(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】膜貫通pH勾配ポリマーソーム並びにアンモニア及びそのメチル化類似体の除去におけるそのポリマーソームの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/765 20060101AFI20221117BHJP
A61K 31/191 20060101ALI20221117BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221117BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221117BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A61K31/765
A61K31/191
A61K47/12
A61K47/34
A61P3/00
(21)【出願番号】P 2018567213
(86)(22)【出願日】2017-08-15
(86)【国際出願番号】 IB2017054966
(87)【国際公開番号】W WO2018033856
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-08-07
(32)【優先日】2016-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515271560
【氏名又は名称】イーティーエイチ チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ルルー,ジーン‐クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】マトーリ,シモン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,アーロン クリストフ
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-524452(JP,A)
【文献】特開2007-208255(JP,A)
【文献】特表2011-504937(JP,A)
【文献】特表2009-510109(JP,A)
【文献】R. C. Hayward et al.,Langmuir,2006年,22,4457-4461
【文献】Y. Men et al.,Polymer Chemistry,2016年,7,3977-3982
【文献】Z. Song et al.,ACS Appl. Mater. Interfaces,2016年,8,17033-17037
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/765
A61K 31/191
A61K 47/12
A61K 47/34
A61P 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリ(スチレン)(PS)とポリ(エチレンオキシド)(PEO)のブロックコポリマーを含み、前記PS/PEO分子量比が1.0より大きく約3.8以下である膜;及び(b)酸を包囲するコア、を含むポリマーソーム。
【請求項2】
前記ブロックコポリマーがジブロックコポリマーである、請求項1に記載のポリマーソーム。
【請求項3】
前記ポリマーソームが水和された場合に、前記酸が、1~6、好ましくは2~5、より好ましくは2~4のpHを生じる濃度にある、請求項1又は2に記載のポリマーソーム。
【請求項4】
前記酸が酸性水溶液内にある、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマーソーム。
【請求項5】
前記酸性水溶液中のpHが、1~6、好ましくは2~5、より好ましくは2~4である、請求項4に記載のポリマーソーム。
【請求項6】
前記酸が、ヒドロキシ酸、最も好ましくはクエン酸である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマーソーム。
【請求項7】
前記PS/PEO分子量比が、約1.3以上、3.1未満である、請求項1~
6のいずれか一項に記載のポリマーソーム。
【請求項8】
前記PS/PEO分子量比が、約1.4以上、3.1未満である、請求項1~
6のいずれか一項に記載のポリマーソーム。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載のポリマーソーム、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項10】
前記組成物が、液体、半固体又は固体の形態にある、請求項
9に記載の組成物。
【請求項11】
経腸使用又は局所使用のための、請求項1~
7のいずれか一項に記載のポリマーソーム又は請求項
9若しくは
10に記載の組成物。
【請求項12】
アンモニア、トリメチルアミン(TMA)、若しくはジメチルアミン(DMA)に関連する疾患又は障害、又はその症状、好ましくは高アンモニア血症又はトリメチルアミン尿症の治療に使用するための、請求項
11に記載のポリマーソーム又は組成物。
【請求項13】
a.有機溶媒、好ましくは、水非混和性又は部分的水混和性有機溶媒にPSとPEOのブロックコポリマーを溶解し、コポリマー含有有機相を形成すること;
b.前記ポリマーソームを形成するように、前記コポリマー含有有機溶媒相と酸含有水相を混合すること;及び
c.前記有機溶媒を除去すること、
を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載のポリマーソームを作製する方法。
【請求項14】
前記水相が50~700mMの酸を含む、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜貫通pH勾配ポリマーソーム並びにアンモニア及びそのメチル化類似体(例えば、トリメチルアミン(TMA))の除去におけるそれらの使用に関する。より具体的には、本発明は、非生分解性両親媒性ブロックコポリマーを含むポリマーソーム、並びに例えば、高アンモニア血症、トリメチルアミン尿症、心血管疾患及び/又は慢性腎疾患の治療のためのアンモニア及び/又はそのメチル化類似体(例えば、TMA)の除去におけるポリマーソームの経腸(例えば、経口)使用若しくは局所使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア(NH3)及びそのメチル化類似体(例えば、TMA(N(CH3)3)は、類似の物理化学的性質(例えば、低分子量、類似のpKa及びlogPなど)を有する。これらは両方とも、主に消化管で生成され、体内におけるそれらの過剰な存在は、様々な障害及びそれらの症状に関連している。
【0003】
アンモニア
アンモニア(NH3)は、肝機能障害(例えば、肝硬変、急性肝不全、門脈大循環シャント、先天性アンモニア代謝異常による)を患っている患者に蓄積する神経毒性のある内因性代謝産物である(Matoori及びLeroux ADDR 2015;90:55-68)。
【0004】
血液における高アンモニアレベル(高アンモニア血症)は、潜在的に死に至る深刻な急性及び慢性の症状を有する神経精神医学的状態である肝性脳症に関連する(Vilstrupら、Hepatology 2014;60:715-735)。肝性脳症は、米国だけで2009年に20000超の入院をもたらし、70億米国ドルを超えるコストがかかっている(Stepanovaら,Clin Gastroenterol Hepatol 2012;10:1034-1041.e1;Poordad,Alim Pharmacol Therap 2006;25:3-9)。肝性脳症による単一入院当たりの入院コストは、2004年の22,511米国ドルから2010年の37,398米国ドルへと増加した(Neffら、Clinicoecon Outcomes Res.2013;5:143-152)。
【0005】
体内のアンモニアの主な供給源の1つは、結腸におけるウレアーゼ産生細菌である(Matoori及びLeroux、前出)。したがって、肝性脳症のための臨床実践ガイドラインは、むしろ非特異的様式で結腸アンモニアの生成及び吸収に取り組む非吸収性二糖類ラクツロース(一般的に使用される下剤)及び抗生物質リファキシミン(例えば、Xifaxan(商標))を肝性脳症の第一選択療法及び第二選択療法として勧めている(Vilstrupら、前出)。これらの両方の経口に利用可能な療法は、患者集団の大部分において肝性脳症の症状及び進行を制御するのに失敗し、これらの療法下にある多くの患者は、下痢などの副作用に苦しむ(Vilstrupら、前出;Rose Clinical Pharmacology & Therapeutics 2012;92:321-331;Leevyら,Dig Dis Sci 2007;Mullenら、Clin Gastroenterol Hepatol 2014;12:1390-1397.e2)。
【0006】
経口投与される球状炭素吸着体(AST-120、Kremezin(登録商標))はまた、肝性脳症の動物モデルにおけるアンモニアの隔離及び高アンモニア血症関連症状の改善について開示されている(Bosoiら、Hepatology 2011;53:1995-2002)。機構的に、アンモニアは、腸内でAST-120微粒子に吸着し、その後、糞を介して排泄される。肝性脳症患者での臨床試験において、AST-120治療は、おそらくアンモニアの不十分な結合により、神経心理学的症状に臨床的改善をもたらさなかった(Bajajら、J.Hepatol 2013;58:S84,Bosoiら、前出)。炭素吸着剤は、様々な化合物に結合し、重要な内因性又は外因性物質との干渉のリスクを有することが知られている(Schulmanら,Am J Kidney Dis 2006;47:565-577;Neuvonen及びElonen Eur J Clin Pharmacol 1980;17:51-57;Neuvonen及びOlkkola Med Toxicol 1988;3:33-58)。
【0007】
侵襲的であり、主に、重症の急性高アンモニア血症の症状を治療するのに適しているので、体外のアプローチ(例えば、血液透析)に基づくアンモニア除去治療戦略は、肝性脳症の慢性的性質によって理想的ではない。
【0008】
高アンモニア血症誘発性肝性脳症を患っている患者のための理想的な治療法は、腸内治療(例えば、経口)であり、アンモニア取り込みに強力かつ選択的であり、かつ胃腸管の過酷な環境において安定である。
【0009】
トリメチルアミン
トリメチルアミン(TMA)(N(CH3)3)は、栄養物質(例えば、コリン、カルニチン、レシチン)の細菌代謝によって腸内で生成される第三級アミンである(Wang Zら、(2011).Nature 472(7341),57-63;Wise PMら(2011).The American journal of medicine 124(11),1058-1063)。その後、TMAは、肝臓においてフラビンモノオキシゲナーゼ3によって酸化され、非臭気トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)になる(Yeung CKら、(2007).Archives of biochemistry and biophysics,464(2),251-259)。TMA及びその代謝物TMAOは、いくつかの疾患の病因に関与している。
【0010】
トリメチルアミン尿症(魚臭症候群としても知られている)は、フラビンモノオキシゲナーゼ3欠乏と関連する常染色体劣性障害である(Yeungら、前出)。トリメチルアミン尿症に罹患している患者は、体液(尿、汗)及び呼気中のTMA量の上昇により、一般に、(多くの場合、腐った魚に関連する)悪臭が漂う(Wiseら、前出)。トリメチルアミン尿症の診断は、通常、食事のコリン負荷並びにその後のTMA及びTMAOの尿分析に基づく(Wiseら、前出)。知覚可能な匂いは、主に皮膚表面から生じ、食事に依存して変化する(Wiseら、前出)。それらの悪臭により、トリメチルアミン尿症患者は、多くの場合心理的な症状(例えば、うつ病、自殺傾向)及び社会的孤立に苦しむ(Todd WA(1979).The Journal of pediatrics,94(6),936-937)。
【0011】
TMAOレベルの上昇はまた、心血管疾患及び慢性腎疾患のリスクの増加と関連しており(Tang WWら(2013).New England Journal of Medicine 368(17),1575-1584;Tang WWら(2015).Circulation research 116(3),448-455);腸の微生物TMA生産の阻害は、アテローム硬化性病変の減少につながった(Wang Zら(2015).Cell 163(7),1585-1595)。
【0012】
さらに、TMAは、細菌性膣炎における不快臭の一因であることが見出された(Blankenstein Tら(2015).Archives of gynecology and obstetrics 292(2),355-362)。
【0013】
トリメチルアミン尿症の治療
