(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】加圧器具およびトレーニング装置
(51)【国際特許分類】
A63B 23/00 20060101AFI20221117BHJP
A63B 21/008 20060101ALI20221117BHJP
A63B 23/035 20060101ALI20221117BHJP
A63B 24/00 20060101ALI20221117BHJP
A63B 26/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A63B23/00 Z
A63B21/008
A63B23/035 Z
A63B24/00
A63B26/00
(21)【出願番号】P 2022554230
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2022020174
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2021133560
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519258079
【氏名又は名称】株式会社INIT
(74)【代理人】
【識別番号】100167276
【氏名又は名称】渡邉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 聡
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-179463(JP,A)
【文献】特開2013-138734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0030426(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 23/00
A63B 21/006
A63B 23/035
A63B 24/00-26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋力トレーニングにおいて運動者の身体部位の血流を加圧により制限する加圧器具であって、
前記身体部位に対して、長手方向に巻き回される帯状部材と、
前記帯状部材に設けられ、ガスが充填される内部空間を有し、前記帯状部材が前記身体部位に巻き回されることにより、前記身体部位に配置され、前記ガスの充填により膨らんで前記身体部位を圧迫する加圧部と、
前記帯状部材から離れた位置に配置される加圧ポンプと前記加圧部とを接続し、前記加圧ポンプが送り出す前記ガスを前記加圧部へと導く可撓性を有する配管部材と、
を備え、
前記加圧部の前記内部空間は、前記帯状部材の幅方向に並び、前記長手方向に沿った並列な複数のガス流路に区画され、
前記幅方向に隣り合う前記ガス流路同士は互いに連通しており、
前記配管部材は、チューブがらせん状に巻き回された形状に成形されているコイルチューブによって構成されている、加圧器具。
【請求項2】
筋力トレーニングにおいて運動者の身体部位の血流を加圧により制限する加圧器具であって、
前記身体部位に対して、長手方向に巻き回される帯状部材と、
前記帯状部材に設けられ、ガスが充填される内部空間を有し、前記帯状部材が前記身体部位に巻き回されることにより、前記身体部位に配置され、前記ガスの充填により膨らんで前記身体部位を圧迫する加圧部と、
前記帯状部材から離れた位置に配置される加圧ポンプと前記加圧部とを接続し、前記加圧ポンプが送り出す前記ガスを前記加圧部へと導く可撓性を有する配管部材と、
を備え、
前記配管部材は、チューブがらせん状に巻き回された形状に成形されているコイルチューブによって構成されている、加圧器具。
【請求項3】
筋力トレーニングにおいて運動者の身体部位血流を加圧により制限する加圧器具であって、
前記身体部位に対して、長手方向に巻き回される帯状部材と、
前記帯状部材に設けられ、可撓性を有する配管部材を介して加圧ポンプから送り出されたガスが充填される内部空間を有し、前記帯状部材が前記身体部位に巻き回されることにより、前記身体部位に配置され、前記ガスの充填により膨らんで前記身体部位を圧迫する加圧部と、
を備え、
前記加圧部の前記内部空間は、前記帯状部材の幅方向に並び、前記長手方向に沿った並列な複数のガス流路に区画され、
前記幅方向に隣り合う前記ガス流路同士は互いに連通している、加圧器具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加圧器具であって、
前記加圧部は、前記内部空間を有する袋状部材によって構成され、前記帯状部材の内部に着脱可能な状態で収容される、加圧器具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の加圧器具であって、
前記帯状部材は、前記加圧部に前記ガスが充填されたときに前記身体部位に面する身体側面の方が、前記身体側面とは反対の外側面よりも膨らむように構成されている、加圧器具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の加圧器具であって、
前記幅方向および前記長手方向における前記加圧部の中央部には、前記配管部材と前記加圧部とを接続する配管接続部が設けられている、加圧器具。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の加圧器具であって、
前記帯状部材は、前記加圧部の上において前記幅方向に互いにずれた位置に配列され、前記加圧部の中央部から前記長手方向に互いに反対方向に延び出て、前記身体部位に巻き回されて、前記加圧部を前記身体部位に押し付ける第1ベルト部と第2ベルト部とを有する、加圧器具。
【請求項8】
トレーニング装置であって、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の加圧器具と、
前記加圧ポンプと、前記加圧ポンプの駆動を制御して、前記加圧器具への前記ガスの供給を制御する制御部と、を有する制御ユニットと、
を備える、トレーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筋力トレーニングにおいて運動者の血流を制限するために用いられる加圧器具に関する。
【背景技術】
【0002】
筋力トレーニングの一例として、トレーニングの対象となる身体部位を圧迫して、主に筋肉内の毛細血管における血流を制限し、低酸素状態になった状態の筋肉に負荷を与える方法が知られている。この筋力トレーニングによれば、血流の制限により、遅筋繊維の活動を鈍らせる一方で速筋繊維の活動を活発にすることができ、短時間の軽度な運動で高いトレーニング効果を得ることが可能となる。以下、本明細書では、こうした筋力トレーニングを「血流制限トレーニング」とも呼ぶ。
【0003】
血流制限トレーニングでは、血流の制限のために運動者の身体部位に巻き回される、「カフ」とも呼ばれる帯状の加圧器具が用いられる場合がある。このような加圧器具は、通常、帯状部材に、運動者から離れた位置に配置された加圧ポンプから、チューブなどの可撓性を有する配管部材を介して空気などのガスが供給されて膨らむ加圧部が設けられた構成を有する。例えば、下記特許文献1には、布製チューブの中にゴム製のチューブが挿入された構成を有するカフが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような加圧器具は、血流をより確実に制限し、トレーニング効果を増大させるために、運動者の上腕部や大腿部等のトレーニング対象である身体部位を幅広く加圧できることが望ましい。また、加圧の際に、加圧部へのガスの供給を円滑に行えることが望ましい。しかしながら、例えば、加圧範囲を広げるために、加圧器具を運動者の身体部位に並列に巻き回される複数の細長い布製チューブによって構成した場合には、運動者への装着の際の際に、分岐している各布製チューブが絡まり合うなどして、その取り回しが困難になる場合があった。また、そうした構成では、一部の布製チューブが適切に運動者の身体部位に巻き回されない状況が生じた場合には、その一部の布製チューブへの加圧空気の供給が適切になされなくなってしまう場合もあった。
