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特許7178057医療情報提供システム、医療情報提供方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】医療情報提供システム、医療情報提供方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20221117BHJP
   G16H 10/00 20180101ALI20221117BHJP
【FI】
G16H20/10
G16H10/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021078103
(22)【出願日】2021-04-30
(62)【分割の表示】P 2019141991の分割
【原出願日】2017-02-28
(65)【公開番号】P2021108225
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2016038643
(32)【優先日】2016-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】509222567
【氏名又は名称】株式会社メディファーム
(73)【特許権者】
【識別番号】596079138
【氏名又は名称】東日本メディコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】石井 伊都子
(72)【発明者】
【氏名】横山 威一郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅教
(72)【発明者】
【氏名】野本 禎
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-035210(JP,A)
【文献】特開2013-220184(JP,A)
【文献】特開2012-133564(JP,A)
【文献】特開平09-294802(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0166222(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0144884(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0236683(US,A1)
【文献】国際公開第2001/069510(WO,A1)
【文献】鶴田 洋平 ほか,処方せん記載への取り組み ~内服薬1回量と臨床検査値記載の導入~,第32回医療情報学連合大会論文集,日本医療情報学会,2012年11月14日,p.1156~1158
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 20/10
G16H 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる患者の処方箋のデータを記憶するシステムまたは前記処方箋のデータを入力する入力手段を介して、当該患者の処方箋のデータを取得する処方箋情報取得手段と、
処方に際して検査を要する薬剤の検査に関する情報が格納された薬剤検査情報データベースを検索することにより、前記処方箋のデータにおいて処方に際して検査を要する薬剤が含まれているか否かを判定する検査要否判定手段と、
前記検査要否判定手段によって、前記処方箋のデータに含まれる薬剤に、処方に際して検査を要する薬剤が含まれていると判定された場合に、前記対象となる患者の検査結果のデータを取得する検査結果データ取得手段と、
前記処方箋情報取得手段によって取得された前記処方箋のデータと、前記検査結果データ取得手段によって取得された検査結果のデータとを併せて印刷媒体または電子データとして出力する情報出力手段と、
を備え
前記情報出力手段は、
患者に関する情報を表す患者情報領域と、
処方箋を発行した医療機関を表す医療機関情報領域と、
処方された薬剤に関わらず複数の患者に共通する検査値である固定検査値のデータを表す固定検査値領域と、
前記患者に処方された薬剤のうち、処方に際して検査を要する薬剤に関連する検査値である医薬品別検査値のデータを、当該患者の過去の推移を識別して表す医薬品別検査値領域と、
を含む印刷媒体または電子データを出力する ことを特徴とする医療情報提供システム。
【請求項2】
前記検査結果データ取得手段は、
前記対象となる患者の過去の所定回数の検査結果のデータを取得し、
前記情報出力手段は、
前記対象となる患者の過去の所定回数の検査結果のデータの変化を含む印刷媒体または電子データを出力することを特徴とする請求項1に記載の医療情報提供システム。
【請求項3】
前記検査結果データ取得手段は、
前記対象となる患者の過去の検査結果のデータにおいて、検査結果に有効期間が設定されている場合、当該有効期間内のデータを取得し、
前記情報出力手段は、
前記対象となる患者の過去の検査結果のデータにおいて、前記有効期間内のデータが表す傾向を含む印刷媒体または電子データを出力することを特徴とする請求項1または2に記載の医療情報提供システム。
【請求項4】
前記情報出力手段は、
前記対象となる患者の過去の検査結果のデータにおいて、処方に際して検査を要する薬剤に関連する検査値が基準範囲にない場合、当該検査値が基準範囲にないことが識別表示される印刷媒体または電子データを出力することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の医療情報提供システム。
【請求項5】
医療情報提供システムが実行する医療情報提供方法であって、
対象となる患者の処方箋のデータを記憶するシステムまたは前記処方箋のデータを入力する入力手段を介して、当該患者の処方箋のデータを取得する処方箋情報取得ステップと、
処方に際して検査を要する薬剤の検査に関する情報が格納された薬剤検査情報データベースを検索することにより、前記処方箋のデータにおいて処方に際して検査を要する薬剤が含まれているか否かを判定する検査要否判定ステップと、
前記検査要否判定ステップにおいて、前記処方箋のデータに含まれる薬剤に、処方に際して検査を要する薬剤が含まれていると判定された場合に、前記対象となる患者の検査結果のデータを取得する検査結果データ取得ステップと、
前記処方箋情報取得ステップにおいて取得された前記処方箋のデータと、前記検査結果データ取得ステップにおいて取得された検査結果のデータとを併せて印刷媒体または電子データとして出力する情報出力ステップと、
を含み、
前記情報出力ステップでは、
患者に関する情報を表す患者情報領域と、
処方箋を発行した医療機関を表す医療機関情報領域と、
処方された薬剤に関わらず複数の患者に共通する検査値である固定検査値のデータを表す固定検査値領域と、
前記患者に処方された薬剤のうち、処方に際して検査を要する薬剤に関連する検査値である医薬品別検査値のデータを、当該患者の過去の推移を識別して表す医薬品別検査値領域と、
