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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20221117BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G01N21/84 E
G01N21/88 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019047130
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020148661
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 豊
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 和志
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-047290(JP,A)
【文献】米国特許第06788411(US,B1)
【文献】国際公開第2017/051447(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影画像を用いて対象物を検査する検査装置であって、
マトリクス状に配置された複数の照明要素から出射される光の組み合わせを制御し、前記対象物の各点に対して、立体角の大きさ及び前記立体角を形成する光の照射方向の少なくともいずれかを調整した光を、それぞれ照射する照明部と、
前記照明部により照明された前記対象物を撮影する撮影部と、
前記対象物の被撮影状態のばらつきを示すデータの入力を受け付ける受付部と、
入力された前記データに基づいて、前記立体角の大きさ及び前記立体角を形成する光の照射方向の少なくともいずれかを調整する調整部と、を備え、
各前記立体角を形成する光には、撮影時に生ずる可能性がある前記対象物の被撮影状態のばらつきに基づいて事前に調整された照射方向の光が含まれ、
前記事前に調整されることには、
明視野条件下で前記対象物を撮影するときに、撮影時に生ずる可能性がある前記対象物の被撮影状態のばらつきの範囲内で前記対象物の被撮影状態にずれが生じたとしても、前記対象物の各点から正反射される光がそれぞれ前記撮影部に直接入光するように、各前記照明要素から出射される光により形成される前記立体角の大きさをそれぞれ調整すること、及び、
暗視野条件下で前記対象物を撮影するときに、撮影時に生ずる可能性がある前記対象物の被撮影状態のばらつきの範囲内で前記対象物の被撮影状態にずれが生じたとしても、前記対象物の各点から正反射される光のいずれもが前記撮影部に直接入光せずに、錯乱光が前記撮影部に入光するように、各前記照明要素から出射される光により形成される前記立体角の傾きをそれぞれ調整すること、の少なくともいずれかが含まれる、
検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影画像を用いて対象物を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FA(Factory Automation)分野などにおいては、部品や完成品等の対象物に対して光を照射しながら撮影し、その撮影した画像を用いて対象物の外観を検査することが知られている。例えば、下記特許文献1には、複数個の照明ブロックの点灯の有無と各照明ブロックの照射光の強度とを組み合わせたパターンの中から選択されたパターンにより照射された対象物を撮影する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-122198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法では、各対象物を撮影する際に、それぞれの対象物に対して同じパターンで光を照射することになる。他方、撮影される対象物は必ずしも同じ位置、姿勢及び形状等で撮影されるとは限らない。したがって、検査時にカメラで撮影する対象物の位置、姿勢及び形状等の被撮影状態が、照明のパターンを選択したときに想定した対象物の被撮影状態とずれを生ずることがある。この場合、正常箇所と欠陥箇所とを判別するために想定したコントラストで画像を撮影することが難しくなるため、欠陥箇所を見落とす要因になる。
【0005】
そこで、本発明は、対象物の被撮影状態にばらつきが生じても、検査の精度を向上させることができる検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る検査装置は、撮影画像を用いて対象物を検査する検査装置であって、複数の照明要素の出射方向を制御し、対象物の各点に対して、任意の立体角を形成する光をそれぞれ照射する照明部と、照明部により照明された対象物を撮影する撮影部と、を備え、各立体角を形成する光には、撮影時に生ずる可能性がある対象物の被撮影状態のばらつきに基づいて事前に調整された照射方向の光が含まれる。
