(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤層、粘着剤層付き光学フィルム、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 133/00 20060101AFI20221117BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20221117BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221117BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20221117BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J7/30
(21)【出願番号】P 2022143894
(22)【出願日】2022-09-09
【審査請求日】2022-09-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105877
【氏名又は名称】サイデン化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 寶月
(72)【発明者】
【氏名】小塚 淳平
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 昌宏
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-121521(JP,A)
【文献】特表2009-519372(JP,A)
【文献】特表2009-544765(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0061359(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0086980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)と、帯電防止剤(D)と、を含有する粘着剤組成物であって、
前記第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、50質量部以上、99質量部以下のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)と、1質量部以上、50質量部以下のアルキレンオキシド基含有モノマー(a2)と、前記アルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)及び前記アルキレンオキシド基含有モノマー(a2)の合計量100質量部に対して0.01質量部以上、5質量部以下の反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3)とを構成単位として含有し、
前記第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は30万以上、350万以下であり、
前記第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、前記第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)100質量部中に、0質量部以上、85質量部以下のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(b1)と、0質量部以上、50質量部以下の芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー(b2)と、15質量部以上、70質量部以下のアルコキシシリル基を有するモノマー(b3)とを構成単位として含有し、
前記第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量は3万以上、40万以下であり、
前記粘着剤組成物は、前記第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、前記第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)1質量部以上、50質量部以下で含有し、
前記粘着剤組成物からなる層の表面抵抗率は、8.0×10
8Ω/□未満である、
粘着剤組成物。
【請求項2】
前記第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)に含有される前記アルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)、及び、前記第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)に含有される前記アルキル(メタ)アクリレートモノマー(b1)のそれぞれのアルキル基はC1以上、C14以下である、
請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3)の反応性官能基は、水酸基、エポキシ基、窒素含有基の少なくともいずれかである、
請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、架橋剤(C)0.01質量部以上、10質量部以下で含有し、
前記架橋剤(C)は、イソシアネート系化合物、金属キレート化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、及びメラミン系化合物の少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、帯電防止剤(D)1質量部以上、25質量部以下で含有し、
前記帯電防止剤(D)は、フッ素或いはケイ素のいずれかを含有する化合物(但し、Mがアルカリ金属であるM
+[(FSO
2)
2N]
-で表示される化合物を含む場合を除く)である、
請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、シランカップリング剤(E)0.01質量部以上、3.0質量部以下で含有する、
請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、前記第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)100質量部中に、0質量部以上、50質量部以下のビニル系モノマーを構成単位として含有する、
請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物からなる、粘着剤層。
【請求項9】
少なくとも一方の面に請求項8に記載の粘着剤層を備える、粘着剤層付き光学フィルム。
【請求項10】
請求項9に記載の粘着剤層付き光学フィルムを備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤層、粘着剤層付き光学フィルム、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両搭載用、屋外計器用、及びパソコン用などの幅広い用途に液晶表示装置が使用されている。粘着剤組成物からなる粘着剤層は、液晶表示装置の液晶セル(ガラス基板)に対して、偏光板を貼着している。しかし、偏光板は、高温環境で伸縮する特性を有するため、ガラス基板から偏光板が剥がれることがある。また、偏光板をガラス基板に貼着するために偏光板に貼着していない側の離型フィルムを剥離すると、静電気が生じる。発生した静電気は、例えば、液晶表示装置の液晶層及び静電容量センサー等に悪影響を及ぼすことがある。
