写材の転写量が所定の適正範囲内であるか否かを判定し、当該転写材の転写量が前記適正範囲より少ないと判定した場合には補正用の転写ピンを使用して再び転写動作を行って前記転写対象面上の転写材の転写量を増やす増量補正を行い、一方、当該転写材の転写量が前記適正範囲より多いと判定した場合には転写材が付着していない補正用の転写ピンを転写動作させて前記転写対象面上の転写材の一部を当該補正用の転写ピンの下端に付着させることで前記転写対象面上の転写材の転写量を減らす減量補正を行う、転写量補正方法。
【請求項7】
前記補正用の転写ピンは、転写材の付着量が異なる複数本の補正用の転写ピンの中から使用する補正用の転写ピンを選択可能であり、
前記増量補正又は前記減量補正を行う際に、前記転写対象面上の転写材の過不足量に応じて前記複数本の補正用の転写ピンの中から使用する補正用の転写ピンを選択して前記増量補正又は前記減量補正を行う、請求項に記載の転写量補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、転写ピンの下端に付着させた半田、導体ペースト、接着剤、フラックスのいずれかの転写材を転写対象面に転写したときの当該転写対象面上の転写材の転写量を測定する機能を備えた転写装置及び部品作業機並びに転写量補正方法に関する技術を開示したものである。
【背景技術】
【0002】
近年、転写ピンで転写材を基板等の転写対象面に転写する転写装置においては、特許文献1(国際公開WO2018/163331号公報)に記載されているように、転写ピンの転写材付着部分の側面を撮像するカメラを使用し、転写前に前記カメラで撮像した転写ピンの転写材付着部分の側面画像を処理して転写前の転写材付着量に関する情報(転写前の転写材付着部分の側面の面積)を取得すると共に、転写後に前記カメラで撮像した転写ピンの転写材付着部分の側面画像を処理して転写後の転写材付着量に関する情報(転写後の転写材付着部分の側面の面積)を取得し、取得した転写前後の転写材付着量に関する情報の差分に基づいて転写対象面上の転写材の転写量を測定する転写量測定方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2018/163331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、転写ピンの下端に付着した転写材の付着状態(形状)が転写ピンの下端全周で均一になるとは限らず、転写材の粘性や表面張力等によって不均一な付着状態になる場合がある。転写ピンの転写材付着状態が不均一であると、転写ピンの転写材付着部分の側面を撮像する角度によっては側面画像に写った転写材付着部分の側面の面積が大きくなったり小さくなったりすることがある。このため、上記特許文献1のように、転写前後にカメラで1回ずつ撮像した転写ピンの転写材付着部分の側面画像を処理して取得した転写前後の転写材付着量に関する情報(転写前後の転写材付着部分の側面の面積)の差分に基づいて転写対象面上の転写材の転写量を測定する方法では、転写ピンの転写材の付着状態の均一度合によって転写対象面上の転写材の転写量の測定値がばらついて、転写材の転写量の測定誤差が大きくなる場合があるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、転写ピンの下端に付着させた半田、導体ペースト、接着剤、フラックスのいずれかの転写材を転写対象面に転写する転写装置において、前記転写ピンをXYZ方向に移動させるXYZ駆動部と、前記転写ピンをその軸心の回りを回転させる回転駆動部と、転写前と転写後に前記転写ピンの転写材付着部分の側面を撮像するカメラと、転写前に前記カメラで撮像した前記転写ピンの転写材付着部分の側面画像に基づいて転写前の転写材付着量に関する情報を取得すると共に、転写後に前記カメラで撮像した前記転写ピンの転写材付着部分の側面画像に基づいて転写後の転写材付着量に関する情報を取得し、取得した転写前後の転写材付着量に関する情報の差分に基づいて前記転写対象面上の転写材の転写量を測定する転写量測定部と、前記XYZ駆動部、前記回転駆動部、前記カメラ及び前記転写量測定部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、転写前後の転写材付着量に