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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】スプリンクラー用継手ユニット
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/68 20060101AFI20221117BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A62C35/68
F16L1/00 D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018132506
(22)【出願日】2018-07-12
(62)【分割の表示】P 2018124571の分割
【原出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020000812
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(72)【発明者】
【氏名】上野 晃
(72)【発明者】
【氏名】近藤 倫明
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-179786(JP,A)
【文献】特許第4239224(JP,B1)
【文献】特開平08-257159(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0410594(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/68
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端に給水パイプが接続されるとともに垂直方向に開口する第2端にスプリンクラーヘッドが取り付けられる継手と、天井において水平方向に延びる棒状の構造材に取り付けられて前記継手を垂直方向へ昇降可能に支持する台座と、を備えたスプリンクラー用継手ユニットにおいて、
前記台座は、前記構造材が挿通され前記構造材に固定される筒部と、その筒部の側方に位置しており且つ垂直方向に延びるガイド孔を有している垂直板部と、前記ガイド孔に挿通されて前記筒部とは反対側の端部が前記継手に連結されている蝶ボルトのねじ部分と、そのねじ部分における前記筒部側の端部に前記ガイド孔から前記筒部側へと突出するよう設けられて前記ねじ部分の前記ガイド孔からの抜け止めを行う前記蝶ボルトの頭部と、を備えており、
前記筒部と前記垂直板部とが水平方向に離間して配置されていることにより、前記筒部と前記垂直板部との間に、上昇した前記蝶ボルトの前記頭部の少なくとも上部を収容可能な収容空間が形成されているスプリンクラー用継手ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー用継手ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の天井において、その上部に位置するスラブには取付金具によって天井下地材が吊り下げ支持されている。そして、天井下地材の下面には、建物の室内と天井とを仕切るための仕切板が取り付けられる。
【0003】
建物の天井においては、スプリンクラーを設置するため、スラブと天井下地材との間に特許文献1に示されるようなスプリンクラー用継手ユニットが設けられる。このスプリンクラー用継手ユニットは、水平方向に開口する第1端に給水パイプが接続されるとともに垂直方向に開口する第2端にスプリンクラーヘッドが取り付けられるエルボ継手と、そのエルボ継手を支持する台座と、を備えている。
【0004】
また、建物の天井においては、天井下地材の上側に水平方向に延びる角棒状の構造材が取り付けられており、同構造材によってスプリンクラー用継手ユニットの台座を支持することも行われている。こうした台座の支持は、特許文献2に示されるように、上記構造材が挿通されて同構造材に対し固定される筒部を台座に形成することによって実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3626842号公報