【0003】
上記の問題を踏まえて、特許文献1は、適度な剥離性と接着強度の長期安定性を付与するために、加水分解性シリル基を有するアクリル/シリコーン系グラフト共重合体からなる接着性改質剤を含む光学用感圧接着剤組成物を提案している。特許文献2は、粘着剤層を形成した場合の比誘電率を上げないように、アルコキシシリル基含有アクリルポリマーを、架橋性アクリル重合体と併用した粘着剤組成物を提案している。特許文献3は、高温かつ高湿条件下での耐久性を向上させるために、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系オリゴマーを含有する粘着剤組成物からなる光学機能性フィルムを提案している。特許文献4は、帯電防止性能と厳しい環境条件下での耐久性を実現するために、アルキレンオキシド基含有モノマーを単量体成分として含むアクリル系共重合体を含有する粘着剤シートを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-037502号公報
【文献】特開2019-014778号公報
【文献】特開2008-101168号公報
【文献】特開2020-002225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の重合体は、高温環境でアクリル系ポリマーとの相分離が起こるため、十分な耐久性を有していない。また、特許文献2のアクリル系オリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が400~5000であり、アクリル系ポリマーと加水分解アルコキシシリル基を有するアクリル系ポリマーとの相互作用が小さく、高温環境での十分な耐久性を有していない。特許文献3の光学機能性フィルムもまた、高温環境で十分な耐久性を有していない。特許文献4の粘着剤シートは、帯電防止性能を向上するために、粘着剤組成物が帯電防止剤を多く含有すると、高温環境での耐久性が低下するといった課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、高温環境での耐久性と帯電防止性を向上する粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するために、本発明の粘着剤組成物は、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)と、帯電防止剤(D)と、を含有する粘着剤組成物であって、前記第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、50質量部以上、99質量部以下のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)と、1質量部以上、50質量部以下のアルキレンオキシド基含有モノマー(a2)と、前記アルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)及び前記アルキレンオキシド基含有モノマー(a2)の合計量100質量部に対して0.01質量部以上、5質量部以下の反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3)とを構成単位として含有し、前記第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は30万以上、350万以下であり、前記第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、前記第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)100質量部中に、0質量部以上、85質量部以下のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(b1)と、0質量部以上、50質量部以下の芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー(b2)と、15質量部以上、70質量部以下のアルコキシシリル基を有するモノマー(b3)とを構成単位として含有し、前記第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量は3万以上、40万以下であり、前記粘着剤組成物は、前記第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、前記第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)1質量部以上、50質量部以下で含有し、前記粘着剤組成物からなる層の表面抵抗率は、8.0×108Ω/□未満である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温環境での耐久性と帯電防止性を向上する粘着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。
【0010】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)と、帯電防止剤(D)と、を含有する。
【0011】
一実施形態に係る粘着剤組成物は、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)1質量部以上、50質量部以下、好ましくは2質量部以上、25質量部以下で含有する。
【0012】
(第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A))
一実施形態に係る第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、50質量部以上、99質量部以下のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)と、1質量部以上、50質量部以下のアルキレンオキシド基含有モノマー(a2)の合計量100質量部に対して、0.01質量部以上、5質量部以下の反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3)とを構成単位として含有する。
【0013】
本明細書等における、「第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)」とは、重合性単量体として少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分が重合した重合体であり、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有する。本明細書等において、「(メタ)アクリル」との文言には、「アクリル」及び「メタクリル」の両方の文言が含まれることを意味する。また、同様に、「(メタ)アクリレート」との文言には、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方の文言が含まれることを意味する。
【0014】