関する情報を取得する際に、転写前後にそれぞれ前記回転駆動部により前記転写ピンを回転させて前記カメラで前記転写ピンの転写材付着部分の側面を複数の回転角度で撮像し、前記転写量測定部は、転写前に複数の回転角度で前記転写ピンの転写材付着部分の側面を撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて転写前の転写材付着量に関する情報を取得すると共に、転写後に複数の回転角度で前記転写ピンの転写材付着部分の側面を撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて転写後の転写材付着量に関する情報を取得し、取得した転写前後の転写材付着量に関する情報の差分に基づいて前記転写対象面上の転写材の転写量を測定することを第1の特徴とし、更に、前記制御部は、前記転写量測定部の測定結果に基づいて前記転写対象面上の転写材の転写量が所定の適正範囲内であるか否かを判定し、当該転写材の転写量が前記適正範囲より少ないと判定した場合には補正用の転写ピンを使用して再び転写動作を行って前記転写対象面上の転写材の転写量を増やす増量補正を行い、一方、当該転写材の転写量が前記適正範囲より多いと判定した場合には転写材が付着していない補正用の転写ピンを転写動作させて前記転写対象面上の転写材の一部を当該補正用の転写ピンの下端に付着させることで前記転写対象面上の転写材の転写量を減らす減量補正を行うことを第2の特徴とするものである。
【0006】
この構成では、転写前後の転写ピンの転写材付着量に関する情報を取得する際に、転写前後にそれぞれ転写ピンを回転させてカメラで転写ピンの転写材付着部分の側面を複数の回転角度で撮像し、転写前に撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて転写前の転写材付着量に関する情報を取得すると共に、転写後に撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて転写後の転写材付着量に関する情報を取得するようにしたので、転写前後の転写ピンの転写材の付着状態が不均一であっても、転写前後の複数の回転角度の側面画像に基づいて転写前後の転写材付着量に関する情報を精度良く取得することができ、取得した転写前後の転写材付着量に関する情報の差分に基づいて転写対象面上の転写材の転写量を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は一実施例における部品作業機の実装ヘッド及びその周辺部分の構成を示す側面図である。
図2図2は部品作業機の制御系の構成を示すブロック図である。
図3図3は転写ピンの下端に転写材を付着して転写前後に転写ピンの転写材付着部分の側面を撮像する工程を説明する図である。
図4図4は転写対象面上の転写材の転写量が適正範囲より少ない場合の転写量の増量補正動作を説明する図である。
図5図5は転写対象面上の転写材の転写量が適正範囲より多い場合の転写量の減量補正動作を説明する図である。
図6図6は転写材転写量測定/補正動作プログラムの前半部の処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は転写材転写量測定/補正動作プログラムの前半部の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本明細書に開示した一実施例を説明する。
【0009】
まず、図1に基づいて部品作業機の回転型の実装ヘッド11の構成を説明する。ここで、「部品作業機」とは、「部品実装機」のみならず、「実装機能を有する3D造形機」も含む機械を意味する。
【0010】
回転型の実装ヘッド11には、その円周方向に所定間隔で複数本のノズルホルダ12が昇降可能に支持され、各ノズルホルダ12には、それぞれ部品を吸着する吸着ノズル(図示せず)又は後述する転写ピン13,13aが交換可能且つ上下動可能に係合保持されている。尚、図1にはノズルホルダ12(転写ピン13,13a)が2本のみ図示され、他のノズルホルダ12(転写ピン13,13a)の図示が省略されている。
【0011】
