(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】PVC又はCPVCを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 127/06 20060101AFI20221116BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20221116BHJP
C09D 127/06 20060101ALI20221116BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20221116BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
C09J127/06
C09D7/20
C09D127/06
C09J5/00
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2021532326
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019065159
(87)【国際公開番号】W WO2020123345
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-07-29
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517213094
【氏名又は名称】アドバンシックス・レジンズ・アンド・ケミカルズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ADVANSIX RESINS & CHEMICALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】フローレス-バスケス,ハイメ・アー
(72)【発明者】
【氏名】アシルバサム,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】モーギル,カルッティケイ
【審査官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/092953(WO,A1)
【文献】特開平10-036811(JP,A)
【文献】特表2013-507485(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158774(WO,A1)
【文献】特表2021-519365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
C09D1/00-10/00
C09D101/00-201/10
C08L27/04-27/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式
【化1】
(式中、Rは、1、2、又は4個の非置換炭素の直鎖状アルキル基、又は、2又は3個の非置換炭素のアルコキシメチル基である)に従う、1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤、及び
前記1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤と共に溶解した状態である、ポリ塩化ビニル及び塩素化ポリ塩化ビニルの群より選択されるポリマー、
を含み、
前記1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤が、N-エチルカプロラクタムを含む、溶剤セメント。
【請求項2】
前記ポリマーが、ポリ塩化ビニルから成る、請求項1に記載の溶剤セメント。
【請求項3】
前記ポリマーが、塩素化ポリ塩化ビニルから成る、請求項1に記載の溶剤セメント。
【請求項4】
前記ポリマーが、前記溶剤セメントの1重量%~30重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の溶剤セメント。
【請求項5】
前記1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤の濃度が、前記溶剤セメントの70重量%~99重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の溶剤セメント。
【請求項6】
1又は複数の共溶剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の溶剤セメント。
【請求項7】
前記1又は複数の共溶剤が、極性の非プロトン性溶剤を含む、請求項6に記載の溶剤セメント。
【請求項8】
前記1又は複数の共溶剤が、3~6個の炭素を有するケトンを含む、請求項6又は7に記載の溶剤セメント。
【請求項9】
前記ケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、及びシクロヘキサノンの群より選択される少なくとも1つを含む、請求項8に記載の溶剤セメント。
【請求項10】
前記1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤の濃度が、前記溶剤セメントの5重量%~94重量%であり、前記1又は複数の共溶剤の濃度が、前記溶剤セメントの5重量%~85重量%である、請求項6~9のいずれか一項に記載の溶剤セメント。
【請求項11】
前記1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤が、N-エチルカプロラクタムから成り、前記1又は複数の共溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノンから成る、請求項10に記載の溶剤セメント。
【請求項12】
溶剤セメントの製造方法であって、
ポリ塩化ビニル及び塩素化ポリ塩化ビニルから成る群より選択されるポリマーを提供すること、
以下の一般式
【化2】
(式中、Rは、1、2、又は4個の非置換炭素の直鎖状アルキル基、又は、2又は3個の非置換炭素のアルコキシメチル基である)に従う、1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤を提供すること、及び
前記ポリマーと前記1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤とを、前記ポリマーが前記1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤と共に溶解した状態となるまで混合して、前記溶剤セメントを製造すること、
を含み、
前記1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤が、N-エチルカプロラクタムを含む、
方法。
【請求項13】
