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特許7178062低温超精密熱輸送測定用プローブシステム及びそれを含む測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】低温超精密熱輸送測定用プローブシステム及びそれを含む測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20221117BHJP
   G01N 25/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G01N25/18 D
G01N25/00 M
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021563730
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 KR2019013669
(87)【国際公開番号】W WO2020218690
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0049063
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(73)【特許権者】
【識別番号】519444052
【氏名又は名称】インスティチュート フォー ベーシック サイエンス
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE FOR BASIC SCIENCE
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、チェ クン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハ イム
(72)【発明者】
【氏名】コーク、マシュー ジョン
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-122857(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0201268(US,A1)
【文献】特開平03-274438(JP,A)
【文献】特開2005-156194(JP,A)
【文献】特開2007-120948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00 - 25/72
G01K 13/00 - 13/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が装着される試料装着部を含むプローブシステムであって、
前記試料装着部は、
試料装着空間を含む第1フレーム及び開口された一端部が前記第1フレームと結合されながら、前記試料装着空間を内部に収容する第2フレームを含み、
前記第1フレームは、
外部との通電のための電気端子が形成される試料支持部と、
前記試料支持部の一面上に前記一面から遠ざかる方向に延び、断熱材からなり、支持線が結合される複数の第1支持棒と、
前記試料支持部の一面上に前記一面から遠ざかる方向に延び、高熱伝導体からなり、試料を据え置くことができる複数の第2支持棒と、
前記第1支持棒の間に支持線によって懸垂される温度計及びヒーターと、
前記電気端子から前記温度計及びヒーターにそれぞれ連結される電気供給線と、
を含む、
低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項2】
前記試料と前記温度計及びヒーターとを連結できるように、前記温度計及びヒーターと結合されて提供されるワイヤ端子をさらに含む、
請求項1に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項3】
前記第2支持棒の一端部に結合され、試料を据え置くことができる試料据置台をさらに含む、
請求項1に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項4】
前記第2フレームの他端部と結合されるパックをさらに含み、
前記パックは、低温超精密測定装置の冷却調節部分と接触される、
請求項1に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項5】
前記複数の第2支持棒のうち、前記試料が載置される据え置き型以外のもののうち1つ以上は、前記第2フレームと直接接触される、
請求項1に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項6】
前記電気供給線は、
前記第1支持棒の外周面の一部の領域に接着されて、前記第1支持棒の延長方向に延びる電気線連結部と、
前記電気線連結部と前記電気端子とを連結する第1伝導性ワイヤと、
前記電気線連結部と一端部が結合され、他端部が前記ヒーターまたは温度計のそれぞれに連結される第2伝導性ワイヤと、
を含む、
請求項1に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項7】
前記温度計は、SrTiO静電容量温度計を含む、
請求項1に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項8】
前記第1支持棒は、セラミック、ガラスファイバー及び樹脂のうち何れか1つを含む、
請求項1に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項9】
前記支持線は、高分子材質を含む、
請求項1に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項10】
前記第2支持棒は、金属素材を含む、
請求項1に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項11】
第1伝導性ワイヤ及び第2伝導性ワイヤのうち何れか1つ以上は、Pt/Ir合金を含む、
