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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】清掃工具
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
G02B6/36
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021550417
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2020031501
(87)【国際公開番号】W WO2021065239
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2019181384
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019181385
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 峻介
(72)【発明者】
【氏名】藤原 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 政志
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/141405(WO,A1)
【文献】特開2016-172222(JP,A)
【文献】特開2017-049397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0098045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃対象を清掃する清掃体が掛け回されるヘッド部を有する清掃工具であって、
前記ヘッド部は、
前記清掃体を前記清掃対象に押し付ける押し付け面を有するヘッド本体と、
前記ヘッド本体の前記押し付け面から突出する突出部と
を備え、
前記突出部は、前記ヘッド本体に対して後退可能である
ことを特徴とする清掃工具。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃工具であって、
前記ヘッド部は、前記突出部と前記ヘッド本体の前記押し付け面との位置関係を復元させる弾性部材を備える
ことを特徴とする清掃工具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の清掃工具であって、
前記ヘッド部を前記清掃対象に押し付ける前に、前記突出部の端面が前記ヘッド本体の前記押し付け面に対して所定の位置にある第1状態から、前記突出部の端面が前記ヘッド本体の前記押し付け面に対して前記第1状態よりも突出する第2状態となり、
前記ヘッド部を前記清掃対象に押し付けた後に、前記突出部が前記ヘッド本体に対して後退することにより、前記第2状態から前記第1状態となる
ことを特徴とする清掃工具。
【請求項4】
請求項3に記載の清掃工具であって、
前記ヘッド部に前記清掃体を搬送する送り機構を有し、
前記送り機構は、前記第1状態のときに、前記清掃体を前記ヘッド部に搬送する
ことを特徴とする清掃工具。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の清掃工具であって、
前記ヘッド部に対して移動可能であり、前記ヘッド部を内部に収容する筒体をさらに有し、
前記清掃対象は、フェルールと、前記フェルールを内部に収容するハウジングを備える光コネクタであって、
前記筒体が前記ハウジングに接触し、前記ハウジングから押圧力を受け、前記ヘッド部に対して後退することを利用して、前記第1状態から前記第2状態となる
ことを特徴とする清掃工具。
【請求項6】
請求項4に記載の清掃工具であって、
前記押し付け面は、中央部分に開口を有し、
前記突出部は、前記開口から突出する突出部側押し付け面を有し、
前記突出部側押し付け面の領域は、前記ヘッド本体の前記押し付け面と、前記突出部側押し付け面とを含む全体の領域のうち前記清掃体を搬送する方向における一部である
ことを特徴とする清掃工具。
【請求項7】
請求項6に記載の清掃工具であって、
前記突出部側押し付け面の領域は、前記全体の領域のうち前記清掃体を搬送する方向に垂直な方向における一部である
ことを特徴とする清掃工具。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の清掃工具であって、
前記清掃対象は、凹所の底面にレンズが配置された、レンズ結合型フェルールである
ことを特徴とする清掃工具。
【請求項9】
請求項8に記載の清掃工具であって、
前記清掃体は、テープ状の粘着体で構成されている
ことを特徴とする清掃工具。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の清掃工具であって、
前記突出部の突出側の端部がテーパ状に形成されている
ことを特徴とする清掃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
光コネクタの接続の際、フェルールの端面に汚れが付着していると、フェルールの端面が破損する原因や、接続損失が増大する原因となることがある。このため、光コネクタの接続の前に、清掃工具を用いてフェルールの端面を清掃することが行われている。
【0003】
このような清掃工具の清掃対象として、例えば、特許文献1、2では、フェルールの前側端面に凹所が形成されており、その凹所の底面にレンズが配置されている、いわゆるレンズ結合型のフェルールが開示されている。また、レンズ結合型のフェルールを清掃する清掃工具として、例えば、特許文献3では、粘着力のあるテープが掛け回されたヘッドを有する清掃工具が、テープをレンズに押し付けて清掃することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-151843号公報
【文献】特表2014-521996号公報
【文献】特許第6498814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レンズ結合型のフェルールは、凹所の底面にレンズが配置されている構造なので、テープをレンズに押し付けようとすると、まず凹所の縁にテープが接触してしまうことがある。このとき、テープと凹所の内側との間に空気が閉じ込められることで、テープを凹所の内面の全域に押し付けることができないことがある。この結果、テープで実際に清掃される範囲が狭くなってしまうことが問題であった。
【0006】
