IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-光学積層体 図1
  • 特許-光学積層体 図2
  • 特許-光学積層体 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20221116BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20221116BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B32B17/10
C09J7/30
C09J201/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022032449
(22)【出願日】2022-03-03
(62)【分割の表示】P 2020194697の分割
【原出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083451
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2022-09-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】矢野 孝伸
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-209918(JP,A)
【文献】特開2001-113631(JP,A)
【文献】国際公開第2019/033078(WO,A1)
【文献】特開2013-184396(JP,A)
【文献】特開2006-150755(JP,A)
【文献】国際公開第2020/153259(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C03C 17/28-32
G06F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、接着剤層と、フィルムとを厚み方向一方側に向かって順に備え、
前記厚み方向一方側は、視認側であり、
下記のペンドロップ割れ試験において前記ガラス板が割れ始めるまでのペンの落下高さH1が15cm以上であり、
前記ガラス板の厚みは、10μm以上であり、
ナノインデンター法で測定される25℃における前記接着剤層の押込弾性率は、1GPa以上であり、
前記フィルムの厚みは、10μm以上である、光学積層体。
<ペンドロップ割れ試験>
周波数1Hz、昇温速度5℃/min、温度-40℃~150℃、ねじりモードの動的粘弾性試験により求められる25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が0.03MPaで、厚みが15μmである粘着剤層を前記光学積層体の厚み方向他方面に配置する。7g、ボール径0.7mmのボールペンを前記フィルムに向けて落下させる。ペンの落下高さを1cmずつ上げ、前記ガラス板に割れが確認できたときの高さをペンドロップ割れ試験における高さH1として取得する。
【請求項2】
下記のペンドロップ剥がれ試験において前記フィルムが剥がれ始めるまでのペンの落下高さH2が15cm以上である、請求項1に記載の光学積層体。
<ペンドロップ剥がれ試験>
前記粘着剤層を前記光学積層体の厚み方向他方面に配置する。7g、ボール径0.7mmのボールペンを前記フィルムに向けて落下させる。ペンの落下高さを30cmまで段階的に上げ、前記フィルムに剥がれが確認できたときの高さをペンドロップ剥がれ試験における高さH2として取得する。または、前記ガラス板に割れが発生した時は、割れ高さH1以上の剥がれ耐久性を有する、と判断する。
【請求項3】
周波数10Hz、昇温速度2℃/min、引張モードの動的粘弾性試験により求められる-100℃から-50℃における前記フィルムのtanδの平均が、0.04以上であり、前記動的粘弾性試験により求められる-100℃から-50℃における前記フィルムの引張貯蔵弾性率E’の平均が、3GPa以上、6GPa以下である、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記ガラス板と前記接着剤層との密着力が3.0kN/m以上であり、
前記フィルムと前記接着剤層との密着力が3.0kN/m以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記フィルムが、トリアセチルセルロールフィルムである、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記フィルムは、60μm以下の厚みを有する、請求項5に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記フィルムの前記厚み方向一方面に配置されるハードコート層をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を備える光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板と、接着剤層と、トリアセチルセルロースフィルムとを備える光学積層体が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。ガラス板は、光学特性に優れる一方、耐衝撃性が低い。耐衝撃性は、ガラス板が衝撃を受けたときに、ガラス板にクラックを含む損傷を抑制する性質である。
【0003】
特許文献1に記載の光学積層体は、有機ELディスプレイに備えられる。特許文献1に記載の光学積層体では、ガラス板の鉛筆硬度が測定される。鉛筆硬度は、鉛筆の芯をガラス板の表面(露出面)に直接接触させて、表面の傷の有無を評価して測定される。従って、特許文献1に記載の光学積層体が有機ELディスプレイに備えられるときには、ガラス板が視認側に配置され、トリアセチルセルロールフィルムが有機EL部材側に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-25899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、より高いレベルの耐衝撃性が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本願発明者らは、鋭意検討した結果、フィルムが視認側に配置される新規な光学積層体を見出し、かかる光学積層体が耐衝撃性に優れることを見出した。