【文献】特開平11-244408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規な構成のスプリンクラー用継手ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するスプリンクラー用継手ユニットは、第1端に給水パイプが接続されるとともに垂直方向に開口する第2端にスプリンクラーヘッドが取り付けられる継手と、天井において水平方向に延びる棒状の構造材に取り付けられて前記継手を垂直方向へ昇降可能に支持する台座と、を備えたスプリンクラー用継手ユニットにおいて、前記台座は、前記構造材が挿通され前記構造材に固定される筒部と、その筒部の側方に位置しており且つ垂直方向に延びるガイド孔を有している垂直板部と、前記ガイド孔に挿通されて前記筒部とは反対側の端部が前記継手に連結されているガイド軸と、そのガイド軸における前記筒部側の端部に前記ガイド孔から前記筒部側へと突出するよう設けられて前記ガイド軸の前記ガイド孔からの抜け止めを行う抜止部と、を備えており、前記筒部と前記垂直板部とが水平方向に離間して配置されていることにより、前記筒部と前記垂直板部との間に、上昇した前記抜止部の少なくとも上部を収容可能な収容空間が形成されている。
【0008】
上記構成によれば、台座に対し継手を昇降させるとき、その昇降に伴ってガイド軸及び抜止部が垂直板部に対しガイド孔に沿って垂直方向に相対移動する。そして、垂直板部に対しガイド軸及び抜止部が上方に相対移動するとき、抜止部の少なくとも上部が筒部と垂直板部との間に形成されている収容空間に収容可能となる。このため、筒部等に対する抜止部の少なくとも上部の干渉を抑制することができ、そうした干渉に起因して継手の昇降範囲が狭くなることを抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】スプリンクラー用継手ユニットが適用される建物の天井の構造を概略的に示す斜視図。
図2】スプリンクラー用継手ユニットを示す断面図。
図3図2のスプリンクラー用継手ユニットを仕切板の透孔側から見た状態を示す底面図。
図4】スライダが第2台座部材の垂直板部に対し最下点まで下がった状態を示す断面図。
図5】スライダの保持部におけるボルトの操作態様を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、スプリンクラー用継手ユニットの一実施形態について、図1図5を参照して説明する。
図1に示すように、建物における天井の上部に位置するスラブ1には、互いに平行となるように水平方向に延びる複数のC型チャンネル2が、取付金具3によって吊り下げ支持されている。更に、各C型チャンネル2の下面には、互いに平行となるようにC型チャンネル2と交差する方向に延びる複数の天井下地材4が固定されている。従って、各天井下地材4は、C型チャンネル2及び取付金具3によってスラブ1に対し吊り下げ支持されている。
【0011】
天井下地材4の下面には、建物の室内と天井とを仕切るための複数の仕切板5が取り付けられている。一方、建物の天井における天井下地材4の上側、詳しくはC型チャンネル2の上面には、水平方向に延びる角棒状の構造材6が取り付けられている。そして、この構造材6は、建物の天井におけるスラブ1と天井下地材4との間において、建物における電気配線等を支持したり、スプリンクラー用継手ユニットを支持したりするために用いられる。
【0012】
図2に示すように、スプリンクラー用継手ユニット7は、水平方向に開口する第1端8a及び垂直方向に開口する第2端8bを有するエルボ継手8と、上記構造材6に取り付けられてエルボ継手8を支持する台座9と、を備えている。上記エルボ継手8においては、第1端8aに給水パイプ10が接続される一方、第2端8bにスプリンクラーヘッド11が取り付けられる。
【0013】
なお、給水パイプ10は、建物の天井(図1)におけるスラブ1と天井下地材4との間において略水平方向に延びている。また、天井下地材4の下面に取り付けられた上記仕切板5には、図2に示すようにエルボ継手8の第2端8bに取り付けられたスプリンクラーヘッド11の一部を露出させるための透孔12が形成されている。ちなみに、第2端8bに対するスプリンクラーヘッド11の突出量、言い換えれば図2におけるスプリンクラーヘッド11の下面の高さ位置は、同スプリンクラーヘッド11の種類によって異なるものとなる。
【0014】
スプリンクラー用継手ユニット7の台座9は、上記構造材6が挿通されて同構造材6に対し固定される筒部13を有する第1台座部材14を備えている。なお、構造材6においては、第1台座部材14の筒部13に挿通されたときに同筒部13と接する面が、台座9が取り付けられる施工面として機能する。
【0015】
