(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】杭支持構造物及びその構築方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20221117BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
E02B3/06
E02D27/32 A
(21)【出願番号】P 2019197108
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】595059377
【氏名又は名称】株式会社日本ピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】石塚 新太
(72)【発明者】
【氏名】池野 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】川端 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 絵万
(72)【発明者】
【氏名】岩波 光保
(72)【発明者】
【氏名】前 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】天谷 公彦
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-167216(JP,A)
【文献】特開2018-168600(JP,A)
【文献】特開昭54-038606(JP,A)
【文献】特開2010-138643(JP,A)
【文献】特開2016-011535(JP,A)
【文献】特開2004-324330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
E02D 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭柱状体の頭部に接合される接合部材と、隣り合う該接合部材間に架設される既製梁部材とを備えている杭支持構造物において、
前記既製梁部材は、平板状の天板部と、該天板部の長手方向両側縁より垂下された側壁部と、該側壁部に埋設された梁部材シースとを備え、
前記接合部材は、前記頭部が挿入される杭接合部と、外側面より突出し、前記天板部の端部が載置される受棚部と、該受棚部の両側に開口し、前記梁部材シースと接続される接合部材シースとを備え、
前記梁部材シースと前記接合部材シースとに挿通したPC部材が緊張された状態で定着され、前記接合部材と前記既製梁部材とが接合されていることを特徴とする杭支持構造物。
【請求項2】
前記既製梁部材は、前記天板部と対向する底面部を備えた請求項1に記載の杭支持構造物。
【請求項3】
前記底面部は、両端部に前記受棚部が挿通される回避部が形成されている請求項2に記載の杭支持構造物。
【請求項4】
前記既製梁部材の内側にコンクリートが打設された請求項2又は3の何れか一に記載の杭支持構造物。
【請求項5】
前記接合部材は、前記杭柱状体と嵌合する鞘管を備え、前記接合部材シースは、前記鞘管の外側に配置されている請求項1~4の何れか一に記載の杭支持構造物。
【請求項6】
前記接合部材及び/又は前記側壁部は、その上面、下面及び/又は外側面に開口したシース接続用凹部を備え、該シース接続用凹部内で前記梁部材シースと前記接合部材シースとが接続される請求項1~5の何れか一に記載の杭支持構造物。
【請求項7】
前記既製梁部材及び/又は前記接合部材の接合面に突出した接合用シール材を備え、該接合用シール材に設けられた孔に前記梁部材シース又は前記接合部材シースが挿入され、該接合用シール材を介して前記梁部材シースと前記接合部材シースとが接続された請求項1~5の何れか一に記載の杭支持構造物。
【請求項8】
前記既製梁部材の前記側壁部の接合面に充填用枠部材が固定され、該充填用枠部材内に前記既製梁部材と前記接合部材との隙間を塞ぐ充填材が充填されている請求項1~7の何れか一に記載の杭支持構造物。
【請求項9】
前記接合部材は、前記杭接合部内に設けられ、前記杭柱状体の杭頭部に係合する支承部材を有する請求項1~8の何れか1に記載の杭支持構造物。
【請求項10】
平板状の天板部と、該天板部の両側縁より垂下された側壁部と、該側壁部に埋設された梁部材シースとを備えている既製梁部材を使用し、
外周面に受棚部が突設された接合部材を杭柱状体の頭部に接合させた後、
前記天板部の端部を隣り合う前記接合部材の外側面より突出した受棚部に支持させ、
前記梁部材シースと、前記受棚部の側部に開口した接合部材シースとを接続し、
しかる後、前記梁部材シースと前記接合部材シースとにPC部材を挿通し、該PC部材を緊張して定着することによって前記接合部材と前記既製梁部材を接合することを特徴とする杭支持構造物の構築方法。
【請求項11】
外周面に受棚部が突設された接合部材と、平板状の天板部と、該天板部の両側縁より垂下された側壁部と、該側壁部に埋設された梁部材シースとを備えている既製梁部材とを使用し、