【0007】
上記対象物の被撮影状態には、例えば、対象物の位置、姿勢、形状、及び照射光の光軸に対する対象物の検査面の傾きの何れかが含まれる。
【0008】
この態様によれば、対象物を撮影する際に、対象物の各点に対して、任意の立体角を形成する光をそれぞれ照射することができ、その立体角を形成する光の中に、撮影時に生ずる可能性がある対象物の被撮影状態のばらつきに基づいて事前に調整された照射方向の光を含ませることができる。したがって、撮影時に対象物の被撮影状態がずれた場合であっても、立体角を形成する光に含まれる事前に調整された照射方向の光を対象物に照射した状態で対象物を撮影し、その撮影した画像に基づいて対象物の外観検査を行うことが可能となる。
【0009】
上記態様において、対象物の被撮影状態のばらつきを示すデータの入力を受け付ける受付部と、入力されたデータに基づいて、立体角の大きさ及び立体角を形成する光の照射方向の少なくともいずれかを調整する調整部と、をさらに備える。
【0010】
この態様によれば、対象物の被撮影状態のばらつきを示すデータが入力されると、そのデータに基づいて、立体角の大きさ及び立体角を形成する光の照射方向の少なくともいずれかを調整することができる。したがって、検査前に行う立体角の調整作業に要する時間を短縮することができる。
【0011】
上記態様において、立体角を形成する光は、明視野条件を満たすように調整される。明視野条件には、例えば、撮影部に正反射光を入光させる等の条件が含まれる。
【0012】
この態様によれば、明視野条件下での検査において、撮影の際に対象物の被撮影状態がずれた場合であっても、明視野条件を満たした状態で対象物を撮影し、その撮影した画像に基づいて外観検査を行うことができる。したがって、明視野条件下における検査の精度を高めることができる。
【0013】
上記態様において、立体角を形成する光は、暗視野条件を満たすように調整される。暗視野条件には、例えば、撮影部に正反射光を入光させずに散乱光を入光させる等の条件が含まれる。
【0014】
この態様によれば、暗視野条件下での検査において、撮影の際に対象物の被撮影状態がずれた場合であっても、暗視野条件を満たした状態で対象物を撮影し、その撮影した画像に基づいて外観検査を行うことができる。したがって、暗視野条件下における検査の精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、対象物の被撮影状態にばらつきが生じても、検査の精度を向上させることができる検査装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る検査装置の概要を例示する模式図である。
図2】実施形態に係る検査装置のハードウェア構成を例示する図である。
図3】検査装置を構成する照明装置により照射される光と正反射光との関係を例示する図である。
図4】検査装置を構成する照明装置により照射される光と正反射光との関係を例示する図である。
図5】検査装置を構成する照明装置により照射される光と正反射光との関係を例示する図である。
図6】検査装置を構成する照明装置により照射される光と正反射光との関係を例示する図である。
図7図4に示す検査装置でワークを撮影した画像を例示する図である。
図8図5に示す検査装置でワークを撮影した画像を例示する図である。
図9図6に示す検査装置でワークを撮影した画像を例示する図である。
図10】検査装置を構成する照明装置により照射される光と正反射光との関係を例示する図である。
図11】検査装置を構成する照明装置により照射される光と正反射光との関係を例示する図である。
図12】検査装置を構成する照明装置により照射される光と正反射光との関係を例示する図である。
図13】検査装置を構成する照明装置により照射される光と正反射光との関係を例示する図である。
図14図11に示す検査装置でワークを撮影した画像を例示する図である。
図15図12に示す検査装置でワークを撮影した画像を例示する図である。
図16図13に示す検査装置でワークを撮影した画像を例示する図である。
図17】変形例に係る検査装置を構成する制御装置の機能構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0018】
まず、図1を参照し、本発明が適用される場面の一例について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る検査装置1の概要を例示する模式図である。検査装置1は、例えば、ベルトコンベア2により搬送される検査対象物であるワーク3を、照明装置(照明部)20の光で照射しながら、カメラ(撮影部)10で撮影し、撮影した画像に基づいて、ワーク3の外観検査(例えば、傷、汚れ、異物等の検査)を行う。なお、図1に示す検査装置1は一例であり、検査装置1は、図示しない任意の機器を含んでもよいし、図示した機器の一部を含まなくてもよい。