この場合、ノズルホルダ12に係合保持させる吸着ノズルや転写ピン13,13aは、作業者が手作業で交換しても良い。或は、図示はしないが、部品作業機内の所定位置に交換用の吸着ノズルを保管するノズルチェンジャ(ノズル置き場)が配置されている場合には、このノズルチェンジャに転写ピン13,13aを交換用の吸着ノズルと並べて配列し、部品実装動作/転写動作の切り換え時にノズルホルダ12に係合保持させる吸着ノズルや転写ピン13,13aを自動交換するようにしても良い。
【0012】
実装ヘッド11をXY方向に移動させるヘッド移動機構15は、X軸ボールねじ16によって基板搬送方向であるX軸方向(図1の紙面と垂直な方向)にスライドするX軸スライド17と、Y軸ボールねじ(図示せず)によってX軸方向と直交するY軸方向に移動するY軸スライド18とを備えたXYロボットである。X軸スライド17は、Y軸スライド18に設けられたX軸ガイドレール19に沿ってX軸方向にスライド可能に支持され、Y軸スライド18は、部品作業機本体側に設けられたY軸ガイドレール(図示せず)に沿ってY軸方向にスライド可能に支持されている。
【0013】
X軸スライド17には、実装ヘッド11の支持フレーム21が着脱可能に取り付けられている。実装ヘッド11は、上下方向に延びるR軸22(インデックス軸とも呼ばれる)の下端に嵌着され、該R軸22の上部側が支持フレーム21に回転可能に支持されている。R軸22は、支持フレーム21側に固定されたR軸モータ23によって回転駆動される。このR軸22の回転により、実装ヘッド11がR軸22を中心にして回転することで、該実装ヘッド11に支持された複数本のノズルホルダ12が複数本の吸着ノズル又は転写ピン13,13aと一体的に該実装ヘッド11の円周方向に旋回されるようになっている。これらR軸モータ23とR軸22等からR軸駆動機構24が構成されている。
【0014】
R軸22には、Q軸駆動機構27の上下2段のQ軸ギア28,29が回転可能に挿通され、下段のQ軸ギア29には、各ノズルホルダ12の上端に嵌着されたギア30が噛み合っている。上段のQ軸ギア28には、支持フレーム21側に固定されたQ軸モータ31に連結されたギア33が噛み合い、Q軸モータ31のギア33の回転によりQ軸ギア28,29が一体的に回転して、下段のQ軸ギア29に噛み合う各ギア30が回転して、各ノズルホルダ12がそれぞれ各ノズルホルダ12の軸心(Q軸)の回りを回転することで、各ノズルホルダ12に保持された各吸着ノズル又は各転写ピン13がその軸心の回りを回転して、各吸着ノズルに吸着した各部品の向き(角度)を修正したり、又は後述する各転写ピン13の転写材A付着部分を撮像する回転角度を切り換えるようにしている。従って、Q軸駆動機構27は、各転写ピン13をその軸心の回りを回転させる回転駆動部としても機能する。
【0015】
更に、R軸駆動機構24の側方には、ノズルホルダ12を個別に下降させるZ軸駆動機構37が設けられ、該Z軸駆動機構37により、ノズルホルダ12の旋回軌道の所定位置で、ノズルホルダ12を個別に下降させて、該ノズルホルダ12に保持された吸着ノズルを下降させるように構成されている。Z軸駆動機構37は、実装ヘッド11の周囲の1箇所のみに配置しても良いし、2箇所以上に配置しても良い。
【0016】
Z軸駆動機構37は、支持フレーム21側に回転可能に支持されたZ軸ボールねじ38をZ軸モータ39によって回転させてZ軸スライド40を上下方向に移動させることで、ノズルホルダ12の上端フランジ41に上方から該Z軸スライド40の係合片42を係合(当接)させて該ノズルホルダ12を上下動させるようになっている。この場合、各ノズルホルダ12に装着したスプリング43により各ノズルホルダ12が上方に付勢されることで、各ノズルホルダ12の上端フランジ41がZ軸スライド40の係合片42に下方から係合(当接)した状態に保持され、該Z軸スライド40の係合片42の上昇に伴って、該スプリング43の押し上げ力により該ノズルホルダ12が上昇するようになっている。
【0017】
上述したヘッド移動機構15、R軸駆動機構24及びZ軸駆動機構37は、各転写ピン13をXYZ方向に移動させるXYZ駆動部としても機能する。
【0018】