【0006】
その他に、加圧器具では、加圧ポンプと加圧部とを接続する配管部材が、運動者が加圧器具を装着する際や、運動者のトレーニング中に絡まってしまう場合があった。例えば、自転車漕ぎ運動用のバイク型のトレーニング器具などの運動者が用いる運動器具に配管部材が引っ掛かって絡まってしまう場合もあった。そうした配管部材の絡まりは、運動者のトレーニングを阻害するばかりではなく、加圧部へのガスの供給不良の原因ともなる。
【0007】
このように、血流制限トレーニングに用いられる加圧器具においては、帯状部材や配管部材の取り回し性を改善して、加圧部に対するガスの供給不良の発生を抑制することについて、依然として改良の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
[第1の形態]
第1の形態は、筋力トレーニングにおいて運動者の身体部位の血流を加圧により制限する加圧器具として提供される。第1の形態の加圧器具は、前記身体部位に対して、長手方向に巻き回される帯状部材と、前記帯状部材に設けられ、ガスが充填される内部空間を有し、前記帯状部材が前記身体部位に巻き回されることにより、前記身体部位に配置される加圧部と、前記帯状部材から離れた位置に配置される加圧ポンプと前記加圧部とを接続し、前記加圧ポンプが送り出す前記ガスを前記加圧部へと導く可撓性を有する配管部材と、を備え、前記加圧部の前記内部空間は、前記帯状部材の幅方向に並び、前記長手方向に沿った並列な複数のガス流路に区画され、前記幅方向に隣り合う前記ガス流路同士は互いに連通しており、前記配管部材は、チューブがらせん状に巻き回された形状に成形されているコイルチューブによって構成されている。
第1の形態の加圧器具によれば、1本の帯状部材をトレーニング対象である運動者の身体部位に巻き回すことにより、加圧部の内部空間を構成する複数の並列なガス流路を当該身体部位に巻き回すことができる。よって、1本の帯状部材によって幅広い範囲の加圧を容易に実現でき、より効果的に身体部位の血流を制限することができる。また、複数の細長い布製チューブで構成されたカフよりも取り回しが容易であり、各布製チューブが絡まり合うことによるガスの供給不良の発生を抑制できる。この形態の加圧器具によれば、加圧部の内部空間を構成する各ガス流路が連通しているため、加圧部全体にガスを円滑に行きわたらせることが容易であり、一部の領域にガスが流入できずに、加圧器具による身体部位の加圧が不均一になることを抑制できる。さらに、この形態の加圧器具によれば、配管部材が、コイルチューブによって構成されていることにより、ばねのように撓みやすく、かつ、伸縮するため、高い取り回し性が実現される。また、コイルチューブであれば、可撓性を有しながら形状を保持するように成形されているため、絡まりの発生や、圧力損失を増大させるようなチューブの屈曲を抑制できる。このように、この形態の加圧器具によれば、その取り回し性が改善され、加圧部に対するガスの供給を円滑化することができる。
【0010】
[第2の形態]
第2の形態は、筋力トレーニングにおいて運動者の身体部位の血流を加圧により制限する加圧器具として提供される。第2の形態の加圧器具は、前記身体部位に対して、長手方向に巻き回される帯状部材と、前記帯状部材に設けられ、ガスが充填される内部空間を有し、前記帯状部材が前記身体部位に巻き回されることにより、前記身体部位に配置され、前記ガスの充填により膨らんで前記身体部位を圧迫する加圧部と、前記帯状部材から離れた位置に配置される加圧ポンプと前記加圧部とを接続し、前記加圧ポンプが送り出す前記ガスを前記加圧部へと導く可撓性を有する配管部材と、を備え、前記配管部材は、チューブがらせん状に巻き回された形状に成形されているコイルチューブによって構成されている。
第2の形態の加圧器具によれば、配管部材が、コイルチューブによって構成されていることにより、ばねのように撓みやすく、かつ、伸縮するため、絡まりの発生を抑制できる。また、コイルチューブであれば、可撓性を有しながら形状を保持するように成形されているため、絡まりの発生や、圧力損失を増大させるようなチューブの屈曲を抑制できる。よって、加圧器具を構成する配管部材の取り回しを改善することができ、配管部材を介した加圧部に対するガスの供給を円滑化できる。
【0011】
[第3の形態]
第3の形態は、筋力トレーニングにおいて運動者の身体部位の血流を加圧により制限する加圧器具として提供される。第3の形態の加圧器具は、、前記身体部位に対して、長手方向に巻き回される帯状部材と、前記帯状部材に設けられ、可撓性を有する配管部材を介して加圧ポンプから送り出されたガスが充填される内部空間を有し、前記帯状部材が前記身体部位に巻き回されることにより、前記身体部位に配置され、前記ガスの充填により膨らんで前記身体部位を圧迫する加圧部と、を備え、前記加圧部の前記内部空間は、前記帯状部材の幅方向に並び、前記長手方向に沿った複数のガス流路に区画され、前記幅方向に隣り合う前記ガス流路同士は互いに連通している、加圧器具として提供される。
第3の形態の加圧器具によれば、1本の帯状部材を運動者の身体部位に巻き回すことにより、加圧部の内部空間を構成する複数の並列なガス流路を当該身体部位に巻き回すことができる。よって、1本の帯状部材によって幅広い範囲の加圧を容易に実現でき、より効果的に身体部位の血流を制限することができる。また、複数の細長い布製チューブで構成されたカフよりも取り回しが容易であり、各布製チューブが絡まり合うことによるガスの供給不良の発生を抑制できる。この形態の加圧器具によれば、加圧部の内部空間を構成する各ガス流路が連通しているため、加圧部全体にガスを円滑に行きわたらせることが容易であり、一部の領域にガスが流入できずに、加圧器具による身体部位の加圧が不均一になることを抑制できる。
【0012】
[第4の形態]
上記の第1の形態、第2の形態、および、第3の形態のいずれか1つの加圧器具において、前記加圧部は、前記内部空間を有する袋状部材によって構成され、前記帯状部材の内部に着脱可能な状態で収容されてよい。
第4の形態の加圧器具によれば、帯状部材と加圧部とを分離できるため、加圧部を取り外した状態で、帯状部材を容易に洗浄することができる。よって、運動者の肌に直接的に触れる帯状部材を清潔に保つことが容易にできる。
【0013】
[第5の形態]
上記の第1の形態、第2の形態、第3の形態、および、第4の形態のいずれか1つの加圧器具において、前記帯状部材は、前記加圧部に前記ガスが充填されたときに前記身体部位に面する身体側面の方が、前記身体側面とは反対の外側面よりも膨らむように構成されてよい。
第5の形態の加圧器具によれば、加圧部にガスが充填されたときに、帯状部材が身体側面の方へと膨らむことが促進されるため、加圧器具による身体部位の圧迫効果を高めることができる。
【0014】
[第6の形態]
上記第1の形態、第2の形態、第3の形態、第4の形態、第5の形態、および、第6の形態のいずれか1つに記載の加圧器具において、前記幅方向および前記長手方向における前記加圧部の中央部には、前記配管部材と前記加圧部とを接続する配管接続部が設けられてよい。
第6の形態の加圧器具によれば、加圧部の中央部からガスを送り込むことができるため、長手方向に並列に延びているガス流路によって、内部空間の隅々まで、より円滑にガスを行きわたらせることができる。
【0015】
[第7の形態]
上記第1の形態、第2の形態、第3の形態、第4の形態、第5の形態、および、第6の形態のいずれか1つに記載の加圧器具において、前記帯状部材は、前記加圧部の上において前記幅方向に互いにずれた位置に配列され、前記加圧部の中央部から前記長手方向に互いに反対方向に延び出て、前記身体部位に巻き回されて、前記加圧部を前記身体部位に押し付ける第1ベルト部と第2ベルト部とを有してよい。
第7の形態の加圧器具によれば、第1と第2のベルト部によって、加圧部が身体部位に密着する状態で巻き回すことがより一層、容易になる。また、第1と第2のベルト部によって加圧部の締め付け具合を幅方向において異ならせることができるため、身体部位への密着性をより一層高めることができる。
【0016】
[第8の形態]