請求項6に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項12】
前記試料据置台は、サファイアを含む、
請求項3に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項13】
前記低温超精密熱輸送測定用プローブシステムは、
プローブヘッド部と、
前記プローブヘッド部の一端部と連結されるプローブ連結部と、
一端部が前記プローブ連結部の他端部と連結されるヒートシンク部と、を含み、
前記ヒートシンク部の他端部に前記試料装着部が連結される、
請求項1に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項14】
前記プローブ連結部は、
コアフレームと前記コアフレームの外面を取り囲みながら延びる同軸ケーブルとを含む、
請求項13に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項15】
前記試料装着部は、前記ヒートシンク部に着脱自在に連結される、
請求項13に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項16】
前記ヒートシンク部の一端部は、接点バネあるいはコールドフィンガーを用いて低温超精密測定装置のチャンバ内壁と接触される、
請求項13に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項17】
前記ヒートシンク部は、
金属素材の胴体部と、
胴体部の外周面を取り囲みながら延びる同軸ケーブルと、
を含む、
請求項13に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項18】
前記同軸ケーブルの遮蔽を前記第2フレームと電気的に連結させた、
請求項17に記載の低温超精密熱輸送測定用プローブシステム。
【請求項19】
請求項1から請求項18のうち何れか1項の低温超精密熱輸送測定用プローブシステムを含むが、
前記低温超精密熱輸送測定用プローブシステムは、複数個のSrTiO静電容量温度計を含み、
前記複数個のSrTiO静電容量温度計のそれぞれは、同軸リレーを通じて同じ静電容量測定用ブリッジに連結される、
低温超精密熱輸送測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温で物質の物理的特性を精度よく測定することができる測定装置に係り、さらに詳細には、物質の温度変化の超高精度測定が可能な低温超精密熱輸送測定用プローブシステム及びそれを含む測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の物理的特性を精度よく測定するための装置であって、低温を保持することができる密閉された冷凍機を含む低温超精密測定装置が用いられている。本明細書において、低温は、液体ヘリウムなどによって具現される極低温(cryogenic temperature)範囲まで含む。液体ヘリウムなどによって低温を保持することができるチャンバ形態の冷凍機内には、各種の物理的特性を測定しようとする試料が装着される。このような測定装置は、低温を保持する試料に磁場を印加することができる装置をさらに含みうる。このような測定装置は、極めて精密な温度測定及び温度制御技術を必要とし、外部との優れた断熱特性を必要とする。
【0003】
低温保持及び磁場印加が可能な低温超精密測定装置を用いて測定される物理的特性に熱ホール効果(thermal hall effect、THE)がある。一般的に、低温での熱ホール効果の測定は、高磁場下で超高精度の温度測定及び温度制御技術が要求される。また、一般的に、熱ホール効果の測定時間が非常に長くて、温度計、ヒーター、試料を他の構造物から熱的に完璧に孤立させる技術が必要である。
【0004】
従来から熱ホール効果に使われる温度計として試片の温度を可変させながら抵抗を測定することにより、試片温度を測定する抵抗温度計が使われてきた。しかし、このような抵抗温度計は、高い磁場が加えられれば、磁気抵抗効果(magnetoresistance effect)によって温度測定の偏差が発生する。このような偏差を正すためには、長時間を要する作業であって、温度及び磁場による温度計の2次元温度補正作業が必要である。それだけではなく、温度計が有する精度は温度領域によって異なるので、精密な温度測定のためには、各温度区間別に互いに異なる種類の温度計を使用しなければならないという煩わしさがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような問題点を含んで多様な問題点を解決するためのものであって、冷凍機内に装着して迅速かつ容易に試料の物理的特性を超高精度測定が可能な低温超精密熱輸送測定用プローブシステム及びそれを含む低温超精密熱輸送測定装置を提供することを目的とする。しかし、このような課題は、例示的なものであって、これにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、試料が装着される試料装着部を含む低温超精密熱輸送測定用プローブシステムが提供される。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、前記試料装着部は、試料装着空間を含む第1フレーム及び開口された一端部が前記第1フレームと結合されながら、前記試料装着空間を内部に収容する第2フレームを含む。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、前記第1フレームは、外部との通電のための電気端子が形成される試料支持部;前記試料支持部の一面上に前記一面から遠ざかる方向に延び、断熱材からなり、支持線が結合される複数の第1支持棒;前記試料支持部の一面上に前記一面から遠ざかる方向に延び、高熱伝導体からなり、試料を据え置くことができる複数の第2支持棒;前記第1支持棒の間に支持線によって懸垂される温度計及びヒーター;及び前記電気端子から前記温度計及びヒーターにそれぞれ連結される電気供給線;を含む。