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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20221117BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20221117BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/01 Y
G03G15/16 103
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019012620
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020118943
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】菊池 佳名子
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-294504(JP,A)
【文献】特開2016-091012(JP,A)
【文献】特開2010-019969(JP,A)
【文献】特開2010-152108(JP,A)
【文献】特開2015-102839(JP,A)
【文献】特開2010-061079(JP,A)
【文献】特開2016-061993(JP,A)
【文献】特開2006-251288(JP,A)
【文献】特開2009-109716(JP,A)
【文献】特開2010-101986(JP,A)
【文献】特開2014-170197(JP,A)
【文献】特開2018-155837(JP,A)
【文献】特開2013-054107(JP,A)
【文献】特開2014-235234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 15/16
G03G 21/00
G03G 15/06
G03G 15/08
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムと、
前記感光体ドラム上の静電潜像にトナーを付着させてトナー像を現像する現像装置と、
前記トナー像を担持する像担持体と、
前記トナー像を前記感光体ドラムから前記像担持体へ転写する転写ローラーと、
キャリブレーション用の前記トナー像としてのトナーパッチ像が前記像担持体に転写された後、前記像担持体上の前記トナーパッチ像の濃度を光学的に検出する濃度センサーと、
前記キャリブレーションにおいて、前記トナーパッチ像の現像電流値と前記濃度センサーにより検出された前記トナーパッチ像の濃度とに基づいて、前記トナーのトナー帯電量を特定するトナー帯電量特定部と、
前記転写ローラーの転写電流を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記キャリブレーションにおいて、(a)トナー帯電量測定モードの初期値を第1モードにセットし、(b1)モード切替条件が成立しない場合、前記濃度センサーを使用して、前記第1モードで転写された前記トナーパッチ像の濃度を測定し、(b2)前記モード切替条件が成立する場合、前記トナー帯電量測定モードを第2モードに変更し、前記濃度センサーを使用して、前記第2モードで転写された前記トナーパッチ像の濃度を測定し、
前記第1モードでは、前記制御部は、前記トナーパッチ像の転写の際の前記転写ローラーの転写電流を、プリント画像の転写の際の前記転写ローラーの転写電流と同一とし、
前記第2モードでは、前記制御部は、前記プリント画像の転写の際の前記転写ローラーの転写電流より、前記トナーパッチ像の転写の際の前記転写ローラーの転写電流を高くし、
前記モード切替条件は、今回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量が、前回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量に基づいて設定される許容範囲外になることであること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記許容範囲は、(a)前記今回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量と前記前回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量との差分の上限値および下限値の少なくとも一方、(b)前記今回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量と前記前回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量との比率の上限値および下限値の少なくとも一方、並びに(c)前記今回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量と前記前回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量との間での時間的傾きの上限値および下限値の少なくとも一方、のうちのいずれかで設定されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記許容範囲は、前記今回のキャリブレーションで測定された環境測定値と前記前回のキャリブレーションで測定された環境測定値とに基づいて調整されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記許容範囲は、前記今回のキャリブレーションの時点での前記現像装置内での前記トナーの平均攪拌時間と前記前回のキャリブレーションの時点での前記現像装置内での前記トナーの平均攪拌時間とに基づいて調整されることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第2モードでは、前記制御部は、同一の複数のトナーパッチ像の転写の際の前記転写ローラーの転写電流を互いに異なるようにし、かつ、プリント画像の転写の際の前記転写ローラーの転写電流より、前記トナーパッチ像の転写の際の前記転写ローラーの転写電流を高くし、前記トナー帯電量特定部は、前記複数のトナーパッチ像のそれぞれについて前記濃度センサーにより検出された濃度のうちの最大値と、前記最大値の濃度のトナーパッチ像の現像電流とに基づいてトナー帯電量を特定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記モード切替条件は、(a)前記今回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量が前記許容範囲外になり、かつ、(b)前記第1モードでの前記濃度が所定閾値を超えることであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2モードにおいて、プリント画像の転写の際の前記転写ローラーの転写電流の場合に比べ前記トナーパッチ像の高さが低くなるように、前記複数のトナーパッチ像の転写の際の前記転写ローラーの転写電流を制御することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある画像形成装置は、互いに異なるレーザー光強度で生成された2つのパッチ像について、現像電流値の差と光学式センサーで得られたトナー付着密度の差との比に基づいて、トナー帯電量(単位重量あたりの電荷)を導出している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-19969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、一般的な、トナー帯電量とトナー濃度測定値との関係について説明する図である。
【0005】
一般的に、上述のような光学式のトナー濃度センサーでは、トナー像の高さ(つまり、トナーの積載高さ)がある程度大きくなると、センサー出力値が飽和する。他方、図7に示すように、トナー帯電量が低いほど、転写されたトナー像の高さが大きくなる。したがって、上述の画像形成装置では、トナー帯電量が低い場合に、センサー出力値が飽和し、トナー濃度(上述のトナー付着密度に相当)の測定誤差が大きくなる可能性がある。トナー濃度の測定誤差が大きい場合、トナー濃度から導出されるトナー重量の推定誤差も大きくなるため、トナー帯電量の測定誤差も大きくなる。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、トナー帯電量の測定誤差を低減する画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、感光体ドラムと、前記感光体ドラム上の静電潜像にトナーを付着させてトナー像を現像する現像装置と、前記トナー像を担持する像担持体と、前記トナー像を前記感光体ドラムから前記像担持体へ転写する転写ローラーと、キャリブレーション用の前記トナー像としてのトナーパッチ像が前記像担持体に転写された後、前記像担持体上の前記トナーパッチ像の濃度を光学的に検出する濃度センサーと、前記キャリブレーションにおいて、前記トナーパッチ像の現像電流値と前記濃度センサーにより検出された前記トナーパッチ像の濃度とに基づいて、前記トナーのトナー帯電量を特定するトナー帯電量特定部と、前記転写ローラーの転写電流を制御する制御部とを備える。
【0008】
そして、前記制御部は、前記キャリブレーションにおいて、(a)トナー帯電量測定モードの初期値を第1モードにセットし、(b1)前記モード切替条件が成立しない場合、前記濃度センサーを使用して、前記第1モードで転写された前記トナーパッチ像の濃度を測定し、(b2)前記モード切替条件が成立する場合、前記トナー帯電量測定モードを第2モードに変更し、前記濃度センサーを使用して、前記第2モードで転写された前記トナーパッチ像の濃度を測定する。
【0009】
前記第1モードでは、前記制御部は、前記トナーパッチ像の転写の際の前記転写ローラーの転写電流を、プリント画像の転写の際の前記転写ローラーの転写電流と同一とし、前記第2モードでは、前記制御部は、前記プリント画像の転写の際の前記転写ローラーの転写電流より、前記トナーパッチ像の転写の際の前記転写ローラーの転写電流を高くする。
【0010】
前記モード切替条件は、今回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量が、前回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量に基づいて設定される許容範囲外になることである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トナー帯電量の測定誤差を低減する画像形成装置が得られる。
【0012】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を示す側面図である。
図2図2は、図1に示す画像形成装置の電気的な構成の一部を示すブロック図である。
図3図3は、トナーパッチ像の一例を示す図である。
図4図4は、図1および図2に示す画像形成装置におけるキャリブレーション時のトナー帯電量とトナー濃度測定値との関係について説明する図である。
図5図5は、図1および図2に示す画像形成装置におけるキャリブレーション時のトナー帯電量測定モードの切り替えについて説明する図である。
図6図6は、図1および図2に示す画像形成装置におけるキャリブレーションを説明するフローチャートである。
図7図7は、一般的な、トナー帯電量とトナー濃度測定値との関係について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
実施の形態1.