【0019】
検査装置1は、撮影部の一例であるカメラ10と、照明部の一例である照明装置20と、カメラ10及び照明装置20を制御するとともに、外観検査を実行する制御装置30とを備える。
【0020】
カメラ10は、照明装置20により照明され、かつ撮影視野に存在するワーク3を撮影し、撮影画像である画像データを生成する。
【0021】
照明装置20は、カメラ10がワーク3を撮影するたびに、ワーク3の表面を照射する。本実施形態における照明装置20は、例示的に、ワーク3とカメラ10との間に配置され、ワーク3に向けて光を照射するとともに、透光性を有している。照明装置20から照射された光は、ワーク3で反射し、照明装置20を透過してカメラ10に到達する。
【0022】
なお、照明装置20は、ワーク3とカメラ10との間に配置されることに限定されない。例えば、ワーク3とカメラ10との間から外れた位置に照明装置20を配置することとしてもよいし、ワーク3と照明装置20との間から外れた位置にカメラ10を配置することとしてもよい。また、照明装置20は、透光性を有することに限定されない。例えば、円環形状の照明装置20を用いる場合には、透光性を有することは必須とはならない。
【0023】
照明装置20は、マトリクス状に配置された複数の照明要素を含み、複数の照明要素による光の出射方向を配置情報に応じて制御し、ワーク3に対して光を照射する。照明装置20は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等で構成されたバックライトと、バックライトを覆うように配置され、複数の画素を構成する液晶パネルと、液晶パネルを覆うように配置されたマイクロレンズアレイと、を有して構成される。この場合、照明装置20は、液晶パネルの複数の画素を制御して、光を透過又は遮蔽し、マイクロレンズアレイによって特定の方向に光を出射する。さらに、照明装置20は、出射する光の組み合わせ等を制御して、立体角の大きさ、立体角を形成する光の出射方向及び発光強度等を調整する。
【0024】
なお、照明装置20の構成は、前述の構成に限定されず、他の構成であってもよい。例えば、照明装置20は、LED等で構成されたバックライトと、バックライトを覆うように配置され、複数の画素を構成する第1液晶パネルと、第1液晶パネルを覆うように配置され、複数の画素を構成する第2液晶パネルと、を有して構成されることとしてもよい。この場合、照明装置20は、第1液晶パネル及び第2液晶パネルの複数の画素を制御して、光を透過又は遮蔽し、特定の方向に光を出射する。さらに、照明装置20は、出射する光の組み合わせ等を制御して、立体角の大きさ、立体角を形成する光の出射方向及び発光強度等を調整する。
【0025】
ワーク3表面の各点に対し、立体角を形成する光Lをそれぞれ照射することで、各点から正反射する光によって同様の立体角を形成させることができる。これにより、ワーク3表面の各点に対し、立体角を形成しない光を照射する場合に比べ、各点から反射する光を拡散させることができ、正反射光による照射範囲を拡大させることができる。
【0026】
したがって、検査時にカメラ10で撮影するワーク3の位置、姿勢及び形状等の被撮影状態が、照明を設定したときに想定した被撮影状態からずれた場合であっても、照明を設定したときに想定した被撮影状態で撮影された画像と同等のコントラストで画像を撮影することが可能となり、その画像に基づいて外観検査を行うことができる。それゆえ、ワーク3の被撮影状態にばらつきが生じても、外観検査の精度を向上させることができる検査装置を実現することが可能となる。
【0027】
上記ワーク3の被撮影状態には、前述したワーク3の位置、姿勢及び形状の他に、例えば、照射光の光軸に対する対象物の検査面の傾き等を含むことができる。
【0028】
次に、図2を参照し、本実施形態に係る検査装置1のハードウェア構成の一例について説明する。図2は、本実施形態に係る検査装置1のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【0029】
検査装置1は、前述したカメラ10、照明装置20及び制御装置30を備える。制御装置30は、演算装置に相当するCPU(Central Processing Unit)31と、記憶部の一例であるRAM(Random Access Memory)32と、記憶部の一例であるROM(Read only Memory)33と、通信部34と、入力部35と、表示部36とを有する。これらの構成要素は、バスを介して相互にデータを送受信できるように接続される。
【0030】
CPU31は、RAM32又はROM33に記憶されたプログラムの実行に関する制御や、データの演算、加工等を行う制御部である。CPU31は、入力部35や通信部34から種々の入力データを受け取り、演算結果を表示部36に表示することや、演算結果をRAM32又はROM33に格納する。
