(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】イミド基含有樹脂硬化剤
(51)【国際特許分類】
C08G 59/42 20060101AFI20221117BHJP
C07D 209/48 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C08G59/42
C07D209/48
(21)【出願番号】P 2019016297
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】福林 夢人
(72)【発明者】
【氏名】谷中 あゆみ
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-097898(JP,A)
【文献】特開2014-056236(JP,A)
【文献】特開2014-112196(JP,A)
【文献】特許第5120580(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/42
C07D 209/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に
2個のイミド基およ
び4個の
カルボキシル基を有す
るイミド基含有樹脂硬化剤
であって、
前記イミド基含有樹脂硬化剤が、一般式(1)の構造を有するジイミドテトラカルボン酸系化合物である、イミド基含有樹脂硬化剤。
【化1】
(式中、1つのR
1
は、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分、脂環族テトラカルボン酸二無水物成分、または脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分に由来する構造を表し、2つのR
2
は、それぞれ独立して、2-アミノテレフタル酸、2-アミノイソフタル酸、4-アミノイソフタル酸、5-アミノイソフタル酸から選択される芳香族モノアミノジカルボン酸成分に由来する構造を表す。)
【請求項2】
前記イミド基含有樹脂硬化剤が、繰り返し単位を含有せず、かつ2000以下の分子量を有する、請求項
1に記載のイミド基含有樹脂硬化剤。
【請求項3】
前記イミド基含有樹脂硬化剤が、90%以上の純度を有する、請求項1
または2に記載のイミド基含有樹脂硬化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化後に高いガラス転移温度を有し、かつ伝送損失の低い樹脂硬化物に用いることができるイミド基含有樹脂硬化剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂及びその硬化剤から成る樹脂硬化物は、熱的、力学的および電気的特性に優れており、半導体封止材やプリント配線板用絶縁材料等の電気・電子材料を中心に工業的に広く利用されている。
【0003】
特に近年、車載用パワーモジュールに代表されるパワー半導体の分野では、更なる大電流化、小型化、高効率化が求められており、炭化ケイ素(SiC)半導体への移行が進みつつある。SiC半導体は、従来のシリコン(Si)半導体よりも高温条件下での動作が可能であることから、SiC半導体に使用される半導体封止材料にもこれまで以上に高い耐熱性が要求されている。
【0004】
また、プリント配線板用絶縁材料の技術分野では、今後普及が見込まれる5G通信への適用や、この通信技術を応用したセンシングデバイスの自動車等への実装に向けて、信号の伝送損失が低く、かつ耐熱性に優れる樹脂硬化物が求められている。
【0005】
一般的に樹脂硬化物の高耐熱化を達成するためには、樹脂硬化物の構造中に剛直性の高い構造を導入することや、架橋密度を高めることが必要であるとされている。そこで、これまでに剛直性の高い構造としてイミド骨格を含有する硬化剤を用いて、強直骨格を硬化物中に導入する試みが行われている。
【0006】
例えば、イミド基を有する芳香族ジアミンとエポキシ樹脂を用いたビルドアップ用いた熱硬化性樹脂組成物(特許文献1)や1分子あたりに2個以上のアミノ基を分子鎖の末端に有するイミドオリゴマーを熱硬化性樹脂組成物に用いた例が開示されている(特許文献2)。しかし、一般的にアミノ基を有する硬化剤を用いて硬化物を作製する場合、高いガラス転移温度を有する硬化物が得られないことが知られており、要求を満足するものではなかった。
【0007】
さらに、両末端に酸無水物構造を有するイミドオリゴマーが開示されている(特許文献3、4)。この構造であれば、例えばエポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合、高いガラス転移温度を有する硬化物を得ることができるが、酸無水物基は吸湿等により容易に構造が変化してしまうために保存安定性は低く、得られる硬化物の性能が安定しないといった問題点があった。
【0008】
そこで、末端にカルボキシル基を有するイミドオリゴマーが開示されている(特許文献5、6)。このようなオリゴマーであれば保存安定性が高く、かつ得られる硬化物も高い耐熱性を発現すると考えられる。しかし、これらの硬化剤は、ジアミンに過剰量の酸二無水物を加えて製造されるため、比較的高い分子量を有し、かつ分子量分布を有する。そのため、溶媒への溶解性が乏しく、用途が制限されるのみならず、硬化物の性能が安定しないといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-17148号公報
【文献】特開2008-255249号公報
【文献】特開昭61-270852号公報
【文献】国際公開2018/139558号パンフレット
【文献】国際公開2005/006826号パンフレット
【文献】特開2011-222810号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、溶媒への溶解性ならびに保存安定性に優れたイミド基含有樹脂硬化剤であって、耐熱性および誘電特性が十分に高い樹脂硬化物を得るためのイミド基含有樹脂硬化剤を提供することを目的とする。
【0011】
本明細書中、誘電特性とは、特に誘電率および誘電正接の両者が十分に低減され得る誘電性能のことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するイミド基含有樹脂硬化剤を用いることにより前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
<1> 分子中に1~4個のイミド基および3~4個の官能基を有することを特徴とするイミド基含有樹脂硬化剤。
<2> 前記官能基がヒドロキシル基および/またはカルボキシル基である、<1>に記載のイミド基含有樹脂硬化剤。
<3> 前記イミド基含有樹脂硬化剤が、繰り返し単位を含有せず、かつ2000以下の分子量を有する、<1>または<2>に記載のイミド基含有樹脂硬化剤。
<4> 前記イミド基含有樹脂硬化剤が、ジイミドトリカルボン酸系化合物、ジイミドテトラカルボン酸系化合物、モノイミドトリカルボン酸系化合物、アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物、トリイミドトリカルボン酸系化合物、テトライミドテトラカルボン酸系化合物、ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物、ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物、またはトリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物である、<1>~<3>のいずれかに記載のイミド基含有樹脂硬化剤。
<5> 前記ジイミドトリカルボン酸系化合物が、1分子のジアミノモノカルボン酸成分に対して2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されている化合物であり、
前記ジイミドテトラカルボン酸系化合物が、1分子のテトラカルボン酸二無水物成分に対して2分子のモノアミノジカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されている化合物であり、
前記モノイミドトリカルボン酸系化合物が、1分子の無水トリカルボン酸成分に対して1分子のモノアミノジカルボン酸成分が反応し、1つのイミド基が形成されている化合物であり、
前記アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物が、1分子の無水トリカルボン酸ハロゲン化物に対して2分子のモノアミノジカルボン酸成分が反応し、1つのイミド基と1つのアミド基が形成されている化合物であり、
前記トリイミドトリカルボン酸系化合物が、1分子のトリアミン成分に対して3分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、3つのイミド基が形成されている化合物であり、
前記テトライミドテトラカルボン酸系化合物が、1分子のテトラアミン成分に対して4分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、4つのイミド基が形成されている化合物であり、
前記ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物が、1分子のモノヒドロキシジアミン成分に対して2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されている化合物であり、
前記ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物が、1分子のジヒドロキシジアミン成分に対して2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されている化合物であり、
前記トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物が、1分子のモノヒドロキシトリアミン成分に対して3分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、3つのイミド基が形成されている化合物である、<4>に記載のイミド基含有樹脂硬化剤。
<6> 前記イミド基含有樹脂硬化剤が、分子中に2~3個のイミド基および4個の官能基を有する、<1>~<5>のいずれかに記載のイミド基含有樹脂硬化剤。
<7> 前記イミド基含有樹脂硬化剤が、分子中に2個のイミド基および4個のカルボキシル基を有する、<1>~<6>のいずれかに記載のイミド基含有樹脂硬化剤。
<8> 前記イミド基含有樹脂硬化剤が、一般式(1)の構造を有するジイミドテトラカルボン酸系化合物である、<7>に記載のイミド基含有樹脂硬化剤。
【化1】
(式中、1つのR
1および2つのR
2は、それぞれ独立して、芳香族環または脂肪族環を1つ以上有する構造、もしくはメチレン基が2つ以上連なった構造を示す。)
<9> 前記R
1は、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分、脂環族テトラカルボン酸二無水物成分、または脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分に由来する構造を表し、
前記R
2は、それぞれ独立して、芳香族モノアミノジカルボン酸成分、脂環族モノアミノジカルボン酸成分、または脂肪族モノアミノジカルボン酸成分に由来する構造を表す、<8>に記載のイミド基含有樹脂硬化剤。
<10> 前記イミド基含有樹脂硬化剤が、90%以上の純度を有する、<1>~<9>のいずれかに記載のイミド基含有樹脂硬化剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は、溶媒への溶解性ならびに保存安定性に十分に優れている。本発明のイミド基含有樹脂硬化剤によれば、十分に高い耐熱性および誘電特性を有する樹脂硬化物を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<イミド基含有樹脂硬化剤>
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は、イミド基を含有する樹脂である硬化剤のことであり、詳しくは、1分子中に1~4個のイミド基および3~4個の官能基を有する有機化合物である。官能基とは、例えば、グリシジル基(またはエポキシ基)、イソシアネート基(またはシアン酸エステル基)、オキサゾリン基、カルボジイミド基との反応性を有する官能基のことであり、カルボキシル基、および/またはヒドロキシル基が挙げられる。イミド基含有樹脂硬化剤が1分子中に有する3~4個の官能基は、それぞれ独立して選択されてよく、例えば、その全ての官能基が同じ官能基であってもよいし、またはその一部の官能基と残部の官能基とは相互に異なる官能基であってもよい。
【0016】
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤としては、例えば、ジイミドトリカルボン酸系化合物、ジイミドテトラカルボン酸系化合物、モノイミドトリカルボン酸系化合物、アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物、トリイミドトリカルボン酸系化合物、テトライミドテトラカルボン酸系化合物、ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物、ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物、およびトリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物等が挙げられる。イミド基含有樹脂硬化剤はこれらの群から選択される1種以上のイミド基含有樹脂硬化剤であってもよい。
【0017】
好ましい実施態様において、本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は、硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、1分子中に2~3個のイミド基および4個の官能基を有することが好ましい。当該4個の官能基は、それぞれ独立して選択されてもよい。本実施態様のイミド基含有樹脂硬化剤の具体例として、例えば、ジイミドテトラカルボン酸系化合物、ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物、およびトリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0018】
より好ましい実施態様において、本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は、硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、1分子中に2個のイミド基および4個のカルボキシル基を有することが好ましい。本実施態様のイミド基含有樹脂硬化剤の具体例として、例えば、ジイミドテトラカルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0019】
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は繰り返し単位を含有しない。イミド基含有樹脂硬化剤が繰り返し単位を含有しないとは、イミド基含有樹脂硬化剤分子が主鎖に繰り返し単位(特に2価の繰り返し単位)を含有しないという意味である。従って、本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は、いわゆるオリゴマーの形態を有するものではなく、通常は当該オリゴマーおよびいわゆるポリマーと比較して低分子量を有する。
