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特許7178101腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品及びその腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品が備えられた腕時計
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  • 特許-腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品及びその腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品が備えられた腕時計 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品及びその腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品が備えられた腕時計
(51)【国際特許分類】
   A44C 17/00 20060101AFI20221117BHJP
   A45C 3/06 20060101ALI20221117BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20221117BHJP
   G04B 39/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A44C17/00
A45C3/06 Z
A44C5/00 Z
G04B39/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019501311
(86)(22)【出願日】2018-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2018005753
(87)【国際公開番号】W WO2018155381
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2017031641
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】アダマンド並木精密宝石株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内海 秀太
(72)【発明者】
【氏名】柴田 進
(72)【発明者】
【氏名】竹内 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】濱倉 信行
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/021444(WO,A1)
【文献】実開平02-039040(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 39/00
A44C 17/00
A45C 3/06
A44C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第一の部材で構成され、
第一の部材が、サファイア単結晶、ルビー単結晶、ガラス、ダイヤモンド単結晶の何れかから形成されており、
第一の部材が板状部材で、平面形状が円形又は異形であり、
側面の少なくとも一部又は全周に亘って発光材が配置されており、
特殊光源ライト照射時又は暗闇で発光材が発光する腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品。
【請求項6】
請求項1~5の何れかの腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品が備えられた、腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品及びその腕時計の窓材又は腕時計のカ バー部品が備えられた腕時計関する。
【背景技術】
【0002】
有名ブランドの腕時計、宝飾品、バッグ、装身具と云った様々な高級商品やその関連製品に関して、模倣品による被害が年々広がっている。模倣品が企業に与える被害は大きく、例えば低価格の模倣品が出回ると真正品の販売機会の損失だけでなく、ビジネスモデルの破綻にもなりかねない。また粗悪な模倣品により悪い風評が広がると、長年に亘って育んできたブランドイメージの信用を失うことにもなりかねない。
【0003】
そこで、模倣品による被害を防ぐために、真正品と模倣品を識別する偽造防止技術が開発されており、例えば特許文献1が開示されている。
【0004】
特許文献1には、腕時計のケース部品に固着された透明プレートを有し、このプレートを通して記号情報を読み込む事が出来ると云う、記号情報の保護装置が開示されている。記号情報としては、腕時計の出所を示す製造マークや商標が挙げられており、これら記号情報を透明プレートと腕時計のケース部品との間にサンドイッチすることで、剥離不能に接着している。従って腕時計の購入者が、記号情報が真性かどうか目視で確認する事が出来るとしている。
【0005】
特許文献1記載の保護装置は偽造防止効果を有するものの、腕時計に必要な装飾性を付加する事は、何ら考慮されていなかった。
【0006】
