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特許7178009医用装置、医用装置の制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】医用装置、医用装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61N5/10 E
A61N5/10 F
A61N5/10 H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017244071
(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2019107395
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡屋 慶子
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆介
(72)【発明者】
【氏名】柳川 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】丸山 富美
(72)【発明者】
【氏名】井関 康
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-035343(JP,A)
【文献】特開2009-160308(JP,A)
【文献】特開2017-209243(JP,A)
【文献】特開2016-101248(JP,A)
【文献】特開2016-116659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーカ追跡とマーカレス追跡の双方の機能を有する医用装置であって、
被検体に電磁波を照射して撮影することで透視画像を生成する撮影部から、前記被検体の透視画像を取得する取得部と、
前記マーカ追跡を行う場合は前記透視画像におけるマーカの位置に基づいてターゲット位置を特定し、前記マーカレス追跡を行う場合は前記透視画像における前記被検体の患部または特徴箇所の位置に基づいてターゲット位置を特定する特定部と、
前記特定部により特定されたターゲット位置が照射許可範囲内に収まる場合に、前記被検体に治療ビームを照射する治療装置に照射許可信号を出力する出力制御部と、
治療の準備段階と、前記治療ビームの照射段階とのそれぞれの開始指示を受け付けるためのインターフェース画像を表示部に表示させる表示制御部と、
前記インターフェース画像において利用者によって行われた入力操作の内容を取得する入力操作取得部と、
を備え、
前記入力操作取得部は、前記治療の準備段階と、前記治療ビームの照射段階とにおいて、マーカ追跡とマーカレス追跡の切り替え操作を取得し、
前記特定部は、前記取得された切り替え操作に応じて前記マーカ追跡と前記マーカレス追跡のいずれかを実行する、
医用装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記マーカレス追跡を行う場合、前記透視画像とテンプレートとのマッチングを行って前記ターゲット位置を特定し、
前記テンプレートは、前記被検体が一回以上呼吸する間に複数回撮影された前記透視画像について、ターゲット位置が既知の画像からレジストレーションによって導出されたターゲット位置を対応付けたものである、
請求項1記載の医用装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記マーカ追跡を行う場合、前記被検体の体内にある複数のマーカから選択されたマーカの位置に基づいて前記ターゲット位置を特定し、
前記照射許可範囲は、ある呼吸位相で選択されたマーカの位置を他の呼吸位相に展開して得られる前記マーカの軌跡に基づいて設定される、
請求項1または2記載の医用装置。
【請求項4】
前記出力制御部は、前記入力操作取得部により取得された入力操作の内容に応じて、前記撮影部への動作指示を出力する、
請求項1から3のうちいずれか1項記載の医用装置。
【請求項5】
前記入力操作取得部により取得された一単位の入力操作に応じて、前記出力制御部が前記撮影部への動作指示を出力すると共に、前記医用装置の特定の機能が起動する、
請求項1から4のうちいずれか1項記載の医用装置。
【請求項6】
前記出力制御部は、前記インターフェース画像において、所定の入力操作の後に、デフォルト状態を解除状態にする入力操作が前記入力操作取得部により受け付けられたことを条件に、前記治療装置に照射許可信号を出力する、
請求項1から5のうちいずれか1項記載の医用装置。
【請求項7】
前記治療の準備段階は、前記特定部が前記ターゲット位置を特定するための追跡条件の設定、または参照画像の作成が行われる段階であり、
前記準備段階の終了操作を要求することなく、前記入力操作取得部が前記治療ビームの照射段階への開始指示を受け付ける、
請求項1から6のうちいずれか1項記載の医用装置。
【請求項8】
複数回に分けて治療が行われる際に、前記特定部が前記ターゲット位置を特定するのに用いられる情報であって、学習または利用者によって指定された情報が引き継がれる、
請求項1から7のうちいずれか1項記載の医用装置。
【請求項9】
前記引き継がれる情報は、三次元ボリュームデータにおいて指定された患部の位置を含む、
請求項8記載の医用装置。
【請求項10】
前記引き継がれる情報は、選択された前記マーカの位置を含む、
請求項8または9記載の医用装置。
【請求項11】
前記表示制御部は、前記表示部に、前記照射許可範囲を前記透視画像に重畳表示させ、前記照射許可信号を出力する際に前記照射許可範囲の色を変更させる、
請求項1から10のうちいずれか1項に記載の医用装置。
【請求項12】
前記表示制御部は、前記表示部に、前記照射許可範囲を前記透視画像に重畳表示させ、前記照射許可信号を出力する際に、前記照射許可範囲の内側領域と外側領域のいずれかの色彩または輝度を変更させる、
請求項1から11のうちいずれか1項に記載の医用装置。
【請求項13】
前記照射許可信号を出力する際に、音または振動で通知する通知部を更に備える
請求項1から12のうちいずれか1項に記載の医用装置。
【請求項14】
マーカ追跡とマーカレス追跡の双方の機能を有する医用装置が、
被検体に電磁波を照射して撮影することで透視画像を生成する撮影部から、前記被検体の透視画像を取得し、
前記マーカ追跡を行う場合は前記透視画像におけるマーカの位置に基づいてターゲット位置を特定し、前記マーカレス追跡を行う場合は前記透視画像における前記被検体の患部または特徴箇所の位置に基づいてターゲット位置を特定し、
前記特定されたターゲット位置が照射許可範囲内に収まる場合に、前記被検体に治療ビームを照射する治療装置に照射許可信号を出力し、
治療の準備段階と、前記治療ビームの照射段階とのそれぞれの開始指示を受け付けるためのインターフェース画像を表示部に表示させ、
前記インターフェース画像において利用者によって行われた入力操作の内容を取得し、
前記入力操作の内容を取得する際に、前記治療の準備段階と、前記治療ビームの照射段階とにおいて、マーカ追跡とマーカレス追跡の切り替え操作を取得し、
前記特定する際に、前記取得された切り替え操作に応じて前記マーカ追跡と前記マーカレス追跡のいずれかを実行する、
医用装置の制御方法。
【請求項15】
マーカ追跡とマーカレス追跡の双方の機能を有する 医用装置の制御コンピュータに、
被検体に電磁波を照射して撮影することで透視画像を生成する撮影部から、前記被検体の透視画像を取得させ、
前記マーカ追跡を行う場合は前記透視画像におけるマーカの位置に基づいてターゲット位置を特定させ、前記マーカレス追跡を行う場合は 前記透視画像における前記被検体の患部または特徴箇所の位置に基づいてターゲット位置を特定させ、
前記特定されたターゲット位置が照射許可範囲内に収まる場合に、前記被検体に治療ビームを照射する治療装置に照射許可信号を出力させ、
治療の準備段階と、前記治療ビームの照射段階とのそれぞれの開始指示を受け付けるためのインターフェース画像を表示部に表示させ、
前記インターフェース画像において利用者によって行われた入力操作の内容を取得させ、
前記入力操作の内容を取得する際に、前記治療の準備段階と、前記治療ビームの照射段階とにおいて、マーカ追跡とマーカレス追跡の切り替え操作を取得させ、