第8の形態は、トレーニング装置であって、上記第1の形態、第2の形態、第3の形態、第4の形態、第5の形態、第6の形態、および、第7の形態のいずれか1つに記載の加圧器具と、前記加圧ポンプと、前記加圧ポンプの駆動を制御して、前記加圧器具への前記ガスの供給を制御する制御部と、を有する制御ユニットと、を備える、トレーニング装置として提供される。
この形態のトレーニング装置によれば、制御ユニットによる加圧部へのガスの供給制御によって、運動者の身体部位における血流制限をより適切に実行できる。よって、運動者は、より高いトレーニング効果を容易に得ることができる。
【0017】
本開示の技術は、加圧器具やトレーニング装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、加圧器具を構成する帯状部材や加圧部、配管部材、加圧器具やトレーニング装置を備えるトレーニングシステム、トレーニング装置やトレーニングシステムの制御方法、加圧器具を用いた筋力トレーニングの方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態のトレーニング装置を示す概略図。
【
図2】第1実施形態の帯状部材の外側面の構成を示す概略平面図。
【
図3】第1実施形態の帯状部材の身体側面の構成を示す概略平面図。
【
図4】第1実施形態の加圧部の構成を示す概略平面図。
【
図5】第1実施形態の加圧部を含む部位における帯状部材の概略断面図。
【
図6】第1実施形態の帯状部材の運動者の身体部位への巻き付け方法を示す模式図。
【
図7A】収縮している状態の配管部材の構成を示す概略図。
【
図7B】伸長している状態の配管部材の構成を示す概略図。
【
図8】第2実施形態のトレーニング装置を示す概略図。
【
図10】第2実施形態の帯状部材を筒状に巻く方法を示す第1の説明図。
【
図11】第2実施形態の帯状部材を筒状に巻く方法を示す第2の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における加圧器具10a,10bを備えるトレーニング装置100を示す概略図である。トレーニング装置100は、運動者が血流制限トレーニングを実施する際に用いられ、トレーニングの対象である身体部位を加圧器具10a,10bによって加圧して、その身体部位における血流を制限する。トレーニング装置100は、前述の2つの加圧器具10a,10bと、各加圧器具10a,10bへのガスの供給を制御する制御ユニット50と、を備える。
【0020】
第1加圧器具10aは運動者の身体の右半身側の部位の加圧に用いられ、第2加圧器具10bは左半身側の部位の加圧に用いられる。第1加圧器具10aと第2加圧器具10bの構成は、後述する帯状部材11の形状が互いに左右対称に構成されている点以外はほぼ同じである。以下では、第1加圧器具10aと第2加圧器具10bとを区別することなく、「加圧器具10」と呼ぶ。また、以下での加圧器具10の構成についての説明は、特に断らない限り、第1加圧器具10aと第2加圧器具10bの両方に共通する。なお、トレーニング装置100では、2つの加圧器具10a,10bのうちのいずれか一方が省略されてもよい。
【0021】
加圧器具10は、帯状部材11を備える。帯状部材11は、運動者の身体におけるトレーニングの対象部位に対して、その長手方向に巻き回される。帯状部材11の寸法や形状は、巻き回される身体部位に応じて決められる。本実施形態では、帯状部材11は、運動者の大腿部に巻き回されるように構成されている。他の実施形態では、帯状部材11は、例えば上腕部など、大腿部以外の他の部位に巻き回されるように構成されていてもよい。
【0022】
帯状部材11は、巻き回された身体部位の血管を圧迫して血流を調整する、いわゆる「カフ」としての機能を有する。帯状部材11は、ガスの充填により膨らんで運動者の身体部位を圧迫する加圧部12を有している。
図1では、帯状部材11における加圧部12の配置領域を一点鎖線で図示してある。後述するように、本実施形態では、加圧部12は、袋状部材で構成されており、帯状部材11の内部に着脱可能に収容されている。
【0023】
加圧部12は、帯状部材11が、トレーニング対象である運動者の身体部位に巻き回されることにより、当該身体部位に配置される。加圧部12は、ガスが充填される内部空間を有する。加圧部12の内部空間は、ガスの入口を除いて気密に封止されている。加圧部12は、ガスが充填されたときに膨らみ、帯状部材11が巻回された運動者の身体部位を加圧する。加圧部12の内部空間の構成については後述する。本実施形態では、加圧部12に充填されるガスは空気である。他の実施形態では、加圧部12に充填されるガスは空気でなくてもよい。加圧部12には、例えば、窒素ガスが充填されてもよい。
【0024】
本実施形態では、加圧器具10は、さらに、配管部材15を備える。配管部材15は、制御ユニット50が備える加圧ポンプ53と帯状部材11の加圧部12とを接続し、加圧ポンプ53が送り出すガスを加圧部12に導く。配管部材15は、運動者が自由に引き回すことが可能なように可撓性を有している。配管部材15は、弾性を有するチューブ16がらせん状に巻き回された形状に成形されているコイルチューブによって構成されている。配管部材15の構成の詳細については後述する。
【0025】
本実施形態の加圧器具10によれば、配管部材15を構成する1本のチューブ16が、分岐することなく、加圧部12と一対一で接続されている。これにより、配管部材15が帯状部材11の近くで複数に分岐しているチューブによって構成される場合よりも、配管部材15の絡まりの発生が抑制されている。
【0026】
制御ユニット50は、筐体51と、インターフェース部52と、加圧ポンプ53と、圧力調整部54と、制御部55と、を備える。筐体51は、樹脂製の中空箱体によって構成される。インターフェース部52は筐体51の上面に設けられており、加圧ポンプ53と圧力調整部54と制御部55とは筐体51の内部に収容されている。筐体51には、さらに、加圧ポンプ53に対する配管部材15の接続を媒介する接続ポートや、外部電源に接続される電源接続部が設けられている。接続ポートや電源接続部の図示および詳細な説明は省略する。
【0027】
図示は省略するが、インターフェース部52は、操作部と、表示部と、を含む。操作部は、加圧ポンプ53のオン/オフ操作を行うためのスイッチや、加圧部12の目標圧力値を設定するためのボタンを含む。表示部は、LEDや液晶パネルによって構成され、例えば、現在の加圧ポンプ53の駆動状態や、加圧部12の現在の圧力の実測値、加圧部12による加圧が開始された後の経過時間等を表示する。
【0028】
加圧ポンプ53は、制御部55の制御下において駆動し、上述したように、帯状部材11の加圧部12に充填されるガスを送り出す。圧力調整部54は、図示しないバルブを備え、制御部55の制御下において、加圧ポンプ53から送り出されるガスの圧力を調整する。圧力調整部54は、第1加圧器具10aと第2加圧器具10bのそれぞれの加圧部12の圧力を別個に調整する。また、圧力調整部54は、図示しない圧力センサを備え、第1加圧器具10aと第2加圧器具10bのそれぞれの加圧部12におけるガス圧の実測値を制御部55に出力する。
【0029】
制御部55は、中央処理装置(CPU)と主記憶装置(RAM)とを備えるマイクロコンピュータによって構成され、RAM上に読み出された命令やプログラムをCPUが実行することにより、制御ユニット50を制御する機能を発揮する。制御部55は、圧力調整部54から送信された圧力の実測値に基づいて、加圧部12の内圧がインターフェース部52の操作を通じて入力された目標圧力値になるように、加圧ポンプ53および圧力調整部54を制御する。また、制御部55は、加圧部12による加圧時間を計測し、インターフェース部52の表示部を通じて、運動者に、トレーニングの開始タイミングと終了タイミングとを報知する。各タイミングは、加圧部12による加圧を開始した後の経過時間に基づいて定められる。本実施形態のトレーニング装置100によれば、制御ユニット50による加圧部12へのガスの供給制御によって、運動者の身体部位における血流制限をより適切に実行できる。よって、運動者は、より高いトレーニング効果を容易に得ることができる。
【0030】
図2および
図3は、帯状部材11の構成を示す概略平面図であり、
図4は、帯状部材11の内部から取り出した加圧部12を示す概略平面図である。
