(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】三次元造形における基準マーク自動作成方法、三次元造形方法、基準マーク自動作成プログラム及び三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20221116BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20221116BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221116BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221116BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y30/00
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2021571112
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2020001068
(87)【国際公開番号】W WO2021144883
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘規
(72)【発明者】
【氏名】山崎 恭輔
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-200872(JP,A)
【文献】特開2006-154884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/393
B33Y 50/02
B33Y 30/00
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元造形装置が造形ステージ上で三次元造形物を造形する際に当該三次元造形物の造形位置を決める基準位置となる基準マークを自動作成する、三次元造形における基準マーク自動作成方法であって、
造形する三次元造形物の三次元形状データに基づいて当該三次元造形物の外形を前記造形ステージ上に投影した投影図を求める工程と、
4辺が前記造形ステージのXY座標のX軸又はY軸に平行で且つ前記三次元造形物の投影図に外接する四角形を求める工程と、
前記三次元造形物の投影図の外側に位置し且つ前記四角形の所定の頂点に対して所定の位置関係にある前記造形ステージ上の位置を前記基準マークの形成位置として設定する工程と、
前記三次元造形装置が前記三次元造形物を造形する工程の前工程又は前記三次元造形物の最初の層を造形する工程において、前記三次元造形装置が前記造形ステージ上の前記基準マークの形成位置に前記基準マークを形成する工程と
を含む、三次元造形における基準マーク自動作成方法。
【請求項2】
三次元造形装置が造形ステージ上で三次元造形物を造形する際に当該三次元造形物の造形位置を決める基準位置となる基準マークを自動作成する、三次元造形における基準マーク自動作成方法であって、
造形する三次元造形物の三次元形状データから当該三次元造形物のX方向とY方向の最大座標値Xmax ,Ymax と最小座標値Xmin ,Ymin を求める工程と、
前記造形ステージ上において前記三次元造形物のX方向とY方向の最大座標値Xmax ,Ymax と最小座標値Xmin ,Ymin を通ってX方向とY方向に延びる4本の直線によって囲まれる四角形を求める工程と、
前記四角形の外側に位置し且つ当該四角形の所定の頂点に対して所定の位置関係にある前記造形ステージ上の位置を前記基準マークの形成位置として設定する工程と、
前記三次元造形装置が前記三次元造形物を造形する工程の前工程又は前記三次元造形物の最初の層を造形する工程において、前記三次元造形装置が前記造形ステージ上の前記基準マークの形成位置に前記基準マークを形成する工程と
を含む、三次元造形における基準マーク自動作成方法。
【請求項3】
前記造形ステージ上で分離した複数の三次元造形物を一括して造形する場合に、当該複数の三次元造形物を一塊の三次元造形物とみなして当該複数の三次元造形物を内包する1つの前記四角形を求める、請求項1又は2に記載の三次元造形における基準マーク自動作成方法。
【請求項4】