本発明は、レンズ結合型のフェルールにおいて清掃される範囲が狭くなってしまうことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの実施形態は、清掃体が掛け回されるヘッド部を有し、前記ヘッド部は、ヘッド本体と、前記ヘッド本体に対して突出する突出部とを備え、前記突出部は、前記ヘッド本体に対して後退可能であることを特徴とする清掃工具である。
【0008】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の幾つかの実施形態によれば、レンズ結合型のフェルールにおいて清掃される範囲が狭くなってしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の清掃工具10及びフェルール60の全体説明図である。
図2図2A及び図2Bは、第1実施形態の清掃工具10におけるヘッド部12の斜視図である。
図3図3Aは、ヘッド部12の突出部22付近を拡大した斜視図である。図3Bは、ヘッド部12の突出部22付近を拡大した平面図である。
図4図4Aは、フェルール60の斜視図である。図4Bは、フェルール60のレンズプレート62の断面図である。図4Cは、フェルール60のレンズプレート62の正面図である。
図5図5A図5Cは、テープ状の粘着体で形成された清掃体1を使用してレンズプレート62を清掃する様子を示す説明図である。
図6図6A図6Dは、比較例の清掃工具10を使用してレンズプレート62を清掃する様子を示す説明図である。
図7図7A図7Dは、第1実施形態の清掃工具10を使用してレンズプレート62を清掃する様子を示す説明図である。
図8図8A図8Cは、ヘッド部12の変形例を示す斜視図である。
図9図9A及び図9Bは、参考例の清掃工具10において清掃体1を搬送する様子を示す説明図である。
図10図10A図10Cは、第2実施形態の清掃工具10を使用してレンズプレート62を清掃する様子の前半部分を示す説明図である。
図11図11A図11Cは、第2実施形態の清掃工具10を使用してレンズプレート62を清掃する様子の後半部分を示す説明図である。
図12図12A図12Cは、第2実施形態の清掃工具10の突出機構の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
清掃体が掛け回されるヘッド部を有し、前記ヘッド部は、ヘッド本体と、前記ヘッド本体に対して突出する突出部とを備え、前記突出部は、前記ヘッド本体に対して後退可能であることを特徴とする清掃工具が明らかとなる。このような清掃工具によれば、レンズ結合型のフェルールにおいて清掃される範囲が狭くなってしまうことを抑制することができる。
【0013】
前記ヘッド部は、前記突出部と前記ヘッド本体との位置関係を復元させる弾性部材を備えることが望ましい。これにより、突出部がヘッド本体に対して後退した後に、容易に元の位置に戻すことができる。
【0014】
前記ヘッド部を光コネクタに押し付ける前に、前記突出部の端面が前記ヘッド本体の端面に対して所定の位置にある第1状態から、前記突出部の端面が前記ヘッド本体の端面に対して前記第1状態よりも突出する第2状態となり、前記ヘッド部を前記光コネクタに押し付けた後に、前記突出部が前記ヘッド本体に対して後退することにより、前記第2状態から前記第1状態となることが望ましい。これにより、清掃体を搬送することで突出部を破損してしまうことを抑制することができる。
【0015】
前記ヘッド部に前記清掃体を搬送する送り機構を有し、前記送り機構は、前記第1状態のときに、前記清掃体を前記ヘッド部に搬送することが望ましい。これにより、清掃体を搬送することで突出部を破損してしまうことを抑制することができる。
【0016】
前記ヘッド部に対して移動可能であり、前記ヘッド部を内部に収容する筒体をさらに有し、前記光コネクタは、フェルールと、前記フェルールを内部に収容するハウジングを備え、前記筐体が前記ハウジングに接触し、前記ハウジングから押圧力を受け、前記ヘッド部に対して後退することを利用して、前記第1状態から前記2第状態となることが望ましい。これにより、簡易な動作で突出部の端面をヘッド本体の端面から突出させることができる。
【0017】
前記清掃体をフェルールに押し付ける前記ヘッド部の押し付け面は、前記ヘッド本体に設けられるヘッド本体側押し付け面と、前記突出部に設けられる突出部側押し付け面とからなり、前記突出部側押し付け面の領域は、前記ヘッド部の押し付け面全体の領域のうち前記清掃体を搬送する方向における一部であることが望ましい。これにより、清掃体をフェルールに押し付けたときに、清掃体とフェルールとの間に空気が閉じ込められることを抑制することができる。
【0018】
前記突出部側押し付け面の領域は、前記ヘッド部の押し付け面全体の領域のうち前記清掃体を搬送する方向に垂直な方向における一部であることが望ましい。これにより、清掃体をフェルールに押し付けたときに、清掃体とフェルールとの間に空気が閉じ込められることをさらに抑制することができる。
【0019】
前記フェルールは、前記フェルールに形成された凹所の底面にレンズが配置された、レンズ結合型フェルールであることが望ましい。このような場合に、特に有利である。
【0020】
前記清掃体は、テープ状の粘着体で構成されていることが望ましい。これにより、レンズのような凸部を有する面全体に清掃体を接触させることが可能となる。
【0021】
前記突出部の突出側の端部がテーパ状に形成されていることが望ましい。これにより、清掃体をフェルールに押し付けたときに、清掃体とフェルールとの間に空気が閉じ込められることをさらに抑制することができる。
===第1実施形態===
<清掃工具及びフェルールの構成>
図1は、第1実施形態の清掃工具10及びフェルール60の全体説明図である。
【0022】
以下では、清掃工具10の構成及び動作を説明する際、図に示す方向に従って説明を行うことがある。すなわち、清掃工具10においてヘッド部12が延び出る方向を「前後方向」とし、ヘッド部12の先端の側を「前」とし、逆側を「後」とする。巻取リール32の回転軸(巻取リール支持軸32A)の軸方向を「左右方向」とし、後側から前側を見たときの右手側を「右」とし、逆側(左手側)を「左」とする。また、「前後方向」及び「左右方向」と直交する方向を「上下方向」とする。また、清掃体1の搬送方向に従って「上流」と「下流」という用語が用いられることがある。
【0023】
また、フェルール60の構成を説明する際、図に示す方向に従って説明を行うことがある。すなわち、清掃工具10のヘッド部12が押し付けられる方向を「前後方向」とし、フェルール60においてレンズ64が設けられる側(光コネクタの接続端面の側)を「前」とし、逆側を「後」とする。また、後述する図4A図4Cに示すように、フェルール60の幅方向を「左右方向」とし、フェルール60の厚さ方向を「上下方向」とする。
