IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • -ワークの把持装置 図1
  • -ワークの把持装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ワークの把持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018196259
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2020062724
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】沢田 学
(72)【発明者】
【氏名】西村 尚貢
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-143182(JP,A)
【文献】特開2017-131982(JP,A)
【文献】特開2010-036328(JP,A)
【文献】特開2000-343474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するための開閉チャックと、前記開閉チャックに設けた爪部を開閉操作する操作ロッドを備え、
前記開閉チャックの爪部の開口寸法と前記操作ロッドの移動量とを対応させた演算手段を有し、前記演算手段を用いて爪部で把したワーク又は当該ワークの加工部の寸法を計測可能にした計測手段を有し、
記操作ロッドの移動量は当該操作ロッドに取り付けたドグの位置をストロークセンサーにて検出するものであり、
記開閉チャックの制御部にワークの種類と、ワーク及び当該ワークの加工部の把持寸法を予め記憶させたワーク情報記憶部を有し、
記開閉チャックの制御部は前記計測手段にて計測された前記ワークの加工部の計測値を時系列的に記憶する時系列記憶手段と、前記計測値の変化量を解析する解析手段とを有し、
前記解析手段により得られた前記ワークの加工部の寸法変化から、前記ワークを加工する工具の寿命の予測又は前記工具のNC指令における加工プログラムの加工座標の補正が可能であることを特徴とするワークの把持装置。
【請求項2】
請求項1記載のワークの把持装置を備えたことを特徴とするローディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械にワークを自動搬入及び自動搬出等を行うローディング装置、あるいはロボットのハンド部やマニピュレーター等に用いられるワークの把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等の分野にて用いられるローディング装置のローダや産業ロボットのハンド部等にはワークを搬送するための把持装置が取り付けられている。
例えば特許文献1には、シリンダ機構の駆動により開閉動作を行う一対の把持部からなる開閉チャックを開示する。
しかし、同公報に開示するワークの把持装置は、把持部の開閉ストロークを大きくするのが目的であり、ワークの大きさ等を計測したり、不具合の自己診断ができるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-343474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はワークの搬送工程内にて、このワークの把持寸法を計測できるとともに異常等を自動検出できるワークの把持装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るワークの把持装置は、ワークを把持するための開閉チャックと、前記開閉チャックに設けた爪部を開閉操作する操作ロッドを備え、前記開閉チャックの爪部の開口寸法と前記操作ロッドの移動量とを対応させた演算手段を有し、前記演算手段を用いて爪部で把握したワークの寸法を計測可能にした計測手段を有することを特徴とする。
【0006】
ここで爪部はワークの外周部又は内周部、あるいはワークの一部分を複数の爪部にて把持するものであれば、その構造に制限はない。
また、演算手段とは、複数の爪部にてワークを把持する場合の、この爪部間の間に形成される開口寸法が操作ロッドの移動量に対応するように演算できる手段をいう。
本発明は爪部間の開口寸法が拡大、縮小できるように、この爪部を操作ロッドに連結したものであれば、その連結構造に制限はない。
前記操作ロッドの移動量の検出方法には各種方法を採用できるが、当該操作ロッドに取り付けたドグの位置をストロークセンサーにて検出するものであってもよい。
【0007】
本発明に係る把持装置は、工作機械にワークを搬入、搬出するローディング装置のローダとして使用でき、産業ロボット等のハンド部に取り付けて使用することもできる。