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、前記試料と前記温度計及びヒーターとを連結できるように、前記温度計及びヒーターと結合されて提供されるワイヤ端子をさらに含みうる。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、前記第2支持棒の一端部に結合され、試料を据え置くことができる試料据置台をさらに含みうる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記第2フレームの他端部と結合されるパック(puck)をさらに含み、前記パックは、前記低温超精密測定装置の冷却調節部分と接触されるものである。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記複数の第2支持棒のうち、前記試料が載置される据え置き型以外のもののうち1つ以上は、前記第2フレームと直接接触されるものである。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、前記電気供給線は、前記第1支持棒の外周面の一部の領域に接着されて、前記第1支持棒の延長方向に延びる電気線連結部;前記電気線連結部と前記電気端子とを連結する第1伝導性ワイヤ;及び前記電気線連結部と一端部が結合され、他端部が前記ヒーターまたは温度計のそれぞれに連結される第2伝導性ワイヤ;を含みうる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記温度計は、SrTiO静電容量温度計を含みうる。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、前記第1支持棒は、セラミック、ガラスファイバー及び樹脂のうち何れか1つを含みうる。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、前記支持線は、高分子材質を含みうる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記第2支持棒は、金属素材を含みうる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、第1伝導性ワイヤ及び第2伝導性ワイヤのうち何れか1つ以上は、Pt/Ir合金を含みうる。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記試料据置台は、サファイアを含みうる。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、前記プローブシステムは、プローブヘッド部;前記プローブヘッド部の一端部と連結されるプローブ連結部;及び一端部が前記プローブ連結部の他端部と連結されるヒートシンク部;を含むものである。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記プローブ連結部は、コアフレームと前記コアフレームの外面を取り囲みながら延びる同軸ケーブルとを含みうる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記試料装着部は、前記ヒートシンク部に着脱自在に連結されるものである。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、前記ヒートシンク部の一端部は、接点バネ(contact finger)またはコールドフィンガー(cold finger)を用いて低温超精密測定装置のチャンバ内壁と接触されたものである。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、前記ヒートシンク部は、金属素材の胴体部;及び胴体部の外周面を取り囲みながら延びる同軸ケーブル;を含みうる。この際、前記同軸ケーブルの遮蔽(shield)を前記第2フレームと電気的に連結させることができる。
【0025】
本発明の他の観点によれば、前述したプローブシステムを含む低温超精密熱輸送測定装置が提供される。この際、前記プローブシステムは、複数個のSrTiO静電容量温度計を含み、前記複数個のSrTiO静電容量温度計のそれぞれは、同軸リレーを通じて同じ静電容量測定用ブリッジに連結される低温超精密測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0026】
前記のようになされた本発明の実施形態によれば、冷凍機を含む測定装置に装着して容易かつ迅速に試料の物理的特性の超高精度測定が可能な低温超精密熱輸送測定用プローブシステム及びそれを含む低温超精密測定装置が提供される。このような本発明の実施形態によるプローブシステムを利用する場合、熱ホール効果を精度よく測定するだけではなく、それ以外にも、スピンネルンスト効果(spin Nernst effect)、スピンゼーベック効果(spin Seebeck effect)などの物理的特性を極めて精密でありながらも、容易に測定することができる。もちろん、このような効果によって、本発明の範囲が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態による熱輸送測定用プローブシステムを説明する模式図である。
図2】本発明の一実施形態による熱輸送測定用プローブシステムに含まれる試片装着部の斜視図である。
図3】本発明の一実施形態による熱輸送測定用プローブシステムに含まれる第1フレームを説明する平面図である。
図4】本発明の一実施形態による熱輸送測定用プローブシステムで温度計が懸垂される形状及び電気線の連結線として使われる高分子フィルムの形態を示した図面である。
図5】本発明の一実施形態による熱輸送測定用プローブシステムを利用した回路図を示した図面である。
図6】本発明の実験例による熱輸送測定用プローブシステムに使われた温度計の静電容量測定値及びそれを温度に対して微分した値と、静電容量測定及び温度測定の精度を計算した結果を示すグラフである。