【0031】
通信部34は、検査装置1を外部機器に接続するインターフェースである。通信部34は、カメラ10及び照明装置20に接続する有線又は無線の通信インターフェースを含む他、例えば、インターネットやLAN(Local Area Network)等のインターフェースを含むことができる。
【0032】
入力部35は、ユーザからデータの入力を受け付ける受付部であり、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルを含む。
【0033】
表示部36は、CPU31による演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)を用いることができる。
【0034】
次に、図3乃至図16を参照し、照明装置20から出射される光により形成される立体角の大きさや当該立体角の傾き(立体角を形成する光の照射方向)を設定する手法について説明する。以下において、(1)明視野条件下でワーク3を撮影する場合に明視野条件を満たすように設定する手法と、(2)暗視野条件下でワーク3を撮影する場合に暗視野条件を満たすように設定する手法とにわけて説明する。明視野条件には、例えば、カメラ10に正反射光を入光させる等の条件が含まれる。暗視野条件には、例えば、カメラ10に正反射光を入光させずに散乱光を入光させる等の条件が含まれる。
【0035】
(1)明視野条件下でワーク3を撮影する場合に明視野条件を満たすように設定する手法:
図3は、明視野条件を満たす場合の立体角を形成する光Lと、その反射光Lrとの関係を例示する模式図である。ワーク3は、外観検査をする時に想定される被撮影状態に置かれている。同図は、説明の便宜のために、ワーク3の表面にある点Pに照射される光Lに注目して説明するが、ワーク3の表面にあるその他の点についても同様である(図4乃至図6も同様)。
【0036】
図3では、ワーク3の表面にある点Pに対し、立体角を形成する光Lが照射され、点Pから正反射される光Lrがカメラ10に直接入光するように設定されている。この場合、ワーク3の表面は、明視野条件下で撮影されるため、表面全体が白く撮影され、表面に傷等がある場合には、その傷が黒く撮影される。
【0037】
ここで、例えば、外観検査時にカメラ10で撮影するワーク3が、図3で想定しているワーク3の傾きとは異なる傾きでベルトコンベア2上に置かれていると、その傾きの度合いに従って、立体角を形成する光Lの反射方向も変わることになる。光Lの反射方向が変わると、正反射光Lrがカメラ10に直接入光しなくなることも起こり得る。この場合、ワーク3の表面は、明視野条件下で撮影した時とは異なるコントラストで撮影されることとなるため、表面にある傷等を判別することが難くなり、欠陥箇所を見落とす要因になる。
【0038】
そこで、撮影時に生ずる可能性があるワーク3の被撮影状態のばらつきの範囲内でワーク3を動かし、それぞれの状態でカメラ10により撮影された画像を比較し、被撮影状態にずれが生じた場合であっても傷等を判別できるような立体角を決定することとした。以下に具体的に説明する。
【0039】
図4乃至図6は、ワーク3の表面にある点P'に照射される光により形成される立体角の大きさを変えながら、明視野条件を満たす立体角を探す場合について説明するための図である。各図では、被撮影状態のずれとして、ベルトコンベア2上に置かれているワーク3に傾きが与えられている(各図の紙面に向かってワーク3の右側がベルトコンベア2の上面から浮くように置かれている)。
【0040】
図4は、点P'に照射される光Lにより形成される立体角の大きさを比較的小さくしたときの正反射光Lrの状態を例示する図である。この場合、カメラ10に直接入光する正反射光Lrの量が不足する。この状態でワーク3を撮影したときの画像Iaを、図7に例示する。同図に示すように、本来はワーク3の表面全体が白く撮影されるところ、図面の紙面上、ワーク3の左側の領域Wが白く撮影され、ワーク3の右側の領域Bが暗視野条件下で撮影されたときのように黒く撮影されている。そのため、ワーク3の表面にある傷Saが少し見え難くなっている。
【0041】
図5は、点P'に照射される光Lにより形成される立体角の大きさを、図4の立体角よりも大きくしたときの正反射光Lrの状態を例示する図である。この場合、カメラ10に直接入光する正反射光Lrの量が、明視野条件を満たす量となる。この状態でワーク3を撮影したときの画像Ibを、図8に例示する。同図に示すように、ワーク3の表面全体が白く撮影され、ワーク3の表面にある傷Sbが黒く鮮明に表示されている。
【0042】