を含む印刷媒体または電子データを出力する ことを特徴とする医療情報提供方法。
【請求項6】
医療情報提供システムを構成するコンピュータに、
対象となる患者の処方箋のデータを記憶するシステムまたは前記処方箋のデータを入力する入力手段を介して、当該患者の処方箋のデータを取得する処方箋情報取得機能と、
処方に際して検査を要する薬剤の検査に関する情報が格納された薬剤検査情報データベースを検索することにより、前記処方箋のデータにおいて処方に際して検査を要する薬剤が含まれているか否かを判定する検査要否判定機能と、
前記検査要否判定機能によって、前記処方箋のデータに含まれる薬剤に、処方に際して検査を要する薬剤が含まれていると判定された場合に、前記対象となる患者の検査結果のデータを取得する検査結果データ取得機能と、
前記処方箋情報取得機能によって取得された前記処方箋のデータと、前記検査結果データ取得機能によって取得された検査結果のデータとを併せて印刷媒体または電子データとして出力する情報出力機能と、
を実現させ
前記情報出力機能は、
患者に関する情報を表す患者情報領域と、
処方箋を発行した医療機関を表す医療機関情報領域と、
処方された薬剤に関わらず複数の患者に共通する検査値である固定検査値のデータを表す固定検査値領域と、
前記患者に処方された薬剤のうち、処方に際して検査を要する薬剤に関連する検査値である医薬品別検査値のデータを、当該患者の過去の推移を識別して表す医薬品別検査値領域と、
を含む印刷媒体または電子データを出力する ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療情報提供システム、サーバ、医療情報提供装置、医療情報提供媒体、医療情報提供方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤の適切な使用を目的として、薬剤の処方に関する情報を提供するシステムが知られている。
例えば、特許文献1に記載された医薬品適正使用モニタリングシステムでは、医薬品を安全に使用するために必要な重要情報(相互作用、副作用、禁忌症等)が、一覧画面によって、処方医薬品の適正使用のために考慮されるべき程度(重要度)に従い、表示色が異なるように表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-197188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、薬剤の中には、処方に際して所定の検査を要するものが存在し、医師あるいは薬剤師は、このような薬剤が処方される場合、必要な検査が確実に行われるよう注意することが求められる。また、処方鑑査において、薬剤師は、処方された薬剤の中に、処方に際して所定の検査を要するものがあるか否かを確実に把握した上で、質の高い処方鑑査を行うことが求められる。
しかしながら、上述の医薬品適正使用モニタリングシステムは、処方に際して所定の検査を要する薬剤を判別するものではない。そのため、処方に際して所定の検査を要する薬剤であるか否かについては、医師あるいは薬剤師が添付文書等を逐次確認する必要がある。ところが、薬剤の種類は数万種類に及ぶことから、医師の処方時または薬剤師の調剤時等に、処方される薬剤が所定の検査を要するものであるか否かを逐次確認することは容易ではない。そのため、医師あるいは薬剤師の作業効率の低下、検査の実行の確実性あるいは処方鑑査の質の担保といった点で問題がある。
このように、従来の技術においては、処方される薬剤が患者における検査を要するものであるか否かを容易に確認することができなかった。
【0005】
本発明の課題は、処方される薬剤が患者における検査を要するものであるか否かをより容易に確認可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様の医療情報提供システムは、
通信可能に構成された端末装置とサーバとを含む医療情報提供システムであって、
前記サーバは、
複数種類の薬剤の添付文書のデータ及び内臓機能の低下に関する処方のガイドラインを示す文書のデータの少なくともいずれかから、処方に際して検査を要する薬剤の検査に関する情報を抽出する薬剤検査情報抽出手段と、
前記薬剤検査情報抽出手段によって抽出された前記薬剤の検査に関する情報と当該薬剤とが対応付けて格納された薬剤検査情報データベースを生成するデータベース生成手段と、
前記端末装置からの要求に応じて、前記データベース生成手段によって生成された前記薬剤検査情報データベースを参照し、対象とする薬剤の検査に関する情報を前記端末装置に提供する薬剤検査情報提供手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、処方される薬剤が患者における検査を要するものであるか否かをより容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る医療情報提供システム1のシステム構成を示す図である。
図2】医療情報提供システム1に含まれる各装置の具体的構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態において出力される処方箋(院外処方箋)Pの一例を示す模式図である。
図4】薬剤検査情報DB22bのデータ内容を示す模式図である。
図5】端末装置10が実行する処方箋出力処理の流れを示すフローチャートである。
図6】薬剤検査情報DBサーバ20が実行する薬剤検査情報DB生成処理の流れを示すフローチャートである。
図7】薬剤検査情報DBサーバ20が実行する薬剤検査情報DB更新処理の流れを示すフローチャートである。
図8】医療情報提供システム1をより高度にクラウド化したシステム構成の一例を示す図である。
図9】医療情報提供システム1を単体の情報処理装置によって実現する場合の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
[医療情報提供システム1のシステム構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る医療情報提供システム1のシステム構成を示す図である。
本実施形態においては、医療情報提供システム1が処方箋(ここでは院外処方箋とする)を発行する処方箋発行システムとして構成された場合を例として説明する。
図1に示すように、医療情報提供システム1は、端末装置10と、薬剤検査情報データベースサーバ(薬剤検査情報DBサーバ)20と、を含んで構成され、端末装置10と薬剤検査情報DBサーバ20とは、VPN(Virtual Private Network)等のネットワークによって通信可能に構成されている。本実施形態において、薬剤検査情報DBサーバ20は、クラウドサーバとして構成することができる。ただし、薬剤検査情報DBサーバ20は、専用の物理サーバとして構成することも可能である。
【0011】
端末装置10は、PC(Personal Computer)等の情報処理装置によって構成される。また、端末装置10は、病院において患者や薬剤等の医療情報に関する情報を管理する各種システム(以下、「病院内システム」と呼ぶ。)とVPN等のネットワークと接続されている。