前記特定する際に、前記取得された切り替え操作に応じて前記マーカ追跡と前記マーカレス追跡のいずれかを実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用装置、医用装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
重粒子線や放射線などの治療ビームを患者(被検体)に照射する治療装置が知られている。被検体の患部、すなわち治療ビームを照射する箇所は、呼吸や心拍、腸の動きなどによって移動する場合がある。これに対応する治療法として、ゲーテッド照射法や追尾照射法が知られている。
【0003】
呼吸によって移動する患部に治療ビームを照射する場合、被検体の呼吸位相と同期させて照射を行う必要がある。呼吸位相同期の手法として、被検体の身体に取り付けた各種センサの出力値を利用して呼吸位相を把握する手法(外部呼吸同期)と、被検体の透視画像に基づいて呼吸位相を把握する手法(内部呼吸同期)がある。呼吸位相同期のための処理は、治療装置に制御信号を出力する医用装置によって行われる。医用装置は、例えば治療装置と有線または無線で通信することで、治療装置を制御する。
【0004】
また、この種の治療は、例えば、計画段階、準備段階、治療段階といった複数の段階に分けて行われる。ここで、医用装置による各種段階の処理のサポートが十分でないと、医師や看護士の作業負担が増大したり、被検体に身体的な負担が生じたりする。しかしながら、従来の技術では、内部呼吸同期による治療を包括的にサポートすることができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-144000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、内部呼吸同期による治療を包括的にサポートすることができる医用装置、医用装置の制御方法、およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の医用装置は、取得部と、特定部と、出力制御部と、表示制御部と、入力操作取得部とを持つ。取得部は、被検体に電磁波を照射して撮影することで透視画像を生成する撮影部から、前記被検体の透視画像を取得する。特定部は、前記透視画像における前記被検体のターゲット位置を特定する。出力制御部は、前記特定部により特定されたターゲット位置が照射許可範囲内に収まる場合に、前記被検体に治療ビームを照射する治療装置に照射許可信号を出力する。表示制御部は、治療の準備段階と、前記治療ビームの照射段階とのそれぞれの開始指示を受け付けるためのインターフェース画像を前記表示部に表示させる。入力操作取得部は、前記インターフェース画像において利用者によって行われた入力操作の内容を取得する。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、内部呼吸同期による治療を包括的にサポートすることができる医用装置、医用装置の制御方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】医用装置100を含む治療システム1の構成図。
図2】医用装置100の入力・表示部120により表示されるインターフェース画像IMの一例を示す図。
図3】医用装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その1)。
図4】第1ボタンB1、第2ボタンB2、および第3ボタンB3の表示態様の変化を示す図。
図5】モード1における第4ボタンB4、第5ボタンB5、および第6ボタンB6の内容を示す図。
図6】医用装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その2)。
図7】マーカ選択時の画面の一例を示す図である。
図8】医用装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その3)。
図9】モード2における第4ボタンB4、第5ボタンB5、および第6ボタンB6の内容を示す図。
図10】医用装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その4)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の医用装置、医用装置の制御方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。なお、また、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0011】
<構成>
図1は、医用装置100を含む治療システム1の構成図である。治療システム1は、例えば、治療装置10と、医用装置100とを備える。
【0012】
治療装置10は、例えば、寝台11と、放射線源12-1、12-2と、検出器13-1、13-2と、照射門14と、センサ15と、治療装置側制御部20とを備える。以下、符号におけるハイフンおよびこれに続く数字は、いずれの放射線源および検出器の組による透視用の放射線、或いは透視画像であるかを示すものとする。また、適宜、符号におけるハイフンおよびこれに続く数字を省略して説明を行う。
【0013】
寝台11には、治療を受ける被検体Pが固定される。放射線源12-1は、被検体Pに対して放射線r-1を照射する。放射線源12-2は、放射線源12-1とは異なる角度から、被検体Pに対して放射線r-2を照射する。放射線r-1およびr-2は、電磁波の一例であり、例えばX線である。以下、これを前提とする。
【0014】
放射線r-1は検出器13-1によって検出され、放射線r-2は検出器13-2によって検出される。検出器13-1および13-2は、例えばフラット・パネル・ディテクタ(FPD;Flat Panel Detector)、イメージインテンシファイア、カラーイメージインテンシファイアなどである。検出器13-1は、放射線r-1のエネルギーを検出してデジタル変換し、透視画像TI-1として医用装置100に出力する。検出器13-2は、放射線r-2のエネルギーを検出してデジタル変換し、透視画像TI-2として医用装置100に出力する。図1では、2組の放射線源および検出器を示したが、治療装置10は、3組以上の放射線源および検出器を備えてもよい。
【0015】
照射門14は、治療段階において、被検体Pに対して治療ビームBを照射する。治療ビームBには、例えば、重粒子線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線などが含まれる。図1では、1つの照射門14のみ示したが、治療装置10は複数の照射門を備えてもよい。
【0016】
センサ15は、被検体Pの外部呼吸位相を認識するためのものであり、被検体Pの身体に取り付けられる。センサ15は、例えば、圧力センサである。
【0017】
治療装置側制御部20は、医用装置100からの制御信号に応じて、放射線源12-1、12-2、検出器13-1、13-2、および照射門14を動作させる。
【0018】
医用装置100は、例えば、統括制御部110と、入力・表示部120と、入力操作取得部122と、表示制御部124と、取得部130と、参照画像作成部132と、画像処理部136と、ターゲット位置特定部140と、出力制御部150と、記憶部160とを備える。統括制御部110、入力操作取得部122、表示制御部124、取得部130、参照画像作成部132、画像処理部136、ターゲット位置特定部140、および出力制御部150は、例えば、少なくとも一部が、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアプロセッサが記憶部160に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0019】
以下、医用装置100の各部の機能について説明する。医用装置100の説明において、透視画像TIに対する処理として説明されたものは、特に注記が無い限り、透視画像TI-1、TI-2の双方に対して並行して実行されるものとする。統括制御部110は、医用装置100の機能を統括的に制御する。
【0020】