【0024】
本実施形態の清掃工具10を用いて清掃対象のフェルール60を清掃する場合、ヘッド部12に掛け回された清掃体1をフェルール60に押し付ける。本実施形態の清掃工具10の清掃対象となるフェルール60は、レンズ結合型のフェルールである。図1に示すように、レンズ結合型のフェルールでは、フェルール60に形成された凹所63の底面67にレンズ64が配置されている。本実施形態の清掃工具10では、清掃体1の接触面2を凹所63の内面65に押し付けることによって、フェルール60が清掃される。
【0025】
・清掃工具10
図2A及び図2Bは、第1実施形態の清掃工具10におけるヘッド部12の斜視図である。図3Aは、ヘッド部12の突出部22付近を拡大した斜視図である。図3Bは、ヘッド部12の突出部22付近を拡大した平面図である。なお、図2Aでは、清掃体1を透過させて、外形を破線で示している。図2B図3Bは、ヘッド部12において、ヘッド本体21の上半分を切り取った状態を示している。以下では、前述の図1も参照しながら、清掃工具10の構成を説明する。
【0026】
清掃工具10は、フェルール60を清掃するための工具である。図1に示すように、清掃工具10は、筒体11と、ヘッド部12と、送り機構13と、ヘッド部用ばね26とを有する。
【0027】
筒体11は、ヘッド部12を収容する部材である。清掃工具10を用いてフェルール60を清掃するとき、作業者はフェルール60を収容する不図示のハウジングに筒体11を押し当ててフェルール60を清掃する。
【0028】
ヘッド部12は、清掃体1をフェルール60に押し付ける部材である。ヘッド部12の一部分(前側部分)は、筒体11の前側に設けられた開口から延び出ており、筒体11の外部に露出している。ヘッド部12のその他の部分(後側部分)は、筒体11の内部に収容されている。図2Aに示すように、ヘッド部12には、清掃体1が上側から下側へと掛け回されている。なお、この清掃体1は、送り機構13により、上側から下側へと(搬送方向に)清掃体1が搬送されることになる。ヘッド部12は、ヘッド本体21と、突出部22と、突出部用ばね27とを有する。
【0029】
ヘッド本体21は、清掃体1をフェルール60に押し付ける部材であると共に、突出部22及び突出部用ばね27を収容する部材でもある。ヘッド本体21の前側の端面には、ヘッド本体側押し付け面36が設けられている。ヘッド本体側押し付け面36は、ヘッド本体21の部分の中で、清掃体1をフェルール60に押し付ける部分である。ヘッド本体側押し付け面36の中央部分には開口が形成されており、突出部22が突出している。また、ヘッド本体21の内部には、突出部22の一部と、突出部用ばね27とが収容されている。なお、ヘッド本体21は、突出部22を前後方向に移動可能に収容している。
【0030】
突出部22は、ヘッド本体21に対して移動可能な部材である。図2A図3Bに示すように、突出部22の前側部分は、ヘッド本体21の前側の端面(ヘッド本体側押し付け面36)から突出している。突出部22のその他の部分は、ヘッド本体21の内部に収容されている。但し、突出部22の前側部分が突出しておらず、突出部22がヘッド本体21に対して前側に移動したときにはじめて突出部22の前側部分が突出する構成であっても良い。
【0031】
突出部22の前側の端面には、突出部側押し付け面37が設けられている。突出部側押し付け面37は、突出部22の部分の中で、清掃体1をフェルール60に押し付ける部分である。図2Aに示すように、突出部側押し付け面37は、ヘッド本体側押し付け面36の中央部分に配置されている。すなわち、ヘッド本体側押し付け面36全体の領域のうち突出部側押し付け面37の領域は、上下方向(清掃体1を搬送する方向)における一部を占めている。また同時に、ヘッド本体側押し付け面36全体の領域のうち突出部側押し付け面37の領域は、左右方向(清掃体1を搬送する方向に垂直な方向)における一部を占めている。但し、ヘッド本体側押し付け面36全体の領域のうち突出部側押し付け面37の領域は、これに限られず、後述するヘッド部12の変形例(図8A図8C参照)に示すように、様々な形状とすることができる。
【0032】
本実施形態では、突出部22の突出側の端部がテーパ状に形成されている。すなわち、図3A及び図3Bに示すように、突出部側押し付け面37の左右両側にテーパ面38が設けられている。但し、突出部22の突出側の端部がテーパ状に形成されていなくても良い。すなわち、突出部側押し付け面37の左右両側にテーパ面38が設けられず、突出部22の突出側の端部が突出部側押し付け面37のみで構成されても良い。
【0033】
突出部用ばね27は、突出部22とヘッド本体21との位置関係を復元させるための弾性部材である。突出部用ばね27は、突出部22と、ヘッド本体21の後側の内壁面との間に配置されている。具体的には、突出部用ばね27の前端部は突出部22に設けられた鍔部分に保持されており、突出部用ばね27の後端部はヘッド本体21内部の後側の内壁面に設けられたばね受け部分に保持されている。フェルール60の清掃時に突出部22がヘッド本体21に対して後側に移動すると、突出部用ばね27が圧縮変形する。圧縮変形した突出部用ばね27が復元すると、突出部22がヘッド本体21に対して前側に移動して元の位置に戻ることになる。ヘッド部12が突出部用ばね27を有することにより、突出部22がヘッド本体21に対して移動した後に、容易に元の位置に戻すことができる。
【0034】
また、突出部用ばね27は、突出部22を前側に押圧するための弾性部材でもある。フェルール60の清掃時に突出部用ばね27が弾性変形することにより、所定の押圧力で突出部22に掛け回された清掃体1をフェルール60に押し付けることができる。
【0035】
但し、ヘッド部12は、突出部用ばね27を有していなくても良い。
【0036】
送り機構13は、未使用の清掃体1をヘッド部12の上流側から供給し、使用済みの清掃体1をヘッド部12の下流側へ送り出す機構である。図1に示すように、送り機構13は、供給リール31と、巻取リール32とを有する。供給リール31は、未使用の清掃体1を供給するリールである。供給リール31には、未使用の清掃体1が巻き回されている。供給リール31は、供給リール支持軸31Aに回転可能に支持されている。巻取リール32は、使用済みの清掃体1を巻き取って回収するリールである。巻取リール32には、使用済みの清掃体1が巻き回されている。巻取リール32は、巻取リール支持軸32Aに回転可能に支持されている。
【0037】