端末装置10は、医師または処方箋発行の担当者によって操作され、診療が終了した患者について院外処方箋を発行するための操作を受け付ける。院外処方箋を発行するための操作が行われると、端末装置10は、当該患者に関する処方箋のデータを取得し、処方箋のデータに含まれる薬剤が処方に際して検査を要する薬剤(ここでは、臓器の機能の低下により投与量の調整が必要となる薬剤を含むものとする。)であるか否かの検索要求を薬剤検査情報DBサーバ20に送信する。そして、処方に際して検査を要する薬剤については、病院内システムから当該患者の検査値のデータを取得し、処方箋のデータに検査値のデータを付加する。端末装置10は、このように検査値のデータが付加された処方箋のデータを紙媒体に印刷すること等により、院外処方箋を出力する。
なお、院外処方箋の出力形態としては、紙媒体に印刷することの他、予め定められたフォーマットの電子データとして出力したり、不揮発性のディスプレイ(電子ペーパー等)に表示したりすることも可能である。また、院外処方箋を出力する場合、検査項目あるいは検査値のデータを文字列で表すことの他、1次元または2次元のバーコードで表すことも可能である。この場合、患者あるいは薬局の端末等でバーコードを読み取ることにより、検査項目あるいは検査値の文字列を表示させることができる。具体的には、検査項目あるいは検査値のデータが患者自身または第三者の目に直接触れることの適切性を考慮し、検査項目あるいは検査値データの一部または全てをバーコードで表すことが可能である。
【0012】
薬剤検査情報DBサーバ20は、各種薬剤について、添付文書のデータや処方に関するガイドラインのデータ等、薬剤が処方に際して検査を要するか否か及びその検査値の基準値または基準範囲が含まれる文書のデータを参照し、処方に際して検査を要する薬剤の一覧を示す薬剤検査情報データベース(薬剤検査情報DB)を自動的に生成する。なお、処方に際して検査を要する薬剤については、検査値の基準値(閾値)が設定されており、検査値の基準値が1つの場合、その基準値を境界として、より大きい範囲またはより小さい範囲が、薬剤の処方に適合する範囲(以下、「基準範囲」と呼ぶ。)となる。一方、検査値の基準値が範囲として設定されている(即ち、上限及び下限の閾値が設定されている)場合、これらの閾値に挟まれる範囲が基準範囲となる。薬剤検査情報DBサーバ20には、処方に際して検査を要する薬剤について、その基準範囲が格納される。そして、薬剤検査情報DBサーバ20は、端末装置10から薬剤について、処方に際して検査を要する薬剤であるか否かの検索要求を受信すると、薬剤検査情報DBを検索し、検索要求が行われた薬剤が処方に際して検査を要するものであるか否か、検査を要するものである場合には、検査項目及び検査値の基準範囲等を含む検索結果のデータを送信する。
【0013】
[各装置の具体的構成]
次に、医療情報提供システム1における各装置の具体的構成について説明する。
図2は、医療情報提供システム1に含まれる各装置の具体的構成を示すブロック図である。
【0014】
[端末装置10の具体的構成]
図2に示すように、医療情報提供システム1において、端末装置10は、ハードウェア構成として、各種演算処理を行う制御部11と、各種情報を記憶する記憶部12と、キーボードやタッチパネル等により実現される入力部13と、ディスプレイを含む表示部14と、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する通信部15と、画像を撮像する撮像部16とを備える。このような端末装置10は、各種プログラムが記憶部12にインストールされており、制御部11がこれらプログラムに従い動作することで、院外処方箋の発行機能等を発揮する。
また、端末装置10は、このようなハードウェア構成において、後述する処方箋出力処理のためのプログラムが実行されることにより、制御部11に、処方箋情報取得部11aと、薬剤検査情報確認部11bと、検査結果データ取得部11cと、処方箋出力部11dとが実現される。
【0015】
処方箋情報取得部11aは、入力部13を介した処方箋の発行を指示する操作に応じて、処方箋の発行対象となる患者の処方箋のデータを取得する。このとき、処方箋情報取得部11aは、電子カルテシステム等の病院内システムから、医師によって作成された処方箋のデータを取得したり、入力部13を介して処方箋のデータの入力を受け付けたりすることによって、処方箋のデータを取得する。なお、処方箋情報取得部11aが、医師によって電子カルテに記入された処方医薬品のデータを自動的に抽出することにより、処方箋のデータを取得することとしてもよい。
【0016】
薬剤検査情報確認部11bは、処方箋情報取得部11aによって取得された処方箋のデータに含まれる各薬剤について、処方に際して検査を要する薬剤として、薬剤検査情報DBに記憶されているか否かの確認を行う。具体的には、薬剤検査情報確認部11bは、処方箋のデータに含まれる各薬剤の名称をキーとして、薬剤検査情報DBを検索する検索要求を薬剤検査情報DBサーバ20に送信する。そして、薬剤検査情報確認部11bは、薬剤検査情報DBサーバ20から送信された検索結果を取得する。
【0017】
検査結果データ取得部11cは、薬剤検査情報確認部11bによって取得された薬剤検査情報DBサーバ20の検索結果を参照し、検索要求を行った各薬剤の中に、処方に際して検査を要する薬剤が含まれている場合、その処方箋に対応する患者について、その検査に関する検査値(以下、「医薬品別検査値」と呼ぶ。)のデータを病院内システムから取得する。本実施形態において、検査結果データ取得部11cは、病院内システムから、検査値のデータを取得する場合、その患者について、過去の所定回数(ここでは3回とする)のデータを併せて取得する。ただし、検査の種類によって、検査値には有効期間が設定されており、検査結果データ取得部11cは、有効期間内のデータのみを病院内システムから取得する。
また、検査結果データ取得部11cは、処方箋が発行される場合、全患者に共通の予め設定された検査項目に関する検査値(以下、「固定検査値」と呼ぶ。)のデータを各患者について病院内システムから取得する。なお、固定検査値は、薬剤の処方により重篤副作用を引き起こす疾患に関連する検査値が選択されたものである。
【0018】
処方箋出力部11dは、処方箋情報取得部11aによって取得された処方箋のデータと、検査結果データ取得部11cによって取得された固定検査値及び医薬品別検査値のデータとを統合し、対象となる患者について、処方された薬剤と、当該薬剤において処方に際して検査を要するものについては、その検査項目と、その患者の検査値のデータとが併せて表された処方箋を出力する。
【0019】
図3は、本実施形態において出力される処方箋(院外処方箋)Pの一例を示す模式図である。
図3に示すように、本実施形態において出力される処方箋Pは、患者に関する情報を表す患者情報領域P1と、処方箋Pを発行した医療機関を表す医療機関情報領域P2と、固定検査値のデータを表す固定検査値領域P3と、医薬品別検査値のデータを表す医薬品別検査値領域P4とを含んでいる。