前記ポリマー及び前記1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤と共に、1又は複数の共溶剤を混合することをさらに含み、前記1又は複数の共溶剤は、3~6個の炭素を有するケトンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、及びシクロヘキサノンの群より選択される少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤が、N-エチルカプロラクタムから成り、前記1又は複数の共溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノンから成る、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ポリ塩化ビニル及び塩素化ポリ塩化ビニルの群より選択されるポリマー、及び
以下の一般式
【化3】
(式中、Rは、1、2、又は4個の非置換炭素の直鎖状アルキル基、又は、2又は3個の非置換炭素のアルコキシメチル基である)に従う、1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤、
を含み、
前記ポリマーの一部は、前記1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤中に懸濁されていて、
前記1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤が、N-エチルカプロラクタムを含む、
物体上にポリマーコーティングを形成するための組成物。
【請求項17】
前記ポリマーが、前記組成物の25重量%~45重量%である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
1又は複数の共溶剤をさらに含む、請求項16又は17に記載の組成物。
【請求項19】
前記1又は複数の共溶剤が、極性の非プロトン性溶剤を含む、請求項18に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全開示内容が明白に参照により本明細書に援用される2018年12月10日に出願された「COMPOSITIONS INCLUDING PVC OR CPVC」と題する米国仮特許出願第62/777,280号の利益を、米国特許法第119条(e)の下で主張するものである。
【0002】
本開示は、ポリ塩化ビニル(PVC)又は塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)を有機溶剤中に含む組成物に関する。特に、本開示は、低VOC溶剤を含みPVC又はCPVCを含んだ溶剤セメント組成物及びコーティング組成物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
PVC(ポリ塩化ビニル)又はCPVC(塩素化ポリ塩化ビニル)及び1又は複数の有機溶剤を含む有機溶剤系組成物は、PVC若しくはCPVCから作られた物体を接合するために、又は物体をPVC若しくはCPVCでコーティングするために、長年にわたって使用されてきた。PVC又はCPVC製の物体を接合するための溶剤セメントとして用いられる場合、1又は複数の溶剤の蒸発速度を制御する補助とするために、溶剤セメントを適切な粘度とするために、及び/又は接合される面間のギャップを埋めるための材料を提供するために、PVC又はCPVC樹脂が組成物中に溶解される。使用時、1又は複数の有機溶剤は、接合されるべき物体のPVC又はCPVC面の中に拡散し、PVC又はCPVCポリマー鎖の動きの自由度を高め、面のPVC又はCPVCを軟化させ、部分的に溶解する。接合されるべき面が一緒になって圧力下に置かれるに従って、軟化されたプラスチックが流動し、各物体からポリマー鎖が拡散して混ざり合い、面間に強い凝集力を作り出す。1又は複数の溶剤が蒸発するに従って、分子の交絡は適切な場所に有効に固定され、元の物体のPVC又はCPVCに近い強さの結合を形成する。
【0004】
物体をPVC又はCPVCの層でコーティングするためのコーティング材料として用いられる場合は、PVC又はCPVC樹脂の一部は組成物中に溶解され、一部は組成物中に懸濁される。1又は複数の有機溶剤が散逸するに従って、樹脂は、物体上にPVC又はCPVCのコーティングを形成する。
【0005】
そのようなPVC又はCPVC組成物に典型的に用いられる有機溶剤としては、主として、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン(MPK)、又はシクロヘキサノンなどの1又は複数のケトンと組み合わせたテトラヒドロフラン(THF)が挙げられる。THFは、揮発性有機化合物(VOC)である。
【0006】
VOCは、大気中に放出されると、太陽光の存在下、窒素酸化物との大気中での光化学反応に関与してオゾンを形成する有機化合物である。オゾンを吸入すると、特に喘息などの肺疾患を有する人の場合、様々な健康上の問題が引き起こされ得る。政府は、地表レベルでのオゾンの発生を制限するために、VOCを規制している。いくつかの管轄区域では、一部のVOCは、光化学反応性が無視できる程度であることが特定されたために、政府の規制から免除されている。例えば、アセトンは、規制免除VOCである。
【発明の概要】
【0007】
THFは、規制免除VOCではない。THFは、揮発性の高いVOCであり、標準温度及び気圧で66℃という低い沸点を有する。PVC/CPVCセメント及びコーティングの環境への影響を低減するために、揮発性のより低いVOCを含むPVC/CPVCセメント及びコーティングが求められている。
【0008】
本開示は、PVC又はCPVC溶剤セメント、及びPVC又はCPVCコーティングを物体上に形成するための組成物を提供する。溶剤セメント及びコーティング組成物は、各々、カプロラクタム誘導溶剤と、ポリ塩化ビニル及び塩素化ポリ塩化ビニルの群より選択されるポリマーと、を含む。カプロラクタム誘導溶剤は、以下の一般式に従い:
【0009】
【0010】
式中、Rは、1、2、若しくは4個の非置換炭素の直鎖状アルキル基、又は2若しくは3個の非置換炭素のアルコキシメチル基である。
その1つの形態では、本開示は、1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤とポリマーとを含む溶剤セメントを提供する。1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤は、以下の一般式に従い:
【0011】
【0012】
式中、Rは、1、2、若しくは4個の非置換炭素の直鎖状アルキル基、又は2若しくは3個の非置換炭素のアルコキシメチル基である。ポリマーは、ポリ塩化ビニル及び塩素化ポリ塩化ビニルの群より選択される。ポリマーは、1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤と共に溶解した状態である。
【0013】
ポリマーは、ポリ塩化ビニルから成っていてよい。ポリマーは、塩素化ポリ塩化ビニルから成っていてもよい。ポリマーは、溶剤セメントの1重量%~30重量%であってよい。
【0014】
1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤は、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、N-ブチルカプロラクタム、N-(メトキシメチル)カプロラクタム、及びN-(エトキシメチル)カプロラクタムの群より選択される少なくとも1つを含んでよい。1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤は、N-エチルカプロラクタムから成っていてよい。カプロラクタム誘導溶剤の濃度は、溶剤セメントの5重量%~99重量%であってよい。