【0007】
本発明(1)は、ガラス板と、接着剤層と、フィルムとを厚み方向一方側に向かって順に備え、前記厚み方向一方側は、視認側であり、下記のペンドロップ割れ試験において前記ガラス板が割れ始めるまでのペンの落下高さH1が15cm以上である、光学積層体を含む。
【0008】
<ペンドロップ割れ試験>
周波数1Hz、昇温速度5℃/min、温度-40℃~150℃、ねじりモードの動的粘弾性試験により求められる25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が0.03MPaで、厚みが15μmである粘着剤層を前記光学積層体の厚み方向他方面に配置する。7g、ボール径0.7mmのボールのペンを前記フィルムに向けて落下させる。ペンの落下高さを1cmずつ上げ、前記ガラス板に割れが確認できたときの高さをペンドロップ割れ試験における高さH1として取得する。
【0009】
本発明(2)は、下記のペンドロップ剥がれ試験において前記フィルムが剥がれ始めるまでのペンの落下高さH2が15cm以上である、(1)に記載の光学積層体を含む。
<ペンドロップ剥がれ試験>
前記粘着剤層を前記光学積層体の厚み方向他方面に配置する。7g、ボール径0.7mmのボールのペンを前記フィルムに向けて落下させる。ペンの落下高さを30cmまで段階的に上げ、前記フィルムに剥がれが確認できたときの高さをペンドロップ剥がれ試験における高さH2として取得する。または、前記ガラス板に割れが発生した時は、割れ高さH1以上の剥がれ耐久性を有する、と判断する。
【0010】
本発明(3)は、周波数10Hz、昇温速度2℃/min、引張モードの動的粘弾性試験により求められる-100℃から-50℃における前記フィルムのtanδの平均が、0.04以上であり、前記動的粘弾性試験により求められる-100℃から-50℃における前記フィルムの引張貯蔵弾性率E’の平均が、3GPa以上、6GPa以下である、(1)または(2)に記載の光学積層体を含む。
【0011】
本発明(4)は、前記ガラス板と前記接着剤層との密着力が3.0kN/m以上であり、前記フィルムと前記接着剤層との密着力が3.0kN/m以上である、(1)から(3)のいずれか一項に記載の光学積層体を含む。
【0012】
本発明(5)は、前記フィルムが、トリアセチルセルロールフィルムである、請求項(1)から(4)のいずれか一項に記載の光学積層体を含む。
【0013】
本発明(6)は、前記フィルムは、10μm以上、60μm以下の厚みを有する、(5)に記載の光学積層体を含む。
【0014】
本発明(7)は、前記フィルムの前記厚み方向一方面に配置されるハードコート層をさらに備える、請求項(1)から(6)いずれか一項に記載の光学積層体を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光学積層体は、フィルムが視認側に配置され、ペンドロップ割れ試験においてガラス板が割れ始めるまでのペンの落下高さH1が15cm以上であるので、耐衝撃性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の光学積層体の一実施形態の断面図である。
図2図2Aから図2Cは、密着力の測定方法の説明図である。図2Aは、装置の刃先をフィルムに切り込む態様である。図2Bは、刃先が、フィルムと接着剤層との間の界面に至り、それらの密着力を測定する態様である。図2Cは、刃先が、ガラス板と接着剤層との間の界面に至り、それらの密着力を測定する態様である。
図3図3は、図1に示す光学積層体を備える有機エレクトロルミネセンス表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<光学積層体1>
本発明の光学積層体の一実施形態を、図1から図3を参照して説明する。
【0018】
この光学積層体1は、例えば、面方向に延びる平板形状を有する。面方向は、光学積層体1の厚み方向に直交する。光学積層体1は、有機エレクトロルミネセンス表示装置10(図3参照)に備えられるときに、ユーザが視認する側である視認側(以下、単に視認側という)に配置される。光学積層体1は、ガラス板2と、接着剤層3と、フィルム4とを厚み方向一方側に向かって順に備える。厚み方向一方側が、視認側である。厚み方向他方側は、視認側の逆側(以下、単に逆側という)である。
【0019】
<ガラス板2>
ガラス板2は、面方向に延びる。ガラス板2は、光学積層体1における厚み方向他方面(逆側面)を形成する。ガラス板2の全光線透過率は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上であり、また、例えば、99%以下である。ガラス板2は、市販品を用いることができ、例えば、G-leafシリーズ(登録商標、日本電気硝子社製)を用いることができる。
【0020】
ガラス板2の厚みは、限定されない。ガラス板2の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは、20μmである。ガラス板2の厚みは、100μm以下、好ましくは、80μm以下、より好ましくは、60μm以下、さらに好ましくは、50μm以下である。
【0021】
<接着剤層3>
接着剤層3は、面方向に延びる。接着剤層3は、ガラス板2の厚み方向一方面に配置されている。具体的には、接着剤層3は、ガラス板2の厚み方向一方面に接触する。接着剤層3は、粘着剤(感圧接着剤)からなる粘着剤層(感圧接着剤層)ではなく、硬化型接着剤の硬化体である。詳しくは、接着剤層3は、活性エネルギー線の照射または加熱よって硬化反応する硬化型接着剤の硬化体である。