前記天板部の端部を隣り合う前記接合部材の外側面より突出した受棚部に支持させ、
前記梁部材シースと、前記受棚部の側部に開口した接合部材シースとを接続し、前記梁部材シースと接合部材シースとにPC部材を挿通し、該PC部材を緊張して定着することによって前記接合部材と前記既製梁部材とを接合した後、
接合した前記接合部材と前記既製梁部材とを吊り上げ、前記接合部材を杭柱状体の頭部に接合させることを特徴とする杭支持構造物の構築方法。
【請求項12】
前記接合部材及び/又は前記側壁部の上面、下面及び/又は外側面に開口したシース接続用凹部を設けておき、該シース接続用凹部内で前記梁部材シースと前記接合部材シースとを接続する請求項10又は11に記載の杭支持構造物の構築方法。
【請求項13】
前記既製梁部材の前記側壁部の接合面に固定された充填用枠部材を前記接合部材の外側面に当接させ、該充填用枠部材内に充填材を充填して前記既製梁部材と前記接合部材との隙間を塞ぐ請求項10~12の何れか一に記載の杭支持構造物の構築方法。
【請求項14】
前記接合部材は、前記杭柱状体の外径より大きい内径の鞘管を有し、前記杭柱状体の水平方向における打設位置のずれを前記外径と前記内径の差で調整する請求項10~13のいずれかに記載の杭支持構造物の構築方法。
【請求項15】
前記接合部材に前記杭柱状体の頭部が挿入される杭接合部と、
該杭接合部内に突設された支承部材
とを備え、前記杭柱状体の垂直方向における打設位置のずれを前記支承部材の設置位置で調整する請求項10~14のいずれかに記載の杭支持構造物の構築方法。
【請求項16】
前記接合部材に前記杭柱状体の頭部が挿入される杭接合部を備え、
前記杭柱状体の杭頭部に前記杭接合部内に設置された支承部材と嵌合する切り欠き部を設け、該切り欠き部の切り欠き深さによって前記杭柱状体の垂直方向における打設位置のずれを調整する請求項10~14のいずれかに記載の杭支持構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プレキャストコンクリート部材を用いた高架橋、ドルフィンや桟橋等の杭支持構造物及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高架橋、ドルフィンや桟橋等の杭支持構造物は、水底地盤に打設された複数の鋼管杭と、鋼管杭に支持されたコンクリート製の上部工とを備えている。
【0003】
従来、コンクリート製の上部工は、各鋼管杭を打設した後、隣接する鋼管杭間に鉄骨の設置や鉄筋の配置等を行うとともに、鋼管杭に支持させた支保工を利用して鋼管杭間に型枠を形成し、コンクリートを場所打ちすることによって梁やスラブ等の上部工を形成するとともに上部工と鋼管杭の杭頭部とを接合していた。
【0004】
しかしながら、このような工法では、上部工を場所打ちコンクリートで形成するため、各作業を行うための作業足場や支保工の設置、鉄筋・鉄骨の配置、型枠の組立・解体、コンクリートの打設・養生等の全ての作業を水上や高所で行わなければならず、海象・気象条件等の影響が大きいとともに、工期が長期化するという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を鑑み、従来では、梁を構成する1又は複数のプレキャストコンクリート造のプレキャスト部材を予め陸上の工場又は製作ヤードで製造し、それを施工現場に搬送し、鋼管杭の頭部に当該プレキャスト部材を支持させ、その状態で杭頭部とプレキャスト部材との間にコンクリート等の充填材を打設することにより杭頭部にプレキャスト部材を接合させるようにした工法が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
この種の工法においては、例えば、プレキャスト部材に杭頭部が挿入される杭の外径よりも大きい孔状の杭挿入部と、杭挿入部内に突出した支承部材を設けておき、支承部材を鋼管杭の杭頭部に支持させることでプレキャスト部材を鋼管杭に仮支持させ、その状態で杭挿入部と鋼管杭との間にコンクリートを充填することによってプレキャスト部材が杭頭部に接合されるようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、上部工を支える杭の数が多い場合、上部工を構成するプレキャスト部材が大型化し、一般道を走行する車両の重量に制限があることから、運搬が困難なためにプレキャスト部材を施工現場より離れた工場で製作することが困難になる。
【0009】
よって、大型化したプレキャスト部材を製作するためには、施工現場の近隣に製作ヤードを設ける必要があり、製作ヤードの確保自体が困難であるとともに、設備投資を強いられるという課題を有している。
【0010】
また、プレキャスト部材が大型化すると、その設置作業には、中型若しくは大型の起重機や起重機船が必要となり、中・大型の起重機や起重機船の確保やその運用に係る費用において課題を有しており、比較的調達が容易な小型の起重機や起重機船を用いて施工できることが望ましい。