(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、及び(メタ)アクリル酸アリールエステル、並びにそれら以外の他の(メタ)アクリル酸エステル等を含む。(メタ)アクリル酸エステルは、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0015】
(アルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1))
第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、50質量部以上、99質量部以下のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)を構成単位として含有する。第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、50質量部未満のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)を構成単位として含有する場合、粘着剤層の基材への密着性や粘着剤層の可撓性が低下する。また、基材に対する粘着剤層の剥れや浮きが生じるため、十分な耐久性が得られない。一方で、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、99質量部よりも多いアルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)を構成単位として含有する場合、粘着剤層の基材への密着性が不足する。また、高温環境で粘着剤層の発泡が生じるとともに、粘着剤層の帯電防止性能が低下する。
【0016】
一実施形態に係るアルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)のアルキル基は、C1以上、C14以下である。
【0017】
アルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどを含む。アルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0018】
(アルキレンオキシド基含有モノマー(a2))
第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、1質量部以上、50質量部以下、好ましくは5質量部以上、40質量部以下のアルキレンオキシド基含有モノマー(a2)を構成単位として含有する。第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、上記質量部の範囲でアルキレンオキシド基含有モノマー(a2)を構成単位として含有することで、後述する帯電防止剤(D)を併用してなる粘着剤層に対して、高温環境での耐久性と優れた帯電防止性能を付与することが可能になる。一方で、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、上記質量部の範囲外でアルキレンオキシド基含有モノマー(a2)を構成単位として含有する場合、形成される粘着剤層において、優れた帯電防止性能と、厳しい条件下での耐久性の両立の実現が難しくなる。
【0019】
アルキレンオキシド基含有モノマー(a2)は、以下の下記一般式(1)で表される。
一般式(1)
(一般式(1)中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は水素原子、アルキル基、アラルキル基、もしくはアリール基のいずれかであり、n=2~9の整数である。)
【0020】
アルキレンオキシド基含有モノマー(a2)は、例えば、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングルコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート、フェノキシトリエチレングリコールアクリレート、及びノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレートなどを含む。アルキレンオキシド基含有モノマー(a2)は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0021】
(反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3))
第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、アルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)及びアルキレンオキシド基含有モノマー(a2)の合計量100質量部に対して、0.01質量部以上、5質量部以下、好ましくは0.01質量部以上、3質量部以下の反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3)を構成単位として含有する。(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、後述する架橋剤(C)と反応する反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3)を構成単位として、上記質量部の範囲で含有することで、高温環境での耐久性に優れる粘着剤層の形成が可能になる。
【0022】
一方で、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3)を構成単位として、上記質量部の範囲よりも少なく含有する場合、粘着剤層の凝集力が低下し、高温環境で粘着剤層に発泡が発生する。また、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3)を構成単位として、上記質量部の範囲よりも多く含有する場合、粘着剤層の基材に対する密着性が損なわれ、剥がれが発生するおそれがあるので好ましくない。
【0023】
一実施形態に係る、反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3)の反応性官能基は、水酸基、エポキシ基、窒素含有基の少なくともいずれかである。
【0024】
ここで、液晶パネルのガラス基板には、透明導電層(酸化物半導体からなる薄膜層(ITO層等))が形成される場合がある。透明導電層は、静電気による誤作動を防止するための帯電防止層としての機能及び静電容量式タッチパネルのセンサー電極としての機能を有する。第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3)を構成単位として含有する場合、粘着剤組成物によって透明導電層を腐食または損傷させることがある。そのため、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、粘着剤組成物の用途に応じて、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3)を構成単位として含有するかを選択すれば良い。
【0025】