【0020】
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤の分子量は通常、2000以下(特に100~2000)であり、硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、好ましくは200~1100であり、より好ましくは300~1000であり、さらに好ましくは400~900である。
【0021】
[ジイミドトリカルボン酸系化合物]
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とジアミノモノカルボン酸成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりジイミドトリカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。ジイミドトリカルボン酸系化合物は、1分子中、2つのイミド基および3つのカルボキシル基を有する化合物である。
【0022】
ジイミドトリカルボン酸系化合物は、詳しくは、1分子のジアミノモノカルボン酸成分に対して、2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されている化合物である。
【0023】
無水トリカルボン酸成分とジアミノモノカルボン酸とを用いたジイミドトリカルボン酸系化合物の製造に際し、ジアミノモノカルボン酸成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は、約0.5倍モル量、例えば0.1~0.7倍モル量、好ましくは0.3~0.7倍モル量、より好ましくは0.4~0.6倍モル量、さらに好ましくは0.45~0.55倍モル量で使用される。
【0024】
ジイミドトリジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、芳香族環を含有する芳香族無水トリカルボン酸成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族無水トリカルボン酸成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。無水トリカルボン酸成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0025】
芳香族無水トリカルボン酸成分としては、例えば、無水トリメリット酸、無水ヘミメリット酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5-ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6-ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8-ナフタレントリカルボン酸無水物、3,4,4’-ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’-ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0026】
脂環族無水トリカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸無水物、1,2,3-シクロヘキサントリカルボン酸無水物、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸無水物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0027】
脂肪族無水トリカルボン酸成分としては、例えば、3-カルボキシメチルグルタル酸無水物、1,2,4-ブタントリカルボン酸-1,2-無水物、cis-プロペン-1,2,3-トリカルボン酸-1,2-無水物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0028】
ジイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
ジイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0029】
ジイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物からなる群G1から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、上記群G1から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0030】
ジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得るジアミノモノカルボン酸成分は、芳香族環を含有する芳香族ジアミノモノカルボン酸成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族ジアミノモノカルボン酸成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族ジアミノモノカルボン酸成分を包含する。ジアミノモノカルボン酸成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0031】
芳香族ジアミノモノカルボン酸成分としては、例えば、3,4-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ビス(4-アミノフェノキシ)安息香酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0032】
脂肪族ジアミノモノカルボン酸成分としては、例えば、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒスチジン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0033】
ジイミドトリカルボン酸系化合物のジアミノモノカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族ジアミノモノカルボン酸成分および/または脂環族ジアミノモノカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族ジアミノモノカルボン酸成分を含む。
ジイミドトリカルボン酸系化合物のジアミノモノカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族ジアミノモノカルボン酸成分および/または脂環族ジアミノモノカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族ジアミノモノカルボン酸成分のみを含む。
【0034】
ジイミドトリカルボン酸系化合物のジアミノモノカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物の溶解性の観点から、上記のジアミノモノカルボン酸成分のうち、脂肪族ジアミノモノカルボン酸成分を用いることが好ましい。
ジイミトリジカルボン酸系化合物のジアミノモノカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物の溶解性のさらなる向上の観点から、上記のジアミノモノカルボン酸成分のうち、脂肪族ジアミノモノカルボン酸成分のみを用いることが好ましい。
【0035】
ジイミドトリカルボン酸系化合物のジアミノモノカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記のジアミノモノカルボン酸成分のうち、3,4-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ビス(4-アミノフェノキシ)安息香酸、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒスチジンからなる群G2から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドトリカルボン酸系化合物のジアミノモノカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のジアミノモノカルボン酸成分のうち、上記群G2から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0036】
[ジイミドテトラカルボン酸系化合物]
原料化合物として、テトラカルボン酸二無水物成分とモノアミノジカルボン酸成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりジイミドテトラカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。ジイミドテトラカルボン酸系化合物は、1分子中、2つのイミド基および4つのカルボキシル基を有する化合物である。
【0037】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物は、詳しくは、1分子のテトラカルボン酸二無水物成分に対して、2分子のモノアミノジカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されている化合物であり、例えば、一般式(1)の構造を有する化合物である。
【0038】
【0039】
一般式(1)中、1つのR1および2つのR2は、それぞれ独立して、芳香族環または脂肪族環を1つ以上有する構造、もしくはメチレン基が2つ以上連なった構造を示す。
R1が有し得る「芳香族環を1つ以上有する構造」は、例えば、後述する芳香族テトラカルボン酸二無水物成分に由来する構造のことである。
R1が有し得る「脂肪族環を1つ以上有する構造」は、例えば、後述する脂環族テトラカルボン酸二無水物成分に由来する構造のことである。
R1が有し得る「メチレン基が2つ以上連なった構造」は、例えば、後述する脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分に由来する構造のことである。
R2が有し得る「芳香族環を1つ以上有する構造」は、例えば、後述する芳香族モノアミノジカルボン酸成分に由来する構造のことである。
R2が有し得る「脂肪族環を1つ以上有する構造」は、例えば、後述する脂環族モノアミノジカルボン酸成分に由来する構造のことである。
R2が有し得る「メチレン基が2つ以上連なった構造」は、例えば、後述する脂肪族モノアミノジカルボン酸成分に由来する構造のことである。
【0040】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物の製造に際し、モノアミノジカルボン酸成分は、テトラカルボン酸二無水物成分に対して通常は、約2倍モル量、例えば1.5~10.0倍モル量、好ましくは1.8~2.2倍モル量、より好ましくは1.9~2.1倍モル量、さらに好ましくは1.95~2.05倍モル量で使用される。
【0041】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るテトラカルボン酸二無水物成分は、芳香族環を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族テトラカルボン酸二無水物成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分を包含する。テトラカルボン酸二無水物成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。本明細書中、エーテル基とは、炭素原子間に存在する「-O-」基のことである。チオエーテル基とは、炭素原子間に存在する「-S-」基のことである。
【0042】
芳香族テトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3-フルオロピロメリット酸二無水物、3,6-ジフルオロピロメリット酸二無水物、3,6-ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-エチレングリコールジベンゾエートテトラカルボン酸二無水物、3,3’’,4,4’’-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-クァテルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-キンクフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチニリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-へキサフルオロプロパン二無水物、ジフルオロメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2-テトラフルオロ-1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1,3-トリメチレン-4、4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-デカフルオロ-1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルシロキサン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス〔2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン二無水物、1,4-ビス〔2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン二無水物、ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタン二無水物、ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタン二無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ジフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’-ジフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’-ジフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’-ジフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ジフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ジフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ジフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、9-フェニル-9-(トリフルオロメチル)キサンテン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(トリフルオロメチル)キサンテン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ〔2,2,2〕オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(4、4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、9,9-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物、9,9-ビス〔4-(2,3-ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0043】