そこで腕時計に別途、装飾性を付加する先行技術として、例えば特許文献2が挙げられる。特許文献2には、自由に発光部を発光させて、色彩性及び装飾性に優れた時計ガラスとして、2枚の透明なガラス板を上下に積層した2層構造の時計ガラスが開示されている。2枚のガラス板は透明な接着剤により貼り合わされており、これらガラス板の間には更に発光部が設けられている。この発光部は、波長350~420nm又は254~365nmの紫外線に反応して発光するため、色彩性および装飾性に優れた時計ガラスを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭58-044381号公報
【文献】特開2003-186429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし特許文献2では、発光層を時計ガラスの全面に設ける構造であった。従って、発光部を時計ガラスとは別に設ける必要性があり、製造コストの高騰を招くと共に、他製品への展開の阻害要因となっていた。よって最小限の発光部の構成で、偽造防止効果を確保しながら、更に装飾性を向上させることが出来なかった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製造コストを抑制しつつ装飾性を向上させることが出来ると共に偽造防止効果も有する腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品と、その腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品が備えられた腕時計提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明の腕時計の窓材又は腕時計 のカバー部品は、少なくとも第一の部材で構成され、第一の部材が、サファイア単結晶、ルビー単結晶、ガラス、ダイヤモンド単結晶の何れかから形成されており、第一の部材が 板状部材で、平面形状が円形又は異形であり、側面の少なくとも一部又は全周に亘って発光材が配置されており、特殊光源ライトによる照射時又は暗闇で発光材が発光することを特徴とする。また、本発明の腕時計、前記各色発光の腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品が備えられたことを特徴とする。
【0011】
特殊光源ライトにより発光する発光材は、RGB(Red Green Blue)三原色又はその組み合わせの発光色が選択できる。また第一の部材が無色透明なサファイア単結晶、ガラス、又はダイヤモンド単結晶の場合は、特殊光源ライト照射時に、部品は発光材の発光色の色調を呈する。
【0012】
なおルビー単結晶は、そもそも結晶素材が淡いピンク色を呈している。ピンクサファイアとも称されるこのルビー単結晶を用いる場合、特殊光源ライト照射時に、ルビー単結晶自体がピンク色を増して発光すると共に、発光材からも同時に発光する。従って、これらの発光色同士が混ざり合い、部品からの発光の一部が光学的に合成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品に依れば、側面の少なくとも一部又は全周に亘って発光材が配置される事で、発光材の配置部分を最低限側面のみに抑えながら、特殊光源ライトの照射時に側面からの出射による発光を実現する事が可能となる。よって特殊光源ライトを照射しない時は無色透明な特徴の無い一部品でありながら、特殊光源ライトの照射時には、側面が発光したように観察可能となる。従って、最小限の発光材の配置又は構成でありながら、腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品の装飾性を大きく向上させることができ、腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品の製造コストを抑制しつつ特徴のある腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品として、識別認知性と装飾性を共に向上させることが可能となる。
【0014】
また発光箇所を腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品の側面のみとする事で、目視により腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品を平面から一見しただけでの偽造防止対策の発光材の有無発見を、困難なものとすることが出来る。更に、発光材の発光を腕時計の窓材又 は腕時計のカバー部品の真贋判定にも使用することにより、腕時計の窓材又は腕時計のカ バー部品の偽造防止効果を高めることが可能となる。また発光材の種類別により、特有の各色に発光し、腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品全体がその色に特徴的に輝く。
【0015】
更にこのような腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品を、腕時計に備える事により、本発明に係る腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品を他製品へ展開する事が出来る。従って発光材の発光色により、腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品を備えた製品のブランドイメージの装飾性を向上させることが可能になると共に、発光の有無を真贋判定にも使用することが可能なので、これら正規品製品の偽造防止効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1に係る部品を示す平面図である。
図2図1の部品の側面図である。
図3図2に於いて、発光材が配置されていない部品の側面図である。
図4】本発明の実施例2に係る部品を示す平面図である。
図5図4の部品の側面図である。
