(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】直流電圧変換器の一次側から二次側へ、またはその逆に双方向で電力を伝送するための直流電圧変換器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
H02M3/28 H
(21)【出願番号】P 2021535748
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2019084011
(87)【国際公開番号】W WO2020126554
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】102019208942.9
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018222714.4
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】プルム,トーマス
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-228788(JP,A)
【文献】特開2018-148623(JP,A)
【文献】特開2018-107924(JP,A)
【文献】特開2018-152974(JP,A)
【文献】特開2015-192525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
H03F 1/00-3/45
H03F 3/50-3/52
H03F 3/62-3/64
H03F 3/68-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧変換器(10)の二次側から一次側に電力を伝送するための直流電圧変換器(10)であって、
一次側の一次コイル(5)および二次側の二次コイル(6)を有する変圧器を備え、
前記一次コイル(5)が、一方では第1の一次電圧接続端子(11a)に接続され、他方では第1のスイッチ(1)と直列に第2の一次電圧接続端子(11b)に接続され、
前記一次コイル(5)と並列に、コンデンサ(4)が第2のスイッチ(2)と直列に接続され、
前記二次コイル(6)が、一方では第1の二次電圧接続端子(9a)に接続され、他方では第3のスイッチ(3)と直列に第2の二次電圧接続端子(9a)と接続され、
直流電圧変換器(10)がさらに、制御デバイス(12)を備え、前記制御デバイス(12)が、前記第1のスイッチ(1)、前記第2のスイッチ(2)、前記第3のスイッチ(3)を繰り返しオンおよびオフに切り替えるように構成され、
前記第2のスイッチ(2)がオンにされているとき、前記第1のスイッチ(1)が常にオフにされており、逆も成り立ち、前記一次コイル(5)で交流電流を生成し、
前記制御デバイス(12)がさらに、前記第1のスイッチ(1)
のスイッチ位置に応じて前記第3のスイッチ(3)をオンおよびオフに切り替えるように構成された、直流電圧変換器(10)において、
制御デバイス(12)が、前記第3のスイッチ(3)のオン切替の時点を、前記第1のスイッチ(1)がオフに切り替えられ、前記第2のスイッチ(2)がオンに切り替えられる前の時点に設定するように構成されて、二次側から一次側への電力の流れを可能にする
ことを特徴とする直流電圧変換器(10)。
【請求項2】
前記制御デバイス(12)が、前記第3のスイッチ(3)のオン切替の時点を、前記第1のスイッチ(1)がオフに切り替えられ、前記第2のスイッチ(2)がオンに切り替えられた後の時点に設定するように構成され、前記一次側から前記二次側への電力の流れを可能にすることを特徴とする請求項1に記載の直流電圧変換器(10)。
【請求項3】
前記制御デバイス(12)が、所定の電力伝送方向に応じて、前記第3のスイッチ(3)のオン切替の時点を、前記第1のスイッチ(1)がオフに切り替えられ、前記第2のスイッチ(2)がオンに切り替えられる前または後の時点に設定するように構成され、前記所定の電力伝送方向に対応して電力の流れを調節することを特徴とする請求項2に記載の直流電圧変換器(10)。
【請求項4】
前記第1のスイッチ(1)、前記第2のスイッチ(2)、または前記第3のスイッチ(3)のうちの少なくとも1つが、シリコン技術、炭化ケイ素技術、または窒化ガリウム技術に基づいて製造される、請求項1から3のいずれか一項に記載の直流電圧変換器(10)。
【請求項5】