入力・表示部120は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)表示装置、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイなどの表示装置と、操作者による入力操作を受け付ける入力装置とを含む。入力・表示部120は、表示装置と入力装置が一体に形成されたタッチパネルであってもよいし、マウスやキーボードなどの入力デバイスを備えてもよい。
【0021】
入力操作取得部122は、入力・表示部120に対してなされた操作(タッチ、フリック、スワイプ、クリック、ドラッグ、キー入力など)の内容を認識し、認識した操作の内容を統括制御部110に出力する。表示制御部124は、統括制御部110からの指示に応じて、入力・表示部120に画像を表示させる。表示制御部124は、治療の準備段階と、前記治療ビームBの照射段階とのそれぞれの開始指示を受け付けるためのインターフェース画面を入力・表示部120に表示させる。なお、画像を表示させることには、演算結果に基づいて画像の要素を生成することと、予め作成された画像の要素を表示画面に割り当てることとが含まれる。
【0022】
取得部130は、治療装置10から透視画像TIを取得する。また、取得部130は、センサ15の検出値を取得する。また、取得部130は、医用検査装置(不図示)から患者Pの三次元ボリュームデータを取得する。ターゲットの位置特定に透視画像TIを参照画像として使用する場合、参照画像作成部132は、取得部130により取得された透視画像TIに基づいて、ターゲット位置特定に使用される参照画像を生成する。これらについては後に詳述する。
【0023】
画像処理部136は、デフォーマブルレジストレーションや、DRR(Digitally Reconstructed Radiograph)画像生成などの画像処理を行う。デフォーマブルレジストレーションとは、時系列の三次元ボリュームデータに対して、ある時点の三次元ボリュームデータについて指定された位置情報を、他の時点の三次元ボリュームデータに展開する処理である。DRR画像とは、三次元ボリュームデータに対して、仮想的な放射線源から放射線を当てることで生成される仮想的な透視画像である。
【0024】
ターゲット位置特定部140は、透視画像TIにおけるターゲット位置を特定する。ターゲット位置とは、被検体Pの患部、すなわち治療ビームBを照射する位置であってもよいし、マーカあるいは被検体Pの特徴箇所の位置であってもよい。特徴箇所とは、横隔膜や心臓、骨など、透視画像TIにおいて周囲の箇所との差異が比較的鮮明に現れるため、透視画像TIをコンピュータが解析することで位置を特定しやすい箇所である。ターゲット位置は、一点であってもよいし、二次元または三次元の広がりを持つ領域であってもよい。
【0025】
出力制御部150は、ターゲット位置特定部140により特定されたターゲット位置に基づいて、治療装置10に照射許可信号を出力する。例えば、ゲーテッド照射法では、出力制御部150は、ターゲット位置がゲーティングウインドウ内に収まる場合に、治療装置10にゲートオン信号を出力する。ゲーティングウインドウとは、二次元平面または三次元空間において設定される領域であり、照射許可範囲の一例である。ゲートオン信号とは、被検体Pに治療ビームBを照射することを指示する信号であり、照射許可信号の一例である。以下、これらを前提として説明する。治療装置10は、ゲートオン信号が入力されている場合、治療ビームBを照射し、ゲートオン信号が入力されていない場合、治療ビームBを照射しない。なお、照射許可範囲は、固定的に設定されるものに限らず、患部の移動に追従して移動するものであってもよい。
【0026】
記憶部160は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどにより実現される。記憶部160には、前述したプログラムの他、時系列の三次元CT画像(以下、4DCT画像)、透視画像TI、センサ15の出力値などが格納される。
【0027】
<治療の流れ(モード1)>
以下、治療システム1における治療の流れについて説明する。治療システム1は、例えば、内部呼吸同期であるマーカレス追跡およびマーカ追跡、外部呼吸同期の3つのモードを切り替えて治療を行うことができる。以下、マーカレス追跡をモード1、マーカ追跡をモード2、外部呼吸同期をモード3と称する。ここでは、モード1について説明する。なお、マーカレス追跡にはテンプレートマッチング法や機械学習を用いた手法等がある。以下では、テンプレートマッチング法を用いたマーカレス追跡について説明し、照射方法としてゲーテッド照射法を採用するものとして説明する。医用装置100は、テンプレートマッチング法と、機械学習を用いた手法とを切り替え可能であってもよい。
【0028】
[計画段階]
モード1の計画段階において、まず、被検体PのCT撮影が行われる。CT撮影では、様々な呼吸位相毎に、様々な方向から被検体Pが撮影される。次に、CT撮影の結果に基づいて4DCT画像が生成される。4DCT画像は、三次元のCT画像(前述した三次元ボリュームデータの一例)を時系列にn個並べたものである。このn個および時系列画像の時間間隔を乗算して求められる期間は、例えば、呼吸位相が1周期分変化する期間をカバーするように設定される。4DCT画像は、記憶部160に格納される。
【0029】
次に、医師や放射線技師などが、n個のCT画像のうち、例えば1つのCT画像に対して、輪郭を入力する。この輪郭は、患部である腫瘍の輪郭や治療ビームBを照射したくない臓器の輪郭等である。次に、例えば画像処理部136が、デフォーマブルレジストレーションによって、n個のCT画像のそれぞれについて輪郭を設定する。次に、治療計画が決定される。治療計画とは、設定された輪郭情報に基づいて、患部がどの位置にあるときに、どこに、どの方向から、どれだけの治療ビームBを照射するかを規定するものであり、ゲーテッド照射法や追尾照射法などの治療法に応じて決定される。なお、計画段階の処理の一部または全部は、外部装置によって実行されてもよい。例えば、4DCT画像を生成する処理は、CT装置によって実行されてもよい。
【0030】
ここで、腫瘍の輪郭で区画される領域や、その領域の重心、或いは被検体Pの特徴箇所の位置などがターゲット位置となる。更に、治療計画において、ターゲット位置がどの位置にあれば治療ビームBを照射してよいのかが決定される。デフォーマブルレジストレーションによって輪郭が設定された際に、ターゲット位置に対してマージンが自動的に、または手動で設定され、マージンを反映させてゲーティングウインドウが設定される。このマージンは、装置や位置決めの誤差などを吸収するためのものである。
【0031】
[位置決め段階]
位置決め段階においては、寝台位置の調整が行われる。被検体Pは寝台11に寝かされ、シェル等で固定される。まず、寝台位置の粗い調整が行われる。この段階において、作業者が、被検体Pの位置と姿勢を目視で確認し、照射門14からの治療ビームBが当たりそうな位置へ寝台11を動かす。これにより、寝台11の位置が粗く調整される。次に、寝台位置を細かく調整するために利用する画像が撮影される。例えば、3D-2Dレジストレーションが行われる場合は透視画像TIが撮影される。透視画像TIは、例えば被検体Pが息を吐き切ったタイミングで撮影される。寝台11の位置は粗く調整済みであるため、透視画像TIには、被検体Pの患部付近が写っている。
【0032】
3D-2Dレジストレーションが行われる場合、この段階において、放射線源12-1、12-2、検出器13-1、13-2、および被検体Pの治療計画情報を使用して三次元ボリュームデータからDRR画像が生成される。DRR画像と透視画像TIに基づいて寝台移動量が算出され、寝台11が移動させられる。透視画像TIの撮影、寝台移動量算出、寝台11の移動を繰り返すことで、寝台11の位置が細かく調整される。
【0033】
[準備段階(その1)]
位置決め段階が終了すると、準備段階に移行する。まず4DCT画像から各位相のDRR画像が作成される。DRR画像の作成は4DCT画像撮影以降であればいつ実施してもよい。このとき、治療計画において設定されたゲーティングウインドウを射影した位置がDRR画像上のゲーティングウインドウとして設定される。準備段階では、まず参照画像を作成するための透視画像TIの撮影が行われる。透視画像TIは、例えば、被検体Pの2呼吸分をカバーするように撮影される。また、被検体Pが深呼吸を行う間、被検体Pの外部呼吸波形が、透視画像TIと同期して取得される。取得された外部呼吸波形は、表示制御部124により入力・表示部120に表示される。撮影された透視画像TIには、外部呼吸波形から求められる被検体Pの呼吸位相に基づく追跡値が対応付けられる。