脂環族テトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1-エチニリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0044】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,1,2,2-エタンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0045】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を含むことが好ましい。
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分のみを含むことが好ましい。
【0046】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物の溶解性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、ケトン基、メチル基、メチレン基、イソプロピリデン基、フェニル基、フルオレン構造、またはハロゲン原子(またはハロゲン原子含有置換基)を有するテトラカルボン酸二無水物成分を用いることが好ましい。
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物の溶解性のさらなる向上の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、ケトン基、メチル基、メチレン基、フェニル基、イソプロピリデン基、フルオレン構造、またはハロゲン原子(またはハロゲン原子含有置換基)を有するテトラカルボン酸二無水物成分のみを用いることが好ましい。
【0047】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および非着色性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、フッ素原子を含有する、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分および/または脂環族テトラカルボン酸二無水物成分を含むことが好ましい。
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および非着色性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、フッ素原子を含有する、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分および/または脂環族テトラカルボン酸二無水物成分のみを含むことが好ましい。
【0048】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、汎用性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-(4、4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群G3から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、上記群G3から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0049】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノジカルボン酸成分は、芳香族環を含有する芳香族モノアミノジカルボン酸成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族モノアミノジカルボン酸成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族モノアミノジカルボン酸成分を包含する。モノアミノジカルボン酸成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0050】
芳香族モノアミノジカルボン酸成分としては、例えば、2-アミノテレフタル酸、2-アミノイソフタル酸、4-アミノイソフタル酸、5-アミノイソフタル酸、3-アミノフタル酸、4-アミノフタル酸、3-アミノ-1,2-ジカルボキシナフタレン、4-アミノ-1,2-ジカルボキシナフタレン、5-アミノ-1,2-ジカルボキシナフタレン、6-アミノ-1,2-ジカルボキシナフタレン、7-アミノ-1,2-ジカルボキシナフタレン、8-アミノ-1,2-ジカルボキシナフタレン、1-アミノ-2,3-ジカルボキシナフタレン、4-アミノ-2,3-ジカルボキシナフタレン、5-アミノ-2,3-ジカルボキシナフタレン、6-アミノ-2,3-ジカルボキシナフタレン、7-アミノ-2,3-ジカルボキシナフタレン、8-アミノ-2,3-ジカルボキシナフタレン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0051】
脂肪族モノアミノジカルボン酸成分としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、2-アミノピメリン酸、α-アミノ-γ-オキシピメリン酸、2-アミノスベリン酸、2-アミノアジピン酸、α-アミノ-γ-オキシアジピン酸、α-アミノセバシン酸、カルボシステイン、アミノマロン酸、α-アミノ-α-メチルコハク酸、β-オキシグルタミン酸、γ-オキシグルタミン酸、γ-メチルグルタミン酸、γ-メチレングルタミン酸、γ-メチル-γ-オキシグルタミン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0052】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族モノアミノジカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノジカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノジカルボン酸成分を含む。
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族モノアミノジカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノジカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノジカルボン酸成分のみを含む。
【0053】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記のモノアミノジカルボン酸成分のうち、2-アミノテレフタル酸、2-アミノイソフタル酸、4-アミノイソフタル酸、5-アミノイソフタル酸、3-アミノフタル酸、4-アミノフタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、2-アミノピメリン酸、2-アミノスベリン酸、2-アミノアジピン酸、α-アミノセバシン酸、アミノマロン酸からなる群G4から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のモノアミノジカルボン酸成分のうち、上記群G4から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0054】
[モノイミドトリカルボン酸系化合物]
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とモノアミノジカルボン酸成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりモノイミドトリカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。モノイミドトリカルボン酸系化合物は、1分子中、1つのイミド基および3つのカルボキシル基を有する化合物である。
【0055】
モノイミドトリカルボン酸系化合物は、詳しくは、1分子の無水トリカルボン酸成分に対して、1分子のモノアミノジカルボン酸成分が反応し、1つのイミド基が形成されている化合物である。
【0056】
モノイミドトリカルボン酸系化合物の製造に際し、モノアミノジカルボン酸成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は、約1倍モル量、例えば0.5~5.0倍モル量、好ましくは0.8~1.2倍モル量、より好ましくは0.9~1.1倍モル量、さらに好ましくは0.95~1.05倍モル量で使用される。
【0057】
モノイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン成分であり、詳しくはジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0058】
モノイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、モノイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
モノイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、モノイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0059】
モノイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、モノイミドトリカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、脂環族無水トリカルボン酸成分および/または脂肪族無水トリカルボン酸成分を用いることが好ましい。
モノイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、モノイミドトリカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、脂環族無水トリカルボン酸成分および/または脂肪族無水トリカルボン酸成分のみを用いることが好ましい。
【0060】
モノイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物からなる群G5から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
モノイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、上記群G5から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0061】
モノイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノジカルボン酸成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノジカルボン酸成分と同様のモノアミノジカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノジカルボン酸成分と同様の、芳香族モノアミノジカルボン酸成分、脂環族モノアミノジカルボン酸成分、および脂肪族モノアミノジカルボン酸成分を包含する。
【0062】
モノイミドトリカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、モノイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族モノアミノジカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノジカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノジカルボン酸成分を含む。
モノイミドトリカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、モノイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族モノアミノジカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノジカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノジカルボン酸成分のみを含む。
【0063】
モノイミドトリカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記のモノアミノジカルボン酸成分のうち、2-アミノテレフタル酸、2-アミノイソフタル酸、4-アミノイソフタル酸、5-アミノイソフタル酸、3-アミノフタル酸、4-アミノフタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、2-アミノピメリン酸、2-アミノスベリン酸、2-アミノアジピン酸、α-アミノセバシン酸、アミノマロン酸からなる群G6から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
モノイミドトリカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のモノアミノジカルボン酸成分のうち、上記群G6から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0064】
[アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物]
原料化合物として、無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分とモノアミノジカルボン酸成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりアミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物を製造することができる。モノイミドテトラカルボン酸系化合物がアミド基を含有することにより、例えば、これを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性、機械的特性を向上させることができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物は、1分子中、1つ以上のアミド基、1つのイミド基および4つのカルボキシル基を有する化合物である。
【0065】
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物は、詳しくは、1分子の無水トリカルボン酸ハロゲン化物に対して、2分子のモノアミノジカルボン酸成分が反応し、1つのイミド基と1つのアミド基が形成されてなる化合物である。
【0066】
無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分とモノアミノジカルボン酸成分とを用いたアミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物の製造に際し、モノアミノジカルボン酸成分は、無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分に対して通常は、約2倍モル量、例えば1.5~10.0倍モル量、好ましくは1.8~2.2倍モル量、より好ましくは1.9~2.1倍モル量、さらに好ましくは1.95~2.05倍モル量で使用される。
