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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】車両電源システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20221117BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221117BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20221117BHJP
   B60L 50/40 20190101ALI20221117BHJP
   B60K 6/28 20071001ALN20221117BHJP
   B60K 6/48 20071001ALN20221117BHJP
   B60W 10/26 20060101ALN20221117BHJP
   B60W 20/50 20160101ALN20221117BHJP
【FI】
B60L3/00 J ZHV
H02J7/00 B
H02J7/00 P
B60L50/60
B60L50/40
B60K6/28
B60K6/48
B60W10/26 900
B60W20/50
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019018626
(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公開番号】P2020127300
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】古川 晶博
(72)【発明者】
【氏名】平野 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】佐内 英樹
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-019527(JP,A)
【文献】特開平10-248263(JP,A)
【文献】特開2017-184543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両電源システムであって、
定格電圧が所定の電圧よりも低いバッテリと、
定格電圧が上記所定の電圧よりも高いキャパシタと、
複数のスイッチ及び充電用キャパシタを備え、上記 キャパシタに蓄積された電荷を放電するためのキャパシタ放電器と、
このキャパシタ放電器を制御する制御器と、
を有し、
上記バッテリと上記キャパシタは電気的に直列に接続され、上記キャパシタ放電器は、直列に接続された上記バッテリ及び上記キャパシタに対して並列に接続され、
上記制御器は、上記車両の衝突時、又は上記キャパシタの交換時において、上記複数のスイッチを制御して、上記キャパシタに蓄積された電荷を上記充電用キャパシタに放電させ、上記充電用キャパシタの電圧が所定電圧まで上昇すると、上記充電用キャパシタに蓄積された電荷上記バッテリに充電させることを特徴とする車両電源システム。
【請求項2】
上記キャパシタ放電器はDC-DCコンバータを備え、上記制御器は、上記車両の衝突時、又は上記キャパシタの交換時において、上記キャパシタから放電された電荷が上記DC-DCコンバータにより降圧され、上記バッテリに充電されるように上記キャパシタ放電器を制御する請求項1記載の車両電源システム。
【請求項3】
上記キャパシタは、蓄積可能な電荷が、上記バッテリに蓄積可能な電荷よりも少なく構成されている請求項1又は2に記載の車両電源システム。
【請求項4】
上記制御器は、上記車両の衝突発生から、又は上記バッテリの交換可能性を表す信号の受信時から、所定時間以内に上記キャパシタの電圧が上記所定の電圧以下に低下するように上記キャパシタ放電器を制御する請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両電源システム。
【請求項5】
上記制御器は、上記キャパシタの電圧が上記所定の電圧以下に低下すると、上記バッテリと上記キャパシタの電気的接続が遮断されるように上記キャパシタ放電器を制御する請求項4記載の車両電源システム。
【請求項6】
上記キャパシタ放電器は、第1のスイッチ、第2のスイッチ、第3のスイッチ、及び第4のスイッチを備え、上記第1のスイッチは上記キャパシタの一端と上記充電用キャパシタの一端との間に接続され、上記第2のスイッチは上記キャパシタの他端と上記充電用キャパシタの一端との間に接続され、上記第4のスイッチは上記バッテリの一端と上記充電用キャパシタの他端との間に接続され、上記第3のスイッチは上記バッテリの他端と上記充電用キャパシタの他端との間に接続され、上記キャパシタと上記バッテリは、上記キャパシタの他端と上記バッテリの他端を接続することにより、直列に接続されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両電源システム。
【請求項7】
上記キャパシタ放電器は、上記第1のスイッチ及び上記第3のスイッチをON、上記第2のスイッチ及び上記第4のスイッチをOFFとした状態と、上記第1のスイッチ及び上記第3のスイッチをOFF、上記第2のスイッチ及び上記第4のスイッチONをとした状態とを交互に繰り返すことにより、上記バッテリへの充電を行う請求項6記載の車両電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両電源システムに関し、特に、車両に搭載される車両電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-111754号公報(特許文献1)には、自動車が記載されている。この自動車は、車両の衝突が検知され、モータが回転しているときには、インバータの複数のトランジスタのうち上アームの全てまたは下アームの全てをオンにする三相オン制御を実行する。さらに、この三相オン制御を実行することによりモータの回転を停止させ、モータの回転が停止した後、モータにd軸電流を流すことにより、電源システムのコンデンサに蓄積されていた電荷を放電させる放電制御が実行される。また、三相オン制御の実行により、モータを駆動するためのインバータが過熱する場合があるため、特許文献1記載の自動車においては、インバータの温度が閾値以上となると、三相オン制御を中止し、放電制御が中止されるのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-111754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両に搭載するキャパシタ(コンデンサ)を大容量化した場合には、特許文献1記載の発明のように、モータにd軸電流を流すだけでは十分な放電を行うことができない可能性がある。また、キャパシタの交換時においては蓄積された電荷を放電する必要があり、メンテナンス時においてキャパシタの交換を迅速に行うためには、キャパシタに蓄積された電荷を速やかに放電する必要がある。
【0005】
従って、本発明は、車両の衝突時等において、キャパシタに蓄積された電荷を確実且つ速やかに放電させることができる車両電源システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、車両に搭載される車両電源システムであって、定格電圧が所定の電圧よりも低いバッテリと、定格電圧が所定の電圧よりも高いキャパシタと、複数のスイッチ及び充電用キャパシタを備え、キャパシタに蓄積された電荷を放電するためのキャパシタ放電器と、このキャパシタ放電器を制御する制御器と、を有し、バッテリとキャパシタは電気的に直列に接続され、キャパシタ放電器は、直列に接続されたバッテリ及びキャパシタに対して並列に接続され、制御器は、車両の衝突時、又はキャパシタの交換時において、複数のスイッチを制御して、キャパシタに蓄積された電荷を充電用キャパシタに放電させ、充電用キャパシタの電圧が所定電圧まで上昇すると、充電用キャパシタに蓄積された電荷バッテリに充電させることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明によれば、車両の衝突時において、キャパシタ放電器がキャパシタに蓄積された電荷を放電させ、放電された電荷がバッテリに充電されるので、キャパシタに蓄積された電荷を、早期に、確実に放電させることができる。また、キャパシタの交換時においては、キャパシタに蓄積された電荷を速やかに放電し、キャパシタの端子間電圧を急速に低下させることができるので、キャパシタの交換作業を迅速に行うことができる。なお、バッテリは、定格電圧が所定の電圧よりも低いので、キャパシタから放電された電荷が充電された場合でも、電圧が規制電圧以下に抑制され、高電圧による危険はない。