【0011】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、全てのプレキャスト部材を工場で製作でき、且つ、小型の起重機や起重機船を用いて施工可能な杭支持構造物及びその構築方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、杭柱状体の頭部に接合される接合部材と、隣り合う該接合部材間に架設される既製梁部材とを備えている杭支持構造物において、前記既製梁部材は、平板状の天板部と、該天板部の長手方向両側縁より垂下された側壁部と、該側壁部に埋設された梁部材シースとを備え、前記接合部材は、前記頭部が挿入される杭接合部と、外側面より突出し、前記天板部の端部が載置される受棚部と、該受棚部の両側に開口し、前記梁部材シースと接続される接合部材シースとを備え、前記梁部材シースと前記接合部材シースとに挿通したPC部材が緊張された状態で定着され、前記接合部材と前記既製梁部材とが接合されていることにある。
【0013】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記既製梁部材は、前記天板部と対向する底面部を備えたことにある。
【0014】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項2の構成に加え、前記底面部は、両端部に前記受棚部が挿通される回避部が形成されていることにある。
【0015】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項2又は3の何れか一の構成に加え、前記既製梁部材の内側にコンクリートが打設されたことにある。
【0016】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1~4の何れか一の構成に加え、前記接合部材は、前記杭柱状体と嵌合する鞘管を備え、前記接合部材シースは、前記鞘管の外側に配置されていることにある。
【0017】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項1~5の何れか一の構成に加え、前記接合部材及び/又は前記側壁部は、その上面、下面及び/又は外側面に開口したシース接続用凹部を備え、該シース接続用凹部内で前記梁部材シースと前記接合部材シースとが接続されることにある。
【0018】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項1~5の何れか一の構成に加え、前記既製梁部材及び/又は前記接合部材の接合面に突出した接合用シール材を備え、該接合用シール材に設けられた孔に前記梁部材シース又は前記接合部材シースが挿入され、該接合用シール材を介して前記梁部材シースと前記接合部材シースとが接続されたことにある。
【0019】
請求項8に記載の発明の特徴は、請求項1~7の何れか一の構成に加え、前記既製梁部材の前記側壁部の接合面に充填用枠部材が固定され、該充填用枠部材内に前記既製梁部材と前記接合部材との隙間を塞ぐ充填材が充填されていることにある。
【0020】
請求項9に記載の発明の特徴は、請求項1~8の何れか一の構成に加え、前記接合部材は、前記杭接合部内に設けられ、前記杭柱状体の杭頭部に係合する支承部材を有することにある。
【0021】
請求項10に記載の発明の特徴は、平板状の天板部と、該天板部の両側縁より垂下された側壁部と、該側壁部に埋設された梁部材シースとを備えている既製梁部材を使用し、外周面に受棚部が突設された接合部材を杭柱状体の頭部に接合させた後、前記天板部の端部を隣り合う前記接合部材の外側面より突出した受棚部に支持させ、前記梁部材シースと、前記受棚部の側部に開口した接合部材シースとを接続し、しかる後、前記梁部材シースと前記接合部材シースとにPC部材を挿通し、該PC部材を緊張して定着することによって前記接合部材と前記既製梁部材を接合する杭支持構造物の構築方法にある。
【0022】
請求項11に記載の発明の特徴は、外周面に受棚部が突設された接合部材と、平板状の天板部と、該天板部の両側縁より垂下された側壁部と、該側壁部に埋設された梁部材シースとを備えている既製梁部材とを使用し、前記天板部の端部を隣り合う前記接合部材の外側面より突出した受棚部に支持させ、前記梁部材シースと、前記受棚部の側部に開口した接合部材シースとを接続し、前記梁部材シースと前記接合部材シースとにPC部材を挿通し、該PC部材を緊張して定着することによって前記接合部材と前記既製梁部材とを接合した後、接合した前記接合部材と前記既製梁部材とを吊り上げ、前記接合部材を杭柱状体の頭部に接合させる杭支持構造物の構築方法にある。
【0023】
請求項12に記載の発明の特徴は、請求項10又は11の構成に加え、前記接合部材及び/又は前記側壁部の上面、下面及び/又は外側面に開口したシース接続用凹部を設けておき、該シース接続用凹部内で前記梁部材シースと前記接合部材シースとを接続することにある。
【0024】
請求項13に記載の発明の特徴は、請求項10~12の何れか一の構成に加え、前記既製梁部材の前記側壁部の接合面に固定された充填用枠部材を前記接合部材の外側面に当接させ、該充填用枠部材内に充填材を充填して前記既製梁部材と前記接合部材との隙間を塞ぐことにある。