【0015】
溶剤セメントは、1又は複数の共溶剤をさらに含んでもよい。共溶剤は、3~6個の炭素を有するケトンを含んでよい。ケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、及びシクロヘキサノンの群より選択される少なくとも1つを含んでよい。共溶剤は、極性の非プロトン性溶剤であってよい。カプロラクタム誘導溶剤の濃度は、溶剤セメントの5重量%~94重量%であってよく、共溶剤の濃度は、溶剤セメントの5重量%~85重量%であってよい。1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤は、N-エチルカプロラクタムから成っていてよく、1又は複数の共溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノンから成っていてよい。
【0016】
その別の形態では、本開示は、溶剤セメントを製造する方法を提供する。方法は、ポリ塩化ビニル及び塩素化ポリ塩化ビニルから成る群より選択されるポリマーを提供すること;以下の一般式に従い:
【0017】
【0018】
式中、Rは、1、2、若しくは4個の非置換炭素の直鎖状アルキル基、又は2若しくは3個の非置換炭素のアルコキシメチル基である、1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤を提供すること;並びにポリマーと1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤とを、ポリマーが1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤と共に溶解した状態となるまで混合して、溶剤セメントを製造すること、を含む。
【0019】
方法は、ポリマー及び1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤と共に、1又は複数の共溶剤を混合することをさらに含んでよく、1又は複数の共溶剤は、3~6個の炭素を有するケトンを含む。ケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、及びシクロヘキサノンの群より選択される少なくとも1つを含んでよい。1又は複数のカプロラクタム誘導溶剤は、N-エチルカプロラクタムから成っていてよく、1又は複数の共溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノンから成る。
【0020】
本開示は、その別の形態では、物体上にポリマーコーティングを形成するための組成物を提供し、組成物は、ポリマーとカプロラクタム誘導溶剤とを含む。ポリマーは、ポリ塩化ビニル及び塩素化ポリ塩化ビニルの群より選択される。カプロラクタム誘導溶剤は、以下の一般式に従い:
【0021】
【0022】
式中、Rは、1、2、若しくは4個の非置換炭素の直鎖状アルキル基、又は2若しくは3個の非置換炭素のアルコキシメチル基である。一部のポリマーは、カプロラクタム誘導溶剤中に懸濁される。
【0023】
ポリマーは、ポリ塩化ビニルから成っていてよい。ポリマーは、塩素化ポリ塩化ビニルから成っていてもよい。ポリマーは、組成物の25重量%~45重量%であってよい。
カプロラクタム誘導溶剤は、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、及びN-ブチルカプロラクタムの群より選択される少なくとも1つを含んでよい。カプロラクタム誘導溶剤の濃度は、組成物の55重量%~75重量%であってよい。
【0024】
組成物は、1又は複数の共溶剤をさらに含んでもよい。共溶剤は、3~6個の炭素を有するケトンを含んでよい。ケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、及びシクロヘキサノンの群より選択される少なくとも1つを含んでよい。共溶剤は、極性の非プロトン性溶剤であってよい。カプロラクタム誘導溶剤の濃度は、組成物の20重量%~65重量%であってよく、共溶剤の濃度は、組成物の10重量%~55重量%であってよい。
【0025】
以下の記述を参照することにより、本発明の上述した特徴及び他の特徴、並びにそれらを実現する方法は、より明らかとなり、本発明自体も、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本開示に従う、共溶剤を含んだポリ塩化ビニル溶剤セメントにおけるPVC濃度の関数としての粘度のグラフである。
【
図2】
図2は、本開示に従う、共溶剤を含まないポリ塩化ビニル溶剤セメントにおけるPVC濃度の関数としての粘度のグラフである。
【
図3】
図3は、本開示に従う、結合の72時間後のPVC溶剤セメントにおける重ね合わせせん断強度の箱ひげ図である。
【
図4】
図4は、本開示に従う、結合の72時間後のCPVC溶剤セメントにおける重ね合わせせん断強度の箱ひげ図である。
【
図5】
図5は、本開示に従う、結合の72時間後の、ヒュームドシリカを含んだPVC溶剤セメント及びCPVC溶剤セメントにおける重ね合わせせん断強度の箱ひげ図である。
【
図6】
図6は、本開示に従う、結合の72時間後の、A6-3及び様々な濃度のシクロヘキサノンとアセトンとを含んだPVC溶剤セメント及びCPVC溶剤セメントにおける重ね合わせせん断強度の箱ひげ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態の以下の記述を添付の図面と合わせて参照することにより、本発明の上述した特徴及び他の特徴、並びにそれらを実現する方法は、より明らかとなり、本発明自体も、より良く理解されるであろう。
【0028】
本開示は、カプロラクタム誘導溶剤が、例えばTHFの少なくとも一部など揮発性のより高い有機化合物の少なくとも一部を置き換える、PVC又はCPVC溶剤セメント、及びPVC又はCPVCのポリマーコーティングを形成するための組成物を提供する。THFよりも沸点が非常に高いことにより、カプロラクタム誘導溶剤は、THFよりも非常に低い揮発性を有することができ、一部はVOCとして分類されない場合もある。カプロラクタム誘導溶剤は、驚くべきことに、PVC及びCPVCなどの塩化ビニルポリマーを溶解するのに有効であることが見出された。
【0029】
本開示は、ポリマーとカプロラクタム誘導溶剤とを含む溶剤セメント又はコーティング組成物を提供する。ポリマーは、PVC及びCPVCの群より選択される。ポリマーは、PVCから成っていてよい。ポリマーは、CPVCから成っていてよい。
【0030】