図6図4の部品において、傾斜面から文字が観察される状態を示す部分説明図である。
図7】本発明の実施例3に係る部品を示す平面図である。
図8図7の部品の側面図である。
図9】本発明の実施例4に係る部品を示す平面図である。
図10図9の部品の側面図である。
図11図9の部品において、傾斜面から文字が観察される状態を示す部分説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施の形態の第一の特徴は、少なくとも第一の部材で構成され、第一の部材が、サファイア単結晶、ルビー単結晶、ガラス、ダイヤモンド単結晶の何れかから形成されており、第一の部材が板状部材で、平面形状が円形又は異形であり、側面の少なくとも一部又は全周に亘って発光材が配置されており、特殊光源ライト照射時又は暗闇で発光材が発光する腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品とした事である。
【0018】
第二の特徴は、側面の全周に亘って溝が形成されており、その溝内部に前記発光材が配置されている腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品とした事である。
【0019】
これらの構成に依れば、側面の少なくとも一部又は全周に亘って発光材が配置される事で、発光材の配置部分を最低限側面のみに抑えながら、特殊光源ライトの照射時に側面からの出射による発光を実現する事が可能となる。よって特殊光源ライトを照射しない時は無色透明な特徴の無い一部品でありながら、特殊光源ライトの照射時には側面が発光したように観察可能となる。従って、最小限の発光材の配置又は構成でありながら腕時計の窓 材又は腕時計のカバー部品の装飾性を向上させることができ、腕時計の窓材又は腕時計の カバー部品の製造コストを抑制しつつ識別認知性と装飾性を共に向上させることが可能となる。
【0020】
また発光箇所を腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品の側面とする事で、目視により 時計の窓材又は腕時計のカバー部品を平面から一見しただけでの偽造防止対策の発光材の有無発見を、困難なものとすることが出来る。更に、発光材の発光を腕時計の窓材又は腕 時計のカバー部品の真贋判定にも使用することにより、腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品の偽造防止効果を高めることが可能となる。
【0021】
なお本発明に於いて特殊光源ライトとは、紫外線領域(250nm以上~365nm以下)の光を発光するか、赤外線領域(780nm以上)の光を発光するものとする。
【0022】
また本発明に於いて部材の平面形状が異形とは、腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品の平面形状が、正方形、長方形、楕円形、頂点3つ以上の多角形、星形の何れかの形状を指すものとする。更に頂点3つ以上の多角形には、各頂点を丸めて角丸とした平面形状も含むものとする。
【0023】
第三の特徴は、側面の全周に亘って30°毎で少なくとも計12箇所に凹部が形成されており、その凹部内部に発光材が配置されている腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品とした事である。
【0024】
この構成に依れば、前記各効果に加えて、部品を腕時計の窓材として使用する事により、発光材の発光により文字盤の時字(または、アワーマーク、アワーマーカー、インデックス)の位置を使用者に容易に識別させる事が可能となる。従って、特に腕時計の装飾性と視認性の両立を図る事が出来る。
【0025】
第四の特徴は、第二の部材が更に備えられ、第二の部材が、サファイア単結晶、ルビー単結晶、ガラス、ダイヤモンド単結晶の何れかから形成されており、第二の部材が板状部材で、平面形状が円形又は異形であり、第二の部材の周縁部の全周に傾斜面が形成されており、傾斜面を非貼り合わせ面として、第一の部材と第二の部材が厚さ方向に重ねて貼り合わされており、第一の部材と第二の部材の互いの貼り合わせ面の平面形状が同一であり、文字、図形、記号の何れかが、第一の部材又は第二の部材の互いの貼り合わせ面の少なくともどちらに凹状に形成されており、凹状の箇所に発光材が配置されており、傾斜面の幅が、文字や図形又は記号の何れかの高さ寸法以上である腕時計の窓材又は腕時計のカバ 部品とした事である。
【0026】
この構成に依れば、前記各効果に加えて、あらゆる角度から腕時計の窓材又は腕時計の カバー部品を見ても、文字や図形又は記号を目視により傾斜面から観察する事が可能となる。従って、腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品の装飾性を更に向上させることが出来る。
【0027】
なお本発明に於いて、文字又は図形又は記号としては、アルファベット、ひらがな、カタカナ、漢字、数字、漢数字、符号等のあらゆる文字や、ブランドロゴを含むものとする。また図形としては、円や三角形又は四角形といった基本的な図形や、より複雑な幾何学模様、又はブランドや製造者を示すトレードマークも含むものとする。
【0028】
また本発明に於いて、文字や図形又は記号の何れかの高さ寸法とは、複数の文字や図形又は記号が形成されている場合、全ての文字や図形又は記号が収まる高さ寸法を指すものとする。
【0029】