前記造形ステージ上で分離した複数の三次元造形物を一括して造形する場合に、前記三次元造形物毎に前記四角形を求めてその四角形毎に前記基準マークの形成位置を設定する、請求項1又は2に記載の三次元造形における基準マーク自動作成方法。
【請求項5】
前記三次元造形物毎に求める前記四角形が重なる場合に、前記四角形が重ならないように前記複数の三次元造形物の配置を変更する、請求項4に記載の三次元造形における基準マーク自動作成方法。
【請求項6】
前記三次元造形物毎に求める前記四角形が重なる場合に、前記四角形が重なる2つ以上の三次元造形物を一塊の三次元造形物とみなして当該2つ以上の三次元造形物を内包する1つの前記四角形を求める、請求項4に記載の三次元造形における基準マーク自動作成方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の三次元造形における基準マーク自動作成方法により形成した前記基準マークの位置を基準にして前記三次元造形物の造形位置を決めて前記造形ステージ上に前記三次元造形物を造形する、三次元造形方法。
【請求項8】
三次元造形装置が造形ステージ上で三次元造形物を造形する際に当該三次元造形物の造形位置を決める基準位置となる基準マークを自動作成する基準マーク自動作成プログラムであって、
造形する三次元造形物の三次元形状データに基づいて当該三次元造形物の外形を前記造形ステージ上に投影した投影図を求める処理と、
4辺が前記造形ステージのXY座標のX軸又はY軸に平行で且つ前記三次元造形物の投影図に外接する四角形を求める処理と、
前記三次元造形物の投影図の外側に位置し且つ前記四角形の所定の頂点に対して所定の位置関係にある前記造形ステージ上の位置を前記基準マークの形成位置として設定する処理と、
前記三次元造形装置が前記三次元造形物を造形する工程の前工程又は前記三次元造形物の最初の1層目を造形する工程において、前記三次元造形装置が前記造形ステージ上の前記基準マークの形成位置に前記基準マークを形成する処理と
を含む、基準マーク自動作成プログラム。
【請求項9】
三次元造形装置が造形ステージ上で三次元造形物を造形する際に当該三次元造形物の造形位置を決める基準位置となる基準マークを自動作成する基準マーク自動作成プログラムであって、
造形する三次元造形物の三次元形状データから当該三次元造形物のX方向とY方向の最大座標値Xmax ,Ymax と最小座標値Xmin ,Ymin を求める処理と、
前記造形ステージ上において前記三次元造形物のX方向とY方向の最大座標値Xmax ,Ymax と最小座標値Xmin ,Ymin を通ってX方向とY方向に延びる4本の直線によって囲まれる四角形を求める処理と、
前記四角形の外側に位置し且つ当該四角形の所定の頂点に対して所定の位置関係にある前記造形ステージ上の位置を前記基準マークの形成位置として設定する処理と、
前記三次元造形装置が前記三次元造形物を造形する工程の前工程又は前記三次元造形物の最初の1層目を造形する工程において、前記三次元造形装置が前記造形ステージ上の前記基準マークの形成位置に前記基準マークを形成する処理と
を含む、基準マーク自動作成プログラム。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の基準マーク自動作成プログラムを実行する制御部と、
前記基準マークを上方から撮像するカメラとを備え、
前記制御部は、前記基準マーク自動作成プログラムを実行することで、前記造形ステージ上に前記基準マークを形成すると共に、前記カメラで当該基準マークを撮像した画像を処理することで当該基準マークの位置を認識し、当該基準マークの位置を基準にして三次元造形物の造形位置を決めて前記造形ステージ上に前記三次元造形物を造形する、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、三次元造形装置(3Dプリンタ)が三次元造形物を造形する際に当該三次元造形物の造形位置を決める基準位置となる基準マークを自動作成する、三次元造形における基準マーク自動作成方法、三次元造形方法、基準マーク自動作成プログラム及び三次元造形装置に関する技術を開示したものである。
【背景技術】
【0002】