図7】本発明の実験例による熱輸送測定用プローブシステムに使われた熱絶縁構造の温度による熱伝導度及び総有効熱伝導度を計算した結果を示すグラフである。
図8】本発明の実験例による熱ホール効果の測定試験でリアルタイムによる測定温度及び外部磁場値を示すグラフである。
図9】本発明の実験例及び比較例による熱ホール効果の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明の多様な実施形態を詳しく説明する。本発明の実施形態は、当業者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものであり、下記の実施形態は、さまざまな他の形態に変形され、本発明の範囲が、下記の実施形態に限定されるものではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示をさらに充実かつ完全にし、当業者に本発明の思想を完全に伝達するために提供されるものである。また、図面で各層の厚さや大きさは、説明の便宜及び明確性のために誇張されたものである。
【0029】
低温で温度測定時に表われる代表的な問題点は、磁気発熱効果と高磁場での磁気抵抗効果とによる温度測定の偏差発生である。また、温度計、ヒーター、試料を他の構造物から熱的に孤立させる技術が必要である。
【0030】
それを解決するために、本発明では、高磁場下で超高精度の温度測定が可能であり、脱着が可能であって、設置が容易な試料装着部を含む低温超精密熱輸送測定用プローブシステムを具現した。
【0031】
ここで、プローブシステムは、測定対象となる試料及び測定に必要な温度計またはヒーターのような素子を装着し、低温超精密測定装置のチャンバ内部に投入されるモジュールであって、前記素子の制御のために、相素子を外部電源と電気的に連結させる電気配線構成を備えることができる。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態による低温超精密熱輸送測定用プローブシステム100(以下、「プローブシステム」とも称する)を説明する模式図である。以下、図1を参照して、本実施形態の構成について記述する。
【0033】
本発明の一実施形態において、プローブシステム100は、液体ヘリウムのような低温液体を収容する低温超精密測定装置のチャンバ内部に設けられる。前記チャンバ内部は、高真空を保持することができ、例えば、真空度は、10-6~10-7mbar程度に保持される。本発明の一実施形態において、プローブシステム100は、2~250Kの広い温度範囲で稼動できるように設計される。
【0034】
図1を参照すれば、本発明の実施形態によるプローブシステム100は、プローブシステム100の上端部分であるプローブヘッド部4、プローブヘッド部4の一端部と連結され、プローブヘッド部4の下方にまっすぐに延びるプローブ連結部3及びプローブ連結部3の一端部と連結されるヒートシンク部2を含み、ヒートシンク部2の一端部に試料装着部1が着脱自在に連結される。
【0035】
プローブヘッド部4は、外部電源を電力ケーブルと連結するための連結ポート42及び真空ポンプと連結されるポンピングポート41を含む。プローブヘッド部4には、ボード43が付着され、ボード43には、同軸ケーブル用コネクタ44が設けられている。同軸ケーブル34の遮蔽部分がプローブ連結部3と連結されれば、静電容量測定の精度が低くなるので、ボード43は、絶縁材料で構成することができる。一実施形態において、ボード43は、高分子プラスチック材質である。プローブシステム100は、下には冷却調節部分、上には真空フランジと接合されなければならないので、プローブヘッド部4の位置を調節して全長を調節することができる。プローブヘッド部4は、締結部材、例えば、ネジを用いてプローブ連結部3のコアフレーム31と締結される。
【0036】
プローブヘッド部4は、低温超精密測定装置のチャンバ外部に突出しており、常温に露出される。したがって、プローブ連結部3は、試料が装着された空間まで熱漏れを最小化するための構成を有する。
【0037】
具体的に、プローブ連結部3は、コアフレーム31及び脱着自在なバッフル(baffle)形態の熱遮蔽装置32を含む。コアフレーム31は、中空パイプ形態を有することができ、金属素材、例えば、ステンレス鋼材質からなりうる。熱遮蔽装置32は、バッフル形態であって、その外周面がチャンバ内壁と物理的に接触されることによって、コアフレーム31に沿って伝達される熱をチャンバ側に伝達することにより、試料が装着された空間への熱の伝達を防止する機能を行える。前記熱遮蔽装置32は、脱着自在な構成を有しうる。
【0038】
本発明の実施形態によれば、試料の温度を測定するための温度計(図2の114参照)としては、SrTiO静電容量温度計を使用する。したがって、電気的遮蔽機能がある同軸ケーブル34を前記温度計と連結するケーブルとして使用する。図1に示されたように、同軸ケーブル34をコアフレーム31及び熱遮蔽装置32に巻いて同軸ケーブル34とコアフレーム31との間の熱交換が円滑になされるようにする。同軸ケーブル34を通じて熱が漏れるので、それを最小化するために、ステンレス鋼材質の微細同軸ケーブルが使われる。
【0039】
ヒーター(図2の115参照)に電流を供給するために、さらに電力ケーブル33をコアフレーム31及び熱遮蔽装置32に巻いて使用し、この際、電力ケーブル33は、例えば、ベリリウム銅(BeCu)材質からなるものである。
【0040】
コアフレーム31及び同軸ケーブル34は、常温からの熱漏れを最小化できるように設計されたが、同軸ケーブル34のプラスチック材質の被覆は、熱がヒートシンク部2から低温超精密測定装置側に抜け出ることを遅くする。また、低温超精密測定装置の冷却調節部分は、プローブシステム100の最も底面部分と接合されるが、常温からの熱漏れは、プローブヘッド部4から始まるために、それを解決するために、専門的な冷凍工学的技術が要求される。
【0041】