【0025】
請求項14に記載の発明の特徴は、請求項10~13の何れか一の構成に加え、前記接合部材は、前記杭柱状体の外径より大きい内径の鞘管を有し、前記杭柱状体の水平方向における打設位置のずれを前記外径と前記内径の差で調整することにある。
【0026】
請求項15に記載の発明の特徴は、請求項10~14の何れか一の構成に加え、前記接合部材に前記杭柱状体の頭部が挿入される杭接合部と、該杭接合部内に突設された支承部材とを備え、前記杭柱状体の垂直方向における打設位置のずれを前記支承部材の設置位置で調整することにある。
【0027】
請求項16に記載の発明の特徴は、請求項10~14の何れか一の構成に加え、前記接合部材に前記杭柱状体の頭部が挿入される杭接合部を備え、前記杭柱状体の杭頭部に前記杭接合部内に設置された支承部材と嵌合する切り欠き部を設け、該切り欠き部の切り欠き深さによって前記杭柱状体の垂直方向における打設位置のずれを調整することにある。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る杭支持構造物は、請求項1の構成を具備することによって、梁部を構成するプレキャスト部材の軽量化を実現し、施工現場から離れた工場等からの輸送を容易にし、且つ、中・大型の起重機や起重機船等を用いずに効率よく構築することができる。また、既製梁部材の軽量化によって上部工全体が軽量化され、その分、杭支持構造物に作用する慣性力も小さなものとなるので、上部工を支持する杭柱状体の本数を低減することができる。さらに、既製梁部材を仮設置した段階で波浪等によって杭柱状体が揺動した場合であっても、既製梁部材の脱落を防止することができる。
【0029】
また、本発明において、請求項2の構成を具備することによって、高い曲げ耐力及びせん断抵抗を得ることができる。
【0030】
さらに、本発明において、請求項3の構成を具備することによって、底板部を有する既製梁部材の天板部端部を円滑に支承部材の受棚部に載置することができる。
【0031】
さらにまた、本発明において、請求項4の構成を具備することによって、梁部の構造を強固なものとすることができる。
【0032】
さらにまた、本発明において、請求項5の構成を具備することによって、杭柱状体の頭部に接合部材を好適に拘束できる。
【0033】
また、本発明において、請求項6乃至7の構成を具備することによって、梁部材シースと接合部材シースとの連結を効率よく行うことができる。
【0034】
さらに、本発明において、請求項8の構成を具備することによって、接合部材と既製梁部材との隙間に好適にグラウト等の充填材を充填することができる。
【0035】
さらにまた、本発明において請求項9の構成を具備することによって、接合部材を杭柱状体の頭部に好適に載荷させることができるとともに、支承部材の取り付け位置によって杭柱状体の打設高さのズレを吸収することができる。
【0036】
また、本発明に係る杭支持構造物の構築方法は、請求項10に記載の構成を具備することによって、梁部を構成するプレキャスト部材の軽量化を実現し、施工現場から離れた工場等からの輸送を容易にし、且つ、中・大型の起重機や起重機船等を用いずに効率よく構築することができる。また、既製梁部材を仮設置した段階で波浪等によって杭柱状体が揺動した場合であっても、既製梁部材の脱落を防止することができる。
【0037】
また、本発明に係る杭支持構造物の構築方法は、請求項11に記載の構成を具備することによって、効率よく上部工を形成することができる。
【0038】
さらに、本発明は、請求項12に記載の構成を具備することによって、梁部材シースと接合部材シースとの連結を効率よく行うことができる。
【0039】
また、本発明は、請求項13に記載の構成を具備することによって、接合部材と既製梁部材との隙間に好適にグラウト等の充填材を充填することができる。
【0040】
さらにまた、請求項14に記載の構成を具備することによって、接合部材を水平方向における適正な位置に設置することができる。
【0041】
さらにまた、請求項15乃至16に記載の構成を具備することによって、接合部材を適正な高さに設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に係る杭支持構造物の一例を示す正面図である。
【
図2】同上の杭柱状体との接合部を示す拡大平面図である。
【
図5】(a)は
図1中の既製梁部材の一例を示す正面図、(b)は同端部の平面図、(c)は同端部の側面図である。
【
図6】(a)は
図1中の既製梁部材の他の一例を示す正面図、(b)は同端部の側面図である。
【
図7】(a)は
図1中の既製梁部材のさらに他の一例を示す正面図、(b)は同端部の側面図である。
【
図8】(a)は
図1中の既製梁部材の他の一例を示す正面図、(b)は同端部の縦断面図である。
【
図9】(a)は
図1中の接合部材の一例を示す平面図、(b)は同正面図、(c)は同縦断面図である。
【