トリメチルアミン尿症の治療において、アブラナ科野菜及びカルニチン、コリン、又はレシチンが豊富な食品を避けるなどの食事制限は、悪臭を減少させるために推奨されている(Cashman JRら(1999)、食物インドールの存在下でのヒトフラビン含有モノオキシゲナーゼ3型(FMO3)の阻害のインビトロ及びインビボ研究(In-vitro and in-vivo studies inhibition of human flavin-containing monooxygenase form 3(FMO3) in the presence of dietary indoles)、Biochem Pharmacol 58,1047-1055;Cashman JRら(2003)。トリメチルアミン尿症に関連するヒトフラビン含有モノオキシゲナーゼ3型(FMO3)の生化学的及び臨床的態様(Biochemical and clinical aspects of the human flavin-containing monooxygenase form 3(FMO3) related to trimethylaminuria)、Current drug metabolism,4(2),151-170;Danks DMら(1976)。トリメチルアミン尿症:食事は必ずしも魚臭を抑制しない(Trimethylaminuria:diet does not always control the fishy odor)、The New England Journal of Medicine,295(17),962-962)。しかしながら、これらの制限措置は、患者にとって厄介であり、必ずしも悪臭体蒸気の十分な減少をもたらさない(Danksら、前出)。腸においてTMA生成微生物の成長及び代謝を阻害する特定の経口適用抗生物質(例えば、ネオマイシン、メトロニダゾール)は、一時的に症状を緩和することができる(Danksら、前出;Treacy Eら(1995).Journal of inherited metabolic disease,18(3),306-312)。しかしながら、有益な効果は全ての患者において観察されず(Treacyら、前出)、長期の抗生物質の使用は、胃腸の副作用のリスクを有する(Levy J(2000) The American Journal of Gastroenterology,95(1),S8-S10)。経口投与された活性炭への吸着によるTMAの除去はまた、トリメチルアミン尿症に罹患する特定の患者に有益であることが示されている(Yamazaki Hら(2004)日本人のトリメチルアミン尿症の患者におけるトリメチルアミンの尿排泄に対する食事サプリメント、活性炭及び銅クロロフィリンの効果(Effects of the dietary supplements,activated charcoal and copper chlorophyllin,on urinary excretion of trimethylamine in Japanese trimethylaminuria patients.Life sciences,74(22),2739-2747)。さらに、TMAはプロトン化状態で低揮発性であるので、酸性石鹸の使用が推奨される(Wilcken B (1993) 魚臭症候群における酸性石鹸(Acid soaps in the fish odor syndrome).BMJ: British Medical Journal,307(6917),1497)。
【0014】
アンモニアメチル化類似体ジメチルアミン(DMA)は、TMA及びアンモニアと類似の物理化学的性質を共有し、GI管で生成される。これは、既知の発癌物質の前駆体である。
【0015】
本発明の説明はいくつかの文書を参照し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、経腸(例えば、経口)及び局所経路を介するアンモニア及びそのメチル化類似体(例えば、TMA)の解毒/除去のための膜貫通pH勾配ポリマーソームの組成物、調製及び使用を説明する。本明細書で示されるように、本発明のポリマーソームは、模擬胃腸液中のアンモニア及びそのメチル化類似体(例えば、TMA)を強力に隔離し、この過酷な環境に抵抗する。さらに、本発明のポリマーソームは、乳濁液(例えば、ローション及びクリームなどの局所製剤)中のTMAを強力に隔離する。
【0017】
より具体的には、本発明のポリマーソームは、例えば、膜貫通pH勾配リポソーム(例えば、実施例1を参照)とは異なり、腸内で遭遇する状態を模倣する媒体で希釈したときに、それらの隔離特性を呈することが示された。様々な模擬胃腸状態(高胆汁塩濃度(実施例6~8及び13)、低浸透圧及び高浸透圧(実施例9)、消化酵素の存在(実施例10)及び高カチオン濃度(実施例11)の下でアンモニア取り込みを示すことにより、胃腸環境におけるポリマーソームの安定性及び有効性が以下の実施例で実証された。ポリマーソームの安定性及び有効性は、例えば、局所製剤(実施例13)に対応する水中油型(o/w)乳濁液中でも実証された。
【0018】
本発明は、例えば、非生分解性両親媒性ブロックコポリマー(例えば、ポリ(スチレン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PS-b-PEO、ポリ(スチレン)-b-ポリ(エチレングリコール)、PS-b-PEGとしても知られる))で構成されたポリマーソームについて記載する。
【0019】
より具体的には、本発明の一態様によると、ポリマーソームであって、(a)その膜が、本明細書で定義される疎水性非荷電非生分解性ポリマーと親水性非荷電非生分解性ポリマーのブロックコポリマーを含み、該疎水性非荷電非生分解性ポリマー/親水性非荷電非生分解性ポリマーの分子量比が1.0より高く、4.0未満(例えば、1.0より高く、3.0未満)であり;かつ(b)そのコアが酸を包囲する、ポリマーソームが提供される。
【0020】
より具体的には、本発明の一態様によると、(a)本明細書で定義される疎水性非荷電非生分解性ポリマーと親水性非荷電非生分解性ポリマーのブロックコポリマーを含み、該疎水性非荷電非生分解性ポリマー/親水性非荷電非生分解性ポリマーの分子量比が1.0より高く、4.0未満(例えば、1.0より高く、3.0未満)である膜;及び(b)酸を包囲するコア、を含むポリマーソームが提供される。
【0021】
より具体的には、本発明の一態様によると、(a)本明細書で定義される疎水性非荷電非生分解性ポリマーと親水性非荷電非生分解性ポリマーのブロックコポリマーを含む膜であって、該疎水性非荷電非生分解性ポリマー/親水性非荷電非生分解性ポリマーの分子量比が1.0より高く、4.0未満(例えば、1.0より高く、3.0未満)である膜;及び(b)酸を包囲するコア、からなるポリマーソームが提供される。
【0022】
本発明のより具体的な態様によると、ポリマーソームであって、(a)その膜が、ポリ(スチレン)(PS)とポリ(エチレンオキシド)(PEO)のブロックコポリマーを含み、該PS/PEO分子量比が1.0より高く、4.0未満(例えば、1.0より高く、3.0未満)であり;かつ(b)そのコアが酸を包囲する、ポリマーソームが提供される。本発明のより具体的な態様によると、(a)ポリ(スチレン)(PS)とポリ(エチレンオキシド)(PEO)のブロックコポリマーを含み、該PS/PEO分子量比が1.0より高く、4.0未満(例えば、1.0より高く、3.0未満)である膜;及び(b)酸を包囲するコア、を含むポリマーソームが提供される。本発明のより具体的な態様によると、(a)ポリ(スチレン)(PS)とポリ(エチレンオキシド)(PEO)のブロックコポリマーを含み、該PS/PEO分子量比が1.0より高く、4.0未満(例えば、1.0より高く、3.0未満)である膜;及び(b)酸を包囲するコア、からなるポリマーソームが提供される。本発明のポリマーソームは架橋されてもよいし、されなくてもよい。
【0023】
特定の実施形態において、ポリマーソームであって、(a)その膜が、ポリ(スチレン)(PS)とポリ(エチレンオキシド)(PEO)のブロックコポリマーからなり、該PS/PEO分子量比が1.0より高く、4.0未満(例えば、1.0より高く、3.0未満)であり;かつ(b)そのコアが酸を包囲する、ポリマーソームが提供される。特定の実施形態において、(a)ポリ(スチレン)(PS)とポリ(エチレンオキシド)(PEO)のブロックコポリマーからなり、該PS/PEO分子量比が1.0より高く、4.0未満(例えば、1.0より高く、3.0未満)である膜;及び(b)酸を包囲するコア、を含むポリマーソームが提供される。特定の実施形態において、(a)ポリ(スチレン)(PS)とポリ(エチレンオキシド)(PEO)のブロックコポリマーからなり、該PS/PEO分子量比が1.0より高く、4.0未満(例えば、1.0より高く、3.0未満)である膜;及び(b)酸を包囲するコア、からなるポリマーソームが提供される。
【0024】
本発明のポリマーソームの特定の実施形態において、該ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマーである。本発明のポリマーソームの別の特定の実施形態において、該酸は、ポリマーソームが水和したときに、1~6、好ましくは2~5、より好ましくは2~4のpHを生じる濃度にある。本発明のポリマーソームの別の特定の実施形態において、該酸は、酸性水溶液中にある。本発明のポリマーソームの別の特定の実施形態において、酸性水溶液中のpHは、1~6、好ましくは2~5、より好ましくは2~4である。本発明のポリマーソームの別の特定の実施形態において、該酸は、(i)クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、酒石酸若しくは乳酸などのヒドロキシ酸;(ii)酢酸などの小鎖脂肪酸;(iii)ウロン酸などの糖酸;(iv)マロン酸などのジカルボン酸;(v)プロパン-1,2,3-トリカルボン酸若しくはアコニット酸などのトリカルボン酸;(vi)1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸などのテトラカルボン酸;(vii)1,2,3,4,5-ペンタンペンタカルボン酸などのペンタカルボン酸;(viii)ポリ(アクリル酸)若しくはポリ(メタクリル酸)などのポリマーポリ(カルボン酸);(ix)エチレンジアミン四酢酸などのポリアミノカルボン酸;又は(x)それらの少なくとも2つの組合せである。より具体的な実施形態において、該酸は、ヒドロキシ酸、好ましくはクエン酸である。別の特定の実施形態において、本発明のポリマーソームは、酸含有水相と、コポリマーを含む有機溶媒を混合することを含む方法によって調製される。本発明のポリマーソームの別の特定の実施形態において、有機溶媒は、水非混和性又は部分的水混和性である。本発明のポリマーソームの別の特定の実施形態において、該ポリマーソームコアは、さらに、アンモニアを包囲する。本発明のポリマーソームの別の特定の実施形態において、該ポリマーソームコアは、さらに、アンモニア又はそのメチル化類似体を包囲し、該メチル化類似体は好ましくはTMAである。本発明のポリマーソームの別の特定の実施形態において、該ポリマーソームコアは、さらに、アンモニアメチル化類似体(例えば、TMA)を包囲する。
【0025】
本発明の別の態様によると、本発明のポリマーソーム、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物が提供される。
【0026】
本発明の組成物の別の特定の実施形態において、該組成物は、液体、又は固体の形態にある。本発明の組成物の別の特定の実施形態において、該組成物は、液体、半固体又は固体の形態にある。
【0027】
本発明の別の態様によると、腸内使用のために、本発明のポリマーソーム又は本発明の組成物が提供される。本発明の別の態様によると、経腸使用又は局所使用のための、本発明のポリマーソーム又は本発明の組成物が提供される。
【0028】
本発明の別の態様によると、局所使用のための、本発明のポリマーソーム又は本発明の組成物が提供される。
【0029】
別の態様によると、本発明のポリマーソーム又は本発明の組成物は、アンモニアを除去する際に使用するためのものである。
【0030】
別の態様によると、本発明のポリマーソーム又は本発明の組成物は、アンモニアメチル化類似体(例えば、TMA)を除去する際に使用するためのものである。
【0031】
本発明のポリマーソーム又は組成物は、アンモニア若しくはアンモニアメチル化類似体に関連する疾患又は障害、又はその症状、好ましくは高アンモニア血症又はトリメチルアミン尿症の治療に使用するためのものである。
【0032】
別の態様によると、本発明のポリマーソーム又は本発明の組成物は、高アンモニア血症の治療に使用するためのものである。
【0033】
別の態様によると、本発明のポリマーソーム又は本発明の組成物は、それを必要とする対象におけるトリメチルアミン尿症若しくはその症状又はTMA関連心血管疾患若しくはその症状又はTMA関連腎疾患若しくはその症状又はTMA関連細菌性膣炎若しくはその症状の治療に使用するためのものである。
【0034】
使用するためのポリマーソームの特定の実施形態において、トリメチルアミン尿症の症状及び/又は細菌性膣炎の症状は、(例えば、皮膚及び/又は尿及び/又は呼気及び/又は膣からの)悪臭である。