これにより、ヒートシンク部2のボディー部21の両端部の周りに熱伝導度に優れた材質、例えば、銅合金からなる接点バネまたはコールドフィンガー23を溶接することにより、試料が位置するプローブシステム100の底面部分が低温超精密測定装置のチャンバ内壁と強く接触させうる。このような構成を通じてヒートシンク部2を通じてプローブヘッド部4から漏れる熱を低温超精密測定装置のチャンバ内壁に流せるようになるので、試料が装着された空間の温度が低温超精密測定装置の温度制御部(すなわち、冷却調節部分)の温度と同一になる。したがって、ヒートシンク部2は、長時間試料環境の温度の変化を防止し、精密な測定を可能にする。ヒートシンク部2の材質は、例えば、無酸素銅のような高い熱伝導度を有する素材が使われ、熱伝導度を向上させるために、表面は金メッキ処理される。
【0042】
ヒートシンク部2を構成するボディー部21の外周面に同軸ケーブル22のプラスチック被覆を一部除去し、代わりに、熱伝導度に優れた他の電気絶縁体を巻いて熱伝導度に優れる被覆を形成しうる。これにより、ヒートシンク部のボディー部21と同軸ケーブル22との熱交換は円滑になるが、電気的には絶縁される。例えば、プラスチック被覆が除去された部分にタバコの紙を巻いた後、ワニス(varnish)のような透明コーティング剤で塗布することにより、プラスチック被覆を代替する被覆を製造することができる。このように被覆部分が改善された同軸ケーブル22をヒートシンク部2に巻いて熱伝導度を改善することができた。選択的に、ボディー部21の外周面を絶縁体、例えば、タバコの紙を巻き、ワニスで塗布することにより、薄い絶縁層をさらに製造することができる。
【0043】
プローブシステム100の下端部に設けられる試料装着部1は、ヒートシンク部2に着脱自在に連結される。試料装着部1は、脱着自在なので、作業者は、プローブシステム100の他の構成と独立した空間で試料及び試料の物性測定に必要な多様な構成、例えば、温度計及びヒーターなどを設置することができる。
【0044】
試料装着部1は、試料が装着される試料装着空間を含む第1フレーム11と第1フレーム11と着脱自在に結合される第2フレーム12とを含む。
【0045】
第1フレーム11は、プローブシステム100の下端の端部に付着され、第2フレーム12は、プローブシステム100を低温超精密測定装置内に挿入する過程で第1フレーム11の試片装着空間に設けられた多様な構造物を保護する保護壁(shield)の役割を行える。第2フレーム12は、物理的保護壁だけではなく、サンプルを取り囲んだ壁の温度を同一にする熱的保護壁(radiation shield)の役割を行える。
【0046】
一方、第2フレーム12の下端部には、パック13が配され、パック13は、低温テスト装備に備えられた冷却調節部分(図示せず)と直接接触される構成を有する。試料装着部1は、第1フレーム11と第2フレーム12とが互いに物理的に結合される構成を有し、したがって、試料装着部1は、パック13を通じて前記低温に保持される冷却調節部分と熱的に連結される構成を有しうる。このような熱的連結の効果を高めるために、第1及び第2フレーム11、12は、熱伝導度が高い材質で構成され、例えば、銅または銅合金を含む金属素材が使われる。一方、パック13は、電気絶縁体を挟んで第2フレーム12と結合される。
【0047】
図2には、試料装着部1の第1フレーム11及び第2フレーム12の斜視図が示されており、図3には、第1フレーム11上に試料(S)が装着された後の形状を示す平面図が示されている。以下、図2及び図3を参照して、試料装着部1についてさらに具体的に記述する。
【0048】
試料装着部1は、試料が装着される試料装着空間を含む第1フレーム11及び開口された一端部が前記第1フレーム11と結合されながら、前記試料装着空間を内部に収容する第2フレーム12を含む。例えば、第1フレーム11及び第2フレーム12は、螺合によって着脱自在に締結される。また、試料装着空間を真空状態に作るために、第2フレーム12の両側には小さな穴が開けられている。
【0049】
第1フレーム11内に測定対象となる試料(S)と、前記試料(S)を加熱するためのヒーター115及び試料(S)の温度を測定するための温度計114と、が配される。
【0050】
具体的に、第1フレーム11は、試料支持部800と、前記試料支持部800の一面上に前記一面から遠ざかる方向に延びる棒状の第1支持棒112及び第2支持棒113と、を含む。
【0051】
試料支持部800は、テストチャンバの冷却調節部分との熱的連結のために、熱伝導度が高い材質で構成され、例えば、金メッキ処理された無酸素銅材質からなりうる。試料支持部800の端部外周面には、第2フレーム12との螺合のためのネジ線が形成されうる。
【0052】
試料支持部800の一部の領域には、外部との通電のための電気端子700が形成されうる。電気端子700は、試料支持部800の一部の領域に試料支持部800の他の部分と絶縁された形態で外部の電源と連結され、例えば、図2のように、試料支持部800の一面上に突出したピン形態に形成されうる。
【0053】
第1支持棒112は、複数個備えられ、複数の第1支持棒112の間には、支持線200が配される。このような支持線200によって温度計114及びヒーター115は、試料支持部800の一面から離隔して懸垂される構成を有する。第1支持棒112は、断熱特性に優れた材質、例えば、セラミック、ガラスファイバー、樹脂などの材質で構成することができる。
【0054】
図2及び図3には、第1支持棒112に連結された支持線200によって温度計114及びヒーター115が第1支持棒112の間に懸垂される構成が示されている。
【0055】
支持線200は、電気的に絶縁体でありながらも、断熱特性に優れた高分子繊維、例えば、ナイロン材質で構成することができる。
【0056】
温度計114及びヒーター115に電気的に連結される通路を形成するために、電気端子700と、温度計114及びヒーター115をそれぞれ連結される電気供給線と、が提供される。前記電気供給線は、通電のための通路であるが、前記通路による熱漏れは最小化する必要がある。特に、本発明の実施形態において、温度計114及びヒーター115は、試料支持台800の一面から所定の距離だけ浮揚されて懸垂される構造である。