N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、N-ブチルカプロラクタム、N-(メトキシメチル)カプロラクタム、及び/又はN-(エトキシメチル)カプロラクタムを、THFの一部又はすべての代わりに含むPVC及びCPVC溶剤セメントが、広範囲にわたる粘度を提供可能であることが見出された。より低い粘度のPVC又はCPVCセメントは、接合部又は狭い空間へのより大きい流量性が必要とされる用途において有用であり得る。より高い粘度のPVC又はCPVCセメントは、コンポーネントが組み立てのために配置される間により低い流量性が所望される用途で、例えば接合部が縦方向の位置関係である用途で、有用であり得る。加えて、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、N-ブチルカプロラクタム、N-(メトキシメチル)カプロラクタム、及びN-(エトキシメチル)カプロラクタムは、THFよりも高い沸点を有することから、VOCに関連する問題への寄与が低減されることになると思われる。例えば、N-エチルカプロラクタムを含むPVC又はCPVCセメントは、著しくVOCを有し得るものであり、なぜなら、N-エチルカプロラクタムは、米国においてVOC規制除外溶剤であるからである。
【0031】
また、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、N-ブチルカプロラクタム、N-(メトキシメチル)カプロラクタム、及び/又はN-(エトキシメチル)カプロラクタムを、THFの一部又はすべての代わりに含むPVC及びCPVC溶剤セメントでは、結合強度の構築の速度が低下することも見出された。このことは、より広い結合面積を有するより大きいコンポーネント同士を結合させる場合など、結合させるべきコンポーネントの組み立て及びコンポーネントの相対的な位置の調節のために、PVC又はCPVC溶剤セメントの適用後にさらなる時間があることが望ましい状況において有利であり得る。
【0032】
カプロラクタム誘導溶剤は、以下の一般式に従ってよく:
式I
【0033】
【0034】
式中、Rは、1、2、若しくは4個の非置換炭素の直鎖状アルキル基、又は2若しくは3個の非置換炭素のアルコキシメチル基である。式Iに示されるように、1、2、若しくは4個の非置換炭素の直鎖状アルキル基、又は2若しくは3個の非置換炭素のアルコキシメチル基は、窒素ヘテロ原子に結合している。例えば、Rがメチル基(-CH3)である場合、カプロラクタム誘導溶剤は、式IIに従うN-メチルカプロラクタムである。
式II:
【0035】
【0036】
Rがエチル基(-CH2CH3)である場合、カプロラクタム誘導溶剤は、式IIIに従うN-エチルカプロラクタムである。
式III:
【0037】
【0038】
Rがブチル基(-CH2CH2CH2CH3)である場合、カプロラクタム誘導溶剤は、式IVに従うN-ブチルカプロラクタムである。
式IV:
【0039】
【0040】
Rがメトキシメチル基(-CH2OCH3)である場合、カプロラクタム誘導溶剤は、式Vに従うN-(メトキシメチル)カプロラクタムである。
式V:
【0041】
【0042】
Rがエトキシメチル基(-CH2OCH2CH3)である場合、カプロラクタム誘導溶剤は、式VIに従うN-(エトキシメチル)カプロラクタムである。
式VI:
【0043】
【0044】
カプロラクタム誘導溶剤は、N-エチルカプロラクタム、N-ブチルカプロラクタム、N-(メトキシメチル)カプロラクタム、N-(エトキシメチル)カプロラクタム、又はこれらのいずれかの組み合わせを含んでよい。カプロラクタム誘導溶剤は、上記のカプロラクタム誘導溶剤のいずれか1つから成っていてもよい。
【0045】
カプロラクタム誘導溶剤は、カプロラクタム誘導溶剤のいずれか2つを含んでいてもよい。例えば、カプロラクタム誘導溶剤は、N-メチルカプロラクタム及びN-エチルカプロラクタムを含んでよい。別の選択肢として、カプロラクタム誘導溶剤は、N-メチルカプロラクタム及びN-ブチルカプロラクタムを含んでよい。別の選択肢として、カプロラクタム誘導溶剤は、N-エチルカプロラクタム及びN-ブチルカプロラクタムを含んでよい。カプロラクタム誘導溶剤は、N-メチルカプロラクタム及びN-エチルカプロラクタムから成っていてもよい。カプロラクタム誘導溶剤は、N-メチルカプロラクタム及びN-ブチルカプロラクタムから成っていてもよい。カプロラクタム誘導溶剤は、N-エチルカプロラクタム及びN-ブチルカプロラクタムから成っていてもよい。
【0046】
カプロラクタム誘導溶剤がカプロラクタム誘導溶剤のうちのいずれか2つを含む溶剤セメントにおいて、カプロラクタム誘導溶剤の各々は、溶剤セメントの総重量の少なくは2重量パーセント(重量%)、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、33重量%、35重量%、40重量%、45重量%、若しくは49重量%、又は多くは51重量%、55重量%、60重量%、65重量%、67重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、若しくは97重量%であってよく、又は例えば2重量%~97重量%、3重量%~96重量%、5重量%~95重量%、6重量%~94重量%、8重量%~92重量%、10重量%~90重量%、15重量%~85重量%、20重量%~80重量%、25重量%~75重量%、30重量%~70重量%、33重量%~67重量%、35重量%~65重量%、40重量%~60、45重量%~55重量%、重量%、若しくは49重量%~51重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0047】
溶剤セメント又はコーティング組成物は、カプロラクタム誘導溶剤のうちの3つを含んでいてもよい。溶剤セメント又はコーティング組成物において、カプロラクタム誘導溶剤は、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、及びN-ブチルカプロラクタムを含んでよい。溶剤セメント又はコーティング組成物において、カプロラクタム誘導溶剤は、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、及びN-ブチルカプロラクタムから成っていてもよい。
【0048】
カプロラクタム誘導溶剤がカプロラクタム誘導溶剤のうちの3つを含む溶剤セメント又はコーティング組成物において、カプロラクタム誘導溶剤の各々は、溶剤セメントの総重量の少なくは2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、33重量%、35重量%、40重量%、45重量%、若しくは49重量%、又は多くは50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、67重量%、70重量%、75重量%、80重量%、84重量%、88重量%、90重量%、93重量%、若しくは95重量%であってよく、又は例えば2重量%~95重量%、3重量%~93重量%、5重量%~90重量%、6重量%~88重量%、8重量%~84重量%、10重量%~80重量%、15重量%~70重量%、20重量%~60重量%、若しくは25重量%~50重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0049】
溶剤セメント又はコーティング組成物は、1又は複数の共溶剤をさらに含んでもよい。共溶剤は、極性の非プロトン性溶剤であってよい。共溶剤は、3~6個の炭素を有するケトンを含んでよい。共溶剤は、3~6個の炭素を有するケトンから成っていてもよい。ケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノン、又はこれらのいずれかの組み合わせを含んでよい。ケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノン、又はこれらのいずれかの組み合わせから成っていてもよい。ケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノンから成っていてもよい。
