(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】記録媒体及び記録装置
(51)【国際特許分類】
G11B 7/24041 20130101AFI20221117BHJP
G11B 7/24012 20130101ALI20221117BHJP
G11B 7/246 20130101ALI20221117BHJP
G11B 7/2575 20130101ALI20221117BHJP
G11B 7/0033 20060101ALI20221117BHJP
G11B 7/0045 20060101ALI20221117BHJP
G11B 7/125 20120101ALI20221117BHJP
B41M 5/40 20060101ALI20221117BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G11B7/24041
G11B7/24012
G11B7/246
G11B7/2575
G11B7/0033
G11B7/0045 A
G11B7/125
B41M5/40 212
B41M5/42 220
B41M5/42 210
(21)【出願番号】P 2018192030
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000186566
【氏名又は名称】小林クリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 純生
(72)【発明者】
【氏名】藤森 康臣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕治
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057722(WO,A1)
【文献】特開2017-052261(JP,A)
【文献】特開2018-043497(JP,A)
【文献】特開2011-098536(JP,A)
【文献】特表2013-506582(JP,A)
【文献】特開2004-074584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/24041
G11B 7/24012
G11B 7/246
G11B 7/2575
G11B 7/0033
G11B 7/0045
G11B 7/125
B41M 5/40
B41M 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成され所定の波長の記録光を吸収して発色する第1発色層と、
前記第1発色層よりも前記記録光の入射側に形成され、可視光及び前記記録光を透過するとともに、熱により発色する
複数の第2発色層と、
各前記第2発色層に対応して
発色対象の前記第2発色層よりも前記記録光の入射側に
それぞれ形成され、可視光を透過するとともに、前記記録光を吸収して光熱変換を行い前記熱に変換する
複数の光熱変換層と
、を備え、
前記複数の前記第2発色層は、伝熱量を調整するための中間層を介して互いに離間して形成されるとともに、互いに発色閾値温度が異なっている、
記録媒体。
【請求項2】
前記第1発色層は、モノクロ記録層を形成し、
前記第2発色層は、カラー記録層を形成している、
請求項1
に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記第1発色層は、モノクロ記録層を形成し、
前記第2発色層は、カラー記録層を形成し、
前記第2発色層を少なくとも3層以上備え、前記第2発色層全体としてフルカラー記録層を形成している、
請求項1
又は請求項2に記載の記録媒体。
【請求項4】
基材と、
前記基材上に形成され所定の波長の記録光を吸収して発色する第1発色層と、
前記第1発色層よりも前記記録光の入射側に形成され、可視光及び前記記録光を透過するとともに、熱により発色する第2発色層と、
発色対象の前記第2発色層よりも前記記録光の入射側に形成され、可視光を透過するとともに、前記記録光を吸収して光熱変換を行い前記熱に変換する光熱変換層と
、を備え、
前記第1発色層は、モノクロ記録層を形成し、
前記第2発色層は、カラー記録層を形成し、
前記第2発色層を少なくとも3層以上備え、前記第2発色層全体としてフルカラー記録層を形成し、
当該記録媒体の記録面は、モノクロ画像形成領域と、カラー画像形成領域と、を有し、
前記光熱変換層は、前記カラー画像形成領域に対応する位置に設けられている、
記録媒体。
【請求項5】
前記第2発色層は、前記記録光及び可視光を透過する感熱発色層として構成されている、
請求項1乃至
請求項4のいずれか一項
に記載の記録媒体。
【請求項6】
基材と、前記基材上に形成され所定の波長の記録光を吸収して発色する第1発色層と、前記第1発色層よりも前記記録光の入射側に形成され、可視光及び前記記録光を透過するとともに、熱により発色する第2発色層と、発色対象の前記第2発色層よりも前記記録光の入射側に形成され、可視光を透過するとともに、前記記録光を吸収して光熱変換を行い前記熱に変換する光熱変換層と、を備えた
記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記記録光を出射する光源と、
前記記録光を前記記録媒体の記録面に導く光学系と、
前記記録媒体を任意の方向に傾けて前記記録光の入射角度を実効的に変更し、前記光熱変換層の背面側に位置する前記第1発色層に前記記録光を入射させる入射角度変更装置と、
を備えた記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、記録媒体及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザでフルカラー記録を施す従来の手法には、大きく分けて以下の二つがあった。
第1の手法は、閾値温度の異なる三原色の発色層を積層した媒体に対し、レーザでエネルギーを与えて三原色の発色層を選択的に発色させる手法である。
【0003】
例えば、特許文献1には、レンズによりレーザ光が集光する位置を発色させたい層に合わせて上下させることで選択的に三原色を発色させる手法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、色毎に異なる温度を閾値に持つ三原色の発色層を積層した媒体に対してレーザで熱を加え、閾値の温度が相対的に低い色を発色させた後に、紫外光によって発色層の熱感度を消失させ、熱を加えても発色しない状態に変化させる手法が開示されており、この工程を2番目に低い温度で発色する色についても行い、最も高温で発色する色を発色後にフルカラー記録を完了させる。
【0005】
第2の手法は、三原色を担う各層が互いに異なる波長に吸収特性を持ち、各色を記録するために三種類の波長のレーザを用いる手法である。
例えば、特許文献3は、少なくとも1層のレーザ感応性材料を含む層を備えた多層体を備え、各色を記録するためにレーザ光を吸収して発色ないし、脱色することによってフルカラー記録を完成させる手法について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-138558号公報