【0035】
別の態様において、それを必要とする対象に、ポリマーソーム又は組成物を(例えば、経腸又は局所)投与することを含む本発明のポリマーソーム又は本発明の組成物を使用する方法が提供される。別の態様において、それを必要とする対象への(例えば、経腸又は局所)投与のための本発明のポリマーソーム又は本発明の組成物の使用が提供される。別の態様において、薬剤としての本発明のポリマーソーム又は本発明の組成物の使用が提供される。
【0036】
別の態様によると、上記の方法(複数可)又は使用(複数可)は、アンモニアを除去するための(薬剤の製造のための)ものである。別の態様によると、上記の方法(複数可)又は使用(複数可)は、それを必要とする対象におけるアンモニアメチル化類似体(例えば、TMA)を除去するための(薬剤の製造のための)ものである。別の態様によると、上記の方法(複数可)又は使用(複数可)は、それを必要とする対象におけるアンモニア若しくはアンモニアメチル化類似体に関連する疾患又は障害、又はその症状、及び好ましくは、高アンモニア血症又はトリメチルアミン尿症、より好ましくは高アンモニア血症の治療のため(薬剤の製造のため)のものである。別の態様によると、上記の方法(複数可)又は使用(複数可)は、それを必要とする対象におけるトリメチルアミン尿症若しくはその症状又はTMA関連心血管疾患若しくはその症状又はTMA関連腎疾患若しくはその症状又はTMA関連細菌性膣炎若しくはその症状の治療のため(薬剤の製造のため)のものである。上記の方法(複数可)又は使用(複数可)の特定の実施形態において、トリメチルアミン尿症の症状及び/又は細菌性膣炎の症状は、(例えば、皮膚及び/又は尿及び/又は呼気及び/又は膣からの)悪臭である。
【0037】
本発明のさらに別の態様によると、本発明のポリマーソームを作製する方法であって、(a)有機溶媒、好ましくは水非混和性又は部分的水混和性有機溶媒にPSとPEOのブロックコポリマーを溶解して、コポリマー含有有機相を形成すること;(b)ポリマーソームを形成するために、酸含有水相とコポリマー含有有機溶媒相を混合すること;及び(c)有機溶媒を除去すること、を含む方法が提供される。
【0038】
本発明の方法の特定の実施形態において、該水相は、50~700mMの酸を含む。
【0039】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象においてアンモニアを除去するための上記のポリマーソーム又は組成物、及び該ポリマーソーム又は組成物を使用するための説明書を含むキットを提供する。
【0040】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象における高アンモニア血症を治療するための上記のポリマーソーム又は組成物、及び該ポリマーソーム又は組成物を使用するための説明書を含むキットを提供する。
【0041】
別の態様において、本発明は、アンモニアメチル化類似体(例えば、TMA)を除去するための上記のポリマーソーム又は組成物、及び該ポリマーソーム又は組成物を使用するための説明書を含むキットを提供する。
【0042】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象におけるトリメチルアミン尿症若しくはその症状又はTMA関連心血管疾患若しくはその症状又はTMA関連腎疾患若しくはその症状又はTMA関連細菌性膣炎又はその症状を治療するための上記のポリマーソーム又は組成物、及び該ポリマーソーム又は組成物を使用するための説明書を含むキットを提供する。
【0043】
キットの特定の実施形態において、トリメチルアミン尿症の症状及び/又は細菌性膣炎の症状は、(例えば、皮膚及び/又は尿及び/又は呼気及び/又は膣からの)悪臭である。
【0044】
本発明の他の目的、利点及び特徴は、添付の図面を参照して、単なる例として与えられる以下のその具体的な実施形態の非限定的な説明を読めばより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】膜水和法を用いて調製した膜貫通pH勾配リポソームのインビトロアンモニア取り込みを示すグラフである(n=3、平均値及び標準偏差)。
【
図2】有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約1.7のPBD/PEO数平均Mw比を有する膜貫通pH勾配PBD-b-PEOポリマーソームのインビトロアンモニア取り込みを示すグラフである(n=3、平均値及び標準偏差)。
【
図3】有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約2.4のPDMS/PMOXA数平均Mw比を有する膜貫通pH勾配PMOXA-b-PDMS-b-PMOXAポリマーソームのインビトロアンモニア取り込みを示すグラフである(n=3、平均値及び標準偏差)。
【
図4】膜水和法を用いて調製した、約1.3又は2.5のPS/PEO数平均Mw比を有する膜貫通pH勾配PS-b-PEOポリマーソームのインビトロアンモニア取り込みを示すグラフである(n=3、平均値及び標準偏差)。
【
図5】有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約1.0のPS/PEO数平均Mw比を有する膜貫通pH勾配PS-b-PEOポリマーソームの、高胆汁塩濃度でのインビトロアンモニア取り込みを示すグラフである(n=3、平均値及び標準偏差)。
【
図6】有機溶媒としてジクロロメタン又はトルエンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約1.3~2.8のPS/PEO数平均Mw比を有する膜貫通pH勾配PS-b-PEOポリマーソームの、高胆汁塩濃度でのインビトロアンモニア取り込みを示すグラフである(n=3、平均値及び標準偏差)。
【
図7】有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約3.8のPS/PEO数平均Mw比を有する膜貫通pH勾配PS-b-PEOポリマーソームの、高胆汁塩濃度でのインビトロアンモニア取り込みを示すグラフである(n=3、平均値及び標準偏差)。
【
図8】有機溶媒としてクロロホルムを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約1.3のPS/PEO数平均Mw比を有する膜貫通pH勾配PS-b-PEOの、高胆汁塩濃度でのインビトロアンモニア取り込みを示すグラフである(n=3、平均値及び標準偏差)。
【
図9】有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約1.3又は2.5のPS/PEO数平均Mw比を有する膜貫通pH勾配PS-b-PEOポリマーソームの、低浸透圧及び高浸透圧条件下でのインビトロアンモニア取り込みを示すグラフである(n=3、平均値及び標準偏差)。
【
図10】有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約2.5のPS/PEO数平均Mw比を有する膜貫通pH勾配PS-b-PEOポリマーソームの、消化酵素の存在下でのインビトロアンモニア取り込みを示すグラフである(n=3、平均値及び標準偏差)。
【
図11】有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約1.3のPS/PEO数平均Mw比を有する膜貫通pH勾配PS-b-PEOポリマーソームの、高カリウム濃度でのインビトロアンモニア取り込みを示すグラフである(n=3、平均値及び標準偏差)。
【
図12】有機溶媒としてジクロロメタンを用い、様々な濃度の酸を用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約1.3のPS/PEO数平均Mw比を有する膜貫通pH勾配PS-b-PEOポリマーソームのインビトロアンモニア取り込みを示すグラフである(n=3~4、平均値及び標準偏差)。
【
図13】有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約1.4又は2.0のPS/PEO数平均Mw比を有する膜貫通pH勾配PS-b-PEOポリマーソームの、高胆汁塩濃度で、O/W乳濁液での前暴露後の、インビトロTMA取り込みを示すグラフである(n=3、平均値及び標準偏差)。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、アンモニア及び/又はそのメチル化類似体(例えば、TMA)を捕捉するための膜貫通pH勾配を有するポリマーソーム、該ポリマーソームを含む組成物、該ポリマーソームを作製するためのプロセス並びにこれらのポリマーソーム及び組成物の使用を包含する。
【0047】
ポリマーソーム
ポリマーソームは小胞であり、その二重膜は合成コポリマーから構成されている。それらは、レーザー回折によって決定されるように、50nm~100μm又はそれ以上の範囲、特定の実施形態において100nm~40μmの範囲の平均直径を有する。100nm~40μmと変動する平均直径を有する本発明の被試験ポリマーソームは、効果的にアンモニアをカプセル化することができたが、40μm超の直径を有するポリマーソームはまた効果的であり得ないと考える理由はない。
【0048】
本発明のポリマーソームは、非生分解性両親媒性ブロックコポリマーを含み、有機溶媒を用いて調製される。
【0049】
本発明の作用機序は、ポリマーソーム膜全域のpH勾配に基づく。水性ポリマーソームコア中に含有される酸性剤は、腸及び皮膚における生理学的pHとは異なる(より低い)pHを有する。したがって、アンモニア及びそのメチル化類似体(例えば、TMA)は、それらの荷電していない状態でポリマーソームの疎水性ポリマー膜を通って拡散し、その後、内部区画内でそのプロトン化(イオン化)状態(例えば、アンモニアの場合にはアンモニウム)で捕捉することができる。アンモニア及びTMAは、主に腸及び皮膚のpHでそのプロトン化状態で存在するが、ごく一部が常にその非イオン化状態にある。この画分は、ポリマーソーム中に拡散し、ポリマーソーム内にそのプロトン化状態で捕捉することができ、この結果、平衡に変わり、小胞内により多くのアンモニア及びTMAをもたらす。
【0050】
したがって、本明細書で使用する「アンモニアを捕捉するための膜貫通pH勾配」の性質及び/又は「アンモニア及び/又はそのメチル化類似体を捕捉するための膜貫通pH勾配」は、腸内及び皮膚上で遭遇する状態を模倣する媒体に希釈した場合に、アンモニア(及び/又はそのメチル化類似体)を隔離する本発明のポリマーソームの能力を指す。
【0051】
本明細書で使用する用語「アンモニアメチル化類似体」は、そのように限定されないが、TMA及びDMAを指す。特定の実施形態において、それはTMAを指す。
【0052】
ブロックコポリマー
「ポリマー」は、連結されたモノマー単位を含む巨大分子である。モノマー単位は、単一の種類(均質)、又は様々な種類(異種)のものであり得る。2種以上の異なるモノマーが共に結合して、重合する場合、その成果物はコポリマーと呼ばれる。別の種類の2以上のモノマー(別のブロック)に共有結合した単一種の2以上のモノマー(ブロック)の配列で作られたコポリマーは、ブロックコポリマーと呼ばれる。共に共有結合した2つのブロックの種類で作られたコポリマーはジブロックと呼ばれ、3つのブロックの種類で作られたコポリマーはトリブロックなどと呼ばれる。ブロックコポリマーは、それらを生成するために使用される特定の合成の結果として、異なる末端基を含むことができる。
【0053】
本発明のポリマーソームは、ブロックコポリマーを含む。特定の実施形態において、本発明のブロックコポリマーは、ジブロック又はトリブロックコポリマーである。これらのブロックコポリマーは、両親媒性であり、少なくとも2つのポリマー、すなわち、芳香族の疎水性の高いポリマー(例えば、ポリ(スチレン))及び親水性非荷電非生分解性ポリマーで形成されている。より具体的な実施形態において、ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマー(例えば、ポリ(スチレン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PS-b-PEO))、又はトリブロックコポリマー(例えば、PEO-b-PS-b-PEO))(すなわち、PS PEOブロックコポリマー))である。
【0054】
「両親媒性」コポリマーは、親水性(水溶性)基と疎水性(水不溶性)基の両方を含有するものである。
【0055】
本明細書で使用する用語「非生分解性」は、胃腸状態で非加水分解性(例えば、胃腸管における酵素(例えば、プロテアーゼ、リパーゼ)による分解又は他の手段(例えば、pH)を介した分解に対する耐性)を意味する。
【0056】
疎水性非荷電非生分解性ポリマー