図6は、点P'に照射される光Lにより形成される立体角の大きさを、図5の立体角よりもさらに大きくしたときの正反射光Lrの状態を例示する図である。この場合、正反射光Lrの拡散される範囲が拡大するため、カメラ10に直接入光する正反射光Lrの量は、上記図5でカメラ10に直接入光する正反射光Lrの量よりも減少する。この状態でワーク3を撮影したときの画像Icを、図9に例示する。同図に示すように、ワーク3の表面全体が白く撮影されているものの、ワーク3の表面にある傷Scは、上記図8の傷Sbよりも薄く表示されている。
【0043】
図7乃至図9に例示する画像を比較した場合、図8に例示する画像が、ワーク3の表面にある傷を最も鮮明に表示している。したがって、明視野条件下でワーク3を撮影する場合には、照明装置20から出射される光により形成される立体角の大きさを、図5に例示する立体角の大きさに設定することで、明視野条件を満たすように立体角を形成させることが可能となる。
【0044】
(2)暗視野条件下でワーク3を撮影する場合に暗視野条件を満たすように設定する手法:
図10は、暗視野条件を満たす場合の立体角を形成する光Lと、その正反射光Lrとの関係を例示する模式図である。ワーク3は、外観検査をする時に想定される被撮影状態に置かれている。同図は、説明の便宜のために、ワーク3の表面にある点Pに照射される光Lに注目して説明するが、ワーク3の表面にあるその他の点についても同様である(図11乃至図13も同様)。
【0045】
図10では、ワーク3表面にある点Pに対し、立体角を形成する光Lが照射され、点Pから正反射される光Lrがカメラ10に直接入光せずに、散乱光が入光するように設定されている。この場合、ワーク3の表面は、暗視野条件下で撮影されるため、表面全体が黒く撮影され、表面に傷等がある場合には、その傷が白く撮影される。
【0046】
ここで、例えば、外観検査時にカメラ10で撮影するワーク3が、図10で想定しているワーク3の傾きとは異なる傾きでベルトコンベア2上に置かれていると、その傾きの度合いに従って、立体角を形成する光Lの反射方向も変わることになる。光Lの反射方向が変わると、正反射光Lrがカメラ10に直接入光することも起こり得る。この場合、ワーク3の表面は、暗視野条件下で撮影した時とは異なるコントラストで撮影されることとなるため、表面にある傷等を判別することが難くなり、欠陥箇所を見落とす要因になる。
【0047】
そこで、撮影時に生ずる可能性があるワーク3の被撮影状態のばらつきの範囲内でワーク3を動かし、それぞれの状態でカメラ10により撮影された画像を比較し、被撮影状態にずれが生じた場合であっても傷等を判別できるような立体角を決定することとした。以下に具体的に説明する。
【0048】
図11乃至図13は、ワーク3の表面にある点P'に照射される光により形成される立体角の傾きを変えながら、暗視野条件を満たす立体角を探す場合について説明するための図である。各図では、被撮影状態のずれとして、ベルトコンベア2上に置かれているワーク3に傾きが与えられている(各図の紙面に向かってワーク3の右側がベルトコンベア2の上面から浮くように置かれている)。
【0049】
図11は、点P'に照射される光Lにより形成される立体角の傾きを、垂直方向から水平方向に向けて比較的倒したときの正反射光Lrの状態を例示する図である。この場合、カメラ10に入光する散乱光の量が減少する。この状態でワーク3を撮影したときの画像Idを、図14に例示する。同図に示すように、ワーク3の表面全体が黒く撮影されるとともに、ワーク3の表面にある傷Sdも灰色に撮影されており、傷Sdが少し見え難くなっている。
【0050】
図12は、点P'に照射される光Lにより形成される立体角の傾きを、図11の立体角よりも垂直方向に起こしたときの正反射光Lrの状態を例示する図である。この場合、カメラ10に入光する散乱光の量が、暗視野条件を満たす量となる。この状態でワーク3を撮影したときの画像Ieを、図15に例示する。同図に示すように、ワーク3の表面全体が黒く撮影され、ワーク3の表面にある傷Sbが白く鮮明に表示されている。
【0051】
図13は、点P'に照射される光Lにより形成される立体角の傾きを、図12の立体角よりもさらに垂直方向に起こしたときの正反射光Lrの状態を例示する図である。この場合、カメラ10の一部に正反射光Lrが入光する。この状態でワーク3を撮影したときの画像Ifを、図16に例示する。同図に示すように、本来はワーク3の表面全体が黒く撮影されるところ、図面の紙面上、ワーク3の左側の領域Wが明視野条件下で撮影されたときのように白く撮影され、ワーク3の右側の領域Bが黒く撮影されている。そのため、ワーク3の表面にある傷Sfが少し見え難くなっている。
【0052】
図14乃至図16に例示する画像を比較した場合、図15に例示する画像が、ワーク3の表面にある傷を最も鮮明に表示している。したがって、暗視野条件下でワーク3を撮影する場合には、照明装置20から出射される光により形成される立体角の傾きを、図12に例示する立体角の傾きに設定することで、暗視野条件を満たすように立体角を形成させることが可能となる。
【0053】