反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3)は、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレートなどのカルボキシ基含有単量体、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミド系単量体を含む。反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a3)は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0026】
(物性)
一実施形態に係る第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(GPC測定、標準ポリスチレン換算)は、30万以上、350万以下、好ましくは120万以上、250万以下である。第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量が30万未満である場合、粘着剤層に十分な耐久性を付与することができない。一方で、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量が350万を超える場合、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)の粘度が非常に高くなるため、粘着剤組成物の塗工性が悪化する。
【0027】
第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、通常の溶液重合、塊状重合、乳化重合、及び懸濁重合などにより製造され得る。特に、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)を溶液として取得可能な溶液重合を用いて第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)を製造することが好ましい。これにより、溶液状態の第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)を本発明の粘着剤組成物の製造にそのまま使用することができる。溶液重合に使用する溶剤は、例えば、酢酸エチル、トルエン、n-ヘキサン、アセトン、及びメチルエチルケトンなどの有機溶剤を含む。
【0028】
(重合開始剤)
上記(a1)~(a3)を重合する際に使用する重合開始剤は、例えば、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、ベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、及びt-ブチルパーオキサイドなどの油溶性有機過酸化物、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)などの油溶性アゾ化合物などを含む。油溶性重合開始剤は、好ましくは油溶性アゾ化合物である。油溶性重合開始剤は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0029】
(連鎖移動剤)
上記第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)の分子量を調整するために、連鎖移動剤を適宜使用することができる。連鎖移動剤は、例えば、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、ステアリルメルカプタン、ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン類、α-メチルスチレンダイマーなどを含み、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。一方で、従来公知の連鎖移動剤を使用せずに、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を製造しても良い。
【0030】
(第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B))
一実施形態に係る第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)100質量部中に、0質量部以上、85質量部以下のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(b1)と、0質量部以上、50質量部以下の芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー(b2)と、15質量部以上、70質量部以下のアルコキシシリル基を有するモノマー(b3)とを構成単位として含有する。
【0031】
本明細書等における、「第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)」とは、重合性単量体として少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分が重合した重合体であり、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有する。本明細書等において、「(メタ)アクリル」との文言には、「アクリル」及び「メタクリル」の両方の文言が含まれることを意味する。また、同様に、「(メタ)アクリレート」との文言には、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方の文言が含まれることを意味する。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、及び(メタ)アクリル酸アリールエステル、並びにそれら以外の他の(メタ)アクリル酸エステル等を含む。(メタ)アクリル酸エステルは、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0033】
(アルキル(メタ)アクリレートモノマー(b1))
一実施形態に係る第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、0質量部以上、85質量部以下、好ましくは15質量部以上、70質量部以下のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(b1)を構成単位として含有する。
【0034】
一実施形態に係るアルキル(メタ)アクリレートモノマー(b1)のアルキル基は、C1以上、C14以下である。
【0035】
アルキル(メタ)アクリレートモノマー(b1)は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどを含む。アルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0036】
(芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー(b2))
一実施形態に係る第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、0質量部以上、50質量部以下、好ましくは0質量部以上、40質量部以下の芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー(b2)を構成単位として含有する。
【0037】
芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー(b2)は、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを含む。芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー(b2)は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0038】
(アルコキシシリル基を有するモノマー(b3))
一実施形態に係る第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、15質量部以上、70質量部以下のアルコキシシリル基を有するモノマー(b3)を構成単位として含有する。
【0039】
アルコキシシリル基を有するモノマー(b3)は、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン等を含む。アルコキシシリル基を有するモノマー(b3)は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0040】
(その他のモノマー)
第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、(b1)~(b3)以外にビニル系モノマーを構成単位として含有することができる。一実施形態に係る第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、0質量部以上、50質量部以下、好ましくは0質量部以上、40質量部以下のビニル系モノマーを構成単位として含有する。
【0041】
ビニル系モノマーは、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル及びアクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレン等の共役ジエンモノマー、塩化ビニル及び臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン等を含む。
【0042】
(物性)
一実施形態に係る第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量(GPC測定、標準ポリスチレン換算)は、3万以上、40万以下、好ましくは3万以上、36万以下である。
【0043】
第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、通常の溶液重合、塊状重合、乳化重合、及び懸濁重合などにより製造され得る。特に、第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)を溶液として取得可能な溶液重合を用いて第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)を製造することが好ましい。これにより、溶液状態の第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)を本発明の粘着剤組成物の製造にそのまま使用することができる。溶液重合に使用する溶剤は、例えば、酢酸エチル、トルエン、n-ヘキサン、アセトン、及びメチルエチルケトンなどの有機溶剤を含む。
【0044】
(重合開始剤)
上記(b1)~(b3)及びその他のモノマーを重合する際に使用する重合開始剤は、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)を製造する際と同様に、従来公知の油溶性有機過酸化物、油溶性アゾ化合物などを含む。油溶性重合開始剤は、好ましくは油溶性アゾ化合物である。油溶性重合開始剤は、1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0045】
(連鎖移動剤)
上記第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)の分子量を調整するために、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)を製造する際と同様に、従来公知の連鎖移動剤を適宜使用することができる。連鎖移動剤は、メルカプタン類、α-メチルスチレンダイマーなどを含み、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。一方で、従来公知の連鎖移動剤を使用せずに、第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)を製造しても良い。
【0046】
(架橋剤(C))
一実施形態に係る粘着剤組成物は、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、架橋剤(C)0.01質量部以上、10質量部以下、好ましくは0.01質量部以上、4質量部以下で含有する。
【0047】
一実施形態に係る架橋剤(C)は、イソシアネート系化合物、金属キレート化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、及びメラミン系化合物の少なくともいずれかを含む。すなわち、架橋剤(C)は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0048】
なお、粘着剤組成物が含有する架橋剤(C)の配合量は、反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーの配合量及び種類に応じて決定されてもよい。架橋剤(C)の配合量が、上記質量部の範囲よりも少ない場合、粘着剤層の凝集力が低下し、高温耐久性条件下では、粘着剤層の発泡が発生するおそれがある。一方で、架橋剤(C)の配合量が、上記質量部の範囲を超える場合、粘着剤組成物の凝集力が過多となり、貼着する光学フィルムの剥れの原因になるおそれがあるので好ましくない。
【0049】
イソシアネート系化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物である。ポリイソシアネート化合物は、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどとトリメチロールプロパンなどとのアダクト体、イソシアヌレート化合物、ビュレット型化合物などを含む。ポリイソシアネート化合物は、好ましくは、トリレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートの化合物である。
【0050】
金属キレート化合物は、例えば、アルミニウムキレート、ジルコニウムキレート、チタニウムキレートなどの金属キレート化合物を含む。
【0051】
エポキシ化合物は、ビスフェノール型化合物、脂肪族グリシジルエーテル化合物、ビフェニル型化合物の他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂を含む。
【0052】
(帯電防止剤(D))
一実施形態に係る粘着剤組成物は、第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、帯電防止剤(D)1質量部以上、25質量部以下、好ましくは5質量部以上、25質量部以下で含有する。
【0053】