【文献】特許第3509246号公報
【文献】特許第4411394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、第1の手法では、低温発色層に伝熱するために一定の時間を要するため、トータルの印刷時間も長くなる虞があった。
【0008】
また、第2の手法では、互いに異なる3種の波長のレーザを用いる必要があり、装置が大型化、かつ高コストになる虞があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で迅速にフルカラーの画像を記録できるとともに、装置構成を簡略化してコストの抑制を図ることが可能な記録媒体及び記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の記録媒体は、基材と、基材上に形成され所定の波長の記録光を吸収して発色する第1発色層と、第1発色層よりも記録光の入射側に形成され、可視光及び前記記録光を透過するとともに、熱により発色する複数の第2発色層と、各第2発色層に対応して発色対象の第2発色層よりも記録光の入射側にそれぞれ形成され、可視光を透過するとともに、記録光を吸収して光熱変換を行い前記熱に変換する複数の光熱変換層と、を備え、複数の第2発色層は、伝熱量を調整するための中間層を介して互いに離間して形成されるとともに、互いに発色閾値温度が異なっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態の記録媒体(偽変造防止媒体)の情報記録がなされた状態における外観正面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の記録媒体の構成例の断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の記録媒体の厚み及び熱伝導率比の説明図である。
【
図4】
図4は、光熱変換層の光吸収特性の一例の説明図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のレーザ記録装置の概要構成ブロック図である。
【
図6】
図6は、レーザ記録装置の動作処理フローチャートである。
【
図7】
図7は、高温感熱発色層を単独で発色させる場合におけるレーザ光のエネルギーと照射時間との関係を説明する図である。
【
図8】
図8は、高温感熱発色層の発色制御温度の説明図である。
【
図9】
図9は、中温感熱発色層を単独で発色させる場合におけるレーザ光のエネルギーと照射時間との関係を説明する図である。
【
図10】
図10は、中温感熱発色層の発色制御温度の説明図である。
【
図11】
図11は、低温感熱発色層を単独で発色させる場合におけるレーザ光のエネルギーと照射時間との関係を説明する図である。
【
図12】
図12は、低温感熱発色層の発色制御温度の説明図である。
【
図13】
図13は、高温感熱発色層及び中温感熱発色層を並行して発色させる場合におけるレーザ光のエネルギーと照射時間との関係を説明する図である。
【
図14】
図14は、中温感熱発色層及び低温感熱発色層を並行して発色させる場合におけるレーザ光のエネルギーと照射時間との関係を説明する図である。
【
図15】
図15は、高温感熱発色層、中温感熱発色層及び低温感熱発色層を並行して発色させる場合におけるレーザ光のエネルギーと照射時間との関係を説明する図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態の記録媒体の構成例の断面図である。
【
図19】
図19は、第4実施形態の記録媒体の変形例の説明図である。
【
図22】
図22は、第6実施形態のカード状記録媒体の説明図である。
【
図23】
図23は、第6実施形態の第1変形例のカード状記録媒体の説明図である。
【
図24】
図24は、第6実施形態の第2変形例のカード状記録媒体の説明図である。
【
図25】
図25は、第6実施形態の第3変形例のカード状記録媒体の説明図である。
【
図26】
図26は、第6実施形態の第4変形例のカード状記録媒体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。
[1]第1実施形態
まず、第1実施形態の記録媒体について説明する。
図1は、第1実施形態の記録媒体(偽変造防止媒体)の情報記録がなされた状態における外観正面図である。
【0013】
情報記録がなされた記録媒体10は、大別すると、証明写真等のフルカラー画像を記録するフルカラー画像形成領域ARCと、フルカラー画像形成領域ARCの周囲に接する画像形成領域として形成され、ID情報、氏名、発行日などの特定情報がモノクロで記録されたモノクロ画像形成領域ARMと、を備えている。
【0014】
図1においては、記録媒体10において、フルカラー画像形成領域ARC及びモノクロ画像形成領域ARM以外の領域が存在しているが、フルカラー画像形成領域ARCを除く他の全ての領域をモノクロ画像形成領域ARMとしてもよい。
【0015】
また
図1においては、フルカラー画像形成領域ARCとモノクロ画像形成領域ARMを接するように構成していたが、分離して配置してもよいし、いずれか一方あるいは双方を複数配置するようにしてもよい。
【0016】
図2は、第1実施形態の記録媒体の構成例の断面図である。
図3は、第1実施形態の記録媒体の厚み及び熱伝導率比の説明図である。
記録媒体10は、
図1に示すように、基材11上に、第1発色層としての光吸収発色層12、第2発色層としての低温感熱発色層13、中間層14、第2発色層としての中温感熱発色層15、中間層16、第2発色層としての高温感熱発色層17、光熱変換層18及び保護/機能層19がこの順番で形成されている。
【0017】
ここで、低温感熱発色層13、中温感熱発色層15及び高温感熱発色層17は、画像記録がなされる感熱記録層として機能している。
また、中間層16及び中間層14は、伝熱量を調整し、伝熱を抑制する断熱層として機能している。
【0018】
また、基材11は、光吸収発色層12、低温感熱発色層13、中間層14、中温感熱発色層15、中間層16、高温感熱発色層17、光熱変換層18及び保護/機能層19を保持する。
【0019】
ここで、基材11の厚みは、例えば、100μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~5.00W/m/Kとされる。
【0020】
光吸収発色層12は、顔料粒子を含み、顔料粒子が記録光であるレーザ光を吸収して炭化することにより不可逆的に発色する層である。
ここで、光吸収発色層12の厚みは、例えば、1~50μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~50W/m/Kとされる。
【0021】
低温感熱発色層13は、その温度が第3閾値温度T3以上となると発色する感熱材料としての示温材料を含む層である。
ここで、低温感熱発色層13の厚みは、例えば、1~10μmとされ、その熱伝導率比は、0.1~10W/m/Kとされる。
【0022】
中間層14は、中温感熱発色層15の発色時に熱的障壁を与え、中温感熱発色層15側からの低温感熱発色層13への伝熱を抑制する層である。