上記第1台座部材14の筒部13は、金属板を角筒状に曲げ加工するとともに同曲げ加工を通じて金属板の厚さ方向に重なった部分同士をリベット38により連結することで形成される。なお、金属板の厚さ方向に重なった部分同士を、リベット38により連結する代わりに、電気溶接等によって溶接するようにしてもよい。また、上記筒部13には、ねじ孔39が形成されている。そして、ねじ孔39に蝶ボルト40をねじ込むと、構造材6が蝶ボルト40によって押圧される。その結果、構造材6と筒部13との間の摩擦力を通じて、同構造材6に対し筒部13が固定されるようになる。なお、蝶ボルト40を用いる代わりに、ねじ孔39を介してビスを筒部13にねじ込むことにより、構造材6に対し筒部13を固定するようにしてもよい。
【0016】
上記第1台座部材14には、筒部13から上方に延びる支持板15が形成されている。そして、支持板15の上部は水平方向に延びるように屈曲しており、同支持板15の先端部15a(図2の右端部)は上方に向かって突出するよう屈曲している。
【0017】
スプリンクラー用継手ユニット7の台座9は、上記第1台座部材14に対し連結されている第2台座部材16も備えている。なお、第2台座部材16は、第1台座部材14を介して構造材6に対し取り付けられることから、構造材6の施工面に取り付けられる台座本体としての役割を担う。この第2台座部材16には上記エルボ継手8が設けられている。そして、第2台座部材16には、上記エルボ継手8を垂直方向へ昇降可能に支持するスライダ17が保持されている。なお、このときの第2台座部材16は、エルボ継手8を支持するためのスライダ17を昇降可能に保持する継手用台座としての役割を担う。
【0018】
第2台座部材16には、第1台座部材14における支持板15の上部であって水平方向に延びる部分の下面に対し厚さ方向に重なる水平板部18、及び、その水平板部18から下方に向けて延びる垂直板部19が形成されている。この垂直板部19は、第1台座部材14の筒部13に対し側方(図2の右方)に位置している。そして、筒部13と垂直板部19とは水平方向に離間して配置されており、それによって筒部13と垂直板部19との間に収容空間Sが形成されている。
【0019】
垂直板部19における幅方向(図2の紙面と直交する方向)の両縁にはそれぞれ、筒部13側とは反対側(図2の右側)に向けて突出するガイド壁20が垂直方向に延びるように形成されている(図2には一方のガイド壁20のみ図示)。更に、垂直板部19における幅方向の中央部には、垂直方向に長い長孔となるガイド孔21が形成されている。なお、このガイド孔21は、垂直板部19を水平方向に貫通する貫通孔となっている。
【0020】
第2台座部材16に保持される上記スライダ17は、エルボ継手8と一体形成された保持部22と、その保持部22から突出して上記ガイド孔21を貫通するとともにガイド孔21内での変位が可能とされている軸部23と、その軸部23における保持部22側とは反対側の端部に螺入された蝶ボルト24と、を備えている。なお、軸部23及び保持部22には、上記蝶ボルト24が螺入されるねじ孔25が、水平方向に延びるように形成されている。
【0021】
上記軸部23は、ガイド孔21内で同孔21の長手方向(垂直方向)に移動することが可能となっている。そして、軸部23の一方の端部(図2の右端部)は、エルボ継手8を支持するための上記保持部22が繋がっている。なお、軸部23のもう一方の端部(図1の左端部)に螺入された蝶ボルト24は、ガイド孔21に挿通されて第1台座部材14の筒部13とは反対側(図2の右側の)の端部が保持部22を介してエルボ継手8に連結されているガイド軸として機能する。この蝶ボルト24の頭部24aは、ガイド孔21からの上記軸部23の抜けを防止する係止部として機能する。更に、蝶ボルト24の頭部24aは、同蝶ボルト24(ガイド軸)における筒部13側(図2の左側)の端部にガイド孔21から筒部13側へと突出するよう設けられて蝶ボルト24のガイド孔21からの抜け止めを行う抜止部としても機能する。
【0022】
なお、図3は、図2に示す仕切板5の透孔12側からスプリンクラー用継手ユニット7を見た状態を示している。図3から分かるように、スライダ17の保持部22には、垂直板部19における一対のガイド壁20に対しそれぞれ面接触する接触部22aが形成されている。このため、スライダ17(軸部23)及びエルボ継手8が垂直方向(図3の紙面と直交する方向に)に移動するときには、その移動が一対のガイド壁20によってガイドされるとともに、軸部23の中心線周りについての回転が規制されるようになる。
【0023】