【0034】
また、この段階において、DRR画像とDRR画像上のターゲット位置の情報から、透視画像TIとターゲット位置との関係が学習され、更に、医師によるターゲット位置の修正が受け付けられる。そして、ターゲット位置が学習された透視画像TIの中から、追跡値に基づいて、一つ以上のテンプレート(参照画像)が選択される。テンプレートは、透視画像TIの特徴的な一部を切り出したものであってよい。ターゲット位置の学習は、計画段階から治療段階までの間の、いずれのタイミングで実施されてもよい。例えば、被検体Pの2呼吸分の透視画像TIうち、前半の1呼吸分の透視画像TIからテンプレートを作成した場合、そのテンプレートを使用して、後半の1呼吸分の透視画像TIでターゲットの追跡ができるか確認してもよい。その際、表示制御部124はDRR画像上に設定されたゲーティングウインドウを透視画像TI上に表示してもよい。
【0035】
[準備段階(その2)]
そして、再度、透視画像TIの撮影が開始される。ターゲット位置特定部140は、時系列で入力される透視画像TIに対してテンプレートとのマッチングを行い、透視画像TIに対してターゲット位置を割り付ける。表示制御部124は、透視画像TIを動画として入力・表示部120に表示させながら、ターゲット位置が割り付けられた透視画像TIのフレームにターゲット位置を重畳表示させる。この結果、医師等によりターゲット位置の追跡結果が確認される。
【0036】
この際に、表示制御部124はDRR画像上に設定されたゲーティングウインドウを透視画像TI上に表示する。出力制御部150は、透視画像TI-1、TI-2の双方に関して、ターゲット位置がゲーティングウインドウ内に収まっているか否かを判定する。治療段階では、ターゲット位置がゲーティングウインドウ内に収まっている場合にゲートオン信号が治療装置10に出力されるのであるが、準備段階では、ゲートオン信号の出力の有無が統括制御部110を介して表示制御部124に伝えられる。表示制御部124は、動画の表示に併せてゲートオン信号の出力の有無を入力・表示部120に表示させる。この結果、医師等によりゲートオン信号の出力タイミングが確認される。
【0037】
[治療段階]
治療段階では、出力制御部150が、透視画像TI-1、TI-2の双方に関して、ターゲット位置がゲーティングウインドウ内に収まっている場合にゲートオン信号を治療装置10に出力する。これによって、治療ビームBが被検体Pの患部に照射され、治療が行われる。なお、ターゲット位置が患部の位置である場合には、追跡したターゲット位置がゲーティングウインドウ内に収まっている場合に治療ビームBが照射され、ターゲット位置が被検体Pの特徴箇所の位置である場合には、予め学習されたターゲット位置と患部の位置との関係に基づいて、ターゲット位置から導出された患部の位置がゲーティングウインドウ内に収まっている場合に治療ビームBが照射される。なお、これらの複合手法によって患部の位置に治療ビームBが照射されてもよい。すなわち、ターゲット位置として患部の位置と、特徴箇所の位置とをそれぞれ設定しておき、患部が第1ゲーティングウインドウに収まり、特徴箇所が第2ゲーティングウインドウに収まる場合に治療ビームBを照射するようにしてもよい。
【0038】
<表示画像、フローチャート(モード1)>
以下、上記説明した治療の流れをサポートするための、医用装置100の処理について説明する。
【0039】
図2は、医用装置100の入力・表示部120により表示されるインターフェース画像IMの一例を示す図である。インターフェース画像IMは、例えば、領域A1-1、A1-2、A2、A3、A4、A5、A6、およびA7を含む。
【0040】
領域A1-1では、透視画像TI-1に対してゲーティングウインドウGWやターゲット位置PTが重畳表示される。領域A1-2では、透視画像TI-2に対してゲーティングウインドウGWやターゲット位置PTが重畳表示される。領域A2には、各種グラフなどが表示される。
【0041】
領域A3には、モードなどの選択を受け付けるセレクトウインドウSW、透視画像TIの撮影開始または撮影停止を指示するための第1ボタンB1、透視画像TIの撮影の一時停止を指示するための第2ボタンB2、治療セッションの終了を指示するための第3ボタンB3、時系列のDRR画像や透視画像TIを遡って確認するためのスライドバーやコマ送りスイッチなどが設定されたコントロールエリアCA、準備段階が完了したことを確認するためのチェックボックスCBなどが設定される。インターフェース画像IMの各部に対する操作は、例えば、タッチ操作、マウスによるクリック、あるいはキーボード操作などにより行われる。例えば、第1ボタンB1は、タッチ操作またはマウスによるクリックによって操作される。
【0042】
領域A4には、モードに応じた治療段階が、次のステップに進むことを指示するための第4ボタンB4、第5ボタンB5、および第6ボタンB6が設定される。領域A5には、センサ15の出力値に基づく外部呼吸波形のグラフなどが表示される。領域A6には、被検体Pの治療計画情報などを示す画像やテキスト情報が表示される。領域A7では、被検体PのCT画像の断面に対し、X線の照射方向、照射野、および治療ビームBの照射方向、ターゲットの輪郭やマーカROI等が重畳表示される。
【0043】
以下、インターフェース画像IMの各種機能について、フローチャートを参照しながら説明する。図3は、医用装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その1)である。まず、統括制御部110が、入力操作取得部122から入力される情報を参照し、セレクトウインドウSWにおいてマーカレス追跡が選択されたか否かを判定する(ステップS100)。マーカレス追跡の選択は、医師等の操作によって行われてもよいし、治療装置10からの信号によって自動的に行われてもよいし、医用装置100が治療計画の内容に基づいて自動的に行ってもよい。マーカレス追跡以外のモードが選択された場合については、後に説明する。なお、以降の説明において、医用装置100に対する操作がなされたことを検知する際には、統括制御部110が入力操作取得部122から入力される情報を参照して判断するものとし、都度の説明を省略する。
【0044】
セレクトウインドウSWにおいてマーカレス追跡が選択された場合、統括制御部110は、第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS102)。図4は、第1ボタンB1、第2ボタンB2、および第3ボタンB3の表示態様の変化を示す図である。図示するように、第1ボタンB1は、初期状態で、撮影が「OFF」すなわち停止している状態を示すと共に、「撮影開始」の指示を受け付ける態様となっている。第1ボタンB1が操作されると、撮影が「ON」すなわち実行されている状態を示すと共に、「撮影停止」の指示を受け付ける態様に変化する。第1ボタンB1は、これらの二つの態様の間で状態遷移する。
【0045】
なお、第2ボタンB2は、初期状態で、操作されると撮影の「一時停止」の指示を受け付ける態様となっている。第2ボタンB2は、操作されると、「撮影再開」の指示を受け付ける態様に変化する。また、第3ボタンB3は、初期状態で、インターフェース画像IMを「閉じる」指示を受け付ける態様となっており、操作されるとインターフェース画像IMの表示が停止され、一連の処理が終了する。
【0046】
第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されると、統括制御部110は、出力制御部150に指示し、テンプレートとなる透視画像TIの撮影を治療装置10に指示する(ステップS104)。出力制御部150は、例えば、k回の呼吸分の透視画像TIを撮影するように治療装置10に指示する。なお、出力制御部150は、第1ボタンB1が再度操作されたときに撮影を終了する指示を治療装置10に出力してもよい。このように、出力制御部150は、入力操作取得部122により取得された入力操作の内容に応じて、治療装置10の撮影部(放射線源12-1、12-2、検出器13-1、13-2)への動作指示を出力する。これによって、医用装置100によって治療装置10を含めた治療システム1の動作を一元的に管理することができ、利便性が向上する。
