(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】把手着脱式カップ
(51)【国際特許分類】
A47G 19/14 20060101AFI20221117BHJP
A47G 19/22 20060101ALI20221117BHJP
B65D 25/28 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A47G19/14 E
A47G19/22 E
B65D25/28 106B
(21)【出願番号】P 2019026926
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】301028071
【氏名又は名称】阪和ホーロー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【氏名又は名称】福島 三雄
(72)【発明者】
【氏名】高野 幸雄
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-028477(JP,U)
【文献】国際公開第02/046051(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3112878(JP,U)
【文献】実開昭61-122718(JP,U)
【文献】実公昭30-006769(JP,Y1)
【文献】実開昭58-155876(JP,U)
【文献】実開昭53-124876(JP,U)
【文献】特開2001-190388(JP,A)
【文献】特開2012-091856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 19/14
A47G 19/22
B65D 25/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部とこの底部の周縁から上方に立ち上がる側壁とを具備する有底筒状の容器本体と、
前記容器本体の側方に設けられる把手とを備えるカップであって、
前記側壁の上部に、前記側壁の上端が径外方向に屈曲したフランジ部、および、前記フランジ部の径外方向の端部から下方に屈曲する形態の垂下壁を備え、
前記垂下壁と前記側壁との間に所定寸法の把手止着用間隙が形成され、
前記把手の上端に、前記把手止着用間隙に嵌入される嵌入体を備え、
前記嵌入体には、前記把手止着用間隙に沿って前記把手よりも左右方向に伸びる延長部が延設され、
前記把手が下方に移動することを牽制する把手降下規制部を備えることを特徴とする把手着脱式カップ。
【請求項2】
前記把手降下規制部が、前記容器本体の外面を下方から覆う弾性体からなるカバー体であることを特徴とする請求項1の把手着脱式カップ。
【請求項3】
前記フランジ部および前記垂下壁を、前記側壁の上部の全周にわたって備えることを特徴とする請求項1または請求項2の把手着脱式カップ。
【請求項4】
前記フランジ部に孔を備えることを特徴とする請求項3の把手着脱式カップ。
【請求項5】
前記フランジ部および前記垂下壁が、前記側壁の上部の周方向の一部に備え、
前記側壁の上部の周方向の前記一部を除く他部が、前記フランジ部、或いは、前記垂下壁を備えない欠損部となっていることを特徴とする請求項1または請求項2の把手着脱式カップ。
【請求項6】
前記カバー体が、前記把手が前記容器本体の外面の周方向に移動することを牽制する、把手周方向移動規制部を備えることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1つに記載された把手着脱式カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底部とこの底部の周縁から上方に立ち上がる側壁とを具備する有底筒状の容器本体と、前記容器本体の側方に設けられる把手とを備える把手着脱式カップに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような把手着脱式カップとして、把手に取付けられた把手構成部材により容器を上下から挟持するものが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された把手着脱式カップにおいては、樹脂製の把手の上部に形成された係合形状をガラス容器の上端にひっかけ、ガラス容器胴部を絞止する帯状体であるバンドを、ビス及びナット部品により締め上げ、ガラス容器に固定されていると共に、バンドと同一のビスにより把手に取付けられた金具によりガラス容器を下から支持するように構成されている。
【0005】