ここで、中間層14の厚みは、例えば、7~100μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~50W/m/Kとされる。
【0023】
中温感熱発色層15は、その温度が第2閾値温度T2(>T3)以上となると発色する感熱材料としての示温材料を含む層である。
ここで、光熱変換層17の厚みは、例えば、1~10μmとされ、その熱伝導率比は、0.1~10W/m/Kとされる。
【0024】
中間層16は、高温感熱発色層17の発色時に熱的障壁を与え、高温感熱発色層17側からの中温感熱発色層及び低温感熱発色層への伝熱を抑制する層である。
ここで、中間層16の厚みは、例えば、7~100μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~50W/m/Kとされる。
【0025】
高温感熱発色層17は、その温度が第1閾値温度T1(>T2>T3)以上となると発色する感熱材料としての示温材料を含む層である。
ここで、光熱変換層15の厚みは、例えば、0.5~30μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~1W/m/Kとされる。
【0026】
光熱変換層18は、所定波長の記録光(記録レーザ光)を吸収して光/熱変換を行って高温感熱発色層17、中温感熱発色層15及び低温感熱発色層13のうち、少なくともいずれかの感熱発色層を発色させるための熱を生成し、伝達する層である。
ここで、光熱変換層15の厚みは、例えば、0.5~30μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~1W/m/Kとされる。
【0027】
保護/機能層19は、光吸収発色層12、光熱変換層18、バインダ層14、高温感熱発色層17、中間層16、中温感熱発色層15、中間層14及び低温感熱発色層13を保護するとともに、ホログラム、レンチキュラーレンズ、マイクロアレイレンズ、紫外励起型の蛍光インク等の偽造防止アイテムの配置、紫外線カット層など内部保護アイテムの挿入、またはそれら両方の機能等を用いるために設けられる層である。
ここで、保護/機能層19の厚みは、例えば、0.5~10μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~1W/m/Kとされる。
【0028】
ここで、光熱変換層18、高温感熱発色層17、中間層16、中温感熱発色層15、中間層14、低温感熱発色層13及び保護/機能層19の光吸収特性について詳細に説明する。
【0029】
図4は、光熱変換層の光吸収特性の一例の説明図である。
図4に示すように、光熱変換層18は、近赤外線に属する波長λ(例えば、λ=1064nm)に吸収ピークを有する赤外線吸収特性を有している。
【0030】
一方、低温感熱発色層13、中間層14、中温感熱発色層15、中間層16、高温感熱発色層17及び保護/機能層19は、近赤外線に属する波長λを有する光(近赤外光)を透過する材料で形成されている。これは、光吸収発色層12あるいは光熱変換層18が吸収可能な波長λを有する光(近赤外光)を到達させるためだからである。
【0031】
したがって、保護/機能層19側から波長λ(例えば、λ=1064nm)を有する近赤外光が入射された場合には、フルカラー画像形成領域ARCにおいては、保護/機能層19を透過して光熱変換層18に到り、光熱変換層18にほとんど吸収されて、光熱変換され、高温感熱発色層17、中温感熱発色層15あるいは低温感熱発色層13を発色させることとなる。
【0032】
一方、モノクロ画像形成領域ARMにおいては、保護/機能層19→高温感熱発色層17→中間層16→中温感熱発色層15→中間層14→低温感熱発色層13の順番で各層を透過し、光吸収発色層に到り、光吸収発色層12にほとんど吸収されて、光吸収発色層12を発色させることとなる。
【0033】
次に各層を構成する材料について説明する。
まず基材11について説明する。
基材11としては、一般的にカード、紙、フィルム素材として用いられる、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、グリコール変性ポリエステル(PET-G)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂などフィルム状あるいは板状に加工できる樹脂を用いることが可能である。
【0034】
さらには、上述した樹脂にフィラーとして、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナなどを添加して白色性や表面の平滑性、断熱性等を有する樹脂を基材11として用いることも可能である。
【0035】
例えば、また、これらのほかに特許第3889431号、特許第4215817号、特許第4329744号、特許第4391286号、などに記載の紙(用紙)および樹脂材料を使用可能である。
【0036】
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(A-PET、PETG)、ポリシクロヘキサン1,4-ジメチルフタレート(PCT)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、透明ABS(MABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)、アクリル樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、スチレン/アクリル樹脂、エチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアマイド樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、生分解性樹脂、セルロース系樹脂等のその他の樹脂、紙基材、金属素材等が使用できる。
【0037】
なお、上記の樹脂類およびフィラーは一例であり、加工性、機能性を満たせば他の材料を使用することも可能である。
【0038】
上記構成において、好ましくは白色ないし透明な樹脂を使用することが望ましい。
ここで透明とは、可視光領域における光透過率が、可視光領域を平均して30%以上であることをいう。
【0039】
次に低温感熱発色層13、中温感熱発色層15及び高温感熱発色層17について説明する。
低温感熱発色層13、中温感熱発色層15及び高温感熱発色層17としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル、など透明性の高い樹脂類をバインダとして、ある閾値の温度を超えた時に発色する色材としては、ロイコ染料、ロイコ色素又は示温材料、並びに顕色剤を用いる。