特定の実施形態において、本発明のコポリマーに使用される疎水性非荷電非生分解性ポリマーは、ポリ(エチルエチレン)(-(CH2-CH(C2H5))n-、すなわち、-(C4H8)n-)又はポリ(スチレン)(-(CH2-CH(Ph))n-、すなわち、-(CH2-CH(C6H5))n-、すなわち-(C8H8)n-)である。特定の実施形態において、疎水性非荷電非生分解性ポリマーは、ポリ(スチレン)である。本発明で使用するためのポリ(スチレン)には、非置換スチレンモノマー及び/又は置換/官能化スチレンモノマーが含まれ得る。具体的に別段の定義がない限り、したがって、用語「ポリ(スチレン)」は、もっぱら非置換のスチレンモノマー、置換モノマーと非置換モノマーの混合物、又はもっぱら置換モノマーを含むポリ(スチレン)を命名するために一般的に本明細書で使用される。スチレンモノマー上の1以上の置換基は、フェニル上及び/又は炭素上に置換基を含んでよく、その上にフェニルが結合しており、かつ/又はフェニル(例えば、二環系、三環系など、C3~C6アリール(複数可)及び/又はC3~C6シクロアルキル(複数可)を含む)と多環誘導体を形成し得る。潜在的な置換基には、アルキル(C1~C7(C1、C2、C3、C4、C5、C6又はC7、より具体的には、C1、C2又はC3)、アリール(C3~C6)、C3~C8のシクロアルキル、アリールアルキル、アセトキシル、アルコキシル(メトキシル、エトキシル、プロパノキシル、ブトキシルなど)、ハロゲン(Br、Cl、Fなど)、アミン、アミド、アルキルアミン、NO2が含まれる。置換基は、それ自体が置換されていてよい。そのように限定されないが、置換スチレンモノマーには、アセトキシスチレン、ベンズヒドリルスチレン、ベンジルオキシメトキシスチレン、ブロモスチレン(2-、3-、4-又はアルファ)、クロロスチレン(2-、3-、4-又はアルファ)、フルオロスチレン(2-、3-、4-又はアルファ)、tert-ブトキシスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロメチルスチレン、ジクロロスチレン、ジフルオロスチレン、ジメトキシスチレン、ジメチルスチレン、ジメチルビニルベンジルアミン、ジフェニルメチルペンテン、(ジフェニルホスフィノ)スチレン、エトキシスチレン、イソプロペニルアニリン、イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、[N-(メチルアミノエチル)アミノメチル]スチレン、メチルスチレン、ニトロスチレン、ペンタフルオロフェニル、4-ビニル安息香酸、ペンタフルオロスチレン、(トリフルオロメチル)スチレン(2-、3-又は4-)、トリメチルスチレン、ビニルアニリン(3-又は4-)、ビニルアニソール、ビニル安息香酸(3-、4-)、ビニルベンジルクロリド、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムビニルビフェニル、4-ビニルベンゾシクロブテン(4-など)、ビニルアントラセン(9-など)、2-ビニルナフタレン、ビニルビフェニル(3-、4-など)などが含まれる。特定の実施形態において、置換スチレンモノマーは、アルキルスチレン(例えば、メチルスチレン)又はtert-ブチルスチレンである。一実施形態において、PSは、少なくとも1つの置換スチレンモノマーを含む。置換基には、非イオン性基(例えば、メチル基又はtert-ブチル基)であり得る。別の特定の実施形態において、ポリ(スチレン)中のスチレンモノマーは置換されていない。
【0057】
親水性非荷電非生分解性ポリマー
本発明のブロックコポリマー中のポリ(スチレン)と共に使用することができる親水性非荷電非生分解性ポリマーには、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(メチルオキサゾリン)、及びオリゴエチレングリコールアルキルアクリレートのポリマーが含まれる。特定の実施形態において、親水性非荷電非生分解性ポリマーは、ポリエチレンオキシドである。
【0058】
本発明における使用のためのポリ(エチレンオキシド)(PEO)は、一般式:(-(O-CH2-CH2)n-、すなわち、-(C2H4O)n-)を有し、非置換及び置換/官能化エチレンオキシドモノマーを含む。したがって、具体的に特に定義しない限り、用語「ポリ(エチレンオキシド)」又はPEOは、もっぱら非置換のエチレンオキシドモノマー、置換モノマーと非置換モノマーの混合物又はもっぱら置換モノマーを含むPEOを命名するために本明細書で一般的に使用される。一実施形態において、PEOは、少なくとも1つの置換エチレンオキシドモノマーを含む。別の実施形態において、エチレンオキシドモノマーは、置換されていない。
【0059】
ポリマーの割合
PSとPEOのブロック(例えば、ジブロックPS-b-PEO又はトリブロックPEO-b-PS-b-PEO)の分子量は、二重層の構造及び安定性が保持される限り、変更することができる。本発明者らは、安定したPS PEOポリマーソームは、1.0より高く、4未満のPS/PEO数平均分子量比(例えば、実施例6~13を参照)を形成することを見出した。特定の実施形態において、該比は、約1.1以上で、4未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.2以上で、4未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、4未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、4未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1より高く、約3.9以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.1以上で、3.9未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.2以上で、3.9未満である。別の特定の実施形態において、該比は約1.3以上、3.9未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、3.9未満である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約3.8以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.1以上で、3.8未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.2以上で、3.8未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、3.8未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、3.8未満である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約3.7以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.1以上で、3.7未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.2以上で、3.7未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.3以上、3.7未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、3.7未満である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約3.6以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.1以上で、3.6未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.2以上で、3.6未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、3.6未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、3.6未満である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約3.5以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.1以上で、3.5未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.2以上で、3.5未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、3.5未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、3.5未満である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約3.4以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.1以上で、3.4未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.2以上で、3.4未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、3.4未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、3.4未満である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約3.3以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.1以上で、3.3未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.2以上で、3.3未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、3.3未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、3.3未満である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約3.2以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.1以上で、3.2未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.2以上で、3.2未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、3.2未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、3.2未満である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約3.2以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.1以上で、3.1未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.2以上で、3.1未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、3.1未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、3.1未満である。