【0050】
本開示に従う溶剤セメント中のポリマーは、カプロラクタム誘導溶剤と共に溶解した状態である、又はカプロラクタム誘導溶剤中に溶解されている。ポリマーは、溶剤セメントの総重量の、少なくは1重量%、2重量%、4重量%、6重量%、8重量%、10重量%、若しくは12重量%、又は多くは14重量%、15重量%、16重量%、18重量%、20重量%、22重量%、26重量%、若しくは30重量%であってよく、又は例えば1重量%~30重量%、2重量%~26重量%、4重量%~22重量%、6重量%~20重量%、8重量%~18重量%、10重量%~15重量%、若しくは12重量%~14重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0051】
本開示に従う溶剤セメントにおいて、カプロラクタム誘導溶剤は、溶剤セメントの総重量の、少なくは70重量%、74重量%、78重量%、80重量%、82重量%、84重量%、若しくは86重量%、又は多くは88重量%、90重量%、92重量%、94重量%、96重量%、98重量%、若しくは99重量%であってよく、又は例えば70重量%~99重量%、74重量%~98重量%、78重量%~96重量%、80重量%~94重量%、82重量%~92重量%、84重量%~90重量%、若しくは86重量%~88重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0052】
1又は複数の共溶剤をさらに含む本開示に従う溶剤セメントにおいて、カプロラクタム誘導溶剤は、溶剤セメントの総重量の、少なくは5重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、35重量%、40重量%、45重量%、若しくは50重量%、又は多くは55重量%、60重量%、若しくは65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、84重量%、88重量%、91重量%、若しくは94重量%であってよく、又は例えば5重量%~94重量%、8重量%~91重量%、15重量%~88重量%、20重量%~70重量%、5重量%~15重量%、10重量%~20重量%、10重量%~15重量%、35重量%~94重量%、40重量%~91重量%、45重量%~88重量%、50重量%~84重量%、55重量%~80重量%、60重量%~45重量%、若しくは65重量%~70重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0053】
1又は複数の共溶剤をさらに含む本開示に従う溶剤セメントにおいて、共溶剤は、溶剤セメントの総重量の、少なくは5重量%、6重量%、8重量%、10重量%、12重量%、14重量%、若しくは16重量%、18重量%、20重量%、23重量%、26重量%、29重量%、又は多くは32重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量% 70重量%、75重量%、80重量%、若しくは85重量%であってよく、又は例えば5重量%~85重量%、6重量%~80重量%、8重量%~75重量%、10重量%~70重量%、12重量%~65重量%、14重量%~60重量%、5重量%~35重量%、6重量%~32重量%、8重量%~29重量%、10重量%~26重量%、12重量%~23重量%、14重量%~20重量%、16重量%~18重量%、50重量%~80重量%、55重量%~75重量%、70重量%~80重量%、若しくは75重量%~80重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0054】
本開示に従うコーティング組成物中のポリマーの一部は、カプロラクタム誘導溶剤中に懸濁され、残りはカプロラクタム誘導溶剤と共に溶解した状態であってもよい。ポリマーは、コーティング組成物の総重量の、少なくは25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、若しくは31重量%、又は多くは32重量%、34重量%、36重量%、38重量%、40重量%、42重量%、若しくは45重量%であってよく、又は例えば25重量%~45重量%、26重量%~42重量%、27重量%~40重量%、28重量%~38重量%、29重量%~36重量%、30重量%~34重量%、若しくは31重量%~32重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0055】
本開示に従うコーティング組成物において、カプロラクタム誘導溶剤は、コーティング組成物の総重量の、少なくは55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、若しくは61重量%、又は多くは62重量%、64重量%、66重量%、68重量%、70重量%、72重量%、若しくは75重量%であってよく、又は例えば55重量%~75重量%、56重量%~72重量%、57重量%~70重量%、58重量%~68重量%、59重量%~66重量%、60重量%~64重量%、若しくは61重量%~62重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0056】
1又は複数の共溶剤をさらに含む本開示に従うコーティング組成物において、カプロラクタム誘導溶剤は、コーティング組成物の総重量の、少なくは20重量%、23重量%、26重量%、29重量%、32重量%、35重量%、若しくは38重量%、又は多くは41重量%、44重量%、48重量%、52重量%、56重量%、60重量%、若しくは65重量%であってよく、又は例えば20重量%~65重量%、23重量%~60重量%、26重量%~56重量%、29重量%~52重量%、32重量%~48重量%、35重量%~44重量%、若しくは38重量%~41重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0057】
1又は複数の共溶剤をさらに含む本開示に従うコーティング組成物において、共溶剤は、コーティング組成物の総重量の、少なくは10重量%、13重量%、16重量%、19重量%、22重量%、25重量%、若しくは28重量%、又は多くは31重量%、34重量%、38重量%、42重量%、46重量%、50重量%、若しくは55重量%であってよく、又は例えば10重量%~55重量%、13重量%~50重量%、16重量%~46重量%、19重量%~42重量%、22重量%~38重量%、25重量%~34重量%、若しくは28重量%~31重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0058】
本明細書で用いられる場合、「上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内」の句は、文字通り、値が列挙の低い値の方にあるか、又は列挙の高い値の方にあるかに関わらず、その句の前に列挙された値のいずれか2つからのいずれの範囲が選択されてもよいことを意味する。例えば、値の対は、低い方の値2つ、高い方の値2つ、又は低い方の値及び高い方の値、から選択されてよい。