【0008】
さらに、上記のように構成された本発明によれば、キャパシタの交換時においてもキャパシタ放電器がキャパシタに蓄積された電荷を放電させ、放電された電荷がバッテリに充電される。このため、交換すべきキャパシタに蓄積された電荷を速やかに放電させることができ、安全にキャパシタを交換することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、キャパシタ放電器はDC-DCコンバータを備え、制御器は、車両の衝突時、又はキャパシタの交換時において、キャパシタから放電された電荷がDC-DCコンバータにより降圧され、バッテリに充電されるようにキャパシタ放電器を制御する。
【0010】
このように構成された本発明によれば、車両の衝突時、又はキャパシタの交換時において、キャパシタの電圧がDC-DCコンバータにより降圧され、バッテリに充電される。このため、キャパシタの端子間電圧と、バッテリの端子間電圧が大きく異なっている場合でも、キャパシタに蓄積された電荷を、バッテリの劣化を抑制しながらバッテリに充電することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、キャパシタは、蓄積可能な電荷が、バッテリに蓄積可能な電荷よりも少なく構成されている。
このように構成された本発明によれば、キャパシタに蓄積可能な電荷がバッテリに蓄積可能な電荷よりも少ないので、キャパシタに蓄積された電荷を短時間でバッテリに放電することができる。また、バッテリに蓄積可能な電荷が多いため、キャパシタから放電された電荷が充電された場合でも、バッテリの端子間電圧は殆ど上昇することがなく、バッテリ及びキャパシタを確実に低電圧にすることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、制御器は、車両の衝突発生から、又はバッテリの交換可能性を表す信号の受信時から、所定時間以内にキャパシタの電圧が所定の電圧以下に低下するようにキャパシタ放電器を制御する。
【0013】
このように構成された本発明によれば、車両の衝突発生から所定時間以内に、キャパシタ放電器がキャパシタの電圧を所定の電圧以下に低下させるので、衝突時の安全性を、より確実に確保することができる。
【0014】
さらに、上記のように構成された本発明によれば、キャパシタの交換時においても所定時間以内に、キャパシタ放電器がキャパシタの電圧を所定の電圧以下に低下させる。このため、キャパシタを交換する際、速やかにキャパシタの電圧が低下するので、安全、且つ迅速にキャパシタを交換することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、制御器は、キャパシタの電圧が所定の電圧以下に低下すると、バッテリとキャパシタの電気的接続が遮断されるようにキャパシタ放電器を制御する。
【0016】
本発明においては、バッテリの定格電圧は所定の電圧よりも低く設定されており、キャパシタの電圧が所定の電圧以下に低下すると、バッテリとキャパシタの電気的接続がキャパシタ放電器によって遮断される。このため、バッテリとキャパシタが直列に接続されていた場合にも、接続が遮断された後は、所定の電圧を上回る電圧を有する高電圧部品がなく、十分な感電保護性能を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両電源システムによれば、車両の衝突時等において、キャパシタに蓄積された電荷を確実且つ速やかに放電させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態による車両電源システムを搭載した車両のレイアウト図である。
図2】本発明の第1実施形態による車両電源システムのブロック図であり、外部電源による充電時の電流の流れを概略的に示す図である。
図3】本発明の第1実施形態による車両電源システムのブロック図であり、主駆動モータ及び副駆動モータを駆動する際の電流の流れを概略的に示す図である。
図4】本発明の第1実施形態による車両電源システムのブロック図であり、車両の衝突時におけるキャパシタに蓄積された電荷を放電する際の電流の流れを概略的に示す図である。
図5】本発明の第1実施形態による車両電源システムの回路を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態による車両電源システムによる外部電源からの充電時における作用を示すタイムチャートである。
図7】本発明の第1実施形態による車両電源システムによる外部電源からの充電時における回路の状態を示す図である。
図8】本発明の第1実施形態による車両電源システムによるキャパシタの充電時における作用を示すタイムチャートである。
図9】本発明の第1実施形態による車両電源システムによるキャパシタの充電時における回路の状態を示す図である。
図10】本発明の第1実施形態による車両電源システムにおいて、衝突時にキャパシタの電荷をバッテリに充電する作用を示すタイムチャートである。
図11】本発明の第1実施形態による車両電源システムにおいて、衝突時にキャパシタの電荷をバッテリに充電する際の回路の状態を示す図である。
図12】本発明の第1実施形態による車両電源システムにおいて、キャパシタの電荷を放電する際の充電コントローラによる制御を示すフローチャートである。
図13】本発明の第2実施形態による車両電源システムにおいて、キャパシタの交換時に、電荷を放電する際の充電コントローラによる制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による車両電源システムを搭載した車両のレイアウト図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による車両電源システム10を搭載した車両1は、運転席よりも前方の、車両の前部に内燃機関であるエンジン12が搭載され、主駆動輪である左右1対の後輪2aを駆動する所謂FR(Front engine, Rear drive)車である。また、後述するように、後輪2aは主駆動モータによっても駆動され、副駆動輪である左右1対の前輪2bは、インホイールモータである副駆動モータによって駆動される。
【0021】
即ち、車両1は、車両駆動装置として、後輪2aを駆動するエンジン12と、後輪2aに駆動力を伝達する動力伝達機構14と、後輪2aを駆動する主駆動モータ16と、前輪2bを駆動する副駆動モータ20と、制御装置24と、を搭載している。また、車両1には、直流電圧を交流電圧に変換して主駆動モータ16を駆動するインバータ16aと、直流電圧を交流電圧に変換して副駆動モータ20を駆動するインバータ20aが搭載されている。
【0022】
また、車両1に搭載された本発明の第1実施形態による車両電源システム10は、バッテリ18と、キャパシタ22と、外部電源17からの電力を受け入れて、バッテリ18及びキャパシタ22に充電するための充電装置19及び給電口23と、を有する。本実施形態の車両電源システム10の具体的構成については、後述する。
【0023】
エンジン12は、車両1の主駆動輪である後輪2aに対する駆動力を発生するための内燃機関である。本実施形態においては、エンジン12として直列4気筒エンジンが採用されており、車両1の前部に配置されたエンジン12が動力伝達機構14を介して後輪2aを駆動するようになっている。
【0024】
動力伝達機構14は、エンジン12及び主駆動モータ16が発生した駆動力を主駆動輪である後輪2aに伝達するように構成されている。図1に示すように、動力伝達機構14は、エンジン12及び主駆動モータ16に接続された動力伝達軸であるプロペラシャフト14a、及び変速機であるトランスミッション14bを備えている。
【0025】