特定の実施形態において、該比は、約1.1以上で、3未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.2以上で、3未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、3未満である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、3未満である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約2.9以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.1以上で、約2.9以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.2以上で、約2.9以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、約2.9以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、約2.9以下である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約2.8以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.1以上で、約2.8以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.2以上で、約2.8以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、約2.8以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、約2.8以下である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約2.7以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.1より高く、約2.7以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.2~約2.7以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、約2.7以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、約2.7以下である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約2.6以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.1より高く、約2.6以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.2~約2.6以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、約2.6以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、約2.6以下である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約2.5以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.1より高く、約2.5以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.2~約2.5以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、約2.5以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、約2.5以下である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約2.4以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.1より高く、約2.4以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.2~約2.4以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、約2.4以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、約2.4以下である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約2.3以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.1より高く、約2.3以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.2~約2.3以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、約2.3以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、約2.3以下である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約2.2以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.1より高く、約2.2以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.2~約2.2以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、約2.2以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、約2.2以下である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約2.1以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.1より高く、約2.1以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.2~約2.1以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、約2.1以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、約2.1以下である。別の特定の実施形態において、該比は、1より高く、約2.0以下である。別の特定の実施形態において、該比は、約1.1より高く、約2.0以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.2~約2.0以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.3以上で、約2.0以下である。特定の実施形態において、該比は、約1.4以上で、約2.0以下である。
【0060】
上記の文の一般性を制限することなく、約400g/モル~20,000g/モルの分子量を有するPEOは、本発明に包含される。しかしながら、出願人らは、より高い分子量のPEOは本発明で効果的に使用することができなかったことを予想する理由はない。分子量のより低いポリマーは、操作しやすいかもしれない。典型的には、PEOの分子量は、1000~5000g/モルである。PS分子量は、上記の比を満たすように選択される。本発明によると、PEOが例えば、約20,000g/モルの分子量を有する場合、PS分子量は約60,000g/モル未満である。
【0061】
疎水性非荷電非生分解性ポリマー+親水性非荷電非生分解性ポリマー(ジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマー(例えば、PS-b-ΡΕΟコポリマー又はPEO-b-PS-b-ΡΕΟコポリマー))で作られたポリマーソームの特性
この仮説に限定されないが、小胞膜内の高度に疎水性のポリマー(例えば、パイスタッキング相互作用を行う能力を有する芳香族(例えば、PS))の強力な相互作用は、胃腸液並びに油及び界面活性剤などの局所製剤に含まれる賦形剤に対する耐性を提供すると考えられている。実際、脂質(リポソーム)で作られる小胞、又はポリ(ブタジエン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PBD-b-PEO;ポリ(ブタジエン)-b-ポリ(エチレングリコール)、PBD-b-PEGとしても知られる;及びポリ(2-メチルオキサゾリン)-b-ポリ(ジメチルシロキサン)-b-ポリ(2-メチルオキサゾリン)、PMOXA-b-PDMS-b-PMOXA)などの他の両親媒性ジブロックコポリマーは、単純緩衝液(例えば、実施例3を参照)でアンモニアを取り込むことができないか、又は単純緩衝液でアンモニアを取り込むことができるが、腸液を模倣する媒体(例えば、実施例1及び2を参照)ではそれらを隔離する性質を失う。
【0062】
ポリマーソームの調製方法
コポリマーの調製
コポリマーを作製するための任意の公知の方法を用いることができる。本明細書に記載の実施例で使用されるコポリマーは、Advanced Polymer Materials社(PS-b-PEO及びPMOXA-b-PDMS-b-PMOXA)及びPolymer Source社(PBD-b-PEO)から購入した。
【0063】
ポリマーソームの調製
コポリマーを有機溶媒に溶解し、有機相を形成し、後者を酸性水溶液(例えば、クエン酸)(水相)と混合する。そのように限定されないが、混合は、水相中のポリマーを微細分散させ、その後、安定したポリマーソームを形成すると考えられる。混合工程は、異なる技術を介して行うことができる。例えば、水中油型(o/w)乳濁液(すなわち、酸性水溶液(すなわち、水相)中のポリマー含有有機溶媒相(すなわち、油相)、逆相蒸発、ナノ沈殿、又はダブル乳化の方法を用いて、ポリマー含有有機相と水相を混合することができる。
【0064】
o/w乳化法では、ポリマー含有有機溶媒を、しばらくの間、及び乳濁液を形成するのに十分な時間、超音波処理下で水性酸性相と混合する。以下の実施例において、水性相は、ポリマー含有有機溶媒相の添加前に30分間、攪拌しながら有機溶媒で飽和させた。その後、ポリマー含有有機溶媒相を、以下の機械の特定のパラメータ:振幅70、周期0.75(UP200H、200W、24kHz、ヒールシャー超音波技術)を使用して、(超音波処理機によって生成される熱を低減するために)氷浴中で3分間、超音波処理下で酸含有水相に添加した。乳濁液を作製するための当技術分野で公知の任意の方法を用いることができる。超音波処理、並びに乳濁液を生成するのに適切な特定の超音波処理パラメータ及び時間の使用は、使用される乳化技術に依存する。乳濁液は、本発明の調製方法で安定である必要はない。
【0065】
逆相蒸発法で、ポリマー含有有機溶媒と酸含有水相を含む二相系を超音波処理すると、油中水型(w/o)乳濁液が形成する。粘性ゲルのような状態が形成されるまで、外側相を減圧下で蒸発させた。ポリマーソームは、ゲル状態の崩壊に際して形成する(Szoka及びPapahadjopoulos.PNAS 1978;75:4194-4198)。
【0066】
ナノ沈殿法では、ポリマーを、適切な有機溶媒に溶解し、そこへ酸含有水をゆっくりと添加した。
【0067】
ダブル乳化法では、ポリマーソームは、酸含有水性内相を含有するw/o/wダブル乳濁液、中間相の完全又は部分的に水不混和性のポリマー含有有機溶媒、及び水性外相中で形成する。
【0068】
次いで、有機溶媒は、任意の公知の技術を用いてポリマーソームから除去される。溶媒は、対象による有害な溶媒摂取又は皮膚暴露を避けるために、投与前に除去される。そのように限定されないが、周囲圧力より低い圧力の印加、熱、濾過、クロスフロー濾過、透析、又はこれらの方法の組み合わせを用いて、溶媒を除去してもよい。
【0069】
有機溶媒の除去後、ポリマーソームを(ポリマーソームの内外にある酸性水溶液と共に)そのまま使用し、非カプセル化媒体の組成を変更するために精製し、かつ/又はさらに従来の医薬乾燥手順(例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥)により乾燥させることができる。乾燥工程は、保存及び輸送が容易である固体の剤形(粉末又はカプセル又は錠剤)の調製を可能にする。次いで、ポリマーソームを経口投与することが意図される場合は、乾燥ポリマーソームを水性媒体(例えば、水、ジュース)中に再分散させるか、又はそのまま(例えば、カプセル、錠剤)患者が摂取することができる。ポリマーソームを局所的に投与することが意図される場合は、ポリマーソームを、水溶液、ゲル、泡又はローション若しくはクリームなどの乳濁液などの任意の関連する局所製剤中に分散させることができる。全ての(そのまま、精製及び/又は乾燥された)そのような形態において、ポリマーソームコアは酸を含有する。胃腸管内又は皮膚上の製剤中にある場合、この酸はポリマーソームの膜貫通pH勾配を提供する。本発明のそのように形成されたポリマーソームは、コア内のpH及び/又は浸透圧を調節するためにポリマーソームの調製中に添加することができる酸、潜在的には塩(すなわち、ナトリウム、カリウム又はカルシウムなどの対イオンで部分的に脱プロトン化された酸)を含有し、その水和物の形態では、ポリマーソームはさらに水を含有する。
【0070】
ポリマーソームが水和される(すなわち、水性の酸性コアを含有する)場合は、そのコアのpHは、一般に約1~6(1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5又は6)である。特定の実施形態において、それは、約1~約5、約1~約4.5、約1~約4、約1.5~約5、約1.5~約4.5、約1.5~約4、約2~約5、約2~約4.5、約2~約4、約2.5~約5、約2.5~約4.5、約2.5~約4、約3~約5、約3~約4.5、及び約3~約5である。
【0071】
必ずしも、本発明のポリマーソームの安定性のために必要ではないが、それらはまた、架橋することができる。例えば、架橋剤のp-キシリレン-ジクロリド、1,4-ビス-クロロメチルジフェニル、モノクロロジメチルエーテル、ジメチルホルマール、トリス-(クロロメチル)-メシチレン、又はp,p’-ビス-クロロメチル-1,4-ジフェニルブタンとのフリーデル・クラフツ反応を用いて、ポリ(スチレン)を架橋することができる(Davankov及びTsyurupa,Reactive Polymers 1990;13:27-42)。
【0072】
溶媒
本発明において使用される溶媒はコポリマーを溶解し、次いで、ポリマー含有溶媒は、酸性水相と混合される。混合工程の間に(例えば、o/w乳濁液)、ポリマーの微細分散物が水性相中に形成される。混合工程の後に、溶媒は、患者/対象が摂取しないことを確実にするために除去(例えば、蒸発)される。