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を示す側面図である。この画像形成装置は、プリンター、ファクシミリ装置、複写機、複合機などといった、電子写真方式のプリント機能を有する装置である。
【0017】
この実施の形態の画像形成装置は、タンデム方式のカラー現像装置を有する。このカラー現像装置は、感光体ドラム1a~1d、露光装置2および現像装置3a~3dを有する。感光体ドラム1a~1dは、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色の感光体であり、感光体ドラム1a~1d上には静電潜像が形成される。露光装置2は、感光体ドラム1a~1dへレーザー光を照射して静電潜像を形成する装置である。露光装置2は、レーザー光の光源であるレーザーダイオード、そのレーザー光を感光体ドラム1a~1dへ導く光学素子(レンズ、ミラー、ポリゴンミラーなど)を有する。
【0018】
現像装置3a~3dは、トナーカートリッジ内のトナーを感光体ドラム1a~1d上の静電潜像に付着させてトナー像を現像する。感光体ドラム1aおよび現像装置3aにより、マゼンタの現像が行われ、感光体ドラム1bおよび現像装置3bにより、シアンの現像が行われ、感光体ドラム1cおよび現像装置3cにより、イエローの現像が行われ、感光体ドラム1dおよび現像装置3dにより、ブラックの現像が行われる。
【0019】
中間転写ベルト5は、感光体ドラム1a~1dに接触し、感光体ドラム1a~1d上のトナー像を転写され担持する環状の像担持体である。中間転写ベルト5は、駆動ローラー6aおよびテンションローラー6bに張架され、駆動ローラー6aからの駆動力によって、感光体ドラム1aとの接触位置から感光体ドラム1dとの接触位置への方向へ周回していく。
【0020】
2次転写ローラー7は、搬送されてくるプリントシート(プリント用紙など)を中間転写ベルト5に接触させ、中間転写ベルト5上のトナー像をプリントシートに2次転写する。なお、トナー像を2次転写されたプリントシートは、図示せぬ定着器へ搬送され、トナー像がプリントシートへ定着される。
【0021】
濃度センサー8は、中間転写ベルト5に光を照射し、その反射光(例えば正反射光と拡散反射光)を受光し、受光した反射光の光量に対応する電気信号を出力する反射型光学式センサーである。濃度センサー8は、キャリブレーション用のトナー像としてのトナーパッチ像が中間転写ベルト5に1次転写された後、中間転写ベルト5上のトナーパッチ像の濃度を光学的に検出する。
【0022】
1次転写ローラー9a~9dは、それぞれ、中間転写ベルト5を挟んで、感光体ドラム1a~1dに対向して配置され、感光体ドラム1a~1d上のトナー像を感光体ドラム1a~1dから中間転写ベルト5へ1次転写する。
【0023】
図2は、図1に示す画像形成装置の電気的な構成の一部を示すブロック図である。図2に示すように、図1に示す画像形成装置は、コントローラー31、現像バイアス回路32、転写バイアス回路33、および記憶装置34をさらに備える。
【0024】
コントローラー31は、画像形成装置内の各部を電気的に制御する。コントローラー31は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロコンピューターなどを備え、ハードウェア処理およびソフトウェア処理の一方または両方を行う各種処理部として動作する。
【0025】
現像バイアス回路32は、制御信号により指定された電圧の現像バイアスを現像装置3aと感光体ドラム1aとの間に印加する。現像バイアス回路32は、トナーパッチ像の現像時の現像電流値(直流電流値)を検出する現像電流検出部32aを備える。
【0026】
転写バイアス回路33は、制御信号により指定された電圧の1次転写バイアスを感光体ドラム1aと1次転写ローラー9aの間に印加する。転写バイアス回路33は、トナーパッチ像の1次転写時の転写電流値を検出する転写電流検出部33aを備える。
【0027】
記憶装置34は、フラッシュメモリーなどの不揮発性の記憶装置であって、履歴データ34aを記憶する。履歴データ34aは、前回のキャリブレーションでの、特定されたトナー帯電量、環境測定値、現像装置3a~3d内でのトナーの平均攪拌時間などを含む。
【0028】
ここで、環境測定値は、図示せぬセンサーで測定された温度、湿度などである。また、平均攪拌時間は、その時点で現像装置3a~3d内に滞留しているトナーに対して実施されたトナー攪拌動作の時間の平均値である。
【0029】
ここでは、コントローラー31は、制御部41、およびトナー帯電量特定部42として動作する。
【0030】
制御部41は、図1に示す機械的構成、現像バイアス回路32、転写バイアス回路33などを制御して、プリントやキャリブレーションを実行する。