図2に示すように、スライダ17の保持部22には、垂直方向に延びて同保持部22を貫通するねじ孔26が形成されている。このねじ孔26は、上記ねじ孔25と交差している。そして、ねじ孔26には下方から上方に向けてボルト27(操作部材)がねじ込まれている。このボルト27の頭部27aには六角穴27bが形成されている。そして、六角穴27bに工具を挿入した状態で同工具を用いて、ボルト27をその中心線周りに回動操作することにより、同ボルト27が保持部22に対し上記中心線方向に変位し、その変位に伴ってボルト27の頭部27aが保持部22に対し接近離間する。
【0024】
第2台座部材16には、ボルト27の回動操作に基づきスライダ17を軸部23の延びる方向に押圧し、それによってスライダ17(保持部22又は蝶ボルト24の頭部24a)を垂直板部19に押し付けて固定する固定部材28が設けられている。固定部材28は、第2台座部材16の垂直板部19とスライダ17の保持部22との間の隙間に配置された第1プレート29と、その第1プレート29の端部(図2の下端部)に繋がる第2プレート30と、を備えている。
【0025】
固定部材28の第1プレート29において、ガイド孔21の長手方向(垂直方向)及び軸部23の延びる方向(水平方向)に対しそれぞれ直交する方向の幅は、その方向におけるガイド孔21の幅よりも大きくされている。この第1プレート29における第2プレート30側の端部とは反対側の端部には、軸部23を径方向に挟み込むように収容する凹所31が形成されている。また、固定部材28の第2プレート30は、上記垂直板部19と上記保持部22との間の隙間外に配置されており、第1プレート29に対し傾斜してボルト27の頭部27aにおける保持部22に対する接近離間方向について同保持部22との間に隙間を有している。更に、第2プレート30は、上記ボルト27のねじ部27cを挿通するための挿通部32(この例では孔)を有している。
【0026】
そして、ボルト27の締め付ける方向への回動操作に基づき、同ボルト27の頭部27aが保持部22に接近すると、第2プレート30が保持部22における第1プレート29の端部寄りの縁部分P1を支点に回動し、それに伴って第1プレート29が蝶ボルト24の頭部24aと垂直板部19とを軸部23の延びる方向に押圧する。詳しくは、第1プレート29が垂直板部19に押圧されることによって固定部材28が軸部23の延びる方向において保持部22を垂直板部19から離れる方向に押圧する。このように保持部22が垂直板部19から離れる方向に押圧されることに伴い、軸部23と繋がる蝶ボルト24の頭部24aが軸部23の延びる方向において垂直板部19に押圧され、それによってスライダ17(エルボ継手8)が第2台座部材16(垂直板部19)に対し固定される。
【0027】
一方、ボルト27の緩める方向への回動操作に基づき同ボルト27の頭部27aが保持部22から離間すると、第2プレート30が保持部22における第1プレート29の端部寄りの縁部分P1を支点に上述した回動とは逆の方向への回動が許容される。その結果、第1プレート29による蝶ボルト24の頭部24aと垂直板部19との軸部23の延びる方向についての押圧が解除される。詳しくは、第1プレート29の垂直板部19に対する押圧が解除されることによって固定部材28が軸部23の延びる方向において保持部22を垂直板部19から離れる方向に押圧することも解除される。そして、同押圧が解除されることによって、軸部23と繋がる蝶ボルト24の頭部24aが軸部23の延びる方向において垂直板部19に押圧されることも解除される。その結果、スライダ17(エルボ継手8)の第2台座部材16(垂直板部19)に対する固定も解除され、スライダ17がガイド孔21の長手方向(垂直方向)に移動することが可能となる。
【0028】
ちなみに、ボルト27の緩める方向への回動動作を通じてスライダ17の第2台座部材16に対する固定を解除した状態のもと、スライダ17の保持部22を垂直板部19に対し最接近させたときには、スライダ17における軸部23の突出方向の先端が垂直板部19から若干突出するようになる。すなわち、そうしたことが生じるように保持部22に対する軸部23の突出量(軸部23の突出方向の長さ)が定められている。これにより、ボルト27を緩めたときに垂直板部19と蝶ボルト24の頭部24aとの間に隙間を形成することが可能となり、その隙間によって蝶ボルト24の頭部24aにおけるガイド孔21に対する干渉(引っ掛かり等)が生じにくくなるため、スライダ17のガイド孔21に沿った移動をスムーズに行うことができるようになる。
【0029】