ヘッド部用ばね26は、ヘッド部12を前側に押圧するための弾性部材でもある。フェルール60の清掃時にヘッド部用ばね26が弾性変形することにより、所定の押圧力でヘッド部12に掛け回された清掃体1をフェルール60に押し付けることができる。なお、本実施形態では、ヘッド部用ばね26の弾性力は、突出部用ばね27の弾性力よりも強くなっている。
【0038】
・フェルール60
図4Aは、フェルール60の斜視図である。図4Bは、フェルール60のレンズプレート62の断面図である。図4Cは、フェルール60のレンズプレート62の正面図である。なお、図4Bは、レンズプレート62の凹所63が形成されている部分を、左右方向に垂直な面で切ったときの断面を示している。
【0039】
フェルール60は、光ファイバの端部を保持する部材である。本実施形態のフェルール60は、レンズ結合型のフェルールである。レンズ結合型のフェルールは、光ファイバの端部に光を入出射させるレンズを使用することにより、光ファイバの端部同士を物理的に接触させずに光接続することができるフェルールである。但し、フェルール60は、レンズ結合型のフェルールでなくても良い。
【0040】
フェルール60は、フェルール本体61と、レンズプレート62とを有する。
【0041】
フェルール本体61は、フェルール60において光ファイバの端部を保持する部材である。フェルール本体61は、レンズプレート62の後側に配置されている。
【0042】
レンズプレート62は、レンズ64が配置される部材である。レンズプレート62は、光信号を透過させる透明樹脂によって成形されている。図4Aに示すように、レンズプレート62は、その後端面をフェルール本体61の前端面に接触させた状態で、フェルール本体61の前側に配置されている。なお、フェルール本体61が保持する光ファイバの端部は、レンズプレート62の後端面に突き当てられている。レンズプレート62は、レンズ64と、前側端面65Aとを有する。
【0043】
レンズ64は、フェルール本体61が保持する光ファイバの端部に対応して配置されるレンズである。レンズ64を介して光ファイバの端部に光信号が入出射されることになる。レンズ64は、凸レンズとして形成されている。図4B及び図4Cに示すように、本実施形態のレンズ64は、左右方向に複数(ここでは、12個)並んだレンズ64の列が上下方向に複数(ここでは、3列)配置されている。但し、レンズ64の数や配置方法はこれに限られない。それぞれのレンズ64は、フェルール本体61が保持する複数の光ファイバの端部に対応して配置されることになる。
【0044】
レンズ64は、例えばコリメートレンズとして機能するように形成されている。レンズ64によって径の拡大された光信号を入出射することによって、光信号がコリメート光として伝播するので、フェルール60同士の間にゴミが侵入しても安定して接続することが可能であり、光信号の伝送損失を抑制できる。また、レンズ64によって径の拡大された光信号を入出射することによって、光信号がコリメート光として伝播するので、フェルール60同士の間で光信号の光路の位置ずれが生じても、光信号の伝送損失を抑制できる。
【0045】
レンズ64は、レンズプレート62(フェルール60)の前側に形成されている。フェルール60同士を対向させて突き合わせたときに、凸状のレンズ64同士が接触しないようにするために、レンズ64は、レンズプレート62に形成された凹所63の内面65に配置されている。凹所63は、レンズプレート62(フェルール60)の前側端面65Aよりも後側に凹んだ部位である。
【0046】
凹所63の内面65は、側面66と、底面67と、レンズ面68とから構成される。側面66は、凹所63の内面65のうち、側面に位置する面である。底面67は、凹所63の内面65のうち、底面に位置する面である。底面67には、レンズ64が配置されている。レンズ面68は、レンズ64の表面である。
【0047】
フェルール60同士の間にゴミのような異物が侵入すると、レンズプレート62の凹所63の内面65に付着することがある。凹所63の内面65に異物が付着していると、接続損失が増大する原因となることがある。本実施形態の清掃工具10は、このような凹所63の内面65に付着した異物を取り除くことができる。以下の説明では、本実施形態の清掃工具10が「フェルール60を清掃する」ことは、「レンズプレート62の凹所63の内面65を清掃する」ことを指す。但し、本実施形態の清掃工具10は、レンズプレート62の凹所63の内面65以外の、例えば前側端面65Aを清掃しても良い。
【0048】
前側端面65Aは、フェルール60同士を対向させて突き合わせたときに、突き当てられる面である。前側端面65Aを、突き当て面65Aと呼ぶことがある。前側端面65Aの中央部分に凹所63が形成されている。前側端面65Aと、凹所63との境界部分には、縁65Bが設けられている。
【0049】
<清掃体>
本実施形態の清掃工具10で使用される清掃体1は、フェルール60を清掃するための部材である。清掃体1は、フェルール60の異物を吸着させるための粘着体で構成されている。なお、清掃体1を構成する粘着体は自粘着性を有する。ここで、自粘着性とは、清掃体1の他の部材に対する接着強度が清掃体1の切断強度に比べて小さく、他の部材に接着させた清掃体1を引き剥がしても、清掃体1を構成する粘着体の相手側の部材への転移が生じないようになっていることを指す。
【0050】
図1に示すように、本実施形態では、レンズプレート62の凹所63の内面65(側面66、底面67及びレンズ面68)に押し付けられる清掃体1の面が接触面2である。この接触面2を内面65に接触させることによって、内面65上の異物を粘着面に吸着させて、内面65上の異物を除去する。また、清掃体1は、内面65に接触させて引き剥がしたときに清掃体1の一部が内面65に転移が生じないようになっている。
【0051】
本実施形態では、レンズプレート62の凹所63の内面65は、平面のみで形成されていない。特に、レンズ64が配置されている底面67には凸部(レンズ面68)が形成されている。このような凸部を有する内面65の場合、清掃布や清掃糸で拭き取る場合と比べて、粘着体を押し付ける方が内面65全体を適切に清掃することができる。この点、本実施形態の清掃工具10は、テープ状の粘着体で形成された清掃体1を使用しているので、レンズ面68を含めた内面65全体に清掃体1を接触させることが可能となる。但し、本実施形態の清掃工具10は、テープ状の粘着体で形成された清掃体1を使用しなくても良く、清掃布や清掃糸を使用しても良い。
【0052】
清掃体1を構成する粘着体は、異物を付着させるため、シリコーン系粘着剤からなる粘着性を有する部材からなる。この粘着体は、例えば主剤に粘着剤を混入させて構成されても良く、主剤としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン又はモノマーを含む共重合体等を用いることができ、主剤に混入させる粘着剤としては、例えば天然ゴム、ブチルゴム、アクリルゴム等の合成ゴム、ポリ塩化ビニルと可塑剤との混合物等を用いることができる。