【0022】
硬化型接着剤は、接着剤層3の硬化原料であって、活性エネルギー硬化型、および、熱硬化型が挙げられ、好ましくは、活性エネルギー硬化型が挙げられる。具体的には、硬化型接着剤としては、例えば、アクリル接着剤組成物、エポキシ接着剤組成物、および、シリコーン接着剤組成物が挙げられ、優れた耐衝撃性を得る観点から、エポキシ接着剤組成物が挙げられる。
【0023】
エポキシ接着剤組成物は、エポキシ樹脂を主剤として含む。エポキシ樹脂としては、例えば、2つのエポキシ基を含有する2官能エポキシ樹脂、3つ以上エポキシ基を含有する多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用できる。
好ましくは、2官能エポキシ樹脂と多官能エポキシ樹脂との併用が挙げられる。
【0024】
2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などの芳香族系エポキシ樹脂、例えば、トリエポキシプロピルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂などの含窒素環エポキシ樹脂、さらには、脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が挙げられる。2官能エポキシ樹脂として、好ましくは、脂肪族型エポキシ樹脂が挙げられる。脂肪族型エポキシ樹脂は、脂肪族脂環式エポキシ樹脂を含む。2官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、100g/eq.以上、好ましくは、120g/eq.以上であり、また、例えば、250g/eq.以下、好ましくは、150g/eq.以下である。エポキシ樹脂における2官能エポキシ樹脂の割合は、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上であり、また、例えば、99質量%以下、好ましくは、97質量%以下である。
【0025】
多官能エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、3官能脂肪族エポキシ樹脂などの3官能以上の多官能エポキシ樹脂が挙げられる。多官能エポキシ樹脂として、好ましくは、3官能脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、130g/eq.以上、好ましくは、150g/eq.以上であり、また、例えば、220g/eq.以下、好ましくは、200g/eq.以下である。エポキシ樹脂における多官能エポキシ樹脂の割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0026】
エポキシ接着剤組成物におけるエポキシ樹脂の割合は、例えば、60質量%以上、好ましくは、75質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0027】
エポキシ樹脂は、市販品を用いることができ、脂肪族脂環式エポキシ樹脂として、セロキサイド2021P(ダイセル化学社製)、3官能脂肪族エポキシ樹脂として、EHPE3150(ダイセル化学社製)などが用いられる。
【0028】
また、エポキシ接着剤組成物は、活性エネルギー硬化型であれば、光酸発生剤を含む。光酸発生剤としては、例えば、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられる。光酸発生剤は、市販品を用いることができ、トリアリールスルホニウム塩として、CPI101A(サンアフロ社製)などが用いられる。エポキシ接着剤組成物における光酸発生剤の割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0029】
さらに、エポキシ接着剤組成物は、例えば、オキセタン系樹脂、シランカップリング剤などの添加剤を適宜の割合で含むことができる。
【0030】
オキセタン系樹脂としては、例えば、3-エチル-3-オキセタンメタノール、2―エチルヘキシルオキセタンなどの単官能オキセタン、例えば、キシリレンビスオキセタン、3―エチル―3{[(3―エチルオキセタン―3―イル)メトキシ]メチル}オキセタンなどの2官能オキセタンが挙げられる。オキセタン系樹脂は、市販品を用いることができ、アロンオキセタン(東亞合成社製)などが用いられる。
【0031】
シランカップリング剤として、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤などが挙げられる。シランカップリング剤は、市販品を用いることができ、KBMシリーズ(信越シリコーン社製)などが挙げられる。
【0032】
接着剤層3の厚みは、限定されない。接着剤層3の厚みは、例えば、0.1μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下、より好ましくは、3μm以下である。
【0033】
接着剤層3の全光線透過率は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上であり、また、例えば、99%以下である。
【0034】
25℃における接着剤層3の引張貯蔵弾性率E’は、例えば、1GPa以上、好ましくは、2GPa以上、より好ましくは、3GPa以上、さらに好ましくは、4GPa以上であり、また、例えば、100GPa以下である。25℃における接着剤層3の引張貯蔵弾性率E’は、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件の温度分散モードで動的粘弾性を測定することにより求められる。また、ナノインデンター法で測定される25℃における接着剤層3の弾性率は、例えば、1GPa以上、好ましくは、2GPa以上、より好ましくは、3GPa以上、さらに好ましくは、4GPa以上であり、また、例えば、100GPa以下である。ナノインデンター法の測定条件は、下記の通りである。