スライダ17が垂直板部19(ガイド孔21)に対し垂直方向に相対移動するとき、蝶ボルト24及びエルボ継手8等もスライダ17と一体移動する。しかし、そのように移動する蝶ボルト24の頭部24aの上部が、第1台座部材14における筒部13に対し干渉することはない。すなわち、筒部13と垂直板部19との間に形成されている収容空間Sは、蝶ボルト24の頭部24aの少なくとも上部(この例では全部)を収容可能とされており、それによって蝶ボルト24の垂直方向への移動時に頭部24aが第1台座部材14における筒部13に対し干渉しないようにされている。
【0030】
次に、スプリンクラー用継手ユニット7における第1台座部材14と第2台座部材16との連結構造について詳しく説明する。
第2台座部材16の水平板部18は、第1台座部材14における支持板15の上部であって水平方向に延びる部分に対し、ボルト33(垂直軸)を介して連結されている。詳しくは、厚さ方向に重なる水平板部18と支持板15の上部とをボルト33が上方から下方に貫通しており、そのボルト33と水平板部18の下側に位置するナット34とによるボルト締結を通じて水平板部18と支持板15とが連結されている。
【0031】
ボルト33の頭部33aは、支持板15の先端部15aの側壁に対し面接触している。これにより、ナット34を締めたり緩めたりするとき、そのナット34に伴いボルト33が供回りしないようにされている。ちなみに、ナット34を緩めた状態のもとでは第2台座部材16がボルト33を中心に回動可能となる一方、ナット34を締めた状態のもとではボルト33を中心とする第2台座部材16の上記回動が規制される。
【0032】
また、ボルト33における支持板15及び水平板部18を貫通する位置は、ボルト33の中心線がエルボ継手8の第2端8bの中心線と一致する位置に定められている。このため、第2台座部材16がボルト33を中心に回動するとき、エルボ継手8の第2端8b(スプリンクラーヘッド11)が仕切板5の透孔12に対応する位置から水平方向にずれてしまうことは抑制される。
【0033】
次に、スプリンクラー用継手ユニット7を設置する手順について説明する。
図1に示す建物の天井において、天井下地材4に対し仕切板5を取り付ける前(設置前)に、スプリンクラー用継手ユニット7(図2)が固定されている構造材6を、C型チャンネル2に対し取り付ける。このときのスプリンクラー用継手ユニット7は、図2に示すようにエルボ継手8の第1端8aに給水パイプ10が接続されているとともに第2端8bにスプリンクラーヘッド11が取り付けられた状態とされている。
【0034】
エルボ継手8の第1端8aに接続される給水パイプ10は、建物の天井におけるスラブ1と天井下地材4との間において略水平方向に延びてはいるものの、必ずしも第1端8aの開口方向に沿って且つ第1端8aの開口に向かって延びているとは限らず、第1端8aの開口方向に対し傾斜して延びていることも考えられる。このように給水パイプ10の延びる方向と第1端8aの開口方向とが異なっているとき、第1台座部材14に対する第2台座部材16の相対位置が固定されていると、第1端8aに接続される給水パイプ10を湾曲させなければならなくなり、同給水パイプ10がパイプ毎に規定された曲げ半径を越えて曲げられるおそれがある。
【0035】
こうした問題に対処するため、水平板部18と支持板15とのボルト締結に用いられているナット34を緩めることにより、第2台座部材16をボルト33周りに回動できる状態とする。なお、図3は、第2台座部材16を所定角度分だけ上述したように回動させた状態を示している。そして、第2台座部材16の上記回動を通じて、エルボ継手8における第1端8aの開口方向を上記給水パイプ10の延びる方向に対応させる。このように第2台座部材16(エルボ継手8)を回動させることにより、エルボ継手8の第1端8aに接続される給水パイプ10が、パイプ毎に規定された曲げ半径を越えて曲げられることは抑制される。
【0036】
なお、上述したように第2台座部材16(エルボ継手8)の回動を行った後、図2に示すナット34を締めることにより、第2台座部材16(エルボ継手8)の上記回動方向についての位置が固定される。
【0037】
図2に示すように、スプリンクラー用継手ユニット7においては、固定部材28の第1プレート29が、保持部22における第1プレート29の端部寄りの縁部分P1を支点に保持部22との間に隙間を有するよう回動して傾いた状態となるようにされる。すなわち、第1プレート29がそうした状態となるようボルト27のねじ部27cがねじ孔26にねじ込まれる。
【0038】
更に、スプリンクラー用継手ユニット7においては、蝶ボルト24をある程度緩めることによって、スライダ17及びエルボ継手8を第2台座部材16(垂直板部19)に対しガイド孔21に沿って垂直方向に相対移動させることが可能となる。なお、図4は、スライダ17が第2台座部材16の垂直板部19に対し最下点まで下がった状態を示している。