ロイコ染料、ロイコ色素又は示温材料としては、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチル-インドール-3-イル)フタリド、7-(1-ブチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-7-(4-ジエチルアミノ-2-メチル-フェニル)-7H-フロ[3,4-b]ピリジン-5-オン、1-(2,4-ジクロロ-フェニルカルバモイル)-3,3-ジメチル-2-オキソ-1-フェノキシ-ブチル]-(4-ジエチルアミノーフェニル)-カルバミン酸イソブチルエステル、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン=CVL)、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-アミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ニトロフタリド、3,3-ビス3-ジメチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-(2-フルオロフェニルアミノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(2-フルオロフェニルアミノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-7-(N-メチルアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-イソアミルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N,N-ジエチルアミノ-7-o-クロルアニリノフルオラン、ローダミンBラクタム、3-メチルスピロジナフトピラン、3-エチルスピロジナフトピラン、3-ベンジルスピロナフトピランなどの発色染料を用いルことが可能である。
【0040】
また、顕色剤としては、感熱記録体において電子受容体として使用される酸性物質がいずれも使用できる。
例えば、活性白土、酸性白土等の無機物質、無機酸、芳香族カルボン酸、その無水物またはその金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸、フェノール系化合物等の有機系顕色剤などが顕色剤として挙げられるが、フェノール系化合物が好ましい。
【0041】
顕色剤の具体例としては、ビス3-アリル-4-ヒドロキシフェニルスルホン、ポリヒドロキシスチレン、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸の亜鉛塩、3-オクチル-5-メチルサリチル酸の亜鉛塩、フェノール、4-フェニルフェノール、4-ヒドロキシアセトフェノン、2,2′-ジヒドロキシジフェニル、2,2′-メチレンビス(4-クロロフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-イソプロピリデンジフェノール(別名ビスフェノールA)、4,4′-イソプロピリデンビス(2-クロロフェノール)、4,4′-イソプロピリデンビス(2-メチルフェノール)、4,4′エチレンビス(2-メチルフェノール)、4,4′-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、2,2′-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-n-ヘプタン、4,4′-シクロヘキシリデンビス(2-イソプロピルフェノール)、4,4′-スルホニルジフェノール等のフェノール系化合物、該フェノール系化合物の塩、サリチル酸アニリド、ノボラック型フェノール樹脂、p-ヒドロキシ安息香酸ベンジル等などが挙げられる。
【0042】
また、中間層14及び中間層16としては、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)、ポリスチレン、ポリアクリル等を用いることができる。
【0043】
次に光熱変換層18について説明する。
光熱変換層18としては、可視光を透過し、赤外光を吸収する光吸収発熱材とバインダ樹脂とを含んでおり、それらの固形分の質量比が赤外線吸収発熱剤:バインダ樹脂=1~20:99~80となるように溶媒中で混合し塗布する。
光熱変換層18を塗布した際の膜厚は1~10μmが好ましく、より好ましくは、1~5μmである。
【0044】
光熱変換層18に含まれる赤外線吸収発熱剤としては、ポリメチン系のシアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、金属ジチオール錯体系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、無機酸化物粒子等、アゾ系色素、ナフトキノン系やアントラキノン系のキノン系色素、酸化セリウム、スズ酸化インジウム、アンチモン酸化スズ、セシウム酸化タングステン、六ホウ化ランタン、などが使用可能である。
【0045】
また、光熱変換層18に含まれるバインダ樹脂としては、ニトロセルロース、燐酸セルロース、硫酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、パルミチン酸セルロース、ミリスチン酸セルロース、セルロースアセテテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル類、ポリエステル系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂が使用可能である。
【0046】
また、光熱変換層18に含まれるバインダ樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリアクリルアミドなどのビニル系樹脂、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸などのアクリル樹脂類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリアクリレート樹脂類、エポキシ樹脂類、フェノール樹脂類なども使用可能である。
【0047】
特に、PET系樹脂、PETG、PVC系樹脂、PVA系樹脂、PC系樹脂、PP系樹脂、PE系樹脂、ABS系樹脂、ポリアミド系樹脂、酢酸ビニル系樹脂などがその代表である。さらに、光熱変換層18としてこれらの樹脂をベースにしたコポリマーやシリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンなどの添加物を加えたものが使用可能である。
【0048】
保護/機能層19は、必要に応じて設ければ良く、具体的な機能としては、ホログラム、レンチキュラーレンズ、マイクロアレイレンズ、紫外励起型の蛍光インク等の偽造防止アイテムの挿入、紫外線カット層など内部保護アイテムの挿入、またはそれら両方などを用いることができる。保護/機能層19の下に記録されるカラー記録やモノクロ記録を記録終了後に視認する必要があるため、無色透明が好ましい。
【0049】
次に第1実施形態のレーザ記録装置について説明する。
図5は、第1実施形態のレーザ記録装置の概要構成ブロック図である。