【0057】
これにより、電気供給線は、前記第1支持棒112の外周面の一部の領域に付着されて、前記第1支持棒112の延長方向に延びる電気線連結部(図2の600b)を含む。電気端子700と電気線連結部600bは、第1伝導性ワイヤ(図2の600a)によって互いに連結される。一方、電気線連結部600bと温度計114、あるいは、電気線連結部600bとヒーター115は、第2伝導性ワイヤ(図3の600c)によって互いに連結される。
【0058】
電気線連結部600bは、第1支持棒112の外周面に付着するために、高分子フィルムの表面に電気伝導性素材をコーティングして製造したものである。例えば、図4の(b)のように、電気線連結部600bは、チタン及び金が蒸着されたポリイミドフィルム(polyimide film)で形成されうる。この際、電気線連結部600bの幅は、通電が可能でありながらも、それを通じた熱伝達は最小になる範囲で決定される。電気線連結部600bは、エポキシ樹脂を通じて第1支持棒112の外周面の一部の領域に接着されるか、あるいは、一面に接着面を有するフィルムを用いて第1支持棒112の外周面に接着させて製造することができる。
【0059】
第1伝導性ワイヤ(図2の600a)は、電気端子700と電気線連結部600bとを互いに連結させて通電させる。例えば、第1伝導性ワイヤ600aは、試料装着部1に付着されたピン状の電気端子700に半田付けで連結される。また、第2伝導性ワイヤ(図3の600c)の一端部は、電気線連結部600bと連結され、他端部は、温度計114またはヒーター115にそれぞれ銀(Ag)エポキシなどによって連結される。
【0060】
第1及び第2伝導性ワイヤ600a、600cも、熱漏れの経路として作用することがあるので、可能な限り熱漏れが起こらないように構成することが望ましい。これにより、第1及び第2伝導性ワイヤ600a、600cのうち何れか1つ以上は、熱伝導率が低い伝導性素材、例えば、Pt/Ir合金で製造されたものである。
【0061】
図2に示したように、第2支持棒113は、第1支持棒112と平行な方向に延びる構成を有しうる。第2支持棒113は、複数個からなり、そのうち少なくとも1つは、試料(S)を固定して支持することができる試料据置用として活用されうる。
【0062】
試料(S)と低温超精密測定装置の冷却調節部分の熱的連結は、試料(S)が載置された第2支持棒113を通じてなされる。試料(S)と低温超精密測定装置の冷却調節部分との熱的連結のために、第2支持棒113の材質は、熱伝導度に優れた素材、例えば、銅または銅合金を含む金属素材で製造されたものである。第2支持棒113の一端部は、試料支持台800の一面と物理的に結合されており、したがって、試料(S)は、熱伝導度に優れた第2支持棒113を通じて試料支持部800と熱的に連結される。前述したように、試料支持部800は、第2フレーム12と物理的に結合され、第2フレーム12は、パック13を通じて冷却調節部分と連結されている。したがって、このような構成を通じて第2支持棒113に載置された試料(S)は、冷却調節部分と熱的に連結される。
【0063】
追加的に、複数の第2支持棒113のうち、試料(S)が載置される据え置き型以外のもののうち1つ以上は、第2フレーム12と直接接触することができる。したがって、第2支持棒113のうち何れか1つ以上と第2フレーム12の物理的接触によって低温超精密測定装置の冷却調節部分と熱的に連結される経路が追加される。
【0064】
一方、第2支持棒113のうち何れか1つ以上と第2フレーム12を物理的に直接接触させることにより、第1フレーム11の試片装着空間を第2フレーム12の中空部に挿入して締結する過程で第1フレーム11及び第2フレーム12の相互前進を防いで、これ以上の締結が進まないようにする。したがって、第1フレーム11及び第2フレーム12の締結過程で第2フレーム12によって第1フレーム11の試片装着空間の損傷を防止することができ、このような意味で第2支持棒113は、適切な締結終了時点を知らせるガイド部材の役割も行うことができる。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、図2及び図3に示されたように、外部磁場による力で試料(S)が、測定途中で他の角度へ回転することを防止するために、第2支持棒113の一端部に結合され、試料(S)を据え置くことができる試料据置台118をさらに含みうる。試料据置台118は、絶縁性と熱伝達特性に優れた素材、例えば、サファイアを含みうる。図2及び図3のように、試料据置台118としてサファイア切片を第2支持棒113の端部に付着し、試料(S)をサファイア切片に接着剤を用いて固定することができる。この位置で試料(S)の表面と第2支持棒113は、ワイヤ端子119Sで連結され、これを通じて試料と低温超精密測定装置の冷却調節部分との熱的連結はさらに強化される。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、温度計114及びヒーター115は、第1支持棒112の間の支持線200によって浮揚された状態で懸垂される構造を有する。したがって、第2支持棒113の端部に固定されて載置される試料(S)と、温度計114及びヒーター115を電気的/熱的に連結するための連結構造が必要である。このために、温度計114及びヒーター115には、試料(S)と連結することができる第1ワイヤ端子117が温度計及びヒーターと結合されて提供される。第1ワイヤ端子117は、電気伝導度及び熱伝導度に優れた素材、例えば、銀(Ag)ワイヤからなりうる。第1ワイヤ端子117は、温度計114及びヒーター115のそれぞれに、例えば、ワニスで連結される。
【0067】