三次元造形装置においては、例えば特許文献1(特開2005-336547号公報)に記載されているように、三次元造形物を造形する造形ステージ(造形テーブル)上に設けられた基準マークの位置を基準にして三次元造形物の造形位置を決めて造形ステージ上に三次元造形物を造形するようにしたものがある。この三次元造形装置は、三次元造形物の造形を開始する際に基準マークの位置を画像認識してから三次元造形物の造形を開始したり、或は、造形の途中で基準マークの位置を再認識して造形位置のずれを補正したり、或は、造形の途中や造形完了後に造形ステージを別の装置へ移動させて造形ステージ上の三次元造形物に部品実装や他の処理を施す際に、基準マークの位置を画像認識して三次元造形物に対する部品実装位置や他の処理位置を決めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、三次元造形物の造形精度や部品実装精度等を高めるためには、基準マークの位置を三次元造形物の造形位置に対してある程度近付けて設定することが望ましい。そのため、造形する三次元造形物の形状やサイズ等に応じて作業者が最適だと思う位置に基準マークの位置を変更する場合がある。
【0005】
しかし、作業者が基準マークの最適な位置を判断するには、ある程度の経験と知識を必要とし、経験や知識の少ない作業者が最適だと思う位置は、必ずしも最適な位置ではない可能性がある。従って、造形する三次元造形物の形状やサイズ等に応じて最適な位置に基準マークの位置を変更する作業は、経験や知識の少ない作業者にとっては難しい作業であり、基準マークの位置を不適正な位置に変更してしまう人為的ミスが発生する可能性がある。しかも、造形する三次元造形物の形状やサイズ等を変更する毎に作業者が最適だと思う位置に基準マークの位置を変更する作業を行うのは面倒であり、その作業に時間がかかって生産性が低下するという欠点もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、三次元造形装置が造形ステージ上で三次元造形物を造形する際に当該三次元造形物の造形位置を決める基準位置となる基準マークを自動作成する、三次元造形における基準マーク自動作成方法であって、造形する三次元造形物の三次元形状データに基づいて当該三次元造形物の外形を前記造形ステージ上に投影した投影図を求める工程と、4辺が前記造形ステージのXY座標のX軸又はY軸に平行で且つ前記三次元造形物の投影図に外接する四角形を求める工程と、前記三次元造形物の投影図の外側に位置し且つ前記四角形の所定の頂点に対して所定の位置関係にある前記造形ステージ上の位置を前記基準マークの形成位置として設定する工程と、前記三次元造形装置が前記三次元造形物を造形する工程の前工程又は前記三次元造形物の最初の層を造形する工程において、前記三次元造形装置が前記造形ステージ上の前記基準マークの形成位置に前記基準マークを形成する工程とを含むようにしたものである。
【0007】
この基準マーク自動作成方法によれば、造形する三次元造形物の三次元形状データに基づいて幾何学的手法により造形ステージ上に基準マークの形成位置を自動的に設定して三次元造形装置が基準マークを形成するようにしているため、造形する三次元造形物の形状やサイズ等に応じて基準マークの位置を最適な位置に変更する作業を自動化することができる。これにより、造形する三次元造形物の形状やサイズ等に応じて作業者が最適だと思う位置に基準マークの位置を変更する作業を行わずに済み、作業者が基準マークの位置を誤って不適正な位置に変更してしまう人為的ミスを防止できると共に、造形する三次元造形物の形状やサイズ等を変更する準備作業を短縮できて、生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施例1の三次元造形における基準マーク自動作成方法を説明する図である。
【
図2】
図2は三次元造形装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は実施例1の基準マーク自動作成プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は実施例2の三次元造形における基準マーク自動作成方法を説明する図である。
【
図5】
図5は実施例2の基準マーク自動作成プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は実施例3の三次元造形における基準マーク自動作成方法を説明する図である。
【
図7】
図7は実施例4の三次元造形における基準マーク自動作成方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本明細書に開示した4つの実施例1~4を説明する。