直流電圧変換器(10)の二次側から一次側に電力を伝送するために直流電圧変換器(10)を制御するための方法であって、
前記直流電圧変換器(10)が、一次側の一次コイル(5)および二次側の二次コイル(6)を備えた変圧器を備え、
前記一次コイル(5)が、一方では第1の一次電圧接続端子(11a)に接続され、他方では第1のスイッチ(1)と直列に第2の一次電圧接続端子(11b)に接続され、
前記一次コイル(5)と並列に、コンデンサ(4)が第2のスイッチ(2)と直列に接続され、
前記二次コイル(6)が、一方では第1の二次電圧接続端子(9a)に接続され、他方では第3のスイッチ(3)と直列に第2の二次電圧接続端子(9a)と接続され、
直流電圧変換器(10)がさらに、制御デバイス(12)を備え、前記制御デバイス(12)が、
前記第1のスイッチ(1)、前記第2のスイッチ(2)、および前記第3のスイッチ(3)を繰り返しオンおよびオフに切り替えるステップであって、
前記第1のスイッチ(1)は、前記第2のスイッチ(2)がオンにされているときには常にオフにされており、逆も成り立ち、前記一次コイル(5)内で交流を生成する、ステップと、
前記第1のスイッチ(1)
のスイッチ位置に応じて、前記第3のスイッチ(3)のオンおよびオフを切り替えるステップと、
を制御するためのものである、方法において、
前記制御デバイス(12)が、
前記第3のスイッチ(3)のオン切替の時点を、前記第1のスイッチ(1)がオフに切り替えられ、前記第2のスイッチ(2)がオンに切り替えられる前の時点として予め定めて、前記二次側から前記一次側への電力の流れを可能にするステップ
をさらに制御することを特徴とする方法。
【請求項6】
前記制御デバイスが、
前記第3のスイッチ(3)のオン切替の時点を、前記第1のスイッチ(1)がオフに切り替えられ、前記第2のスイッチ(2)がオンに切り替えられた後の時点として予め定めて、前記一次側から前記二次側への電力の流れを可能にするステップ
をさらに実施することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記制御デバイスが、
所定の電力伝送方向を決定するステップと、
前記特定の電力伝送方向に応じて、前記第3のスイッチ(3)のオン切替の時点を、前記第1のスイッチ(1)がオフに切り替えられ、前記第2のスイッチ(2)がオンに切り替えられる前の時点または後の時点として予め定めるステップと、
をさらに実施することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
コンピュータに請求項5から7のいずれか一項に記載の方法を実施させ
るコンピュータプログラ
ム。
【請求項9】
コンピュータに請求項5から7のいずれか一項に記載の方法を実施させ
るコンピュータプログラム
を記録したコンピュータ可読記録媒体。
【請求項10】
第1の電圧を有する第1の直流電源と、
第2の電圧を有する第2の直流電源と、を備えるシステムであって、前記第1の電圧が前記第2の電圧よりも高く、
システムがさらに、請求項1から7のいずれか一項に記載の直流電圧変換器を備え、前記直流電圧変換器(10)が、一次側で前記第1の直流電流源に電気的に接続され、二次側で前記第2の電圧を有する前記第2の直流電流源に接続される
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次側の二次コイルの電流を単一の被制御スイッチによって切り替える非対称トポロジを用いて、直流電圧変換器の一次側から二次側へ、またはその逆に、双方向で電力を伝送するための直流電圧変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるDC/DCコンバータまたは直流電圧変換器は、2つの直流電圧レベル間で電力を転送するために使用される。そのような変換器には、いくつかの可能なトポロジがある。それらの1つは、いわゆるアクティブクランプ・フライバックトポロジであり、これは、アクティブクランプ・フライバックコンバータとも呼ばれ、電子部品が少数であることを特徴とする。ここで、整流器は、二次側に、被制御スイッチとして実装される。
【0003】