図3を参照すれば、試料(S)には、温度計114あるいはヒーター115と結合されている第1ワイヤ端子117との連結を容易にするための第2ワイヤ端子119が結合される。使用者は、独立した外部空間で試料(S)上に複数の第2ワイヤ端子119をあらかじめ結合し、それを試料据置台118に載置させた後、第1ワイヤ端子117及び第2ワイヤ端子119を連結することができる。第2ワイヤ端子119と試料(S)の結合位置は、ワイヤ端子117の配置を考慮して適切に選択されうる。第1ワイヤ端子117及び第2ワイヤ端子119は、銀(Ag)エポキシ樹脂を用いて互いに連結することができる。
【0068】
試料の物性を精度よく測定するためには、試料の温度を精度よく測定することが必要である。例えば、熱ホール効果の測定のためには、3個の温度計を用いて温度値を測定することにより、縦方向の温度差ΔT及び横方向の温度差ΔTを求め、この値を用いてホール効果の大きさを定量的に示すkxy(thermal Hall conductivity)及び一般的な熱伝導度kxxを計算することができる。
【0069】
従来には、このような温度計として抵抗温度計が使われたが、難しい温度補正を経なければならず、区間別に温度精度が異なる複数の温度計を使用しなければならないなどの煩わしさがあった。
【0070】
これにより、本発明の一実施形態によれば、前述した問題点を解決し、多様な温度区間での温度測定をさらに容易に進行するために、温度計としてSrTiO静電容量温度計を使用する。静電容量(capacitance)測定の場合、極精密測定が可能であり、SrTiO物質の誘電率が温度によって大きく変わるために、それを利用すれば、広い区間で温度を精度よく測定することができる。また、SrTiOの静電容量は、理論的に磁場による影響を全く受けないために、磁場による補正を進行する必要がなく、測定の手間が減る。
【0071】
図4の(a)には、SrTiO静電容量温度計が支持線であるナイロンファイバーによって支持されている形状が提示されている。図4の(a)を参照すれば、SrTiO静電容量温度計は、試料(S)と連結するための第1ワイヤ端子である銀(Ag)ワイヤと結合されているということを確認することができる。
【0072】
本発明の一実施形態による試片装着部1は、プローブシステム100に脱着自在なモジュール形態を有する。したがって、このようなモジュール式特性によって、実験前、複数の試片装着部を備え、複数個の試料装着セットをあらかじめ作っておくことができ、試料装着部での試料装着方法を少しだけ変形すれば、同じプローブシステムを用いて多様な試料に対して多様な高難度の実験を進めることができる。
【0073】
以下、本発明の低温超精密熱輸送測定用プローブシステムによって具現された実験例を説明する。但し、下記の実験例は、本発明の理解を助けるためのものであり、本発明が、下記の実験例のみで限定されるものではない。
【0074】
<実験例>
温度計の製作のために、MTI株式会社で購入した表面処理された0.1mmの厚さのSrTiOウェーハを1×1mmの正方形状に加工した。縁部の部分を除いた切られたウェーハの両面に金を蒸着した後、蒸着された金を保護することができる蓋層を、銀(Ag)エポキシ樹脂を用いて製造した。次いで、同じエポキシを用いて両面にPt/Ir電線を付着した。高磁場が加えられた時、温度計が動くことを防止するために、直径10μmのナイロン繊維支持線を温度計の一面に付着し、付着された支持線の両先端をガラスファイバー材質の第1支持棒に固定した。試料と温度計との熱的連結のために、温度計の他の面に直径125μmのワイヤ端子を、接着剤を用いて付着した。この際、ワイヤ端子と温度計とが電気的に連結されないように注意した。温度計の補正作業は、実験前、インサイチュ補正(in-situ calibration)方法で進行した。
【0075】
TE Conductivity社の15kΩチップ抵抗を試料に熱を加えるヒーターとして使用した。ヒーターの熱容量を減らし、熱伝導性を高めるために、全体厚さが300μmになるまで誘電体基板を磨耗して使用した。ヒーターを第1フレームに設置する方法は、温度計の設置方法と同様に設置した。ヒーターのコンタクトパッドからきたPt/Ir電線鎖は、第1支持棒の棒に付着された電気線連結部と銀エポキシ樹脂とで連結され、ナイロン支持繊維を用いてヒーターの位置を空中に固定した。電気線連結部は、リボン状を有するポリイミド材質のカプトンフィルム(Kapton Film)の一面に金及びチタンを蒸着したものを使用した。
【0076】
図5には、測定で使われた温度計560、低温テスト装備のチャンバ520、同軸ケーブル530、プローブシステム540及び測定装備500、510の間の電気的連結状態が示されている。
【0077】
1つの静電容量測定用ブリッジ500及び2つの同軸リレーを用いて温度計3個の静電容量を測定した。静電容量測定用ブリッジ500は、Andeen-Hagerling社の2550A、1kHzのブリッジ(AH bridge)を使用し、同軸リレーは、URS74004を使用した。AH bridge500は、一回に温度計1つの静電容量値のみを測定することができ、同軸リレー510は、AH bridge500が各温度計で連結されるチャネルの間を順次に循環させる役割を果たす。このような構成を通じて測定の精度をさらに向上させうる。本発明者らは、測定開発初期段階に前記リレーを使用せず、複数個のAH bridgeを温度計のそれぞれに連結して測定を試みたが、そのような場合、接地による閉回路が生じて測定の精度が低くなることを確認した。
【0078】
測定入力電圧は、0.5Vを使用し、測定平均時間は、7秒が必要となった。ヒーターには、Keithley 2410 Source Meterを用いて電流を供給した。縦方向の温度差が試料温度の5%よりも小さくなるようにヒーター出力値を調節して実験した。温度計560の静電容量測定は、3端子測定方法を利用した。データの獲得及び外部測定装備の制御は、MATLAB(登録商標)基盤のソフトウェアを通じてなされた。
【0079】