この場合にローディング装置又はそれを制御する工作機械等に設けられた制御部、さらには産業ロボット、マニピュレータ等の制御部に搬送するワークの種類や、その把持部の把持寸法等のワーク情報を予め記憶させる記憶部を有するようにしてもよい。
また、搬送の際に予め登録されたデータ群の中から該当するデータの読出し手段を有し、把持装置の開閉チャック部の爪部にてワークを把持した際に自動計測された計測値と上前記読出された登録値との比較手段を設けることで、ワークの把持操作の工程中にて、目的とする正しいワークであるか、あるいは正しく爪部に着座されたか等のチェックを自動的に行うことができる。
また、機械加工されたワークを搬出する際には加工部を把持するように設定することで、加工寸法が正しいか否かの自動チェックが可能となる。
さらに、チェックや爪部に異常があるか否か等の自動診断システムとしても活用できる。
本発明において、開閉チャックの制御部は前記計測手段にて計測された計測値を時系列的に記憶する時系列記憶手段と、前記計測値の変化量を解析する解析手段とを有しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るワークの把持装置にあっては、各種搬送装置のワークの把持部に採用することができ、ワークの搬送時に把持すると同時にワークの把持部の寸法計測が可能になる。
この計測値の時系列記憶手段と、それにより得られる変化量の解析手段を有すると、ワークの加工部等の把持寸法変化から、工具の摩擦量の変化の予測,NC指令座標の補正,変更、さらには加工プログラムの変更の必要性の予測も可能になる。
爪部の開閉速度変化,開閉時間等のデータの計測値を用いて解析すると、把持装置の異常の早期発見や予知にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ローディング装置のローダに本発明に係るワークの把持装置を適用した例を示す。
図2】チャックの爪部の開口寸法と操作ロッドの移動量の関係を調査した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るワークの把持装置の構造例を以下、図に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
図1は、工作機械のNC制御部にてNC制御されたローディング装置のローダに適用した例を示す。
把持装置はチャック部と、このチャック部に開閉自在に取り付けた爪部12を有する。
この爪部12はワークの外周部を把持するか内周部を把持するかにより、外爪、内爪等の相違があるものの、これら複数の爪部12にてワークを把持するための開口部の寸法を開口寸法Dと表現する。
爪部12は操作ロッド13の前進移動及び後退移動により、この開口寸法Dが拡大、縮小する。
操作ロッド13はエアーシリンダー、油圧シリンダー等のシリンダー部の制御により、操作ロッド13の移動量が制御されている。
操作ロッド13にはドグ14が取り付けられ、このドグ14の位置を電磁式のストロークセンサー等のセンサー部15にて検出されるようになっている。
なお、操作ロッド13の移動量が検出できれば、この電磁式のストロークセンサーに制限されない。
【0011】
本実施例は、駆動部3にて上下移動制御されたアーム2の下端部に把持装置を取り付けた例であり、このアーム2は走行レール1に沿って移動制御されている。
【0012】
図2にシリンダー部16の制御により操作ロッド13を基準位置よりマイナス方向に移動させた移動量を縦軸にとり、センサーにて検出した値を用いて演算手段にてチャック開口寸法Dを計測した変化を横軸に示したグラフを示す。
NCデータに基づく変化も合せて表示した。
このグラフから操作ロッドの移動量を用いて、所定の演算手段により爪部の開口寸法を計測するためのシステムを構築することができることが分かる。
なお、センサー部にて得られた値に基づいて計測した値の変化に、やや波打ち状態のズレが認められるものの、例えば最小二乗法等の直線近似手段等の補正手段を用いることで、誤差を小さくすることができる。
【0013】
本発明に係る把持装置は図1に示すように、加工されたワークWの加工部Wを把持するようにすると、工作機械からワークWを搬出する際に、その計測値を予め制御部等に登録されているデータと比較するだけで、加工部の寸法の良否の判定を行うこともできる。
また、各種大きさの異なるワークを搬入する場合にあっては、正しいワークか否かの自動判定も可能になる。
搬送工程内で自動計測できることから、ライン外での計測を不要にすることができる。
また、この計測値の時系列データの記憶手段と、その変化量の解析手段を有すると、上記加工寸法の変化量から加工座標の補正や工具寿命の予測も可能になる。
【符号の説明】
【0014】
11 チャック部
12 爪部
13 操作ロッド
14 ドグ
15 センサー部
16 シリンダー部
図1
図2