【0073】
約2%~約40%(v/v)の濃度の溶媒相/水相比率を使用することができる。特定の実施形態において、溶媒相/水相比率は、約5%~30%(v/v)である。別の特定で実施形態において、溶媒相/水相比率は、約5%~20%(v/v)である。別の特定の実施形態において、溶媒相/水相比率は、約5%~15%(v/v)である。別の特定の実施形態において、溶媒相/水相比率は、約10%(v/v)である。特定の実施形態において、生じる乳濁液中の溶媒相/水相比率は、約9%(v/v)である。
【0074】
特定の実施形態において、溶媒は有機溶媒である。
【0075】
そのように限定されないが、該溶媒は、塩素化溶媒(例えば、ジクロロメタン、例えば、実施例5~6、8~10、12参照;又はクロロホルム、例えば、実施例7参照)、アレーン又はアレーン誘導体(例えば、トルエン、例えば、実施例6参照)、脂肪族溶媒又は脂肪族溶媒誘導体(例えば、ヘキサン、1-ヘキサノール)、ケトン又はケトン誘導体(例えば、2-ヘキサノン)、エーテル又はエーテル誘導体(例えば、ジエチルエーテル)、又はそれらの混合物(例えば、o/w乳濁液、w/o/wダブル乳濁液又は逆相蒸発技術を使用する場合)であり得る。
【0076】
特定の実施形態において、o/w乳濁液を用いて、ポリマー含有有機相と水相を混合する場合、本発明に有用な溶媒は、水不混和性又は部分的水不混和性の有機溶媒である。そのように限定されないが、そのような溶媒には、例えば、ジクロロメタン、例えば、実施例5~6、8~10、12参照;又はクロロホルム、例えば、実施例7参照)、アレーン又はアレーン誘導体(例えば、トルエン、例えば、実施例6参照)、脂肪族溶媒又は脂肪族溶媒誘導体(例えば、ヘキサン、1-ヘキサノール)、ケトン又はケトン誘導体(例えば、2-ヘキサノン)、エーテル又はエーテル誘導体(例えば、ジエチルエーテル)、又はそれらの混合物が含まれる。
【0077】
酸及び酸性溶液
ポリマーソームのコアにおける酸性溶液は、好ましくは、塩基性化合物(例えば、アンモニア、TMA、DMA)の高い保持のために、低pHで高い緩衝能を有する。該酸は、動物に対して無毒であり、ポリマーソーム膜から透過しない(又は弱くしか透過しない)。
【0078】
そのように限定されないが、ポリマーソームコアに包囲される酸は、(i)クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、又は乳酸などのヒドロキシ酸;(ii)酢酸などの小鎖脂肪酸;(iii)ウロン酸などの糖酸;(iv)マロン酸などのジカルボン酸;(v)プロパン-1,2,3-トリカルボン酸又はアコニット酸などのトリカルボン酸;(vi)1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸などのテトラカルボン酸;(vii)1,2,3,4,5-ペンタンペンタカルボン酸などのペンタカルボン酸;(viii)ポリ(アクリル酸)又はポリ(メタクリル酸)などのポリマーポリ(カルボン酸);(ix)エチレンジアミン四酢酸などのポリアミノカルボン酸;又は(x)それらの少なくとも2つの組合せである。特定の実施形態において、クエン酸が使用される。上記の特定の酸は、特定の用量で、特定の薬理学的活性を有してよいが、本発明のポリマーソームで使用されるカプセル化された酸は、直接的な薬理学的機能又は撮像機能を発揮することを目的としないが、単に膜貫通pH勾配を作るために使用される。本発明は、それらがまた特定の薬理学的活性を有するか否かに関わらず、上記の酸のいずれか1種の使用を包含する。しかしながら、本発明の特定の実施形態又は態様に従って、該酸は、抗生物質、抗癌薬、抗高血圧薬、抗真菌薬、抗不安薬、抗炎症薬、免疫調節薬、抗ウイルス薬、又は脂質低下剤として知られる上記の酸のいずれか以外の酸ではあり得ない。
【0079】
特定の実施形態において、本方法で使用される酸の濃度は、50~700mMで変化し得る。クエン酸が使用される場合、50~800mOsmol/kgのオスモル濃度で約100mM~600mMのクエン酸溶液が最適に使用される(
図12参照)。別の特定の実施形態において、オスモル濃度は100~750mOsmol/kgである。別の特定の実施形態において、オスモル濃度は100~700mOsmol/kgである。別の特定の実施形態において、オスモル濃度は115~700mOsmol/kgである。
【0080】
コア内の酸は、ポリマーソームが水和された場合に、1~6のpHを生じる濃度で存在する。
【0081】
使用方法
本発明の膜貫通pH勾配ポリマーソームは、それを必要とする対象におけるアンモニア若しくはそのメチル化類似体に関連する疾患又は障害、又はその症状(例えば、高アンモニア血症(経腸)又はトリメチルアミン尿症(経腸又は局所))の腸内治療(例えば、経口、結腸、直腸)、又は局所治療に使用することができる。
【0082】
本明細書で使用する「アンモニア若しくはアンモニアメチル化類似体に関連する疾患又は障害、又はその症状」には、高アンモニア血症(例えば、肝機能障害によって誘導される)、肝性脳症、肝硬変、急性肝不全、急性増悪慢性肝不全、門脈大循環バイパス、門脈大循環シャント、薬物誘発性高アンモニア血症、肝アンモニア代謝の先天性欠損症(原発性高アンモニア血症)、肝アンモニア代謝に影響を与える先天性欠損症(二次性高アンモニア血症)、トリメチルアミン尿症、TMA関連心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠状動脈疾患、心筋梗塞)、TMA関連腎疾患(例えば、腎臓の尿細管間質性線維症及び機能不全、腎不全、慢性腎疾患関連死亡)又はTMA関連細菌性膣炎、若しくはその症状が含まれる。アンモニア若しくはそのメチル化類似体に関連する疾患又は障害に関連して本明細書で使用する用語「その症状」には、(例えば、皮膚及び/又は尿及び/又は呼気及び/又は膣からの)悪臭が含まれる。
【0083】
ポリマーソームは、異なる剤形で対象に経腸投与することができ、例えば、水性媒体(例えば、水、ジュース)に分散するか、又はそのまま対象が乾燥形態(例えば、カプセル、錠剤)で摂取することができる。ポリマーソームは、糞により排泄される。ポリマーソームはまた、異なる剤形で対象に局所投与することができ、例えば、水性溶液、泡、ゲル、又は乳濁液(例えば、o/w又はw/o)などの局所製剤(例えば、ローション、クリーム)中に分散させることができる。
【0084】
本明細書で使用する用語「対象」又は「それを必要とする対象」は、本発明の有効量のポリマーソーム又はその組成物の摂取から利益を得る対象を指す。それは、動物、哺乳動物、特定の実施形態においてヒトを指す。本発明の組成物はまた、獣医学的用途に使用され、ペット又は他の動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマなどのペット;及び牛、魚、ブタ、家禽など)に使用され得る。特定の実施形態において、該対象は、(例えば、肝機能障害によって誘発される)高アンモニア血症を患っている。特定の実施形態において、該対象は、肝性脳症、肝硬変、急性肝不全、急性増悪慢性肝不全、門脈大循環バイパス、門脈大循環シャント、薬物誘発性高アンモニア血症、肝アンモニア代謝の先天的欠陥(原発性高アンモニア血症)、又は肝アンモニア代謝に影響を与える先天性欠損症(二次性高アンモニア血症)、又はそれらの任意の症状を患っている。別の特定の実施形態において、該対象は、トリメチルアミン尿症、TMA関連心血管疾患、TMA関連腎疾患、TMA関連細菌性膣炎、又はそれらの任意の症状を患っている。
【0085】
組成物
本発明のポリマーソームは、液体(例えば、液体懸濁液)、半固体(例えば、ローション若しくはクリームなどの乳濁液)又は固体形態(例えば、粉末、カプセル、錠剤、坐剤)として保存され得る。
【0086】
本発明はまた、薬剤の調製におけるポリマーソーム及び/又は組成物の使用に関する。
【0087】
本発明はまた、本発明の上記のポリマーソームを含む医薬組成物に関する。
【0088】
そのように限定されないが、本発明のポリマーソーム又はその組成物は、経腸経路(すなわち、胃腸管を介して)又は局所経路を介して投与され得る。例えば、経口経路が使用される場合は、該ポリマーソームは、例えば、錠剤、被覆錠剤、硬質若しくは軟質ゼラチンカプセル、又は懸濁液の形態であり得る。例えば、直腸/結腸内経路が使用される場合は、該ポリマーソームは、例えば、坐剤又は懸濁液の形態であり得る。例えば、局所経路が使用される場合は、該ポリマーソームは、ローション若しくはクリームなどの乳濁液(例えば、o/w又はw/o)、ゲル及び泡、又は水溶液の形態であり得る。
【0089】
本発明の組成物は、限定されないが、水性又は非水性溶液を含む薬学的に許容される担体を含有することができる。非水性溶媒の例としては、限定されないが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、乳濁液などが挙げられる。水性担体には、限定されないが、水、アルコール、生理食塩水、及び緩衝液が含まれる。薬学的に許容される担体はまた、生理学的に許容される水性ビヒクル(例えば、糖溶液、生理食塩水)又は経腸若しくは局所経路に適する他の公知の担体を含むことができる。
【0090】
錠剤、被覆錠剤、又は硬質ゼラチンカプセルの調製のために、本発明のポリマーソームは、任意の公知の薬学的に不活性の、無機若しくは有機賦形剤及び/又は担体と混合することができる。適切な賦形剤/担体の例としては、ラクトース、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク又はステアリン酸若しくはその塩が挙げられる。
【0091】
懸濁液の調製ために(ポリマーソームが水に溶解しないので、液体形態は懸濁液である)、使用され得る賦形剤には、例えば、水、ポリオール、サッカロース、転化糖及びグルコースが含まれ得る。
【0092】
乳濁液の調製のために、本発明のポリマーソームは、任意の公知の薬学的に不活性な、無機若しくは有機の賦形剤及び/又は担体と混合することができる。適切な賦形剤/担体の例としては、水、界面活性剤(例えば、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ラウリル硫酸ナトリウムなど)、油(例えば、鉱油又は植物油)が挙げられる。
【0093】
本発明の組成物はまた、防腐剤、安定剤、湿潤剤、甘味料、着色剤、着臭剤、浸透圧の変化のための塩、緩衝剤、又は抗酸化剤を含有し得る。それらはまた、他の治療活性剤を含有し得る。
【0094】
担体などの本発明の組成物の製造に使用される全ての賦形剤は、無毒であり、より一般的に薬学的に許容されることが前提である。薬学的に許容される担体、賦形剤などの本明細書で使用する「薬学的に許容される」は、本発明の特定の組成物が投与される対象にとって薬理学的に許容され、実質的に無毒であることを意味する。
【0095】
併用療法
本発明のポリマーソームはまた、併用療法で、すなわち、同時若しくは連続投与のための少なくとも1種の他の活性剤又は療法と組み合わせて投与することができる。併用療法は、アンモニア又はそのメチル化類似体に関連する疾患又は障害、又はその症状のための少なくとも1種の他の薬剤又は療法と組み合わせた本発明のポリマーソーム又は組成物を含むことができる。
【0096】
例えば、併用療法は、少なくとも1種の他の抗高アンモニア血症薬若しくは療法と組み合わせるか、又は高アンモニア血症を有する対象の疾患若しくは状態の少なくとも1種の他の症状の予防又は治療に使用される薬剤又は療法と組み合わせた本発明のポリマーソーム又は組成物を含むことができる。この文脈において、本発明のポリマーソーム又は組成物と組み合わせて(同時に又は連続的に)投与され得る活性成分又は療法の例としては、ラクツロース、リファキシミン、グリセロールフェニルブチレート、ラクチトール、分岐鎖アミノ酸、ネオマイシン、メトロニダゾール、プロバイオティクス、グルタミナーゼ阻害剤、L-オルニチン-L-アスパラギン酸、血液透析、腹膜透析、フェニル酪酸ナトリウム、ナトリウムフェニルアセテート/安息香酸ナトリウム、又はカルグルミン酸が挙げられる。
【0097】
別の例として、併用療法は、少なくとも1種の他の抗トリメチルアミン尿症剤若しくは療法と組み合わせるか、又はトリメチルアミン尿症を有する対象の疾患若しくは状態の少なくとも1種の他の症状の予防又は治療に使用される薬剤又は療法と組み合わせた本発明のポリマーソーム又は組成物を含むことができる。この文脈において、本発明のポリマーソーム又は組成物と組み合わせて(同時に又は連続的に)投与され得る活性成分又は療法の例としては、特定の経口適用される抗生物質(例えば、ネオマイシン、メトロニダゾール)、活性炭、酸性石鹸が挙げられる。
【0098】
キット
本発明のポリマーソーム又は組成物の少なくとも1種及びそれらの使用説明書を含むキットも本発明の範囲内である。該キットはさらに、少なくとも1種の追加試薬、又は本発明のポリマーソームの1以上の追加の種類を含有することができる。キットは、典型的には、キットの内容の使用目的を示すラベルを含む。用語ラベルは、キット上又はキットと共に供給される、又はそうでなければキットに付属する任意の書き込み、又は記録物質を含む。該キットはさらに、1以上の容器(複数可)、試薬(複数可)、投与装置(複数可)を含み得る。