図10】本発明に係る杭支持構造物の構築方法における作業手順を示す正面図であって、(a)は杭柱状体を打設した状態、(b)は同杭柱状体に接合部材を設置した状態、(c)は既製梁部材の設置作業の状態を示す図である。
【
図11】は同上の既製梁部材の設置作業の状態を示す拡大斜視図である。
【
図12】同上のシース間の接合作業の状態を説明する図であって、既製梁部材の設置作業の状態を示す拡大断面図である。
【
図13】同上のジョイントシースを接続した状態を示す拡大断面図である。
【
図14】同上のPC部材を挿通した状態を示す拡大断面図である。
【
図15】本発明に係る杭支持構造物の構築方法における作業手順を示す正面図であって、(a)はプレストレス導入時の状態を示す図、(b)は完成時の状態を示す図である。
【
図16】(a)は同上のグラウト充填時の状態を示す側面図、(b)は同B-B線矢視断面図である。
【
図17】シース間の接合態様の他の態様を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、本発明に係る杭支持構造物の実施態様を
図1~
図9に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は桟橋等の杭支持構造物、符号2は水底地盤、符号3は水面である。
【0044】
杭支持構造物1は、
図1に示すように、水底地盤2に打設された複数の鋼管杭等の杭柱状体4,4…と、杭柱状体4,4…に支持されたコンクリート造の梁部5とを備え、梁部5上に床版部6が形成され、梁部5と床版部6とで桟橋の上部工7を成している。
【0045】
また、この杭支持構造物1は、
図2~
図4に示すように、各杭柱状体4,4…の頭部に接合されたプレキャストコンクリート製の接合部材8と、隣り合う接合部材8,8間に架設されるプレキャストコンクリート製の既製梁部材9,9とを備え、接合部材8と既製梁部材9,9とがプレストレスによって接合され、格子状の梁部5が形成されている。
【0046】
杭柱状体4は、鋼管杭やPHC杭等(本実施例では鋼管杭)であって、縦向きの中空筒状に形成され、各杭柱状体4,4…の頭部に接合部材8が接合される。
【0047】
また、杭柱状体4は、必要に応じて杭頭部外周面、具体的には接合部材8が載荷される部分に上下方向に間隔を置いて複数のシアキー10,10が溶接によって固定されている。
【0048】
さらに、この杭柱状体4には、上端より所定の深さにコンクリート打設用の底型枠11が備えられている。
【0049】
既製梁部材9は、
図5に示すように、工場等で製作されたプレキャストコンクリート部材であって、平板状の天板部12と、天板部12の長手方向両側縁より垂下された側壁部13,13と、側壁部13,13に埋設された梁部材シース14,14とを備えている。
【0050】
側壁部13は、互いに対向する内側面13aが下側に向けて互いの距離が拡開するように傾斜し、既製梁部材9が後述する受棚部26に対し適正な位置に誘導されるようになっている。
【0051】
各側壁部13,13には、長手方向に向けた複数の梁部材シース14,14が上下に間隔をおいて埋設され、後述する接合部材8に埋設された接合部材シース15,15と互いに連結されるようになっている。
【0052】
尚、図中符号16は梁部材シース14と接合部材シース15とを連結するジョイントシースであって、梁部材シース14及び接合部材シース15の内径よりも外径が小さく、梁部材シース14又は接合部材シース15の何れか一方の内部に進退可能に収容され、連結時に引き出されて他方のシースと嵌合するようになっている。
【0053】
また、側壁部13,13の接合側端部には、その上面又は外側面の少なくとも一方に開口したシース接続用凹部17,18を備え、このシース接続用凹部17,18内に側壁部13に埋設された梁部材シース14の端部が配置されている。
【0054】
シース接続用凹部17は、天板部12の上面長手方向端部に開口し、上側の梁部材シース14の深さまで至る縦溝状に形成され、シース接続用凹部18は、側壁部13の外側面長手方向端部に開口した横穴状に形成されている。
【0055】
また、各シース接続用凹部17,18は、それぞれ接合面側にも開口し、接合面側の開口を通して接合部材シース15,15と連結されるようになっている。
【0056】
尚、シース接続用凹部17,18は、上述の実施例に限定されず、例えば、
図6に示すように、上下ともに側壁部13,13の外側面長手方向端部に開口したシース接続用凹部18,18であってもよく、
図7に示すように、上面長手方向端部に開口し、且つ、下側の梁部材シース14まで至る深さに形成したシース接続用凹部19であってもよい。さらには、特に図示しないが、側壁部13の下面側長手方向端部に開口したものであってもよい。
【0057】
また、側壁部13,13の接合面には、その接合面の上縁を除く周縁、即ち、外側縁、下縁、内側縁及び天板部内側面に連続した充填用枠部材20が固定され、上側から充填用枠部材20内に既製梁部材9と接合部材8との隙間を塞ぐグラウト等の充填材21が充填されている。なお、天板部内側面の充填用枠部材20の固定範囲は、内側面13aの端部より接合部材8の受棚部26と重なる部分を含んでいればよい。