【0035】
装置:Triboindenter(Hysitron Inc.製)
サンプルサイズ:10×10mm
圧子:Concial(球形圧子:曲率半径10μm)、
測定方法:単一押し込み測定
測定温度:25℃
圧子の押込深さ:100nm
温度:25℃
解析:荷重-変位曲線に基づくOliver Pharr解析
【0036】
ガラス板2と接着剤層3との密着力は、例えば、3.0kN/m以上、好ましくは、3.5kN/m以上、より好ましくは、4.0kN/m以上であり、また、例えば、10kN/m以下、好ましくは、8kN/m以下である。ガラス板2と接着剤層3との密着力が上記した下限以上であれば、物体が光学積層体1に衝突したときに、ガラス板2と接着剤層3との界面における剥離を抑制できる。そのため、光学積層体1は、信頼性に優れる。
ガラス板2と接着剤層3との密着力は、図2Aに示すように、装置41が備える刃42の刃先43をガラス板2と接着剤層3との界面に差し込み、図2Bに示すように、刃42を面方向に沿って動かして、ガラス板2を接着剤層3から剥離するときの剥離強度として求められる。密着力の測定方法の詳細は、後の実施例で記載する。
【0037】
<フィルム4>
フィルム4は、光学積層体1の厚み方向一方面(視認側面)を形成する。フィルム4は、接着剤層3に対するガラス板2の反対側に位置する。フィルム4は、面方向に延びる。
フィルム4は、接着剤層3の厚み方向一方面に配置されている。フィルム4は、接着剤層3の厚み方向一方面に接触している。これによって、接着剤層3は、ガラス板2の厚み方向一方面、および、フィルム4の厚み方向他方面に接触し、ガラス板2とフィルム4とを接着(接合)している。
【0038】
周波数10Hz、昇温速度2℃/min、データ取得間隔0.5min、引張モードの動的粘弾性試験により求められる-100℃から-50℃におけるフィルム4のtanδの平均は、例えば、0.02以上、好ましくは、0.04以上であり、また、例えば、0.20以下、好ましくは、0.06未満、より好ましくは、0.05以下である。-100℃から-50℃におけるフィルム4のtanδの平均が上記した下限を上回れば、光学積層体1の耐衝撃性を向上できる。-100℃から-50℃におけるフィルム4のtanδの平均は、物体が光学積層体1に高速で衝突したときの応答性を示す指標である。tanδの平均が高ければ、物体がガラス板2に高速で衝突しても、ガラス板2が受けた衝撃をフィルム4が十分に緩和でき、光学積層体1の耐衝撃性を向上できる。動的粘弾性試験は、後の実施例で記載する。
【0039】
周波数10Hz、昇温速度2℃/min、引張モードの動的粘弾性試験により求められる-100℃から-50℃におけるフィルム4の引張貯蔵弾性率E’の平均は、例えば、3GPa以上、好ましくは、4GPa以上であり、また、例えば、10GPa以下、好ましくは、6GPa以下、より好ましくは、5GPa以下、さらに好ましくは、4.7GPa以下である。-100℃から-50℃におけるフィルム4の引張貯蔵弾性率E’の平均が上記した下限以上であれば、光学積層体1の耐衝撃性を向上できる。
【0040】
フィルム4と接着剤層3との密着力は、例えば、0.5kN/m以上、好ましくは、1.5kN/m以上、より好ましくは、3.0kN/m以上、さらに好ましくは、3.5kN/m以上、とりわけ好ましくは、4.0kN/m以上、最も好ましくは、5.0kN/m以上であり、また、例えば、10kN/m以下である。フィルム4と接着剤層3との密着力が上記した下限以上であれば、物体が光学積層体1のフィルム4に衝突したときに、フィルム4と接着剤層3との界面における剥離を抑制できる。フィルム4と接着剤層3との密着力は、図2Aに示すように、測定装置41が備える刃42の刃先43をフィルム4と接着剤層3との界面に差し込み、図2Cに示すように、刃42を面方向に沿って動かして、フィルム4を接着剤層3から剥離するときの剥離強度として求められる。密着力の測定方法の詳細は、後の実施例で記載する。
【0041】
フィルム4としては、例えば、ポリエステルフィルム、および、セルロールフィルムが挙げられる。ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、および、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムが挙げられる。セルロールフィルムとしては、例えば、アセチルセルロールフィルが挙げられ、具体的には、トリアセチルセルロール(TAC)フィルムが挙げられる。フィルム4として、フィルム4の接着剤層3に対する密着力を高くして、物体が光学積層体1に衝突した時のフィルム4の剥離を抑制する観点から、好ましくは、セルロールフィルムが挙げられ、より好ましくは、TACフィルムが挙げられる。
【0042】
フィルム4の厚みは、限定されない。フィルム4の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、30μm以上である。フィルム4の厚みが上記した下限以上であれば、光学積層体1の耐衝撃性を向上できる。また、フィルム4の厚みは、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下、より好ましくは、60μm以下である。フィルム4の厚みが上記した上限以下であれば、物体が光学積層体1に衝突した時のフィルム4の剥離を抑制できる。
【0043】
フィルム4の全光線透過率は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上であり、また、例えば、99%以下である。
【0044】
<粘着剤層12>
光学積層体1は、仮想線で示す粘着剤層12をさらに備えてもよい。粘着剤層12は、ガラス板2の厚み方向他方面に配置される。具体的には、粘着剤層12は、フィルム4の厚み方向他方側に接触している。つまり、この光学積層体1は、粘着剤層12と、ガラス板2と、接着剤層3と、フィルム4とを厚み方向一方側に向かって順に備える。粘着剤層12は、硬化反応を伴わず、感圧接着する接着体である。