【0020】
患者情報領域P1には、患者の氏名、年齢、性別、住所、保険の区分等、当該患者に関する各種情報が表されている。
医療機関情報領域P2には、処方箋Pを発行した医療機関名、問い合わせ先等、処方箋を発行した医療機関に関する各種情報が表されている。
固定検査値領域P3には、全患者に共通の検査項目に関する検査値のデータが一覧表示されている。固定検査値としては、例えば、AST、ALT、ALP、T-BIL、CRE、eGFR、Cys-C、K、CPK、WBC、HGB、PLT、SEG、ST、TSH、HbA1C等の検査項目の全てまたは一部を設定することができる。これら固定検査値としては、自覚症状で早期発見できない副作用及び自覚症状よりも先に臨床検査値が変動する副作用に関連する検査値を選択することが有効である。
【0021】
医薬品別検査値領域P4には、処方に際して検査を要する薬剤に関する検査値のデータが一覧表示されている。例えば、医薬品別検査値領域P4には、処方に際して検査を要する薬剤の薬剤名「A錠 17.5mg」と、その検査項目の分類(コードユニット名)及び検査値のデータ「腎機能 {eGFR,CRE,Cys-C}」、「CA 8.5」、「ALB 3.5」と、検査値の推移を示す記号「-」、「L」あるいは「H」とが対応付けて表されている。なお、検査値の推移を示す記号において、「-」は基準範囲内であることを示し、「L」は基準範囲を下回っていることを示し、「H」は基準範囲を上回っていることを示している。そして、本実施形態における処方箋Pでは、前々回の検査値、前回の検査値、今回(直近)の検査値の順で、左から右に各検査値の推移が示される。例えば、検査値の推移が「--L」と示されている場合、前々回及び前回は検査値が基準範囲内であると共に、直近の検査において、検査値が基準範囲を下回ったことを示している。医薬品別検査値領域P4において、処方に検査を要する薬剤の検査値のデータが基準範囲にない場合には、その検査項目を特定の形態で表す(赤字で示す、あるいは、下線を付す等)こととしてもよい。
このように、過去の検査値の推移を処方箋Pに表すことにより、患者の状態をより適確に判断することが可能となり、より適切に薬剤の処方を行うことが可能となる。
【0022】
また、本実施形態における処方箋Pでは、検査項目の分類として、一部の検査項目については、複数の検査項目の組み合わせを表すコードユニット名が表されている。例えば、「eGFR」、「CRE」、「Cys-C」の3つの検査項目の組み合わせは、複数の薬剤について検査項目として挙げられる頻度が高いため、検査項目の分類「腎機能」に対応する検査項目の組み合わせとして表されている。なお、これら組み合わせとして表される検査項目の検査値のデータは、例えば固定検査値として表される等、他の箇所において表されている。ただし、検査項目の組み合わせを表す場合に、それらの検査値のデータを併せて表すことが可能である。さらに、組み合わせに含まれる検査項目の検査値のデータを表すことに代えて(または検査値のデータと共に)、上述の検査値の推移を示す記号「-」、「L」あるいは「H」を表し、検査値のデータが基準範囲にない場合には、その検査項目を特定の形態で表す(赤字で示す、あるいは、下線を付す等)ことが可能である。
このように検査項目の組み合わせを表すコードユニット名を用いることにより、例えば3行を要する検査項目の記載を1行で表すことが可能となり、記載スペースが大きくない処方箋の領域において、効率的に検査値のデータを表すことができる。
なお、検査項目あるいは検査値のデータをバーコードで表す場合、固定検査値領域P3あるいは医薬品別検査値領域P4の一方または両方をバーコードで表したり、固定検査値領域P3及び医薬品別検査値領域P4の中の特定の検査項目あるいは検査値のデータをバーコードで表したりすることが可能である。
【0023】
[薬剤検査情報DBサーバ20の具体的構成]
図2に示すように、医療情報提供システム1において、薬剤検査情報DBサーバ20は、ハードウェア構成として、各種演算処理を行う制御部21と、各種情報を記憶する記憶部22と、キーボード等により実現される入力部23と、ディスプレイを含む表示部24と、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する通信部25とを備える。このような薬剤検査情報DBサーバ20は、各種プログラムが記憶部22にインストールされており、制御部21がこれらプログラムに従い動作することで、薬剤検査情報DBの生成機能、薬剤検査情報DBの更新機能あるいは薬剤検査情報DBの検索機能を発揮する。
また、薬剤検査情報DBサーバ20は、このようなハードウェア構成において、後述する薬剤検査情報DB生成処理あるいは薬剤検査情報DB更新処理等のためのプログラムが実行されることにより、制御部21に、薬剤文書情報取得部21aと、項目別条件設定部21bと、例外情報取得部21cと、薬剤検査情報抽出部21dと、データベース管理部21eとが実現される。また、薬剤検査情報DBサーバ20の記憶部22には、薬剤文書データ記憶部22aと、薬剤検査情報DB22bと、例外情報記憶部22cとが記憶されている。
【0024】
薬剤文書データ記憶部22aには、各種薬剤に関する添付文書のデータを蓄積する外部のデータベース(製薬メーカーや公的機関等のデータベース等)から取得された各種薬剤に関する添付文書のデータや、臓器(腎臓等)の機能の低下に関する処方のガイドライン(例えば、日本腎臓学会編 CKD(Chronic Kidney Disease)診療ガイド等)のデータを蓄積する外部のデータベースから取得されたガイドラインの文書のデータが記憶される。なお、薬剤文書データ記憶部22aに記憶された各種文書のデータは、取得先のデータベースにおいて更新が行われた場合、それに対応して更新される。
【0025】
薬剤検査情報DB22bは、添付文書及び臓器の機能の低下に関する処方のガイドラインにおいて言及されている各種薬剤について、当該薬剤の処方に対して必要な検査の項目と、検査値の基準範囲のデータとを対応付けて記憶している。
図4は、薬剤検査情報DB22bのデータ内容を示す模式図である。
図4に示すように、薬剤検査情報DB22bには、薬剤固有のコードである薬剤コードと、薬剤の名称(商品名あるいは一般名)と、添付文書あるいはガイドラインにおいて抽出された検査項目を示す文字列(検査項目)と、その文字列が抽出された添付文書の段落名あるいはガイドライン名と、検査項目の分類を表すコードユニット名と、検査値の基準範囲を表す基準範囲データとが対応付けて記憶されている。
例えば、図4における薬剤検査情報DB22bの第1行には、薬剤コード「xxxxxx」、薬剤名「C液注射用」の薬剤について、「高カリウム血症」という文字列が「禁忌」の段落から抽出され、コードユニットとして「K」(カリウム)、検査値の基準範囲として「3.5~4.8mEq/L」が抽出された結果が格納されている。