【0058】
充填用枠部材20は、ゴムやその他の弾性材によって構成され、既製梁部材9と接合部材8との接合面を重ね合わせることによって、既製梁部材9と接合部材8との隙間が封鎖されるようになっている。なお、充填用枠部材20に、ゴムやその他の弾性材に変えてコンパネ等の従前の型枠材を用いるようにしてもよい。
【0059】
尚、上述の実施例では、既製梁部材9,9を断面逆U字状とした例について説明したが、
図8に示すように、天板部12と対向する底面部22を備えた断面ロ字状に形成してもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
また、その場合には、底面部22の両端部に後述する受棚部26,26…が挿通される矩形切り欠き状の回避部22a,22aが形成されていることが望ましい。
【0061】
さらに、
図8に示すように、断面ロ字状としたときには、底面部22の両端部から天板部12まで至る壁体23を設け、ロ字状開口部を閉鎖し、既製梁部材9内に海水等が入らないようにしてもよい。
【0062】
接合部材8は、
図9に示すように、コンクリートによって一体に形成され、四方に外側面が配置された直方体状の本体部24と、杭柱状体4の頭部が挿入される杭接合部25と、本体部24の各外側面より突出した受棚部26,26…と、受棚部26,26…の両側に開口するように埋設された接合部材シース15,15とを備えている。
【0063】
杭接合部25は、本体部24の上下に貫通した丸孔状に形成され、その内側に鞘管27を備え、この鞘管27内に杭柱状体4の頭部が嵌まり込み、鞘管27内に打設されたグラウト28によって、杭頭部と接合されている。
【0064】
鞘管27は、内径が杭柱状体4の外径より大きく、具体的には、杭柱状体4の水平方向における打設位置のずれの公差に合わせた内径となっている。
【0065】
また、鞘管27の上部内周面には、周方向に間隔をおいて複数の支承部材29,29…が突設され、この支承部材29,29…が杭柱状体4の上端面と係合することによって、接合部材8が杭柱状体4の杭頭部に載置できるようになっている。
【0066】
さらに、鞘管27の内周面には、必要に応じて上下方向に間隔を置いて複数のシアキー30,30が溶接によって固定されている。
【0067】
受棚部26は、上面に平坦な支持面26aを有し、幅が既製梁部材9,9の両側壁部内側面13a,13aの上端間距離と略同じ又はやや狭い棚状に形成され、支持面26aが本体部24の上面より既製梁部材9,9の天板部12厚さ分だけ下がった位置となるように突設されている。
【0068】
尚、受棚部26,26…は、軽量化のため支持面26aの突出方向端縁より下向きに傾斜した傾斜面を有する形状を例に示すが、上面に既製梁部材9の天板部12端部を支持する支持面を備えていればよく、例えば、直方体状に形成してもよい。
【0069】
接合部材シース15,15は、それぞれ鞘管27の外側に配置され、受棚部26,26…の両側に開口し、且つ、上下方向に間隔をおいて本体部24内に埋設されている。
【0070】
尚、交差する各接合部材シース15,15は、交差する方向で互いに干渉しないように高さ位置をずらして配置され、それぞれ接合される既製梁部材9,9の梁部材シース14,14の位置と整合するように配置されている。
【0071】
各接合部材8と既製梁部材9,9とは、連通した梁部材シース14,14と接合部材シース15,15とにPC部材31が挿通され、PC部材31を緊張した状態で定着することによって、接合部材8と既製梁部材9,9との間にプレストレスが付与され、互いに接合されている。
【0072】
PC部材31は、PC鋼棒、PC鋼線、PC鋼より線の他、鋼線以外の線材等を使用することができる。
【0073】
次に、このような杭支持構造物の構築方法について
図10~
図16に基づいて説明する。
【0074】
事前準備として、予め工場等で既製梁部材9,9及び接合部材8を製作し、これを施工現場付近までトラック等の輸送手段によって運搬する。
【0075】
尚、既製梁部材9,9は、
図5等に示すように、天板部12及び側壁部13,13を有する断面逆U字状に形成したことによって、従来の矩形断面を有する既製梁部材9,9と比べて軽量化されるので、トラック等の輸送手段による輸送が容易となっており、施工現場から離れた工場等での製作が可能となっている。
【0076】
また、接合部材8は、各杭柱状体4に接合する部分のみを負担する部分であるので十分に小型軽量化されており、トラック等の輸送手段による輸送が容易となっており、施工現場から離れた工場等での製作が可能となっている。
【0077】
施工現場においては、先ず、
図10(a)、に示すように、所定の位置に杭柱状体4,4…を水底地盤2に打設するとともに、杭柱状体4,4…の上端側を水面3より突出した状態とする。
【0078】
そして、各杭柱状体4,4…の打設が完了したら、
図3に示すように、各杭柱状体4,4…の上端より所定の深さに底型枠11を設置する。
【0079】