【0045】
粘着剤層12の材料は、限定されない。粘着剤層12の材料としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤、および、ポリエーテル系粘着剤が挙げられる。材料としては、好ましくは、アクリル系粘着剤が挙げられる。粘着剤層12の処方および物性は、例えば、特開2018-28573号公報に詳述される。
【0046】
粘着剤層12の25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’は、例えば、0.01MPa以上であり、また、例えば、0.20MPa以下である。せん断貯蔵弾性率G’は、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、せん断(ひねり)モードの動的粘弾性試験により求められる。
【0047】
粘着剤層12の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下、より好ましくは、20μm以下である。
【0048】
光学積層体1の厚みは、例えば、25μm以上であり、また、例えば、200μm以下以下である。
【0049】
<ペンドロップ割れ試験>
光学積層体1では、ペンドロップ割れ試験においてガラス板2が割れ始めるまでのペンの落下高さH1が、例えば、15cm以上である。
【0050】
まず、光学積層体1を仮想線で示す樹脂フィルム34を介して水平台(図示せず)の表面に配置する。厚み15μmの粘着剤層12を光学積層体1の厚み方向一方面に配置する。なお、この粘着剤層12は、ペンドロップ割れ試験において光学積層体1を水平台に固定するための固定部材を兼ねる。周波数1Hz、昇温速度5℃/min、温度-40℃~150℃、ねじりモードの動的粘弾性試験により求められる25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が、0.03MPaである。
【0051】
図1に示すように、ペン29(Pentelボールペン BK407黒、ボール径0.7mm)をフィルム4に向けて落下させる。ペン29の質量は、7gである。ガラス板2からペン29の先端部32までの高さは5cmである。先端部32は、下側を向き、尖っている。ペン29の上記した落下で、ガラス板2に割れが発生しなれば、1cmずつ高さを段階的に引き上げる。ガラス板2に割れが確認できたときの高さをペンドロップ割れ試験における高さH1として取得する。
【0052】
ペンドロップ割れ試験における落下高さH1が15cm以上であれば、光学積層体1の耐衝撃性に優れる。
【0053】
ペンドロップ割れ試験における落下高さH1は、好ましくは、20cm以上である。
【0054】
<ペンドロップ剥がれ試験>
光学積層体1では、ペンドロップ剥がれ試験においてフィルム4が剥がれ始めるまでのペン29の落下高さH2が、例えば、15cm以上である。
【0055】
まず、光学積層体1を仮想線で示す樹脂フィルム34を介して水平台(図示せず)の表面に配置する。ペンドロップ割れ試験で用いた粘着剤層12と同じ粘着剤層12を光学積層体1の厚み方向一方面に配置する。
【0056】
図1に示すように、ペン29(Pentelボールペン BK407黒、ボール径0.7mm)をフィルム4に向けて落下させる。ペン29の質量は、7gである。ガラス板2からペン29の先端部32までの高さは5cmである。先端部32は、下側を向き、尖っている。ペン29の上記した落下で、フィルム4の接着剤層3からの剥がれが発生しなれば、1cmずつ高さを段階的に引き上げる。フィルム4の接着剤層3からの剥がれが確認できたときの高さをペンドロップ剥がれ試験における高さH2として取得する。または、ガラス板2に割れが発生した時は、割れ高さH1以上の剥がれ耐久性を有する、と判断する。
【0057】
好ましくは、ペンドロップ剥がれ試験における落下高さH2が20cm以上である。
【0058】
上記要件を満足する光学積層体1は、フィルム4の接着剤層3への密着力が高い。そのため、光学積層体1は、信頼性に優れる。
【0059】
<光学積層体1の製造方法>
光学積層体1の製造方法を説明する。光学積層体1の製造方法では、例えば、まず、ガラス板2の厚み方向一方面および/または硬化型接着剤にフィルム4の厚み方向他方面に、硬化型接着剤を配置(塗布)し、続いて、ガラス板2およびフィルム4で、硬化型接着剤を挟み込む。
【0060】
その後、硬化型接着剤を硬化させる。硬化型接着剤が活性エネルギー硬化型であれば、紫外線を含む活性エネルギーを硬化型接着剤に照射する。具体的には、紫外線を、ガラス板2側から硬化型接着剤に照射する。硬化型接着剤が熱硬化型であれば、硬化型接着剤を加熱する。これにより、ガラス板2およびフィルム4を強固に接着する接着剤層3を形成する。
【0061】
これにより、ガラス板2と、接着剤層3と、フィルム4とを備える光学積層体1を得る。
【0062】
その後、光学積層体1に粘着剤層12をさらに備えるには、ガラス板2の厚み方向他方面に粘着剤層12を配置する。例えば、粘着剤を含むワニスをガラス板2の厚み方向他方面に塗布および乾燥する。または、図示しない剥離シートに形成した粘着剤層12をガラス板2の厚み方向他方面に転写することもできる。これによって、粘着剤層12と、ガラス板2と、接着剤層3と、フィルム4とを備える光学積層体1を得る。なお、図示しない剥離シートを光学積層体1に備えてもよい。その場合には、光学積層体1は、図示しない剥離シートと、粘着剤層12と、ガラス板2と、接着剤層3と、フィルム4とを備える。
【0063】
<光学積層体1の用途>
光学積層体1は、各種光学用途に用いられ、例えば、画像表示装置に備えられる。画像表示装置としては、例えば、有機エレクトロルミネセンス表示装置(以下、単に「有機EL表示装置」と略称する。)が挙げられる。
【0064】
次に、光学積層体1を備える有機EL表示装置10を、図3を参照して説明する。
【0065】