これら薬剤検査情報DB22bの各データは、後述する薬剤検査情報DB生成処理によって、自動的に生成される。なお、自動的に生成された薬剤検査情報DB22bの内容を医師あるいは薬剤師等の専門家が承認することにより、データベースの内容を確定することとしてもよい。
【0026】
例外情報記憶部22cには、製薬メーカーや公的機関等から逐次発行される薬剤の処方に関する例外情報が記憶される。例えば、独立行政法人医薬品医療機器総合機構から発行される緊急安全性情報や安全性速報のメール等、添付文書やガイドラインに記載されていない安全性に関する情報(例外的な安全性情報)が、例外情報として、例外情報記憶部22cに記憶される。
なお、例外情報記憶部22cに記憶された例外情報の内容が、添付文書やガイドラインに更新等により含まれることとなった場合、例外情報記憶部22cに記憶された当該例外情報は、例外情報取得部21cによって逐次削除される。
【0027】
薬剤文書情報取得部21aは、各種薬剤に関する添付文書のデータを蓄積する外部のデータベース(製薬メーカーや公的機関等のデータベース)や、臓器の機能の低下に関する処方のガイドラインの文書のデータを蓄積する外部のデータベースから各種薬剤に関する添付文書のデータ及びガイドラインの文書のデータを取得する。本実施形態において、薬剤文書情報取得部21aは、所定のタイミングで(例えば、1ヶ月に1度等の所定の期間毎あるいは特定の指示が入力された場合に)、外部のデータベースにアクセスし、添付文書のデータやガイドラインの文書のデータを取得する。
【0028】
項目別条件設定部21bは、添付文書及びガイドラインの文書のデータを対象として、各薬剤についての検査項目あるいは検査値の基準値または基準範囲の文字列を抽出するための抽出条件を、添付文書及びガイドラインの項目(用法・用量、あるいは禁忌等)毎に設定する。例えば、添付文書の場合、「用法・用量」、「警告」、「禁忌」、「薬物動態」等の項目毎に、抽出条件が設定される。なお、ここで設定される抽出条件は、例えば、抽出される単語(文字列)と、その単語と関連性を有する所定の単語と、これらの単語の間の文字間隔(抽出される単語と、所定の単語とが有する関係)とを含むことができる。このように設定された抽出条件は、項目毎の辞書として記憶部22等の所定の記憶領域に保存される。項目別条件設定部21bにおいて、添付文書及びガイドラインの項目毎に抽出条件が設定されることにより、各項目の記載の特徴を反映したより適切な抽出条件を設定することが可能となる。また、抽出条件に、抽出される単語(文字列)と、その単語と関連性を有する所定の単語と、これらの単語の間の文字間隔(抽出される単語と、所定の単語とが有する関係)とが含まれることにより、添付文書及びガイドラインの文書のデータに含まれる検査項目あるいは検査値の基準値または基準範囲を自動的に適切に抽出することが可能となる。
【0029】
例外情報取得部21cは、製薬メーカーや公的機関等から逐次発行される薬剤の処方に関する例外情報(例外的な安全性情報)を逐次取得し、例外情報記憶部22cに記憶する。また、例外情報取得部21cは、例外情報記憶部22cに記憶された例外情報の内容が、添付文書やガイドラインに更新等により含まれることとなった場合、例外情報記憶部22cに記憶された当該例外情報を逐次削除する。
【0030】
薬剤検査情報抽出部21dは、薬剤検査情報DBを生成するために、薬剤文書データ記憶部22aに記憶された各薬剤の添付文書及びガイドラインの文書のデータを取得し、項目別条件設定部21bによって設定された項目毎の抽出条件に従って、各薬剤についての検査項目及び検査値の基準値または基準範囲の文字列を抽出する。このとき、薬剤検査情報抽出部21dは、例外情報記憶部22cに記憶された例外情報を適宜参照し、薬剤文書データ記憶部22aに記憶された各種文書のデータに含まれていない検査項目及び検査値の基準値または基準範囲の文字列が存在すれば、これらを文字列の抽出結果に追加する。これにより、薬剤検査情報DBの更新前に発行された安全性に関する情報を含めて、処方に際して検査を要する薬剤の検査項目及び検査値の基準値または基準範囲を検索することが可能となる。
【0031】
そして、薬剤検査情報抽出部21dは、各薬剤についての検査項目及び検査値の基準値または基準範囲の文字列の抽出結果に基づいて、抽出した検査項目を、検査項目の分類を表すコードユニット名に変換する。さらに、薬剤検査情報抽出部21dは、薬剤固有のコードである薬剤コードと、薬剤の名称(商品名あるいは一般名)と、添付文書あるいはガイドラインにおいて抽出された検査項目を示す文字列(検査項目)と、その文字列が抽出された添付文書の段落名あるいはガイドライン名と、検査項目の分類を表すコードユニット名と、検査値の基準範囲を表す基準範囲データとを対応付けて、薬剤検査情報DBに格納する。
【0032】
データベース管理部21eは、端末装置10からの検索要求を受信した場合に、検索要求において指定された薬剤の名称をキーとして、薬剤検査情報DBを検索し、検索結果を端末装置に送信する。
【0033】
[動作]
次に、医療情報提供システム1の動作を説明する。
[端末装置10の処理]
【0034】
図5は、端末装置10が実行する処方箋出力処理の流れを示すフローチャートである。
処方箋出力処理は、入力部13を介して処方箋出力処理の実行が指示入力されることに対応して開始される。
【0035】
処方箋出力処理が開始されると、ステップS1において、処方箋情報取得部11aは、処方箋の発行対象となる患者の処方箋のデータを取得する。
ステップS2において、薬剤検査情報確認部11bは、処方箋のデータに含まれる薬剤の名称を取得する。
ステップS3において、薬剤検査情報確認部11bは、処方箋のデータに含まれる薬剤の名称をキーとして、薬剤検査情報DBを検索する検索要求を薬剤検査情報DBサーバ20に送信し、薬剤検査情報DBサーバ20における検索結果を取得する。なお、薬剤検査情報確認部11bが薬剤検査情報DBに検索要求を送信する場合、薬剤の名称をキーとすることの他、薬剤を一意に特定可能な情報をキーとすることが可能であり、例えば薬剤コードをキーとすること等が可能である。
【0036】
ステップS4において、検査結果データ取得部11cは、薬剤検査情報確認部11bによって取得された薬剤検査情報DBサーバ20の検索結果を参照し、検索要求を行った各薬剤の中に、処方に際して検査を要する薬剤が含まれているか否かの判定を行う。
検索要求を行った各薬剤の中に、処方に際して検査を要する薬剤が含まれている場合、ステップS4においてYESと判定されて、処理はステップS5に移行する。
一方、検索要求を行った各薬剤の中に、処方に際して検査を要する薬剤が含まれていない場合、ステップS4においてNOと判定されて、処理はステップS6に移行する。
【0037】
ステップS5において、検査結果データ取得部11cは、その処方箋に対応する患者について、処方に際して検査を要する薬剤の医薬品別検査値のデータを病院内システムから取得し、処方箋のデータに付加する。
【0038】
ステップS6において、薬剤検査情報確認部11bは、処方箋のデータに含まれる全ての薬剤について、薬剤検査情報DBの検索が終了したか否かの判定を行う。