【0067】
無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、無水トリカルボン酸成分において、カルボキシル基のOH基がハロゲン原子で置換された化合物のことである。アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン成分の酸ハロゲン化物であり、詳しくはジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物を包含する。
【0068】
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物および/または脂環族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物を含む。
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物および/または脂環族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物のみを含む。
【0069】
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分のうち、無水トリメリット酸クロライドからなる群G7から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分のうち、上記群G7から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0070】
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノジカルボン酸成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノジカルボン酸成分と同様のモノアミノジカルボン酸成分であり、芳香族モノアミノジカルボン酸成分、脂環族モノアミノジカルボン酸成分、および脂肪族モノアミノジカルボン酸成分を包含する。
【0071】
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族モノアミノジカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノジカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノジカルボン酸成分を含む。
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族モノアミノジカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノジカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノジカルボン酸成分のみを含む。
【0072】
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記のモノアミノジカルボン酸成分のうち、2-アミノテレフタル酸、2-アミノイソフタル酸、4-アミノイソフタル酸、5-アミノイソフタル酸、3-アミノフタル酸、4-アミノフタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、2-アミノピメリン酸、2-アミノスベリン酸、2-アミノアジピン酸、α-アミノセバシン酸、アミノマロン酸からなる群G8から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のモノアミノジカルボン酸成分のうち、上記群G8から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0073】
[トリイミドトリカルボン酸系化合物]
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とトリアミン成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりトリイミドトリカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。トリイミドトリカルボン酸系化合物は、1分子中、3つのイミド基および3つのカルボキシ基を有する化合物である。
【0074】
トリイミドトリカルボン酸系化合物は、詳しくは、1分子のトリアミン成分に対して、3分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、3つのイミド基が形成されている化合物である。
【0075】
トリイミドトリカルボン酸系化合物の製造に際し、トリアミン成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は約0.33倍モル量、例えば0.1~0.7倍モル量、好ましくは0.2~0.6倍モル量、より好ましくは0.25~0.5倍モル量、さらに好ましくは0.3~0.4倍モル量で使用される。
【0076】
トリイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン成分であり、詳しくはジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0077】
トリイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、トリイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
トリイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、トリイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0078】
トリイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物からなる群G9から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
トリイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、上記群G9から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0079】
トリイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得るトリアミン成分は、芳香族環を含有する芳香族トリアミン成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族トリアミン成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族トリアミン成分を包含する。トリアミン成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0080】
芳香族トリアミン成分としては、例えば、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、1,2,3-トリアミノベンゼン、2-メチル-1,3,5-ベンゼントリアミン、5-メチル-1,2,4-ベンゼントリアミン、6-メチル-1,2,4-ベンゼントリアミン、4-メチル-1,2,3-ベンゼントリアミン、5-メチル-1,2,3-ベンゼントリアミン、1,3,5-トリス(4-アミノフェニル)ベンゼン、トリス(3-アミノフェニル)アミン、トリス(4-アミノフェニル)アミン、トリス(3-アミノフェニル)ベンゼン、トリス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3,5-トリス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-アミノフェノキシ)トリアジン、2,3’,4-トリアミノビフェニル、2,4,4’-トリアミノビフェニル、3,3’,4-トリアミノビフェニル、3,3’,5-トリアミノビフェニル、3,4,4’-トリアミノビフェニル、3,4’,5-トリアミノビフェニル、2,3’,4-トリアミノジフェニルエーテル、2,4,4’-トリアミノジフェニルエーテル、3,3’,4-トリアミノジフェニルエーテル、3,3’,5-トリアミノジフェニルエーテル、3,4,4’-トリアミノジフェニルエーテル、3,4’,5-トリアミノジフェニルエーテル、2,3’,4-トリアミノベンゾフェノン、2,4,4’-トリアミノベンゾフェノン、3,3’,4-トリアミノベンゾフェノン、3,3’,5-トリアミノベンゾフェノン、3,4,4’-トリアミノベンゾフェノン、3,4’,5-トリアミノベンゾフェノン、2,3’,4-トリアミノジフェニルスルフィド、2,4,4’-トリアミノジフェニルスルフィド、3,3’,4-トリアミノジフェニルスルフィド、3,3’,5-トリアミノジフェニルスルフィド、3,4,4’-トリアミノジフェニルスルフィド、3,4’,5-トリアミノジフェニルスルフィド、2,3’,4-トリアミノジフェニルスルフォン、2,4,4’-トリアミノジフェニルスルフォン、3,3’,4-トリアミノジフェニルスルフォン、3,3’,5-トリアミノジフェニルスルフォン、3,4,4’-トリアミノジフェニルスルフォン、3,4’,5-トリアミノジフェニルスルフォン、2,3’,4-トリアミノジフェニルメタン、2,4,4’-トリアミノジフェニルメタン、3,3’,4-トリアミノジフェニルメタン、3,3’,5-トリアミノジフェニルメタン、3,4,4’-トリアミノジフェニルメタン、3,4’,5-トリアミノジフェニルメタン、2-(2,4-ジアミノフェニル)-2-(3-アミノフェニル)プロパン、2-(2,4-ジアミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3,4-ジアミノフェニル)-2-(3-アミノフェニル)プロパン、2-(3,5-ジアミノフェニル)-2-(3-アミノフェニル)プロパン、2-(3,4-ジアミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3,5-ジアミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、2-(2,4-ジアミノフェニル)-2-(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2-(2,4-ジアミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2-(3,4-ジアミノフェニル)-2-(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2-(3,5-ジアミノフェニル)-2-(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2-(3,4-ジアミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2-(3,5-ジアミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0081】
脂環族トリアミン成分としては、例えば、1,3,5-トリスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、他のアミン成分と併せて2種以上を混合物として用いることもできる。
【0082】
脂肪族トリアミン成分としては、例えば、1,2,3-トリアミノプロパン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、他のアミン成分と併せて2種以上を混合物として用いることもできる。
【0083】
トリイミドトリカルボン酸系化合物のトリアミン成分は、トリイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族トリアミン成分および/または脂環族トリアミン成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族トリアミン成分を含む。
トリイミドトリカルボン酸系化合物のトリアミン成分は、トリイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族トリアミン成分および/または脂環族トリアミン成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族トリアミン成分のみを含む。
【0084】
トリイミドトリカルボン酸系化合物のトリアミン成分は、トリイミドトリカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記のトリアミン成分のうち、脂環族トリアミン成分および/または脂肪族トリアミン成分を用いることが好ましい。
トリイミドトリカルボン酸系化合物のトリアミン成分は、トリイミドトリカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のトリアミン成分のうち、脂環族トリアミン成分および/または脂肪族トリアミン成分のみを用いることが好ましい。
【0085】
トリイミドトリカルボン酸系化合物のトリアミン成分は、汎用性の観点から、上記のトリアミン成分のうち、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、1,2,3-トリアミノベンゼン、2-メチル-1,3,5-ベンゼントリアミン、5-メチル-1,2,4-ベンゼントリアミン、6-メチル-1,2,4-ベンゼントリアミン、4-メチル-1,2,3-ベンゼントリアミン、5-メチル-1,2,3-ベンゼントリアミン、1,3,5-トリス(4-アミノフェニル)ベンゼンからなる群G10から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
トリイミドトリカルボン酸系化合物のトリアミン成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のトリアミン成分のうち、上記群G10から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0086】
[テトライミドテトラカルボン酸系化合物]
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とテトラアミン成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりテトライミドテトラカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。テトライミドテトラカルボン酸系化合物は、1分子中、4つのイミド基および4つのカルボキシ基を有する化合物である。
【0087】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物は、詳しくは、1分子のテトラアミン成分に対して、4分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、4つのイミド基が形成されている化合物である。
【0088】