<有機EL表示装置10>
有機EL表示装置10は、面方向に延びる平板形状を有する。有機EL表示装置10は、次に説明する導電性フィルム13を備えることから、タッチパネル型入力表示装置として機能する。有機EL表示装置10は、光学積層体1と、導電性フィルム13と、第2粘着剤層14と、画像表示部材15とを表側に向かって順に備える。なお、この有機EL表示装置10では、紙面上側が、ユーザーの視認側であって、表側(図1の厚み方向他方側に相当)であり、紙面下側が、裏側(図1の厚み方向一方側に相当)である。
【0066】
<光学積層体1>
光学積層体1は、粘着剤層12と、ガラス板2と、接着剤層3と、フィルム4とを表側に向かって順に備える。
【0067】
<導電性フィルム13>
導電性フィルム13は、導電層16と、基材層17とを裏側に向かって順に備える。
【0068】
<導電層16>
導電層16は、所定パターンを有する。導電層16の表面および側面は、粘着剤層12に接触する。導電層16の材料としては、例えば、金属酸化物、導電性繊維(繊維)、および、金属が挙げられる。金属酸化物としては、複合酸化物が挙げられる。複合酸化物としては、例えば、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、および、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)が挙げられる。導電性繊維としては、例えば、金属ナノワイヤ、および、カーボンナノチューブが挙げられる。金属としては、例えば、金、白金、銀、および、銅が挙げられる。導電層16は、面方向中央部に位置するセンサ電極部18と、センサ電極部18に周辺に位置する引出し配線部19とを一体的に有する。導電層16の詳細は、例えば、特開2017-102443号公報、特開2014-113705号公報、および、特開2014-219667号公報に記載される。
【0069】
<基材層17>
基材層17は、導電層16の裏面、および、粘着剤層12の裏面に配置されている。基材層17は、面方向に延びる。基材層17は、例えば、樹脂層である。基材層17の材料としては、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、および、ポリスチレン樹脂が挙げられる。オレフィン樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、シクロオレフィンポリマー(COP)が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、PET、PBT、および、PENが挙げられる。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート樹脂が挙げられる。基材層17の詳細は、例えば、特開2018-181722号公報に記載される。
【0070】
<第2粘着剤層14>
第2粘着剤層14は、導電性フィルム13の裏面に配置されている。具体的には、第2粘着剤層14は、導電性フィルム13の裏面に接触している。第2粘着剤層14の材料は、粘着剤層12の材料と同様である。
【0071】
<画像表示部材15>
画像表示部材15は、有機EL表示装置10の裏面を形成する。画像表示部材15は、導電性フィルム13の裏側に第2粘着剤層14を介して配置されている。画像表示部材15は、面方向に延びる。画像表示部材15は、具体的には、有機EL素子である。例えば、画像表示部材15は、図示しないが、表示基板と、2つの電極と、2つの電極に挟まれる有機EL層と、封止層とを含む。なお、画像表示部材15の構成および物性は、例えば、特開2018-28573号公報に詳述される。
【0072】
<一実施形態の作用効果>
一実施形態の光学積層体1は、フィルム4が視認側に配置され、ガラス板2が逆側に配置される新規な構成である。そして、この光学積層体1では、ペンドロップ割れ試験においてガラス板が割れ始めるまでのペンの落下高さH1が15cm以上である。そのため、光学積層体1は、耐衝撃性に優れる。
【0073】
また、この光学積層体1では、ペンドロップ剥がれ試験においてフィルム4が剥がれ始めるまでのペンの落下高さH2が15cm以上である。そのため、フィルム4の密着性に優れる。そのため、光学積層体1は、信頼性に優れる。
【0074】
また、-100℃から-50℃におけるフィルム4のtanδの平均が、0.04以上であり、-100℃から-50℃におけるフィルム4の引張貯蔵弾性率E’の平均が、3GPa以上、6GPa以下であるので、ペンドロップ割れ試験におけるガラス板2の割れを抑制できる。そのため、光学積層体1は、耐衝撃性に優れる。
【0075】
また、この光学積層体1では、ガラス板2と接着剤層3との密着力が3.0kN/m以上であり、フィルム4と接着剤層3との密着力が3.0kN/m以上であるので、フィルム4およびガラス板2のそれぞれの、接着剤層3に対する密着力に優れる。そのため、光学積層体1は、信頼性に優れる。
【0076】
また、フィルム4が、TACフィルムであれば、接着剤層3に対する密着力に優れる。
そのため、光学積層体1は、信頼性に優れる。
【0077】
また、フィルム4の厚みが60μm以下であれば、物体が光学積層体1に衝突した時のフィルム4の接着剤層3からの剥離を抑制できる。
【0078】
また、本発明の光学積層体は、耐衝撃性に優れるので、厚みが40μm未満のガラス板でも十分な耐衝撃性を有する。
【0079】
<変形例>
以下の変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一実施形態態と同様の作用効果を奏することができる。
【0080】
一実施形態では、フィルム4は、単層であるが、フィルム4の層数は、限定されない。
フィルム4は、複層でもよい。
【0081】