【0053】
図5A図5Cは、テープ状の粘着体で形成された清掃体1を使用してレンズプレート62を清掃する様子を示す説明図である。
【0054】
図5Aに示すように、本実施形態の清掃工具10で使用される清掃体1は、テープ状に形成されている。テープ状に形成された清掃体1は、ヘッド部12に掛け回されている。そして、前述の送り機構13により、ヘッド部12には未使用の清掃体1を上流側から供給し、使用済みの清掃体1を下流側へ送り出すことが可能である。以下の説明では、清掃体1の内面65への接触と、清掃体1の内面65からの引き剥がしとを一回以上行った清掃体1を「使用済み」の清掃体1と呼ぶことがある。また、清掃体1の内面65への接触と、清掃体1の内面65からの引き剥がしとを一回も行っていない清掃体1を「未使用」の清掃体1と呼ぶことがある。未使用の清掃体1にて清掃を行い、使用済みの清掃体1となった場合、清掃体1への異物の吸着により、清掃体1の粘着力が低下していることがある。この場合、未使用の清掃体1を上流側から供給し、使用済みの清掃体1を下流側へ送り出す必要がある。また、未使用の清掃体1が上流側から供給されること、又は、使用済みの清掃体1が下流側へ送り出されることを、併せて清掃体1の「搬送」と呼ぶことがある。また、清掃体1の搬送する方向を「搬送方向」と呼ぶことがある。
【0055】
本実施形態の清掃工具10で使用される清掃体1は、一方の面が自粘着性を有する粘着体で形成された粘着面で形成され、他方の面が粘着性を有さない非粘着面で形成されている。図5Aに示すように、本実施形態の清掃工具10で使用される清掃体1は、外側(内面65に接触する側)の面が粘着面で形成され、内側(ヘッド部12に接触する側)の面が非粘着面で形成されている。ヘッド部12に接触する側の面が非粘着面で形成されていることにより、清掃体1がヘッド部12に粘着せずに、ヘッド部12に沿って移動することができる。図5Aは、レンズプレート62の凹所63の内面65を清掃する前の様子を示している。図5Aに示すように、内面65にはゴミ5が付着している。以下の説明では、ゴミ5は、繊維屑、塵埃及び皮脂等の汚れを総称している。
【0056】
図5Bは、接触面2をレンズプレート62の凹所63の内面65に接触させたときの様子を示している。内面65上の異物は、清掃体1の自粘着性により、清掃体1側に吸着される。
【0057】
そして、図5Cは、内面65から接触面2を引き剥がした時の様子を示している。清掃体1の自粘着性により、清掃体1を形成する粘着体が内面65へ転移することを抑制することができる。そして、内面65上のゴミ5は、接触面2側に吸着されている。図5Cに示すように、清掃体1の接触面2にはゴミ5が吸着している。すなわち、使用済みの清掃体1となっている。したがって、このまま接触面2を他の内面65に接触させると、粘着力が低下した接触面2で他の内面65に接触させることになるので、ゴミ5の吸着を適切に行うことができないおそれがある。また、このまま接触面2を他の内面65に接触させると、接触面2上に吸着したゴミ5が再度他の内面65に付着してしまうおそれがある。このため、送り機構13により未使用の清掃体1を上流側から供給し、使用済みの清掃体1を下流側へ送り出すことになる。
【0058】
<比較例の清掃工具10の清掃の様子>
図6A図6Dは、比較例の清掃工具10を使用してレンズプレート62を清掃する様子を示す説明図である。なお、図6A図6Dの右側には、それぞれの時点でのフェルール60のレンズプレート62の正面の状態を図示している。
【0059】
図6Aに示すように、比較例の清掃工具10では、清掃体1がヘッド部12に掛け回されている。しかし、比較例の清掃工具10では、ヘッド部12に突出部22が設けられておらず、ヘッド部12のヘッド本体側押し付け面36から突出する部材がない。このため、ヘッド部12に掛け回された清掃体1は、第1実施形態の清掃工具10と比べると、ヘッド部12の先端部分における清掃体1の曲率が大きくなっている。
【0060】
また、図6Aに示すように、レンズプレート62(フェルール60)の凹所63の内面65には、ゴミ5が付着している。このように内面65にゴミ5が付着していると、接続損失が増大する原因となることがある。したがって、清掃工具10によりゴミ5を取り除く必要がある。
【0061】
作業者がヘッド部12(清掃工具10)をレンズプレート62側へ移動させると、図6Bに示すように、ヘッド部12の先端部分における清掃体1が、レンズプレート62に接触する。このとき、前述したように、比較例の清掃工具10は、第1実施形態の清掃工具10と比べると、ヘッド部12の先端部分における清掃体1の曲率が大きくなっているので、清掃体1が内面65に接触するよりも先に、縁65Bに接触することがある。そうすると、図6Bに示すように、清掃体1と凹所63の内面65との間に空気6が閉じ込められることになる。この状態から作業者がヘッド部12(清掃工具10)をレンズプレート62側へさらに移動させようとしても、図6Cに示すように、空気6の存在により、清掃体1を凹所63の内面65の全域に押し付けることができなくなってしまう。
【0062】
図6Dに示すように、作業者がヘッド部12(清掃工具10)をレンズプレート62とは反対側へ移動させると、清掃体1が凹所63の内面65から引き剥がされる。そして、凹所63の内面65上に付着していたゴミ5は、接触面2側に吸着される。しかし、清掃体1が押し付けられなかった内面65の領域には、接触面2側に吸着されず、ゴミ5が凹所63の内面65上に残ってしまっている。図6Dに示すように、凹所63の内面65の上下方向中央に付着していたゴミ5は、接触面2側に吸着されている。しかし、凹所63の内面65の上端付近や、凹所63の内面65の下端付近に付着していたゴミ5は、接触面2側に吸着されず、ゴミ5が凹所63の内面65上に残ってしまっている。すなわち、図6Dの右側の図に示すように、比較例の清掃工具10では、清掃範囲3が狭くなってしまうことがある。
【0063】
<第1実施形態の清掃工具10の清掃の様子>
図7A図7Dは、第1実施形態の清掃工具10を使用してレンズプレート62を清掃する様子を示す説明図である。なお、図7A図7Dの右側には、それぞれの時点でのフェルール60のレンズプレート62の正面の状態を図示している。
【0064】
図7Aに示すように、第1実施形態の清掃工具10では、清掃体1がヘッド部12に掛け回されている。そして、第1実施形態の清掃工具10では、ヘッド部12は、ヘッド本体21と、ヘッド本体21に対して突出する突出部22とを有している。ヘッド部12に掛け回された清掃体1は、ヘッド本体21のヘッド本体側押し付け面36から突出する突出部22の高さ部分だけ、比較例の清掃工具10と比べると、ヘッド部12の先端部分における清掃体1の曲率が小さくなっている。