主駆動モータ16は、主駆動輪に対する駆動力を発生するための電動機であって、車両1の車体上に設けられ、エンジン12の後ろ側に、エンジン12に隣接して配置されている。また、主駆動モータ16に隣接してインバータ16aが配置されており、このインバータ16aにより、バッテリ18の直流電圧が交流電圧に変換されて主駆動モータ16に供給される。さらに、図1に示すように、主駆動モータ16はエンジン12と直列に接続されており、主駆動モータ16が発生した駆動力も動力伝達機構14を介して後輪2aに伝達される。また、本実施形態においては、主駆動モータ16として、48Vで駆動される25kWの永久磁石電動機(永久磁石同期電動機)が採用されている。
【0026】
副駆動モータ20は、副駆動輪である前輪2bに対する駆動力を発生するように、前輪2b各輪に設けられている。また、副駆動モータ20はインホイールモータであり、前輪2b各輪のホイール内に夫々収容されている。また、キャパシタ22の直流電圧は、トンネル部15内に配置されたインバータ20aにより交流電圧に変換されて、各副駆動モータ20に供給される。さらに、本実施形態においては、副駆動モータ20には減速機構である減速機が設けられておらず、副駆動モータ20の駆動力は前輪2bに直接伝えられ、車輪が直接駆動される。また、本実施形態においては、各副駆動モータ20として、17kWの誘導電動機が夫々採用されている。
【0027】
バッテリ18は、主として主駆動モータ16を作動させる電気エネルギーを蓄積するための蓄電器である。さらに、本実施形態においては、バッテリ18として、48V、3.5kWhのリチウムイオンバッテリ(LIB)が使用されている。
【0028】
キャパシタ22は、副駆動モータ20によって回生された電力を蓄積可能に設けられている。キャパシタ22は車両1後部のプラグイン式の充電装置19と概ね対称の位置に配置されると共に、車両1の前輪2b各輪に設けられた副駆動モータ20に電力を供給する。主としてキャパシタ22に蓄積された電力により駆動される副駆動モータ20は、主駆動モータ16よりも高い電圧で駆動される。
【0029】
充電装置19はバッテリ18及びキャパシタ22に電気的に接続され、充電スタンド等の外部電源17から給電口23を介して供給された電力を、これらに充電するように構成されている。一般に、充電スタンド等の外部電源17は、所定の下限電圧(例えば、50V)以上の電圧で充電を行うように構成されており、本実施形態の車両電源システム10は、この下限電圧に対応している。
【0030】
給電口23は、車両1の後部側面に設けられたコネクタであり、充電装置19に電気的に接続されている。給電口23のコネクタは、充電スタンド等の外部電源17から延びる電気ケーブル17aのプラグに接続可能に構成されており、給電口23を介して電力が充電装置19に供給される。このように、本実施形態の車両電源システム10は、直流電力を供給する外部電源17を、電気ケーブル17aを介して給電口23に接続することにより、バッテリ18及びキャパシタ22に充電可能に構成されている。
【0031】
制御装置24は、前後加速度センサ24a、横加速度センサ24b等の各種センサの検出信号が入力されるように構成されている。また、制御装置24は、入力された各センサからの検出信号に基づいて、エンジン12、主駆動モータ16、及び副駆動モータ20を制御するように構成されている。具体的には、制御装置24は、マイクロプロセッサ、メモリ、インタフェイス回路、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)等によって構成することができる。
【0032】
なお、制御装置24は、前後加速度センサ24a及び横加速度センサ24bによって検出された加速度信号に基づいて車両1の衝突を判定し、車両1が衝突した場合には、エアバッグ(図示せず)を展開するための制御信号を出力するように構成されている。また、後述するように、制御装置24からのエアバッグ展開信号は、充電装置19にも送信される。
【0033】
次に、図2乃至図4を参照して、本発明の第1実施形態による車両電源システム10の構成及び作用を概略的に説明する。図2は、本発明の第1実施形態による車両電源システム10のブロック図であり、外部電源17による充電時の電流の流れを概略的に示す図である。図3は、本発明の第1実施形態による車両電源システム10のブロック図であり、主駆動モータ16及び副駆動モータ20を駆動する際の電流の流れを概略的に示す図である。図4は、本発明の第1実施形態による車両電源システム10のブロック図であり、車両1の衝突時におけるキャパシタ22に蓄積された電荷を放電する際の電流の流れを概略的に示す図である。
【0034】
まず、図2に示すように、本実施形態の車両電源システム10においては、バッテリ18とキャパシタ22が直列に接続されている。即ち、本実施形態においては、バッテリ18の正極端子と、キャパシタ22の負極端子を接続することにより、これらが電気的に直列に接続されている。また、バッテリ18の負極端子は、車両1の車体アースに接続されている。ここで、本実施形態においては、バッテリ18の定格電圧は、外部電源17の下限電圧(50V)よりも低い48Vに設定され、キャパシタ22の定格電圧は、外部電源17の下限電圧よりも高い72Vに設定されている。
【0035】
ここで、自動車アセスメント(JNCAP:Japanese New Car Assessment Programme)には、「電気自動車等の衝突時における感電保護性能試験」が規定されている。この感電保護性能試験は、電気自動車及び電気式ハイブリッド自動車が万が一衝突事故を起こした際、乗員が高電圧により感電しないことを目的として定められている。また、感電保護性能試験は、電動機の作動電圧が交流30V及び直流60V以上の自動車が対象となっている。この「電気自動車等の衝突時における感電保護性能試験」の評価項目の1つである「残存電圧測定」では、衝突後、5秒から60秒後における高電圧部品の残存電圧が、AC30V以下、又はDC60V以下であることが要求されている。
【0036】
バッテリ18の定格電圧48Vは、JNCAPにおいて高電圧として規制されている所定の電圧60V(以下、規制電圧という)よりも低く、高電圧としての危険性はない。一方、キャパシタ22の定格電圧72Vは規制電圧60Vよりも高く、JNCAPにより高電圧部品として規制の対象となる。なお、本明細書において、バッテリ18の定格電圧とは、一般的な条件下での作動電圧の最大値を意味し、キャパシタ22の定格電圧とは、キャパシタ22に与えられる最大の電圧を意味する。また、バッテリが一般的な条件下で放電した場合の平均的な作動電圧をバッテリの公称電圧という。さらに、バッテリ18の定格電圧はキャパシタ22の定格電圧よりも低く設定されているが、バッテリ18に蓄積可能な電荷(電気量:クーロン)は、キャパシタ22に蓄積可能な電荷よりも多くなるように構成されている。
【0037】
このように、本実施形態においては、バッテリ18の定格電圧が規制電圧よりも低い電圧に設定されているため、バッテリ18単体では高電圧部品として規制の対象となることはない。一方、バッテリ18とキャパシタ22が直列に接続され状態においては、バッテリ18の負極端子とキャパシタ22の正極端子の間の電圧が規制電圧を超えるので、高電圧部品として規制の対象となる。
【0038】
また、バッテリ18と直列に接続されたキャパシタ22の電圧(バッテリ18の負極とキャパシタ22の正極の間の電圧)は、外部電源17による充電が可能な下限電圧以上であるため、外部電源17からバッテリ18及びキャパシタ22に直接充電することができる。従って、図2に示すように、外部電源17による充電時においては、外部電源17からの直流電流がキャパシタ22、バッテリ18に流れ、キャパシタ22及びバッテリ18が充電される。また、充電装置19は、キャパシタ22及びバッテリ18に夫々接続されており、これらに対する充電を制御するように構成されている。充電装置19の具体的な構成及び作用については後述する。
【0039】
なお、充電装置19は、キャパシタ22に蓄積されている電荷を降圧してバッテリ18に充電したり、バッテリ18蓄積されている電荷を昇圧してキャパシタ22に充電したりすることができるように、DC-DCコンバータを内蔵していても良い。このように、バッテリ18及びキャパシタ22に接続されたDC-DCコンバータを備えることにより、バッテリ18とキャパシタ22の間で電荷の授受が可能となる。これにより、車両1の衝突時において、バッテリ18の劣化を抑制しながら、キャパシタ22に蓄積されている電荷を降圧して、速やかにバッテリ18に充電することができ、キャパシタ22の端子間電圧を低下させることができる。