一方、実装ヘッド11の側方には、吸着ノズルに吸着した部品又は転写ピン13の転写材A付着部分を側方(横方向)から撮像する撮像装置46が配置されている。この撮像装置46は、支持フレーム21側にホルダ47を介して固定されたカメラ48と照明光源49等から構成されている。カメラ48の高さ位置は、吸着ノズルや転写ピン13が昇降範囲の上限位置(待機位置)に上昇して待機しているときに、該カメラ48の視野内に吸着ノズルの下端周辺や転写ピン13の下端周辺の側面画像を撮像できるように設定されている。
【0019】
これに対応して、実装ヘッド11の下面側中央部には、吸着ノズルに吸着した部品や転写ピン13の転写材A付着部分の側面をカメラ48で撮像する際に照明光源49からの照明光を反射する円筒型の光反射板51が設けられている。この光反射板51の下端の高さ位置は、吸着ノズルを下降させて部品を吸着するときに該光反射板51が部品等と干渉しない高さ位置に設定されている。
【0020】
尚、部品作業機内の所定位置には、図3に示すように、回路基板等の転写対象面52に転写する半田、銀ペースト等の導体ペースト、接着剤、フラックスのいずれかの転写材Aをスキージ等で膜状に成膜して供給する転写テーブル53(転写槽)が設置されている。
【0021】
部品作業機の制御部55(図2参照)は、1台又は複数台のコンピュータ(CPU)を主体として構成され、R軸駆動機構24、Q軸駆動機構27、Z軸駆動機構37及びヘッド移動機構15の動作を制御して、テープフィーダ、トレイフィーダ等の部品供給装置56(図2参照)によって供給される部品を吸着ノズルで吸着して回路基板に実装する。
【0022】
また、部品作業機の制御部55は、回路基板等の転写対象面52に転写材Aを転写する場合には、R軸駆動機構24、Q軸駆動機構27、Z軸駆動機構37及びヘッド移動機構15の動作を制御して、図3に示すように、実装ヘッド11のノズルホルダ12に保持した転写ピン13を転写テーブル53の上方へ移動させて転写ピン13を下降させて転写ピン13の下端に転写材Aを付着させた後、転写ピン13を上昇させて回路基板等の転写対象面52の上方へ移動させて転写ピン13を下降させて転写対象面52に転写材Aを転写する。
【0023】
更に、部品作業機の制御部55は、カメラ48で撮像した吸着ノズルに吸着した部品や転写ピン13の転写材A付着部分の側面画像を処理して部品や転写材A付着部分を認識する画像処理装置としても機能し、その認識結果に基づいて部品の吸着姿勢の良否を判定したり、次のようにして転写対象面52上の転写材Aの転写量を測定する。
【0024】
すなわち、部品作業機の制御部55は、後述する図6及び図7の転写材転写量測定/補正動作プログラムを実行することで、転写対象面52上の転写材Aの転写量を測定する転写量測定部としても機能し、転写前に転写ピン13を回転させてカメラ48で転写ピン13の転写材A付着部分の側面画像を複数の回転角度で撮像し、その複数の回転角度の側面画像に基づいて転写前の転写材A付着量に関する情報を取得する工程と、転写後に転写ピン13を回転させてカメラ48で転写ピン13の転写材A付着部分の側面画像を複数の回転角度で撮像し、その複数の回転角度の側面画像に基づいて転写後の転写材A付着量に関する情報を取得する工程と、前記転写前の転写材A付着量に関する情報と前記転写後の転写材A付着量に関する情報との差分に基づいて転写対象面52上の転写材Aの転写量を測定する工程とを実行する。
【0025】
前述したように、従来は、転写前後にそれぞれ1回ずつ撮像した転写材A付着部分の側面画像から転写前後の転写材A付着量に関する情報(転写前後の転写材A付着部分の側面の面積)を取得して、転写前後の転写材A付着量に関する情報の差分に基づいて転写対象面52上の転写材Aの転写量を測定するようにしていたため、転写ピン13の転写材Aの付着状態の均一度合によって転写対象面52上の転写材Aの転写量の測定値がばらついて、転写材Aの転写量の測定誤差が大きくなる場合があるという欠点があった。
【0026】
この欠点を解決するために、本実施例では、転写前後の転写材A付着量に関する情報を取得する際に、転写前後にそれぞれ転写ピン13を回転させてカメラ48で転写ピン13の転写材A付着部分の側面を複数の回転角度で撮像し、転写前に撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて転写前の転写材A付着量に関する情報を取得すると共に、転写後に撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて転写後の転写材A付着量に関する情報を取得するようにしている。これにより、転写前後の転写ピン13の転写材Aの付着状態が不均一であっても、転写前後の複数の回転角度の側面画像に基づいて転写前後の転写材A付着量に関する情報を精度良く取得することができ、取得した転写前後の転写材A付着量に関する情報の差分に基づいて転写対象面52上の転写材Aの転写量を精度良く測定することができる。