独国特許出願公開第195 07 084号に、スイッチングレギュレータとして構成されたフライバックコンバータであって、その整流器を出力回路内で電子スイッチによってブリッジすることができる、フライバックコンバータが提案されている。この電子スイッチは、スイッチングレギュレータ・アクチュエータと同期して導電状態に制御される。本発明のスイッチングレギュレータは、良好な効率および良好な追跡特性を有する。電子スイッチは、二次側の整流器と並列である。本発明によれば、電子スイッチの制御は、スイッチングレギュレータ・アクチュエータの制御に対して同期してかつプッシュプルで行われる。すなわち、スイッチングレギュレータ・アクチュエータがパルス幅変調器PBMによって遮断されるとき、電界効果トランジスタは導電状態に制御され、したがって整流器を低抵抗でブリッジする。
【0004】
そのような回路トポロジと、対応する既知の変調方法、すなわち3つの被制御スイッチングトランジスタの電力状態の制御パターンまたは電圧-時間プロファイルによって、この回路の一次側から二次側に電力が流れる。
【0005】
双方向動作のために、現況技術では、このアクティブクランプ・フライバックコンバータトポロジは対称的に拡張される(Gang Chen, Yim-Shu Lee, S. Y. R. Hui, Dehong Xu and Yousheng Wang, “Actively clamped bidirectional flyback Converter,” IEEE Transactions on Industrial Electronics, vol. 47, No. 4, pp. 770-779, Aug 2000)。これにより、さらに、単に対称性により、二次側から一次側への操作も可能である。
【0006】
そのような直流電圧変換器は、例えば電気自動車の車載変換器として使用され、この変換器では、通常、電力は、一次側の非常に高い電圧から二次側に(すなわち例えば400Vから12Vに)導かれる。このとき、できるだけ少ない回路技術的コストで逆の電力の流れを提供しなければならないシナリオが生じる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、アクティブクランプ・フライバックコンバータおよび二次回路内の被制御整流器に対応する回路トポロジを備え、電力を二次側から一次側に伝送することができる直流電圧変換器を提供することである。
【0008】
本発明によれば、上記の効果を少なくとも一部有する、独立請求項の特徴による直流電圧変換器、電力伝送のための方法、コンピュータプログラム製品、コンピュータ可読記憶媒体、および駆動システムが提示される。有利な構成は、従属請求項および以下の記述の主題である。
【0009】
直流電圧変換器の二次側から一次側に電力を伝送するための直流電圧変換器が提供される。直流電圧変換器は、一次側の一次コイルおよび二次側の二次コイルを備えるガルバニ絶縁変圧器を含む。一次コイルは、一方では第1の一次電圧接続端子に接続され、他方では第1のスイッチと直列に第2の一次電圧接続端子に接続される。一次コイルと並列に、コンデンサが、二次スイッチと直列に接続される。二次コイルは、一方では第1の二次電圧接続端子に接続され、他方では第3のスイッチと直列に第2の二次電圧接続端子と接続される。さらに、直流電圧変換器は、特に制御パターンに従って、第1のスイッチ、第2のスイッチ、第3のスイッチを繰り返し開閉する、または対応してオフおよびオンに切り替えるように構成された制御デバイスを含む。ここで、一次コイルに交流電圧を生成するために、第2のスイッチがオンにされているときには第1のスイッチは常にオフにされており、逆もまた同様である。第3のスイッチは、第1のスイッチのスイッチ位置に応じてオフおよびオンに切り替えられる。制御デバイスは、第3のスイッチのオン切替の時点を、第1のスイッチがオフに切り替えられ、第2のスイッチがオンに切り替えられる前の時点に設定するように構成され、二次側から一次側への電力の流れを可能にする。
【0010】
第1のスイッチのオフ切替と第2のスイッチのオン切替、またはその逆は、第1のスイッチと第2のスイッチとが同時に導通状態ではないことが保証されるように、常にデッドタイムだけオフセットされて行われる。この第3のスイッチのオフ切替は、有利には、このスイッチを通る電流のゼロ交差の直前に行われる。したがって、動作点に応じて、第2のスイッチのオフ切替と第3のスイッチのオフ切替との間に、異なる時間間隔が生じる。
【0011】
特に、第2のスイッチと第3のスイッチとは同時にオフに切り替えられる。第2のスイッチと第3のスイッチは、わずかに異なる時点でオンに切り替えられる。したがって、第2のスイッチと第3のスイッチとはほぼ同じ時間にオンおよびオフになっている。第3のスイッチが第2のスイッチよりも長くオンになっている時間は、特に、第2のスイッチがオンになっている持続時間の1~20%である。このようにして、上述したように、第3のスイッチを、その電流ゼロ交差でオフに切り替えることができる。これにより、このスイッチに関する最小の導通およびスイッチング損失が達成される。第2のスイッチに比べて第3のスイッチがオンになっている時間が長いほど、二次側から一次側に多くの電力が伝送される。