第1実施形態のレーザ記録装置30は、近赤外レーザ光LNIR(=波長λ)を出力するレーザ発振器31と、近赤外レーザ光LNIRのビーム径を拡大するビームエキスパンダ32と、近赤外レーザ光LNIRを反射する第1方向スキャンミラー33を駆動し、第1方向に近赤外レーザ光LNIRを走査するために第1方向スキャンミラー33を駆動する第1モータ34を備えた第1方向走査ユニット35と、近赤外レーザ光LNIRを反射する第2方向スキャンミラー36を駆動し、第1方向と直交する第2方向に近赤外レーザ光LNIRを走査するために第2方向スキャンミラー37を駆動する第2モータ38を備えた第2方向走査ユニット39と、第1方向走査ユニット35及び第2方向走査ユニット39を介して導かれた近赤外レーザ光LNIRを記録媒体10に集光する集光レンズ(F・θレンズ)40と、記録媒体10を所定位置に搬送し、保持するステージ41と、入力された入力画像データGDに基づいて、遠赤外レーザ光LFIRの照射位置及び照射強度を算出するとともに、レーザ記録装置30全体を制御する制御部42と、制御部42の算出結果に基づいてレーザ発振器31のレーザ出力を制御する出力制御部43と、制御部42の算出結果に基づいて第1モータ34及び第2モータ38を制御し、近赤外レーザ光LNIRの記録媒体10への照射位置を制御する照射位置制御部44と、を備えている。
【0050】
上記構成において、レーザ発振器31としては、近赤外領域のレーザである半導体レーザ、ファイバーレーザ、YAGレーザ、YVO4レーザ等を用いることが可能である。
【0051】
次にレーザ記録装置30における記録媒体10への記録処理について説明する。
図6は、レーザ記録装置の動作処理フローチャートである。
以下の説明においては、光吸収発色層12を黒(K)発色層とし、低温感熱発色層13をシアン(C)発色層とし、中温感熱発色層15をマゼンタ(M)発色層とし、高温感熱発色層17をイエロー(Y)発色層とするものとする。
【0052】
まず、レーザ記録装置30の制御部42は、図示しない搬送装置を介して記録媒体10を記録位置まで搬入する(ステップS11)。
【0053】
続いてレーザ記録装置30の制御部42は、図示しないセンサにより搬入された記録媒体10を検知し(ステップS12)、所定の搬入位置において記録媒体10を図示しない固定装置により固定する(ステップS13)。
【0054】
続いて、レーザ記録装置30の制御部42は、RGBデータとしての入力画像データGDが入力されると(ステップS14)、入力画像データGDを解析し、ピクセル毎の色データ(CMYKデータ)に変換する(ステップS15)。
続いて、制御部42は、ピクセル毎の色データに基づいて、発色させる層の組合せに応じて、色データをレーザ照射パラメータ値に変換する(ステップS16)。
【0055】
ここで、レーザ照射パラメータ値は、具体的には、パワー設定値、走査速度設定値、パルス幅設定値、照射繰返数設定値、走査ピッチ設定値等である。
続いて、制御部42は、出力制御部43及び照射位置制御部44を制御し、ステップS13で設定されたレーザ照射パラメータ値に基づいて、近赤外レーザ光LNIRを用いて、高温感熱発色層17、中温感熱発色層15及び低温感熱発色層13の発色を行わせるためフルカラー画像形成領域ARCに対する画像記録を行う(ステップS17)。
【0056】
ここで、フルカラー画像形成領域ARCにおける発色制御について説明する。
フルカラー画像形成領域ARCにおいては、レーザ記録装置30は、高温感熱発色層17、中温感熱発色層15及び低温感熱発色層13を用いて発色を行う。
【0057】
上述したように、高温感熱発色層17は、その温度が第1閾値温度T1以上となると発色し、中温感熱発色層15は、その温度が第2閾値温度T2(<T1)以上となると発色し、低温感熱発色層13は、その温度が第3閾値温度T3(<T2<T1)以上となると発色する。
より具体的には、例えば、高温感熱発色層17に対応する第1閾値温度T1=150~270℃、中温感熱発色層15に対応する第2閾値温度T2=100~200℃、低温感熱発色層13に対応する第3閾値温度T3=60~140℃の範囲とし、上記関係を満たすように設定する。
【0058】
まず、高温感熱発色層17単独の発色制御について説明する。
図7は、高温感熱発色層を単独で発色させる場合におけるレーザ光のエネルギーと照射時間との関係を説明する図である。
【0059】
図7に示すように、高温感熱発色層17については、対応する発色曲線CHの右上の領域(高温感熱発色層17の発色領域)で発色し、中温感熱発色層15については、対応する発色曲線CMの右上の領域(中温感熱発色層15の発色領域)で発色し、低温感熱発色層13については、対応する発色曲線CLの右上の領域(低温感熱発色層13の発色領域)で発色する。
【0060】
したがって、高温感熱発色層17を単独で発色させる場合には、
図7中にハッチングで示す領域ARHのように、高温感熱発色層17の発色領域であって、中温感熱発色層15の非発色領域及び低温感熱発色層13の非発色領域に属するように、レーザ光のエネルギーと照射時間とを設定すれば良い。
【0061】
ここで、高温感熱発色層17の発色制御についてより詳細に説明する。
図8は、高温感熱発色層の発色制御温度の説明図である。
高温感熱発色層17を発色させる場合には、光熱変換層18において熱を生成させ、熱を高温感熱発色層17に発色に必要な熱を伝達する必要がある。
【0062】
このためには、
図8に示すように、高温感熱発色層17の温度TMHが第1閾値温度T1を超え、中温感熱発色層15の温度TMMが第2閾値温度T2を超えず、低温感熱発色層13の温度TMLが第3閾値温度T3を超えないようにレーザ照射パラメータ値を設定して近赤外レーザ光LNIRを照射し、光熱変換層18の温度TMTを制御すればよい。
【0063】
そして、近赤外レーザ光LNIRは、保護/機能層19、低温感熱発色層13、中間層14、中温感熱発色層15、中間層16、高温感熱発色層17及びバインダ層14を介して、光熱変換層18に到達する。
【0064】
この場合において、
図8に示すように、光熱変換層18に照射する近赤外レーザ光LNIRは、急激に発熱量が大きくなるとともに、発熱時間が短くなるようにレーザ照射パラメータ値が設定されている。
【0065】
従って、光熱変換層18は、近赤外レーザ光LNIRを吸収して、光-熱変換を行い、急激に発熱し、光熱変換層18の温度TMTは
図8に示すように変化する。
これに伴い、光熱変換層18により近い高温感熱発色層17の温度は、急激に上昇し、第1閾値温度T1を超えて、高温感熱発色層17は、イエロー(Y)を発色することとなる。
【0066】
一方、光熱変換層18からバインダ層14、高温感熱発色層17及び中間層16を介して中温感熱発色層15に熱が伝導され、さらに中間層14を介して低温感熱発色層13に熱が伝導されるが、
図8に示すように、熱が伝導される時間が短く、中温感熱発色層15及び低温感熱発色層13に伝達される熱の熱量(熱エネルギー)は少ないため、中温感熱発色層15の温度TMM及び低温感熱発色層13の温度TMLの温度上昇は少ない。
【0067】
したがって、中温感熱発色層15の温度TMMは、
図8に示すように、第2閾値温度T2を超えることはなく、中温感熱発色層15が発色することはない。
【0068】
同様に、低温感熱発色層13の温度TMLは、
図8に示すように、第3閾値温度T3を超えることはなく、低温感熱発色層17が発色することはない。