【0027】
ここで、転写前後に取得する転写ピン13の転写材A付着量に関する情報は、複数の回転角度で撮像した転写ピン13の転写材A付着部分の側面の面積S1,S2,…,Snの合計値又は平均値であり、これが転写材A付着量に相関する値となる。
【0028】
転写対象面52上の転写材Aの転写量Bは、次式により算出される。
転写対象面52上の転写材Aの転写量B=(C1-C2)×K
【0029】
ここで、C1は転写前の転写材A付着量に関する情報、C2は転写後の転写材A付着量に関する情報、Kは換算係数である。換算係数Kは、転写前後の転写材A付着量に関する情報C1,C2の差分を転写対象面52上の転写材Aの転写量Bに換算するための換算係数である。この換算係数Kは、転写材Aの種類毎や、粘度、表面張力等の物性毎に設定されて制御部55の記憶部(図示せず)に記憶され、使用する転写材Aの種類や物性に応じた換算係数Kを用いて転写材Aの転写量Bを算出するようにしている。
【0030】
転写前後に転写材A付着部分の側面を撮像する回転角度の数(転写材A付着部分の側面画像の数)が多くなるほど、転写材A付着量に関する情報の精度が高まるが、撮像回数が多くなるほど、撮像及び画像処理に要する時間が長くなって生産効率が低下してしまう。
【0031】
そこで、本実施例では、転写前後に90°異なる2つの回転角度で転写ピン13の転写材A付着部分の側面を撮像して2つの転写材A付着部分の側面の面積S1,S2を求め、その合計値又は平均値を転写材A付着量に関する情報として用いるようにしている。このように、90°異なる2つの回転角度で転写ピン13の転写材A付着部分の側面を撮像すれば、転写ピン13の転写材A付着部分の側面を直角2方向から撮像した代表的な2つの側面画像を取得することができ、生産効率の低下を抑えながら、転写ピン13の転写材A付着量に関する情報の精度を向上させることができる。
【0032】
尚、転写前後の転写ピン13の転写材A付着量に関する情報として、転写前後の転写ピン13の転写材A付着量を測定し、転写前後の転写ピン13の転写材A付着量の差分から転写対象面52上の転写材Aの転写量Bを求めるようにしても良い。この場合、転写前の転写ピン13の転写材A付着量を測定する方法は、転写ピン13の下端に転写材Aを付着する前後にそれぞれ転写ピン13を回転させてカメラ48で転写ピン13の下端部分の側面を複数の回転角度で撮像し、転写材A付着前に撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて転写材A付着前の転写ピン13の下端部分の形状に関する情報を取得すると共に、転写材A付着後に撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて付着後の転写ピン13の転写材A付着量に関する情報を取得し、この転写材A付着後の転写ピン13の転写材A付着量に関する情報と転写材A付着前の転写ピン13の下端部分の形状に関する情報との差分に基づいて次式により転写前の転写ピン13の転写材A付着量D1を算出する。
転写前の転写材A付着量D1=(E2-E1)×K
【0033】
ここで、E1は付着前の転写ピン13の下端部分の形状に関する情報、E2は付着後の転写材A付着量に関する情報、Kは前述した換算係数である。
【0034】
転写後の転写ピン13の転写材A付着量D2は、次式により算出する。
転写後の転写材A付着量D2=(C1-C2)×K
ここで、C1は転写前の転写材A付着量に関する情報、C2は転写後の転写材A付着量に関する情報、Kは換算係数である。
【0035】
転写対象面52上の転写材Aの転写量Bは、転写前の転写材A付着量D1と転写後の転写材A付着量D2との差分により算出される。
【0036】
転写対象面52上の転写材Aの転写量B=D1-D2