【0039】
そして、スライダ17及びエルボ継手8は、スプリンクラー用継手ユニット7を構造材6に取り付ける前に、第2台座部材16の垂直板部19に対する垂直方向についての相対位置が次のように予め調整される。すなわち、スプリンクラー用継手ユニット7が固定されている構造材6をC型チャンネル2(図1)に対し取り付けたとき、天井下地材4に取り付け予定の仕切板5に対応する高さにスプリンクラーヘッド11が位置するよう、垂直板部19に対するスライダ17及びエルボ継手8の垂直方向についての相対位置が予め調整される。
【0040】
このように垂直板部19に対するスライダ17及びエルボ継手8の相対位置が調整された後、蝶ボルト24の締め付けが行われることにより、固定部材28の第1プレート29が保持部22との間に隙間を有した状態で、蝶ボルト24の頭部24aと垂直板部19とが軸部23の延びる方向に押圧される。そして、その押圧を通じてスライダ17が垂直板部19に対し固定される。
【0041】
蝶ボルト24の締め付けによって第2台座部材16の垂直板部19に対しスライダ17が固定された後、図2に示すように天井下地材4の下面に仕切板5が取り付けられる。このときには、エルボ継手8の第2端8bに取り付けられているスプリンクラーヘッド11が、仕切板5の透孔12に対応して位置するようになる。ただし、垂直板部19に対するスライダ17の固定位置を誤ったり、仕切板5を取り付ける高さ位置に誤差が生じたりすることが原因で、仕切板5の透孔12からスプリンクラーヘッド11の一部を適正に露出させることができないおそれがある。
【0042】
この場合、スプリンクラーヘッド11の一部を透孔12から適正に露出させることができるよう、スライダ17(エルボ継手8)の垂直方向についての位置を次のように調整し直すことが行われる。
【0043】
上述したようにスライダ17(エルボ継手8)が垂直板部19に対し固定されているとき、スライダ17の保持部22にあるボルト27を緩める方向に回動操作すれば、ボルト27の頭部27aが保持部22から離間し、上記第1プレート29の押圧によるスライダ17の垂直板部19に対する固定が解除される。その結果、垂直板部19に対しスライダ17及びエルボ継手8を垂直方向に相対移動させることが可能となる。
【0044】
このことから、図5に示すように、仕切板5の透孔12を介して、スライダ17(保持部22)におけるボルト27の頭部27aの六角穴27bに六角レンチ35を挿入し、その状態で六角レンチ35を用いてボルト27を緩める方向に回動操作する。これにより、ボルト27がその中心線方向に変位し、それに伴ってボルト27の頭部27aが保持部22に対し離間する。そして、ボルト27の頭部27aが保持部22から離間すると、第2プレート30が保持部22における第1プレート29の端部寄りの縁部分P1を支点にして同保持部22から離間する方向に回動することが可能となる。その結果、第1プレート29による軸部23の延びる方向についてのスライダ17(蝶ボルト24の頭部24a)と垂直板部19との押圧が解除され、ひいては垂直板部19に対するスライダ17の固定が解除される。
【0045】
このようにスライダ17の固定を解除した状態のもとでは、スライダ17を仕切板5の透孔12を介して直接的に操作することにより、詳しくは六角レンチ35でスライダ17を上げ下げすることにより、同スライダ17をガイド孔21内での上記軸部23の変位が可能な範囲で自在に移動させることができる。そして、エルボ継手8の第2端8bに接続されたスプリンクラーヘッド11の一部が透孔12から適正に露出するよう、スライダ17(エルボ継手8)の位置を調整した後、六角レンチ35による締める方向へのボルト27の回動操作を通じて、同ボルト27の頭部27aを保持部22に接近させる。これにより、第2プレート30が保持部22における第1プレート29の端部寄りの縁部分P1を支点に回動し、第1プレート29がスライダ17と垂直板部19とを上記軸部23の延びる方向に押圧する。そして、この押圧に伴ってスライダ17における蝶ボルト24の頭部24aが第2台座部材16の垂直板部19に押し付けられる。
【0046】
こうして第2台座部材16の垂直板部19に対するスライダ17の垂直方向について位置が固定された後、エルボ継手8の第2端8bに接続されたスプリンクラーヘッド11からキャップ36が取り外され、スプリンクラーヘッド11に対し図2に二点鎖線で示すようにシーリングプレート37が取り付けられる。このシーリングプレート37は、スプリンクラーヘッド11を保護するとともに、同ヘッド11から水が放出されたとき、その水が透孔12を介して仕切板5とスラブ1(図1)との間に入り込むことを防止するためのものである。