【0099】
投薬量
本発明のポリマーソーム又はその組成物が投与される投薬量は、年齢、(例えば、他の疾患又は状態の)対象が摂取する他の薬剤を含む多くの要因並びに他の臨床的に関連する要因に依存する。典型的には、単回用量内に含有される本発明のポリマーソーム又はその組成物の量は、著しい毒性を誘導することなく、アンモニア又はそのメチル化類似体に関連する疾患又は障害又はその症状(例えば、高アンモニア血症、トリメチルアミン尿症)を効果的に治療する量である。
【0100】
本発明のポリマーソーム又はその組成物の有効量はまた、直接測定され得る。有効量は、毎日又は毎週、又はその画分で与えられ得る。典型的には、ブロックコポリマーの質量で表される本発明のポリマーソームの用量は、1日あたり体重1kgあたり約1mgから最大約500mgの範囲(例えば、1日あたり体重1kgあたり1mg、10mg、50mg、100mg、又は250mg)である。投薬量は、単一又は複数の投与計画で提供され得る。例えば、いくつかの実施形態において、有効量は、1日あたり約250mg~約500mg、1日あたり約500mg~約1000mg、1日あたり約1g、1日あたり約2~12g、1週間あたり約14~約86gの組成物などの範囲であり得る。
【0101】
本発明は、本明細書に記載の割合で、上記有機相と水相を混合する技術を使用して、本明細書に記載の溶媒及び酸又は酸性溶液を用いて調製された本明細書に記載のブロックコポリマー、又はそれを含む組成物の任意の組み合わせを包含する。
【0102】
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「1つ(a)」及び「1つ(an)」及び「その」及び類似の指示対象の使用は、特に本明細書に示されていないか、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0103】
用語「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有する」は、特に断りのない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「を含むが、これらに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。
【0104】
本明細書における値の範囲の列挙は、特に本明細書に示されない限り、範囲内に入るそれぞれ別個の値に個々に言及する簡略方法として役立つことを単に意図し、かつ各別個の値は、本明細書に個々に列挙されているように本明細書に組み込まれる。範囲内の値の全てのサブセットも、個々に本明細書に列挙されているように、本明細書に組み込まれる。
【0105】
本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に特に示されない限り、又は特に文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。
【0106】
本明細書に提供される任意の及び全ての実施例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることが意図され、特に請求しない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0107】
本明細書中の言語は、本発明の実施に不可欠な任意の非請求要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0108】
本明細書では、用語「約」はその通常の意味を有する。実施形態において、それは、限定された数値のプラス又はマイナス10%を意味し得る。
【0109】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0110】
本発明は、以下の非限定的実施例によりさらに詳細に示される。
【0111】
実施例1:膜水和法を用いて調製したリポソームのインビトロアンモニア取り込み
リポソーム調製
54:45:1モル%で(i)1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、(ii)コレステロール及び(iii)1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(PEO)-2000](DSPE-PEO)で構成されるリポソームを、膜水和法により調製した。DPPC 36.7mg/mL、DSPC 39.5mg/mL、コレステロール19.3mg/mL、及びDSPE-PEO 13.9mg/mLのストック溶液をクロロホルムで調製した。
【0112】
DSPCリポソームについて、8.2mgのコレステロール、20.2mgのDSPC、及び1.3mgのDSPE-PEOを、クロロホルムストック溶液としてガラスバイアルに添加した。DPPCリポソームについては、19.7mgのDPPC、8.7mgのコレステロール、及び1.4mgのDSPE-PEOを、クロロホルムストック溶液としてガラスバイアルに添加した。その後、有機溶媒を2時間の窒素流によって除去し、一晩、真空下で貯蔵保存した。55℃に加熱し、脂質膜がそれ以上見えなくなるまでゆっくりと混合しながら、乾燥膜を300mOsmol/kg、pH2.0で250mMのクエン酸溶液1mLで水和した(脂質濃度=29.8mg/mL)。リポソームはpH2のクエン酸溶液を封入した。プロセスの終了時に、リポソーム内外にクエン酸が存在する。
【0113】
インビトロアンモニア取り込み
膜貫通pH勾配を、胆汁塩コール酸ナトリウム(SC)及びデオキシコール酸ナトリウム(SDC、両方とも25mM)の非存在下及び存在下でpH6.8及び300mOsmol/kgに調節したリン酸緩衝液(最終濃度50mM)に希釈して、37℃に維持した並んだ拡散セル内で生成した。デュアルチャンバシステムを、ポリカーボネート膜(孔サイズ=50nm)によって分離し、物理的に一方の側にリポソームを隔離した。脂質及び拡散細胞内のアンモニア濃度は、それぞれ、1.75mg/mL及び1.5mMであった。割り当てた時間に、40μLのアリコートを、リポソームを含まない区画から採取し、アンモニア濃度を、等量のアルカリ性の次亜塩素酸ナトリウム溶液及びフェノールニトロプルシド溶液を用いてベルテロー反応によって決定した。アンモニア取り込み能を、式1:
アンモニア捕捉能=カプセル化アンモニア[μモル]/総脂質質量[g]
=(総アンモニア[μモル]-遊離アンモニア[μモル])/総脂質質量[g]
を用いて定量した。
【0114】
リポソーム製剤は、リン酸緩衝液中でアンモニアを捕捉することができたが、胆汁塩含有媒体では捕捉することができなかった(n=3)。結果を
図1に報告する。グラフ中の各点はn=3のグループの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0115】
実施例2:有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することによって調製した、約(すなわち、小数点2桁目を四捨五入した)1.7のPBD/PEO数平均Mw比を有するPBD-b-PEOポリマーソームのインビトロアンモニア取り込み
ポリマーソーム調製
PBD-b-PEOポリマーソームを、水中油型(o/w)乳化法を用いて生成した。より具体的には、60mgのPBD-b-PEO(約1.7のPBD/PEO数平均分子量(Mw)比(すなわち、2500g/モル/1500g/モル)、PBD(2500)-b-PEO(1500))を、100μLのジクロロメタンに溶解した。ポリマージクロロメタン溶液(ポリマー含有有機溶媒相、すなわち、油相)を、氷浴中で3分間超音波処理しながら(振幅70、周期0.75、継続時間3分)、300mOsmol/kg、pH2.0で250mMのクエン酸溶液(酸性水相)1mLを滴加し、9%(v/v)の溶媒/水相比を有する乳濁液を形成させた。有機溶媒を、40℃で少なくとも5分間、ロータリーエバポレーターを用いて蒸発させた。ポリマーソームはpH2のクエン酸溶液をカプセル化した。プロセスの最後に、ポリマーソームの内外にクエン酸がある。
【0116】
インビトロアンモニア取り込み
インビトロアンモニア取り込みを、1.75mg/mLのポリマー濃度を用いて、実施例1に記載の並んだ拡散セルを用いて調べた。アンモニア捕捉能を、式2:
アンモニア捕捉能=カプセル化アンモニア[μモル]/総ポリマー質量[g]
=(総アンモニア[μモル]-遊離アンモニア[μモル])/総ポリマー質量[g]
を用いて定量した。
【0117】
PBD PEOポリマーソームは、リン酸緩衝液中でアンモニアを捕捉することができたが、胆汁塩含有媒体では捕捉することができなかった(n=3)。結果を
図2に報告する。グラフ中の各点はn=3のグループの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0118】
実施例3:有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約2.4のPDMS/PMOXA数平均Mw比を有するPMOXA-b-PDMS-b-PMOXAポリマーソームのインビトロアンモニア取り込み
ポリマーソーム調製
PMOXA-b-PDMS-b-PMOXAポリマーソーム(約2.4のPDMS/PMOXA数平均Mw比(PMOXA(520)-b-PDMS(2530)-b-PMOXA(520)))を実施例2に記載のように生成した。
【0119】
インビトロアンモニア取り込み
インビトロアンモニア取り込みを、胆汁塩なし(すなわち、リン酸緩衝液のみ)で、実施例2に記載の並んだ拡散セルを用いて調べた。
【0120】
PMOXA PDMS PMOXAポリマーソームは、胆汁塩を含まない(すなわち、リン酸緩衝液のみの)媒体中では捕捉することができなかった(n=3)。結果を
図3に報告する。グラフ中の各点はn=3のグループの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0121】
実施例4:膜水和法を用いて調製した、約1.3又は2.5のPS/PEO数平均Mw比を有するPS-b-PEOポリマーソームのインビトロアンモニア取り込み
ポリマーソーム調製
PS-b-PEOポリマーソームを、膜水和法を用いて生成した。より具体的には、29.8mgのPS-b-PEO(約1.3(PS(2600)-b-PEO(2000))、又は約2.5(PS(5150)-b-PEO(2060)のPS/PEO数平均Mw比))を、100μLのジクロロメタンに溶解し、ガラスバイアルに添加した。その後、有機溶媒を2時間、窒素流によって除去し、真空下で一晩保存した。乾燥膜を、65℃に加熱し、1.25時間超音波処理しながら、300mOsmol/kgで、pH2.0の250mMのクエン酸溶液1mLで水和した。
【0122】
インビトロアンモニア取り込み
インビトロアンモニア取り込みを、実施例3に記載(すなわち、リン酸緩衝液のみ)の並んだ拡散セルを用いて調べた。
【0123】
PS PEOポリマーソームは、胆汁塩を含まない(すなわち、リン酸緩衝液のみの)媒体中では捕捉することができなかった(n=3)。結果を
図4に報告する。グラフ中の各点はn=3のグループの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0124】
実施例5:有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約1.0のPS/PEO数平均Mw比を有するPS-b-PEOポリマーソームの高胆汁塩濃度でのインビトロアンモニア取り込み
ポリマーソーム調製
PS-b-PEOポリマーソーム(約1.0(PS(1970)-b-PEO(2000))のPS/PEO数平均Mw比)を、実施例2に記載したように生成した。
【0125】
インビトロアンモニア取り込み
インビトロアンモニア取り込みを、胆汁塩組成物を変更して(SC 30mM、SDC 30mM、タウロコール酸ナトリウム(STC)30mM、最終pH6.8及びオスモル濃度300mOsmol/kg)、実施例2に記載の並んだ拡散セルを用いて調べた。この胆汁塩濃度は、生理的濃度の2倍に相当する。
【0126】
PS PEOポリマーソームは、胆汁塩含有媒体中でアンモニアを捕捉することができなかった(n=3)。結果を
図5に示す。グラフの各点はn=3のグループの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0127】
実施例6:有機溶媒としてジクロロメタン又はトルエンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約1.3~2.8のPS/PEO数平均Mw比を有するPS-b-PEOポリマーソームの高胆汁塩濃度でのインビトロアンモニア取り込み
ポリマーソーム調製