本実施例では、部品作業機の制御部55は、後述する図6及び図7の転写材転写量測定/補正動作プログラムを実行することで、測定した転写対象面52上の転写材Aの転写量が所定の適正範囲内であるか否かを判定し、図4に示すように、転写対象面52上の転写材Aの転写量が適正範囲より少ないと判定した場合には、補正用の転写ピン13aを使用して再び転写動作を行って転写対象面52上の転写材Aの転写量を増やす増量補正を行う。一方、図5に示すように、転写対象面52上の転写材Aの転写量が適正範囲より多いと判定した場合には、転写材Aが付着していない補正用の転写ピン13aを転写動作させて転写対象面52上の転写材Aの一部を当該補正用の転写ピン13aの下端に付着させることで、転写対象面52上の転写材Aの転写量を減らす減量補正を行う。
【0037】
このような転写材Aの転写量の増量/減量補正動作に使用する補正用の転写ピン13aは、最初の転写動作に使用した転写ピン13よりも針先(下端)の径が小さく、転写材Aの付着量が少なくなるものを使用すると良い。
【0038】
この増量/減量補正動作に使用する補正用の転写ピン13aは、毎回、同じ径の針先のものを使用するようにしても良いし、或は、転写材Aの付着量が異なる複数本の補正用の転写ピン13aの中から使用する補正用の転写ピン13aを選択可能とし、増量/減量補正を行う際に、転写対象面52上の転写材Aの過不足量に応じて複数本の補正用の転写ピン13aの中から使用する補正用の転写ピン13aを選択して増量/減量補正を行うようにしても良い。つまり、転写対象面52上の転写材Aの過不足量が多くなるほど、転写材Aの付着量が多くなる補正用の転写ピン13aを使用して増量/減量補正を行うようにすれば良い。この場合、選択可能な複数本の補正用の転写ピン13aを実装ヘッド11のノズルホルダ12に保持させたり、或は、ノズルチェンジャに複数本の補正用の転写ピン13aを配列して、実装ヘッド11のノズルホルダ12に保持させる補正用の転写ピン13aを自動交換するようにしても良い。
【0039】
補正用の転写ピン13aを使用して転写対象面52上の転写材Aの転写量を増量/減量補正する際に、前述した転写対象面52上の転写材Aの転写量の測定方法と同様の方法で増量/減量補正前後に取得した補正用の転写ピン13aの転写材A付着量に関する情報の差分に基づいて増量/減量補正量を測定するようにしても良い。更に、測定した増量/減量補正量が不足する場合には、転写対象面52上の転写材Aの転写量が適正範囲内になるまで増量/減量補正を繰り返すようにしても良い。
【0040】
以上説明した本実施例の転写対象面52上の転写材Aの転写量の測定及び増量/減量補正は、部品作業機の制御部55によって図6及び図7の転写材転写量測定/補正動作プログラムに従って次のようにして実行される。
【0041】
部品作業機の制御部55は、転写材Aの転写を行う生産ジョブの実行中に図6及び図7の転写材転写量測定/補正動作プログラムを繰り返し実行する。部品作業機の制御部55は、本プログラムを起動すると、まずステップ101で、転写前の撮像タイミングになるまで待機し、転写前の撮像タイミングになった時点で、ステップ102に進み、転写前に転写ピン13を回転させてカメラ48で転写ピン13の転写材A付着部分の側面画像を複数の回転角度で撮像する。次のステップ103で、転写前に撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて転写前の転写材A付着量に関する情報を取得する。
【0042】
この後、ステップ104に進み、転写後の撮像タイミングになるまで待機し、転写後の撮像タイミングになった時点で、ステップ105に進み、転写後に転写ピン13を回転させてカメラ48で転写ピン13の転写材A付着部分の側面画像を複数の回転角度で撮像する。次のステップ106で、転写後に撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて転写後の転写材A付着量に関する情報を取得する。
【0043】
この後、ステップ107に進み、前記転写前の転写材A付着量に関する情報と前記転写後の転写材A付着量に関する情報との差分に基づいて転写対象面52上の転写材Aの転写量を測定する。この後、図7のステップ108に進み、測定した転写対象面52上の転写材Aの転写量が適正範囲より少ないか否かを判定し、転写対象面52上の転写材Aの転写量が適正範囲より少ないと判定した場合には、ステップ109に進み、補正用の転写ピン13aを使用して再び転写動作を行って転写対象面52上の転写材Aの転写量を増やす増量補正を行う。この後、ステップ113に進み、次の転写又は部品実装へ移行して本プログラムを終了する。