図2には、帯状部材11が運動者の身体部位に巻き回されたときに外側に向く外側面Saが図示されている。
図3には、運動者の身体部位に面する身体側面Sbが図示されている。また、
図2および
図3にはそれぞれ、帯状部材11における加圧部12の配置領域が一点鎖線で図示されている。
図3および
図4には、加圧部12内の内部空間20と、ガス流路21と、流路壁22と、配管部材15が接続される配管接続部25とが破線で図示されている。
図4には、加圧部12の内部空間20におけるガスの流れを示す矢印FLを図示してある。
【0031】
以下では、帯状部材11の幅方向における2つの端部をそれぞれ、「第1幅端部13a」および「第2幅端部13b」とも呼ぶ。第1幅端部13aは、帯状部材11が運動者の身体部位に巻き回されたときに心臓に近い位置に配置され、第2幅端部13bは、心臓から離れた位置に配置される。本実施形態では、第1幅端部13aは、大腿部の付け根側に配置され、第2幅端部13bは膝側に配置される。
【0032】
また、以下では、帯状部材11の長手方向における2つの端部をそれぞれ、「第1帯端部13c」および「第2帯端部13d」とも呼ぶ。本実施形態では、第1帯端部13cは、加圧部12の配置領域に近い側の端部であり、第2帯端部13dは、その反対側の端部である。第2帯端部13dは、2つに分岐しており、それぞれが長手方向に延び出ている舌片状の第1部位14aと第2部位14bによって構成される。
【0033】
図2および
図3に示すように、帯状部材11は、第1幅端部13aの中央部が全体的に幅方向にわずかに膨み、第2幅端部13bが全体的に幅方向にわずかに窪むように弧状に湾曲した形状を有している。運動者の大腿部は、概ね、その付け根側ほど太くなる形状を有している。そのため、前記のように弧状に湾曲した帯状部材11であれば、運動者の大腿部により密着した状態で巻き回すこが可能である。
【0034】
図2に示すように、本実施形態では、帯状部材11の外側面Saのほぼ全体が、第1面ファスナー37aによって覆われている。本実施形態では、第1面ファスナー37aは、外側面Saの手触りを良くするために、ループによって構成されている。
図3を参照する。第2帯端部13dにおける第1部位14aと第2部位14bの身体側面Sbには、第1面ファスナー37aへの接着および剥離が繰り返し可能な第2面ファスナー37bが設けられている。第2面ファスナー37bはフックによって構成されている。後述するように、帯状部材11が運動者の身体部位に巻き回されるときには、第1部位14aと第2部位14bは、加圧部12の配置領域の上に配置され、第1部位14aと第2部位14bの第2面ファスナー37bが第1面ファスナー37aに接着される。
【0035】
図2に示すように、本実施形態では、帯状部材11の外側面Saには、締結ベルト部18が設けられている。締結ベルト部18は、第1V字ベルト18aと第2V字ベルト18bと、第1V字ベルト18aと第2V字ベルト18bを固定する固定部18cと、を有する。固定部18cは、細長い帯によって構成されており、外側面Saにおいて第1幅端部13aから第2幅端部13bにわたって幅方向に沿って配置されている。固定部18cは、全体が縫い付けられて帯状部材11に固定されている。第1V字ベルト18aは、第1幅端部13a側に寄った位置に配置され、第2V字ベルト18bは、第2幅端部13b側に寄った位置に配置されている。また、第1V字ベルト18aは、固定部18cから第2帯端部13d側へと延びるように配置され、第2V字ベルト18bは、固定部18cから第1帯端部13c側へと延びるように配置されている。
【0036】
第1V字ベルト18aと第2V字ベルト18bはそれぞれ、細長い帯を鋭角にV字状に折り返した構成を有する。第1V字ベルト18aと第2V字ベルト18bを構成する帯は弾性を有し、長手方向に伸縮する。第1V字ベルト18aと第2V字ベルト18bでは、第1V字ベルト18aと第2V字ベルト18bを構成する帯の折り返し部がそれぞれ、第1V字ベルト18aと第2V字ベルト18bの「先端部BE」を構成する。また、当該帯の両端が「基端部BB」を構成する。
【0037】
第1V字ベルト18aと第2V字ベルト18bの基端部BBは固定部18cによって帯状部材11に固定されている。第1V字ベルト18aと第2V字ベルト18bには、固定部18cと先端部BEの間に、基端部BBに挟まれたスリット部SLが形成されている。第1V字ベルト18aと第2V字ベルト18bの基端部BBより先端部BE側の部位は帯状部材11に固定されていない。
【0038】
第1V字ベルト18aと第2V字ベルト18bの各先端部BEには、帯状部材11の外側面Saに面する面に、第1面ファスナー37aへの接着および剥離が繰り返し可能な第3面ファスナー37cが設けられている。上述したように、本実施形態では、第1面ファスナー37aがループによって構成されているため、第3面ファスナー37cはフックによって構成されている。
【0039】
本実施形態の加圧器具10は、締結ベルト部18の締結力によって、運動者の身体部位に巻き回された帯状部材11を、当該身体部位に、より密着させることが可能である。締結ベルト部18による締結方法については後述する。
【0040】
図2および
図3に示すように、本実施形態では、加圧部12は、第1帯端部13cと締結ベルト部18の固定部18cとの間に配置されている。加圧部12は、第1帯端部13cから、帯状部材11の長手方向における長さの1/3以上2/3未満の範囲内に配置されている。また、加圧部12は、第1幅端部13aから第2幅端部13bにわたって、帯状部材11の幅方向のほぼ全域にわたって配置されている。
【0041】
上述したように、本実施形態では、加圧部12は、
図4に示す気密な袋状部材32によって構成されている。加圧部12は、例えば、ポリウレタンによって作製される。加圧部12は外側面Saに設けられている
図2に示す線状の切れ目として形成された取出口19を介して帯状部材11の内部に着脱可能な状態で収納される。取出口19は、第1幅端部13aの近傍において第1幅端部13aに沿って形成されている。取出口19には開閉のためのファスナーが設けられていてもよい。
【0042】
本実施形態の加圧器具10によれば、帯状部材11と加圧部12とを分離できる。よって、加圧部12を取り外した状態で、帯状部材11を洗浄することが容易にでき、運動者の肌に直接的に触れる帯状部材11を清潔に保つことが容易である。
【0043】
図2を参照する。帯状部材11の外側面Saには、固定部18cの近傍であり、加圧部12の配置領域の端の位置に図示しない貫通孔が設けられており、加圧部12の配管接続部25は、当該貫通孔を介して帯状部材11の外に突出している。当該貫通孔は、加圧部12を帯状部材内に配置するときの加圧部12の位置決め部としても機能する。
【0044】
図3および
図4を参照する。加圧部12の内部空間20は、流路壁22によって、幅方向に並び、長手方向に沿った並列な複数のガス流路21に区画されている。帯状部材11の幅方向に隣り合うガス流路21同士は連通している。本実施形態では、隣り合うガス流路21の間で線状に延びている流路壁22の両端に、当該隣り合うガス流路21を接続する連通路23が形成されている。
【0045】
本実施形態では、流路壁22の両端の連通路23は、流路断面積が大きく、流路抵抗が小さい第1連通路23aと、流路断面積が小さく、流路抵抗が大きい第2連通路23bと、を含む。2つの連通路23a,23bの「流路断面積」は、加圧器具10の使用時を想定した所定のガス圧で加圧部12を膨らませたときの当該連通路23a,23bの中心軸に直交する面における開口面積の平均値を意味する。また、本実施形態では、第1連通路23aと第2連通路23bとが幅方向に交互に配列された構成となっている。この理由については後述する。
【0046】
他の実施形態では、連通路23は、流路壁22の両端に設けられていなくてもよい。例えば、流路壁22の両端の連通路23の少なくとも一方は省略されてもよい。あるいは、連通路23は、流路壁22の一端の連通路23に加えて、あるいは、流路壁22の一端の連通路23の代わりに、線状の流路壁22の途中の切れ間や開口として形成されていてもよい。また、各連通路23の開口面積や流路抵抗は適宜、変更することが可能である。
【0047】