処方箋のデータに含まれる全ての薬剤について、薬剤検査情報DBの検索が終了した場合、ステップS6においてYESと判定されて、処理はステップS7に移行する。
一方、処方箋のデータに含まれる全ての薬剤について、薬剤検査情報DBの検索が終了していない場合、ステップS6においてNOと判定されて、処理はステップS2に移行する。
ステップS7において、検査結果データ取得部11cは、その処方箋に対応する患者について、固定検査値のデータを病院内システムから取得し、処方箋のデータに付加する。
ステップS8において、処方箋出力部11dは、処方箋情報取得部11aによって取得された処方箋のデータと、検査結果データ取得部11cによって取得された固定検査値及び医薬品別検査値のデータとを統合し、処方箋を出力する(図3参照)。
ステップS8の後、処方箋出力処理は終了となる。
【0039】
このような処理により、処方箋のデータにおいて、処方に際して検査を要する薬剤が含まれる場合に、その薬剤について必要な検査項目及び検査値の基準範囲が薬剤検査情報DBから取得されると共に、その検査項目の検査値のデータが病院内システムから取得され、対象となる患者の処方箋において併せて提示することが可能となる。
即ち、医療情報提供システム1によれば、処方される薬剤が患者における検査を要するものであるか否かをより容易に確認することが可能となる。
したがって、医療情報提供システム1によれば、処方に際して検査を要する薬剤について、必要な検査をより確実に実行することが可能となる。
また、処方に際して検査を要する薬剤が処方箋において表され、当該患者における検査値が表されていることから、その薬剤を処方することが適切であるか否かについて、処方鑑査を行う薬剤師が明確に判定することが可能となる。これにより、薬剤師から医療機関に対して疑義照会を行う契機を与えることができると共に、疑義照会の根拠をより確実なものとすることができる。
したがって、医療情報提供システム1によれば、薬剤師による処方鑑査の質の向上(薬学的管理の向上)を図ることができる。
【0040】
[薬剤検査情報DBサーバ20の処理]
図6は、薬剤検査情報DBサーバ20が実行する薬剤検査情報DB生成処理の流れを示すフローチャートである。
薬剤検査情報DB生成処理は、入力部23を介して薬剤検査情報DB生成処理の実行が指示入力されることに対応して、あるいは、後述する薬剤検査情報DB更新処理において実行が指示されることに対応して開始される。
【0041】
薬剤検査情報DB生成処理が開始されると、ステップS11において、薬剤文書情報取得部21aは、各種薬剤に関する添付文書のデータを蓄積する外部のデータベース(製薬メーカーや公的機関等のデータベース)や、臓器の機能の低下に関する処方のガイドラインのデータを蓄積する外部のデータベースから各種薬剤に関する添付文書のデータ及びガイドラインの文書のデータを取得する。
ステップS12において、項目別条件設定部21bは、添付文書及びガイドラインの文書を対象として、各薬剤についての検査項目あるいは検査値の基準値または基準範囲の文字列を抽出するための抽出条件を、添付文書及びガイドラインの項目(用法・用量、あるいは禁忌等)毎に設定する。なお、各薬剤についての検査項目あるいは検査値の基準値または基準範囲の文字列を抽出するための抽出条件は、予め設定して設定ファイルとして保存しておき、この設定ファイルを読み出すこととしてもよい。
【0042】
ステップS13において、薬剤検査情報抽出部21dは、薬剤検査情報DBを生成するために、薬剤文書データ記憶部22aに記憶された各薬剤の添付文書及びガイドラインの文書のデータを取得する。
ステップS14において、薬剤検査情報抽出部21dは、項目別条件設定部21bによって設定された項目毎の抽出条件に従って、各薬剤についての検査項目及び検査値の基準値または基準範囲の文字列を抽出する。このとき、薬剤検査情報抽出部21dは、例外情報記憶部22cに記憶された例外情報を適宜参照し、薬剤文書データ記憶部22aに記憶された各種文書のデータに含まれていない検査項目及び検査値の基準値または基準範囲の文字列が存在すれば、これらを文字列の抽出結果に追加する。
【0043】
ステップS15において、薬剤検査情報抽出部21dは、各薬剤についての検査項目及び検査値の基準値または基準範囲の文字列が抽出されたか否かの判定を行う。
各薬剤についての検査項目及び検査値の基準値または基準範囲の文字列が抽出された場合、ステップS15においてYESと判定されて、処理はステップS16に移行する。
一方、各薬剤についての検査項目及び検査値の基準値または基準範囲の文字列が抽出されない場合、ステップS15においてNOと判定されて、処理はステップS18に移行する。
ステップS16において、薬剤検査情報抽出部21dは、抽出した検査項目を、検査項目の分類を表すコードユニット名に変換する。
【0044】
ステップS17において、薬剤検査情報抽出部21dは、薬剤固有のコードである薬剤コードと、薬剤の名称(商品名あるいは一般名)と、添付文書あるいはガイドラインにおいて抽出された検査項目を示す文字列(検査項目)と、その文字列が抽出された添付文書の段落名あるいはガイドライン名と、検査項目の分類を表すコードユニット名と、検査値の基準範囲を表す基準範囲データとを対応付けて、薬剤検査情報DBに格納する。
【0045】
ステップS18において、薬剤検査情報抽出部21dは、薬剤文書データ記憶部22aに記憶された各薬剤の添付文書及びガイドラインの文書のデータの全てについて、処理が終了したか否かの判定を行う。
薬剤文書データ記憶部22aに記憶された各薬剤の添付文書及びガイドラインの文書のデータの全てについて、処理が終了していない場合、ステップS18においてNOと判定されて、処理はステップS13に移行する。
一方、薬剤文書データ記憶部22aに記憶された各薬剤の添付文書及びガイドラインの文書のデータの全てについて、処理が終了した場合、ステップS18においてYESと判定されて、薬剤検査情報DB生成処理は終了となる。
【0046】
このような処理により、添付文書あるいはガイドラインの文書のデータにおいて、処方に際して検査を要する薬剤を抽出し、その検査項目及び検査値の基準範囲を含む薬剤検査情報DBを自動的に生成することが可能となる。そのため、薬剤検査情報DBを人手によって生成する場合に比べ、データベースを生成するための時間及び労力を軽減することができると共に、より正確な内容のデータベースを効率的に生成することが可能となる。
【0047】
次に、薬剤検査情報DBサーバ20が実行する薬剤検査情報DB更新処理について説明する。
図7は、薬剤検査情報DBサーバ20が実行する薬剤検査情報DB更新処理の流れを示すフローチャートである。
薬剤検査情報DB更新処理は、所定の期間毎等、予め設定されたタイミングで開始される。
【0048】
薬剤検査情報DB更新処理が開始されると、ステップS21において、薬剤文書情報取得部21aは、各種薬剤に関する添付文書のデータを蓄積する外部のデータベース(製薬メーカーや公的機関等のデータベース)や、臓器の機能の低下に関する処方のガイドラインのデータを蓄積する外部のデータベースにおいて、バージョンの更新があるか否かの判定を行う。