【0059】
本発明を、例示的な設計に関連して記載してきたが、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内で、さらに改変されてもよい。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野における公知の又は慣習的な実践の範囲内に含まれるような本開示からの逸脱も包含することを意図している。
【0060】
実施例
例1-共溶剤を含むポリ塩化ビニル溶剤セメントの粘度比較
この例では、様々な溶剤及び共溶剤で製造したPVC溶剤セメントの粘度比較を示す。1.5gのシクロヘキサノン、1.5gのアセトン、及び1.8gのメチルエチルケトンの量での共溶剤と、4.2gの比較するべき5つの溶剤:テトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-メチルカプロラクタム(A6-2)、N-エチルカプロラクタム(A6-3)、及びN-ブチルカプロラクタム(A6-5)、のうちの1つとを含む溶剤混合物に、1gのPVC樹脂を添加することによって、5つのPVC溶剤溶液を調製した。PVC樹脂は、Ronald Mark Associates,Inc.,Hillside,NJからのRMA 57であった。PVC樹脂は、固有粘度が0.67(ASTM D1243-79に従う)である易流動性粉末であった。
【0061】
5つのPVC/溶剤混合物の各々を、すべてのPVC樹脂が溶解したと思われるまでチューブローラー上で混合し、各々が10.0重量%のPVCを含む5つのPVC溶液を調製した。10.0重量%の各PVC溶液の粘度を、およそ25℃でブルックフィールド粘度計DV-11+を用い、少量サンプルアダプター及びスピンドル18を用いて測定した。
【0062】
10.0重量%の各PVC溶液の粘度を測定した後、追加のPVC樹脂を各々に添加し、すべての追加PVC樹脂が溶解したと思われるまでチューブローラー上で混合して、各々が12.0重量%のPVCを含む5つのPVC溶液を調製した。12.0重量%の各PVC溶液の粘度を、10.0重量%のPVC溶液の場合と同様にして測定した。5つのPVC溶液にPVC樹脂を添加し、混合し、粘度を測定するというプロセスを繰り返して、13.0重量%、14.0重量%、及び15.0重量%のPVCを有するPVC溶液に対する粘度測定値を得た。しかし、A6-3又はA6-5を含む15.0重量%のPVC溶液は、より低いPVC濃度の粘度に基づいて、粘度が高くなり過ぎて実用的ではないと予測されることから、作製しなかった。
【0063】
5つの溶剤の各々に対する結果を
図1に示す。
図1に示されるように、A6-2、A6-3、及びA6-5を含むPVC溶液は、広範囲の粘度を提供することができる。より低い粘度のPVC溶液は、接合部又は狭い空間へのより大きい流量性が必要とされる用途でのPVC溶剤セメントとして有用であり得る。より高い粘度のPVC溶液は、コンポーネントが組み立てのために配置される間により低い流量性が所望される用途での、例えば接合部が縦方向の位置関係である用途でのPVC溶剤として有用であり得る。加えて、A6-2、A6-3、及びA6-5は、THF又はNMPよりも高い沸点を有することから、VOCに関連する問題への寄与が低減されることになると思われる。
【0064】
例2-共溶剤を含まないポリ塩化ビニル溶剤セメントの粘度比較
この例では、様々な溶剤で製造したPVC溶剤セメントの粘度比較を示す。9.5gの比較するべき5つの溶剤:テトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-メチルカプロラクタム(A6-2)、N-エチルカプロラクタム(A6-3)、及びN-ブチルカプロラクタム(A6-5)、のうちの1つに、0.5gのPVC樹脂を添加することによって、5つのPVC溶剤溶液を調製した。PVC樹脂は、Ronald Mark Associates,Inc.,Hillside,NJからのRMA 57であった。PVC樹脂は、固有粘度が0.67(ASTM D1243-79に従う)である易流動性粉末であった。
【0065】
5つのPVC/溶剤混合物の各々を、すべてのPVC樹脂が溶解したと思われるまでチューブローラー上で混合し、各々が5.0重量%のPVCを含む5つのPVC溶液を調製した。5.0重量%の各PVC溶液の粘度を、およそ25℃でブルックフィールド粘度計DV-11+を用い、少量サンプルアダプター及びスピンドル18を用いて測定した。
【0066】
5.0重量%の各PVC溶液の粘度を測定した後、追加のPVC樹脂を各々に添加し、すべての追加PVC樹脂が溶解したと思われるまでチューブローラー上で混合して、各々が10.0重量%のPVCを含む5つのPVC溶液を調製した。12.0重量%の各PVC溶液の粘度を、5.0重量%のPVC溶液の場合と同様にして測定した。5つのPVC溶液にPVC樹脂を添加し、混合し、粘度を測定するというプロセスをさらに3回繰り返して、12.0重量%、13.0重量%、及び14.0重量%のPVCを有するPVC溶液に対する粘度測定値を得た。しかし、A6-2、A6-3、又はA6-5を含む14.0重量%のPVC溶液、並びにA6-5を含む12.0重量%のPVC溶液は、より低いPVC濃度の粘度に基づいて、粘度が高くなり過ぎて実用的ではないと予測されることから、作製しなかった。
【0067】
5つの溶剤の各々に対する結果を
図2に示す。
図2に示されるように、A6-2、A6-3、及びA6-5を含むPVC溶液は、広範囲の粘度を提供することができる。例1の溶液の場合と同様に、より低い粘度のPVC溶液は、接合部又は狭い空間へのより大きい流量性が必要とされる用途でのPVC溶剤セメントとして有用であり得る。より高い粘度のPVC溶液は、コンポーネントが組み立てのために配置される間により低い流量性が所望される用途での、例えば接合部が縦方向の位置関係である用途でのPVC溶剤として有用であり得る。加えて、A6-2、A6-3、及びA6-5は、THF又はNMPよりも高い沸点を有することから、VOCに関連する問題への寄与が低減されることになると思われる。
【0068】
例3-共溶剤を含むポリ塩化ビニル溶剤セメントの重ね合わせせん断強度の比較
この例では、様々な溶剤及び共溶剤で製造したPVC溶剤セメントの重ね合わせせん断強度の比較を示す。1.5gのシクロヘキサノン、1.5gのアセトン、及び1.8gのメチルエチルケトンの量での共溶剤と、4.0gの比較するべき5つの溶剤:テトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-メチルカプロラクタム(A6-2)、N-エチルカプロラクタム(A6-3)、及びN-ブチルカプロラクタム(A6-5)、のうちの1つとを含む溶剤混合物に、1.2gのPVC樹脂を添加することによって、5つのPVC溶剤溶液を調製した。PVC樹脂は、Ronald Mark Associates,Inc.,Hillside,NJからのRMA 57であった。PVC樹脂は、固有粘度が0.67(ASTM D1243-79に従う)である易流動性粉末であった。5つのPVC/溶剤混合物の各々を、すべてのPVC樹脂が溶解したと思われるまでチューブローラー上で混合し、各々が12.0重量%のPVCを含む5つのPVC溶液を調製した。各PVC溶液の粘度を、およそ25℃でブルックフィールド粘度計DV-11+を用い、少量サンプルアダプター及びスピンドル18を用いて測定した。結果を以下の表1に示す。0