本実施形態では、加圧部12は、第2幅端部13bよりも第1幅端部13aに近いガス流路21ほど流路断面積が小さくなるように、第2幅端部13bよりも第1幅端部13aに近いガス流路21ほど流路幅Waが小さくなる構成を有している。ここで、ガス流路21の「流路断面積」は、加圧器具10の使用時を想定した所定のガス圧で加圧部12を膨らませたときの当該ガス流路21の中心軸に直交する面における開口面積の平均値を意味する。また、ガス流路21の「流路幅Wa」は、当該ガス流路21の中心軸に直交し、帯状部材11の面に沿った方向における当該ガス流路21の寸法の平均値である。第1幅端部13aに近いガス流路21ほど流路面積が小さくなる構成により、帯状部材11が運動者の身体部位に巻き回され、加圧部12にガスを充填させたときに、帯状部材11を運動者の身体部位により密着させることができる。よって、より効果的な血流の制限が可能である。
【0048】
本実施形態では、各流路壁22の幅はほぼ同じである。流路壁22の幅は、各流路壁の中心軸に直交し、帯状部材11の面に沿った方向における寸法の平均値を意味する。なお、他の実施形態では、各流路壁22の幅は異なっていてもよい。加圧部12では、ガスが充填されたときの膨らみを抑制したい部位における流路壁22の幅を、他の流路壁22の幅より大きくしてもよい。例えば、幅方向における中央部に設けられている流路壁22の幅を、幅方向において最も外側に配置されている流路壁22の幅より大きくしてもよい。これにより、加圧部12にガスが充填されたときに、加圧部12の幅方向における中央部位のみが膨らみすぎてしまうことを抑制できる。
【0049】
図4を参照する。本実施形態では、加圧部12には、配管接続部25が帯状部材11の幅方向における中央の領域に設けられている。これによって、配管接続部25から供給されるガスが、配管接続部25に対して第1幅端部13a側にあるガス流路21と、配管接続部25に対して第2幅端部13b側にあるガス流路21と、に分岐する。よって、第1幅端部13a側と第2幅端部13b側のいずれか一方に偏って流入し、加圧部12が偏って膨らんでしまうことが抑制される。
【0050】
上述したように、本実施形態では、流路断面積が異なる第1連通路23aと第2連通路23bとが幅方向に交互に配列された構成となっている。これによって、配管接続部25を通じて加圧部12に送り込まれたガスの多くは、矢印FLで示すように、配管接続部25からガス流路21に流れ、第1連通路23aにおいて折り返してその隣のガス流路21へと流れるように誘導される。このように、加圧部12の内部空間20は、帯状部材11の長手方向に往復するように折り返す折り返し流路が帯状部材11の幅方向に並ぶ流路状の空間に区画されていると解釈できる。こうしたガスの流れを生じさせる流路構成であれば、各ガス流路21を順に膨らませていくことができ、加圧部12全体にガスを円滑に行きわたらせることができる。
【0051】
また、本実施形態では、第1連通路23aに加えて第2連通路23bが設けられている。これにより、上述した矢印FLで示すガスの経路に加えて、第2連通路23bを経由するガスの経路が形成されるため、加圧部12に対するガスの充填にかかる所要時間を短縮することができる。また、隣り合うガス流路21の折り返し部に相当する第1連通路23aにおいてガスの流通が滞った場合でも、第2連通路23bを通じて隣のガス流路21へとガスを流入させることができる。よって、各ガス流路21へのガスの流入が不均一になってしまうことを抑制できる。
【0052】
その他に、第2連通路23bが設けられていることにより、運動者がトレーニングの終了後に、加圧部12からガスを抜く際に、各ガス流路21のガスが配管接続部25へと迅速に流出させることができる。よって、加圧部12からのガスの排出が容易化され、加圧部12からのガスの排出にかかる労力や時間を低減できる。
【0053】
第1実施形態の構成においては、ガス流路21の折り返し部位に相当する第1連通路23aの流路断面積は、ガス流路21の他の部位における流路断面積よりも小さいことが望ましい。これにより、帯状部材11の長手方向における加圧部12の両端部が大きく膨らんで、加圧部12の中央領域における運動者の身体部位に対する加圧効果が低減してしまうことを抑制できる。
【0054】
図5は、
図3に示す5-5切断における帯状部材11の概略断面図である。帯状部材11は、外側面Saを構成する第1基材30aと身体側面Sbを構成する第2基材30bとを重ね合わせることによって構成されている。第1基材30aおよび第2基材30bは、伸縮性を有する材料によって構成される。第1基材30aおよび第2基材30bは、例えば、クロロプレンゴムなどの樹脂材料で構成される。第1基材30aおよび第2基材30bは、布などの繊維材料によって構成されてもよい。
【0055】
本実施形態では、第1基材30aは、第2基材30bよりも伸縮しにくく構成されている。本実施形態では、第1基材30aは、第2基材30bよりも伸縮しにくい材料によって構成されている。第1基材30aが第2基材30bよりも伸縮しにくく構成されていることにより、加圧部12が第1基材30a側に膨らむことが抑制され、加圧部12が運動者の身体部位に付加する圧力が低減してしまうことが抑制される。なお、他の実施形態では、第1基材30aの伸縮性は、その表面に、第2基材30bよりも伸縮しにくい部材を張り付けられることにより、第2基材30bよりも低くされていてもよい。第1基材30aに張り付けられる伸縮しにくい基材は、例えば、後述する第1面ファスナー37aであってもよい。
【0056】
加圧部12を構成する袋状部材32は、帯状部材11が巻回された運動者の身体部位の方に向く第1面部33と、内部空間20を挟んで第1面部33とは反対側に配置される第2面部34と、を有する。加圧部12の内部空間20においてガス流路21を区画する流路壁22は、第1面部33と第2面部34とが熱溶着されることによって形成されている。
【0057】
本実施形態では、第1面部33は、第2面部34よりも撓みやすく構成されている。本実施形態では、第1面部33を単層構造とし、第2面部34を多層構造として厚みに差を持たせることにより、第1面部33の方が第2面部34よりも撓みやすくされている。これによって、袋状部材32にガスが充填されたときに、袋状部材32は、運動者の身体側に配置される第1面部33側へと膨らみやすくなる。
【0058】
なお、他の実施形態では、第1面部33も多層構造に構成され、第2面部34が、第1面部33よりも層の数が多い多層構造によって構成されることにより、第1面部33を第2面部34よりも撓みやすく構成してもよい。また、第1面部33の構成材料と第2面部34の構成材料の種類を変えることにより、あるいは、第1面部33と第2面部34の厚みを変えることにより、第1面部33を第2面部34よりも撓みやすく構成してもよい。
【0059】
このように、本実施形態の帯状部材11は、加圧部12にガスが充填されたときに身体側面Sbの方が、身体側面Sbとは反対の外側面Saよりも膨らみやすく構成されている。これにより、加圧部12にガスが充填されたときに、帯状部材11の身体側面Sbの方を、外側面Saよりも膨らませることができる。よって、加圧器具10による運動者の身体部位の圧迫効果を高めることができる。なお、帯状部材11は、長手方向における全体にわたって身体側面Sbの方が外側面Saよりも撓むように構成されていてもよい。
【0060】
図6を参照して、帯状部材11の運動者の身体への巻き付け方法を説明する。
図6の紙面左欄、紙面中央欄、および、紙面右欄には、帯状部材11の巻き付け工程の様子が順に模式的に図示されている。まず、
図6の紙面左欄に示されている第1工程では、帯状部材11の第1帯端部13c側が運動者の大腿部の前側に巻き回され、大腿部の前側に加圧部12が配置される。
【0061】
次に、
図6の紙面中央欄に示されている第2工程では、第1部位14aと第2部位14bとが、大腿部の裏側から大腿部に配置されている帯状部材11の加圧部12の上へと巻き回される。このとき、第1部位14aと第2部位14bの身体側面Sbに設けられている第2面ファスナー37bが外側面Saの第1面ファスナー37aに接着される。これにより、加圧部12が、血流を制限する対象である身体部位に固定される。本実施形態の帯状部材11によれば、第1部位14aと第2部位14bとが互いに分離しているため、運動者の身体に巻き付けられたときの第1部位14aと第2部位14bとの幅方向における互いの間隔を調整することができる。よって、加圧部12を運動者の身体形状によりフィットした状態で固定することが容易である。