【0047】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)天井において、エルボ継手8の第1端8aに接続される給水パイプ10が、第1端8aの開口方向に対し傾斜して延びている場合がある。この場合でも、エルボ継手8が設けられている第2台座部材16が第1台座部材14の支持板15に対しボルト33を中心に相対回動されることにより、上記第1端8aの開口方向を給水パイプ10の延びる方向に対応させることができる。このように第2台座部材16(エルボ継手8)を回動させることにより、エルボ継手8の第1端8aに接続される給水パイプ10が、パイプ毎に規定された曲げ半径を越えて曲げられることは抑制されるようになる。
【0048】
(2)第2台座部材16の水平板部18と第1台座部材14の支持板15とのボルト締結に用いられているナット34を緩めることにより、第2台座部材16がボルト33周りに回動できる状態となる一方、上記ナット34を締め付けることによって第2台座部材16の上記回動が規制される。上記ボルト締結の際にナット34と共に用いられるボルト33の頭部33aは、支持板15の先端部15aの側壁に対し面接触しているため、ナット34を締めたり緩めたりするとき、それに伴ってボルト33が供回りすることを抑制できる。
【0049】
(3)スライダ17が垂直板部19(ガイド孔21)に対し垂直方向に相対移動するとき、それに伴って垂直方向に移動する蝶ボルト24の頭部24aは、第1台座部材14における筒部13と第2台座部材16の垂直板部19との間に形成された収容空間Sに収容される。このため、スライダ17の垂直方向への移動時、蝶ボルト24の頭部24aが第1台座部材14における筒部13に対し干渉することは抑制される。従って、そうした干渉に起因してエルボ継手8の垂直方向についての移動範囲(昇降範囲)が狭くなることを抑制できる。
【0050】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・収容空間Sについては、必ずしも蝶ボルト24の頭部24a全体を収容可能とする必要はなく、その頭部24aの上部等のみが収容可能であってもよい。
【0051】
・スプリンクラー用継手ユニット7に用いられる継手は、必ずしもエルボ継手8である必要はなく、エルボ継手8以外の継手を用いることも可能である。
・蝶ボルト24の頭部24aと第2台座部材16の垂直板部19との間に、金属製の座金やフッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)等の合成樹脂製のすべりプレートを設けるようにしてもよい。この場合、スライダ17をガイド孔21に沿って移動させるとき、蝶ボルト24の頭部24aが垂直板部19のガイド孔21の形成された部分に対し干渉することはなくなるため、上記スライダ17の移動をスムーズに行うことができる。
【0052】
・ボルト33の頭部33aは、必ずしも支持板15の先端部15aの側壁に対し面接触している必要はなく、例えば同側壁との間にボルト33の回動を防止できる程度の隙間が形成されていてもよい。
【0053】
・スプリンクラー用継手ユニット7の台座9は、第1台座部材14と第2台座部材16とが一体に形成されているタイプのもの、すなわち第2台座部材16が第1台座部材14に対し相対回動できないタイプのものであってもよい。詳しくは、第1台座部材14における支持板15の上部であって水平方向に延びる部分のうち、第2台座部材16の水平板部18と厚さ方向に重なる部分を省略するとともに、その第2台座部材16の水平板部18も省略する。そして、第2台座部材16の垂直板部19を第1台座部材14の支持板15と一体に形成する。この場合、エルボ継手8の上下を上記実施形態と同じにした状態で、且つ、台座9の上下を上記実施形態に対し反転させた状態で、同台座9を構造材6に取り付けることにより、エルボ継手8の昇降範囲を上記実施形態の場合と比較して上下にずらすことが可能である。
【0054】
次に、上記実施形態から把握できる技術思想について記載する。
(イ)第1端に給水パイプが接続されるとともに垂直方向に開口する第2端にスプリンクラーヘッドが取り付けられる継手と、天井において水平方向に延びる棒状の構造材に取り付けられて前記継手を垂直方向へ昇降可能に支持する台座と、を備えたスプリンクラー用継手ユニットにおいて、