次に、接合部材8をクレーン等で吊り上げ、各受棚部26,26…の方向を調整しつつ、各杭柱状体4,4…の頭部に上方から下降させ、
図10(b)に示すように、鞘管27を杭柱状体4の頭部に嵌合させるとともに、支承部材29,29…を杭柱状体4の上端面に支持させ、接合部材8を杭柱状体4に仮支持させる。
【0080】
その際、杭柱状体4の外径に対し、鞘管27が大きく形成されているので、杭柱状体4が水平方向の打設位置ズレを生じている場合、杭柱状体4に対し鞘管27をやや偏心した位置に設置することで水平方向の打設位置のズレを吸収し、適正な位置に接合部材8を設置することができる。
【0081】
また、鞘管27の内面に固定される支承部材29,29…の高さ位置を調整することによって、杭柱状体4の垂直方向における打設位置のずれを調整することができる。
【0082】
支承部材の態様は、上述の実施例に限定されず、例えば、鞘管27内にH型鋼等を架け渡した状態に設け、杭柱状体4の杭頭部に設けた切り欠け部と嵌合させてもよい。その場合、H型鋼を嵌合させる切り欠け部の切り欠け深さを調整することで杭柱状体4の垂直方向における打設位置のずれを調整することができる。
【0083】
なお、上述の実施例における鞘管27の内面への支承部材29の固定作業およびH型鋼等を使用する際の切り欠け部の切り欠け長の調整作業は、現場で杭柱状体4の打設位置を確認してから切かけ部長を調整することで、より適正な位置に接合部材8を設置することができる。
【0084】
そして、接合部材8の杭柱状体4への仮支持が完了したら、杭柱状体4と鞘管27下端開口との間を封止部材(図示せず)によって封鎖し、杭柱状体4と鞘管27との間の間隙に高流動コンクリート又はグラウト等の充填材32を充填し、杭柱状体4に接合部材8を固定する。なお、充填材32は、杭柱状体4の上方から充填できるため、作業が容易で的確に充填することができる。
【0085】
次に、既製梁部材9,9をクレーン等によって吊り上げ、隣り合う各杭柱状体4,4…に接合された接合部材8,8間の上方に移動させ、
図10(c)、
図11、
図12に示すように、その位置で下降させる。
【0086】
既製梁部材9は、下降によって両側壁部13,13が受棚部26,26…の両側部に挿し込まれるとともに、天板部12の両端部がそれぞれ隣り合う接合部材8の受棚部26,26…の支持面に載置され、各杭柱状体4,4…に接合された接合部材8,8間に架設される。
【0087】
その際、既製梁部材9の側壁部13,13の傾斜した内側面13aによって案内され、接合部材8と既製梁部材9,9とが互いに所定の位置に誘導され、梁部材シース14,14と接合部材シース15,15との位置合わせがされる。
【0088】
尚、既成梁部材9を接合部材8に載荷させた際、既成梁部材9の側壁部内側面13aと接合部材8の受棚部26の側面間には間隙が生じた状態となっている。当該間隙を残したままとすると梁下部より海水等を受けた際に海水が抜け難く、錆等による劣化の原因となりやすいことから、当該間隙をグラウトで充填することが望ましい。また、グラウトによる当該間隙の充填に代え、事前に受棚部26の側面に当該間隙に合致する寸法でゴムを貼り付けておいてから既設梁部材9を受棚部26に載荷するようにしても良い。
【0089】
また、グラウトによる充填、ゴムの貼り付けに代えて、撥水性塗料を塗布してもよい。なお、撥水性塗料を塗布する際、既成梁部材9の側丙内側13aの塗布面は、接合部材8の受棚部26の側面のとおりではなく、受棚部26の側面部相当以上であればよい。
【0090】
次に、
図13に示すように、シース接続用凹部17,18内において作業員がジョイントシース16を梁部材シース14,14より引き出し、ジョイントシース16を接合部材シース15,15に連結する。
【0091】
これによって、梁部5を構成する複数の既製梁部材9,9及び複数の接合部材8を貫通した連続したシースが形成される。
【0092】
次に、
図16に示すように、側壁部13,13の外側面に開口したシース接続用凹部18の開口部を閉鎖板33によって閉鎖する。その際、閉鎖版33は、既製梁部材9に予めインサート部材34aを埋設しておきボルト34bによって固定してもよく、シース接続用凹部18内に設置したセパレータによって固定してもよい。尚、図中符号35はグラウト注入口、符号36は空気抜き孔である。
【0093】
次に、
図15(b)、
図16に示すように、上面側から接合部材8と既製梁部材9,9との隙間にグラウト等の充填材21を充填するとともに、シース接続用凹部17,18内にもグラウト等の充填材21を充填する。
【0094】
その際、上面が開口したシース接続用凹部17には、接合面側の開口及び上面の開口より充填材21を注入し、側壁部13,13の外側面に開口したシース接続用凹部18には、接合面側の開口より充填するとともに、空気抜き孔36から空気を抜きつつグラウト注入口35より充填材21を注入する。
【0095】
次に、
図14、