また、近赤外レーザ光LNIRは、光熱変換層18により吸収され、光吸収発色層12に到らないので、光吸収発色層12も発色することはない。
【0069】
次に、中温感熱発色層15単独の発色制御について説明する。
図9は、中温感熱発色層を単独で発色させる場合におけるレーザ光のエネルギーと照射時間との関係を説明する図である。
【0070】
高温感熱発色層17の場合と同様に、中温感熱発色層15を単独で発色させる場合には、
図9にハッチングで示す領域ARMのように、中温感熱発色層15の発色領域であって、高温感熱発色層17の非発色領域及び中温感熱発色層15の非発色領域に属するように、レーザ光のエネルギーと照射時間とを設定すれば良い。
【0071】
ここで、中温感熱発色層15の発色制御についてより詳細に説明する。
図10は、中温感熱発色層の発色制御温度の説明図である。
中温感熱発色層15を発色させる場合においても、光熱変換層18において熱を生成させ、高温感熱発色層17及び中間層16を介し、高温感熱発色層17を発色させずに中温感熱発色層15に発色に必要な熱を伝達する必要がある。
【0072】
このためには、
図10に示すように、中温感熱発色層15の温度が第2閾値温度T2を超え、高温感熱発色層17の温度が第1閾値温度T1を超えず、低温感熱発色層13の温度が第3閾値温度T3を超えないようにレーザ照射パラメータ値を設定して近赤外レーザ光LNIRを照射し、光熱変換層18の温度TMTを制御すればよい。
そして、近赤外レーザ光LNIRは、保護/機能層19、低温感熱発色層13、中間層14、中温感熱発色層15、中間層16、高温感熱発色層17及びバインダ層14を介して、光熱変換層18に到達する。
【0073】
この場合において、光熱変換層18に照射される近赤外レーザ光LNIRは、高温感熱発色層17を発色させる場合よりも緩やかに発熱量が大きくなるとともに、発熱時間がより長くなるようにレーザ照射パラメータ値が設定されている。
【0074】
従って、光熱変換層18は、近赤外レーザ光LNIRを吸収して、光-熱変換を行い、緩やかに発熱し、光熱変換層18の温度TMTは、
図10に示すように変化する。
これに伴い、光熱変換層18により近い高温感熱発色層17の温度は上昇するが、第1閾値温度T1を超えることはく、高温感熱発色層17は、イエロー(Y)を発色することはない。
【0075】
一方、光熱変換層18からバインダ層14、高温感熱発色層17及び中間層16を介して中温感熱発色層15に熱が伝導され、さらに中間層14を介して低温感熱発色層13に熱が伝導される。
【0076】
このとき、
図10に示すように、熱が伝導される時間は高温感熱発色層17を発色させる場合よりも長く温度も低いが、中温感熱発色層15が発色する第2閾値温度T2は第1閾値温度T1よりも低いため、発色するために必要充分なエネルギーが中温感熱発色層15に伝達される。
【0077】
したがって、中温感熱発色層15の温度は、第2閾値温度T2を超え、中温感熱発色層15はマゼンタ(M)を発色することとなる。
【0078】
このとき、低温感熱発色層13は、光熱変換層18から遠い位置にあるため、伝達される熱の熱量(熱エネルギー)は少ないため、低温感熱発色層13の温度上昇は少ない。
したがって、低温感熱発色層13の温度は、第3閾値温度T3を超えることはなく、低温感熱発色層17が発色することはない。
【0079】
また、近赤外レーザ光LNIRは、光熱変換層18により吸収され、光吸収発色層12に到らないので、光吸収発色層12も発色することはない。
【0080】
次に、低温感熱発色層13単独の発色制御について説明する。
図11は、低温感熱発色層を単独で発色させる場合におけるレーザ光のエネルギーと照射時間との関係を説明する図である。
【0081】
高温感熱発色層17の場合と同様に、低温感熱発色層13を単独で発色させる場合には、
図11にハッチングで示す領域ARLのように、低温感熱発色層13の発色領域であって、高温感熱発色層17の非発色領域及び中温感熱発色層15の非発色領域に属する領域に属するように、レーザ光のエネルギーと照射時間とを設定すれば良い。
【0082】
ここで、低温感熱発色層13の発色制御についてより詳細に説明する。
図12は、低温感熱発色層の発色制御温度の説明図である。
この場合において、光熱変換層18に照射する近赤外レーザ光LNIRは、中温感熱発色層15を発色させる場合よりもさらに緩やかに発熱量が大きくなるとともに、発熱時間がより一層長くなるようにレーザ照射パラメータ値が設定されている。
【0083】
従って、光熱変換層18は、近赤外レーザ光LNIRを吸収して、光-熱変換を行い、より緩やかに発熱するので、光熱変換層18により近い高温感熱発色層17の温度は、第1閾値温度T1を超えることはく、高温感熱発色層17は、イエロー(Y)を発色することはない。
【0084】
また、光熱変換層18から高温感熱発色層17及び中間層16を介して中温感熱発色層15に熱が伝導される。
このとき、
図12に示すように、熱が伝導される時間は中温感熱発色層15を発色させる場合よりも長いが、温度はさらに低いため、中温感熱発色層15の温度は、第2閾値温度T2を超えることはく、高温感熱発色層17は、マゼンタ(M)を発色することはない。
【0085】
さらに光熱変換層18からバインダ層14、高温感熱発色層17、中間層16、中温感熱発色層15及び中間層14を介して低温感熱発色層13に熱が伝導される。
このとき、低温感熱発色層13は、光熱変換層18から遠い位置にあるが、
図12に示すように、熱が伝導される時間は中温感熱発色層15を発色させる場合よりも長く、温度は低いが、低温感熱発色層13が発色する第3閾値温度T3はより低いため、発色するために必要充分なエネルギーが低温感熱発色層13に伝達される。
したがって、低温感熱発色層13の温度は、第3閾値温度T3を超え、フルカラー画像形成領域ARCにおいて低温感熱発色層13は、シアン(C)を発色することとなる。
【0086】
以上は、高温感熱発色層17、中温感熱発色層15及び低温感熱発色層13をそれぞれ単独で発色させる場合のものであったが、2色あるいは3色を同時に発色することも可能である。
以下、複数色発色をする場合について説明する。
【0087】
図13は、高温感熱発色層及び中温感熱発色層を並行して発色させる場合におけるレーザ光のエネルギーと照射時間との関係を説明する図である。
【0088】
高温感熱発色層17及び中温感熱発色層15を並行して発色させる場合には、
図13にハッチングで示す領域ARHMのように、高温感熱発色層17の発色領域、かつ、中温感熱発色層15の発色領域であって、低温感熱発色層13の非発色領域に属する領域に属するように、レーザ光のエネルギーと照射時間とを設定すれば良い。
【0089】
このように制御することにより、高温感熱発色層17に対応するイエロー(Y)の発色及び中温感熱発色層15に対応するマゼンタ(M)の発色が生じ、結果として、フルカラー画像形成領域ARCにおいて赤が発色することとなる。
【0090】
図14は、中温感熱発色層及び低温感熱発色層を並行して発色させる場合におけるレーザ光のエネルギーと照射時間との関係を説明する図である。
【0091】
中温感熱発色層15及び低温感熱発色層13を並行して発色させる場合には、