【0047】
次に、統括制御部110は、第4ボタンB4の操作によってレジストレーションが指示されたか否かを判定する(ステップS106)。図5は、モード1における第4ボタンB4、第5ボタンB5、および第6ボタンB6の内容を示す図である。モード1において、第4ボタンB4は、レジストレーション(透視画像TIにおけるターゲット位置PTの学習)の指示を受け付け、第5ボタンB5は、参照画像の作成指示を受け付け、第6ボタンB6はゲートオン信号の確認指示を受け付ける。
【0048】
第4ボタンB4の操作によってレジストレーションが指示されると、統括制御部110は、画像処理部136に指示してDRR画像におけるターゲット位置PTから透視画像TIにおけるターゲット位置を求め、得られたターゲット位置PTを透視画像TIに重畳させて入力・表示部120に表示させるように表示制御部124に指示する(ステップS108)。前述したように、画像処理部136は、計画段階で撮影されたCT画像から作成したDRR画像や、計画段階以降に撮影された透視画像TIに基づいて、ターゲット位置PTが既知であるDRR画像と、透視画像TIとの間で画像の特徴部位をマッチングする処理などを行って、透視画像TIにおけるターゲット位置PTを導出する。透視画像TIとターゲット位置PTの関係は、参照画像作成部132に提供される。また、透視画像TIにターゲット位置PTが重畳した画像は、例えば、インターフェース画像IMの領域A1-1、A1-2に表示される。この状態で、統括制御部110は、ターゲット位置PTの調整を受け付ける(ステップS110)。ターゲット位置PTの調整は、例えば領域A1-1、A1-2に対するドラッグ/ドロップ操作によって行われる。ターゲット位置PTの調整が行われると、統括制御部110は、調整された透視画像TIとターゲット位置PTの関係を参照画像作成部132に提供する。
【0049】
次に、統括制御部110は、第5ボタンB5の操作によって参照画像の作成が指示されたか否かを判定する(ステップS112)。第5ボタンB5が操作されると、統括制御部110は、参照画像作成部132に指示し、参照画像として用いる透視画像TIを選択し、リサイズなどの処理を行って、参照画像を作成する(ステップS114)。参照画像作成部132は、ターゲット位置PTが対応づけられた参照画像(テンプレート)を作成し、記憶部160に記憶させる。
【0050】
次に、統括制御部110は、第6ボタンB6の操作によってゲートオン信号の確認が指示されたか否かを判定する(ステップS116)。ゲートオン信号の確認が指示されると、統括制御部110は、表示制御部124に指示し、チェックボックスCBに「レ」(チェック)を入れた状態に変更させ、ゲートオン信号の出力タイミングを表示部120に表示させる(ステップS118)。チェックボックスCBに「レ」が入った状態では、ゲートオン信号の出力タイミングは計算されて表示されるが、実際にゲートオン信号は治療装置10に出力されない。
【0051】
次に、統括制御部110は、第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS120)。第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されると、統括制御部110は、出力制御部150に指示し、透視画像TIの撮影を治療装置10に指示すると共に、表示制御部124に指示し、撮影された透視画像TIを用いた確認画像を入力・表示部120に表示させる(ステップS122)。
【0052】
確認画像は、領域AI-1、AI-2に表示される。確認画像は、動画として再生される透視画像TIに対して、ターゲット位置PTやゲーティングウインドウGWが重畳された画像である(図2参照)。また、出力制御部150は、ターゲット位置PTがゲーティングウインドウGWに収まっている場合に、ゲートオン信号を表示制御部124に出力し、領域A2に表示させる。医師等は、この確認画像を視認することで、被検体Pの患部などのターゲット位置PTが正しい位置として認識されているかどうか、ターゲット位置PTがゲーティングウインドウGWに収まるタイミングは適切かどうか、ゲートオン信号の出力効率等を確認することができる。確認画像は、第1ボタンB1の操作によって撮影停止が選択されるまで表示される(ステップS124)。撮影停止が選択された後も、スライドバーやコマ送りスイッチなどが設定されたコントロールエリアCAを操作することで、確認画像を遡って確認することができる。
【0053】
第1ボタンB1の操作によって撮影停止が選択されると、統括制御部110は、チェックボックスCBの「レ」が外されているか否かを判定する(ステップS126)。チェックボックスCBの「レ」が外されていない場合、統括制御部110は、第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS128)。撮影開始が選択された場合は、ステップS122に処理が戻され、撮影開始が選択されていない場合はステップS126に処理が戻される。チェックボックスCBの「レ」が外されている場合、統括制御部110は、治療装置10から開始信号を受信したか否かを判定する(ステップS130)。この開始信号は、治療装置10のスイッチ(不図示)が操作されることで治療装置10が治療開始可能になったときに出力される信号である。治療装置10から開始信号を受信すると、統括制御部110は、治療を開始するように、表示制御部124、ターゲット位置特定部140および出力制御部150に指示し、出力制御部150は透視画像TIの撮影を治療装置に指示する(ステップS132)。また、ステップ126でチェックボックスが外されている場合、治療装置10から開始信号を受信していなくても、統括制御部110が第1ボタンB1の操作によって撮影開始されたかどうかを判定し、ターゲット位置特定部140が特定したターゲット位置PTがゲーティングウインドウに収まっていれば、治療装置10へゲートオン信号を出力してもよい(不図示)。この場合、治療装置からビームBが出力されることはない。また、ステップ126でチェックボックスが外されていないが、撮影開始が選択された後にチェックボックスを外された場合、撮影途中からゲートオン信号を出力してもよい(不図示)。このように、出力制御部150は、インターフェース画像IMにおいて、デフォルト状態を解除状態にする入力操作が入力操作取得部122により取得されたことを条件に、治療装置10にゲートオン信号を出力する。これによって、意図せず治療ビームBが被検体Pに照射されるのを抑制し、治療の信頼性を高めることができる。また、テンプレートの作成が完了すると、準備段階の終了操作を要求することなく、入力操作取得部122が治療ビームBの照射段階への開始指示を受け付ける。これによって、医用装置100の操作性を向上させることができる。
【0054】
ターゲット位置特定部140は、透視画像TIとテンプレートとのマッチングを行い、ターゲット位置PTを特定する。出力制御部150は、ターゲット位置がゲーティングウインドウに収まっている場合にゲートオン信号を治療装置10に出力する。表示制御部124は、透視画像TIにターゲット位置やゲーティングウインドウGWを重畳させた治療画像を、入力・表示部120に表示させる。治療画像は、領域A1-1、A1-2に表示される。治療は、第1ボタンB1の操作によって撮影停止が選択されるまで継続する(ステップS134)。なお、医用装置100は、治療装置10から照射完了の信号を受信した場合、或いは、治療装置10において照射終了操作がなされたことを示す信号を治療装置10から受信した場合も、治療を終了してよい。このように、入力操作取得部122により取得された一単位の入力操作(第1ボタンB1の操作)に応じて、出力制御部150が治療装置10の撮影部(放射線源12-1、12-2、検出器13-1、13-2)への動作指示を出力すると共に、医用装置100の特定の機能(ターゲット位置特定部140など)が起動する。これによって、医用装置100によって治療装置10を含めた治療システム1の動作を一元的に管理することができ、利便性が向上する。
【0055】