【0040】
次に、図3に示すように、主駆動モータ16及び副駆動モータ20を駆動する場合には、夫々異なる経路で電力が供給される。まず、主駆動モータ16は、48V程度の比較的低電圧で駆動されるため、主駆動モータ16用のインバータ16aには、バッテリ18から直接電力が供給される。即ち、インバータ16aには、バッテリ18の正極端子及び負極端子が接続され、バッテリ18の直流電圧が印加される。一方、副駆動モータ20は、120V程度の比較的高電圧で駆動されるため、副駆動モータ20用のインバータ20aには、バッテリ18及びキャパシタ22から電力が供給される。即ち、インバータ20aには、キャパシタ22の正極端子と、バッテリ18の負極端子が接続され、バッテリ18及びキャパシタ22の電圧を加算した電圧が印加される。また、キャパシタ22の電荷が放電され、キャパシタ22の端子間電圧が低下した場合には、バッテリ18に蓄積された電荷が充電装置19によってキャパシタ22に充電される。これにより、キャパシタ22の端子間電圧が上昇し、副駆動モータ20の駆動に必要な電圧が確保される。一方、車両1に搭載された12V系の車載機器28に対しては、バッテリ18の出力電圧をDC-DCコンバータ26によって降圧して電力が供給される。
【0041】
さらに、図4に示すように、車両1の衝突時においては、充電装置19によってキャパシタ22に蓄積されている電荷を放電させ、放電された電荷をバッテリ18に充電し、キャパシタ22の端子間電圧を低下させる。従って、本実施形態においては、充電装置19は、キャパシタ22に蓄積された電荷を放電させ、放電された電荷をバッテリ18に充電するキャパシタ放電器として機能する。
【0042】
なお、車両1の制動時においては、車両1の運動エネルギーが主駆動モータ16によって回生され、電力が生成される。主駆動モータ16からの出力電圧は、バッテリ18の正極端子と負極端子の間に印加され、バッテリ18に充電が行われる。また、車両1の制動時においては、副駆動モータ20によっても回生が行われ、電力が生成される。副駆動モータ20からの出力電圧は、キャパシタ22の正極端子とバッテリ18の負極端子の間に印加され、バッテリ18及びキャパシタ22に充電が行われる。ここで、副駆動モータ20によって回生された電力が大きく、キャパシタ22の端子間電圧が所定値以上に上昇した場合にも、図4に示すようにキャパシタ22に蓄積された電荷が放電され、バッテリ18に充電される。
【0043】
次に、図5乃至図11を参照して、本発明の第1実施形態による車両電源システム10の詳細な構成、及び作用を説明する。
図5は、本実施形態の車両電源システム10の回路を示す図である。図6は、本実施形態の車両電源システム10による外部電源からの充電時における作用を示すタイムチャートである。図7は、本実施形態の車両電源システム10による外部電源からの充電時における回路の状態を示す図である。図8は、本実施形態の車両電源システム10によるキャパシタの充電時における作用を示すタイムチャートである。図9は、本実施形態の車両電源システム10によるキャパシタの充電時における回路の状態を示す図である。図10は、本実施形態の車両電源システム10において、衝突時にキャパシタの電荷をバッテリに充電する作用を示すタイムチャートである。図11は、本実施形態の車両電源システム10において、衝突時にキャパシタの電荷をバッテリに充電する際の回路の状態を示す図である。
【0044】
図5に示すように、本実施形態の車両電源システム10は、給電口23を介して外部電源17の電気ケーブル17aに接続され、外部電源17により充電可能に構成されている。また、車両電源システム10には、バッテリ18と、キャパシタ22と、充電装置19が備えられ、外部電源17からの電力がバッテリ18及びキャパシタ22に充電されるように構成されている。さらに、本実施形態の車両電源システム10は、車両の衝突時において、充電装置19がキャパシタ22の電荷を放電させ、放電された電荷をバッテリ18に充電するので、充電装置19は、キャパシタ放電器として機能する。
【0045】
また、上述したように、バッテリ18の正極端子はキャパシタ22の負極端子に接続され、バッテリ18とキャパシタ22が電気的に直列に接続されている。さらに、バッテリ18の正極端子にはスイッチSWbattが接続され、キャパシタ22の正極端子にはスイッチSWcapが接続され、バッテリ18及びキャパシタ22の接続、非接続が切り替え可能に構成されている。
【0046】
充電装置19は、直列接続されたバッテリ18及びキャパシタ22に対して並列に接続されている。また、充電装置19には直列に接続された4つのスイッチが内蔵されており、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4が、この順序で接続されている。スイッチSW1の一端はキャパシタ22の正極端子に接続される一方、スイッチSW4の一端はバッテリ18の負極端子に接続されている。また、スイッチSW2とSW3の接続点は、バッテリ18とキャパシタ22の接続点に接続されている。これらのスイッチSW1~SW4、及びバッテリ18及びキャパシタ22に夫々設けられたSWbatt、SWcapは、充電装置19に内蔵された充電コントローラ19aによって開閉が制御される。具体的には、制御器である充電コントローラ19aは、マイクロプロセッサ、メモリ、インタフェイス回路、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)等によって構成することができる。さらに、スイッチSW1とSW2の接続点と、スイッチSW3とSW4の接続点の間には、充電用キャパシタ19bが接続されている。なお、本実施形態においては、各スイッチとして半導体スイッチが採用されているが、機械接点によるリレーをスイッチとして使用することもできる。
【0047】
次に、図6及び図7を参照して、外部電源17によるバッテリ18及びキャパシタ22への充電を説明する。なお、図6及び図7は、バッテリ18の端子間電圧とキャパシタ22の端子間電圧の合計が、外部電源17による充電が可能な下限電圧以上である場合を示している。
【0048】
図6は、外部電源17によるバッテリ18及びキャパシタ22への充電時における車両電源システム10の作用を示すタイムチャートである。図6は、上段から順に、外部電源17から入力される電圧Vin、スイッチSWbatt及びSWcapの開閉状態、スイッチSW1及びSW3の開閉状態、スイッチSW2及びSW4の開閉状態を示している。これに続いて図6には、キャパシタ22の端子間電圧Vcap(キャパシタ22の正極端子と負極端子の間の電圧)、キャパシタ22に流れる電流Icap、バッテリ18の端子間電圧Vbatt、バッテリ18に流れる電流Ibatt、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vc、充電用キャパシタ19bに流れる電流Icが示されている。
【0049】
図7は、外部電源17によるバッテリ18及びキャパシタ22への充電時における各スイッチの状態、及び電流の流れを示す図である。各スイッチは、外部電源17による充電中において、図7の上段に示すステージ(1)、中段に示すステージ(2)、下段に示すステージ(3)の状態に順次設定される。
【0050】
まず、図6の時刻t1において、外部電源17による充電が開始されると、充電コントローラ19aは、スイッチSWbatt及びSWcapをON(閉状態)にし、スイッチSW1~SW4をOFF(開状態)にする。これにより、車両電源システム10は、図7の上段に示すステージ(1)の状態となる。この状態では、バッテリ18及びキャパシタ22が外部電源17に接続される一方、充電装置19は外部電源17から切り離される。これにより、外部電源17から供給された電流が、キャパシタ22及びバッテリ18に流入(電流Icap、Ibatt>0)し、これらに充電される。これに伴い、キャパシタ22の端子間電圧Vcap及びバッテリ18の端子間電圧Vbattが上昇する。ここで、キャパシタ22に蓄積可能な電荷は、バッテリ18に蓄積可能な電荷よりも少ないため、キャパシタ22の端子間電圧Vcapはバッテリ18の端子間電圧Vbattよりも急激に上昇する。このため、時刻t2においてキャパシタ22の端子間電圧Vcapは、キャパシタ22の定格電圧近くまで上昇する。