図14にハッチングで示す領域ARMLのように、中温感熱発色層15の発色領域、かつ、低温感熱発色層13の発色領域であって、高温感熱発色層17の非発色領域に属するように、レーザ光のエネルギーと照射時間とを設定すれば良い。
【0092】
このように制御することにより、中温感熱発色層15に対応するマゼンタ(M)の発色及び低温感熱発色層13に対応するシアン(C)の発色が生じ、結果として、フルカラー画像形成領域ARCにおいて青が発色することとなる。
【0093】
図15は、高温感熱発色層、中温感熱発色層及び低温感熱発色層を並行して発色させる場合におけるレーザ光のエネルギーと照射時間との関係を説明する図である。
【0094】
高温感熱発色層17、中温感熱発色層15及び低温感熱発色層13を並行して発色させる場合には、
図12にハッチングで示す領域ARHMLのように、高温感熱発色層17の発色領域、中温感熱発色層15の発色領域及び低温感熱発色層13の発色領域に属するように、レーザ光のエネルギーと照射時間とを設定すれば良い。
【0095】
このように制御することにより、高温感熱発色層17に対応するイエロー(Y)、中温感熱発色層15に対応するマゼンタ(M)の発色及び低温感熱発色層13に対応するシアン(C)の発色が生じ、結果として、フルカラー画像形成領域ARCにおいて黒(暗灰)が発色することとなる。
【0096】
次にモノクロ画像形成領域ARMにおける発色制御について説明する。
フルカラー画像形成領域ARCにおける記録が終了すると、制御部42は、出力制御部43及び照射位置制御部44を制御し、ステップS13で設定されたレーザ照射パラメータ値に基づいて、近赤外レーザ光LNIRを用いて、光吸収発色層12の発色を行わせるためモノクロ画像形成領域ARMに対する画像記録を行う(ステップS18)。
【0097】
この場合においては、保護/機能層19、高温感熱発色層17、中間層16、中温感熱発色層15、中間層14及び低温感熱発色層13を介して、光熱変換層18を介することなく、光吸収発色層12に到達する。すなわち、近赤外レーザ光LNIRは、光熱変換層18に吸収されることなく、光吸収発色層12に到達する。
【0098】
この結果、光吸収発色層12に含まれている顔料粒子が記録光である近赤外レーザ光LNIRを吸収して炭化することにより不可逆的に黒色を発色する。
この光吸収発色層12で発色する黒色は、フルカラー画像形成領域ARCにおいて発色される黒(暗灰)よりもコントラストが高い黒色であり、文字等の画像をより明確に表示することが可能となっている。
【0099】
続いてレーザ記録装置30制御部42は、図示しない固定装置による記録媒体10の固定を解除し(ステップS19)、図示しない搬送装置を介して記録媒体10を所定の搬出位置まで搬出して処理を終了する(ステップS20)。
【0100】
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、単一波長のレーザ光源を用いてフルカラー/モノクロの画像記録を行うことができる。さらに第1実施形態によれば、サーマルヘッドなどを用いて追記を行うことができず、記録媒体の改竄を防止することができ、セキュリティの向上が図れる。
【0101】
[2]第2実施形態
次に、第2実施形態の記録媒体について説明する。
図16は、第2実施形態の記録媒体の構成例の断面図である。
第2実施形態の記録媒体10Aが、第1実施形態の記録媒体10と異なる点は、光熱変換層18を、高温感熱発色層17のみならず、中温感熱発色層15及び低温感熱発色層13のそれぞれに近接して配置した点である。この場合においては、近赤外レーザ光LNIRが中温感熱発色層15及び低温感熱発色層13に近接して配置された光熱変換層18に確実に到達できるように、より近赤外レーザ光LNIRの入射側に位置する他の光熱変換層18を一部透過するように、
図2の場合の光熱変換層18よりもその厚さが薄く設定されている。
【0102】
この構成によれば、第1実施形態の効果に加えて、光熱変換層18で発生させた熱を中温感熱発色層15及び低温感熱発色層13側に伝達するに際して、熱伝達損失を低減できるとともに、光熱変換層18への近赤外レーザ光LNIRの伝送損失も低減でき、より省エネルギーを実現することができる。
【0103】
[3]第3実施形態
図17は、第3実施形態の記録媒体の説明図である。
図17(a)は、平面図、
図17(b)は、
図17(a)のA-A断面図である。
【0104】
以上の各実施形態においては、フルカラー画像形成領域ARCを形成するための光熱変換層18は、フルカラー画像形成領域ARC1のように平面視、四角形状(
図20では、長方形状)としていたが、これに限らず、
図17に示す第3実施形態の記録媒体10ABにおけるフルカラー画像形成領域ARC2のように任意の形状とすることが可能である。
【0105】
任意の形状としては、円形、楕円形、多角形、星形、動物の形状、地図形状、人物像形状等の所望の形状とすることが可能である。
【0106】
この場合においては、記録媒体10Bにおいて光熱変換層18を形成するにあたっては、印刷方式により形成するのが好ましい。印刷方式としては、インクジェット印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、凹版印刷などの一般的な印刷方式を用いることが可能である。
【0107】
本第3実施形態によれば、記録媒体の発行時期毎に形状を変化させることにより、真贋判定等を容易とすることができる。
【0108】
[4]第4実施形態
図18は、第4実施形態の記録媒体の説明図である。
第4実施形態の記録媒体10Cが上記各実施形態と異なる点は、保護/機能層19上にあるいは保護/機能層19と一体にレンチキュラーレンズ50を設けた点である。
【0109】
このように構成することにより、記録媒体10Cに画像形成時に近赤外レーザ光LNIRの照射方向を異ならせて画像形成を行うことにより、視認角度によって表示される画像を切り替えることが可能となる。
【0110】
図18の例においては、レンチキュラーレンズ50が光熱変換層18が設けられていないモノクロ画像形成領域ARMに対応する領域に設けられているため、記録可能な画像はモノクロ画像となる。
【0111】
図19は、第4実施形態の記録媒体の変形例の説明図である。
第4実施形態の変形例の記録媒体10Dが第4実施形態と異なる点は、
図19に示すように、レンチキュラーレンズ50の記録可能領域に光熱変換層18を設けることによりフルカラー画像を形成するように構成した点である。
そして、本第4実施形態及びその変形例によれば、記録媒体の機能性を向上できるともに、記録媒体の偽造を困難とし、記録媒体の真贋判定を容易とすることができる。
【0112】
[5]第5実施形態
図20は、第5実施形態の記録媒体の断面図である。
本第5実施形態の記録媒体10Eが上記各実施形態と異なる点は、基材11の一部を透明部材で形成した透明基材60を設けた点である。
【0113】
この構成によれば、基材11側から記録媒体10Eに形成されている画像が、正規の記録媒体と同様となっているかを判別することで、真贋判定を容易とすることができる。
【0114】
図21は、第5実施形態の記録媒体の説明図である。
第5実施形態の変形例の記録媒体10Fが、