表示制御部124は、確認画像および治療画像において、ゲートオン信号を出力する際(準備段階では出力する条件が成立した際)に、ゲーティングウインドウの色を変更するようにしてもよい。例えば、透視画像TI-1とTI-2のいずれにおいてもターゲット位置PIがゲーティングウインドウGWに収まっていない場合に第1の色、透視画像TI-1とTI-2のいずれか一方のみにおいてターゲット位置PIがゲーティングウインドウGWに収まっている場合に第2の色、透視画像TI-1とTI-2の双方においてターゲット位置PIがゲーティングウインドウGWに収まっている場合に(すなわちゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に)第3の色でゲーティングウインドウGWの枠線を表示してよい。また、透視画像TI-1とTI-2のいずれにおいてもターゲット位置PIがゲーティングウインドウGWに収まっていない場合には、エラーアイコンを表示してもよい。
【0056】
また、表示制御部124は、ゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に、ゲーティングウインドウGWの内側領域と外側領域のいずれかの色彩または輝度を変更してもよい。更に、医用装置100は、ゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に、音または振動で通知する通知部を備えてもよい。
【0057】
また、マーカレス追跡、マーカ追跡、外部呼吸同期などのモードの切り替えは、上記のフローチャートにおけるステップS100の処理でのみ受け付けられるのではなく、準備段階から治療段階にかけての任意のタイミングで受け付けられてよい。また、適宜、処理のやり直しが受け付けられる。例えば、確認画像を表示している場面において、テンプレート画像の撮影からやり直すための操作が受け付けられる。これによって、煩雑な操作を要求することが無くなり、利便性を向上させることができる。なお、透視画像TIの撮影後にモード切り替えが行われた場合、既に撮影された透視画像TIをテンプレートに採用してもよい。
【0058】
また、複数回に分けて治療が行われる場合、前回以前に作成されたテンプレートを引き継いで治療が行われてもよい。図6は、医用装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その2)である。図示するように、セレクトウインドウSWにおいてマーカレス追跡が選択された後、統括制御部110は、いずれかの領域において「前回のテンプレートを使用する」ことが選択されたか否かを判定する(ステップS101)。「前回のテンプレートを使用する」ことが選択された場合、ステップS102~S114の処理がスキップされ、ステップS116に処理が進められる。これによって、利便性を向上させると共に、治療の信頼性を向上させることができる。
【0059】
また、医用装置100では、複数回に分けて治療が行われる場合、計画段階以降に作成されたDRR画像を繰り返し使用可能であってよい。更に、医用装置100は、モードが切り替えられた場合にも、既に作成されたDRR画像を繰り返し使用可能であってよい。
【0060】
また、図3のフローチャートの処理は、テンプレートマッチングを前提としているが、機械学習によってターゲット位置を特定する場合、ステップS112およびS114の処理は、参照画像を入力した場合にターゲット位置を導出する分類器を学習する処理に置換される。
【0061】
また、参照画像は治療前に作成されるものとしたが、更に、治療中に撮影された透視画像TIを並行して参照画像に加えてもよい。また、機械学習を行う場合、治療中に透視画像TIを利用してリアルタイムに機械学習を行ってもよい。
【0062】
<治療の流れ(モード2)>
以下、モード2について説明する。モード2では、マーカを使用して患部の位置を特定する。マーカは、患部の近傍に埋め込まれ、計画段階においてマーカと患部との位置関係が学習される。マーカはターゲット位置として扱われ、マーカがデーティングウインドウに収まる場合に治療ビームBが照射される。
【0063】
[計画段階]
モード2の計画段階において、まず、被検体PのCT撮影が行われ、n個のCT画像を含む4DCT画像が記憶部160に格納される。次に、医師や放射線技師などが、n個のCT画像のうち、例えば1つのCT画像に対して、輪郭を入力する。次に、例えば画像処理部136が、デフォーマブルレジストレーションによって、n個のCT画像のそれぞれについて輪郭を設定する。そして、モード1と同様に、治療計画が決定される。
【0064】
[位置決め段階]
位置決め段階においては、寝台位置の調整が行われる。これについてはモード1と同様である。また、CT撮影前に、被検体Pの身体における患部の近傍に、一以上のマーカが埋め込まれる。マーカは、X線を透過させづらい材質(例えば、金やプラチナ)で形成されている。このため、マーカは、透視画像TIにおいて黒く映る。また、マーカは、例えば、直径2[mm]程度の球や円筒などの形状を有する。
【0065】
[準備段階]
準備段階では、ある呼吸位相のCT画像上、DRR画像上、または透視画像TI上で医師等によって追跡に使用するマーカが選択される。準備段階より前、例えば計画段階でマーカが選択されてもよい。この際に、CT画像における画像処理部136によって認識されたマーカの位置が、例えば領域A7に表示される。図7は、マーカ選択時の画面の一例を示す図である。図示する画面では、領域A1-1、A1-2にDRR画像が、領域A7にCT画像の断面が表示されている。DRR画像に代えて透視画像TIが表示されてもよい。医用装置100は、以下の三通りの方法でマーカMKの指定を受け付ける。図では、マーカMKは各領域に一つのみ表示されているが、実際には複数のマーカMKが選択可能に表示される。
【0066】
(1)医師等は、領域A7においてマーカMKを指定する。これに応じて、透視画像TI上にエピポーラ線ELが表示される。そして、エピポーラ線EL上にあるマーカMKが指定可能となる。エピポーラ線EL上にあるマーカMKが指定されると、マーカMKの指定が完了する。
【0067】
(2)医師等は、DRR画像上でマーカMKを指定することもできる。この場合、一方のDRR画像(例えば領域A1-1の画像)上でマーカMKが指定されると、もう一方のDRR画像(例えば領域A1-2の画像)上にエピポーラ線ELが表示される。そして、もう一方のDRR画像上のエピポーラ線EL上にあるマーカMKが指定可能となる。エピポーラ線EL上にあるマーカMKが指定されると、マーカMKの指定が完了する。このとき、CT画像上に、指定されたマーカMKの位置が表示される。
【0068】
(3)医師等は、計画段階においてマーカ位置をマーカROIとして登録することもできる。この場合、領域A-1、A1-2のDRR画像上、領域A7のCT画像上にマーカ位置を表示し、追跡に使用するマーカMKを指定してもよい。
【0069】
また、準備段階では、マーカが選択されたCT画像上の位置を、他の呼吸位相のCT画像に展開する処理が行われる(各位相マーカ位置計算)。ゲーティングウインドウGWに設定する位相とマージンが指定されると、例えば出力制御部150が、各位相のマーカMKの位置にマージンを付加した領域を、ゲーティングウインドウGWに設定する。ゲーティングウインドウGWやマーカMKの軌跡は、DRR画像上に表示されてもよい。なお、ゲーティングウインドウの設定は、治療計画立案時から治療までの期間のどのタイミングで実施されてもよい。
【0070】
次に、被検体Pの1呼吸分以上の透視画像TIが撮影される。このとき、マーカ検知が指示されると、ターゲット位置特定部140は、透視画像TI上のマーカMKの位置を検知し、表示制御部124に指示して検知した位置を示す画像を入力・表示部120に表示させる。医師等は、入力・表示部120に表示されたマーカMKの位置が、検知した位置を示す画像と一致していることを確認する。
【0071】
この際に、出力制御部150は、透視画像TI-1、TI-2の双方に関して、ターゲット位置(マーカの位置プラス補正量)がゲーティングウインドウ内に収まっているか否かを判定する。治療段階では、ターゲット位置がゲーティングウインドウ内に収まっている場合にゲートオン信号が治療装置10に出力されるのであるが、準備段階では、ゲートオン信号の出力の有無が統括制御部110を介して表示制御部124に伝えられる。表示制御部124は、動画の表示に併せてゲートオン信号の出力の有無を入力・表示部120に表示させる。この結果、医師等によりゲートオン信号の出力タイミングが確認される。
【0072】
[治療段階]