第五の特徴は、第二の部材が更に備えられ、第二の部材が、サファイア単結晶、ルビー単結晶、ガラス、ダイヤモンド単結晶の何れかから形成されており、第二の部材が板状部材で平面形状が円形又は異形であり、第二の部材の周縁部の全周に傾斜面が形成されており、傾斜面を非貼り合わせ面として、第一の部材と第二の部材が厚さ方向に重ねて貼り合わされており、第一の部材と第二の部材の互いの貼り合わせ面の平面形状が同一であり、文字、図形、記号の何れかが、第一の部材又は第二の部材の互いの貼り合わせ面の少なくともどちらに凹状に形成されており、凹状の箇所に発光材が配置されており、傾斜面の幅が、文字や図形又は記号の何れかの高さ寸法以上であり、傾斜面が全周に亘って30°毎に形成されたカット面から成り、カット面同士が出会う稜線が、厚さ方向で凹部と合わせられている腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品とした事である。
【0030】
この構成に依れば、前記各効果に加えて、部品を腕時計の窓材として使用する事により、部品を平面方向から見た時に、発光材の発光により稜線を発光したように観察可能となり、文字盤の時字の位置を使用者に更に容易に識別させる事が可能となる。従って、特に腕時計の装飾性と視認性の両立を、更に図る事が出来る。
【0031】
第六の特徴は、前記何れかの腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品が備えられた、腕時計した事である。
【0032】
この構成に依れば、前記各効果に加えて、発光材の発光により、腕時計の窓材又は腕時 計のカバー部品を備えた製品の装飾性を向上させることが可能になると共に、発光を真贋判定にも使用することが可能なので、これら製品の偽造防止効果も得られる。
【0033】
特殊光源ライトにより発光する発光材は、RGB三原色又はその組み合わせの発光色が選択できる。また第一又は第2の部材が無色透明なサファイア単結晶、ガラス、又はダイヤモンド単結晶の場合は、特殊光源ライト照射時に、腕時計の窓材又は腕時計のカバー部品は発光材の発光色の色調を呈する。
【0034】
なお第一の部材又は第二の部材に用いるルビー単結晶は、そもそも結晶素材が淡いピンク色を呈している。ピンクサファイアとも称されるこのルビー単結晶を用いる場合、特殊光源ライト照射時に、ルビー単結晶自体がピンク色を増して発光すると共に、発光材からも同時に発光する。従って、これらの発光色同士が混ざり合い、腕時計の窓材又は腕時計 のカバー部品からの発光の一部が光学的に合成される。
【0035】
以下に本発明に係る各実施例を説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例
【0036】
(実施例1)
以下、図1図3を参照して、本発明の実施例1に係る部品を説明する。本実施例に係る部品1は、図1図3に示すように少なくとも第一の部材2のみで構成されている。図1は平面図、図2及び図3は共に側面図であり、更に部品1の第一の部材2に於ける側面2sでの発光材5の配置の構成形態が、一例として図示されている(以下、必要に応じて単に、「部材2」と記載する。)。
【0037】
図1より、部材2の外形形状は円形の板状に成形されている。部材2は、サファイア単結晶、ルビー単結晶、ダイヤモンド単結晶又はガラスの何れかで形成される。この材料を研削、研磨により円形の板状に成形する。部材2を形成する材料の透過率は、分光光度計で透過率を測定した際に、例えば400nm~800nmの波長範囲での透過率が所定値(例えば80%以上)を満足すれば良い。
【0038】
部材2を形成する各材料は、公知の方法を用いて作製すれば良い。サファイア単結晶やルビー単結晶の場合、EFG(Edge-defined Film-fed. Growth)法、キロプロス法、チョクラスルキー法、ベルヌーイ法、垂直ブリッジマン法などによって育成成長されたものを用いる。ダイヤモンド単結晶は、エピタキシャル法により形成すれば良い。
【0039】
例えばここではサファイア単結晶で部材2を形成する場合、結晶面方位として例えば表面2a-2aをc面とするものを用いれば良いが、c面に限定されず、r面、a面、m面等、所望の結晶面を表面として良い。
【0040】
部材2の平面形状は、図1に示すような円形の丸型か、又は図示しない異形とすることも出来る。部材2の平面形状が異形とは、例えば平面形状が、正方形、長方形、楕円形、頂点3つ以上の多角形、星形の何れかの形状を指す。更に頂点3つ以上の多角形に成形する場合、各頂点を丸めて角丸が複合した平面形状に変更しても良い。
【0041】
更に図2及び図3より、部材2に於ける上面側の表面2aの外周周縁部全周に亘って、幅広の傾斜面2dが形成される。その傾斜面2dは、表面2aに対して一定の傾斜角度θで以て外周周縁部全周に幅W2dで形成される。傾斜角度θは、表面2aを基準として約20度前後に設定される。
【0042】
また、図2に示すように部材2の側面2sの少なくとも一部又は全周に亘って、発光材5が配置される。発光材5の配置箇所の一形態として、図3に示すように、側面2sの全周に亘って溝2bが形成されており、その溝2bの内部に発光材5が配置されて図2の形態となる。溝2bの形状は、矩形状、V溝状、円弧状など、所望の形状に設定可能であり、図3の溝2bの形状は、V溝が60°の開口角度で形成されていると共に、そのV溝の底部がR0.2mmの円弧状に成形された形状である。
【0043】
側面2sに形成された溝2bには、発光材5が配置される。発光材5としては、紫外線領域(250nm以上~365nm以下)、可視光領域(365nm超~780nm未満)、または赤外線領域(780nm以上)の光を発光する蓄光体(燐光体)、蛍光体、又は発光ガラスが用いられる。蓄光体(燐光体)としては、アルミナ系酸化物の無機顔料、硫化物系顔料が挙げられ、蛍光体としては蛍光インクが挙げられる。
【0044】