粘着剤組成物が上記質量部の範囲で帯電防止剤(D)を含有することで、優れた帯電防止性能と、高温環境での耐久性とを両立した粘着剤層を実現できる。粘着剤組成物が上記質量部の範囲よりも少ない帯電防止剤(D)を含有する場合、優れた帯電防止性能を粘着剤層に付与できないので好ましくない。一方で、粘着剤組成物が上記質量部の範囲よりも多い帯電防止剤(D)を含有する場合、粘着剤層の凝集力が低下し、耐久性に影響を及ぼす場合があるので好ましくない。
【0054】
一実施形態に係る帯電防止剤(D)は、フッ素或いはケイ素のいずれかを含有する化合物(但し、Mがアルカリ金属であるM+[(FSO2)2N]-で表示される化合物を含む場合を除く)である。
【0055】
帯電防止剤(D)は、例えば、エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチルメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、4-メチル-1-ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、4-メチル-1-ヘキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、4-メチル-1-オクチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、4-メチル-1-オクチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリブチルベンジルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ラウリルトリメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-オクチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェートなどを含む。帯電防止剤(D)は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0056】
(その他の添加剤)
粘着剤組成物は、シランカップリング剤(E)をさらに含有することができる。一方で、粘着剤組成物は、シランカップリング剤(E)を含有しなくてもよい。シランカップリング剤(E)は、公知のシランカップリング剤であってよい。一実施形態に係る粘着剤組成物は、第1のアクリル系共重合体(A)100質量部に対して、シランカップリング剤(E)0.01質量部以上、3.0質量部以下、好ましくは0.01質量部以上、1.5質量部以下で含有する。
【0057】
シランカップリング剤(E)は、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、エポキシ基含有アルコキシシランオリゴマーなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプト基含有アルコキシシランオリゴマーなどのメルカプト基含有シランカップリング剤、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤を含む。シランカップリング剤(E)は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0058】
粘着剤組成物は、粘着力を調整するなど必要な要求性能に応じて、種々の添加剤をさらに含有しても良い。添加剤は、例えば、テルペン系、テルペン-フェノール系、クマロンインデン系、スチレン系、ロジン系、キシレン系、フェノール系又は石油系などの粘着性付与樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料などである。添加剤は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0059】
(粘着剤層の表面抵抗率)
一実施形態に係る粘着剤組成物からなる粘着剤層の表面抵抗率は、8.0×108Ω/□未満、好ましくは7.5×108Ω/□未満である。
【0060】
ここで、従来の粘着剤組成物からなる粘着剤層は、粘着剤層の表面抵抗率を8.0×108Ω/□未満とするために、多量の帯電防止剤(D)を含有していた。しかし、粘着剤層の凝集力が低下し、高温(105℃または115℃)或いは高温高湿環境では、粘着剤層の耐久性が低下してしまう問題があった。
【0061】
これに対し、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層は、第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)の単量体組成として、アルコキシシリル基を有するモノマー(b3)成分を特定の割合で使用することにより、多量の帯電防止剤(D)を含有した場合であっても、粘着剤層の耐久性の低下が起こらない。しかし、粘着剤層が、アルコキシシリル基を有するモノマー(b3)を含有する第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)と多量の帯電防止剤(D)を含有した場合であっても、粘着剤層の低表面抵抗率(すなわち、高い帯電防止性能)を実現できないことが判明した。
【0062】
そこで、本発明の発明者は、粘着剤層が、アルコキシシリル基を有するモノマー(b3)を含有する第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)と、アルキレンオキシド基含有モノマー(a2)を含有する第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、多量の帯電防止剤(D)を含有した場合に、粘着剤層の低表面抵抗率を実現できることを見出した。つまり、粘着剤層の低表面抵抗率を実現するために、帯電防止剤(D)と、アルコキシシリル基を有するモノマー(b3)と、アルキレンオキシド基含有モノマー(a2)とのそれぞれの配合量のバランスを考慮して、それらを粘着剤組成物に含有させることが重要である。
【0063】
上記成分の配合量バランスを考慮した粘着剤組成物によれば、上述した厳しい耐久性条件であっても、基材から剥れず、発泡が発生しない粘着剤層を実現できる。また、粘着剤層は、粘着シートの剥離紙等を剥がした際に生じる静電気を抑え、偏光フィルムなどへの静電気の影響を低減するといった優れた効果を有する。
【0064】
なお、粘着剤層の表面抵抗率は、三菱ケミカルアナリテック社製の高抵抗率計(商品名:ハイレスタ-UX MCP-HT450)を用いて測定した値である。具体的には、離型フィルムに厚み20μmの粘着剤層を形成して評価サンプルが作製される。評価サンプルを測定用のサイズに切断した後、離型フィルムを剥がす。そして、温度23±2℃、湿度50±5%RHの恒温恒湿室に評価サンプルを格納する。高温高湿下で高抵抗率計を用いて評価サンプルの表面抵抗率は測定される。
【0065】
<粘着剤層>
本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層は、規定量の粘着剤組成物を離型フィルム上に塗布して、粘着剤組成物を硬化、乾燥させることで得られる。一実施形態に係る粘着剤層の厚さは、好ましくは10~50μm、より好ましくは10~25μmである。粘着剤層の厚さを上記厚さの範囲内とすることにより、耐久性と帯電防止性に優れた後述の粘着シートを形成できる。そして、本発明の粘着シートを用いて、例えば、液晶表示装置のガラス基板上に偏光板を貼着することで、ガラス基板と偏光板をしっかりと貼着できる。なお、粘着剤層は、任意の有機材料からなる被着材同士、任意の無機材料からなる被着材同士、又は任意の有機材料からなる被着材と任意の無機材料からなる被着材を接着できる。