【0069】
【0070】
ASTM D2564に従って重ね合わせせん断試験サンプルを調製したが、但し、ASTM D3163-01に従って重ね合わせせん断強度を測定するために用いたInstron(登録商標)万能材料試験システムの利用可能な設備に合わせるために、PVCシートは薄くした。重ね合わせせん断試験サンプルの各々は、1インチ×3インチ片にカットした1/16インチ厚のグレーPVCシートから調製した。PVC溶剤セメントのうちの1つを1インチ×1インチの面に適用して、2枚のPVCシートを一緒に結合した。結合したPVCシートを、互いに手で軽く押し付けた後、2kg荷重で3分間にわたって互いに押し付けた。これを、各PVC溶液に対して複数回繰り返して、5つのPVC溶液の各々に対して複数の試験サンプルを調製した。
【0071】
重ね合わせせん断強度を、各PVC溶液からの試験サンプルのいくつかに対しては結合の2時間後に、各PVC溶液からの他の試験サンプルに対しては結合の16時間後に測定した。PVC溶剤と結合後の時間との各組み合わせについて、4~10個のサンプルの測定を行った。サンプルの測定は、Instron(登録商標)万能材料試験システム上、0.1インチ/分の試験速度、5kNの荷重セル、及び2インチのゲージ長さで行った。結果を以下の表2に示す。
【0072】
【0073】
表2に示されるように、A6-2、A6-3、又はA6-5を含むPVC溶剤セメントの方が、結合強度の構築はゆっくりであった。このことは、より広い結合面積を有するより大きいコンポーネント同士を結合させる場合など、結合させるべきコンポーネントの組み立て及びコンポーネントの相対的な位置の調節のために、PVC溶剤セメントの適用後にさらなる時間があることが望ましい場合のある状況において有利であり得る。
【0074】
例4-共溶剤を含む塩素化ポリ塩化ビニル溶剤セメントの重ね合わせせん断強度の比較
この例では、様々な溶剤及び共溶剤で製造したCPVC溶剤セメントの重ね合わせせん断強度の比較を示す。1.5gのシクロヘキサノン、1.5gのアセトン、及び1.8gのメチルエチルケトンの量での共溶剤と、4.0gの比較するべき5つの溶剤:テトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-メチルカプロラクタム(A6-2)、N-エチルカプロラクタム(A6-3)、及びN-ブチルカプロラクタム(A6-5)、のうちの1つとを含む溶剤混合物に、1.4gのCPVC樹脂を添加することによって、5つのCPVC溶剤溶液を調製した。CPVC樹脂は、VIA-OLE Chemical Co.Ltd.からのJ-700であった。CPVC樹脂は、67.3%の塩素含有率である白色粉末であった。5つのCPVC/溶剤混合物の各々を、すべてのCPVC樹脂が溶解したと思われるまでチューブローラー上で混合し、各々が14.0重量%のCPVCを含む5つのCPVC溶液を調製した。各CPVC溶液の粘度を、およそ25℃でブルックフィールド粘度計DV-11+を用い、少量サンプルアダプター及びスピンドル18を用いて測定した。結果を以下の表3に示す。
【0075】
【0076】
重ね合わせせん断試験サンプルを例3で上述したようにして調製して、5つのCPVC溶液の各々に対する複数の試験サンプルを調製した。重ね合わせせん断強度を、各CPVC溶液からの試験サンプルのいくつかに対しては結合の2時間後に、各CPVC溶液からの他の試験サンプルに対しては結合の19時間後に測定した。CPVC溶剤と結合後の時間との各組み合わせについて、3~5個のサンプルの測定を行った。サンプルは、例3で上述したようにしてInstron(登録商標)万能材料試験システム上で測定した。結果を以下の表4に示す。
【0077】
【0078】
表4に示されるように、A6-2、A6-3、又はA6-5を含むCPVC溶剤セメントの方が、結合強度の構築はゆっくりであった。上記で記載したように、このことは、より広い結合面積を有するより大きいコンポーネント同士を結合させる場合など、結合させるべきコンポーネントの組み立て及びコンポーネントの相対的な位置の調節のために、CPVC溶剤セメントの適用後にさらなる時間があることが望ましい場合のある状況において有利であり得る。
【0079】
例5-共溶剤を含むポリ塩化ビニル溶剤セメントの性能比較
この例では、様々な濃度の溶剤及び共溶剤で製造したPVC溶剤セメントの相対的な性能を示す。上記の例3で評価した5つの溶剤に加えて、N-(メトキシメチル)カプロラクタム(A6-13)及びN-(エトキシメチル)カプロラクタム(A6-14)についても評価した。PVC樹脂は、Ronald Mark Associates,Inc.,Hillside,NJからのRMA 57であった。PVC樹脂は、固有粘度が0.67(ASTM D1243-79に従う)である易流動性粉末であった。PVC溶剤セメントを、溶剤又は溶剤混合物に12.0重量%のPVC樹脂を添加し、すべてのPVC樹脂が溶解したと思われるまでチューブローラー上で混合することによって製造し、以下の表5に示す16種類のPVC溶剤セメントを製造した。表5にはさらに、比較のために評価した2種類の市販PVC溶剤セメントも含まれており、市販品-1及び市販品-2と称する。市販品-1は、Oatey(登録商標)低VOC汎用溶剤セメントである。市販品-2は、Carlon(登録商標)低VOCグレーPVC溶剤セメントである。
【0080】
各PVC溶剤セメントの粘度を、およそ25℃±0.2℃でブルックフィールド粘度計DV-11+を用い、少量サンプルアダプター及びスピンドル18を用いて測定した。溶剤セメントの一部の揮発性有機物含有率(VOC)を、式1に従って特定した:
式1
VOC(g/L)=[100-(ポリマー重量%)-(アセトン重量%)-(A6-3重量%)-(シリカ重量%)]×(溶液密度(g/mL)×10
アセトンの重量パーセントを差し引いたのは、それがVOC規制免除溶剤だからである。A6-3の重量パーセントを差し引いたのは、それがVOC規制除外溶剤だからである。ポリマー及びシリカ(例7を参照)の重量パーセントは、非揮発性含有物であることから差し引いた。粘度及びVOCの結果を表5に示す。
【0081】
表5に示されるように、すべての溶剤セメントは、妥当な粘度を有していた。妥当な粘度とは、通常溶剤セメントの場合の約90cPから高粘度溶剤セメント(heavy bodied solvent cement)の場合の約1600cPまでである。予想されるように、A6-3の添加又はアセトンの濃度の上昇は、VOCを大きく低下させる。
【0082】
【0083】
表5に示すPVC溶剤セメントを用いてASTM D2564に従って重ね合わせせん断試験サンプルを調製したが、但し、ASTM D3163-01に従って重ね合わせせん断強度を測定するために用いたInstron(登録商標)万能材料試験システムの利用可能な設備に合わせるために、PVCシートは薄くした。重ね合わせせん断試験サンプルの各々は、1インチ×2インチ片にカットした1/4インチ厚の白色PVCシートから調製した。PVC溶剤セメントのうちの1つを1インチ×1インチの面に適用して、2枚のPVCシートを一緒に結合した。結合したPVCシートを、互いに手で軽く押し付けた後、2kg荷重で3分間にわたって互いに押し付けた。これを、各PVC溶剤セメントに対して複数回繰り返して、PVC溶剤セメントの各々に対して21個の試験サンプルを調製した。