無水トリカルボン酸成分とテトラアミン成分とを用いたテトライミドテトラカルボン酸系化合物の製造に際し、テトラアミン成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は約0.25倍モル量、例えば0.05~0.6倍モル量、好ましくは0.1~0.5倍モル量、より好ましくは0.15~0.4倍モル量、さらに好ましくは0.20~0.3倍モル量で使用される。
【0089】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン成分であり、詳しくはジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0090】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、テトライミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
テトライミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、テトライミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0091】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物からなる群G11から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
テトライミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、上記群G11から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0092】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るテトラアミン成分は、芳香族環を含有する芳香族テトラアミン成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族テトラアミン成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族テトラアミン成分を包含する。テトラアミン成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0093】
芳香族テトラアミン成分としては、例えば、3,3’-ジアミノベンジジン、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルスルフォン、ベンゼン-1,2,4,5,-テトラアミン、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0094】
脂環族テトラアミン成分としては、例えば、1,2,3,4-シクロペンタンテトラミン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0095】
脂肪族テトラアミン成分としては、例えば、ブタン-1,1,4,4-テトラアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0096】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物のテトラアミン成分は、テトライミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族テトラアミン成分および/または脂環族テトラアミン成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族テトラアミン成分を含む。
テトライミドテトラカルボン酸系化合物のテトラアミン成分は、テトライミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族テトラアミン成分および/または脂環族テトラアミン成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族テトラアミン成分のみを含む。
【0097】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物のテトラアミン成分は、テトライミドテトラカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記のテトラアミン成分のうち、脂環族テトラアミン成分および/または脂肪族テトラアミン成分を用いることが好ましい。
テトライミドテトラカルボン酸系化合物のテトラアミン成分は、テトライミドテトラカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のテトラアミン成分のうち、脂環族テトラアミン成分および/または脂肪族テトラアミン成分のみを用いることが好ましい。
【0098】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物のテトラアミン成分は、汎用性の観点から、上記のテトラアミン成分のうち、ブタン-1,1,4,4-テトラアミン、3,3’-ジアミノベンジジン、ベンゼン-1,2,4,5,-テトラアミン、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルエーテルからなる群G12から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
テトライミドテトラカルボン酸系化合物のテトラアミン成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のテトラアミン成分のうち、上記群G12から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0099】
[ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物]
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とモノヒドロキシジアミン成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物は、1分子中、2つのイミド基および2つのカルボキシ基および1つのヒドロキシル基を有する化合物である。
【0100】
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物は、詳しくは、1分子のモノヒドロキシジアミン成分に対して、2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0101】
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸化合物の製造に際し、モノヒドロキシジアミン成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は約0.5倍モル量、例えば0.1~0.7倍モル量、好ましくは0.3~0.7倍モル量、より好ましくは0.4~0.6倍モル量、さらに好ましくは0.45~0.55倍モル量で使用される。
【0102】
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン成分であり、詳しくはジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0103】
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボキシモノフェノール系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0104】
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物からなる群G13から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、上記群G13から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0105】
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物を構成し得るモノヒドロキシジアミン成分は、芳香族環を含有する芳香族モノヒドロキシジアミン成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族モノヒドロキシジアミン成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族モノヒドロキシジアミン成分を包含する。モノヒドロキシジアミン成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0106】
芳香族モノヒドロキシジアミン成分としては、例えば、3,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノール、2,5-ジアミノフェノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0107】
脂環族モノヒドロキシジアミン成分としては、例えば、3,5-ジアミノシクロヘキサノール、3,4-ジアミノシクロヘキサノール、2,3-ジアミノシクロヘキサノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0108】
脂肪族モノヒドロキシジアミン成分としては、例えば、1,3-ジアミノ-1-プロパノール、1,3-ジアミノ-2-プロパノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0109】
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物のモノヒドロキシジアミン成分は、ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族モノヒドロキシジアミン成分および/または脂環族モノヒドロキシジアミン成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノヒドロキシジアミン成分を含む。
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物のモノヒドロキシジアミン成分は、ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族モノヒドロキシジアミン成分および/または脂環族モノヒドロキシジアミン成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノヒドロキシジアミン成分のみを含む。
【0110】
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物のモノヒドロキシジアミン成分は、ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記のモノヒドロキシジアミン成分のうち、脂環族モノヒドロキシジアミン成分および/または脂肪族モノヒドロキシジアミン成分を用いることが好ましい。
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物のモノヒドロキシジアミン成分は、ジイミドジカルボキシモノフェノール系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のモノヒドロキシジアミン成分のうち、脂環族モノヒドロキシジアミン成分および/または脂肪族モノヒドロキシジアミン成分のみを用いることが好ましい。
【0111】
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物のモノヒドロキシジアミン成分は、汎用性の観点から、上記のモノヒドロキシジアミン成分のうち、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、3,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノール、2,5-ジアミノフェノールからなる群G14から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物のモノヒドロキシジアミン成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のモノヒドロキシジアミン成分のうち、上記群G14から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0112】
[ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物]
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とジヒドロキシジアミン成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりジイミドジカルボキシジフェノール系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物は、1分子中、2つのイミド基および2つのカルボキシ基および2つのヒドロキシル基を有する化合物である。
【0113】
ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物は、詳しくは、1分子のジヒドロキシジアミン成分に対して、2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0114】
無水トリカルボン酸成分とジヒドロキシジアミン成分とを用いたジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物の製造に際し、ジヒドロキシジアミン成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は約0.5倍モル量、例えば0.1~0.7倍モル量、好ましくは0.3~0.7倍モル量、より好ましくは0.4~0.6倍モル量、さらに好ましくは0.45~0.55倍モル量で使用される。
【0115】
ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン成分であり、詳しくはジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0116】
ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0117】
ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物からなる群G15選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記群G15から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0118】
ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物を構成し得るジヒドロキシジアミン成分は、芳香族環を含有する芳香族ジヒドロキシジアミン成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族ジヒドロキシジアミン成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族ジヒドロキシジアミン成分を包含する。ジヒドロキシジアミン成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0119】