図20に示した第5実施形態と異なる点は、保護/機能層19上にあるいは保護/機能層19と一体にレンチキュラーレンズ50を設けた点である。
【0115】
このように構成することにより、記録媒体10Fに画像形成時に近赤外レーザ光LNIRの照射方向を異ならせて画像形成を行うことにより、視認角度によって表示される画像を切り替えることが可能となる。
【0116】
図21の例においては、レンチキュラーレンズ50の記録可能領域に光熱変換層18が設けられているので、レンチキュラーレンズ50を介して形成されたフルカラー画像のドットパターンは、形成した画像により固有のドットパターンを形成しているため、容易に真贋判定を行え、偽造品や模倣品を検出して排除することができる。
【0117】
[6]第6実施形態
以上の各実施形態は、記録媒体を単体として扱っていたが、本第6実施形態は、記録媒体と記録媒体を担持する担体(紙、プラスチック、金属、セラミックスなどのカード形状を有する部材)と、を備えたたカード状記録媒体の実施形態である。
【0118】
以下の説明においては、理解の容易のため、担体に担持させる記録媒体として、記録媒体10を用いる場合を例として説明する。
図22は、第6実施形態のカード状記録媒体の説明図である。
図22(a)は、断面図、
図22(b)は、平面図である。
ここで、
図22(a)は、
図22(b)の破線部分の断面図である。
【0119】
図22(a)に示すように、記録媒体10は、担体70に担持されて、カード状記録媒体71を形成している。
このように、本第6実施形態によれば、記録媒体10は、担体70により担持されているため、堅牢性が向上し、長期にわたって信頼性の高い記録媒体とすることができる。
【0120】
[6.1]第6実施形態の第1変形例
図23は、第6実施形態の第1変形例のカード状記録媒体の説明図である。
図23(a)は、断面図、
図23(b)は、平面図である。
ここで、
図23(a)は、
図23(b)の破線部分の断面図である。
【0121】
本第6実施形態の第1変形例のカード状記録媒体71Aが第6実施形態と異なる点は、2枚の記録媒体10が担体70の両面にそれぞれ担持されている点である。
【0122】
このような構成を採ることにより、第6実施形態の効果に加えて、カード状記録媒体71Aの両面に記録を行うことができる。さらには、カード状記録媒体71Aの強度を向上し、変形を防止することができる。
【0123】
[12.2]第6実施形態の第2変形例
図24は、第6実施形態の第2変形例のカード状記録媒体の説明図である。
図24(a)は、第1の断面図、
図24(b)は、平面図、
図24(c)は、第2の断面図である。
ここで、
図24(a)は、
図24(b)の破線x部分の断面図、
図24(c)は、
図22(b)の破線y部分の断面図である。
【0124】
本第6実施形態の第2変形例のカード状記録媒体71Bが第6実施形態と異なる点は、記録媒体10がヒンジ73を挟み込んだ2枚の担体70A、70Bに担持されている点である。
【0125】
この場合において、第6実施形態の効果に加えて、一又は複数のカード状記録媒体71Bをヒンジ73部分で冊子に綴じ込むことでカード状記録媒体71Bを冊子から取り外すことを困難とすることでき、より改竄等を抑制でき、セキュリティ性の向上が図れる。
【0126】
[12.3]第6実施形態の第3変形例
図25は、第6実施形態の第3変形例のカード状記録媒体の説明図である。
本第6実施形態の第3変形例のカード状記録媒体71Cが第6実施形態と異なる点は、記録媒体10がヒンジ73及びICカードなどとして構成されたカードコア74を挟み込んだ2枚の担体70A、70Bに担持されている点である。
【0127】
この場合において、第6実施形態の効果に加えて、カードコア74に様々な機能を組み込むことで、高機能のカード状記録媒体とすることができるとともに、記録データのディジタル化及び暗号化を施すことで、より一層のセキュリティ性の向上が図れる。
【0128】
[12.4]第6実施形態の第4変形例
図26は、第6実施形態の第4変形例のカード状記録媒体の説明図である。
本第6実施形態の第4変形例のカード状記録媒体71Dが
図25の第6実施形態の第3変形例と異なる点は、ヒンジ73に代えて、短いヒンジ73Aを設けた点である。
本第6実施形態の第4変形例によれば、第6実施形態の第3変形例の効果に加えて、カード状記録媒体の厚みを抑制して、綴じ込み枚数を増加させることができる。
【0129】
[13]実施形態の変形例
以上の説明においては、発色層が2層~4層の場合について説明したが、5層以上の場合も同様に適用が可能である。
【0130】
例えば、以上の説明では、CMYKの4色記録の場合について述べたが、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、レッド(R)、グリーン(G)ブルー(B)及び黒(K)の7色の発色層を有するCMYRGBKの7色記録の場合等にも適用が可能である。
【0131】
以上の説明においては、レーザ光として近赤外レーザ光を用いていたが、光熱変換層の吸収波長によりレーザ光として近紫外レーザ光及び遠紫外レーザ光を用いるように構成することも可能である。
【0132】
以上の説明においては、制御部42、出力制御部43及び照射位置制御部44を別体の物として説明したが、これらをMPU、ROM、RAM等を有するコンピュータとして構成し、これらの機能をプログラム及び各種インタフェースを介して実行するように構成することも可能である。
【0133】
この場合において、コンピュータで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、USBメモリなどの半導体記録装置等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されるようにしてもよい。
【0134】
また、コンピュータで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、制御部52で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0135】
また、コンピュータで実行されるプログラムをROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0137】
10、10A~10J 記録媒体
11 基材
12 光吸収発色層
13 低温感熱発色層
14 中間層
15 中温感熱発色層
16 中間層
17 高温感熱発色層
18 光熱変換層
19 保護/機能層
30 レーザ記録装置
31 レーザ発振器(光源)
32 ビームエキスパンダ(光学系)
33 第1方向スキャンミラー(光学系)
34 第1モータ
35 第1方向走査ユニット
37 第2方向スキャンミラー(光学系)
38 第2モータ
39 第2方向走査ユニット
40 集光レンズ(光学系)
41 ステージ
42 制御部
43 出力制御部
44 照射位置制御部
45 入射角度変更装置
51 出力制御ユニット
52 出力制御ユニット
52 制御部
70、70A、70B 担体
71、71A~71D カード状記録媒体
73、73A ヒンジ
74 カードコア
ARC フルカラー画像形成領域
ARM モノクロ画像形成領域