【0012】
有利には、直流電圧変換器の二次側から一次側への電力伝送を可能にする制御デバイスを備えた回路トポロジが提供される。
本発明の別の形態では、制御デバイスは、第3のスイッチのオン切替の時点を、第1のスイッチがオフに切り替えられ、第2のスイッチがオンに切り替えられた後の時点に設定するように構成され、一次側から二次側への電力の流れを可能にする。
【0013】
特に、第2のスイッチと第3のスイッチとは同時にオフに切り替えられる。第2のスイッチと第3のスイッチは、わずかに異なる時点でオンに切り替えられる。したがって、第2のスイッチと第3のスイッチとはほぼ同じ時間にオンおよびオフになっている。第3のスイッチが第2のスイッチよりも短くオンになっている時間は、特に、第2のスイッチがオンになっている持続時間の1~20%である。第2のスイッチに比べて第3のスイッチがオンになっている時間が短いほど、一次側から二次側に多くの電力が伝送される。
【0014】
有利には、直流電圧変換器の一次側から二次側への電力伝送を可能にする制御デバイスを備えた回路トポロジが提供される。
本発明の別の形態では、制御デバイスは、所定の電力伝送方向に応じて、第3のスイッチのオン切替の時点を、第1のスイッチがオフに切り替えられ、第2のスイッチがオンに切り替えられる前または後の時点に設定するように構成され、所定の電力伝送方向に対応して電力の流れを調節する。
【0015】
事前設定に応じて直流電圧変換器を通る電力伝送方向を適合する直流電圧変換器が提供される。これは、第3のスイッチのオン切替の時点が、第1のスイッチのスイッチング位置に応じて、第1のスイッチのオフ切替の時点の前または後に設定された時点に設定されることによって行われる。有利には、電力伝送方向を予め定めることができる直流電圧変換器が提供される。
【0016】
本発明の別の形態では、制御デバイスは、所定の電力に応じて、第1のスイッチのオン切替の時点の前または後での第3のスイッチのオン切替えの時点の距離を設定するように構成され、ここで、伝送すべき電力が大きいほど距離が大きくされ、電力が小さいほど距離が小さくされる。
【0017】
第3のスイッチと第2のスイッチとのオン切替持続時間の比率が変更されることにより、事前設定に応じて直流電圧変換器を通る電力を適合させる直流電圧変換器が提供される。有利には、電力を予め定めることができる直流電圧変換器が提供される。
【0018】
言い換えると、制御デバイスを備える、特にアクティブクランプ・フライバックコンバータのトポロジを用いた直流電圧変換器用の回路が提供され、制御デバイスは、スイッチを制御するための変調方法を実装し、この方法は、二次側から一次側への電力の流れを実現することを可能にし、ここで、さらなる電子部品に関して、特に回路に追加のコストを発生させることはない。
【0019】
本発明による、直流電圧変換器の二次側から一次側に電力を伝送するための直流電圧変換器は、一次側に、特にアクティブクランプ・フライバックコンバータ回路を備える。この回路は、第1の被制御スイッチによって一次回路内の電流を切り替える。この回路は、様々なトポロジで、しかし同等の機能で実現することができる。
【0020】
一次回路での第2の被制御スイッチは、特にコンデンサと共にアクティブクランプをもたらし、中でも第1のスイッチの負荷を低減するために、一次側での電圧を制限する。直流電圧変換器の一次側は、二次側と誘導結合される。これにより、一次側と二次側との間で両方向に電気誘導およびガルバニ絶縁された電力伝送が可能になる。
【0021】
二次側は、二次コイルによって一次側に誘導結合される。この二次コイルを通る電流は、特に二次側の単一の第3の被制御スイッチによって切り替えられる。ここで、直流電圧変換器は、制御デバイス、特に制御回路を備える。誘導結合時、一次側の一方の結合された一次コイルでの電圧が他方の結合された二次コイルの電圧と反対になるように結合を設計することができる。このために、特にインダクタンスを生成するコイルの巻線は、異なる巻線方向を有することができる。
【0022】
ここで、一次側は、第1のスイッチと第2のスイッチとを有する被制御ハーフブリッジを備える直流電圧変換器の側と定義され、ここで、これら2つの被制御スイッチを、動作中に同時に導通状態にされることがないように特に交互に制御することができる。