【0066】
<粘着シート>
一実施形態に係る粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートは、偏光板を被着体(例えば、ガラス)に貼着する。粘着シートは、離型フィルムと離型フィルム上に形成された粘着剤層を有する。粘着剤層の一方の面は偏光板に貼着され、他方の粘着面は離型フィルム等に貼着される。粘着剤層の他方の粘着面に貼着している離型フィルム等を剥離する際、本発明の粘着シートは、帯電防止性能に優れるため、粘着面から離型フィルムを剥離した際に生じる静電気を抑制することができる。そして、離型フィルム等を剥離した後に粘着剤層の他方の粘着面を、例えば、ガラス基板の外面に貼り合わせる。これにより、静電気の発生によって引き起こされる液晶表示装置の構成品(例えば、液晶層、静電容量センサー)への悪影響を低減できる。
【0067】
さらに、本発明の粘着シートは、上記の優れた帯電防止性能を有するとともに、厳しい環境条件下での耐久性にも優れるといった効果を有する。例えば、高温(105℃または115℃)或いは高温高湿下の過酷な環境下において、粘着シートを用いてガラス基板に貼着した偏光板がガラス基板から剥がれず、粘着剤層に発泡が生じない。本発明の粘着シートを適用できる偏光板は、従来公知の偏光板である。偏光板は、例えば、無処理TACフィルムを使用した偏光板、ディスコティック液晶がコートされている又はコートされていない偏光板、延伸フィルム(例えば、延伸トリアセチルセルロース系フィルム、延伸ポリシクロオレフィン系フィルム又は延伸セルロースアセテートプロピオネートフィルム)を基材とした偏光板などを含む。
【0068】
離型フィルム等の上に粘着剤層が形成された形態の粘着シートは、以下の手順で製造され得る。通常の塗布装置(例えば、ロール塗布装置など)を用いて、シリコーン樹脂などの剥離剤を表面にコートしたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)などの離型フィルムに、規定量の粘着剤組成物を塗布し、それらを乾燥する。これにより、離型フィルム上に粘着剤層を形成した粘着シートが得られる。そして、離型フィルムと接していない側の粘着剤層の面に直ちに偏光板を貼り合わせても良い。あるいは、粘着剤層の両側に離型フィルムが存在している状態で粘着シートを保管し、必要に応じて離型フィルムを剥がして、粘着剤層を偏光板に貼り合せてもよい。また、粘着剤組成物の構成材料に応じて、加熱架橋或いは紫外線などで光硬化して粘着剤層を離型フィルム上に形成することができる。
【0069】
<粘着剤層付き光学フィルム>
本発明の粘着剤層付き光学フィルムは、光学フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を備える。一実施形態に係る光学フィルムは、例えば、ポリスチレン、スチレン-アクリル共重合体、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、トリアセチルセルロース等のプラスチックフィルム、反射防止フィルム、電磁波遮蔽フィルム等を含む。
【0070】
<表示装置>
本発明の表示装置は、上記の粘着剤層付き光学フィルムを備え、例えば、液晶表示装置、有機ELディスプレイである。液晶表示装置は、液晶セル(所定の方向に配向した液晶成分を2枚のガラス基板で挟んで構成される)のガラス基板の外面に、粘着剤組成物から形成された粘着剤層を介して偏光板又は偏光板と位相差板との積層体などを貼着してなるものである。有機ELディスプレイは、透明基材(ガラス)上に複数の有機EL素子を行列状に配置したものを備える。
【0071】
<粘着剤組成物の製造>
表1は、表2~9の略語の説明を示す。表2は、実施例1~20及び比較例1~10の第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)の原料配合を示す。表3は、実施例1~20の第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)の原料配合を示す。表4は、比較例1~10の第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)の原料配合を示す。表5は、実施例1~7の粘着剤組成物の原料配合を示す。表6は、実施例8~14の粘着剤組成物の原料配合を示す。表7は、実施例15~20の粘着剤組成物の原料配合を示す。表8は、比較例1~5の粘着剤組成物の原料配合を示す。表9は、比較例6~10の粘着剤組成物の原料配合を示す。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
(実施例1)
[第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)の製造]
表2の製造例1の原料配合に基づいて、攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、酢酸エチル140部、n-ブチルアクリレート70部、メチルアクリレート10部、フェノキシジエチレングリコールアクリレート20部、ヒドロキシエチルアクリレート2部、重合開始剤(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)0.05部を仕込む。これらを攪拌させながら、窒素ガス気流中において、55℃で7時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、固形分15.0質量%、重量平均分子量200万の第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)溶液A1を得た。
【0082】
[第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)の製造]
表3の製造例1の原料配合に基づいて、攪拌機、温度計、逐次滴下装置、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、トルエン80部、メチルエチルケトン20部、重合開始剤(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)0.3部を仕込む。一方、別の容器に、n-ブチルアクリレート35部、メチルアクリレート20部、フェノキシエチルアクリレート15部、3-メタクロキシプロピルトリメトキシシラン15部、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン15部とからなるモノマー混合物を用意した。上記反応装置を、窒素ガス気流中において、90℃に昇温し、別の容器に計量したモノマー混合物を、120分間かけて滴下させ、90℃で7時間重合反応を行う。反応が終了した後、冷却、トルエンで希釈して、固形分50質量%、重量平均分子量72,000の第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)溶液B1を得た。
【0083】