治療段階では、出力制御部150が、透視画像TI-1、TI-2の双方に関して、ターゲット位置がゲーティングウインドウ内に収まっている場合にゲートオン信号を治療装置10に出力する。これによって、治療ビームBが被検体Pの患部に照射され、治療が行われる。
【0073】
<表示画像、フローチャート(モード2)>
以下、上記説明した治療の流れをサポートするための、医用装置100の処理について説明する。
【0074】
以下、インターフェース画像IMの各種機能について、フローチャートを参照しながら説明する。図8は、医用装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その3)である。まず、統括制御部110が、入力操作取得部122から入力される情報を参照し、セレクトウインドウSWにおいてマーカ追跡が選択されたか否かを判定する(ステップS200)。マーカ追跡以外のモードが選択された場合は、図3のフローチャートにおけるステップS100に処理が戻される。
【0075】
セレクトウインドウSWにおいてマーカ追跡が選択された場合、統括制御部110は、マーカの位置の選択および調整を受け付ける(ステップS202)。なお、ステップS202~S206の処理は、セレクトウインドウSWにおいてマーカ追跡が選択される前に行われてもよく、この場合、ステップS202~S206の処理は、手動操作により、または自動的にスキップされてもよい。次に、統括制御部110は、第4ボタンB4の操作によって各位相マーカ位置計算が指示されたか否かを判定する(ステップS204)。図9は、モード2における第4ボタンB4、第5ボタンB5、および第6ボタンB6の内容を示す図である。モード2において、第4ボタンB4は、各位相マーカ位置計算の指示を受け付け、第5ボタンB5は、マーカ検知の指示を受け付け、第6ボタンB6はゲートオン信号の確認指示を受け付ける。第4ボタンB4において、マーカの形状を指定することができる。
【0076】
第4ボタンB4の操作によって各位相マーカ位置計算が指示されると、統括制御部110は、画像処理部136に指示して、ある呼吸位相のCT画像におけるマーカの位置を、他の呼吸位相に展開させる(ステップS206)。このとき、表示制御部124は、入力・表示部120に、CT画像においてマーカの位置を示すマーカROI(Region Of Interest)を領域A7などに表示させる。
【0077】
次に、統括制御部110は、第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS208)。
【0078】
第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されると、統括制御部110は、出力制御部150に指示し、第1確認画像となる透視画像TIの撮影を治療装置10に指示する(ステップS210)。出力制御部150は、例えば、k回の呼吸分の透視画像TIを撮影するように治療装置10に指示する。なお、出力制御部150は、第1ボタンB1が再度操作されたときに撮影を終了する指示を治療装置10に出力してもよい。
【0079】
次に、統括制御部110は、第5ボタンB5の操作によってマーカ検知が指示されたか否かを判定する(ステップS212)。第5ボタンB5のマーカ検知が指示されると、統制御部110は、マーカ検知部134に指示し、ステップS204で撮影された第1確認画像のそれぞれにおいてマーカの位置を検知させる(ステップS214)。マーカ検知部134により検知されたマーカの位置は、例えば、領域A1-1、A1-2において動画として再生される第1確認画像に重畳表示される。
【0080】
次に、統括制御部110は、第6ボタンB6の操作によってゲートオン信号の確認が指示されたか否かを判定する(ステップS216)。ゲートオン信号の確認が指示されると、統括制御部110は、表示制御部124に指示し、チェックボックスCBに「レ」(チェック)を入れた状態に変更させ、ゲートオン信号の出力タイミングを表示部120に表示させる(ステップS218)。チェックボックスCBに「レ」が入った状態では、ゲートオン信号の出力タイミングは計算されて表示されるが、実際にゲートオン信号は治療装置10に出力されない。
【0081】
次に、統括制御部110は、第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS220)。第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されると、統括制御部110は、出力制御部150に指示し、透視画像TIの撮影を治療装置10に指示すると共に、表示制御部124に指示し、撮影された透視画像TIを用いた第2確認画像を入力・表示部120に表示させる(ステップS222)。
【0082】
第2確認画像は、領域AI-1、AI-2に表示される。確認画像は、動画として再生される透視画像TIに対して、ターゲット位置PTやゲーティングウインドウGWが重畳された画像である(図2参照)。また、出力制御部150は、ターゲット位置PTがゲーティングウインドウGWに収まっている場合に、ゲートオン信号を表示制御部124に出力し、領域A2に表示させる。医師等は、この第2確認画像を視認することで、被検体Pの患部などのターゲット位置PTが正しい位置として認識されているかどうか、ターゲット位置PTがゲーティングウインドウGWに収まるタイミングは適切かどうか、ゲートオン信号の出力効率等を確認することができる。第2確認画像は、第1ボタンB1の操作によって撮影停止が選択されるまで表示される(ステップS224)。撮影停止が選択された後も、スライドバーやコマ送りスイッチなどが設定されたコントロールエリアCAを操作することで、確認画像を遡って確認することができる。
【0083】
第1ボタンB1の操作によって撮影停止が選択されると、統括制御部110は、チェックボックスCBの「レ」が外されているか否かを判定する(ステップS226)。チェックボックスCBの「レ」が外されていない場合、統括制御部110は、第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS228)。撮影開始が選択された場合は、ステップS222に処理が戻され、撮影開始が選択されていない場合はステップS226に処理が戻される。チェックボックスCBの「レ」が外されている場合、統括制御部110は、治療装置10から開始信号を受信したか否かを判定する(ステップS230)。この開始信号は、治療装置10のスイッチ(不図示)が操作されることで治療装置10が治療開始可能になったときに出力される信号である。治療装置10から開始信号を受信すると、統括制御部110は、治療を開始するように、表示制御部124、マーカ検知部134、ターゲット位置特定部140および出力制御部150に指示し、出力制御部150は透視画像TIの撮影を治療装置に指示する(ステップS232)。また、ステップ226でチェックボックスが外されている場合、治療装置10から開始信号を受信していなくても、統括制御部110が第1ボタンB1の操作によって撮影開始されたかどうかを判定し、ターゲット位置特定部140が特定したターゲット位置PTがゲーティングウインドウに収まっていれば、治療装置10へゲートオン信号を出力しても良い(不図示)。この場合、治療装置からビームBが出力されることはない。また、ステップ226でチェックボックスが外されていないが、撮影開始が選択された後にチェックボックスを外された場合、撮影途中からゲートオン信号を出力してもよい(不図示)。ターゲット位置特定部140は、マーカ検知部134により検知されたマーカの位置に基づいてターゲット位置PTを特定する。出力制御部150は、ターゲット位置がゲーティングウインドウに収まっている場合にゲートオン信号を治療装置10に出力する。表示制御部124は、透視画像TIにターゲット位置やゲーティングウインドウGWを重畳させた治療画像を、入力・表示部120に表示させる。治療画像は、領域A1-1、A1-2に表示される。治療は、第1ボタンB1の操作によって撮影停止が選択されるまで継続する(ステップS234)。なお、医用装置100は、治療装置10から照射完了の信号を受信した場合、或いは、治療装置10において照射終了操作がなされたことを示す信号を治療装置10から受信した場合も、治療を終了してよい。
【0084】