【0062】
さらに、
図6の紙面右欄に示されている第3工程では、締結ベルト部18によって運動者の身体に巻き回されている帯状部材11をさらに締結する。具体的には、締結ベルト部18の第1V字ベルト18aを、第2帯端部13dに向かって引っ張って延ばしながら、その先端部BEの第3面ファスナー37cを、第1部位14aの外側面Saの第1面ファスナー37aに接着させる。また、締結ベルト部18の第2V字ベルト18bを、大腿部の後側へと引っ張って延ばしながら、その先端部BEの第3面ファスナー37cを、帯状部材11の外側面Saの第1面ファスナー37aに接着させる。これにより、2つのV字ベルト18a,18bによって帯状部材11の上から加圧部12に締結力を加えることができる。よって、運動者の身体部位に対する固定性が高められる。また、加圧部12による運動者の身体部位の圧迫効果が高められ、より確実に血流を制限することが可能になる。なお、本実施形態では、2つのV字ベルト18a,18bは、スリット部SLが形成されるようにV字状に折り返された形状を有している。これによって、2つのV字ベルト18a,18bの取り回しにより、4本のベルトによって帯状部材11を締結するのに相当する効果を得ることができる。
【0063】
以上のように、加圧器具10によれば、単一の帯状部材11を運動者の身体に巻き回すだけで、加圧部12を構成する、帯状部材11の幅方向に並ぶ複数の並列なガス流路21を配置することができる。よって、複数のカフを運動者の身体に並列に巻き回すのと同様な幅広い加圧範囲を容易に実現できる。これにより、運動者が激しい動きをしたとしても血管の広がりを広範囲にわたって抑制することができ、血流を効果的に制限することができる。また、複数のガス流路21は、2つの連通路23a,23bを介して互いに連通しているため、加圧の開始時に、加圧部12の全体にガスを円滑に行きわたらせることが容易にできる。よって、加圧部12の一部の領域にガスが流入できずに、加圧部12による加圧が不均一になることが抑制される。
【0064】
図7Aおよび
図7Bは、配管部材15の構成を示す概略図である。
図7Aには、配管部材15に外力が加えられず収縮している状態が例示されており、
図7Bには、配管部材15に外力が加えられて伸長している状態が例示されている。
【0065】
配管部材15は、チューブ16がらせん状に巻き回された形状を保持するように成形されたコイル部40と、コイル部40の両端に設けられている直線状部41,42と、を有する。チューブ16は、例えばポリウレタン等の樹脂材料によって構成され、例えば、3~10mm程度の直径を有する。チューブ16は、例えば、0~400水銀柱ミリメートル(mmHg)程度の耐圧性、つまり、0~53.3kPa程度の耐圧性を有している。
【0066】
コイル部40の長さは、伸長していない収縮状態で、例えば、500mm~2000mm程度である。コイル部40の直径は、チューブ16の直径に対して3~5倍程度であり、例えば、20~40mm程度である。コイル部40は、可撓性を有しており、自在に曲げ伸ばしが可能である。また、コイル部40は弾性変形する。コイル部40は、らせんの中心軸に沿った引っ張り外力が加えられたときに伸長し、当該外力が解除されたときに収縮する。コイル部40は中心軸方向に外力が加えられたときに、例えば、3~5倍以上の長さまで伸長する。
【0067】
第1直線状部41および第2直線状部42は、チューブ16が直線状の形状を保持するように成形されている部位である。第1直線状部41は、帯状部材11の配管接続部25に接続される。第2直線状部42は、制御ユニット50に接続される。本実施形態では、第1直線状部41の長さLaは、第2直線状部42の長さLbよりも長い。第1直線状部41が長いことにより、コイル部40を帯状部材11から離すことができる。そのため、帯状部材11を運動者の身体に巻き回すときにコイル部40が邪魔になることを抑制でき、配管部材15の絡まりを抑制できる。その一方で、第2直線状部42が短いことにより、運動者のトレーニング中に、配管部材15が制御ユニット50に対して大きく動かされるような場合でも、第2直線状部42が屈曲することを抑制でき、第2直線状部42の閉塞による加圧部12へのガスの供給不良の発生を抑制することができる。なお、他の実施形態では、第1直線状部41の長さLaと第2直線状部42の長さLbは等しくてもよい。あるいは、第2直線状部42は省略されてもよい。
【0068】
配管部材15によれば、その本体部を構成するコイル部40は、ばねのように撓みやすく、かつ、伸縮する。また、コイル部40は弾性変形するため、元の形状へと戻りやすい。そのため、運動者の運動中に絡まりが発生することがさらに抑制される。さらに、配管部材15によれば、コイル部40の径は、コイル部40を構成しているチューブ16の径よりも大きい。そのため、配管部材15をコイル状に成形していないままのチューブ16で構成した場合よりも、その取り回しが容易である。また、配管部材15が、運動者の使用する運動器具の狭い隙間に入り込んで引っ掛かってしまうことが抑制されるため、運動者の使用する運動器具への配管部材15の絡まりが抑制される。
【0069】
配管部材15によれば、たとえ運動者が激しく動いたときに発生する配管部材15にかかる負荷が、コイル部40の撓み変形により分散されるため、当該負荷がチューブ16に局所的にかかり、チューブ16が屈曲してしまうことが抑制される。よって、運動者のトレーニング中にも加圧部12へのガスの供給を安定的に円滑に行うことができる。
【0070】
また、配管部材15によれば、チューブ16がらせん状に巻かれている分だけ、加圧ポンプ53から加圧部12に至るまでのガスの経路が長くなるため、配管部材15の内部に収容されるガスの量が増加している。配管部材15内のガス量が増えれば、運動者の動きによって生じる加圧部12における急激な圧力変動を、配管部材15において吸収・緩和させることができる。そのため、制御ユニット50の制御部55が加圧部12におけるそうした急激な圧力変動に過敏に反応し、制御部55による加圧ポンプ53の制御が不安定になってしまうことを抑制できる。よって、加圧部12による運動者の身体部位に対する加圧状態が不安定になることを抑制できる。
【0071】
その他に、配管部材15によれば、コイル部40においてチューブ16が構成する円環部43同士の間にフックなどの係留部を引っ掛けることにより、配管部材15の途中の任意の部位をその係留部に係留させることができる。よって、配管部材15の移動範囲を容易に規制できる。
【0072】
以上のように、本実施形態の加圧器具10によれば、加圧ポンプ53と加圧部12とを接続する配管部材15がコイルチューブによって構成されているため、配管部材15の取り回しが容易になり、配管部材15の絡まりが抑制される。よって、配管部材15の絡まりによる加圧部12へのガスの供給不良の発生が抑制される。
【0073】
2.第2実施形態:
図8は、第2実施形態におけるトレーニング装置100Aを示す概略図である。第2実施形態のトレーニング装置100Aは、加圧器具10Aa,10Abの帯状部材11Aの構成が異なっている点以外は、第1実施形態のトレーニング装置100の構成とほぼ同じである。
【0074】
図8では、第1加圧器具10Aaの帯状部材11Aについては展開された状態で図示されており、第2加圧器具10Abの帯状部材11Aについては筒状に巻かれた使
用状態で図示してある。帯状部材11Aの筒状に巻く方法については後述する。
【0075】
帯状部材11Aは、右半身用の第1加圧器具10Aaと左半身用の第2加圧器具10Abとで、形状が互いに左右対称に構成されている点以外は、ほぼ同じ構成を有している。以下の説明では、帯状部材11Aの構成について、右半身用と左半身用とを区別することなく説明する。また、以下の説明では、第1実施形態と同様に、第1加圧器具10Aaと第2加圧器具10Abとを区別することなく、「加圧器具10A」と呼ぶ。
【0076】