【0023】
そのような直流電圧変換器により、特に追加の電子部品を用いずに、二次側から一次側に電力を流すことができる。
一次側から二次側への電力の流れを制御するアクティブクランプ・フライバックコンバータと比較して、逆の電力の流れに関して、一次側の第1のスイッチは、二次側の第3の被制御スイッチが導通状態に切り替えられたとき(すなわちオンに切り替えられたとき)に初めて非導通状態に切り替えられ(すなわちオフに切り替えられ)、それによって二次側から一次側への電力の流れが達成される。
【0024】
したがって、電力は二次側から一次側に誘導的に伝送される。このエネルギーは、まずコンデンサに貯蔵され、次いで一次コイルに貯蔵され、その後、このエネルギーが、一次電圧接続端子の負荷に出力される。
【0025】
本明細書に示す変調方法、すなわち3つのスイッチに関する制御デバイスの制御信号のシーケンスでは、第1のスイッチおよび第2のスイッチは、いわゆる「ゼロ電圧スイッチング」(ZVS:zero voltage switching)で動作され、すなわち、非導通状態にのみアクティブに切り替えられ、導通状態にはアクティブに切り替えられない。
【0026】
第3のスイッチのオフ切替プロセス、すなわち非導通状態への切替は、「逆回復」によって、または第3のスイッチの逆導通ダイオードの遮断時間遅延によって行われる。この動作モードは、「ゼロ電流スイッチング」(ZCS:zero current switching)とも呼ばれる。第3のスイッチは、ZCSによってもオンに切り替えられる。
【0027】
このトポロジにより、一次コイルの電流が第2のスイッチおよび制限コンデンサを有する回路部分で整流するので、非導通状態への切替時の第1のスイッチの負荷が低減される。
【0028】
この直流電圧変換器の一次側は、一対の接続端子を備えることができ、接続端子は、フライバックコンバータ回路に接続されて、直流電圧変換器の動作中、二次側から一次側への電力の流れにより、これらの接続端子に電力を提供することができる。
【0029】
この直流電圧変換器の二次側は、一対の二次電圧接続端子を備えることができ、二次電圧接続端子は、二次コイルおよび第3のスイッチに接続され、直流電圧変換器の動作時、二次側からの一次側への電力の流れにより、これらの二次電圧接続端子に電力を受け入れることができる。
【0030】
このために、一対の二次側の接続端子は、第3のスイッチおよび二次コイルを含む第3の直列回路に電気的に接続することができる。
本発明の一形態によれば、第1の直列回路が、第1の中間回路コンデンサと並列に接続されることが提案される。これにより、直流電圧変換器の一次側接続端子に定電圧がもたらされる。代替として、第1の中間回路コンデンサは、本発明による直流電圧変換器が電気的に接続され、したがって直流電圧変換器の一部ではない別の回路の一部でもよい。
【0031】
本発明のさらなる形態によれば、第3の直列回路が第2の中間回路コンデンサと並列に接続され、それにより、直流電圧変換器の二次側接続端子の電圧が平滑化されることが提案される。代替として、第2の中間回路コンデンサは、本発明による直流電圧変換器が電気的に接続される別の回路の一部でもよい。
【0032】
本発明を改良する手段によれば、直流電圧変換器の3つのスイッチのうちの少なくとも1つが、シリコン技術、炭化ケイ素技術、または窒化ガリウム技術に基づいて製造されることが提案される。例えば、電子スイッチとしてシリコン技術に基づくMOSFETを使用するのと比較して、他の製造技術に基づく部品を使用することにより、生じる損失が少なくなるため、直流電圧変換器の効率の向上を達成することができる。
【0033】
本発明を改良する手段によれば、直流電圧変換器の個々のまたは3つすべてのスイッチが、HEMT(high-electron-mobility transistor:高電子移動度トランジスタ)、jFET(英語、junction-fet、またはNIGFET(non-insulated-gate-fet):接合型電界効果トランジスタ)、パワーMOSFET、IGBT(insulated-gate bipolar transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、またはサイリスタとして設計されることが提案される。さらに、カスコード、すなわちノーマリーオン(normally-on)素子と低電圧半導体との直列接続、または高電子移動度トランジスタ(HEMT)を使用して、電流の流れを制御することができる。