【実施例1】
【0010】
図1乃至
図3に基づいて実施例1を説明する。
三次元造形装置は、造形ステージ11上で三次元造形物12を造形する3Dプリンタであり、
図2に示すように、造形ステージ11を水平方向及び/又は上下方向に移動させる造形ステージ駆動部13と、造形する三次元造形物12の三次元形状データに基づいて三次元造形物12を造形するインクジェットヘッドユニット等の造形ユニット14と、造形ステージ11上の基準マーク15等の撮像対象を上方から撮像するカメラ16と、作業者が入力操作するキーボード、マウス、タッチパネル等の入力操作部17と、後述する三次元造形物12の投影
図A、四角形B、基準マーク15等を表示する液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示部18と、後述する
図3の基準マーク自動作成プログラムや造形プログラム等の各種プログラムや造形する三次元造形物12の三次元形状データ等の各種データを記憶する記憶部19と、上述した造形ステージ駆動部13、造形ユニット14、カメラ16等の動作を制御する制御部20等を備えた構成となっている。
【0011】
三次元造形装置の制御部20は、1台又は複数台のコンピュータ(CPU)を用いて構成され、後述する
図3の基準マーク自動作成プログラムを実行することで、造形ユニット14を駆動して造形ステージ11上に少なくとも1つの基準マーク15を形成する。更に、制御部20は、カメラ16で当該基準マーク15を撮像してその画像を処理することで当該基準マーク15の位置(XY座標値)を認識し、当該基準マーク15の位置を基準にして三次元造形物12の造形位置を決め、造形する三次元造形物12の三次元形状データに基づいて造形ステージ11上に三次元造形物12を造形する動作を制御する。
【0012】
尚、造形ステージ11の上面には、三次元造形物12の造形後の剥離を容易にするための処理(例えば薬剤塗布等の化学的処理)を施したり、或は、剥離シートを装着するようにしても良い。
【0013】
次に、
図1を参照して本実施例1の基準マーク15の自動作成方法を説明する。
本実施例1では、造形ステージ11上で1個の三次元造形物12を造形する。
【0014】
まず、造形する三次元造形物12の三次元形状データに基づいて当該三次元造形物12の外形を造形ステージ11上に投影した投影
図Aを求める。この際、三次元造形物12の三次元形状データは、三次元造形装置が三次元造形物12を造形する際の設計図となる3DCADデータや3DCG(3Dコンピュータグラフィックス)のデータを使用したり、或は、実物を3Dスキャナでスキャンして作成した三次元形状データを使用しても良い。この場合、作成する三次元造形物12の投影
図Aは、造形ステージ11上に投影した三次元造形物12の外形の輪郭(外郭線)のみで良く、それ以外の線は不要である。また、投影
図Aの位置(後述する四角形Bの位置)が造形ステージ11の中央寄りの位置となるように投影
図Aの位置を自動調整するセンタリング機能を持たせるようにしても良い。
【0015】
三次元造形物12の投影
図Aを作成する際に、三次元造形物12の形状がその下面よりも出っ張るオーバーハング部が無い形状(つまり下面が最大となる形状)の場合には、投影
図Aは当該三次元造形物12の下面図と同じ図形になるが、下面よりも出っ張るオーバーハング部が有る三次元造形物12の場合には、投影
図Aはオーバーハング部も造形ステージ11上に投影された図形となる。オーバーハング部が有る三次元造形物12をインクジェット方式で造形する場合には、三次元造形物12を造形する際に、オーバーハング部をその下方から支えるサポート材を造形してから、当該サポート材上にオーバーハング部を造形し、造形終了後に当該サポート材を溶融液等で除去する。
【0016】
三次元造形物12の投影
図Aの作成後、4辺が造形ステージ11のXY座標のX軸又はY軸に平行で且つ三次元造形物12の投影
図Aに外接する四角形Bを求める。投影
図Aに外接する四角形Bは、投影
図A全体を内包し且つ投影
図Aの少なくとも3つの頂点a,b,cに接する四角形である。
【0017】
この後、三次元造形物12の投影