【0051】
キャパシタ22の端子間電圧Vcapが上昇すると、時刻t2において充電コントローラ19aは、スイッチSW1及びSW3をONにする(スイッチSWbatt及びSWcapはONのまま、スイッチSW2及びSW4はOFFのまま)。これにより、車両電源システム10は、図7の中段に示すステージ(2)の状態となる。この状態では、外部電源17からの電流が充電装置19の充電用キャパシタ19bに流入すると共に、キャパシタ22に蓄積された電荷が放電(電流Icap<0)され、充電用キャパシタ19bに流入(電流Ic>0)する。これにより、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが上昇し、一方、キャパシタ22の端子間電圧Vcapは低下する。これにより、キャパシタ22は、再び充電可能な状態となる。なお、キャパシタ22の電圧が低下した時刻t3の状態においても、バッテリ18の端子間電圧Vbattとキャパシタ22の端子間電圧Vcapを合計した電圧は、外部電源17による充電が可能な下限電圧以上に維持される。
【0052】
充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが所定電圧まで上昇すると、時刻t3において充電コントローラ19aは、スイッチSW1及びSW3をOFFにし、スイッチSW2及びSW4をONにする(スイッチSWbatt及びSWcapはONのまま)。これにより、車両電源システム10は、図7の下段に示すステージ(3)の状態となる。この状態では、外部電源17からの電流がキャパシタ22及びバッテリ18に流入して、これらが充電されると共に、充電用キャパシタ19bに蓄積された電荷もスイッチSW2、SWbattを通ってバッテリ18に充電される。これにより、キャパシタ22の端子間電圧Vcap及びバッテリ18の端子間電圧Vbattが上昇すると共に、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが低下する。
【0053】
キャパシタ22の端子間電圧Vcapが定格電圧近くまで上昇すると、時刻t4において充電コントローラ19aは、各スイッチを切り替えて、再び車両電源システム10を、図7の中段に示すステージ(2)の状態にする。この状態では、キャパシタ22の端子間電圧Vcapが低下すると共に、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが上昇する(バッテリ18の端子間電圧Vbattはほぼ一定)。次いで、時刻t5において充電コントローラ19aは、各スイッチを図7の下段に示すステージ(3)の状態に切り替え、キャパシタ22及びバッテリ18の端子間電圧を上昇させ、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcを低下させる。以降、充電コントローラ19aは、ステージ(2)の状態とステージ(3)の状態を交互に切り替え、バッテリ18の端子間電圧Vbattを上昇させる(バッテリ18に充電する)。充電コントローラ19aは、バッテリ18の端子間電圧Vbattが充電終了閾値まで上昇し、キャパシタ22の端子間電圧Vcapが定格電圧近くまで上昇すると、キャパシタ22及びバッテリ18への充電を終了する。
【0054】
次に、図8及び図9を参照して、バッテリ18に蓄積された電荷によるキャパシタ22への充電を説明する。なお、図8及び図9に示す作用は、バッテリ18の端子間電圧とキャパシタ22の端子間電圧の合計が、外部電源17による充電が可能な下限電圧未満に低下した場合に、外部電源17による充電を可能にするために実行される。即ち、バッテリ18とキャパシタ22の端子間電圧の合計が下限電圧未満に低下すると、外部電源17による充電が不可となるため、キャパシタ22に充電して端子間電圧を上昇させ、外部電源17による充電を可能にする。また、図8及び図9に示す作用は、車両1の走行中等に、キャパシタ22に蓄積された電荷が低下した場合において、キャパシタ22の端子間電圧を上昇させる目的でも実行される。即ち、走行中にキャパシタ22に蓄積された電荷が減少し、端子間電圧が低下すると、副駆動モータ20を駆動するために必要な電圧が得られなくなるため、キャパシタ22に充電を行うことにより、必要な電圧を回復する。
【0055】
図8は、バッテリ18によるキャパシタ22への充電時における車両電源システム10の作用を示すタイムチャートである。図8は、上段から順に、バッテリ18とキャパシタ22の端子間電圧の合計Vin、スイッチSWbatt及びSWcapの開閉状態、スイッチSW1及びSW3の開閉状態、スイッチSW2及びSW4の開閉状態を示している。これに続いて図8には、キャパシタ22の端子間電圧Vcap、キャパシタ22に流れる電流Icap、バッテリ18の端子間電圧Vbatt、バッテリ18に流れる電流Ibatt、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vc、充電用キャパシタ19bに流れる電流Icが示されている。
【0056】
図9は、バッテリ18の電荷によるキャパシタ22への充電時における各スイッチの状態、及び電流の流れを示す図である。各スイッチは、キャパシタ22への充電中において、図9の上段に示すステージ(11)、中段に示すステージ(12)、下段に示すステージ(13)の状態に順次設定される。
【0057】
まず、図8の時刻t11においては、バッテリ18とキャパシタ22の端子間電圧の合計Vinが下限電圧未満であるため、これを上昇させるべくキャパシタ22への充電が実行される。キャパシタ22への充電を開始すべく、充電コントローラ19aは、時刻t11においてスイッチSWbatt及びSWcapをON(閉状態)にする。さらに、充電コントローラ19aは、時刻t12においてスイッチSW2及びSW4をONにする(スイッチSW1及びSW3はOFF(開状態)のまま)。これにより、車両電源システム10は、図9の上段に示すステージ(11)の状態となる。この状態では、バッテリ18から出力された電流(Ibatt<0)が、スイッチSWbatt及びスイッチSW2を通って充電装置19の充電用キャパシタ19bに流入(Ic>0)する。これにより、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが上昇する。一方、バッテリ18の端子間電圧Vbattは低下するが、バッテリ18には十分な電荷が蓄積されているため、その低下量は僅かである。
【0058】
充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが所定電圧まで上昇すると、時刻t13において充電コントローラ19aは、スイッチSW1及びSW3をONにし、スイッチSW2及びSW4をOFFにする(スイッチSWbatt及びSWcapはONのまま)。これにより、車両電源システム10は、図9の中段に示すステージ(12)の状態となる。この状態では、充電装置19の充電用キャパシタ19bから放電された電流(電流Ic<0)がキャパシタ22に流入(電流Icap>0)する。これにより、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが低下し、一方、キャパシタ22の端子間電圧Vcapは上昇する(バッテリ18の端子間電圧Vbattは変化しない)。この結果、キャパシタ22とバッテリ18の端子間電圧の合計(Vin)が上昇する。
【0059】
充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが所定電圧まで低下すると、時刻t14において充電コントローラ19aは、スイッチSW1及びSW3をOFFにし、スイッチSW2及びSW4をONにする(スイッチSWbatt及びSWcapはONのまま)。これにより、車両電源システム10は、図9の上段に示すステージ(11)の状態に戻る。この状態では、上述したように、バッテリ18からの電流が充電用キャパシタ19bに流入して、充電用キャパシタ19bに充電される。これにより、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが上昇すると共に、バッテリ18の端子間電圧Vbattが僅かに低下する。
【0060】