上記で得られた第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)溶液A1の固形分100部に対して、第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)溶液B1の固形分を9.0部および、架橋剤(C)として、三井化学社製、商品名:タケネートD-204を固形分で0.45部および、帯電防止剤として、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを18.5部および、シランカップリング剤(E)として、信越化学社製、商品名:X-41-1810 0.75部を添加して、充分に混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0084】
実施例2~20及び比較例1~10の粘着剤組成物は、表2~表9の原料配合に基づき、実施例1と同様の工程で得られた。
【0085】
<試験方法>
実施例1~20及び比較例1~10のそれぞれの粘着剤組成物を用いて、以下の試験例1~6を行い性能評価した。
【0086】
(試験準備 偏光板の作製)
粘着剤組成物を、シリコーン樹脂コートされたPETフィルム(離型性基材)上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶媒を除去し、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層を形成した面に、厚さ110μmの偏光フィルムを貼り合わせた後、23℃、50%RHの雰囲気で7日間養生することにより、サイズ80mm×150mmの評価用サンプルを作製した。
【0087】
(試験例1 105℃における耐久性評価)
評価用サンプル(すなわち、偏光板)のPETフィルムを剥がして粘着剤層面を露出させ、粘着剤層面をガラスに貼り付けた後、105℃(DRY)の雰囲気下に500時間放置した後、評価用サンプルの発泡および剥がれについて目視で確認し、以下の評価基準に基づいて耐久性を評価した。
[評価基準]
(1)発泡
○:偏光板に発泡が確認されない。
△:偏光板に発泡が僅かに確認された。
×:偏光板に発泡が確認された。
(2)剥れ
○:偏光板に剥れが確認されない。
△:偏光板に剥れが僅かに確認された。
×:偏光板に剥れが確認された。
【0088】
(試験例2 115℃における耐久性評価)
評価用サンプル(すなわち、偏光板)のPETフィルムを剥がして粘着剤層面を露出させ、粘着剤層面をガラスに貼り付けた後、115℃(DRY)の雰囲気下に500時間放置した後、評価用サンプルの発泡および剥がれについて目視で確認し、以下の評価基準に基づいて耐久性を評価した。
[評価基準]
(1)発泡
○:偏光板に発泡が確認されない。
△:偏光板に発泡が僅かに確認された。
×:偏光板に発泡が確認された。
(2)剥れ
○:偏光板に剥れが確認されない。
△:偏光板に剥れが僅かに確認された。
×:偏光板に剥れが確認された。
【0089】
(試験例3 85℃85%RHにおける耐久性評価)
評価用サンプル(すなわち、偏光板)のPETフィルムを剥がして粘着剤層面を露出させ、粘着剤層面をガラスに貼り付けた後、85℃85%RHの雰囲気下に500時間放置した後、評価用サンプルの発泡および剥がれについて目視により確認し、以下の評価基準に基づいて耐久性を評価した。
[評価基準]
(1)発泡
○:偏光板に発泡が確認されない。
△:偏光板に発泡が僅かに確認された。
×:偏光板に発泡が確認された。
(2)剥れ
○:偏光板に剥れが確認されない。
△:偏光板に剥れが僅かに確認された。
×:偏光板に剥れが確認された。
【0090】
(試験例4 リワーク性の評価)
評価用サンプル(すなわち、偏光板)のPETフィルムを剥がして粘着剤層面を露出させ、粘着剤層面をガラスに貼り付けた後、23℃50%RHの雰囲気下に30日放置した後、評価用サンプルをガラスから剥がしたときのガラス上の粘着剤層の残留状態を目視にて確認し、以下の評価基準に基づいてリワーク性を評価した。ここで、リワーク性とは、偏光板をガラスに貼着して長時間経過した後においても、偏光板をガラスから剥がすことができ、偏光板をガラスから剥がす際にガラスに粘着剤層が残留しない特性のことをいう。
[評価基準]
○:ガラス上に粘着剤層が残らない。
△:ガラス上に粘着剤層の一部が残る。
×:ガラス上に粘着剤層の大半が残る。
【0091】
(試験例5 表面抵抗率の測定)
評価用サンプル(すなわち、偏光板)のセパレーターを剥がして粘着剤層面を露出させ、23℃50%RHの室温条件下にて、三菱ケミカルアナリテック社製の高抵抗率計(商品名:ハイレスタ-UX MCP-HT450)及び測定電極を用いて、粘着剤層面の表面抵抗率(Ω/□)を計測した。
【0092】
(試験例6 基材密着性の評価)
評価用サンプル(すなわち、偏光板)の粘着剤層面を指で擦り、偏光フィルムから粘着剤層が脱落するまでの回数をカウントし、粘着剤層の基材(偏光フィルム)への密着性を評価した。
[試験結果の記載要領]
1~9:1~9回の指の擦りで粘着剤層が偏光フィルムから脱落する。
≧10:10回以上の指の擦りを行っても粘着剤層が偏光フィルムから脱落しない。
【0093】
<試験結果>
表10は、実施例1~7の試験結果を示す。表11は、実施例8~14の試験結果を示す。表12は、実施例15~20の試験結果を示す。表13は、比較例1~5の試験結果を示す。表14は、比較例6~10の試験結果を示す。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
表10~14の結果が示すように、実施例1~20の粘着剤組成物で形成した粘着剤層は、高温環境(105℃または115℃)及び高温高湿環境(85℃85%RH)での耐久性向上並びに低表面抵抗率(8.0×108Ω/□未満)を実現している。この理由は、実施例1~20の粘着剤組成物が、帯電防止剤(D)と、アルコキシシリル基を有するモノマー(b3)を構成単位として含有する第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)と、アルキレンオキシド基含有モノマー(a2)を構成単位として含有する第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)のそれぞれの配合量のバランスを考慮して、それらを含有しているためであると推察される。
【0100】
一方で、比較例1~10の粘着剤組成物で形成した粘着剤層は、高温環境(105℃または115℃)及び高温高湿環境(85℃85%RH)での耐久性向上並びに低表面抵抗率(8.0×108Ω/□未満)を実現できていない。
【0101】
また、実施例1~20の粘着剤層は、基材の一例である偏光フィルムとの密着性が高いため、表示装置の表示品質の低下を抑制することができる。
【0102】
以上の通り、本発明の粘着剤組成物は、高温環境での耐久性と帯電防止性を向上するといった顕著な効果を有する。
【0103】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【要約】
【課題】本発明は、高温環境での耐久性と帯電防止性を向上する粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)と、帯電防止剤(D)と、を含有する粘着剤組成物。前記粘着剤組成物は、前記第1の(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、前記第2の(メタ)アクリル系ポリマー(B)1質量部以上、50質量部以下で含有する。前記粘着剤組成物からなる層の表面抵抗率は、8.0×108Ω/□未満である。
【選択図】なし