【0065】
作業者がヘッド部12(清掃工具10)をレンズプレート62側へ移動させると、図7Bに示すように、ヘッド部12の先端部分における清掃体1が、レンズプレート62に接触する。このとき、前述したように、第1実施形態の清掃工具10は、比較例の清掃工具10と比べると、ヘッド部12の先端部分における清掃体1の曲率が小さくなっているので、清掃体1は凹所63の内面65の上下方向中央部分に先に接触し、縁65Bに接触しない。そうすると、図7Bに示すように、清掃体1と凹所63の内面65との間に空気6が閉じ込められることが抑制される。すなわち、清掃体1と縁65Bとの間に空気6が逃げる隙間ができる。なお、図7Bの状態では、突出部22の突出部側押し付け面37により清掃体1が凹所63の内面65に押し付けられている。図7Bの状態では、清掃体1は凹所63の内面65の上下方向中央部分に接触しただけであり、凹所63の内面65の上端付近や、凹所63の内面65の下端付近には清掃体1はまだ接触していない。
【0066】
図7Bの状態から作業者がヘッド部12(清掃工具10)をレンズプレート62側へさらに移動させると、凹所63の内面65に接触した突出部22は、凹所63の内面65から後方向の押圧力を受ける。前述したように、突出部22は、ヘッド本体21に対して移動可能であるから、凹所63の内面65側から受ける押圧力により、突出部22がヘッド本体21に対して後退する(突出部22の突出方向とは反対側に移動する)。このとき、突出部22は、突出部用ばね27の弾性力に抗して後退することになる。なお、本実施形態では、ヘッド部用ばね26の弾性力が突出部用ばね27の弾性力よりも強くなっているので、図1に示すヘッド部用ばね26よりも先に突出部用ばね27が圧縮することになる。
【0067】
そうすると、図7Cに示すように、突出部22に対して前進したヘッド本体21のヘッド本体側押し付け面36により清掃体1が内面65に押し付けられることになる。このとき、清掃体1は突出部側押し付け面37により凹所63の内面65の上下方向中央部分に既に接触しており、そこから上方向及び下方向に凹所63の内面65に順次接触していくことになる。このため、清掃体1と凹所63の内面65との間に空気6が閉じ込められることが抑制される。本実施形態では、清掃体1と凹所63の内面65との間に空気6が閉じ込められることが抑制されるので、図7Cに示すように、清掃体1を凹所63の内面65の全域に押し付けることができる。
【0068】
なお、図7Cの状態において、突出部用ばね27よりも弾性力が強いヘッド部用ばね26が圧縮し始めることになる。すなわち、ヘッド部12全体が後退可能となる。これにより、所定の押圧力でヘッド部12に掛け回された清掃体1をフェルール60に押し付けることができる。
【0069】
図7Dに示すように、作業者がヘッド部12(清掃工具10)をレンズプレート62とは反対側へ移動させると、清掃体1が凹所63の内面65から引き剥がされる。そして、凹所63の内面65上に付着していたゴミ5は、接触面2側に吸着される。本実施形態では、清掃体1を凹所63の内面65の全域に押し付けることができるので、図6Dに示すように、凹所63の内面65の全域に付着していたゴミ5は、接触面2側に吸着されている。すなわち、図6Dの右側の図に示すように、比較例の清掃工具10と比べると、清掃範囲3が狭くなってしまうことを抑制することができる。
【0070】
前述したように、本実施形態の清掃工具10では、突出部側押し付け面37は、ヘッド本体側押し付け面36の中央部分に配置されている。そして、清掃時には突出部側押し付け面37が、ヘッド本体側押し付け面36から突出している。これにより、ヘッド部12の先端部分における清掃体1の曲率を小さくし、清掃体1を縁65Bに接触するよりも先に凹所63の内面65に接触させることができる。すなわち、清掃体1と凹所63の内面65との間に空気6が閉じ込められることを抑制することができる。したがって、清掃体1を凹所63の内面65の全域に押し付けることができ、清掃範囲3が狭くなってしまうことを抑制することができる。
【0071】
なお、前述したように、本実施形態の清掃工具10では、突出部22の突出側の端部がテーパ状に形成されている。これにより、清掃体1と縁65Bとの間に空気6が逃げる隙間がさらにできることになるので、清掃体1と凹所63の内面65との間に空気6が閉じ込められることをさらに抑制することができる。
【0072】
<変形例>
図8A図8Cは、ヘッド部12の変形例を示す斜視図である。ヘッド部12の先端部分における清掃体1の曲率を小さくし、清掃体1を縁65Bに接触するよりも先に凹所63の内面65に接触させることができれば、前述のヘッド部12の構成に限られない。図8A図8Cに示す変形例のヘッド部12を有する清掃工具10によっても、清掃体1と凹所63の内面65との間に空気6が閉じ込められることを抑制することができる。したがって、清掃体1を凹所63の内面65の全域に押し付けることができ、清掃範囲3が狭くなってしまうことを抑制することができる。
【0073】
図8Aは、突出部側押し付け面37は、ヘッド本体側押し付け面36の左右方向の中央に配置されているが、ヘッド本体側押し付け面36の下端に位置している。なお、ヘッド本体側押し付け面36の左右方向の中央に配置されているが、ヘッド本体側押し付け面36の上端に位置していても良い。
【0074】
図8Bは、突出部側押し付け面37は、ヘッド本体側押し付け面36の上下方向の中央に配置されているが、ヘッド本体側押し付け面36の左端から右端まで位置している。これによっても、突出部側押し付け面37が、ヘッド本体側押し付け面36から突出したときに、ヘッド部12の先端部分における清掃体1の曲率を小さくし、清掃体1を縁65Bに接触するよりも先に内面65に接触させることができる。
【0075】
図8Cは、突出部側押し付け面37は、ヘッド本体側押し付け面36の左端から右端まで位置すると共に、ヘッド本体側押し付け面36の下端に位置している。これによっても、突出部側押し付け面37が、ヘッド本体側押し付け面36から突出したときに、ヘッド部12の先端部分における清掃体1の曲率を小さくし、清掃体1を縁65Bに接触するよりも先に内面65に接触させることができる。
【0076】
===第2実施形態===
<参考例の清掃工具10の清掃の様子>
図9A及び図9Bは、参考例の清掃工具10において清掃体1を搬送する様子を示す説明図である。
【0077】