つまり、特許文献1に記載された把手着脱式カップにおいては、樹脂製の把手の上部に形成された係合形状をガラス容器の上端に、ガラス容器上方からひっかける形態のものであるから、樹脂製の把手の上部に形成された係合形状によりガラス容器を下から支持するような力が作用しないため、ガラス容器を下から支持する金具が必要であり、また、金具を取り付けるビスが必要であるため部品点数が多く、構造も複雑になりがちであり、構造の簡素化など、その改善が望まれていた。
【0006】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、部品点数が削減され構造が簡素化された把手着脱式カップを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明による把手着脱式カップは、底部とこの底部の周縁から上方に立ち上がる側壁とを具備する有底筒状の容器本体と、前記容器本体の側方に設けられる把手とを備えるカップであって、前記側壁の上部に、前記側壁の上端が径外方向に屈曲したフランジ部、および、前記フランジ部の径外方向の端部から下方に屈曲する形態の垂下壁を備え、前記垂下壁と前記側壁との間に所定寸法の把手止着用間隙が形成され、前記把手の上端に、前記把手止着用間隙に嵌入される嵌入体を備え、前記把手が下方に移動することを牽制する把手降下規制部を備える点を特徴とする。
【0008】
このように構成され、側壁の上部に、側壁の上端が径外方向に屈曲したフランジ部、および、フランジ部の径外方向の端部から下方に屈曲する形態の垂下壁を備え、垂下壁と側壁との間に所定寸法の把手止着用間隙が形成され、把手の上端に、把手止着用間隙に嵌入される嵌入体を備えるものであるので、把手の上端に備える嵌入体が、垂下壁と側壁との間に形成された把手止着用間隙に嵌入された状態で、嵌入体がフランジ部を下方から支持することが可能になり、特許文献1に記載された把手着脱式カップのように、金具などの別部材によりガラス容器を下から支持することが不要になり、構造が簡素化できるに至った。
【0009】
さらに、請求項1による把手着脱式カップは、把手が下方に移動することを牽制する把手降下規制部を備えるものであるから、把手が下方に移動してしまうことに起因して、把手の上端に備える嵌入体が把手止着用間隙から外れてしまい嵌入体がフランジ部を下方から支持できなくなることが抑制される。
【0010】
要するに、請求項1に記載の発明によって、金具などの別部材によりガラス容器を下から支持することが不要になり、構造が簡素化できると共に、把手によって容器本体を安定して支持することが可能な把手着脱式カップとすることができるに至った。
【0011】
請求項2に記載の把手着脱式カップは、請求項1に記載の特徴に加え、前記把手降下規制部が、前記容器本体の外面を下方から覆う弾性体からなるカバー体である点を特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の特徴によって、請求項1による効果に加え、外観が美麗な把手着脱式カップとすることができる。
【0013】
つまり、カバー体で容器本体が覆われ外観が美麗とすることができ、また、容器本体を、弾性体からなるカバー体で覆うだけで把手降下規制部が構成でき、把手降下規制部の簡素化が可能となる。
【0014】
要するに、請求項2に記載の特徴によって、請求項1による効果に加え、外観が美麗な把手着脱式カップとすることができ、また、構造の簡素化が可能となる。
【0015】
請求項3に記載の把手着脱式カップは、請求項1または請求項2に記載の特徴に加え、前記フランジ部および前記垂下壁を、前記側壁の上部の全周にわたって備える点を特徴とする。
【0016】
このように構成することによって、請求項1または請求項2による効果に加え、容器本体の上面視における360度何れの位置の側壁にも把手を取り付けることができ、使い勝手のよい把手着脱式カップとすることができる。
【0017】
請求項4に記載の把手着脱式カップは、請求項3に記載の特徴に加え、前記フランジ部に孔を備える点を特徴とする。
【0018】
このように構成することによって、請求項3による効果に加え、容器本体を洗浄した後、容器本体のフランジ部が下方になるように伏せた状態で食器かごなどに置いた場合に、フランジ部に流下する水が、フランジ部に備える孔から排水でき、洗浄後の乾燥時間が短縮される。
【0019】
つまり、フランジ部に孔を備えない場合は、容器本体を洗浄した後、容器本体のフランジ部が下方になるように伏せた状態で食器かごなどに置いたときに、フランジ部に流下する水が、フランジ部に留まってしまうことになり、洗浄後の乾燥時間の長期化を招くことになるが、フランジ部に孔を備えることで、フランジ部に流下する水が、フランジ部に備える孔から排水でき、洗浄後の乾燥時間が短縮されるのである。