前述したように、実施形態に係る検査装置1によれば、ワーク3を撮影する際に、ワーク3の各点に対して、任意の立体角を形成する光をそれぞれ照射することができ、その立体角を形成する光の中に、撮影時に生ずる可能性があるワーク3の被撮影状態のばらつきに基づいて事前に調整された照射方向の光を含ませることができる。
【0054】
これにより、撮影時にワーク3の被撮影状態がずれた場合であっても、立体角を形成する光に含まれる事前に調整された照射方向の光をワーク3に照射した状態でワーク3を撮影し、その撮影した画像に基づいてワーク3の外観検査を行うことが可能となる。それゆえ、実施形態に係る検査装置1によれば、ワーク3の被撮影状態にばらつきが生じても、外観検査の精度を向上させることができる。
【0055】
[変形例]
以上説明した実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。また、前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0056】
前述した実施形態では、明視野条件下でワーク3を撮影する場合に、立体角の大きさを変えながら調整し、暗視野条件下でワーク3を撮影する場合に、立体角の傾きを変えながら調整しているが、これに限定されない。いずれの場合にも、立体角の大きさ及び立体角の傾きのうち、いずれか一方を変えながら調整することとしてもよいし、双方を変えながら調整することとしてもよい。加えて、いずれの場合にも、発光強度をさらに調整することとしてもよい。
【0057】
また、前述した実施形態に係る検査装置1では、ワークを動かしながら撮影した画像を比較し、好適な画像に対応する立体角を決定して設定しているが、立体角を設定するやり方は、これに限定されない。例えば、ワーク3の被撮影状態のばらつきを示すデータを入力し、入力したデータに基づいて、立体角の大きさ及び立体角の傾き(立体角を形成する光の照射方向)を調整して設定することとしてもよい。この場合、立体角の大きさ及び立体角の傾きのうち、いずれか一方を調整することとしてもよいし、双方を調整することとしてもよい。この変形例に係る検査装置1を構成する制御装置30の機能構成について、以下に説明する。
【0058】
図17は、本変形例に係る検査装置1を構成する制御装置30の機能構成を例示する図である。制御装置30は、例えば、受付部31aと、調整部31bとを有する。
【0059】
受付部31aは、ワーク3の被撮影状態のばらつきを示すデータの入力を受け付ける。調整部31bは、入力されたデータに基づいて、立体角の大きさ及び立体角を形成する光の照射方向の少なくともいずれかを取得し、その取得した内容に応じて、立体角の大きさ及び立体角を形成する光の照射方向の少なくともいずれかを調整する。なお、立体角の大きさ及び立体角の傾きに加え、発光強度をさらに調整することとしてもよい。
【0060】
ワーク3の被撮影状態のばらつきを示すデータと、立体角の大きさ及び立体角を形成する光の照射方向との対応関係は、予めテーブル等に登録して記憶部に記憶させておくこととしてもよいし、機械学習させて学習モデルを生成することとしてもよい。この場合、例えば、調整部31bは、入力されたデータに基づいてテーブルを参照し、入力されたデータに対応付けて記憶されている、立体角の大きさ及び立体角を形成する光の照射方向の少なくともいずれかをテーブルから取得することとしてもよい。また、調整部31bは、入力されたデータを学習モデルに入力し、学習モデルから出力される、立体角の大きさ及び立体角を形成する光の照射方向の少なくともいずれかを取得することとしてもよい。
【0061】
[付記]
本実施形態における態様は、以下のような開示を含む。
【0062】
(付記1)
撮影画像を用いて対象物(3)を検査する検査装置(1)であって、
複数の照明要素の出射方向を制御し、前記対象物(3)の各点に対して、任意の立体角を形成する光をそれぞれ照射する照明部(20)と、
前記照明部(20)により照明された前記対象物(3)を撮影する撮影部(10)と、を備え、
各前記立体角を形成する光には、撮影時に生ずる可能性がある前記対象物(3)の被撮影状態のばらつきに基づいて事前に調整された照射方向の光が含まれる、
検査装置(1)。
【0063】
(付記2)
前記対象物(3)の被撮影状態のばらつきを示すデータの入力を受け付ける受付部(31a)と、
入力された前記データに基づいて、前記立体角の大きさ及び前記立体角を形成する光の照射方向の少なくともいずれかを調整する調整部(31b)と、
をさらに備える付記1記載の検査装置(1)。
【符号の説明】
【0064】
1…検査装置、2…ベルトコンベア、3…ワーク、10…カメラ、20…照明装置、30…制御装置、31…CPU、31a…受付部、31b…調整部、32…RAM、33…ROM、34…通信部、35…入力部、36…表示部
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