【0044】
一方、上記ステップ108で「No」と判定した場合、つまり転写対象面52上の転写材Aの転写量が適正範囲より少ないと判定しなかった場合には、ステップ110に進み、転写対象面52上の転写材Aの転写量が適正範囲より多いか否かを判定し、転写対象面52上の転写材Aの転写量が適正範囲より多いと判定した場合には、ステップ111に進み、転写材Aが付着していない補正用の転写ピン13aを転写動作させて転写対象面52上の転写材Aの一部を当該補正用の転写ピン13aの下端に付着させることで、転写対象面52上の転写材Aの転写量を減らす減量補正を行う。この後、ステップ113に進み、次の転写又は部品実装へ移行して本プログラムを終了する。
【0045】
上述したステップ108とステップ110で、いずれも「No」と判定した場合、つまり転写対象面52上の転写材Aの転写量が適正範囲内と判定した場合には、ステップ112に進み、補正動作不要と判定し、ステップ113に進み、次の転写又は部品実装へ移行して本プログラムを終了する。
【0046】
以上説明した本実施例では、転写前後の転写ピン13の転写材A付着量に関する情報を取得する際に、転写前後にそれぞれ転写ピン13を回転させてカメラ48で転写ピン13の転写材A付着部分の側面を複数の回転角度で撮像し、転写前に撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて転写前の転写材A付着量に関する情報を取得すると共に、転写後に撮像した複数の回転角度の側面画像に基づいて転写後の転写材A付着量に関する情報を取得するようにしたので、転写前後の転写ピン13の転写材Aの付着状態が不均一であっても、転写前後の複数の回転角度の側面画像に基づいて転写前後の転写材A付着量に関する情報を精度良く取得することができ、取得した転写前後の転写材A付着量に関する情報の差分に基づいて転写対象面52上の転写材Aの転写量を精度良く測定することができる。
【0047】
以上説明した本実施例では、実装ヘッド11のノズルホルダ12に転写ピン13を吸着ノズルと交換可能に係合保持させ、転写ピン13を1本ずつ使用して転写対象面に転写材Aを1箇所ずつ転写するようにしたが、転写治具の下面に複数本の転写ピンを垂直下向きに固定して、この転写治具を実装ヘッド等に保持させ、複数本の転写ピンに同時に転写材を付着させて転写対象面の複数箇所に同時に転写材を転写するようにしても良い。この場合、転写前後にカメラの視野内に2本以上の転写ピンの転写材付着部分の側面を同時に収めて撮像し、2本以上の転写ピンの転写材付着量に関する情報を同時に取得するようにしても良い。
【0048】
また、本実施例では、部品作業機の一部の機能を利用して転写装置を構成したが、部品作業機とは別に転写専用の転写装置を構成しても良い。
【0049】
また、本実施例では、測定した転写対象面52上の転写材Aの転写量が適正範囲から外れていると判定した場合に、転写対象面52上の転写材Aの転写量を増量補正又は減量補正するようにしたが、転写対象面52上の転写材Aの転写量が適正範囲から外れていると判定した場合に、転写不良と判定して部品実装を禁止するようにしても良い。
【0050】
その他、本発明は、上述した実施例に限定されず、図6及び図7の転写材転写量測定/補正動作プログラムの一部のステップの処理内容を変更したり、転写前後の転写ピン13の転写材A付着量に関する情報を算出する方法を変更したり、部品作業機の実装ヘッド11等の構成を変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
11…実装ヘッド、12…ノズルホルダ、13…転写ピン、13a…補正用の転写ピン、15…ヘッド移動機構、24…R軸駆動機構、27…Q軸駆動機構(回転駆動部)、37…Z軸駆動機構、46…撮像装置、48…カメラ、49…照明光源、52…転写対象面、53…転写テーブル、A…転写材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7