充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが所定の電圧まで低下すると、時刻t15において充電コントローラ19aは、各スイッチを切り替えて、再び車両電源システム10を、図9の中段に示すステージ(12)の状態にする。この状態では、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが低下すると共に、キャパシタ22の端子間電圧Vcapが上昇する(バッテリ18の端子間電圧Vbattはほぼ一定)。この結果、キャパシタ22とバッテリ18の端子間電圧の合計(Vin)が更に上昇する。以降、充電コントローラ19aは、ステージ(11)の状態とステージ(12)の状態を交互に切り替え、キャパシタ22の端子間電圧Vcap、及びキャパシタ22とバッテリ18の端子間電圧の合計(Vin)を上昇させる(キャパシタ22に充電する)。即ち、図9のステージ(11)とステージ(12)を交互に繰り返すことにより、バッテリ18に蓄積されている電荷が放電されてキャパシタ22に充電され、キャパシタ22の端子間電圧Vcapが上昇する。一方、バッテリ18の電荷は放電されるが、バッテリ18の容量は十分に大きいため、バッテリ18の端子間電圧Vbattの低下は僅かである。このため、バッテリ18の電荷をキャパシタ22に充電することにより、キャパシタ22とバッテリ18の端子間電圧の合計(Vin)を上昇させることができる。
【0061】
図8の時刻t18において、キャパシタ22とバッテリ18の端子間電圧の合計が外部充電開始閾値の電圧に達すると、充電コントローラ19aは、時刻t19において外部電源17からの充電を開始する。なお、外部充電開始閾値は、外部電源17による充電が可能な下限電圧以上に設定されている。即ち、充電コントローラ19aは時刻t19において、スイッチSWbatt及びSWcapをONにする一方、スイッチSW1~SW4をOFFにし、車両電源システム10を図9の下段に示すステージ(13)の状態にする。これにより、外部電源17から供給された電流がキャパシタ22及びバッテリ18に流入し、キャパシタ22及びバッテリ18の端子間電圧が上昇する。なお、時刻t19の後、キャパシタ22の端子間電圧Vcapが所定電圧に到達した場合には、図6及び図7により説明した動作に移行し、バッテリ18への充電を実行する。
【0062】
上記の図8及び図9により説明した動作は、キャパシタ22及びバッテリ18の端子間電圧の合計を、外部電源17からの充電が可能な下限電圧以上の電圧に上昇させる目的で実行されたものである。しかしながら、図8及び図9による動作は、副駆動モータ20に必要な電圧を印加することを目的として、キャパシタ22及びバッテリ18の端子間電圧の合計を上昇させる場合にも実行される。この場合には、図8及び図9による動作は、キャパシタ22及びバッテリ18の端子間電圧の合計が、下限電圧よりも高い状態においても実行される。
【0063】
次に、図10及び図11を参照して、車両1の衝突時におけるキャパシタ22の電荷の放電を説明する。即ち、キャパシタ22に蓄積された電荷を放電して、バッテリ18に充電することにより、キャパシタ22の端子間電圧を低下させて所定の電圧以下にし、感電を防止する。この所定の電圧をJNCAPによって規定されている規制電圧(60V)以下に設定しておくことにより、JNCAPによる要請も満足することができる。また、様々な国の高電圧規制に基づいて種々の電圧を、所定の電圧として設定することができる。なお、図10及び図11に示す作用は、副駆動モータ20により回生された電力をキャパシタ22に充電することにより、キャパシタ22の端子間電圧が、定格電圧近くまで上昇した場合にも実行される。即ち、キャパシタ22の端子間電圧が定格電圧以上に上昇すると、キャパシタ22が劣化する虞がある。このため、キャパシタ22に充電された電荷を、バッテリ18に充電し、回生された電力を有効に活用する。
【0064】
図10は、衝突時にキャパシタ22の電荷を放電してバッテリ18に充電する車両電源システム10の作用を示すタイムチャートである。図11は、上段から順に、バッテリ18とキャパシタ22の端子間電圧の合計Vin、スイッチSWbatt及びSWcapの開閉状態、スイッチSW1及びSW3の開閉状態、スイッチSW2及びSW4の開閉状態を示している。これに続いて図11には、キャパシタ22の端子間電圧Vcap、キャパシタ22に流れる電流Icap、バッテリ18の端子間電圧Vbatt、バッテリ18に流れる電流Ibatt、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vc、充電用キャパシタ19bに流れる電流Icが示されている。
【0065】
図11は、キャパシタ22の電荷の放電によるバッテリ18への充電時における各スイッチの状態、及び電流の流れを示す図である。各スイッチは、キャパシタ22からの放電中において、図11の上段に示すステージ(21)、中段に示すステージ(22)、下段に示すステージ(23)の状態に順次設定される。
【0066】
上述したように、制御装置24(図1)は、前後加速度センサ24a及び横加速度センサ24bの検出信号に基づいて、車両の衝突を判定する。即ち、前後加速度センサ24a又は横加速度センサ24bによって検出された加速度が所定の閾値を超えると、制御装置24は車両1が衝突したと判定する。車両1の衝突が判定されると、制御装置24は、車両1に搭載されたエアバッグ(図示せず)に展開信号を送信し、エアバッグを展開させる。このエアバッグの展開信号は、充電装置19の充電コントローラ19aにも送信され、制御器である充電コントローラ19aは、キャパシタ放電器として機能する充電装置19を制御して、キャパシタ22の電荷を放電させる。
【0067】
まず、図10の時刻t21において充電コントローラ19aがエアバッグの展開信号を受信した際、キャパシタ22の端子間電圧Vcapは所定の電圧よりも高いため、キャパシタ22の端子間電圧Vcapを低下させる必要がある。このため、キャパシタ22の電圧を所定の電圧以下に低下させるべく、キャパシタ22に蓄積された電荷を放電してバッテリ18へ充電し、キャパシタ22の端子間電圧Vcapを低下させる。充電コントローラ19aは、時刻t22においてスイッチSW1及びSW3をONにする(スイッチSWbatt及びSWcapはON(閉状態)のまま、スイッチSW2及びSW4はOFF(開状態)のまま)。これにより、車両電源システム10は、図11の上段に示すステージ(21)の状態となる。この状態では、キャパシタ22から放電された電流(Icap<0)が、スイッチSWcap及びスイッチSW1を通って充電装置19の充電用キャパシタ19bに流入(Ic>0)する。これにより、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが上昇し、キャパシタ22の端子間電圧Vcapは低下する。
【0068】
充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが所定電圧まで上昇すると、時刻t23において充電コントローラ19aは、スイッチSW2及びSW4をONにし、スイッチSW1及びSW3をOFFにする(スイッチSWbatt及びSWcapはONのまま)。これにより、車両電源システム10は、図11の中段に示すステージ(22)の状態となる。この状態では、充電装置19の充電用キャパシタ19bから放電された電流(電流Ic<0)がバッテリ18に流入(電流Ibatt>0)する。これにより、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが低下し、一方、バッテリ18の端子間電圧Vbattは僅かに上昇する(キャパシタ22の端子間電圧Vcapは変化しない)。
【0069】
充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが所定電圧まで低下すると、時刻t24において充電コントローラ19aは、スイッチSW1及びSW3をONにし、スイッチSW2及びSW4をOFFにする(スイッチSWbatt及びSWcapはONのまま)。これにより、車両電源システム10は、図11の上段に示すステージ(21)の状態に戻る。この状態では、上述したように、キャパシタ22からの電流が充電用キャパシタ19bに流入して、充電用キャパシタ19bに充電される。これにより、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが上昇すると共に、キャパシタ22の端子間電圧Vcapが低下する。