【0084】
重ね合わせせん断強度を、各PVC溶剤セメントにおける7つの試験サンプルに対しては結合の2時間後に、各PVC溶剤セメントにおける7つの試験サンプルに対しては結合の16時間後に、そして各PVC溶剤セメントにおける7つの試験サンプルに対しては結合の72時間後に測定した。測定した7つの試験サンプルの各セットについて、最も高い測定値と最も低い測定値は廃棄し、残りの5つの測定値の数値平均を、対応するPVC溶剤セメントに対する重ね合わせせん断強度として報告した。試験サンプルの測定は、Instron(登録商標)万能材料試験システム上、0.1インチ/分の試験速度、5kNの荷重セル、及び2インチのゲージ長さで行った。各PVC溶剤セメントに対する結果を以下の表6に示す。
【0085】
【0086】
重ね合わせせん断強度は、2時間後及び16時間後のPVC溶剤セメントのすべてにおいて同等であった。しかし、
図3に示されるように、72時間後では明確な相違が観察された。具体的には、PVC溶剤セメント8~11の配合から調製した試験サンプルの重ね合わせせん断強度は、THF、NMP、及び2つの市販PVCセメントで調製したサンプルの場合と同等である。
【0087】
例6-共溶剤を含む塩素化ポリ塩化ビニル溶剤セメントの性能比較
この例では、様々な濃度の溶剤及び共溶剤で製造したCPVC溶剤セメントの相対的な性能を示す。上記の例4で評価した5つの溶剤に加えて、N-(メトキシメチル)カプロラクタム(A6-13)及びN-(エトキシメチル)カプロラクタム(A6-14)についても評価した。CPVC樹脂は、VIA-OLE Chemical Co.Ltd.からのJ-700であった。CPVC樹脂は、67.3%の塩素含有率である白色粉末であった。CPVC溶剤セメントを、溶剤混合物に14.0重量%のCPVC樹脂を添加し、すべてのCPVC樹脂が溶解したと思われるまでチューブローラー上で混合することによって製造し、以下の表7に示す7種類のCPVC溶剤セメントを製造した。
【0088】
各CPVC溶剤セメントの粘度を、例5で上述したようにして測定した。各CPVC溶剤セメントに対する揮発性有機物含有率(VOC)を、例5で上述したようにして特定した。粘度及びVOCの結果を表7に示す。表7に示されるように、すべての溶剤セメントは、妥当な粘度を有していた。予想されるように、A6-3の添加又はアセトンの濃度の上昇は、VOCを大きく低下させる。
【0089】
【0090】
例5で上述したようにして重ね合わせせん断試験サンプルを調製し、試験した。各CPVC溶剤セメントに対する結果を以下の表8に示す。比較のために、市販品-1及び市販品-2の溶剤セメントを含める。
【0091】
【0092】
例5のPVC溶剤セメントで観察されたように、重ね合わせせん断強度は、2時間後及び16時間後のCPVC溶剤セメントのすべてにおいて同等であった。しかし、
図4に示されるように、72時間後では明確な相違が観察された。具体的には、PVC溶剤セメント31及び32の配合から調製した試験サンプルの重ね合わせせん断強度は、THF、NMP、及び2つの市販PVCセメントで調製したサンプルの場合と同等である。
【0093】
例7-共溶剤及びヒュームドシリカを含むポリ塩化ビニル溶剤セメント及び塩素化ポリ塩化ビニル溶剤セメントの性能比較
この例では、THF又はA6-3を用いて製造し、ヒュームドシリカを含むPVC溶剤セメント及びCPVC溶剤セメントの相対的な性能を示す。シリカは、溶剤セメントの粘度範囲を調節するために添加されてよいチクソトロピー剤である。PVC溶剤セメントを、例5に関して上述したように、THF又はA6-3を含む混合物に12.0重量%のPVC樹脂及び1重量%のヒュームドシリカを添加することによって製造した。CPVC溶剤セメントを、例6に関して上述したように、THF又はA6-3を含む溶剤混合物に14.0重量%のCPVC樹脂及び1重量%のヒュームドシリカを添加することによって製造した。以下の表9に示されるように、合計で4種類の溶剤セメントを製造した。
【0094】
各PVC及びCPVC溶剤セメントの粘度を、例5で上述したようにして測定した。各PVC及びCPVC溶剤セメントに対する揮発性有機物含有率(VOC)を、例5で上述したようにして特定した。粘度及びVOCの結果を表9に示す。表9に示されるように、A6-3を含むCPVC溶剤セメント以外のすべての溶剤セメントは、妥当な粘度を有していた。予想されるように、THFに代わるA6-3の使用又はアセトンの濃度の上昇は、VOCを大きく低下させる。
【0095】
【0096】
例5で上述したようにして重ね合わせせん断試験サンプルを調製し、試験した。各PVC及びCPVC溶剤セメントに対する結果を以下の表10に示す。
【0097】
【0098】
重ね合わせせん断強度は、2時間後及び16時間後のPVC及びCPVC溶剤セメントのすべてにおいて同等であった。重ね合わせせん断強度はまた、
図5に示されるように、72時間後のPVC及びCPVC溶剤セメントのすべてにおいても同等であった。理論に束縛されるものではないが、ヒュームドシリカの添加によるA6-3溶剤セメントの強度の上昇は、溶剤の蒸発速度を低下させ得る溶剤セメントの粘度上昇に起因し得るものと考えられる。溶剤の蒸発速度が低下することで、溶剤セメントのPVCシートへの浸透を高めるための充分な時間を得ることができ、その結果、結合がより強くなる。PVC溶剤セメントと比較してCPVC溶剤セメントの方が結合が強いことは、CPVC溶剤セメント中のポリマーの濃度がより高いことに起因し得る。
【0099】
例8-様々な濃度の共溶剤を含むポリ塩化ビニル溶剤セメント及び塩素化ポリ塩化ビニル溶剤セメントの性能比較
この例では、A6-3、並びに様々な濃度のシクロヘキサノン及びアセトンを含むPVC溶剤セメント及びCPVC溶剤セメントの相対的な性能を示す。PVC溶剤セメントを、例5に関して上述したように、THF又はA6-3を含む溶剤混合物に12.0重量%のPVC樹脂を添加することによって製造した。CPVC溶剤セメントを、例6に関して上述したように、THF又はA6-3を含む溶剤混合物に14.0重量%のCPVC樹脂を添加することによって製造した。以下の表11に示されるように、合計で4種類の溶剤セメントを製造した。例5及び6からの溶剤セメント11及び24を、それぞれ比較のために含める。
【0100】
各PVC及びCPVC溶剤セメントの粘度を、例5で上述したようにして測定した。各PVC及びCPVC溶剤セメントに対する揮発性有機物含有率(VOC)を、例5で上述したようにして特定した。粘度及びVOCの結果を表11に示す。表11に示されるように、溶剤セメントの粘度は、シクロヘキサノンの濃度の上昇及びVOCの上昇と共に低下した。
【0101】
【0102】
例5で上述したようにして重ね合わせせん断試験サンプルを調製し、試験した。各PVC及びCPVC溶剤セメントに対する結果を以下の表12に示す。驚くべきことに、
図6に示されるように、シクロヘキサノンの濃度の上昇は、72時間後の重ね合わせせん断強度を低下させる傾向にあった。
【0103】