図1の1点破線で示すように、光学積層体1は、ハードコート層38をさらに備えてもよい。ハードコート層38は、フィルム4の厚み方向一方面に配置されている。ハードコート層38は、フィルム4の厚み方向一方面に接触している。光学積層体1は、ガラス板2と、接着剤層3と、フィルム4と、ハードコート層38とを視認側に向かって順に備える。ハードコート層38の処方、物性および寸法は、特に限定されない。この変形例では、光学積層体1がハードコート層38を備えるので、光学積層体1の耐衝撃性および耐擦傷性を向上できる。
【0082】
ハードコート層38に代えて、または、さらに他の機能層を備えることができる。他の機能層としては、例えば、飛散防止層、防汚層、および、反射防止層が挙げられる。これらは、単層でもよく複数積層されてもよい。
【0083】
本発明の光学積層体は耐衝撃性に優れるので、厚みが40μm未満のガラス板でも十分な耐衝撃性を有する。厚みが40μm未満のガラス板は屈曲性に優れるため、本発明の光学積層体は、フォルダブルディスプレイおよびローラブルディスプレイなどのフレキシブルディスプレイにも好適に用いることができる。
【実施例
【0084】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0085】
以降の実施例および比較例では、光学積層体1を製造し、続いて、粘着剤層12を光学積層体1に配置して、光学積層体1の耐衝撃性を評価した。
【0086】
実施例1
厚み30μmのガラス板2(G-leaf)、および、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるフィルム4(ダイアホイルS100、三菱ケミカル社製)を準備した。また、脂肪族脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021P、エポキシ当量128~133g/eq.、ダイセル化学社製)70質量部、3官能脂肪族エポキシ樹脂(EHPE3150、エポキシ当量170~190g/eq.、ダイセル化学社製)5質量部、オキセタン系樹脂(アロンオキセタン、東亜合成社製)19質量部、シランカップリング剤(KBM-403、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)4質量部、光酸発生剤(CPI101A、トリアリールスルホニウム塩、サンアフロ社製)2質量部を配合して、エポキシ接着剤組成物を調製した。このエポキシ接着剤組成物をガラス板2に塗布し、その後、アクリル接着剤組成物をガラス板2とフィルム4とで挟み込んだ。
【0087】
その後、紫外線を、ガラス板2側から硬化型接着剤に照射した。これにより、ガラス板2およびフィルム4を強固に接着する硬化体からなる厚み1μmの接着剤層3を形成した。ナノインデンター法で測定される25℃における接着剤層3の弾性率は、4.9GPaであった。これにより、ガラス板2と、接着剤層3と、フィルム4とを備える光学積層体1を製造した。
【0088】
次いで、厚み15μmの粘着剤層12をガラス板2の厚み方向他方面に、転写により配置した。粘着剤層12は下記の通りに調製した。
【0089】
ラウリルアクリレート(LA)43質量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)44質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)6質量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)7質量部、および、BASF製「イルガキュア184」0.015質量部を配合し、紫外線を照射して重合し、ベースポリマー組成物(重合率:約10%)を得た。
【0090】
別途、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)60質量部、メタクリル酸メチル(MMA)40質量部、α-チオグリセロール3.5質量部、および、トルエン100質量部を混合し、窒素雰囲気下にて70℃で1時間撹拌した。次に、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を投入し、70℃で2時間反応させた後、80℃に昇温して2時間反応させた。その後、反応液を130℃に加熱して、トルエン、連鎖移動剤および未反応モノマーを乾燥除去して、固形状のアクリル系オリゴマーを得た。アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は5100であった。ガラス転移温度(Tg)は130℃であった。
【0091】
ベースポリマー組成物の固形分100質量部に対して、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.07質量部、アクリル系オリゴマー1質量部、シランカップリング剤(信越化学製「KBM403」)0.3質量部を添加した後、これらを均一に混合して、粘着剤組成物を調製した。
【0092】
粘着剤組成物を、PETフィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRF75」)からなる剥離シートの表面に塗布し、その後、別のPETフィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRF75」)からなる剥離シートを塗膜に貼り合わせた。その後、塗膜に紫外線を照射して、厚み15μmの粘着剤層12を調製した。この粘着剤層12の25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’は、0.03MPaであった。測定方法は、以下の通りである。
粘着剤層12を円盤状に外形加工し、パラレルプレートに挟み込み、Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」を用いて、以下の条件の動的粘弾性測定により、粘着剤層12の25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を求めた。
【0093】
[条件]
モード:ねじり
温度:-40℃から150℃