【0031】
キャリブレーションにおいて、制御部41は、感光体ドラム1a、露光装置2、現像装置3a、1次転写ローラー9aなどを制御し、トナーパッチ像(一定濃度で所定形状のトナー像)の形成および1次転写を実行する。
【0032】
図3は、トナーパッチ像の一例を示す図である。例えば図3に示すように、互いの濃度の異なる複数のトナーパッチ像21~25が中間転写ベルト5に転写される。トナーパッチ像21~25は、中間転写ベルト5の幅方向において、濃度センサー8の配置位置に対応する位置に転写される。
【0033】
なお、トナーパッチ像21~25の濃度は、印字率(つまり、トナードット密度) で表現される。つまり、トナーパッチ像21~25では、トナードットがある画素位置と、ナードットがない画素位置とが混在している。
【0034】
制御部41は、制御信号を現像バイアス回路32に供給して現像バイアスや現像電流を制御するとともに、制御信号を転写バイアス回路33に供給して1次転写バイアスや転写電流を制御する。
【0035】
特に、制御部41は、キャリブレーションにおいて、(a)トナー帯電量測定モードの初期値を第1モード(通常モード)にセットし、(b1)モード切替条件が成立しない場合、濃度センサー8を使用して、第1モードで転写されたトナーパッチ像2i(ここでは、i=1,・・・,5)の濃度を測定し、(b2)モード切替条件が成立する場合、トナー帯電量測定モードを第2モード(高精度モード)に変更し、濃度センサー8を使用して、第2モードで転写されたトナーパッチ像2iの濃度を測定する。
【0036】
第1モードでは、制御部41は、トナーパッチ像の転写の際の1次転写ローラー9aの転写電流を、通常のプリント画像の転写の際の1次転写ローラー9aの転写電流と同一とする。
【0037】
第2モードでは、制御部41は、プリント画像の転写の際の1次転写ローラー9aの転写電流より、トナーパッチ像2iの転写の際の1次転写ローラー9aの転写電流を高くする。その際、制御部41は、プリント画像の転写の際の1次転写ローラー9aの転写電流の場合に比べトナーパッチ像2iの高さが低くなるように、トナーパッチ像2iの転写の際の1次転写ローラー9aの転写電流を制御する。
【0038】
図4は、図1および図2に示す画像形成装置におけるキャリブレーション時のトナー帯電量とトナー濃度測定値との関係について説明する図である。図4に示すように、トナーパッチ像2iの積載高さが高くなる条件(トナー帯電量が低いときなど)であっても、転写電流値が高くなるように制御されるため、トナーパッチ像2iのトナーが中間転写ベルト5上で周囲に分散し、トナーパッチ像2iの高さが減る。したがって、濃度センサー8のセンサー出力値の飽和が発生しにくくなり、濃度測定値の測定誤差が小さくなる。これにより、トナー重量Mの測定誤差、ひいては、トナー帯電量Q/Mの誤差も小さくなる。
【0039】
図5は、図1および図2に示す画像形成装置におけるキャリブレーション時のトナー帯電量測定モードの切り替えについて説明する図である。図5に示すように、今回のキャリブレーションにおいて、第1モードでのトナー帯電量の測定後にモード切替条件が成立した場合、第2モードでトナー帯電量が測定され、第1モードで測定されたトナー帯電量の代わりに、第2モードで測定されたトナー帯電量が使用される。
【0040】
あるいは、今回のキャリブレーションにおいて、第1モードでのトナー帯電量の測定後にモード切替条件が成立した場合には、第1モードで測定されたトナー帯電量が使用され、次のキャリブレーションにおいて、第2モードでトナー帯電量が測定されるようにしてもよい。
【0041】
なお、ここでは、感光体ドラム1a、現像装置3a、および1次転写ローラー9aに対するコントローラー31の機能について説明するが、他の感光体ドラム1b~1d、現像装置3b~3d、および1次転写ローラー9b~9dに対するコントローラー31の機能も同様である。
【0042】
そして、トナー帯電量特定部42は、第1モードおよび第2モードのいずれにおいても、トナーパッチ像2iについての、現像電流検出部32aにより検出された現像電流値と濃度センサー8により検出された濃度測定値とに基づいてトナーのトナー帯電量として特定する。
【0043】
具体的には、トナー帯電量特定部42は、現像に使用されたトナーの電荷Qを現像電流値から導出し、現像に使用されたトナーの重量Mをトナーパッチ像21~25の濃度測定値から導出し、両者の比Q/Mをトナー帯電量として導出する。
【0044】
なお、現像電流値と電荷Qとの対応関係、および濃度測定値と電荷Qとの対応関係は、それぞれ、予め実験などで特定され、テーブル、変換式などとして、トナー帯電量特定部42に実装され、トナー帯電量特定部42は、そのテーブル、変換式などを使用して、現像電流値から電荷Qを導出し、濃度測定値から重量Mを導出する。