芳香族ジヒドロキシジアミン成分としては、例えば、4,6-ジアミノレゾルシノール、4,5-ジアミノレゾルシノール、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、3,4’-ジアミノ-3’,4-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノジフェニルオキシド、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-2-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ビス(4-アミノ-3-ヒドキシフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0120】
脂環族ジヒドロキシジアミン成分としては、例えば、4,5-ジアミノ-1,2-シクロヘキサンジオール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0121】
ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物のジヒドロキシジアミン成分は、ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族ジヒドロキシジアミン成分および/または脂環族ジヒドロキシジアミン成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族ジヒドロキシジアミン成分を含む。
ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物のジヒドロキシジアミン成分は、ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族ジヒドロキシジアミン成分および/または脂環族ジヒドロキシジアミン成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族ジヒドロキシジアミン成分のみを含む。
【0122】
ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物のジヒドロキシジアミン成分は、ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記のジヒドロキシジアミン成分のうち、脂環族ジヒドロキシジアミン成分を用いることが好ましい。
ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物のジヒドロキシジアミン成分は、ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のジヒドロキシジアミン成分のうち、脂環族ジヒドロキシジアミン成分のみを用いることが好ましい。
【0123】
ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物のジヒドロキシジアミン成分は、汎用性の観点から、上記のジヒドロキシジアミン成分のうち、4,6-ジアミノレゾルシノール、4,5-ジアミノレゾルシノール、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、3,4’-ジアミノ-3’,4-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノジフェニルオキシド、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジヒドロキシビフェニルからなる群G16から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物のジヒドロキシジアミン成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のジヒドロキシジアミン成分のうち、上記群G16から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0124】
[トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物]
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とモノヒドロキシトリアミン成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりトリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物は、1分子中、3つのイミド基および3つのカルボキシ基および1つのヒドロキシル基を有する化合物である。
【0125】
トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物は、詳しくは、1分子のモノヒドロキシトリアミン成分に対して、3分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、3つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0126】
無水トリカルボン酸成分とモノヒドロキシトリアミン成分とを用いたトリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物の製造に際し、モノヒドロキシトリアミン成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は約0.33倍モル量、例えば0.1~0.7倍モル量、好ましくは0.2~0.6倍モル量、より好ましくは0.25~0.5倍モル量、さらに好ましくは0.3~0.4倍モル量で使用される。
【0127】
トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン成分であり、詳しくはジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0128】
トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0129】
トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物からなる群G17から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記群G17から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0130】
トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物を構成し得るモノヒドロキシトリアミン成分は、芳香族環を含有する芳香族モノヒドロキシトリアミン成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族モノヒドロキシトリアミン成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族モノヒドロキシトリアミン成分を包含する。モノヒドロキシトリアミン成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0131】
芳香族モノヒドロキシトリアミン成分としては、例えば、2,4,6-トリアミノフェノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0132】
トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物のモノヒドロキシトリアミン成分は、トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族モノヒドロキシトリアミン成分および/または脂環族モノヒドロキシトリアミン成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノヒドロキシトリアミン成分を含む。
トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物のモノヒドロキシトリアミン成分は、トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られる樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族モノヒドロキシトリアミン成分および/または脂環族モノヒドロキシトリアミン成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノヒドロキシトリアミン成分のみを含む。
【0133】
トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物のモノヒドロキシトリアミン成分は、トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記のモノヒドロキシトリアミン成分のうち、脂環族モノヒドロキシトリアミン成分および/または脂肪族モノヒドロキシトリアミン成分を用いることが好ましい。
トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物のモノヒドロキシトリアミン成分は、トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のモノヒドロキシトリアミン成分のうち、脂環族モノヒドロキシトリアミン成分および/または脂肪族モノヒドロキシトリアミン成分のみを用いることが好ましい。
【0134】
トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物のモノヒドロキシトリアミン成分は、汎用性の観点から、上記のモノヒドロキシトリアミン成分のうち、2,4,6-トリアミノフェノールからなる群G18から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物のモノヒドロキシトリアミン成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記群G18から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0135】
<イミド基含有樹脂硬化剤の製造方法>
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は、溶媒中または無溶媒下による方法で製造することができるが、製造法は特に限定されない。
【0136】
溶媒中で製造する方法としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系溶媒に原料化合物を任意の割合で溶解し、0~80℃で数時間攪拌することで前駆体であるアミド酸系化合物を合成し、続いて得られた前駆体化合物をイミド化して製造する方法がある。
【0137】
イミド化の方法としては、特に限定されず、例えば前駆体溶液または前駆体粉末を空気もしくは不活性ガス雰囲気下で150℃~350℃に加熱することにより環化反応を行う加熱イミド化法、前駆体溶液に無水酢酸や3級アミン等の脱水環化試薬を添加して処理することにより行われる化学的イミド化法がある。
【0138】
無溶媒下で製造する方法としては、例えば、メカノケミカル効果を利用した方法が挙げられる。メカノケミカル効果を利用した方法とは、反応に用いる原料化合物を粉砕する際に生じる機械的エネルギーを利用することによりメカノケミカル効果を発現させることで有機化合物を得る方法である。
【0139】
メカノケミカル効果とは、反応環境下において固体状態にある原料化合物に機械的エネルギー(圧縮力、せん断力、衝撃力、摩砕力等)を付与することにより、当該原料化合物を粉砕し、形成される粉砕界面を活性化させる効果(または現象)のことである。これにより、官能基同士の反応が起こる。官能基同士の反応は通常、2つ以上の原料化合物分子間で起こる。例えば、官能基同士の反応は化学構造の異なる2つの原料化合物分子間で起こってもよいし、または化学構造の同じ2つの原料化合物分子間で起こってもよい。官能基同士の反応は限定的な1組の2つの原料化合物分子間のみで起こるわけではなく、通常は他の組の2つの原料化合物分子間でも起こる。官能基同士の反応により生成した化合物分子と、原料化合物分子との間で、新たに官能基同士の反応が起こってもよい。官能基同士の反応は通常、化学反応であり、これにより、2つの原料化合物分子間で、各原料化合物分子が有する官能基により、結合基(特に共有結合)が形成されて、別の1つの化合物分子が生成する。
【0140】
反応環境とは反応のために原料化合物が置かれる環境、すなわち機械的エネルギーが付与される環境という意味であり、例えば、装置内の環境であってもよい。反応環境下において固体状態にあるとは、機械的エネルギーが付与される環境下(例えば、装置内の温度および圧力下)において固体状態にあるという意味である。反応環境下において固体状態にある原料化合物は通常、常温(25℃)および常圧(101.325kPa)下で固体状態であればよい。反応環境下において固体状態にある原料化合物は、機械的エネルギーの付与の開始時において、固体状態にあればよい。本発明は、反応環境下において固体状態にある原料化合物が、機械的エネルギーの付与の継続に伴う温度および/または圧力等の上昇により、反応中(または処理中)に液体状態(例えば、溶融状態)に変化することを妨げるものではないが、反応率の向上の観点から、反応中(または処理中)、継続的に固体状態にあることが好ましい。
【0141】
メカノケミカル効果の詳細は明らかではないが、以下の原理に従うものと考えられる。1種以上の固体状態の原料化合物に機械的エネルギーを付与して粉砕が起こると、当該機械的エネルギーの吸収により粉砕界面が活性化される。このような粉砕界面の表面活性エネルギーにより、2つの原料化合物分子間で化学反応が起こるものと考えられる。粉砕とは、原料化合物粒子への機械的エネルギーの付与により、当該粒子が当該機械的エネルギーを吸収して、当該粒子に亀裂が生じ、表面が更新されることをいう。表面が更新されるとは、新たな表面として粉砕界面が形成されることである。メカノケミカル効果において、表面の更新により形成される新たな表面の状態は、粉砕による粉砕界面の活性化が起こる限り、特に限定されず、乾燥状態にあってもよいし、または湿潤状態にあってもよい。表面の更新による新たな表面の湿潤状態は、固体状態の原料化合物とは別の液体状態にある原料化合物に起因する。
【0142】
機械的エネルギーは、反応環境下において固体状態にある1種以上の原料化合物を含む原料混合物に対して付与される。原料混合物の状態は、機械的エネルギーの付与により、固体状態の原料化合物の粉砕が起こる限り、特に限定されない。例えば、原料混合物に含まれる全ての原料化合物が固体状態にあることに起因して、原料混合物は乾燥状態にあってもよい。また例えば、原料混合物に含まれる少なくとも1種の原料化合物が固体状態であり、かつ残りの原料化合物が液体状態であることに起因して、原料混合物は湿潤状態であってもよい。具体的には、例えば、原料混合物が1種のみの原料化合物を含む場合、当該1種の原料化合物は固体状態である。また例えば、原料混合物が2種の原料化合物を含む場合、当該2種の原料化合物はともに固体状態であってもよいし、または一方の原料化合物が固体状態にあり、かつ他方の原料化合物が液体状態にあってもよい。
【0143】