昇温速度:5℃/分
周波数:1Hz
【0094】
実施例2
実施例1と同様にして、光学積層体1を製造した。但し、フィルム4を、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(KC4UYW、コニカミノルタ製)に変更した。
を用いた。
【0095】
実施例3
実施例1と同様にして、光学積層体1を製造した。但し、フィルム4を、厚み20μmのトリアセチルセルロースフィルム(KC2CT、コニカミノルタ製)に変更した。
【0096】
実施例4
実施例2と同様にして、光学積層体1を製造した。但し、フィルム4を、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(KC8UAW、コニカミノルタ製)に変更した。
【0097】
比較例1
実施例1と同様にして、光学積層体1を製造した。但し、フィルム4として、グルタルイミド環単位を有するメタクリル樹脂ペレットを、押し出し成形により、フィルム状に成形した後、延伸したアクリル系フィルムを用いた。アクリル系フィルムの厚みは40μmであった。
【0098】
表1に、各実施例および比較例における、フィルム4の種類および厚みを記載する。
【0099】
<評価>
各実施例および比較例について、下記の事項を測定および評価した。それらの結果を表1に記載する。
【0100】
<フィルム4のtanδおよび引張貯蔵弾性率E’>
各実施例および比較例で準備したフィルム4を動的粘弾性試験に供した。装置および条件を下に記載する。
【0101】
装置:日立ハイテクサイエンス社製 多機能動的粘弾性測定装置 DMS6100
温度範囲 :-100~200℃
昇温速度 :2℃/min
モード :引張
サンプル幅 :10mm
チャック間距離 :20mm
周波数 :10Hz
歪振幅 :10μm
雰囲気 :大気(250ml/min)
データの取得間隔:0.5min(1℃毎)
【0102】
-100℃から-50℃におけるフィルム4の引張貯蔵弾性率E’の平均のそれぞれは、-100℃から-50℃における上記した取得したすべてのデータの総和をデータの数で割って、算出した。-100℃から-50℃におけるフィルム4のtanδの平均のそれぞれは、-100℃から-50℃における上記した取得したすべてのデータの総和をデータの数で割って、算出した。
【0103】
<フィルム4と接着剤層3との密着力>
表面・界面物性解析装置を用いて、以下の装置、条件および方法で、フィルム4と接着剤層3との密着力を測定した。
【0104】
装置 :ダイプラウィンテス社製、表面・界面物性解析装置(SAICAS DN-20型)
【0105】
刃42の材料 :単結晶ダイヤモンド
刃先43の幅 :1mm
刃先43のすくい角 :10°
【0106】
表面・界面物性解析装置41は、図2Aに示すように、刃42と、図示しない移動装置および圧力測定部とを備える。刃42は、移動可能である。刃42は、下端部に形成される刃先43を備える。
【0107】
図2Aに示すように、光学積層体1を測定装置41にセットした。このとき、フィルム4を上側に配置し、ガラス板2を下側に配置した。
【0108】
刃先43を水平方向(光学積層体1の面方向に相当)斜め下側に移動させた。水平方向速度が10μm/secであり、鉛直方向速度が0.5μm/secである。これにより、刃先43が、フィルム4に切り込んだ。
【0109】
図2Bに示すように、刃先43がフィルム4と接着剤層3との界面に至ると、刃先43を水平方向にのみに移動させた。水平方向速度は、10μm/secのままである。刃先43の水平方向の移動によって、フィルム4が接着剤層3から剥離した。このときの剥離強度をフィルム4と接着剤層3との密着力として測定した。
【0110】
<ガラス板2と接着剤層3との密着力>
上記と同じ装置、条件および方法で、ガラス板2と接着剤層3との密着力を測定した。但し、図2Cに示すように、刃先43のフィルム4に切り込んだ後、接着剤層3にも切り込み、刃先43が接着剤層3とガラス板2との界面に至ったときに、刃先43を水平移動させた。これにより、接着剤層3がガラス板2から剥離した。このときの剥離強度をガラス板2と接着剤層3との密着力として測定した。
【0111】
<ペンドロップ割れ試験>
各実施例および比較例の光学積層体1について、下記のペンドロップ割れ試験を実施した。まず、図1に示すように、フィルム4が上側を向くように、光学積層体1を樹脂フィルム34(仮想線)の表面に置いた。具体的には、粘着剤層12を樹脂フィルム34の表面に貼着した。樹脂フィルム34は、プレスケール(富士フィルム製 プレスケールMS中圧用モノシートタイプ、厚み95μm)である。樹脂フィルム34は、図示しない水平台の表面に配置されている。次いで、フィルム4から5cmの高さから7gのペン29(Pentelボールペン BK407黒、ボール径0.7mm)を落下させるペンドロップ割れ試験を実施する。上記した高さ5cmは、フィルム4の厚み方向一方面と、ペン29の先端部32との距離である。先端部32は、下側を向き、尖っている。この光学積層体1では、ペン29の上記した落下で、ガラス板2に割れが発生すれば、ペンドロップ割れ試験の高さH1は、5cmとなる。ガラス板2に割れが発生しなれば、1cmずつ高さを段階的に引き上げる。これにより、ガラス板2に割れが発生したときの高さH1を得る。
【0112】
<ペンドロップ剥がれ試験>
上記したペンドロップ割れ試験と同様にして、ペン29をフィルム4に落下させた。最初の落下高さを5cmに設定した。その後、フィルム4の接着剤層3からの剥がれが発生しなれば、1cmずつ高さを段階的に引き上げた。フィルム4の接着剤層3からの剥がれが確認できたときの高さをペンドロップ剥がれ試験における高さH2として取得した。または、ガラス板2に割れが発生した時には、割れた高さH1以上の剥がれ耐久性を有する、と判断した。
【0113】
【表1】
【符号の説明】
【0114】
1 光学積層体
2 ガラス板
3 接着剤層
4 フィルム
29 ペン
38 ハードコート層
図1
図2
図3