【0045】
ここで、上述のモード切替条件について説明する。
【0046】
上述のモード切替条件は、今回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量が、前回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量に基づいて設定される許容範囲外になることである。なお、前回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量は、履歴データ34aに基づいて特定される。
【0047】
つまり、実際のトナー帯電量は急激には変化しないため、トナー帯電量の測定値が急激に変化した場合には、トナー重量(つまり、トナー濃度)の測定誤差が大きくなっていることが考えられるため、トナー帯電量測定モードが切り替えられるようにする。
【0048】
この許容範囲(つまり、上限の閾値および下限の閾値の少なくとも一方)は、(a)今回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量と前回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量との差分の上限値および下限値の少なくとも一方、(b)今回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量と前回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量との比率の上限値および下限値の少なくとも一方、並びに(c)今回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量と前回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量との間での時間的傾き(つまり、両者の差分を、前回のキャリブレーションから今回のキャリブレーションまでの経過時間で除算して得られる値)の上限値および下限値の少なくとも一方、のうちのいずれかで設定される。
【0049】
さらに、この許容範囲は、今回のキャリブレーションで測定された環境測定値と前回のキャリブレーションで測定された環境測定値とに基づいて調整されるようにしてもよい。
その場合、前回のキャリブレーションで測定された環境測定値は履歴データ34aに基づいて特定され、例えば、今回のキャリブレーションで測定された環境測定値と前回のキャリブレーションで測定された環境測定値との差分、比率、時間的傾きなどに基づいて、環境変化に起因するトナー帯電量の変化分は許容されるように、上述の許容範囲が調整される。
【0050】
なお、例えば、湿度が高くなると、トナー粒子の電荷が減るため、現像バイアスに対応するトナーの総電荷が満たされるためのトナー量が増え、現像に使用されるトナー重量が増加する。したがって、湿度変化に起因するトナー帯電量の測定値の変動は適正である。
【0051】
さらに、この許容範囲は、今回のキャリブレーションの時点での現像装置3a内でのトナーの平均攪拌時間と前回のキャリブレーションの時点での現像装置3a内でのトナーの平均攪拌時間とに基づいて調整されるようにしてもよい。その場合、前回のキャリブレーションの時点での平均攪拌時間は、履歴データ34aに基づいて特定され、例えば、今回のキャリブレーションの時点での平均攪拌時間と前回のキャリブレーションの時点での平均攪拌時間との差分、比率、時間的傾きなどに基づいて、攪拌時間の違いに起因するトナー帯電量の変化分は許容されるように、上述の許容範囲が調整される。
【0052】
なお、トナーの消費が遅い場合、現像装置3a~3d内にトナーが長時間滞留するため、平均攪拌時間は長くなる。一方、トナーの消費が速い場合、現像装置3a~3d内にトナーが短時間で消費されるため、平均攪拌時間は短くなる。平均攪拌時間が長くなると、外添剤がトナー本体へ埋没するため、トナーの帯電特性が変化する。したがって、平均攪拌時間の違いに起因するトナー帯電量の測定値の変動は適正である。
【0053】
次に、上記画像形成装置の動作について説明する。
【0054】
通常プリント動作(つまり、ユーザーにより指定された画像のプリント時)においては、制御部41は、感光体ドラム1a~1d、露光装置2、現像装置3a~3d、1次転写ローラー9a~9dなどを制御して、ユーザーにより指定された画像に対応するトナー像の形成および1次転写を実行する。
【0055】
その際、画質が低下しないように、制御部41は、転写電流値を、転写されたトナーが中間転写ベルト5上で周囲に分散しないような基準値になるように制御する。
【0056】