図9Aに示す参考例の清掃工具10では、突出部22が、ヘッド本体21に対して大きく突出した状態である。すなわち、図9Aに示す参考例の清掃工具10では、突出部側押し付け面37が、ヘッド本体側押し付け面36から大きく突出している状態である。図9Aは、この状態のまま、清掃体1をヘッド部12に搬送する様子を示している。清掃体1をヘッド部12に搬送すると、清掃体1が図9Aの矢印に示す方向に移動する。このとき、突出部側押し付け面37がヘッド本体側押し付け面36から突出している状態なので、清掃体1は、突出部側押し付け面37に摩擦を生じさせながら移動することになる。
【0078】
このとき、突出部22の先端が受ける摩擦力の方向は、清掃体1の搬送方向であり、突出部22の突出方向に垂直な方向である。このような摩擦力により、図9Bに示すように、突出部側押し付け面37がヘッド本体側押し付け面36から大きく突出したまま清掃体1を搬送することで、突出部22の先端を破損してしまうことがある。
【0079】
<第2実施形態の清掃工具10の清掃の様子>
図10A図10Cは、第2実施形態の清掃工具10を使用してレンズプレート62を清掃する様子の前半部分を示す説明図である。
【0080】
図10Aは、フェルール60の清掃前の第2実施形態の清掃工具10を示している。第2実施形態の清掃工具10では、第1実施形態の清掃工具10と同様に、ヘッド部12は、ヘッド本体21と、突出部22と、突出部用ばね27とを有する。そして、第2実施形態の清掃工具10では、第1実施形態の清掃工具10と同様に、突出部22は、ヘッド本体21に対して移動可能である。但し、図10Aに示すフェルール60の清掃前の時点では、突出部22の突出部側押し付け面37がヘッド本体21のヘッド本体側押し付け面36から突出していない(後退した状態である)。また、第2実施形態の清掃工具10では、突出部用ばね27の後端部は、突出部用ばね受け部14に保持されている。ここで、突出部用ばね受け部14は、第1実施形態の清掃工具10と異なり、ヘッド本体21とは別に設けられている。すなわち、突出部用ばね受け部14は、ヘッド本体21に対して移動可能である。したがって、第2実施形態の清掃工具10では、突出部用ばね受け部14と、突出部用ばね27と、突出部22とが、ヘッド本体21に対して一体的に移動可能である。
【0081】
作業者がヘッド部12(清掃工具10)をレンズプレート62側へ移動させると、図10Bに示すように、突出部用ばね受け部14がレンズプレート62側へ移動する。これにより、突出部用ばね27を介して突出部22もレンズプレート62側へ移動する。突出部22は、ヘッド本体21に対して移動可能であるため、突出部用ばね受け部14がレンズプレート62側へ移動するのに伴って、突出部22がヘッド本体21に対してレンズプレート62側へ移動する。すなわち、突出部22がヘッド本体21に対して突出する側に移動する。そうすると、図10Cに示すように、突出部側押し付け面37がヘッド本体側押し付け面36から突出する。
【0082】
なお、図10Cに示す状態以降のフェルール60の清掃の様子は、図7A図7Dに示す第1実施形態の清掃工具10の清掃の様子と同様である。すなわち、第2実施形態の清掃工具10でも、突出部側押し付け面37は、ヘッド本体側押し付け面36の中央部分に配置されている。そして、清掃時には突出部側押し付け面37が、ヘッド本体側押し付け面36から突出している。これにより、ヘッド部12の先端部分における清掃体1の曲率を小さくし、清掃体1を縁65Bに接触するよりも先に凹所63の内面65に接触させることができる。すなわち、清掃体1と凹所63の内面65との間に空気6が閉じ込められることを抑制することができる。したがって、清掃体1を凹所63の内面65の全域に押し付けることができ、清掃範囲3が狭くなってしまうことを抑制することができる。
【0083】
図11A図11Cは、第2実施形態の清掃工具10を使用してレンズプレート62を清掃する様子の後半部分を示す説明図である。
【0084】
図11Aは、清掃体1を凹所63の内面65に押し付けた直後の第2実施形態の清掃工具10の様子を示している。図11Aに示す状態では、突出部22の突出部側押し付け面37がヘッド本体21のヘッド本体側押し付け面36から突出している。図11Aに示す状態から、作業者がヘッド部12(清掃工具10)をレンズプレート62側とは反対側へ移動させると、図11Bに示すように、突出部用ばね受け部14がレンズプレート62側とは反対側へ移動する。これにより、突出部用ばね27を介して突出部22もレンズプレート62側とは反対側へ移動する。突出部22は、ヘッド本体21に対して移動可能であるため、突出部用ばね受け部14がレンズプレート62側とは反対側へ移動するのに伴って、突出部22がヘッド本体21に対してレンズプレート62側とは反対側へ移動する。すなわち、突出部22がヘッド本体21に対して後退する側に移動する。そうすると、図11Cに示すように、突出部側押し付け面37がヘッド本体側押し付け面36よりも後退する。なお、図11Cに示す状態では、突出部22とヘッド本体21との位置関係が図10Aに示す状態と同じになっている。すなわち、図11Cに示す状態では、図10Aに示す状態に戻っている。つまり、図11Cに示す状態は、突出部22の突出部側押し付け面37がヘッド本体21のヘッド本体側押し付け面36から突出していない(後退した状態である)。
【0085】
本実施形態では、突出部側押し付け面37がヘッド本体側押し付け面36よりも後退した後に、清掃体1がヘッド部12に搬送される。清掃体1をヘッド部12に搬送すると、清掃体1が図11Cの矢印に示す方向に移動する。このとき、突出部側押し付け面37がヘッド本体側押し付け面36よりも後退している状態なので、清掃体1は、ヘッド本体側押し付け面36上を移動することになる。これにより、突出部22の先端を破損してしまうことを抑制することができる。
【0086】
なお、前述では、突出部側押し付け面37がヘッド本体側押し付け面36から後退した後に、清掃体1がヘッド部12に搬送されていたが、フェルール60の清掃前の、突出部側押し付け面37がヘッド本体側押し付け面36から突出する前に清掃体1がヘッド部12に搬送されても良い。例えば、図11Aに示す状態の時に清掃体1がヘッド部12に搬送されても良い。これによっても、突出部22の先端を破損してしまうことを抑制することができる。
【0087】