【0020】
要するに、請求項4に記載の特徴によって、請求項3による効果に加え、洗浄後の乾燥時間が短縮される。
【0021】
請求項5に記載の把手着脱式カップは、請求項1または請求項2に記載の特徴に加え、前記フランジ部および前記垂下壁が、前記側壁の上部の周方向の一部に備え、前記側壁の上部の周方向の前記一部を除く他部が、前記フランジ部、或いは、前記垂下壁を備えない欠損部となっている点を特徴とする。
【0022】
このように構成することによって、請求項1または請求項2による効果に加え、容器本体を洗浄した後、容器本体のフランジ部が下方になるように伏せた状態で食器かごなどに置いた場合に、フランジ部に流下する水が、欠損部から排水でき、洗浄後の乾燥時間が短縮される。
【0023】
つまり、フランジ部に欠損部を備えない場合は、容器本体を洗浄した後、容器本体のフランジ部が下方になるように伏せた状態で食器かごなどに置いたときに、フランジ部に流下する水が、フランジ部に留まってしまうことになり、洗浄後の乾燥時間の長期化を招くことになるが、欠損部を備えることで、フランジ部に流下する水が、欠損部から排水でき、洗浄後の乾燥時間が短縮されるのである。
【0024】
要するに、請求項5に記載の特徴によって、請求項1または請求項2による効果に加え、洗浄後の乾燥時間が短縮される。
【0025】
請求項6に記載の把手着脱式カップは、請求項1から請求項5に記載の特徴に加え、前記嵌入体には、前記把手止着用間隙に沿って伸びる延長部が延設されている点を特徴とする。
【0026】
このように構成することによって、請求項1から請求項5による効果に加え、容器本体に取付けられた把手が左右方向にぐらつくことが抑制される。
【0027】
つまり、把手止着用間隙には嵌入体から延設された延長部が嵌入されるものであるから、容器本体に取付けられた把手が左右方向にぐらつくことが抑制されるのである。
【0028】
請求項7に記載の把手着脱式カップは、請求項1から請求項6に記載の特徴に加え、前記カバー体が、前記把手が前記容器本体の外面の周方向に移動することを牽制する、把手周方向移動規制部を備える点を特徴とする。
このように構成することによって、請求項1から請求項6による効果に加え、容器本体に取付けられた把手が容器本体の外面の周方向に移動することが抑制され、把手が容器本体の周方向に移動してしまい、把手による容器本体の支持が不安定になることが抑制される。
【発明の効果】
【0029】
請求項1によれば、金具などの別部材により容器本体を下から支持することが不要になり、構造が簡素化できる。また、把手によって容器本体を安定して支持することが可能となる。
また、請求項2によれば、外観が美麗な把手着脱式カップとすることができ。また、構造の簡素化が可能となる。
【0030】
請求項3によれば、使い勝手のよい把手着脱式カップとすることができる。
また、請求項4によれば、洗浄後の乾燥時間が短縮される。
また、請求項5によれば、洗浄後の乾燥時間が短縮される。
また、請求項6によれば、把手が左右方向にぐらつくことが抑制される。
また、請求項7によれば、把手による容器本体の支持が不安定になることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】 本発明の第1実施形態の把手着脱式カップを示す要部切り欠き正面図。
【
図2】 本発明の別実施形態の把手着脱式カップを示す要部切り欠き正面図。
【
図3】 本発明の第1実施形態の把手着脱式カップを示す要部側断面図。(
図1のA-A)
【
図4】 本発明の別実施形態の把手着脱式カップを示す要部側断面図。(
図2のA-A)
【
図5】 本発明の第1実施形態の把手着脱式に備える把手を示す(a)側面図、(b)正面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明による把手着脱式カップについて、図面を参照しながら説明する。
第1実施形態の把手着脱式カップAは、
図1、
図3に示すように、底部10とこの底部10の周縁から上方に立ち上がる側壁11とを具備する有底筒状の容器本体01と、容器本体01の側方に設けられる把手02とを備えるカップAである。
【0033】
そして、側壁11の上部に、側壁11の上端が径外方向に屈曲したフランジ部12、および、フランジ部12の径外方向の端部から下方に屈曲する形態の垂下壁13を備える。(
図3参照。)
【0034】
そして、垂下壁13と側壁11との間に所定寸法(本実施形態では、所定寸法を5mmとしてある。)の把手止着用間隙14が形成されている。(
図4参照。)
【0035】
また、把手02の上端に、把手止着用間隙14に嵌入される嵌入体21を備えると共に、把手02が下方に移動することを牽制する把手降下規制部41kを備える。(