そして、制御部41は、2次転写ローラー7で、プリントシートに、中間転写ベルト5上のトナー像をプリントシートに2次転写させる。2次転写後、そのトナー像は、図示せぬ定着器でプリントシートへ定着される。その後、そのプリントシートは、印刷物として排出される。
【0057】
このようにして、通常プリント動作が実行される。
【0058】
制御部41は、所定のタイミングで自動的に、あるいは、ユーザーやサービスパーソンに手動で指示されると、キャリブレーションを実行する。
【0059】
図6は、図1および図2に示す画像形成装置におけるキャリブレーションを説明するフローチャートである。
【0060】
キャリブレーションが開始されると(ステップS1)、制御部41は、まず、トナー帯電量特定部42を使用して、第1モードでトナー帯電量を測定する(ステップS2)。
【0061】
次に、制御部41は、履歴データ34aに基づいてモード切替条件を特定し(ステップS3)、ステップS2で測定されたトナー帯電量についてモード切替条件が成立するか否かを判定する(ステップS4)。
【0062】
モード切替条件が成立する場合、制御部41は、トナー帯電量特定部42を使用して、第2モードでトナー帯電量を測定し、このトナー帯電量を、第1モードのトナー帯電量の代わりに使用する(ステップS5)。なお、モード切替条件が成立しない場合、制御部41は、第2モードでのトナー帯電量の測定を行わない。
【0063】
制御部41は、今回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量で、現時点で設定されているトナー帯電量を更新し、更新後のトナー帯電量を使用して、現像バイアスの電圧値などのプロセス条件を更新し、以後の通常プリント動作などに適用する。
【0064】
そして、制御部41は、このようにして第1モードまたは第2モードで測定したトナー帯電量で、履歴データ34aを更新する(ステップS6)。なお、その際、履歴データ34aにおける環境測定値、平均攪拌時間などが必要に応じて、現時点の環境測定値、平均攪拌時間で併せて更新される。
【0065】
ここで、具体的な測定動作について説明する。
【0066】
制御部41は、感光体ドラム1a~1d、露光装置2、現像装置3a~3d、1次転写ローラー9a~9dなどを制御して、トナーパッチ像2iの形成および1次転写を実行する。その際、制御部41は、トナーパッチ像2iについての現像電流の測定値を取得するとともに、トナー帯電量測定モードに応じた転写電流値でトナーパッチ像2iの1次転写を実行する。
【0067】
そのようにして中間転写ベルト5上に転写されたトナーパッチ像2iは、中間転写ベルト5の進行とともに移動し、トナーパッチ像2iが濃度センサー8の測定位置に到達すると、濃度センサー8は、トナーパッチ像2iの濃度に対応するセンサー信号を出力する。制御部41は、そのセンサー信号を、トナーパッチ像21~25の濃度に対応するセンサー出力値として受け付ける。
【0068】
そして、トナー帯電量特定部42は、各トナーパッチ像2iの現像電流値と濃度測定値とに基づいてトナー帯電量を特定する。
【0069】
なお、互いに濃度(実際の濃度)の異なる複数のトナーパッチ像21~25を使用する場合には、例えば、複数のトナーパッチ像21~25について得られたトナー帯電量の平均値が、トナーのトナー帯電量として特定される。
【0070】
以上のように、上記実施の形態1によれば、制御部41は、キャリブレーションにおいて、(a)トナー帯電量測定モードの初期値を第1モードにセットし、(b1)モード切替条件が成立しない場合、濃度センサー8を使用して、第1モードで転写されたトナーパッチ像2iの濃度を測定し、(b2)モード切替条件が成立する場合、トナー帯電量測定モードを第2モードに変更し、濃度センサー8を使用して、第2モードで転写されたトナーパッチ像2iの濃度を測定する。第1モードでは、制御部41は、トナーパッチ像2iの転写の際の1次転写ローラー9aの転写電流を、プリント画像の転写の際の1次転写ローラー9aの転写電流と同一とし、第2モードでは、制御部41は、プリント画像の転写の際の1次転写ローラー9aの転写電流より、トナーパッチ像2iの転写の際の1次転写ローラー9aの転写電流を高くする。そして、モード切替条件は、今回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量が、前回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量に基づいて設定される許容範囲外になることとされる。
【0071】
これにより、第1モードでの測定誤差が大きい場合のみ第2モードでトナー帯電量の測定が実行される。第2モードでは、中間転写ベルト5上でのトナーパッチ像21~25の高さが抑制され濃度センサー8のセンサー出力値が飽和しにくくなる。ひいては、トナー帯電量の測定誤差が低減する。
【0072】
実施の形態2.