【0034】
さらに、他のユニポーラ素子を使用して電流の流れを制御することもできる。ユニポーラ素子を用いることで、MOSFETトランジスタの場合と同様に低い順方向電圧の利点が得られる。
【0035】
さらに、本発明は、直流電圧変換器の二次側から一次側に電力を伝送するために直流電圧変換器を制御するための方法に関する。ここで、直流電圧変換器は、一次側の一次コイルおよび二次側の二次コイルを備える変圧器を含む。一次コイルは、一方では第1の一次電圧接続端子に接続され、他方では第1のスイッチと直列に第2の一次電圧接続端子に接続される。一次コイルと並列に、コンデンサが二次スイッチと直列につながれる、または接続される。二次コイルは、一方では第1の二次電圧接続端子に接続され、他方では第3のスイッチと直列に第2の二次電圧接続端子と接続される。直流電圧変換器は、以下のステップを制御または実施するための制御デバイスをさらに含む。
【0036】
第1のスイッチ、第2のスイッチ、および第3のスイッチを繰り返しオフに切り替えるステップ。ここで、第1のスイッチは、第2のスイッチがオンにされているときには常にオフにされており、逆も成り立ち、一次コイル内で交流を生成する。第1のスイッチのスイッチ位置に応じて、第3のスイッチのオンおよびオフを切り替えるステップ。さらに、制御デバイスは、第3のスイッチのオン切替の時点を、第1のスイッチがオフに切り替えられ、第2のスイッチがオンに切り替えられる前の時点として予め定めて、二次側から一次側への電力の流れを可能にするステップをさらに制御する。
【0037】
有利には、直流電圧変換器の二次側から一次側への電力伝送を可能にする直流電圧変換器を制御するための方法が提供される。
本発明の別の形態では、制御デバイスは、
第3のスイッチのオン切替の時点を、第1のスイッチがオフに切り替えられ、第2のスイッチがオンに切り替えられた後の時点として予め定めて、一次側から二次側への電力の流れを可能にするステップ
をさらに制御する。
【0038】
有利には、直流電圧変換器の一次側から二次側への電力伝送も可能にする直流電圧変換器を制御するための方法が提供される。
本発明の別の形態では、制御デバイスはまた、
所定の電力伝送方向を決定するステップと、
特定の電力伝送方向に応じて、第3のスイッチのオン切替の時点を、第1のスイッチがオフに切り替えられ、第2のスイッチがオンに切り替えられる前の時点または後の時点として予め定めるステップと、
をさらに制御する。
【0039】
事前設定に応じて直流電圧変換器を通る電力伝送方向を適合する直流電圧変換器を制御するための方法が提供される。これは、第3のスイッチのオン切替の時点が、第1のスイッチのスイッチング位置に応じて、第1のスイッチのオフ切替の時点の前または後に設定された時点に設定されることによって行われる。有利には、直流電圧変換器を通る設定すべき電力伝送方向を予め定めることができる直流電圧変換器を制御するための方法が提供される。
【0040】
言い換えると、直流電圧変換器の二次側から一次側に電力を伝送するために直流電圧変換器を制御するための方法が示される。直流電圧変換器は、特に一次側に、第1の被制御スイッチおよび第2の被制御スイッチを有するアクティブクランプ・フライバックコンバータ回路を備える。
【0041】
ここで、直流電圧変換器の一次側は、一次側の一次コイルおよび二次側の二次コイルによって二次側と誘導結合される。二次コイルを通る電流は、この直流電圧変換器では、特に単一の第3のスイッチによって切り替えられる。特に、第1のスイッチと第2のスイッチとは、電力伝送のために、特に第1のデッドタイムだけオフセットして、交互に導通状態に切り替えられ、それに応じてオンに切り替えられる。この方法に対応して、特に第3のスイッチと第2のスイッチとは、第2のデッドタイムだけオフセットされて同期して、非導通状態に切り替えられ、それに応じてオフに切り替えられる。
【0042】
この方法により、上述した直流電圧変換器は、二次側から一次側に電力を輸送することができる。
このために、一次側の第1のスイッチは、二次側の第3の被制御スイッチがオンに切り替えられたときにオフに切り替えられ、それによって二次側から一次側への電力の流れが生じる。
【0043】
この方法は、直流電圧変換器のすべての他の上述した構成でも実施することができる。
さらに、本発明は、コンピュータによってプログラムが実行されるときに、コンピュータに上述した方法を実施させる命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0044】