図Aの外側に位置し且つ四角形Bの所定の頂点d,eに対して所定の位置関係にある造形ステージ11上の位置を基準マーク15の形成位置として設定する。本実施例1では、「所定の頂点」として、四角形Bの対角方向の2つの頂点d,eを選択し、この2つの頂点d,eに対してX方向とX方向に所定距離[ΔX,ΔY]、[-ΔX,-ΔY]だけ離れた四角形Bの外側の位置を基準マーク15の形成位置として設定する。
【0018】
尚、三次元造形物12の投影
図Aの外側であれば、四角形Bの内側に基準マーク15の形成位置を設定しても良い。四角形Bの所定の頂点d,eと基準マーク15の形成位置との間の距離[ΔX,ΔY]、[-ΔX,-ΔY]は、予め決められた一定値としても良いが、ユーザー(作業者)が手動操作で設定する機能を持たせるようにしても良い。或は、造形する三次元造形物12の形状やサイズ等に応じて距離[ΔX,ΔY]、[-ΔX,-ΔY]を自動変更する機能を持たせるようにしても良い。
【0019】
基準マーク15の形成位置の設定後、三次元造形装置が三次元造形物12を造形する工程の前工程又は三次元造形物12の最初の層を造形する工程において、三次元造形装置が造形ユニット14を駆動して造形ステージ11上の基準マーク15の形成位置に基準マーク15を形成する。この際、基準マーク15は、三次元造形物12を造形する造形材又はサポート材により形成すれば良く、要は、カメラ16の撮像画像から基準マーク15を認識可能な材料で形成すれば良い。尚、造形ステージ11上に剥離シートが装着されている場合には、「造形ステージ11上」とは「剥離シート上」を意味し、剥離シート上に基準マーク15を形成すれば良い。
【0020】
以上説明した本実施例1の基準マーク15の自動作成は、三次元造形装置が三次元造形物12を造形する工程の前工程で制御部20によって
図3の基準マーク自動作成プログラムに従って次のように実行される。
【0021】
三次元造形装置の制御部20が
図3の基準マーク自動作成プログラムを起動すると、まずステップ101で、造形する三次元造形物12の三次元形状データを読み込む。事前に、造形する三次元造形物12の三次元形状データが記憶部19に記憶されていれば、記憶部19から三次元形状データを読み込めば良い。事前に三次元形状データが記憶部19に記憶されていなければ、作業者等が三次元形状データを入力するのを待って読み込めば良い。
【0022】
この後、ステップ102に進み、造形する三次元造形物12の三次元形状データに基づいて造形ステージ11上への当該三次元造形物12の投影
図Aを求める。この後、ステップ103に進み、4辺が造形ステージ11のXY座標のX軸又はY軸に平行で且つ三次元造形物12の投影
図Aに外接する四角形Bを求める。
【0023】
この後、ステップ104に進み、三次元造形物12の投影
図Aの外側に位置し且つ四角形Bの所定の頂点d,eに対して所定の位置関係にある造形ステージ11上の位置を基準マーク15の形成位置として設定する。
【0024】
次のステップ105で、三次元造形装置が三次元造形物12を造形する工程の前工程又は三次元造形物12の最初の層を造形する工程において、三次元造形装置が造形ユニット14を駆動して造形ステージ11上の基準マーク15の形成位置に基準マーク15を形成して、本プログラムを終了する。
【0025】
三次元造形物12の最初の層を造形する工程で、同時に基準マーク15を形成する場合には、造形開始時には造形ステージ11上の基準マーク15の形成位置と三次元造形物12の造形位置との位置関係が分かっているため、造形開始時には基準マーク15の位置を画像認識する必要はない。
【0026】
一方、三次元造形物12を造形する工程の前工程で基準マーク15を形成した場合には、基準マーク15の形成後に造形ステージ11の位置がずれる可能性があるため、三次元造形装置の制御部20は、造形開始時にカメラ16で当該基準マーク15を撮像してその画像を処理することで当該基準マーク15の位置を認識し、当該基準マーク15の位置を基準にして三次元造形物12の造形位置を決めて造形を開始する。
【0027】
この造形の途中で基準マーク15の位置を画像処理により再認識して造形位置のずれを補正したり、或は、造形の途中や造形完了後に造形ステージ11を別の装置へ移動させて造形ステージ11上の三次元造形物12に部品実装や他の処理を施す際に、基準マーク15の位置を画像認識して三次元造形物12に対する部品実装位置や他の処理位置を決める。また、別の装置から造形ステージ11を三次元造形装置に戻して造形を継続する場合も、基準マーク15の位置を画像認識して三次元造形物12の造形位置を決めてから造形を継続する。