【0073】
実施の形態2では、互いに異なる複数の転写電流値で、互いに同一の複数のトナーパッチ像2iが1次転写され、それらのトナーパッチ像2iの濃度測定値のうちの最大値を使用してトナー帯電量が導出される。
【0074】
転写電流値に応じて、トナーパッチ像2iのトナーの分散(散らばり)の度合いが異なる。転写電流値が小さい場合には、トナーの分散(散らばり)が小さいため、トナーパッチ像2i内の一部のトナードットは、センサー出力値を飽和させる積載高さを有する。他方、転写電流値が大きい場合には、トナーの分散(散らばり)が大きすぎ、トナーパッチ像2i内の一部のトナードットが消失してしまう。したがって、トナーパッチ像2i内の一部のトナードットが消失せず、かつトナードットの積載高さを十分に低下させる転写電流値のときに適切な濃度測定値(つまり、濃度測定値の最大値)が得られる。
【0075】
実施の形態2において、具体的には、第2モードでは、制御部41は、同一の(つまり、同一印字率の)複数のトナーパッチ像2iの転写の際の1次転写ローラー9aの転写電流を互いに異なるようにし、かつ、プリント画像の転写の際の1次転写ローラー9aの転写電流より、トナーパッチ像2iの転写の際の1次転写ローラー9aの転写電流を高くし、トナー帯電量特定部42は、複数のトナーパッチ像2iのそれぞれについて濃度センサー8により検出された濃度測定値のうちの最大値と、その最大値の濃度測定値のトナーパッチ像2iの現像電流とに基づいてトナー帯電量を特定する。
【0076】
なお、実施の形態2に係る画像形成装置のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0077】
以上のように、上記実施の形態2によれば、第2モードにおいて、より適切な転写電流で測定誤差が低減された濃度測定値でトナー帯電量が導出されるため、トナー帯電量の測定誤差が低減される。
【0078】
実施の形態3.
【0079】
実施の形態3では、モード切替条件は、(a)今回のキャリブレーションで特定されたトナー帯電量が上述の許容範囲外になり、かつ、(b)第1モードでの濃度測定値が所定閾値を超えること、に設定される。
【0080】
なお、実施の形態3に係る画像形成装置のその他の構成および動作については実施の形態1または実施の形態2と同様であるので、その説明を省略する。
【0081】
以上のように、上記実施の形態3によれば、トナーパッチ像2iの濃度が低いときには(つまり、濃度センサー8の測定誤差が小さいときには)、第1モードで比較的短時間でトナー帯電量が特定され、トナーパッチ像2iの濃度が高いときには、第2モードで正確にトナー帯電量が特定される。
【0082】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0083】
例えば、上記実施の形態に係る画像形成装置は、カラー画像形成装置であるが、モノクロ画像形成装置でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、例えば、電子写真方式の画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1a~1d 感光体ドラム
2 露光装置
3a~3d 現像装置
5 中間転写ベルト(像担持体の一例)
9a~9d 1次転写ローラー(転写ローラーの一例)
41 制御部
42 トナー帯電量特定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7