さらに、本発明は、コンピュータによって実行されるときに、コンピュータに上述した方法を実施させる命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。
さらに、本発明は、第1の電圧を有する第1の直流電流源と、第2の電圧を有する第2の直流源とを備えるシステムに関する。第1の電圧は、第2の電圧よりも高い。さらに、システムは、上述した直流電圧変換器を備える。第1の電圧の第1の直流電流源は、直流電圧変換器の一次側に電気的に接続され、第2の電圧の第2の直流電流源は、直流電圧変換器の二次側に接続される。
【0045】
本発明の実施形態を
図1および2に示し、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図2a】3つのスイッチの制御信号を示す図である。
【
図2b】一次側および二次側の電流プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、直流電圧変換器10のトポロジを示し、このトポロジでは、第1のスイッチ1が、第1の直列回路で直流電圧変換器10の一次側の一次コイル5に電気的に接続されている。第2のスイッチ2が一次側に配置され、第2の直列回路でコンデンサ4と電気的に接続され、第2の直列回路は一次側の一次コイル5と並列に接続される。一次コイル5の側での第1の直列回路の第1の接点は、直流電圧変換器10の一次側の第1の一次電圧接続端子11aに接続され、第1のスイッチ1の側での第1の直列回路の第2の接点は、直流電圧変換器10の一次側の第2の一次電圧接続端子11bに接続される。一次側のこれらの接続端子11aと11bの間に電圧U1が印加される。直流電圧変換器の一次側のこのトポロジは、アクティブクランプ・フライバックコンバータ回路の一例を表す。
【0048】
上述したように、第1の中間回路コンデンサ7を、一次側の第1および第2の一次電圧接続端子11a、11bに電気的に接続することができる。
直流電圧変換器10の二次側は、第3の被制御スイッチ3を有し、第3のスイッチ3は、二次側の二次コイル6と共に第3の電気直列回路を形成する。二次コイル6の側での第3の直列回路の第1の接点は、直流電圧変換器10の二次側の第1の二次電圧接続端子9aを形成し、第3のスイッチ3の側の第3の直列接続の第2の接点は、直流電圧変換器10の二次側の第2の二次電圧接続端子9bを形成する。二次側のこれらの接続端子9aと9bの間に電圧U2が印加される。
【0049】
上述したように、第2の中間回路コンデンサ8を、二次側の第1および第2の二次電圧接続端子9a、9bに電気的に接続することができる。
一次側の一次コイル5と二次側の二次コイル6とは、互いに誘導結合される。特に、インダクタンスは、変圧器の互いにガルバニ絶縁された巻線として構成される。
【0050】
図1では、被制御スイッチ1、2、3は、nチャネルMOSFETトランジスタとして設計されているが、電流の流れを制御するために他のユニポーラ素子を使用することもできる。ユニポーラ素子を用いることで、MOSFETトランジスタと同様に低い順方向電圧の利点が得られる。これに関する例は、本明細書で既に上述した。
【0051】
制御デバイス12は、その出力12a、12b、および12cで、それぞれ第2のスイッチ2、第1のスイッチ1、および第3のスイッチ3の制御接点に接続される。制御デバイス12は、例えば
図2aに示される制御パターンに従って、個々のスイッチ1、2、および3を制御するように構成される。制御デバイス12は、
図2aのプロファイルに従って3つのスイッチ1、2、および3の制御接点をハイまたはローに制御する。制御信号がハイであるとき、それぞれのスイッチが導通状態に切り替えられ、それに応じてオンに切り替えられ、制御信号がローであるとき、それぞれのスイッチは非導通状態に切り替えられ、それに応じてオフに切り替えられる。
【0052】
スイッチの制御のそのような時系列では、電力は、二次コイル6および一次コイル5を含む変圧器を介して、直流電圧変換器の二次側から一次側に誘導的に伝送される。このエネルギーは、まずコンデンサ4に貯蔵され、次いで一次コイル5に貯蔵され、その後、このエネルギーが、一次電圧接続端子11a、11bに接続された負荷に出力される。
【0053】
図2bは、上述した制御パターンにより得られる、直流電圧変換器の一次コイル5での電流プロファイルI1と、二次コイル6での電流プロファイルI2とを示し、ここで、