【0028】
以上説明した本実施例1によれば、造形する三次元造形物12の三次元形状データに基づいて幾何学的手法により造形ステージ11上に基準マーク15の形成位置を自動的に設定して三次元造形装置が基準マーク15を形成するようにしているため、造形する三次元造形物12の形状やサイズ等に応じて基準マーク15の位置を最適な位置に変更する作業を自動化することができる。これにより、造形する三次元造形物12形状やサイズ等に応じて作業者が最適だと思う位置に基準マーク15の位置を変更する作業を行わずに済み、作業者が基準マーク15の位置を誤って不適正な位置に変更してしまう人為的ミスを防止できると共に、造形する三次元造形物12の形状やサイズ等を変更する準備作業を短縮できて、生産性を向上できる。
【実施例2】
【0029】
次に、
図4及び
図5を用いて実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同じ部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0030】
前記実施例1では、造形ステージ11上への三次元造形物12の投影
図Aを求めてから、その投影
図Aに外接する四角形Bを求めるようにしたが、本実施例2では、三次元造形物12の投影
図Aを求める処理を省略して、前記実施例1と実質的に同様の四角形Bを次のようにして求める。
【0031】
本実施例2で実行する
図5の基準マーク自動作成プログラムは、前記実施例1で実行する
図3の基準マーク自動作成プログラムのステップ101とステップ102の処理をステップ101aとステップ102aの処理に変更しただけである。
【0032】
本実施例2では、三次元造形装置の制御部20は、まずステップ101で、造形する三次元造形物12の三次元形状データを読み込んだ後、ステップ102aに進み、造形する三次元造形物12の三次元形状データから当該三次元造形物12のX方向とY方向の最大座標値Xmax ,Ymax と最小座標値Xmin ,Ymin を求める(
図4参照)。
【0033】
この後、ステップ103aに進み、造形ステージ11上において三次元造形物12のX方向とY方向の最大座標値Xmax ,Ymax と最小座標値Xmin ,Ymin を通ってX方向とY方向に延びる4本の直線によって囲まれる四角形Bを求める(
図4参照)。
【0034】
この後、ステップ104に進み、四角形Bの外側に位置し且つ当該四角形Bの所定の頂点d,eに対して所定の位置関係にある造形ステージ11上の位置を基準マーク15の形成位置として設定する。
【0035】
尚、前記実施例1では、三次元造形物12の投影
図Aを求めるため、投影
図Aの外側であれば、四角形Bの内側に基準マーク15を形成しても、造形する三次元造形物12の下に当該基準マーク15が隠れることはなく、問題ない。しかし、本実施例2では、三次元造形物12の投影
図Aを求めないため、四角形Bの内側に基準マーク15の形成位置を設定した場合、造形する三次元造形物12の下に当該基準マーク15が隠れてしまうか否かを判断できない。そこで、本実施例2では、基準マーク15の形成位置は、四角形Bの外側のみに設定可能としている。
【0036】
この後、ステップ105に進み、前記実施例1と同様の方法で、三次元造形装置が造形ユニット14を駆動して造形ステージ11上の基準マーク15の形成位置に基準マーク15を形成して、本プログラムを終了する。
【0037】
以上説明した本実施例2においても、前記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0038】
次に、
図6を用いて実施例3を説明する。但し、前記実施例1,2と実質的に同じ部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0039】
前記実施例1,2では、造形ステージ11上で1個の三次元造形物12を造形する場合の例で説明したが、
図6に示す実施例3では、造形ステージ11上で分離した複数の三次元造形物12を一括して造形する場合の例を説明する。
【0040】
本実施例3では、造形ステージ11上で造形する複数の三次元造形物12を一塊の三次元造形物とみなして当該複数の三次元造形物12を内包する1つの四角形Bを求める。この四角形Bは、前記実施例1又は前記実施例2と同様の方法で作成すれば良い。