メカノケミカル効果を利用した方法において、官能基は、分子構造の中で反応性の原因となり得る1価の基(原子団)のことであり、炭素間二重結合、炭素間三重結合等の不飽和結合基(例えばラジカル重合性基)を除く概念で用いるものとする。官能基は、炭素原子およびヘテロ原子を含有する基である。ヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群、特に酸素原子および窒素原子からなる群から選択される1つ以上の原子である。官能基は水素原子をさらに含有してもよい。反応に供される官能基は通常、2つの官能基であり、一方の官能基を有する原料化合物分子と、他方の官能基を有する原料化合物分子とは、構造が相互に異なっていてもよいし、または同一であってもよい。反応により、2つの原料化合物分子の結合(特に共有結合)が形成され、それらの1分子化が達成される。官能基同士の反応により、水、二酸化炭素、および/またはアルコール等の小分子が副生してもよいし、または副生しなくてもよい。
【0144】
官能基同士の反応は、化学反応し得るあらゆる官能基(特に1価の官能基)同士の反応であってもよく、例えば、カルボキシル基およびそのハロゲン化物(基)、酸無水物基、アミノ基、イソシアネート基、ならびにヒドロキシル基等からなる群から選択される2つの官能基の反応である。当該2つの官能基は、化学反応が起こる限り、特に限定されず、例えば、化学構造の異なる2つの官能基であってもよいし、または化学構造の同じ2つの官能基であってもよい。
【0145】
官能基同士の反応として、例えば、縮合反応、付加反応またはこれらの複合反応等が挙げられる。
【0146】
縮合反応とは、原料化合物分子間で、水、二酸化炭素、アルコール等の小分子の脱離を伴いながら、原料化合物分子間の結合または連結が達成される反応のことである。縮合反応として、例えば、アミド基が生成する反応(アミド化反応)、イミド基が生成する反応(イミド化反応)、またはエステル基が生成する反応(エステル化反応)等が挙げられる。
【0147】
付加反応は、官能基間での付加反応であり、原料化合物分子間で、小分子の脱離を伴うことなく、原料化合物分子間の結合または連結が達成される反応のことである。付加反応として、例えば、ウレア基が生成する反応、ウレタン基が生成する反応、および環状構造が開環する反応(すなわち、開環反応)等が挙げられる。開環反応は、環状構造を有する原料化合物(例えば、酸無水物基含有化合物、環状アミド化合物、環状エステル化合物、エポキシ化合物)において、環状構造の一部が開裂し、その開裂した部位と他の原料化合物の官能基との結合または連結が達成される反応のことである。開環反応により、例えば、アミド基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基が生成する。特に、原料化合物としての酸無水物基含有化合物における酸無水物基の開環反応においては、当該酸無水物基が開環されて、別の原料化合物分子(アミノ基またはヒドロキシル基)との結合または連結が達成される。その結果として、例えば、アミド基またはエステル基と、カルボキシル基とが同時に生成する。
【0148】
官能基同士の反応は、より詳しくは、例えば、以下の反応からなる群から選択される1種以上の反応であってもよい:
(A)酸無水物基と、アミノ基との反応により、(a1)アミド基およびカルボキシル基、(a2)イミド基、(a3)イソイミド基または(a4)これらの混合基が生成する反応;
(B)酸無水物基と、イソシアネート基との反応によりイミド基が生成する反応;
(C)カルボキシル基またはそのハロゲン化物(基)と、アミノ基またはイソシアネート基との反応により、アミド基が生成する反応;
(D)カルボキシル基またはそのハロゲン化物(基)と、ヒドロキシル基との反応により、エステル基が生成する反応;
(E)イソシアネート基と、アミノ基との反応により、ウレア基が生成する反応;
(F)イソシアネート基と、ヒドロキシル基との反応により、ウレタン基が生成する反応;および
(G)酸無水物基と、ヒドロキシル基との反応により、エステル基およびカルボキシル基が生成する反応。
【0149】
無溶媒下で製造する方法においては、メカノケミカル効果を利用した方法を実施した後、溶媒中で製造する方法におけるイミド化の方法と同様の方法により、イミド化を行ってもよい。
【0150】
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上の純度を有することが好ましい。このような純度は、特に無溶媒下においてメカノケミカル効果を利用した方法によりイミド基含有樹脂硬化剤を製造した場合に、簡便に達成される。
【0151】
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤の純度は、全成分の全質量に対するイミド基含有樹脂硬化剤の質量の割合である。
【0152】
<イミド基含有樹脂硬化剤の使用>
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は、硬化性化合物と反応または重合させることにより、樹脂硬化物を提供することができる。硬化性化合物は、1分子中、官能基を1個以上(好ましくは2個以上)で有する。硬化性化合物が有する官能基は、イミド基含有樹脂硬化剤が有する官能基(すなわち、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基)との反応性をもつ官能基である。そのような反応性をもつ官能基として、例えば、グリシジル基(またはエポキシ基)、イソシアネート基(またはシアン酸エステル基)、オキサゾリン基、カルボジイミド基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。硬化性化合物の分子量は特に限定されず、例えば、比較的低分子量であってもよいし、または高分子量であってもよい。比較的低分子量の硬化性化合物の分子量は、例えば、100以上2000以下であってもよい。比較的高分子量の硬化性化合物の分子量は、例えば、2000超(特に2000超10万以下)であってもよい。比較的低分子量の硬化性化合物の具体例として、例えば、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、グリコール系化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。比較的高分子量の硬化性化合物の具体例として、例えば、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0153】
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は、通常、当該イミド基含有樹脂硬化剤および硬化性化合物を含む組成物として使用される。
【0154】
本発明の組成物はイミド基含有樹脂硬化剤および硬化性化合物を含み、通常はさらに溶媒を含む。本発明の組成物は、硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、溶媒中にイミド基含有樹脂硬化剤および硬化性化合物が溶解されてなる溶液の形態を有することが好ましい。本発明の組成物に用いられる溶媒は、特に限定されず、公知の有機溶媒が挙げられ、イミド基含有樹脂硬化剤および硬化性化合物の溶解と環境への影響の観点から非ハロゲン化溶媒が好ましい。このような非ハロゲン化溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン系溶媒、N,N-ジメチルエチレンウレア、N,N-ジメチルプロピレンウレア、テトラメチル尿素等の尿素系溶媒、γ-ブチロラクトン、γ-カプロラクトン等のラクトン系溶媒、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート等のエステル系溶媒、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム系溶媒等が挙げられる。これらの非ハロゲン化溶媒はいずれも汎用溶媒として有用である。前記有機溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0155】
本発明の組成物において、イミド基含有樹脂硬化剤の配合量は、得られる硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、イミド基含有樹脂硬化剤の官能基当量が硬化性化合物の官能基当量に対して、好ましくは0.5~1.5当量比、より好ましくは0.7~1.3当量比となるような量であることが好ましい。イミド基含有樹脂硬化剤の官能基当量は、ヒドロキシ基またはカルボキシル基の含有量から算出される当量に相当する。
【0156】
本発明の組成物において、イミド基含有樹脂硬化剤および硬化性化合物の合計配合量は特に限定されず、硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、組成物全量に対して、好ましくは30~90質量%であり、より好ましくは40~80質量%であり、さらに好ましくは50~70質量%である。
【0157】
本発明の組成物は、硬化促進剤、イミド基含有樹脂硬化剤以外の他の硬化剤、無機充填材、酸化防止剤、難燃剤等の添加剤をさらに含んでもよい。
【0158】
硬化促進剤は特に限定されないが、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール当のイミダゾール類;4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類が挙げられる。硬化促進剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0159】
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は、耐熱性および誘電特性に十分に優れた樹脂硬化物を安定的に得ることができるため、自動車部品、電気電子部品、摺動部品、チューブ関連部品、家庭用品、金属被覆剤、産業資材用品、コンピュータおよび関連機器の部品、光学機器部品、情報・通信機器部品、精密機器部品等広範な用途に使用できる。また、本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は、溶媒に溶解あるいは分散させる等して樹脂溶液とすることができる。このため、当該溶液を、塗料、ワニス、接着剤、およびプリプレグ製造用含浸液または塗布液等として好適に適用できる。
【0160】
自動車部品の具体例としては、シフトレバー、ギアボックス等の台座に用いるベースプレート、シリンダーヘッドカバー、エンジンマウント、エアインテークマニホールド、スロットルボディ、エアインテークパイプ、ラジエータタンク、ラジエータサポート、ラジエータホース、ラジエータグリル、リアスポイラー、ホイールカバー、ホイールキャップ、カウルベントグリル、エアアウトレットルーバー、エアスクープ、フードバルジ、フェンダー、バックドア、フューエルセンダーモジュール、シフトレバーハウジング、プロペラシャフト、スタビライザーバーリンケージロッド、ウインドーレギュレータ、ドアロック、ドアハンドル、アウトサイドドアミラーステー、アクセルペダル、ペダルモジュール、シールリング、ベアリングリテーナー、ギア、ワイヤーハーネス、リレーブロック、センサーハウジング、エンキャプシュレーション、イグニッションコイル、ディストリビューター、ウォーターポンプレンレット、ウォーターポンプアウトレット、サーモスタットハウジング、クーリングファン、ファンシュラウド、オイルパン、オイルフィルターハウジング、オイルフィルターキャップ、オイルレベルゲージ、タイミングベルトカバー、エンジンカバー、燃料タンク、燃料チューブ、フューエルカットオフバルブ、クイックコネクター、キャニスター、フューエルデリバリーパイプ、フューエルフィラーネック、燃料配管用継手、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ランプエクステンション、ランプソケット等が挙げられる。
【0161】
電気電子部品の具体例としては、コネクタ、HDDランプレール、基板補強板、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗器、IC、LEDのハウジング;リチウム二次電池等の電極のバインダが挙げられる。
【0162】
摺動部品の具体例としては、歯車、ギア、ワッシャー、アクチュエーター、ベアリングリテーナー、軸受、スイッチ、ピストン、パッキン、ローラー、複写機用ベルト、ベルトが挙げられる。
【0163】
チューブ関連部品の具体例としては、フィードチューブ、リターンチューブ、エバポチューブ、フューエルフィラーチューブ、リザーブチューブ、ベントチューブ、オイルチューブ、ブレーキチューブ、ウインドウォッシャー液用チューブ、冷却水・冷媒等用クーラーチューブ、エアコン冷媒用チューブ、床暖房用チューブ、消火器および消火設備用チューブ、医療用冷却機材用チューブ、塗料散布用チューブ、薬液輸送用チューブ、燃料輸送用チューブ、ディーゼルガソリン用チューブ、石油掘削用チューブ、含アルコールガソリン用チューブ、エンジン冷却液(LLC)用チューブ、リザーバータンクチューブ、ロードヒーティングチューブ、床暖房用チューブ、インフラ供給用チューブ、ガスチューブが挙げられる。
【0164】
家庭用品の具体例としては、哺乳瓶、メガネフレーム、スポーツシューズ;スキー板の表面材が挙げられる。
【0165】
金属被覆剤の具体例としては、液体金属配管、水槽タンク等水回り部品の金属被覆剤が挙げられる。
【0166】
産業資材用品の具体例としては、ベルト、防弾服、防護服、コンクリート補強材、シューズ部材、クッション材、風力発電用ブレード、フィルターが挙げられる。
【0167】
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は、フィルムの硬化剤としても使用できる。そのようなフィルムの具体例としては、フレキシブルプリント基盤、シームレスベルト、スピーカー振動板、フィルムコンデンサが挙げられる。
【0168】
塗料、ワニス、接着剤の用途において、塗料、ワニス、接着剤は、本発明のイミド基含有樹脂硬化剤を含む。塗料、ワニスに使用するその他の材料、使用量は通常の公知のものを適用することができる。溶剤としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン等またはこれらを含む溶媒を使用するようにすればよい。
【0169】
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は、プリプレグの製造にも使用できる。プリプレグは、溶媒に可溶な本発明のイミド基含有樹脂硬化剤および該硬化剤とさらに反応重合する化合物(例えば、前記した硬化性化合物)を有機溶媒に溶解した樹脂溶液を、強化繊維クロスに含浸または塗布させた後、乾燥することにより得ることができる。前記イミド基含有樹脂硬化剤とさらに反応重合する化合物の具体例としては、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、グリコール系化合物等が挙げられる。エポキシ系化合物とは、分子内に少なくとも一つのグリシジル基を有する化合物であり、好ましくは、2つ以上のグリシジル基を有する化合物である。エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物や、これらのアルキル置換体、ハロゲン化物または水素添加物が挙げられる。イソシアネート化合物の具体例としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンダイマー等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。有機溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、クレゾール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン等またはこれらを含む溶媒が挙げられる。