図2aにおいて符号I1およびI2で示される矢印は、直流電圧変換器10の一次回路または二次回路における、トポロジのこれらの点での電流方向を示す。
【0054】
以下、
図2aの制御パターンから得られた
図2bの電流プロファイルを、時点t1で二次側の第3のスイッチ3が導通状態に切り替えられる直前から述べる。
誘導結合された一次側の一次コイル5と二次側の二次コイル6とは、以下の説明に使用される電気的表現において同等であるとみなすことができる。同等の表現は、直流電圧変換器の二次側と一次側との間の理想的な伝送部、および一次側での主インダクタンスに直列の漏れインダクタンスを含み、ここで、主インダクタンスは、理想的な伝送部と並列に接続される。
【0055】
始めに、時点t1の前で、第1のスイッチ1は導通状態である。第2のスイッチ2と第3のスイッチ3とはどちらも非導通状態である。
まず、変圧器の主インダクタンスによって引き起こされる減衰する負の電流I1が流れ、それにより電力が一次側に伝送される。
【0056】
ここで、時点t1で第3のスイッチ3が導通状態に切り替えられるとき、電流I2は非常に小さいので、これはZCSモードで行われる。第3のスイッチ3が導通している状態で、電圧U1と、変圧器によって変換された電圧U2との合計が漏れインダクタンスに印加される。漏れインダクタンスは主インダクタンスに比べて小さいので、電流I2は負方向に急激に上昇し、二次電圧接続端子に接続された第2の直流電圧源から電力が引き出される。
【0057】
変圧器によって変換された電圧U2は、変圧器の巻線の巻線方向が異なるので、主インダクタンスを通る電流をも生じ、それによりI1の符号も変える。重複する期間13の持続時間、すなわち第1のスイッチ1と第3のスイッチ3とが共通して導通状態になっている時点t1とt2の間の持続時間を使用して、電力伝送を調整することができる。
【0058】
第1のスイッチ1と第3のスイッチ3とが共通して導通状態になっているこの期間の最後に、第1のスイッチ1は、時点t2でほぼ損失なくオフに切り替えられる。第1のスイッチ1のオフ切替によって、固有ダイオードによって生じた一次側の電流I1は、逆導通する第2のスイッチ2に転流し、その結果、第2のスイッチS2は、ZVSモードで実質的に無損失でオンに切り替えられる。
【0059】
この段階では、漏れインダクタンスの両端間に小さい負の電圧が印加され、この電圧は、コンデンサ4の電圧UClampと変圧器によって変換された電圧U2との差によって生成される。したがって、負電流I2は減少する。
【0060】
主インダクタンスの両端間に、変圧器によって変換された電圧U2がほぼ完全に印加され、それに応じて電流I1が低下する。したがって、エネルギーはコンデンサ4および主インダクタンスに貯蔵される。
【0061】
この段階が終了すると、第2のスイッチ2を通る電流I1の方向が変わる。したがって、第2のスイッチ2のオフ切替は、時点t3で低損失で行われる。それにより、電流は、主インダクタンスを通って第1のスイッチ1の逆方向ダイオードに転流し、したがって、第1のスイッチ1は、時点t3でZVSモードで実質的に無損失でオンに切り替えられる。
【0062】
第3のスイッチ3を通る電流I2は低い値に低下され、したがって、ほぼ損失なく、概してZCSモードで、特にスイッチ2のオフ切替信号に対してある時間間隔でオフセットして、第2のスイッチ2と同期して時点t3でオフに切り替えることができる。代替として、第3のスイッチ3は、逆導通ダイオードの逆回復によって受動的にオフに切り替わる。
【0063】
ここで、主インダクタンスでの負の電流I1は、一次側で一次電圧接続端子11aおよび11bに接続された負荷に流れる。すなわち、この段階では、二次側に接続された第2の直流電圧源から前の段階で受け取られた電力が、一次側に接続された第1のDC電圧源または負荷に出力される。時点t’1で、第3のスイッチ3がZCSモードにおいて小さい電流でオンに切り替えられると、上述したサイクルが新たに始まる。
【0064】
要約すると、電力は回路の二次側から受け取られ、回路の一次側に出力される。有利には、すべてのスイッチが、第1のスイッチ1および第2のスイッチ2のようにZVSモードで動作されるか、第3のスイッチ3のようにZCSモードで動作される。これらの動作点での低いスイッチング損失は、本明細書で述べる制御パターンもしくは変調方法、またはこの制御サイクルでも、高いスイッチング周波数を可能にする。したがって、一次側から二次側への直流電圧変換器の動作と比較して、回路に追加のハードウェアコストが生じない。