図1、
図3参照。)
なお、把手02の下端と当接する当接部41tがカバー体41に設けられており、この当接部41tが把手02の下端と当接して把手02が下方に移動することが牽制される。(
図1、
図3参照。)
【0036】
なお、本実施形態においては、容器本体01が、ホーロー用鋼板にガラス被膜が形成されたホーロー製容器である。
【0037】
嵌入体21が、把手止着用間隙14に嵌入された状態で、弾性体(本実施形態ではシリコンゴム)からなるカバー体41が容器本体01の下から被嵌され、当接部41tが把手02の下端と当接することで把手02が下方に移動することが牽制され、つまり、把手降下規制部41kによって把手02が下方に移動することが牽制されて、嵌入体21が容器本体01を下方から支持した状態が維持され、把手02によって、容器本体01が安定して支持されるのである。
【0038】
なお、当接部41tをカバー体41に設けるのではなく、把手降下規制部41kをカバー体41とは別に設けるように構成してもよい。
【0039】
なお、本実施形態の把手着脱式カップAにおいては、フランジ部12および垂下壁13を、側壁11の上部の全周にわたって備えている。
【0040】
そのため、容器本体01の上面視における360度何れの位置の側壁11にも把手02を取り付けることができ、使い勝手のよい把手着脱式カップAとすることができている。
【0041】
また、本実施形態の把手着脱式カップAにおいては、フランジ部12に孔33を備えている。(
図3参照。)
なお、
図1においては、フランジ部12に備える孔33の記載を省略している。
【0042】
フランジ部12に孔33を備えることで、容器本体01を洗浄した後、容器本体01のフランジ部12が下方になるように伏せた状態で食器かごなどに置いたときに、フランジ部12に流下する水が、フランジ部12に備える孔33から排水でき、洗浄後の乾燥時間が短縮される。
【0043】
なお、本実施形態の把手着脱式カップAのように、フランジ部12および垂下壁13を、側壁11の上部の全周にわたって備えると共に、そのうえで、フランジ部12に孔33を備えるように構成するのではなく、フランジ部12および垂下壁13が、側壁11の上部の周方向の一部のみに備え、側壁11の上部の周方向の上記一部を除く他部が、フランジ部12、或いは、垂下壁13を備えない欠損部34となるように構成してもよい。(図示は、省略する。)
【0044】
このように構成することによっても、容器本体01を洗浄した後、容器本体01のフランジ部12が下方になるように伏せた状態で食器かごなどに置いた場合に、フランジ部12に流下する水が、欠損部34から排水でき、洗浄後の乾燥時間が短縮される。
【0045】
本実施形態の把手着脱式カップAでは、カバー体41の上端が把手止着用間隙14に挿入されるように構成されており、カバー体41と容器本体01との間に異物が侵入することが抑制される。(
図3参照。)
これとは異なり、カバー体41の上端が把手止着用間隙14に挿入されないように構成してもよい。(
図4参照。)
【0046】
また、本実施形態の把手着脱式カップAでは、嵌入体21には、把手止着用間隙14に沿って伸びる延長部21aが延設されており、把手止着用間隙14に延長部21aが嵌入するように構成されている。(
図5参照。)
【0047】
把手止着用間隙14には嵌入体21から延設された延長部21aが嵌入されるものであるから、容器本体01に取付けられた把手02が左右方向にぐらつくことが抑制されて、使い勝手の良い把手着脱式カップAとすることができている。
【0048】
なお、嵌入体21から延設された延長部21aの延長寸法は、長すぎると把手止着用間隙14に嵌入する際邪魔になるので、把手02の幅の1.5から3.5倍程度が良い。
また、本実施形態では、カバー体41が把手02の周方向の側面と当接するように、つまり、容器本体01の表面のうち、把手02が存在しない箇所がカバー体41によって覆われるようにカバー体41が構成されている。
【0049】
換言すると、把手02が容器本体01の外面の周方向に移動することを牽制する把手周方向移動規制部41s(図示せず。)を備える。
把手周方向移動規制部41s(図示せず。)を備えることで、把手02による容器本体01の支持が不安定になることが抑制される。
【0050】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
01 容器本体
10 底部
11 側壁
12 フランジ部
13 垂下壁
14 把手止着用間隙
15 垂下壁の下端
02 把手
21 嵌入体
21a 延長部
33 孔
34 欠損部
41 カバー体
41t 当接部
41k 把手降下規制部
41s 把手周方向移動規制部
A カップ