表示制御部124は、第2確認画像および治療画像において、ゲートオン信号を出力する際(準備段階では出力する条件が成立した際)に、ゲーティングウインドウの色を変更するようにしてもよい。例えば、透視画像TI-1とTI-2のいずれにおいてもターゲット位置PIがゲーティングウインドウGWに収まっていない場合に第1の色、透視画像TI-1とTI-2のいずれか一方のみにおいてターゲット位置PIがゲーティングウインドウGWに収まっている場合に第2の色、透視画像TI-1とTI-2の双方においてターゲット位置PIがゲーティングウインドウGWに収まっている場合に(すなわちゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に)第3の色でゲーティングウインドウGWの枠線を表示してよい。また、透視画像TI-1とTI-2のいずれにおいてもターゲット位置PIがゲーティングウインドウGWに収まっていない場合には、エラーアイコンを表示してもよい。
【0085】
また、表示制御部124は、ゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に、ゲーティングウインドウGWの内側領域と外側領域のいずれかの色彩または輝度を変更してもよい。更に、医用装置100は、ゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に、音または振動で通知する通知部を備えてもよい。
【0086】
また、マーカレス追跡、マーカ追跡、外部呼吸同期などのモードの切り替えは、上記のフローチャートにおけるステップS200の処理でのみ受け付けられるのではなく、準備段階から治療段階にかけての任意のタイミングで受け付けられてよい。また、適宜、処理のやり直しが受け付けられる。例えば、確認画像を表示している場面において、テンプレート画像の撮影からやり直すための操作が受け付けられる。
【0087】
また、複数回に分けて治療が行われる場合、前回以前に選択・位置調整されたマーカの位置を引き継いで治療が行われてもよい。図10は、医用装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その4)である。図示するように、セレクトウインドウSWにおいてマーカ追跡が選択された後、統括制御部110は、いずれかの領域において「前回のマーカ位置を使用する」ことが選択されたか否かを判定する(ステップS300)。「前回のマーカ位置を使用する」ことが選択された場合、ステップS200~S214の処理がスキップされ、ステップS216に処理が進められる。
【0088】
<モード3>
以下、モード3について簡単に説明する。
[計画段階]
モード3の計画段階において、まず、被検体PのCT撮影が行われる。CT撮影では、様々な呼吸位相毎に、様々な方向から被検体Pが撮影される。次に、CT撮影の結果に基づいて4DCT画像が生成される。4DCT画像は、3次元のCT画像を時系列にn個並べたものである。このn個および時系列画像の時間間隔を乗算して求められる期間は、例えば、呼吸位相が1周期分変化する期間をカバーするように設定される。4DCT画像は、記憶部160に格納される。
【0089】
次に、医師や放射線技師などが、n個のCT画像のうち、例えば1つのCT画像に対して、輪郭を入力する。この輪郭は、患部である腫瘍の輪郭や治療ビームBを照射したくない臓器の輪郭等である。次に、例えば画像処理部136が、デフォーマブルレジストレーションによって、n個のCT画像のそれぞれについて輪郭を設定する。次に、治療計画が決定される。治療計画とは、設定された輪郭情報に基づいて、患部がどの位置にあるときに、どこに、どの方向から、どれだけの治療ビームBを照射するかを規定するものであり、ゲーテッド照射法や追尾照射法などの治療法に応じて決定される。なお、計画段階の処理の一部または全部は、外部装置によって実行されてもよい。例えば、4DCT画像を生成する処理は、CT装置によって実行されてもよい。そして、治療計画において決定した方向から治療ビームBを照射した場合に、患部に治療ビームBが当たる呼吸位相が求められる。
【0090】
[位置決め段階]
位置決め段階においては、寝台位置の調整が行われる。これについてはモード1と同様である。
【0091】
[治療段階]
治療段階では、出力制御部150が、センサ15の出力値に基づいて把握される呼吸波形(外部呼吸位相)が、設定された照射範囲内に入った場合に、治療ビームBが照射される。
【0092】
<その他>
上記実施形態の医用装置100は、常時起動しているデーモンプログラムを備えてもよい。医用装置100は、前述した治療計画の結果を他装置から受信する。デーモンプログラムは、治療計画の結果が受信されるのに応じて、治療計画が内部呼吸同期または外部呼吸同期の計画であれば、医用装置100の各部の機能を自動的に起動させるようにしてもよい。この場合において、デーモンプログラムは、内部呼吸同期の計画である場合はデフォーマブルレジストレーションなどのターゲット位置追跡のための準備処理を開始し、外部呼吸同期の計画である場合は、インターフェース画像IMの表示のみ行ってよい。
【0093】
また、図3、6、8、10などで例示したフローチャートの各処理は、位置決め承認通知を受けないと進行しないようにインターロックが掛けられてもよい。位置決め承認通知は、入力・表示部120に対してなされた入力操作によって行われてもよいし、他装置から受信してもよい。また、図3、6、8、10などで例示したフローチャートの各処理は、位置決め承認キャンセル通知を受けた場合に、位置決め承認通知を受けた時点まで戻るように制御されてもよい。
【0094】
また、複数回に亘り治療が行われる場合、統括制御部110は、前回以前の治療時の各種データ(テンプレート、追跡結果、位置決め承認履歴)など記憶部160に保持しておき、表示制御部124は、当日の治療状況との比較を入力・表示部120に表示させてもよい。
【0095】
また、医用装置100は、DRR画像のみによる学習結果、DRR画像と1日目の治療時に撮影された透視画像TIによる学習結果、DRR画像と2日目の治療時に撮影された透視画像TIによる学習結果などをそれぞれ保持しておき、治療当日に、保持した学習結果のうち一つを自動的に、或いは手動で選択してターゲット位置の特定に用いてもよい。
【0096】
また、医用装置100は、1日目の治療に使用したテンプレート、2日目の治療に使用したテンプレートなどをそれぞれ保持しておき、治療当日に、保持したテンプレートのうち一つを自動的に、或いは手動で選択してターゲット位置の特定に用いてもよい。
【0097】
また、医用装置100は、上記した学習結果、またはテンプレートを自動的に選択する場合、治療当日の追跡値の軌跡と最も近い軌跡を示した日の情報を選択するようにしてもよい。
【0098】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、被検体Pに電磁波を照射して撮影することで透視画像TIを生成する撮影部(12-1、12-2、13-1、13-2)から、被検体Pの透視画像を取得する取得部(130)と、透視画像TIにおける被検体Pのターゲット位置PTを特定する特定部(140)と、特定部により特定されたターゲット位置PTがゲーティングウインドウWG内に収まる場合に、被検体Pに治療ビームBを照射する治療装置(10)にゲートオン信号を出力する出力制御部(150)と、治療の準備段階と、治療ビームBの照射段階とのそれぞれの開始指示を受け付けるためのインターフェース画像IMを表示部(120)に表示させる表示制御部(124)と、インターフェース画像IMにおいて利用者によって行われた入力操作を受け付ける入力操作取得部(122)と、を備えることにより、内部呼吸同期による治療を包括的にサポートすることができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
10…治療装置、12…放射線源、13…検出器、14…照射門、15…センサ、20…治療装置側制御部、100…医用装置、110…統括制御部、120…入力・表示部、122…入力操作取得部、124…表示制御部、130…取得部、132…参照画像作成部、134…マーカ検知部、136…画像処理部、140…ターゲット位置特定部、150…出力制御部、160…記憶部
図1
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図10