【実施例】
【0170】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、本発明のイミド基含有樹脂硬化剤に関する測定は以下の方法により行った。
【0171】
(1)イミド基含有樹脂硬化剤の作製方法
酸成分とアミン成分を表(すなわち各実施例)に記載の比率で混合した試料150gを、ワンダークラッシャー(大阪ケミカル株式会社)WC-3Cにより、およそ9000rpmの回転速度で1分間混合粉砕することを3回繰り返すことで、メカノケミカル処理を行った。
処理した試料をガラス容器に移し、イナートオーブン(ヤマト科学株式会社)DN411Iにて、窒素雰囲気下で焼成温度300℃、焼成時間2時間のイミド化反応を行った。
【0172】
(2)イミド基含有樹脂硬化剤の純度および分子量
高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)により、以下の条件で測定し、分子量を求めた。
試料:イミド基含有樹脂硬化剤/DMSO溶液(200μg/mL)
装置:ブルカー・ダルトニクス製microTOF2-kp
カラム:Cadenza CD-C18 3μm 2mm×150mm
移動相:(移動相A)0.1% ギ酸水溶液、(移動相B)メタノール
グラジエント(B Conc.):0min(50%)-5,7min(60%)-14.2min(60%)-17min(100%)-21.6min(100%)-27.2min(50%)-34min(50%)
イオン化法:ESI
検出条件:Negativeモード
【0173】
純度は、得られた試料中に含まれる全成分のうちのイミド基含有樹脂硬化剤が占める割合を意味し、質量分析により得られる質量スペクトル中に検出された全成分のイオン強度比のうち、イミド基含有樹脂硬化剤が占める割合により求めた。
【0174】
(3)イミド基含有樹脂硬化剤の同定(合成の確認)
赤外分光法(IR)
装置:Perkin Elmer製 System 2000 赤外分光装置
方法:KBr法
積算回数:64スキャン(分解能4cm-1)
イミド基含有樹脂硬化剤の同定は、上記のように、分子量が目的とする構造の分子量と同じであること、および赤外分光法においてイミド基に由来する吸収があることにより行った。なお、イミド基含有樹脂硬化剤がアミド基、カルボキシル基、および/またはヒドロキシル基も含有する場合、その同定は、赤外分光法において当該基に由来する吸収があることによっても行った。
詳しくは、1778cm-1付近および1714cm-1付近の吸収の有無によりイミド結合の生成、1700~1720cm-1付近の吸収の有無によりカルボキシル基の存在の有無、1680~1630cm-1付近および1570~1515cm-1付近の吸収の有無によりアミド結合の有無、3700~3200cm-1付近の吸収の有無によりヒドロキシル基の存在の有無を確認した。
○:所定の構造を有しているものと同定された;
×:所定の構造を有しているものと同定されなかった。
【0175】
(4)イミド基含有樹脂硬化剤の溶解性
合成直後の硬化剤について、溶媒溶解性の評価を行った。詳しくは、イミド基含有樹脂硬化剤/N-メチル-2-ピロリドン=10/90(重量比)の混合溶液を作製し、200℃で還流加熱を行った。
○(溶解性有り):溶け残り無し;
×(溶解性無し):溶け残り有り。
【0176】
(5)イミド基含有樹脂硬化剤の保存安定性
合成後、室温(25℃)・空気雰囲気下で40日間保存した硬化剤について、溶媒溶解性の評価および当該硬化剤を用いて作製した硬化物の熱特性の評価を行った。
【0177】
[40日間保存後の溶媒溶解性]
イミド基含有樹脂硬化剤/N-メチル-2-ピロリドン=10/90(重量比)の混合溶液を作製し、200℃で還流加熱を行った。
○(溶解性有り):溶け残り無し
×(溶解性無し):溶け残り有り
【0178】
[硬化物のガラス転移温度(Tg)]
40日間保存後の硬化剤を用いて作製した硬化物のガラス転移温度の、合成直後の硬化剤を用いて作製した硬化物のガラス転移温度からの変化により、熱特性に関する保存安定性の評価を行った。
(40日間保存後の硬化剤を用いて得られた樹脂硬化物のTg)/(合成直後の硬化剤を用いて得られた樹脂硬化物のTg)×100=A
○:A=98.0以上
×:A=98.0未満
【0179】
(6)樹脂硬化物の作製方法
イミド基含有樹脂硬化剤とエポキシ樹脂(jER828)を1.0/1.1(当量比)の割合で混合した試料60質量部に対して、硬化促進剤(2-エチル-4メチルイミダゾール)0.2質量部と、DMF39.8質量部とを150℃で混合した。
得られたエポキシ樹脂溶液をアルミ基材に300μmの厚みで塗工し、作製した塗膜をイナートオーブンにて、窒素雰囲気下、180℃で2時間、続いて200℃で2時間乾燥して、脱溶媒および硬化反応を行った。得られたアルミ基材付き試料からアルミ基材を除去し、エポキシ樹脂硬化物を得た。
【0180】
(7)ガラス転移温度の測定
示差走査熱量測定装置(DSC)により、以下の条件で測定した。
【0181】
装置:Perkin Elmer製 DSC 7
昇温速度:20℃/min
25℃から350℃まで昇温し、降温後、再度25℃から350℃まで昇温し、得られた昇温曲線中の転移温度に由来する不連続変化の開始温度をガラス転移温度(Tg)とした。明確な転移温度が見られない場合は、ガラス転移温度が350℃以上であるとした。
【0182】
合成直後の硬化剤を用いて作製した硬化物のガラス転移温度については、以下のように評価した。
◎:220℃≦Tg(最良);
〇:200℃≦Tg<220℃(良);
△:170℃≦Tg<200℃(実用上問題なし);
×:Tg<170℃(実用上問題あり)。
【0183】
(8)誘電特性(誘電率、誘電正接)の評価
インピーダンス・アナライザにより、以下の条件で測定し、評価を行った。
【0184】
インピーダンス・アナライザ
装置:アジレント・テクノロジー株式会社製E4991A RFインピーダンス/マテリアル・アナライザ
試料寸法:長さ20mm×幅20mm×厚み150μm
周波数:1GHz
測定温度:23℃
試験環境:23℃±1℃、50%RH±5%RH
【0185】
◎:誘電率≦2.7(最良);
〇:2.7<誘電率≦2.9(良);
△:2.9<誘電率≦3.1(実用上問題なし);
×:3.1<誘電率(実用上問題あり)。
【0186】
◎:誘電正接≦0.025(最良);
〇:0.025<誘電正接≦0.030(良);
△:0.030<誘電正接≦0.035(実用上問題なし);
×:0.035<誘電正接(実用上問題あり)。
【0187】
(9)イミド基含有樹脂硬化剤以外の硬化剤
・PHENOLITE TD-2131:DIC社製、ノボラック型フェノール樹脂;当該硬化剤は以下の構造式を有する。
【化3】
【0188】
・HN-2000:日立化成社製、脂環式酸無水物;当該硬化剤は以下の構造式を有する。
【化4】
【0189】
・HN-5500:日立化成社製、脂環式酸無水物;当該硬化剤は以下の構造式を有する。
【化5】
【0190】
・EH-3636AS:ADEKA製、ジシアンジアミド;当該硬化剤は以下の構造式を有する。
【化6】
【0191】
[ジイミドトリカルボン酸系化合物]
実施例A-1(参考例)
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸716質量部と3,4-ジアミノ安息香酸284質量部を添加し、前記した方法によりイミド基含有樹脂硬化剤の作製を行った。
さらに、得られたイミド基含有樹脂硬化剤を用いて、前記した方法により樹脂硬化物の作製を行った。
【0192】
実施例A-2~A-4(参考例)
アミン成分の組成を変更する以外は、実施例A-1と同様の操作を行って、イミド基含有樹脂硬化剤および硬化物を得た。イミド基含有樹脂硬化剤およびそれを用いて得られた硬化物の特性は、表1に示したとおりであった。
【0193】
[ジイミドテトラカルボン酸系化合物]
実施例B-1
粉砕槽に、粒状のピロメリット酸無水物377質量部と2-アミノテレフタル酸623質量部を添加し、前記した方法によりイミド基含有樹脂硬化剤の作製を行った。
さらに、得られたイミド基含有樹脂硬化剤を用いて、前記した方法により樹脂硬化物の作製を行った。
【0194】
実施例B-2~B-28(実施例B-3、B-4、B-7、B-8、B-11、B-12、B-15、B-16、B-19、B-20、B-23、B-24、B-27、B-28:参考例)
酸成分およびアミン成分の組成を変更する以外は、実施例B-1と同様の操作を行って、イミド基含有樹脂硬化剤および硬化物を得た。イミド基含有樹脂硬化剤およびそれを用いて得られた硬化物の特性は、表2または表3に示したとおりであった。
【0195】
[モノイミドトリカルボン酸系化合物]
実施例C-1(参考例)
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸515質量部と2-アミノテレフタル酸485質量部を添加し、前記した方法によりイミド基含有樹脂硬化剤の作製を行った。
さらに、得られたイミド基含有樹脂硬化剤を用いて、前記した方法により樹脂硬化物の作製を行った。
【0196】
実施例C-2~C-4(参考例)
アミン成分の組成を変更する以外は、実施例C-1と同様の操作を行って、イミド基含有樹脂硬化剤および硬化物を得た。イミド基含有樹脂硬化剤およびそれを用いて得られた硬化物の特性は、表4に示したとおりであった。
【0197】
[アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物]
実施例D-1(参考例)
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸クロライド368質量部と2-アミノテレフタル酸632質量部を添加し、前記した方法によりイミド基含有樹脂硬化剤の作製を行った。
さらに、得られたイミド基含有樹脂硬化剤を用いて、前記した方法により樹脂硬化物の作製を行った。
【0198】
実施例D-2(参考例)
アミン成分の組成を変更する以外は、実施例D-1と同様の操作を行って、イミド基含有樹脂硬化剤および硬化物を得た。イミド基含有樹脂硬化剤およびそれを用いて得られた硬化物の特性は、表5に示したとおりであった。
【0199】
[トリイミドトリカルボン酸系化合物]
実施例E-1(参考例)
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸824質量部と1,3,5-トリアミノベンゼン176質量部を添加し、前記した方法によりイミド基含有樹脂硬化剤の作製を行った。
さらに、得られたイミド基含有樹脂硬化剤を用いて、前記した方法により樹脂硬化物の作製を行った。
【0200】
実施例E-2~E-9(参考例)
アミン成分の組成を変更する以外は、実施例E-1と同様の操作を行って、イミド基含有樹脂硬化剤および硬化物を得た。イミド基含有樹脂硬化剤およびそれを用いて得られた硬化物の特性は、表6に示したとおりであった。
【0201】
[テトライミドテトラカルボン酸系化合物]
実施例F-1(参考例)
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸782質量部と3,3’-ジアミノベンジジン218質量部を添加し、前記した方法によりイミド基含有樹脂硬化剤の作製を行った。
さらに、得られたイミド基含有樹脂硬化剤を用いて、前記した方法により樹脂硬化物の作製を行った。
【0202】
実施例F-2(参考例)
アミン成分の組成を変更する以外は、実施例F-1と同様の操作を行って、イミド基含有樹脂硬化剤および硬化物を得た。イミド基含有樹脂硬化剤およびそれを用いて得られた硬化物の特性は、表7に示したとおりであった。
【0203】
[ジイミドモノヒドロキシジカルボン酸系化合物]
実施例G-1(参考例)
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸755質量部と3,4’-ジアミノフェノール245質量部を添加し、前記した方法によりイミド基含有樹脂硬化剤の作製を行った。
さらに、得られたイミド基含有樹脂硬化剤を用いて、前記した方法により樹脂硬化物の作製を行った。
【0204】
実施例G-2~G-3(参考例)
アミン成分の組成を変更する以外は、実施例G-1と同様の操作を行って、イミド基含有樹脂硬化剤および硬化物を得た。イミド基含有樹脂硬化剤およびそれを用いて得られた硬化物の特性は、表8に示したとおりであった。
【0205】
[ジイミドジヒドロキシジカルボン酸系化合物]
実施例H-1(参考例)
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸780質量部と4,6-ジアミノレゾルシン220質量部を添加し、前記した方法によりイミド基含有樹脂硬化剤の作製を行った。
さらに、得られたイミド基含有樹脂硬化剤を用いて、前記した方法により樹脂硬化物の作製を行った。
【0206】
実施例H-2~H-3(参考例)
アミン成分の組成を変更する以外は、実施例H-1と同様の操作を行って、イミド基含有樹脂硬化剤および硬化物を得た。イミド基含有樹脂硬化剤およびそれを用いて得られた硬化物の特性は、表9に示したとおりであった。
【0207】
[トリイミドモノヒドロキシトリカルボン酸系化合物]
実施例I-1(参考例)
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸806質量部と2,4,6-トリアミノフェノール194質量部を添加し、前記した方法によりイミド基含有樹脂硬化剤の作製を行った。
さらに、得られたイミド基含有樹脂硬化剤を用いて、前記した方法により樹脂硬化物の作製を行った。
【0208】
比較例1
PHENOLITE TD-2131とエポキシ樹脂(jER828)を1.0/1.1(当量比)の割合で混合した試料60質量部に対して、硬化促進剤(2-エチル-4メチルイミダゾール)0.2質量部と、DMF39.8質量部とを150℃で混合した。
得られたエポキシ樹脂溶液をアルミ基材に300μmの厚みで塗工し、作製した塗膜をイナートオーブンにて、窒素雰囲気下、180℃で2時間、続いて200℃で2時間乾燥して、脱溶媒および硬化反応を行った。得られたアルミ基材付き試料からアルミ基材を除去し、エポキシ樹脂硬化物を得た。
PHENOLITE TD-2131は、イミド基を含有しない硬化剤であるため、得られた樹脂硬化物はガラス転移温度が低く、耐熱性に劣っていた。当該樹脂硬化物は、誘電特性にも劣っていた。
【0209】
比較例2~4
硬化剤の種類を変更する以外は比較例1と同様の操作を行って樹脂硬化物を得た。
【0210】
実施例および比較例で得られたイミド基含有樹脂硬化剤の特性値を表に示す。
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
各実施例のイミド基含有樹脂硬化剤は、溶媒への溶解性および保存安定性に優れていたため、安定的に樹脂組成物をえることができた。しかも、各実施例のイミド基含有樹脂硬化剤を用いて得られた硬化物は、耐熱性および誘電特性に十分に優れていた。
【0223】
各比較例の硬化剤はイミド基を含有しない硬化剤であるため、得られた樹脂硬化物はガラス転移温度が低く耐熱性に劣っていた。しかも、各比較例の硬化剤を用いて得られた硬化物は、誘電特性にも劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0224】
本発明のイミド基含有樹脂硬化剤は、自動車部品、電気電子部品、摺動部品、チューブ関連部品、家庭用品、金属被覆剤、産業資材用品、コンピュータおよび関連機器の部品、光学機器部品、情報・通信機器部品、精密機器部品等の分野で有用である。