帯状部材11Aは、運動者の血流を制限する身体部位を覆うように配置される略長方形形状の中央帯部60と、中央帯部60を運動者の当該身体部位に固定するための2つのベルト部61,62と、を備える。展開された状態の帯状部材11Aは、略長方形形状の中央帯部60から、2つの帯状のベルト部61,62が長手方向に互いに反対側に向かって延び出ている構成を有している。なお、後述するように、帯状部材11Aは、全体として、長手方向にわずかに湾曲した形状を有している。
【0077】
中央帯部60は、外側面Saと身体側面Sbを構成する略長方形形状の帯状部材を重ね合わせて外周縁部を接合した袋状の構成を有している。中央帯部60の外側面Saのほとんどは、手触りの良いループによって構成された第1面ファスナー37aによって覆われている。中央帯部60の身体側面Sbは、例えば、板状のゴム部材によって構成されている。これにより、中央帯部60が運動者の身体部位上で滑ることを抑制できる。
【0078】
中央帯部60の内部には、加圧部12Aが収容されている。加圧部12Aは、中央帯部60内のほぼ全体にわったって配置されている。第2実施形態の加圧部12Aは、第1実施形態の加圧部12とは内部空間20の流路構成が異なっている。加圧部12Aの構成の詳細については後述する。
【0079】
中央帯部60の外側面Saの中央部には、加圧部12Aの内部空間20と配管部材15とを接続する配管接続部25が設けられている。なお、配管部材15は、第1実施形態で説明したのと同じコイルチューブによって構成されている。加圧部12Aの内部空間20には、配管部材15を介して、第1実施形態で説明したのと同様な構成の制御ユニット50に接続されている。
【0080】
第1ベルト部61および第2ベルト部62は、中央帯部60の外側面Sa上、つまり、加圧部12Aの上において、帯状部材11Aの幅方向に互いにずれた位置に配列されている。第1ベルト部61は、中央帯部60の第1幅端部13a側に配置され、第2ベルト部62は、中央帯部60の第2幅端部13b側に配置されている。第1ベルト部61および第2ベルト部62は、加圧部12Aの配置領域の中央から長手方向に互いに反対方向に延び出ている。後述するように、第1ベルト部61および第2ベルト部62は、運動者の身体部位に対して、互いに反対方向に巻き回される。
【0081】
第1ベルト部61および第2ベルト部62の基端部BBは、中央帯部60の外側面Saに縫い付けられて固定されている。また、第1ベルト部61および第2ベルト部62の基端部BBにはそれぞれ、バックルとして機能する四角枠状の留め具65が設けられている。後述するように、各ベルト部61,62は、帯状部材11Aを筒状に巻くときに、自身の留め具65において折り返される。
【0082】
第1ベルト部61および第2ベルト部62は、第1ベルト面BSaと、その裏側の第2ベルト面BSbとを有する。第1ベルト面BSaは、帯状部材11Aが展開された状態において、中央帯部60の外側面Saと同じ側に配置される面である。第2ベルト面BSbは、帯状部材11Aが展開された状態において、中央帯部60の身体側面Sbと同じ側に配置される面である。
【0083】
第1ベルト部61および第2ベルト部62の第1ベルト面BSaは、先端部BE以外の領域のほとんどが第1面ファスナー37aによって覆われている。第1ベルト部61および第2ベルト部62の先端部BEにおける第1ベルト面BSaには、第2面ファスナー37bが設けられている。第2面ファスナー37bは、第1面ファスナー37aのループに対応するフックによって構成されている。
【0084】
第2実施形態では、第1ベルト部61と第2ベルト部62の長さはほぼ同じであり、中央帯部60よりも2倍以上長い。また、第1ベルト部61と第2ベルト部62の幅は、中央帯部60の幅のほぼ1/2である。なお、他の実施形態では、第1ベルト部61と第2ベルト部62は互いに異なる長さや幅を有していてもよいし、中央帯部60の幅の1/2以下の幅や、中央帯部60の幅の1/2より大きい幅を有していてもよい。
【0085】
第2実施形態では、中央帯部60は、第1幅端部13a側がわずかに幅方向に膨むように、全体的に幅方向にわずかに弧状に湾曲した形状を有している。また、第1ベルト部61および第2ベルト部62も、中央帯部60と同様な曲率でわずかに湾曲している形状を有している。
【0086】
中央帯部60の上に配置されている第1ベルト部61および第2ベルト部62の基端部BB側の部位はそれぞれ、中央帯部60の第1幅端部13aまたは第2幅端部13bに沿って配置されている。これにより、帯状部材11Aは、展開された状態において、長手方向にわたって全体に第1幅端部13a側が膨らむようにわずかに湾曲した形状になっている。この形状により、帯状部材11Aは、運動者の大腿部などの身体部位により密着するように巻き回すことが可能である。
【0087】
図9は、帯状部材11Aの概略分解図である。
図9には、中央帯部60の内部に収容されている加圧部12Aと補強プレート68とを分離して図示してある。
【0088】
中央帯部60の第1幅端部13aの近傍には、第1幅端部13aに沿って長手方向に延びている線状の切れ目として構成された取出口19が設けられている。加圧部12Aおよび補強プレート68は、取出口19を介して中央帯部60の内部に着脱可能に収容される。取出口19には開閉のためのファスナーが設けられていてもよい。
【0089】
加圧部12Aは、略長方形形状の気密な袋状部材32によって構成されている。袋状部材32は、例えばポリウレタン等の樹脂フィルム部材によって気密に構成されている。なお、第2実施形態では、加圧部12Aを構成する袋状部材32は、身体側面Sb側の第1面部33と外側面Sa側の第2面部34とで強度に差が生じないように、第1面部33と第2面部34とはそれぞれ同じ厚みの単層で構成されている。
【0090】
加圧部12Aの幅方向および長手方向の中央部には、配管接続部25を構成する接続管27が設けられている。接続管27は、配管部材15の端部が接続され、内部空間20に連通している。加圧部12Aが中央帯部60に収納された状態のとき、接続管27は、配管部材15に接続可能なように、中央帯部60の中央から外部に突出する。
【0091】
なお、中央帯部60には、接続管27を覆うカバー部材28が取り付けられている。カバー部材28は、例えば、シリコンゴムやポリプロピレンなどの樹脂部材によって作製される。カバー部材28は、接続管27とともに配管接続部25を構成する。カバー部材28は、半円筒状の部位を有しており、中央帯部60の内部から突き出た接続管27は、カバー部材28のその半円筒状の部位の内周面に嵌まる。接続管27と配管部材15との接続箇所は、カバー部材28のその半円筒状の部位によって覆われて保護される。
【0092】
袋状部材32の内部空間は、長手方向に沿った並列な複数のガス流路21に区画されている。複数のガス流路21は、幅方向に並列に並んでいる。ガス流路21を区画する流路壁22は、袋状部材32の第1面部33と第2面部34を構成する樹脂フィルム部材同士を熱溶着することによって形成されている。
【0093】
第2実施形態では、各ガス流路21は、内部空間20の長手方向における中央部に設けられた中央連通路23cと、内部空間20の長手方向における両端にそれぞれ設けられた端部連通路23eとを介して互いに連通している。上述した接続管27は、中央連通路23cの中央の位置に設けられている。
【0094】
第2実施形態の加圧部12Aにおけるガス流路21の流路構成によれば、接続管27から導入されたガスを、中央連通路23cを通じて、各ガス流路21に円滑に分配させることができる。また、各ガス流路21が端部連通路23eにおいて連通しているため、加圧部12Aの内部空間20の隅々までガスを円滑に行きわたらせることができる。
【0095】
第2実施形態の加圧部12Aでは、ガス流路21の流路幅は形成された位置ごとに異なっている。加圧部12Aでは、ガスが充填されたときに、他よりも膨らなくなる部位が生じることが抑制されるように、ガス流路21の流路幅が、加圧部12Aにおける部位ごとに変えられている。
【0096】
第2実施形態では、中央連通路23cを挟んで長手方向に隣り合う2つの領域の流路構成は非対称に構成されている。当該2つの領域において、各ベルト部61,62の下に位置するガス流路21の流路幅は、それ以外のガス流路21の流路幅よりも大きい。これにより、ベルト部61,62の基端部BB側の部位の下に位置するガス流路21へとガスが流入しやすくなっており、ベルト部61,62の基端部BB側の部位の下の領域が膨らみにくくなることが抑制されている。