【0070】
充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが所定の電圧まで低下すると、時刻t25において充電コントローラ19aは、各スイッチを切り替えて、再び車両電源システム10を、図11の中段に示すステージ(22)の状態にする。この状態では、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが低下すると共に、バッテリ18の端子間電圧Vbattが僅かに上昇する。以降、充電コントローラ19aは、ステージ(21)の状態とステージ(22)の状態を交互に切り替えて、キャパシタ22に蓄積された電荷をバッテリ18に充電して、キャパシタ22の端子間電圧Vcapを低下させる。
【0071】
即ち、図11のステージ(21)とステージ(22)を交互に繰り返すことにより、キャパシタ22の端子間電圧Vcapを所定の電圧(例えば、60V)以下に低下させる。なお、キャパシタ22から放電された電荷が充電されることによるバッテリ18の端子間電圧Vbattの上昇は僅かであり、端子間電圧Vbattはバッテリ18の定格電圧以下に維持される。
【0072】
図10の時刻t28において、キャパシタ22の端子間電圧Vcapが、所定の電圧以下まで低下すると、充電コントローラ19aは、車両電源システム10を、図11の下段に示すステージ(23)の状態にする。即ち、充電コントローラ19aは、時刻t29において、スイッチSWbatt及びSWcapをOFFにすると共に、スイッチSW1~SW4もOFFにする。これにより、電気的に直列に接続されていたキャパシタ22とバッテリ18の接続が遮断される。この状態では、キャパシタ22の端子間電圧Vcap、バッテリ18の端子間電圧Vbattとも所定の電圧以下となり、乗員の感電に対する安全性が確保される。なお、本実施形態においては、図10の時刻t21におけるエアバッグ展開信号の受信時(衝突時)から、時刻t29においてキャパシタ22とバッテリ18の接続が遮断されるまでに所定時間を要する。ここで、JNCAPの「電気自動車等の衝突時における感電保護性能試験」には、衝突後、5秒から60秒後における残存電圧がDC60V以下と規定されている。このため、「所定時間」を、例えば5秒未満に設定しておくことにより、「感電保護性能試験」の要求を確実に満足することができる。また、様々な国の高電圧規制に基づいて種々の「所定時間」を設定することができる。
【0073】
次に、図12を参照して、車両1の衝突時においてキャパシタ22の電荷を放電する際の充電コントローラ19aの作用を説明する。
図12は、キャパシタ22の電荷を放電する際の充電コントローラ19aによる制御を示すフローチャートである。図12に示すフローチャートによる処理は、車両電源システム10の作動中、充電コントローラ19aにより所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0074】
まず、図12のステップS1において、車両1に搭載されている各センサから種々の検出信号が充電コントローラ19aに読み込まれる。このステップS1において読み込まれる検出信号には、バッテリ18の端子間電圧Vbat、キャパシタ22の端子間電圧Vcap、制御装置24から送信されるエアバッグの展開信号が含まれている。なお、バッテリ18及びキャパシタ22の各端子間電圧は、ステップS1の後も時系列で継続的に充電コントローラ19aに入力される。
【0075】
次いで、ステップS2においては、車両1が衝突した否かが判断される。即ち、制御装置24からエアバッグ展開信号が入力された場合には、充電コントローラ19aは車両1が衝突したと判断し、キャパシタ22の端子間電圧Vcapを低下させるべくステップS3以下の処理が実行される。また、エアバッグ展開信号が入力されていない場合には、車両1の衝突はないと判断され、図12に示すフローチャートの1回の処理を終了する。即ち、車両1が衝突していない場合には、車両電源システム10は正常に動作可能であるため、キャパシタ22の電荷の放電は実行されない。なお、本実施形態において、充電コントローラ19aは、エアバッグ展開信号に基づいて車両1の衝突の有無を判断している。これに対し、変形例として、前後加速度センサ24a及び横加速度センサ24b(図1)の検出信号を充電コントローラ19aに入力し、これらの信号と所定の閾値を比較することにより、衝突の有無を判断するように本発明を構成することもできる。
【0076】
さらに、ステップS3においては、ステップS1において入力されたキャパシタ22の端子間電圧Vcapが、所定の電圧よりも高いか否かが判断される。端子間電圧Vcapが所定の電圧よりも高い場合にはステップS4に進み、所定の電圧以下の場合にはステップS6に進む。ステップS6において、充電コントローラ19aは、バッテリ18及びキャパシタ22の電気的接続を遮断する(図11のステージ(23)の状態にする)。即ち、車両1に衝突が発生したが、キャパシタ22の端子間電圧Vcapが所定の電圧以下である場合には、バッテリ18とキャパシタ22の接続を遮断するだけで、所定の電圧よりも電圧が高い高圧部品が存在しなくなる。
【0077】
一方、ステップS4においては、キャパシタ22の端子間電圧Vcapを低下させるべく、キャパシタ22の放電(図11のステージ(21)の状態)と、放電された電荷のバッテリ18への充電(図11のステージ(22)の状態)が実行される。
【0078】
次いで、ステップS5においては、キャパシタ22の端子間電圧Vcapが所定の電圧以下に低下したか否かが判断される。端子間電圧Vcapが所定の電圧以下に低下していない場合にはステップS4に戻り、再びキャパシタ22の放電及びバッテリ18への充電が実行される。以下、端子間電圧Vcapが所定の電圧以下に低下するまでステップS4の処理が繰り返し実行される。キャパシタ22の端子間電圧Vcapが所定の電圧以下に低下するとステップS6の処理が実行され、図12に示すフローチャートの1回の処理を終了する。上述したように、ステップS6においては、バッテリ18及びキャパシタ22の電気的接続が遮断され(図11のステージ(23)の状態にする)、車両電源システム10の各部の電圧が所定の電圧以下にされる。
【0079】
本発明の第1実施形態の車両電源システム10によれば、車両1の衝突時において、キャパシタ放電器である充電装置19がキャパシタ22に蓄積された電荷を放電させ、放電された電荷がバッテリ18に充電される(図10図11)ので、キャパシタ22に蓄積された電荷を、早期に、確実に放電させることができる。なお、バッテリ18は、定格電圧が所定の電圧よりも低いので、キャパシタ22から放電された電荷が充電された場合でも、電圧が所定の電圧以下に抑制され、高電圧による危険はない。
【0080】
また、本実施形態の車両電源システム10によれば、キャパシタ22に蓄積可能な電荷がバッテリ18に蓄積可能な電荷よりも少ないので、キャパシタ22に蓄積された電荷を短時間でバッテリ18に放電することができる。また、バッテリ18に蓄積可能な電荷が多いため、キャパシタ22から放電された電荷が充電された場合でも、バッテリ18の端子間電圧は殆ど上昇することがなく(図10)、バッテリ18及びキャパシタ22を確実に低電圧にすることができる。
【0081】
さらに、本実施形態の車両電源システム10によれば、車両1の衝突発生から所定時間以内に、充電装置19がキャパシタ22の電圧を所定の電圧以下に低下させるので、衝突時の安全性を、より確実に確保することができる。
【0082】
また、本実施形態の車両電源システム10によれば、バッテリ18の定格電圧は所定の電圧よりも低く設定されており、キャパシタ22の電圧が所定の電圧以下に低下すると、バッテリ18とキャパシタ22の電気的接続が充電装置19によって遮断される(図10の時刻t29図11のステージ(23))。このため、バッテリ18とキャパシタ22が直列に接続されていても、接続が遮断された後は、所定の電圧を上回る電圧を有する高電圧部品がなく、十分な感電保護性能を確保することができる。
【0083】
次に、図13を参照して、本発明の第2実施形態による車両電源システムを説明する。