PS-b-PEOポリマーソーム(約1.3(PS(2600)-b-PEO(2000))、約1.6(PS(3150-b-PEO(2000))、約1.8(PS(3570)-b-PEO(2000))、約2.0(PS(3900)-b-PEO(2000))、又は約2.5(PS(5150)-b-PEO(2060))のPS/PEO数平均Mw比)を、実施例2に記載のように生成した。PS/PEOポリマーソーム(約2.8(PS(6000)-b-PEO(2180))のPS/PEO数平均Mw比)を、実施例2に記載のように調製したが、有機溶媒としてジクロロメタンの代わりにトルエンを使用し、かつポリマー量を少なくした(20mg)。
【0128】
インビトロアンモニア取り込み
インビトロアンモニア取り込みを、約1.3~2.5のPS/PEO数平均Mw比を有するPS PEOポリマーソームについて、実施例5に記載の並んだ拡散セルを用いて調べた。PS PEOポリマーソーム(約2.8(PS(6000)-b-PEO(2180))のPS/PEO数平均Mw)を、リン酸濃度を変更して(25mM)、440mOsmol/kg、pH6.8で、実施例5に記載したように評価した。
【0129】
PS PEOポリマーソームは、胆汁塩含有媒体中でアンモニアを捕捉することができた(n=3)。結果を
図6に示す。グラフの各点はn=3のグループの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0130】
実施例7:有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約3.8のPS/PEO数平均Mw比を有するPS-b-PEOポリマーソームの高胆汁塩濃度でのインビトロアンモニア取り込み
ポリマー合成
PS-b-PEOを、原子移動ラジカル重合(ATRP)により合成した。まず、市販のPEOモノメチルエーテル(2150g/mol-1)を、THF中のブロモイソブチリルブロミド(5.0当量)及びトリエチルアミン(5.0当量)と反応させ、マクロ開始剤を得た。その後の重合反応では、このマクロ開始剤(1.0当量)、CuBr(1.6当量)、及び4,4’-ジノニル-2,2’-ジピリジル(1.4当量)をシュレンクフラスコに移し、真空アルゴンサイクルにより脱気した。スチレン(70当量)を別の反応フラスコに加え、アルゴンを用いて脱気し、反応フラスコに移した。反応を24時間、115℃で行った。最終生成物の精製を、塩基性アルミナのカラムを通して溶液を通過させ、その後、ヘキサンで2回沈殿させることによって達成した。ポリマーの数平均分子量を、1H NMR分光法によって決定し、芳香族ポリスチレンピークとPEG骨格の積分値を比較し、PS(8100)-b-PEO(2150)のポリマー組成物を得た。
【0131】
ポリマーソーム調製
PS-b-PEOポリマーソーム(約3.8(PS(8100)-b-PEO(2150))のPS/PEO数平均Mw比)を、実施例2に記載したように生成した。
【0132】
インビトロアンモニア取り込み
インビトロアンモニア取り込みを、ポリマー濃度を1.24mg/mLに変更して、実施例5に記載の並んだ拡散セルを用いて調べた。
【0133】
PS PEOポリマーソームは、胆汁塩含有媒体中でアンモニアを捕捉することができた(n=3)。結果を
図7に示す。グラフの各点はn=3のグループの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0134】
実施例8:有機溶媒としてクロロホルムを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約1.3のPS/PEO数平均Mw比を有するPS-b-PEOポリマーソームの高胆汁塩濃度でのインビトロアンモニア取り込み
ポリマーソーム調製
PS-b-PEOポリマーソーム(約1.3(PS(2600)-b-PEO(2000))のPS/PEO数平均Mw比)を、有機溶媒としてジクロロメタンの代わりにクロロホルムを用いて、実施例2に記載したように生成した。
【0135】
インビトロアンモニア取り込み
インビトロアンモニア取り込みを、実施例5に記載の並んだ拡散セルを用いて調べた。
【0136】
PS PEOポリマーソームは、胆汁塩含有媒体中でアンモニアを捕捉することができた(n=3)。結果を
図8に示す。グラフの各点はn=3のグループの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0137】
実施例9:有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することによって調製した、約1.3又は2.5のPS/PEO数平均Mw比を有するPS-b-PEOポリマーソームの低浸透圧及び高浸透圧条件下でのインビトロアンモニア取り込み
ポリマーソーム調製
PS-b-PEOポリマーソーム(約1.3(PS(2600)-b-PEO(2000)又は約2.5(PS(5150)-b-PEO(2060))のPS/PEO数平均Mw比)を、実施例2に記載したように生成した。
【0138】
インビトロアンモニア取り込み
インビトロアンモニア取り込みを、pH6.8で緩衝液を変更して(低浸透圧条件:SC 25mM及びSDC 25mMを含有するリン酸緩衝液10mM、最終オスモル濃度160mOsmol/kg;高浸透圧性条件:SC 30mM、SDC 30mM、及びSTCの30mMを含有するリン酸緩衝液50mM、塩化ナトリウムを添加すると、最終オスモル濃度は620mOsmol/kgに達する、すなわち、生理的条件で胃腸管に見られるものよりも劇的に極端な条件)、実施例5に記載の並んだ拡散セルを用いて調べた。
【0139】
PS PEOポリマーソームは、低浸透圧及び高浸透圧条件下で、胆汁酸塩含有媒体中でアンモニアを捕捉することができた(n=3)。結果を
図9に示す。グラフの各点はn=3のグループの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0140】
実施例10:有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約2.5のPS/PEO数平均Mw比を有するPS-b-PEOポリマーソームの消化酵素の存在下でのインビトロアンモニア取り込み
ポリマーソーム調製
PS-b-PEOポリマーソーム(約2.5(PS(5150)-b-PEO(2060)のPS/PEO数平均Mw比)を、実施例2に記載したように生成した。
【0141】
インビトロアンモニア取り込み
インビトロアンモニア取り込みを、pH6.8及び300mOsmol/kgで、緩衝液を変更して(リン酸緩衝液50mM、SC 12.5mM、SDC 12.5mM、ブタ膵臓からのトリプシン 1mg/mL(約10000ユニット/mL)、ウシ膵臓からのα-キモトリプシン(II型) 1mg/mL(約40ユニット/mL)、ブタ膵臓からのリパーゼ(II型) 3mg/mL(約300ユニット/mL))、実施例5に記載の並んだ拡散セルを用いて調べた。酵素の活性は、米国薬局方(USP39-NF34)の模擬腸液中のプロテアーゼ及びリパーゼ活性に相当する。実施例5で使用したものよりも低い胆汁塩濃度を選択して、酵素活性を確実にし、反応速度を四時間に制限し、消化酵素の分解生成物による干渉を回避した。
【0142】
PS PEOポリマーソームは、胆汁塩含有媒体及び消化酵素含有媒体中でアンモニアを捕捉することができた(n=3)。結果を
図10に示す。グラフの各点はn=3のグループの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0143】
実施例11:有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約1.3のPS/PEO数平均Mw比を有するPS-b-PEOポリマーソームの高いカリウム濃度でのインビトロアンモニア取り込み
ポリマーソーム調製
PS-b-PEOポリマーソーム(約1.3(PS(2600)-b-PEO(2000))のPS/PEO数平均Mw比)を、実施例2に記載したように生成した。
【0144】
インビトロアンモニア取り込み
インビトロアンモニア取り込みを、250mMのカリウム濃度(最終pH6.8及びオスモル濃度700mOsmol/kg)を用いて、実施例5に記載の並んだ拡散セルを用いて調べた。
【0145】
PS PEOポリマーソームは、250mMのカリウム濃度で、胆汁塩含有媒体中でアンモニアを捕捉することができた(n=3)。結果を
図11に示す。グラフの各点はn=3のグループの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0146】
実施例12:有機溶媒としてジクロロメタンを使用し、酸濃度を変更して、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することによって調製した、約1.3のPS/PEO数平均Mw比を有するPS-b-PEOポリマーソームのインビトロアンモニア取り込み
ポリマーソーム調製
PS-b-PEOポリマーソーム(約1.3PS(2600)-b-PEO(2000))のPS/PEO数平均Mw比)を、pH2.0のクエン酸溶液 100mM(115mOsmol/kg)、200mM(230mOsmol/kg)、250mM(300mOsmol/kg)、300mM(340mOsmol/kg)、400mM(460mOsmol/kg)、500mM(580mOsmol/kg)又は600mM(700mOsmol/kg)を用いて、実施例2に記載したように生成した。
【0147】
インビトロアンモニア取り込み
インビトロアンモニア取り込みを、pH6.8(最終オスモル濃度300~400mOsmol/kg)で、実施例3に記載(すなわち、リン酸緩衝液のみ)の並んだ拡散セルを用いて調べた。
【0148】
PS PEOポリマーソームは、胆汁塩を含まない媒体(n=3~4)中でアンモニアを捕捉することができた。結果を
図12に示す。グラフの各点はn=3~4のグループの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。膜貫通pH勾配ポリマーソーム中のアンモニアの捕獲能(ポリマー1g当たり捕捉されるアンモニア)は、AST-120活性炭(炭1g当たり捕捉されるアンモニア、Bosoiら、前出)で作られたアンモニア吸着微小粒子のそれよりも20倍高かった。特許請求の範囲は、実施例に記載の好ましい実施形態によって限定されるべきではないが、全体としての説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
【0149】
実施例13:有機溶媒としてジクロロメタンを使用して、ポリマー含有有機溶媒相と水性酸性相を混合することにより調製した、約1.4~2.0のPS/PEO数平均Mw比を有するPS-b-PEOポリマーソームのO/W乳濁液への前暴露後の、高胆汁酸塩濃度でのインビトロTMA取り込み
ポリマーソーム調製
ポリ(スチレン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(約1.4(PS(2770)-b-PEO(2000))及び約2.0(PS(3900)-b-PEO(2000))のPS/PEO数平均分子量(Mw)比)を、実施例2に記載したように生成した。
【0150】
インビトロTMA取り込み
膜貫通pH勾配を、それぞれ30mMの胆汁塩コール酸ナトリウム(SC)、デオキシコール酸ナトリウム(SDC)、及びタウロコール酸ナトリウム(STC)の存在下(約1.4及び2.0のPS/PEO数平均Mw比)又は非存在下(約1.4のPS/PEO数平均Mw比)で、pH6.8及び300mOsmol/Lに調整した50mMのリン酸緩衝液での希釈によって、37℃に維持した並んだ拡散セルで生成した。O/W乳濁液へのポリマーソームの前暴露を伴う実験において(クリーム又はローションへの組み込みを模倣するため)、10%(v/v)のO/W乳濁液(5%(m/v)のポリソルベート80、15%(v/v)の鉱油、及び総体積に到達するのに十分なリン酸緩衝生理食塩水)を、取り込み実験の直前にポリマーソーム分散液(約1.4のPS/PEO数平均Mw比)に添加した。
【0151】
デュアルチャンバシステムを、物理的に一方の側にポリマーソームを隔離するポリカーボネート膜(孔サイズ=50nm)により分離した。拡散セル内のポリマー及びTMAの濃度は、それぞれ、1.75mg/mL及び1.5mMであった。割り当てられた時間で、40μLのアリコートを、ポリマーソームを含まないコンパートメントから取り、TMAの濃度を、TMA標準物質で較正したPocketChem(商標)BA PA-4140(Arkray社)によって測定した。TMA捕捉能を、式3を用いて定量し、総TMA濃度は、10分のインキュベーションでの細胞中のTMA量を指す。
式3:
TMA捕捉能=カプセル化TMA[μモル]/総ポリマー質量[g]
=(総TMA[μモル]-遊離TMA[μモル])/総ポリマー質量[g]
【0152】
PS PEOポリマーソームは、胆汁塩含有媒体及びO/W乳濁液中でTMAを捕捉することができた(n=3)。ポリマーソームが、腸管環境を模倣した過酷な条件下で、又はO/W乳濁液(例えば、局所投与用のローション若しくはクリーム)への組み込み後にTMAを効率的に捕捉したことをデータは示す。結果を
図13に示す。グラフの各ヒストグラムバーはグループ(n=3)の平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
参考文献
【表1】