同軸ケーブル530は、ステンレス棒に沿って試料装着部の第1フレームまで下がり、この位置で同軸ケーブルのコア部分530aは、第1フレームの電気端子を通じて温度計560と連結され、同軸ケーブルの遮蔽部分530bは、試料装着部の第2フレーム550と電気的に連結される。したがって、第2フレーム550の内側内部空間には、電気的に遮蔽された環境が造成され、これは、静電容量測定の精度を10倍程度増加させる。
【0080】
<実験例1:温度測定の精度及び磁気発熱効果の計算>
SrTiO温度計の温度測定精度は、SrTiOの感度(sensitivity、(dC/dT))と静電容量測定の精度とに係る。実験に使用した温度計のうち、1つの温度測定精度を温度によって計算した。温度による温度計の静電容量値及びそれを温度に対して微分した数値は、図6の(a)と同じである。静電容量測定の精度及びこのような情報を用いて計算した温度測定の精度は、図6の(b)と同じである。2K~100K区間での温度測定の精度は、0.1mKを凌駕するということを確認することができる。
【0081】
温度計の静電容量測定で発生する磁気発熱効果を下記の式を用いて定量的に計算した。
【0082】
この際、ESRは、測定回路の抵抗値、Cは、温度計の静電容量、Vは、測定に使用した入力電圧の大きさ、ωは、入力信号の振動数を意味する。前記の公式を用いて計算した温度計3個の磁気発熱値は、2K~300Kの区間で7.5nWよりも小さく、25K~300Kの範囲では1nWよりも小さい。したがって、磁気発熱効果による測定のエラーは、無視できる数値であるということを確認した。
【0083】
<実験例2:熱漏れによる誤差の計算>
熱伝導特性(thermal transport property)の測定時には、二次通路による熱漏れが必ず存在し、このような漏れのために測定のエラーが発生する。温度計とヒーターの測定及び制御のためには、それぞれに電気的に連結される通路が必要なので、システムを熱的に完璧に孤立させることは不可能である。このような通路の熱伝導度を温度によって定量的に計算した。熱漏れは、電気線連結部を構成するカプトンフィルム、カプトンフィルム上に蒸着された金(Au)、第1支持棒の素材であるガラスファイバー(G10)、Pt/Irワイヤ及び支持線であるナイロンファイバー(Nylon Fiber)を通じてなされうる。これらのうち、非金属性物質の熱伝導率値は、低温学会の出版物を参考にし、金属性物質の場合には、WF法則を用いて計算した。
【0084】
温度による各通路の熱伝導度は、図7の(a)と同じであり、この通路の総有効熱伝導度(Total effective thermal conductance)は、図7の(b)と同じである。測定試料の熱伝導度値が‘Measurable sample values’領域に位置するならば、熱漏れによる誤差値は1%よりも小さな値を示す。したがって、前述した通路を通じた熱漏れは、無視できるレベルであるということを確認した。
【0085】
<実験例3:熱ホール効果の測定試験>
測定セットアップ及び装備の性能を確認するために、スピンアイス(spin ice)システムを有する反強磁性物質であるTbTiの熱ホール効果を測定した。高純度単結晶TbTi試料を1.48×4.53×0.39mmのサイズに加工し(試料の平面は、[111]方向と垂直である)、試料に合計5個の銀ワイヤを、銀エポキシ樹脂を用いて付着した。付着された銀ワイヤは、それぞれ銅棒、温度計とヒーターとに付着された銀ワイヤと連結される。試料を第1フレームに装着した形状は、図3と同じである。ホール効果信号の測定は、30Kで進行した。全体システムの温度をヘリウムガスが存在する状態で30Kに下げた後、30Kから33Kまでインサイチュ補正を進行し、次いで、再びシステム温度を30Kに下げた後、ターボポンプを稼動した。高真空状態が造成された後、ヒーターに電流を供給し、外部磁場を調節しながら、熱ホール効果の実験を進行した。各磁場値で10~20分程度温度計が読み取る温度値を測定し、それを0次フィッティングして磁場値に対応する温度を求めた。フィッティングの不適確性、測定ノイズ、温度安定性をいずれも考慮した時、温度測定の精度は、0.1mK以上であるということを確認した。
【0086】
図8には、各温度計の温度(T1、T2、T3)と磁場の経時的な変化が示されている。また、図9の(a)には、それぞれ0、100、200、300、400μWの熱を加えた時、磁場による測定結果が示されている。
【0087】
図9の(a)を参照すれば、ΔTは、予想どおりに磁場及び加えた熱の大きさによって線形的に増加する。加えた熱がなければ、ホール効果信号が存在しないということを確認した。測定した温度差情報で熱伝導度(thermal conductivity)、熱ホール伝導度(thermal Hall conductivity)値を計算し、それを試料温度で分けた値は、図9の(b)と同じである。測定結果の傾向性は、先行研究の結果と一致するが、定量的数値は、先行結果よりもほぼ1.5倍程度さらに大きく表われた。これは、本実験で使用した単結晶試料の純度がさらに良いことで、表われた結果として予想される。測定されたホール効果信号は、ノイズ信号と鮮明に区別され、これを通じて製作された装備及び試料の装着方式が正しく作動したということを確認することができた。
【0088】
<実験例4:比較例の実験の結果>
測定された信号が実験セットアップ時に発生したエラー信号(銅棒、銀エポキシ、銀ワイヤなどの金属性成分による信号)である可能性を排除するために、熱ホール効果が表われない比較例に対する測定を進行した。ガラス切片(スライドガラス)をTbTi試料と同じサイズに加工した。ガラスを比較例として選択した理由は、TbTiと熱伝導率が類似しているので、加える熱の大きさを同一に設定することができるためである。
【0089】
測定結果は、図9の(a)に示した(図9の(a)のControl)。図9の(a)を参照すれば、比較例の場合、ΔT信号が表れなかった。したがって、TbTiで観測した熱ホール効果信号が、試料自体によるものであるということを確認することができる。
【0090】
本発明は、図面に示された実施形態を参考にして説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9