なお、本実施形態では、清掃体1がヘッド部12に搬送される時点では、突出部22の突出部側押し付け面37がヘッド本体21のヘッド本体側押し付け面36から後退した状態でなくても良い。突出部側押し付け面37とヘッド本体側押し付け面36との間に段差が無くフラットな状態であっても良いし、突出部側押し付け面37がヘッド本体側押し付け面36から少しだけ突出した状態であっても良い。突出部側押し付け面37がヘッド本体側押し付け面36から大きく突出している状態から、突出部側押し付け面37が後退したときに、清掃体1がヘッド部12に搬送されて良い。言い換えれば、ヘッド部12をフェルール60に押し付ける前に、突出部側押し付け面37がヘッド本体側押し付け面36に対して所定の位置にある状態(以下、「第1状態」と呼ぶことがある。)から、突出部側押し付け面37がヘッド本体側押し付け面36に対して第1状態よりも突出する第2状態となっても良い。そして、送り機構13が、第1状態のときに、清掃体1をヘッド部12に搬送しても良い。これによっても、突出部22の先端を破損してしまうことを抑制することができる。
【0088】
図12A図12Cは、第2実施形態の清掃工具10の突出機構の例を示す説明図である。
【0089】
前述したように、本実施形態の清掃工具10では、突出部用ばね受け部14と、突出部用ばね27と、突出部22とが、ヘッド本体21に対して一体的に移動可能である。図12A図12Cでは、突出部用ばね受け部14と、突出部用ばね27と、突出部22とが、ヘッド本体21に対して突出(及び後退)するような突出機構の例を示している。
【0090】
図12Aに示すように、本実施形態の清掃工具10では、筒体11をさらに有している。筒体11は、ヘッド部12を内部に収容する部材である。筒体11は、内側筐体部16と、外側筐体部17とを有する。
【0091】
内側筐体部16は、ヘッド部12を内部に収容する部材である。また、内側筐体部16は、外側筐体部17に対して移動可能である。内側筐体部16は、前側の端面に内側端面16Aが設けられている。内側端面16Aは、後述する光コネクタ70のハウジング69に接触する部分である。なお、内側端面16Aは、後述する外側筐体部17の外側端面17Aよりも前に位置している。
【0092】
内側筐体部16と、突出部用ばね受け部14との間には、回転部18が設けられている。回転部18は、内側筐体部16の移動(直線運動)を、突出部用ばね受け部14の反対方向の移動(直線運動)に変換する部材である。回転部18は、後述する外側筐体部17に固定されている。内側筐体部16が外側筐体部17に対して後方向に移動したとき、回転部18を介して突出部用ばね受け部14が前方向に移動する。また、内側筐体部16が外側筐体部17に対して前方向に移動したとき、回転部18を介して突出部用ばね受け部14が後方向に移動する。
【0093】
外側筐体部17は、内側筐体部16を内部に収容する部材である。また、外側筐体部17は、内側筐体部16を移動可能に収容している。外側筐体部17は、前側の端面に外側端面17Aが設けられている。外側端面17Aは、後述する光コネクタ70のハウジング69に接触する部分である。なお、外側端面17Aは、内側筐体部16の内側端面16Aよりも後に位置している。
【0094】
図12Aに示すように、本実施形態のフェルール60では、ハウジング69がさらに設けられている。フェルール60と、ハウジング69とにより、光コネクタ70が構成されている。ハウジング69は、フェルール60を内部に収容する部材である。ハウジング69には、内側筐体部16の内側端面16Aと、外側筐体部17の外側端面17Aとが接触する
【0095】
図12Aでは、光コネクタ70の清掃前の本実施形態の清掃工具10を示している。作業者が清掃工具10を光コネクタ70側へ移動させると、図12Bに示すように、外側筐体部17の外側端面17Aよりも前に位置している内側筐体部16の内側端面16Aが、光コネクタ70のハウジング69に接触する。清掃工具10を光コネクタ70側へさらに移動させると、ハウジング69に接触した内側筐体部16は、ハウジング69から後方向の押圧力を受ける。前述したように、内側筐体部16は、外側筐体部17に対して移動可能であるから、ハウジング69側から受ける押圧力により、内側筐体部16が外側筐体部17に対して後退する。そうすると、図12Bに示すように、内側筐体部16が後方向に移動したとき、回転部18を介して突出部用ばね受け部14が前方向に移動する。これにより、突出部用ばね27を介して突出部22も光コネクタ70側へ移動する。突出部22は、ヘッド本体21に対して移動可能であるため、突出部用ばね受け部14が光コネクタ70側へ移動するのに伴って、突出部22がヘッド本体21に対して光コネクタ70側へ移動する。すなわち、突出部22がヘッド本体21に対して突出する側に移動する。そうすると、図12Cに示すように、突出部側押し付け面37がヘッド本体側押し付け面36から突出する。
【0096】
作業者が清掃工具10を光コネクタ70側へ移動させると、図12Cに示すように、外側筐体部17の外側端面17Aが、光コネクタ70のハウジング69に接触する。なお、内側筐体部16の内側端面16Aも、光コネクタ70のハウジング69に接触したままである。清掃工具10を光コネクタ70側へさらに移動させると、ハウジング69に接触した外側筐体部17及び内側筐体部16は、ハウジング69から後方向の押圧力を受ける。ハウジング69側から受ける押圧力により、外側筐体部17及び内側筐体部16がヘッド部12に対して後退する。そうすると、ヘッド部12が外側筐体部17及び内側筐体部16に対して前進する。なお、このとき、外側筐体部17と内側筐体部16とが一体に移動しているので、回転部18は動作しない。これにより、ヘッド本体21に対して突出する突出部22を光コネクタ70に押し当てることができる。
【0097】
本実施形態の清掃工具10では、図12A図12Cに示す突出機構を有していなくても良い。例えば、手動により突出部用ばね受け部14と、突出部用ばね27と、突出部22とを、ヘッド本体21に対して一体的に突出させても良い。
【0098】
===その他===
前述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0099】
1 清掃体、2 接触面、3 清掃範囲、5 ゴミ、
6 空気、10 清掃工具、11 筒体、12 ヘッド部、
13 送り機構、14 突出部用ばね受け部、16 内側筐体部、
16A 内側端面、17 外側筐体部、17A 外側端面、
18 回転部、21 ヘッド本体、22 突出部、
26 ヘッド部用ばね、27 突出部用ばね、31 供給リール、
31A 供給リール支持軸、32 巻取リール、
32A 巻取リール支持軸、36 ヘッド本体側押し付け面、
37 突出部側押し付け面、38 テーパ面、60 フェルール、
61 フェルール本体、62 レンズプレート、63 凹所、
64 レンズ、65 内面、65A 前側端面(突き当て面)、
65B 縁、66 側面、67 底面、68 レンズ面、
69 ハウジング、70 光コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12