バージョンの更新がある場合、ステップS21においてYESと判定されて、処理はステップS22に移行する。
一方、バージョンの更新がない場合、ステップS22においてNOと判定されて、薬剤検査情報DB更新処理は終了となる。
【0049】
ステップS22において、薬剤文書情報取得部21aは、薬剤検査情報DB生成処理を実行する。
ステップS23において、例外情報取得部21cは、添付文書やガイドラインに更新等により含まれることとなった例外情報の内容を例外情報記憶部22cから削除する。
ステップS23の後、薬剤検査情報DB更新処理は終了となる。
このような処理により、薬剤検査情報DBの内容が最新の状態に更新され、より適切な処方箋の出力を行うことが可能となる。
【0050】
[変形例1]
上述の実施形態において、医療情報提供システム1をより高度にクラウド化したシステムとして実現することができる。
図8は、医療情報提供システム1をより高度にクラウド化したシステム構成の一例を示す図である。
図8に示すように、薬剤検査情報DBサーバ20をクラウド上に実現された仮想サーバとして構成し、薬剤について、処方に際して検査を要する薬剤であるか否かの検索要求を受け付けるためのAPI(Application Program Interface)を提供することができる。
この場合、プラットフォームが異なる各種の端末装置10から、簡単に薬剤検査情報DBサーバ20の機能を利用することが可能となり、医療情報提供システム1が多くのユーザにとって利用し易いものとなる。
また、薬剤検査情報DBサーバ20をクラウド上に実現された仮想サーバとする場合、薬剤検査情報DBサーバ20の機能を分割し、機能ごとに仮想サーバを構成することができる。
例えば、図8に示すように、薬剤検査情報DBサーバ20の機能において、薬剤検査情報DBを自動的に生成する機能、薬剤検査情報DBの検索を行う機能、及び、薬剤検査情報DBのメンテナンス(薬剤検査情報DBの更新等)を行う機能のそれぞれを異なる仮想サーバによって構成することができる。
これにより、薬剤検査情報DBサーバ20に備えられる複数の機能を実質的に切り離すことができるため、使用される機能のみを稼働させ、使用されない機能は休止させる等、薬剤検査情報DBサーバ20を柔軟に運用することが可能となる。
さらに、薬剤検査情報DBサーバ20をクラウド上に実現された仮想サーバとする場合、薬剤検査情報DBサーバ20全体あるいは薬剤検査情報DBサーバ20における一部の機能を複数の仮想サーバによって重複して構成することも可能である。
例えば、薬剤検査情報DBサーバ20の機能において、端末装置10からの検索要求の数の増加に応じて、あるいは、薬剤検査情報DBサーバ20の運用上の都合(メンテナンス等)に対応して、薬剤検査情報DBの検索を行う機能等を複数の仮想サーバに重複させた構成とすることができる。
これにより、薬剤検査情報DBサーバ20に要求される処理能力や運用上の都合に応じて、適切に機能的な構成を変化させることができる。
なお、薬剤検査情報DBサーバ20に要求される処理能力を変化させる場合、薬剤検査情報DBサーバ20全体あるいは薬剤検査情報DBサーバ20における一部の機能を複数の仮想サーバによって重複させることの他、仮想サーバのスペックを変化させることも可能である。
【0051】
[変形例2]
上述の実施形態及び変形例1においては、クラウド型の医療情報提供システム1を構築し、端末装置10から薬剤検査情報DBサーバ20に検索要求を行って、処方に際して検査を要する薬剤であるか否かを確認するものとした。
これに対し、薬剤検査情報DBを端末装置10に備えることにより、医療情報提供システム1の機能を単体の情報処理装置で実現(即ち、スタンドアローン型のシステムとして実現)することとしてもよい。
この場合、薬剤検査情報DBサーバ20の薬剤文書情報取得部21a、項目別条件設定部21b、例外情報取得部21c、薬剤検査情報抽出部21d、薬剤文書データ記憶部22a、薬剤検査情報DB22b及び例外情報記憶部22cの機能を端末装置10に備えることとすればよい。
【0052】
図9は、医療情報提供システム1を単体の情報処理装置によって実現する場合の構成を示す模式図である。
図9においては、図2に示す薬剤検査情報DBサーバ20の主要な機能的構成を端末装置10に備えることにより、端末装置10単体で医療情報提供システム1の機能を実現している。
図9に示す構成とした場合、単体の装置によって、処方に際して検査を要する薬剤の検索を行うことができるため、ネットワークを使用することなく、医師や薬剤師は、処方された薬剤に、処方に際して検査を要する薬剤が含まれているか否か、及び、含まれている場合には、その検査項目及び検査値の基準範囲を簡単に確認することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る医療情報提供システム1は、薬剤検査情報DBサーバ20において、薬剤検査情報抽出部21d(薬剤検査情報抽出手段、データベース生成手段)と、データベース管理部21e(薬剤検査情報提供手段)とを備えている。
薬剤検査情報抽出部21dは、複数種類の薬剤の添付文書のデータ及び内臓機能の低下に関する処方のガイドラインを示す文書のデータの少なくともいずれかから、処方に際して検査を要する薬剤の検査に関する情報を抽出する。
また、薬剤検査情報抽出部21dは、抽出された前記薬剤の検査に関する情報と当該薬剤とが対応付けて格納された薬剤検査情報データベースを生成する。
また、データベース管理部21eは、端末装置10からの要求に応じて、生成された薬剤検査情報データベースを参照し、対象とする薬剤の検査に関する情報を端末装置10に提供する。
このような構成により、添付文書あるいはガイドラインの文書のデータにおいて、処方に際して検査を要する薬剤を抽出し、その検査項目及び検査値の基準範囲等を含む薬剤検査情報DBを自動的に生成することが可能となる。そして、このように生成された薬剤検査情報DBを利用して、処方される薬剤が患者における検査を要するものであるか否かをより容易に確認することが可能となる。
【0054】
また、医療情報提供システム1は、薬剤検査情報DBサーバ20において、項目別条件設定部21bを備えている。
項目別条件設定部21bは、添付文書のデータ及びガイドラインを示す文書のデータを対象として、処方に際して検査を要する薬剤の検査に関する情報を抽出するための抽出条件を、添付文書のデータ及びガイドラインを示すデータの項目毎に設定する。
また、薬剤検査情報抽出部21dは、項目別条件設定部21bによって設定された抽出条件に従って、添付文書のデータ及びガイドラインを示す文書のデータの項目毎に、処方に際して検査を要する薬剤の検査に関する情報を抽出する。
このような構成により、添付文書及びガイドラインの項目毎に抽出条件が設定されることにより、各項目の記載の特徴を反映したより適切な抽出条件を設定することが可能となる。