図15(a)に示すように、梁部5を構成する複数の既製梁部材9,9及び複数の接合部材8を貫通した連続したシースにPC部材31を挿通し、このPC部材31を緊張した状態でその両端部を梁部5の端部を構成する接合部材8に定着するか、接合部材8に定着用ブロック(特に図示せず)を接合してその定着用ブロックに定着し、隣り合う各接合部材8と既製梁部材9,9との間にプレストレスを付与する。
【0096】
そして、梁部5を構成する複数の既製梁部材9,9及び複数の接合部材8を貫通した連続したシース内にグラウトを注入・固化させる。
【0097】
次に、
図3、
図15(b)に示すように、鞘管27の上方からグラウト28を打設し、杭柱状体4,4…内及び鞘管27内にコンクリートを充填する。
【0098】
そして、打設したコンクリートを養生・固化させることによって杭柱状体4と接合部材8とが接合され、梁部5が形成され、プレキャストコンクリート床版又は場所打ちコンクリートによって床版部6を形成し、杭支持構造物1が構築される。
【0099】
このように構成された杭支持構造物1は、既製梁部材9,9が天板部12及び側壁部13,13を有する断面逆U字状又はロ字状に形成されているので、従来の断面矩形状のプレキャスト部材に比べて軽量化され、工場等からの輸送が容易となるとともに、小型の起重機又は起重機船でも施工可能となるので、効率よく施工できるとともに施工費用の低減を図ることができる。
【0100】
また、この杭支持構造物1では、既製梁部材9,9の軽量化に伴い、上部工全体が軽量化され、その分、杭支持構造物1に作用する慣性力も小さなものとなるので、上部工を支持する杭柱状体4の本数を低減することができる。
【0101】
さらに、この杭支持構造物1では、受棚部26,26…の側方に既製梁部材9,9の側壁部13,13が差し込まれるので、側壁部13,13の内側面13a,13aに案内されて既製梁部材9,9を受棚部26の所定の位置に誘導することができるとともに、架設した後、接合部材8と既製梁部材9,9とが一体化される前段階において、波浪等によって杭柱状体4が揺動した場合であっても既製梁部材9,9の脱落を防止することができる。
【0102】
さらにまた、この杭支持構造物1では、既製梁部材9,9の端部を受棚部26,26…で支持したことによって、供用時に上部工に作用する上載荷重に対し、高いせん断抵抗を得ることができる。
【0103】
尚、上述の実施例では、既製梁部材9,9の内側が空洞の状態のものについて説明したが、底板部22を設ける場合には、必要に応じて既製梁部材9,9の断面ロ字状の内側にコンクリートを打設してもよい。
【0104】
また、上述の実施例では、先に接合部材8を各杭柱状体4に接合し、その後に杭柱状体4に接合された各接合部材8,8間に既製梁部材9を架設し、しかる後にプレストレスを付与する場合について説明したが、先に接合部材8と既製梁部材9とを接合して梁状のブロック体を形成し、しかる後、ブロック体を吊り上げ杭柱状体に接合させてもよい。
【0105】
即ち、施工現場付近の製作ヤードにおいて、天板部13の端部を隣り合う接合部材8,8の受棚部26に支持させ、梁部材シース14と接合部材シース15とジョイントシース16を介して接続し、連通した梁部材シース14と接合部材シース15とにPC部材31を挿通し、PC部材31を緊張して定着することによって接合部材8と既製梁部材9とを接合してブロック体を形成し、しかる後、接合した接合部材8と既製梁部材9とからなるブロック体を吊り上げ、ブロック体の接合部材8を杭柱状体4の頭部に接合させるようにしてもよい。
【0106】
この実施形態は、施工性が向上するとともに、地上部でブロック体を形成するため品質面および安全面でも効果的である。
【0107】
尚、上述の実施例では、既製梁部材9の側壁部13に設けたシース接続用凹部17,18を使用して、梁部材シース14と接合部材シース15とが接続される例について説明したが、シース接続用凹部は、接合部材8に設けてもよい。
【0108】
また、梁部材シース14と接合部材シース15との接続は、シース接続用凹部を設けず、
図17に示すように、既製梁部材9の接合面に突出した接合用シール材37を備え、接合用シール材37に設けられたシース材14の外径より大きな内径を有する孔に梁部材シース14の先端部を挿入しておき、接合用シール材37を介して梁部材シース14と接合部材シース15とが接続されるようにしてもよい。尚、接合用シール材37は、接合部材8側に設けてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 杭支持構造物
2 水底地盤
3 水面
4 杭柱状体
5 梁部
6 床版部
7 上部工
8 接合部材
9 既製梁部材
10 シアキー
11 底型枠
12 天板部
13 側壁部
14 梁部材シース
15 接合部材シース
16 ジョイントシース
17 シース接続用凹部
18 シース接続用凹部
19 シース接続用凹部
20 充填用枠部材
21 充填材
22 底面部
22a 回避部
23 壁体
24 本体部
25 杭接合部
26 受棚部
27 鞘管
28 場所打ちコンクリート
29 支承部材
30 シアキー
31 PC部材
32 充填材
33 閉鎖板
34 セパレータ
35 グラウト注入口
36 空気抜き孔
37 接合用シール材