【0041】
この後、前記実施例1又は前記実施例2と同様の方法で、四角形Bの所定の頂点d,eに対して所定の位置関係にある造形ステージ11上の位置を基準マーク15の形成位置として設定して、三次元造形装置が造形ユニット14を駆動して造形ステージ11上の基準マーク15の形成位置に基準マーク15を形成する。
【0042】
尚、複数の三次元造形物12を内包する1つの四角形Bを求める際に、四角形Bのサイズが小さくなるように複数の三次元造形物12の配置を最適化する機能を持たせるようにしても良い。
【実施例4】
【0043】
次に、
図7を用いて実施例4を説明する。但し、前記実施例1,2と実質的に同じ部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0044】
前記実施例3では、造形ステージ11上で造形する複数の三次元造形物12を一塊の三次元造形物とみなして当該複数の三次元造形物12を内包する1つの四角形Bを求めるようにしたが、
図7に示す実施例4では、造形ステージ11上で分離した複数の三次元造形物12を一括して造形する場合に、三次元造形物12毎に四角形Bを求めてその四角形B毎に基準マーク15の形成位置を設定する。各四角形Bは、各三次元造形物12に対して前記実施例1又は前記実施例2と同様の方法で作成すれば良い。
【0045】
この場合、造形ステージ11上で造形する複数の三次元造形物12の間隔が狭いと、三次元造形物12毎に求める四角形Bが重なる可能性がある。
【0046】
そこで、三次元造形物12毎に求める四角形Bが重なる場合には、四角形Bが重ならないように複数の三次元造形物12の配置を変更する。
【0047】
或は、三次元造形物12毎に求める四角形Bが重なる場合には、四角形Bが重なる2つ以上の三次元造形物12を一塊の三次元造形物とみなして当該2つ以上の三次元造形物12を内包する1つの四角形Bを求めるようにしても良い。
【0048】
ところで、本実施例4において、前記実施例1と同様の方法で基準マーク15の形成位置を設定する場合には、各三次元造形物12の投影
図Aを求めるため、いずれかの四角形Bに基づいて設定する基準マーク15の形成位置が他の四角形Bの内側に位置しても、当該他の四角形Bの内側に位置する三次元造形物12の投影
図Aの外側であれば、当該三次元造形物12の下に基準マーク15が隠れることはないと判断できる。
【0049】
そこで、本実施例4において、前記実施例1と同様の方法で基準マーク15の形成位置を設定する場合、いずれかの四角形Bに基づいて設定する基準マーク15の形成位置が他の四角形Bの内側の三次元造形物12の投影
図Aの内側に位置する場合には、当該基準マーク15の形成位置が当該三次元造形物12の投影
図Aの外側となるように当該三次元造形物12の配置を変更したり、或は、基準マーク15の形成位置が三次元造形物12の投影
図Aの内側となる2つ以上の三次元造形物12を一塊の三次元造形物とみなして当該2つ以上の三次元造形物12を内包する1つの四角形Bを求めるようにしても良い。
【0050】
また、本実施例4において、前記実施例2と同様の方法で基準マーク15の形成位置を設定する場合には、各三次元造形物12の投影
図Aを求めないため、いずれかの四角形Bの内側に基準マーク15の形成位置を設定した場合、造形する三次元造形物12の下に当該基準マーク15が隠れてしまうか否かを判断できない。
【0051】
そこで、本実施例4において、前記実施例2と同様の方法で基準マーク15の形成位置を設定する場合、いずれかの四角形Bに基づいて設定する基準マーク15の形成位置が他の四角形Bの内側に位置する場合には、当該基準マーク15の形成位置が全ての四角形Bの外側となるように当該三次元造形物12の配置を変更したり、或は、基準マーク15の形成位置が他の四角形Bの内側となる2つ以上の三次元造形物12を一塊の三次元造形物とみなして当該2つ以上の三次元造形物12を内包する1つの四角形Bを求めるようにしても良い。
【0052】
尚、本発明は、上記実施例1~4に限定されず、例えば、造形する三次元造形物12の形状や数を変更したり、形成する基準マーク15の数を変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
11…造形ステージ、12…三次元造形物、14…造形ユニット、15…基準マーク、16…カメラ、20…制御部、A…投影図、B…四角形