前記台座は、前記構造材が挿通され前記構造材に固定される筒部と、その筒部の側方に位置しており且つ垂直方向に延びるガイド孔を有している垂直板部と、前記ガイド孔に挿通されて前記筒部とは反対側の端部が前記継手に連結されているガイド軸と、そのガイド軸における前記筒部側の端部に前記ガイド孔から前記筒部側へと突出するよう設けられて前記ガイド軸の前記ガイド孔からの抜け止めを行う抜止部と、を備えており、
前記筒部と前記垂直板部とが水平方向に離間して配置されていることにより、前記筒部と前記垂直板部との間に、上昇した前記抜止部の少なくとも上部を収容可能な収容空間が形成されているスプリンクラー用継手ユニット。
【0055】
上記構成によれば、台座に対し継手を昇降させるとき、その昇降に伴ってガイド軸及び抜止部が垂直板部に対しガイド孔に沿って垂直方向に相対移動する。そして、垂直板部に対しガイド軸及び抜止部が上方に相対移動するとき、抜止部の少なくとも上部が筒部と垂直板部との間に形成されている収容空間に収容可能となる。このため、筒部等に対する抜止部の少なくとも上部の干渉を抑制することができ、そうした干渉に起因して継手の昇降範囲が狭くなることを抑制できるようになる。
【0056】
(ロ)施工面に取り付けられる台座本体と、前記台座本体に移動可能に保持されて継手を支持するためのスライダと、を備えた継手用台座において、
前記スライダは、前記台座本体に形成されている貫通孔を貫通するとともに同貫通孔内での変位が可能である軸部と、その軸部の一方の端部に繋がって前記継手を支持する保持部と、前記軸部のもう一方の端部に繋がって前記貫通孔からの前記軸部の抜けを防止する係止部と、を備えており、
前記スライダの前記保持部には回動操作される操作部材が設けられており、
前記操作部材の回動操作に基づき前記スライダを前記軸部の延びる方向に押圧し、それによって前記保持部又は前記係止部を前記台座本体に押し付けて固定する固定部材が設けられていることを特徴とする継手用台座。
【0057】
上記構成によれば、施工面に台座本体が取り付けられた状態のもと、継手を支持するスライダの保持部が仕切板の透孔に対応して位置するよう仕切板が設置される。そうした設置後において、台座本体に対するスライダ(継手)の固定位置を調整する必要が生じたときには、その調整を容易かつ速やかに行うことが可能になる。すなわち、台座本体に対するスライダの固定位置を調整する際には、仕切板の透孔を介して保持部にある操作部材を回動操作することによりスライダの固定が解除される。このようにスライダの固定を解除すれば、同スライダを上記透孔を介して直接的に操作することにより、上記スライダを貫通孔内での上記軸部の変位が可能な範囲で自在に移動させることができる。このため、台座本体に対しスライダを容易かつ速やかに相対移動させることができ、そのスライダの移動を通じて同スライダの固定位置の調整を容易かつ速やかに行うことができる。位置調整後のスライダの台座本体に対する固定は、操作部材を上述した回転操作と逆の方向に回動操作することによって行われる。
【0058】
(ハ)水平方向に開口する第1端に給水パイプが接続されるとともに垂直方向に開口する第2端にスプリンクラーヘッドが取り付けられるエルボ継手と、天井において水平方向に延びる棒状の構造材に取り付けられて前記エルボ継手を支持する台座と、を備えたスプリンクラー用継手ユニットにおいて、前記台座は、前記構造材が挿通されて同構造材に対し固定される筒部を有する第1台座部材と、前記エルボ継手が設けられるとともに前記第1台座部材に対し垂直軸を介して連結されて同垂直軸を中心に回動可能な第2台座部材と、を備えることを特徴とするスプリンクラー用継手ユニット。
【符号の説明】
【0059】
1…スラブ、2…C型チャンネル、3…取付金具、4…天井下地材、5…仕切板、6…構造材、7…スプリンクラー用継手ユニット、8…エルボ継手、8a…第1端、8b…第2端、9…台座、10…給水パイプ、11…スプリンクラーヘッド、12…透孔、13…筒部、14…第1台座部材、15…支持板、15a…先端部、16…第2台座部材、17…スライダ、18…水平板部、19…垂直板部、20…ガイド壁、21…ガイド孔、22…保持部、22a…接触部、23…軸部、24…蝶ボルト、24a…頭部、25…ねじ孔、26…ねじ孔、27…ボルト、27a…頭部、27b…六角穴、27c…ねじ部、28…固定部材、29…第1プレート、30…第2プレート、31…凹所、32…挿通部、33…ボルト、33a…頭部、34…ナット、35…六角レンチ、36…キャップ、37…シーリングプレート、38…リベット、39…ねじ孔、40…蝶ボルト。

図1
図2
図3
図4
図5