上述した第1実施形態においては、車両1の衝突時における感電保護を目的として、キャパシタ22の端子間電圧Vcapを低下させていた。これに対し、本実施形態においては、メンテナンスにおけるキャパシタ22の交換作業時の感電保護を目的として、キャパシタ22の端子間電圧Vcapが低下される。従って、ここでは本実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。なお、本発明の車両電源システムは、第1実施形態における衝突時の感電保護機能、及び本実施形態におけるキャパシタ交換時の感電保護機能の両方を備えていても良い。
【0084】
図13は、キャパシタ22の交換時において、電荷を放電する際の充電コントローラ19aによる制御を示すフローチャートである。図13に示すフローチャートによる処理は、車両電源システムの作動中、充電コントローラ19aにより所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0085】
まず、図13のステップS11において、車両1に搭載されている各センサから種々の検出信号が充電コントローラ19aに読み込まれる。このステップS11において読み込まれる検出信号には、バッテリ18の端子間電圧Vbat、キャパシタ22の端子間電圧Vcap、キャパシタ22のカバー(図示せず)の取り外しを示す信号が含まれている。なお、バッテリ18及びキャパシタ22の各端子間電圧は、ステップS11の後も時系列で継続的に充電コントローラ19aに入力される。
【0086】
次いで、ステップS12においては、キャパシタ22のカバー(図示せず)が取り外されたか否かが判断される。即ち、車両1に搭載されたキャパシタ22はカバー(図示せず)によって覆われており、キャパシタ22を交換する際にはカバーを取り外す必要がある。このカバーによって覆われている部分には接点スイッチ(図示せず)が設けられており、カバーが取り外されると、接点スイッチからカバーが取り外されたことを表す信号が充電コントローラ19aに送信される。カバーが取り外された旨の信号が入力された場合には、充電コントローラ19aはキャパシタ22の交換作業が行われる可能性があると判断し、キャパシタ22の端子間電圧Vcapを低下させるべくステップS13以下の処理が実行される。また、カバーが取り外された旨の信号が入力されていない場合には、キャパシタ22の交換は行われないと判断され、図13に示すフローチャートの1回の処理を終了する。即ち、キャパシタ22のカバー(図示せず)が取り付けられている状態では、キャパシタ22が交換されることはないため、キャパシタ22の電荷を放電して端子間電圧Vcapを低下させる必要はない。
【0087】
なお、本実施形態において、充電コントローラ19aは、キャパシタ22の交換可能性を表す信号として、接点スイッチ(図示せず)からの信号に基づいて、キャパシタ22の交換が行われるか否かを判断している。これに対し、変形例として、整備を行うべく車両1の制御装置24に車両整備用の電子機器(図示せず)が接続された場合に、キャパシタ22が交換される可能性があると判断することもできる。或いは、車両1に搭載されているカーナビゲーションシステム(図示せず)から、車両1が停車している場所を特定し、車両1が車両整備工場に停車している場合に、キャパシタ22が交換される可能性があると判断することもできる。従って、車両整備用の電子機器(図示せず)が接続されたことを表す信号や、カーナビゲーションシステム(図示せず)からの信号も、キャパシタ22の交換可能性を表す信号として利用することができる。
【0088】
さらに、ステップS13においては、ステップS11において入力されたキャパシタ22の端子間電圧Vcapが、所定の電圧よりも高いか否かが判断される。端子間電圧Vcapが所定の電圧よりも高い場合にはステップS14に進み、所定の電圧以下の場合には、ステップS16に進む。ステップS16において、充電コントローラ19aは、バッテリ18及びキャパシタ22の電気的接続を遮断する(図11のステージ(23)の状態にする)。即ち、キャパシタ22の端子間電圧Vcapが所定の電圧以下の場合には、安全にキャパシタ22の交換作業を行うことができるので、端子間電圧Vcapを低下させる必要がなく、キャパシタ22の電荷の放電は行われない。さらに、ステップS16において、バッテリ18及びキャパシタ22の電気的接続を遮断することにより、バッテリ18に蓄積された電荷の影響を受けることなく、キャパシタ22の交換作業を行えるようにする。なお、本発明の第1実施形態における衝突時の所定の電圧と、本実施形態におけるキャパシタ22の交換時の所定の電圧は、異なる電圧に設定することもできる。
【0089】
一方、ステップS14においては、キャパシタ22の端子間電圧Vcapを低下させるべく、キャパシタ22の放電(図11のステージ(21)の状態)と、放電された電荷のバッテリ18への充電(図11のステージ(22)の状態)が実行される。
【0090】
次いで、ステップS15においては、キャパシタ22の端子間電圧Vcapが所定の電圧以下に低下したか否かが判断される。端子間電圧Vcapが所定の電圧以下に低下していない場合にはステップS14に戻り、再びキャパシタ22の放電及びバッテリ18への充電が実行される。以下、端子間電圧Vcapが所定の電圧以下に低下するまでステップS14の処理が繰り返し実行される。キャパシタ22の端子間電圧Vcapが所定の電圧以下に低下するとステップS16の処理が実行され、図13に示すフローチャートの1回の処理を終了する。上述したように、ステップS16においては、バッテリ18及びキャパシタ22の電気的接続が遮断され(図11のステージ(23)の状態にする)、車両電源システムの各部の電圧が所定の電圧以下にされる。
【0091】
なお、本実施形態においては、ステップS12において、キャパシタ22のカバー(図示せず)が取り外されたことが判定された後、所定時間以内に端子間電圧Vcapが所定の電圧以下に低下される。このため、キャパシタ22の交換作業が実際に開始される前に、キャパシタ22の端子間電圧Vcapを確実に所定の電圧以下に低下させることができる。
【0092】
本発明の第2実施形態の車両電源システムによれば、キャパシタ22の交換時においてキャパシタ放電器である充電装置19がキャパシタ22に蓄積された電荷を放電させ、放電された電荷がバッテリ18に充電される。このため、交換すべきキャパシタ22に蓄積された電荷を速やかに放電させることができ、安全にキャパシタ22を交換することができる。
【0093】
また、本実施形態の車両電源システムによれば、キャパシタ22の交換時においても所定時間以内に、充電装置19がキャパシタ22の電圧を所定の電圧以下に低下させる。このため、キャパシタ22を交換する際、速やかにキャパシタ22の電圧が低下するので、安全、且つ迅速にキャパシタ22を交換することができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態において、車両電源システムは、車両の主駆動モータ及び副駆動モータの駆動に使用されていたが、本発明の車両電源システムは、車両に搭載される任意の電気機器に電力供給に使用することができる。また、上述した実施形態において、車両電源システムは外部電源による充電が可能に構成されていたが、車両に搭載されたモータや発電機等によって生成された電力のみを蓄積可能な車両電源システムに本発明を適用することもできる。さらに、上述した実施形態においては、定格電圧48Vのバッテリを有する車両電源システムに本発明を適用していたが、公称電圧が所定の電圧よりも低いバッテリを有する車両電源システムに本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0095】
1 車両
2a 後輪
2b 前輪
10 車両電源システム
12 エンジン
14 動力伝達機構
14a プロペラシャフト
14b トランスミッション
16 主駆動モータ
16a インバータ
17 外部電源
17a 電気ケーブル
18 バッテリ
19 充電装置(キャパシタ放電器)
19a 充電コントローラ(制御器)
19b 充電用キャパシタ
20 副駆動モータ
20a インバータ
22 キャパシタ
23 給電口(給電機器)
24 制御装置
24a 前後加速度センサ
24b 横加速度センサ
26 DC-DCコンバータ
28 車載機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13