【0055】
また、抽出条件には、添付文書のデータ及びガイドラインを示す文書のデータの項目毎に設定された文字列と、当該文字列と関連性を有する特定の文字列と、これらの文字列が有する関係とが定義されている。
このような構成により、添付文書及びガイドラインの文書のデータに含まれる検査項目あるいは検査値の基準値または基準範囲を自動的に適切に抽出することが可能となる。
【0056】
また、医療情報提供システム1は、例外情報取得部21c(安全性情報取得手段)を備えている。
例外情報取得部21cは、薬剤検査情報データベースに含まれていない薬剤の安全性に関する情報を取得する。
また、薬剤検査情報抽出部21dは、薬剤検査情報データベースと、薬剤の安全性に関する情報とを参照し、対象とする薬剤の検査に関する情報を提供する。
このような構成により、薬剤検査情報DBの更新前に発行された安全性に関する情報を含めて、処方に際して検査を要する薬剤の検査項目及び検査値の基準値または基準範囲を検索することが可能となる。
【0057】
また、医療情報提供システム1は、薬剤文書情報取得部21a(薬剤文書情報取得手段)を備えている。
薬剤文書情報取得部21aは、複数種類の薬剤の添付文書のデータ及び内臓機能の低下に関する処方のガイドラインを示す文書のデータの少なくともいずれかを、予め設定された取得先から取得する。
また、薬剤文書情報取得部21aは、予め設定されたタイミングで、複数種類の薬剤の添付文書のデータ及び内臓機能の低下に関する処方のガイドラインを示す文書のデータの少なくともいずれかを取得して更新する。
このような構成により、薬剤検査情報DBの内容が最新の状態に更新され、より適切な処方箋の出力を行うことが可能となる。
【0058】
また、本実施形態に係る処方箋Pは、患者情報領域P1と、医療機関情報領域P2と、固定検査値領域P3と、医薬品別検査値領域P4とを含んでいる。
患者情報領域P1は、患者に関する情報を表す。
医療機関情報領域P2は、処方箋を発行した医療機関を表す。
固定検査値領域P3は、処方された薬剤に関わらず複数の患者に共通する検査値である固定検査値のデータを表す。
医薬品別検査値領域P4は、患者に処方された薬剤のうち、処方に際して検査を要する薬剤に関連する検査値である医薬品別検査値のデータを、当該患者の過去の推移を識別して表す。
このような構成により、患者の状態をより適確に判断することが可能となり、より適切に薬剤の処方を行うことが可能となる。
【0059】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の実施形態においては、医療情報提供システム1によって出力する処方箋を院外処方箋であるものとして説明したが、これに限られない。即ち、医療情報提供システム1によって、院内処方箋を出力することが可能である他、処方される薬剤を出力する処方箋以外の各種医療情報提供媒体に適用することが可能である。
【0060】
また、上述の実施形態において、処方に際して検査を要する薬剤に関連する検査値の基準範囲のデータは、薬剤検査情報DBに記憶されているものとして説明したが、これに限られない。
例えば、処方に際して検査を要する薬剤に関連する検査値の基準範囲のデータを病院内システム等に記憶しておき、検査結果データ取得部11cが検査値のデータを取得する際に、検査値の基準範囲を併せて取得することとしてもよい。
【0061】
また、上述の実施形態において、処方箋Pでは、前々回の検査値、前回の検査値、今回(直近)の検査値の順で、左から右に各検査値の推移が示されるものとして説明したが、これに限られない。
即ち、医薬品別検査値領域P4には、その患者の検査値の推移が識別可能に示されていればよく、例えば、過去の検査値の推移を、増加傾向を右上向きの矢印、減少傾向を右下向きの矢印、維持傾向を右向きの矢印によって視覚的に識別可能に示すこと等が可能である。さらに、過去の検査値の推移を折れ線として表したり、検査値の基準範囲に対する過去の検査値の相対関係を所定の記号(ドットやアスタリスク等)の表示位置で表したりすることが可能である。
【0062】
また、上述の実施形態において、薬剤の処方に関する例外情報の取得先として、独立行政法人医薬品医療機器総合機構を例に挙げて説明したが、これに限られない。即ち、独立行政法人医薬品医療機器総合機構に類する日本国内あるいは外国の公的機関によって発行される例外情報を取得することが可能である。
【0063】
また、上述の実施形態において、院外処方箋を電子データとして出力する場合、医療情報提供システム1における独自のフォーマットのデータを用いることの他、公的に利用されている特定のフォーマットの処方箋のデータを用いること等が可能である。例えば、厚生労働省によって企図されている電子処方箋を医療情報提供システム1で使用可能とし、この電子処方箋を包含する院外処方箋のデータを出力することとしてもよい。公的に利用されている特定のフォーマットと対応する院外処方箋のデータとすることで、電子お薬手帳や医療機関が管理する医療情報との連携をより容易に行うことが可能となる。
【0064】
また、上述の実施形態において、医療情報提供システム1をクラウド化したシステムとして構成する場合、薬剤検査情報DBサーバ20に対するAPIのリクエストを行ったシステム(端末装置10が属する医療関連システム)やユーザ(医師等)のレベル(権限の種別)に応じて、薬剤検査情報DBサーバ20が異なる応答を行うこととしてもよい。例えば、同一のAPIによるリクエストであっても、薬剤検査情報DBサーバ20が、リクエスト元となるシステムやユーザに付与されているレベルに応じた内容の検索結果を送信することとしてもよい。
リクエスト元となるシステムやユーザにレベル(権限)を付与する場合、医療機関、医療施設、部門等の組織単位や、医師や薬剤師等の医療従事者個人を単位として、レベルを設定することができる。また、医療情報提供システム1のユーザ側において、システムの管理を行う管理者に、管理者用の権限(例えばフルアクセスの許可)を設定することとしてもよい。
これにより、APIによって共通化されたインターフェースの利用を可能としつつ、ユーザ側の権限を考慮した適切な検索結果を提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 医療情報提供システム、10 端末装置、11,21 制御部、11a 処方箋情報取得部、11b 薬剤検査情報確認部、11c 検査結果データ取得部、11d 処方箋出力部、21a 薬剤文書情報取得部、21b 項目別条件設定部、21c 例外情報取得部、21d 薬剤検査情報抽出部、21e データベース管理部、12,22 記憶部、22a 薬剤文書データ記憶部、22b 薬剤検査情報DB、22c 例外情報記憶部、13,23 入力部、14,24 表示部、15,25 通信部、16 撮像部、20 薬剤検査情報DBサーバ、P 処方箋、P1 患者情報領域、P2 医療機関情報領域、P3 固定検査値領域、P4 医薬品別検査値領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9