【0097】
第2実施形態の帯状部材11Aは、補強プレート68が中央帯部60の内部に収納されていることにより、ガスが充填されたときに身体側面Sb側の方が、外側面Sa側よりも膨らむように構成されている。補強プレート68は、例えば、ポリプロピレンなど、加圧部12Aを構成する袋状部材32よりも剛性が高い樹脂材料によって構成される。
【0098】
補強プレート68は、中央帯部60の内部において加圧部12Aの外側面Sa側の面を覆うように配置される。補強プレート68の中央には、加圧部12Aの接続管27が挿通される貫通穴68hが設けられている。中央帯部60の内部に補強プレート68が配置されることにより、ガスが充填されたときに、加圧部12Aが補強プレート68によって外側面Sa側から押圧される。そのため、加圧部12Aが身体側面Sb側に膨らむことが促進される。
【0099】
図10および
図11は、第2実施形態の帯状部材11Aを筒状に巻く方法を示す説明図である。
図10には、帯状部材11Aを巻き回す工程の途中の段階が図示されており、
図11には、巻き回された状態の帯状部材11Aが図示されている。
【0100】
図10に示すように、帯状部材11Aは、中央帯部60が2つのベルト部61,62の内側に位置し、第1ベルト面BSaが外側を向き、第2ベルト面BSbが内側を向く状態で各ベルト部61,62が巻き回される。各ベルト部61,62は1周巻き回された後、中央帯部60に固定されている自身の基端部BBに設けられた留め具65の枠内に挿通されて折り返され、先端部BEの第2面ファスナー37bによって、第1面ファスナー37a上に固定される。このように、帯状部材11Aによれば、容易に筒状に巻くことができる。
【0101】
帯状部材11Aは、運動者の身体部位に装着される前に、
図11に示す筒状に巻き回された状態にされる。運動者の身体部位への装着の際には、巻き回された帯状部材11Aの筒内に運動者の身体部位が挿通され、第1ベルト部61や第2ベルト部62を締めることにより、筒の径を調整し、運動者の身体部位を締めつけるように固定される。帯状部材11Aによれば、第1ベルト部61と第2ベルト部62とによって、第1幅端部13a側と第2幅端部13b側とで締め付けの具合を別個に調整することが容易にできる。
【0102】
以上のように、第2実施形態のトレーニング装置100Aによれば、2つのベルト部61,62によって帯状部材11Aを筒状に巻いた状態に容易にでき、その筒状に巻かれた状態のまま、運動者の身体部位に装着させることができる。よって、加圧器具10Aの取り回しがより一層、容易化されている。また、加圧部12Aにおけるガスの配流性が高められており、加圧器具10Aにおいてガスの供給不良が発生することがより一層、抑制されている。その他に、第2実施形態のトレーニング装置100Aによれば、コイルチューブによって構成された配管部材15によって得られる効果や、その他の第1実施形態で説明したのと同様な種々の効果を得ることができる。
【0103】
3.他の実施形態:
本開示の技術は、上記の各実施形態の構成や各実施形態中で他の実施形態として説明した構成に限定されることはなく、例えば、以下のように改変することも可能である。
【0104】
上記の各実施形態のトレーニング装置100,100Aにおいて、第1加圧器具10a,10Aaと第2加圧器具10b,10Abのうちのいずれか一方は省略されてもよい。また、上記各実施形態の帯状部材11,11Aは、例えば上腕部など、大腿部以外の他の部位に巻き回されるようにサイズや形状が適宜変更されてもよい。
【0105】
上記の各実施形態で説明したように、配管部材15を、コイルチューブによって構成する一方で、加圧部12,12Aの内部空間20を、例えば、ガスの流れ方向が規定されていない単一の空間によって構成しもよい。このような構成であっても、コイルチューブによって構成された配管部材15によって、加圧器具10の取り回し性が向上され、ガスの供給不良の発生を抑制できる。
【0106】
上記の各実施形態で説明したように、加圧部12,12Aを、内部空間20が複数のガス流路21で区画された構成とする一方で、配管部材15を、コイルチューブ以外のチューブ部材によって構成してもよい。このような構成であっても、上記の各実施形態の帯状部材11,11Aであれば運動者の身体への巻回しが容易化され、加圧器具10の取り回し性が向上される。また、加圧部12,12Aにおけるガスの流れを円滑化するガス流路21の構成により、加圧部12,12A内におけるガスの供給不良の発生を抑制できる。
【0107】
上記の各実施形態の配管部材15において、コイル部40の途中に、チューブ16が直線状に延びている部位が設けられていてもよい。また、コイル部40の途中に、局所的に内部空間の容積が増大する球状に膨らんだ部位などが設けられていてもよい。
【0108】
上記の第1実施形態において帯状部材11や加圧部12は、身体側面Sbと外側面Saとは同程度の撓みやすさで構成されていてもよい。第1基材30aと第2基材30bとは伸縮性が同程度となるように構成されていてもよいし、加圧部12の第1面部33と第2面部34とが、同程度の撓みやすさで構成されていてもよい。
【0109】
上記第1実施形態の帯状部材11において、締結ベルト部18は省略されてもよい。上記第1実施形態の帯状部材11には、運動者の身体をより締め付けやすくするために、例えばバックルなど、第1部位14aおよび第2部位14bが挿通される締結部が設けられていてもよい。
【0110】
上記第1実施形態において、帯状部材11は、第1部位14aおよび第2部位14bとともに加圧部12の形成領域から長手方向に延び出ている第3部位を有していてもよい。
【0111】
上記第2実施形態の加圧部12Aにおいて、複数のガス流路21は、配管接続部25から放射状に広がるように形成されていてもよい。
【0112】
上記第2実施形態の帯状部材11Aにおいて、補強プレート68は省略されてもよい。また、上記第1実施形態の帯状部材11に、第2実施形態の補強プレート68が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0113】
10,10a,10b,10Aa,10Ab…加圧器具、11,11A…帯状部材、12,12A…加圧部、13a…第1幅端部、13b…第2幅端部、13c…第1帯端部、13d…第2帯端部、14a…第1部位、14b…第2部位、15…配管部材、16…チューブ、18…締結ベルト部、18a…第1V字ベルト、18b…第2V字ベルト、18c…固定部、19…取出口、20…内部空間、21…ガス流路、22…流路壁、23…連通路、23a…第1連通路、23b…第2連通路、25…配管接続部、27…接続管、28…カバー部材、30a…第1基材、30b…第2基材、32…袋状部材、33…第1面部、34…第2面部、37a…第1面ファスナー、37b…第2面ファスナー、37c…第3面ファスナー、40…コイル部、41…第1直線状部、42…第2直線状部、43…円環部、50…制御ユニット、51…筐体、52…インターフェース部、53…加圧ポンプ、54…圧力調整部、55…制御部、60…中央帯部、61…第1ベルト部、62…第2ベルト部、65…留め具、68…補強プレート、68h…貫通穴、100,100A…トレーニング装置、BB…基端部、BE…先端部、、BSa…第1ベルト面、BSb…第2ベルト面、Sa…外側面、Sb…身体側面、SL…スリット部
【要約】
加圧器具は、運動者の身体部位に対して、長手方向に巻き回される帯状部材と、前記帯状部材に設けられ、ガスが充填される内部空間を有し、前記帯状部材が前記身体部位に巻き回されることにより、前記身体部位に配置され、前記ガスの充填により膨らんで前記身体部位を圧迫する加圧部と、加圧ポンプが送り出す前記ガスを前記加圧部へと導く可撓性を有する配管部材と、を備え、前記加圧部の前記内部空間は、前記帯状部材の幅方向に並び、前記長手方向に沿った並列な複数のガス流路に区画され、前記幅方向に隣り合う前記ガス流路同士は互いに連通しており、前記配管部材は、チューブがらせん状に巻き回された形状に成形されているコイルチューブによって構成されている。