このようにして形成された部品1に外部から特殊光源ライトを照射することで、発光体5を発光させる。好ましくは部品1を暗闇に置くとより発光が効果的に現れる。特殊光源ライトとしては、いわゆるブラックライトと呼ばれる波長が365nm付近または250nm~365nmの紫外線領域の光を発光する紫外線灯、または紫外線発光ダイオード(LED)や、780nm以上の赤外線領域の光を発光する赤外線発光素子で構成すれば良い。このような特殊光源ライトから出射される特定波長の光に反応して、発光材5により溝2b部分が有色発光する。或いは発光体5が蓄光体(燐光体)の場合には、暗闇に置かれると励起光の消失により、蛍光色が発光し続ける。
【0045】
溝2bは発光材5を構成する材料により、254nm~365nmの紫外線領域、365nm超~780nm未満の可視光領域、又は780nm以上の赤外線領域と云った特定波長を有する光を発光する。
【0046】
側面2sの全周に亘って発光材5が配置される事で、部品1を図1に示すような平面方向から目視した時に、外周周縁部の外形線に沿って発光が確認可能となる。更に、発光材5の配置部分を最低限側面2sのみに抑えながら特殊光源ライトの照射時に側面2sからの出射による発光を実現する事が可能となる。よって特殊光源ライトを照射しない時は無色透明な特徴の無い一つの部品1でありながら、特殊光源ライトの照射時には側面2sが発光し、外形線に沿ってリング状の発光が、図1の平面方向から観察可能となる。従って、最小限の発光材5の配置又は構成でありながら部品1の装飾性を向上させることができ、部品1の製造コストを抑制しつつ識別認知性と装飾性を共に向上させることが可能となる。
【0047】
また発光箇所を部品1の側面2sとする事で、目視により部品1を平面から一見(図1方向からの目視)しただけでの偽造防止対策の発光材5の有無発見を、困難なものとすることが出来る。発光材5の発光を部品1の真贋判定に使用することにより、部品1の偽造防止効果を高めることが可能となる。
【0048】
特殊光源ライトにより発光する発光材5は、RGB三原色又はその組み合わせの発光色が選択できる。また部材2が無色透明なサファイア単結晶、ガラス、又はダイヤモンド単結晶の場合は、特殊光源ライト照射時に、部品1は発光材5の発光色の色調を呈する。
【0049】
なお第一の部材2にルビー単結晶を用いる場合は、そもそも結晶素材が淡いピンク色を呈している。ピンクサファイアとも称されるこのルビー単結晶を用いる場合、特殊光源ライト照射時に、ルビー単結晶自体がピンク色を増して発光すると共に、発光材5からも同時に発光する。従って、これらの発光色同士が混ざり合い、部品1からの発光の一部が光学的に合成される。
【0050】
また部材2の平面形状を異形とした場合も、同様に傾斜面2dを外周の周縁部に沿って設ければ良い。
【0051】
(実施例2)
次に、図4図6を参照して、本発明の実施例2に係る部品を説明する。なお、前記実施例1の部品1と同一箇所には同一番号を付し、重複する説明は省略又は簡略化して記載する。
【0052】
実施例2の部品6は図4及び図5に示すように、第一の部材2と第二の部材3で構成されており、第一の部材2と第二の部材3は、互いに貼り合わされている。図4は平面図、図5は側面図である(以下、必要に応じて単に、「部材2」、「部材3」と記載する。)。
【0053】
2つの部材2、3の平面形状は、図4に示すような円形、又は図示しない異形とする。また部材2、3の平面形状は、互いに同一形状に形成される。従って、部材2、3の互いの貼り合わせ面の平面形状は、同一に形成される。
【0054】
2つの部材2、3の内、部材3の外周周縁部の全周に亘って、傾斜面3bが形成されている。その傾斜面3bが形成されている側の面を非貼り合わせ面として、2つの部材2、3が厚さ方向に重ねて貼り合わされて、部品6が形成される。
【0055】
部材3も、サファイア単結晶、ルビー単結晶、ダイヤモンド単結晶又はガラスの何れかで形成されており、このような材料を研削、研磨する事により成形されている。部材3を形成する材料の透過率も、分光光度計で透過率を測定した際に、例えば400nm~800nmの波長範囲での透過率が所定値(例えば80%以上)を満足すれば良い。
【0056】
例えばサファイア単結晶で各部材2、3を形成する場合、結晶面方位として例えば表面2a、3aや各貼り合わせ面をc面とするものを用いれば良いが、c面に限定されず、r面、a面、m面等、所望の結晶面を表面として良い。
【0057】
更に、部材2の側面2sの全周に亘って30°毎で少なくとも計12箇所に凹部2cが形成されており、その凹部2c内部に図示しない前記発光材5が配置されている。なお、図4図5では図の見易さを優先して、発光材5の図示を省略している。凹部2cは、直径0.5mm前後、部材2の径方向に於ける奥行0.15mm前後に設定可能である。
【0058】
このような部品6の構成に依れば、前記部品1が有する各効果に加えて、側面2sの少なくとも一部に発光材5が配置される事で、発光材5の配置部分を最低限側面2sのみに抑えながら、特殊光源ライトの照射時に側面2sからの出射による発光を実現する事が可能となる。よって特殊光源ライトを照射しない時は無色透明な特徴の無い一つの部品6でありながら、特殊光源ライトの照射時には側面2sが発光したように、かつ凹部2cでピンポイントの発光が観察可能となる。従って、最小限の発光材5の配置又は構成でありながら部品6の装飾性を向上させることができ、部品6の製造コストを抑制しつつ識別認知性と装飾性を共に向上させることが可能となる。
【0059】
更に部品6を腕時計の窓材として使用する事により、発光材5の発光により文字盤の時字(または、アワーマーク、アワーマーカー、インデックス)の位置を使用者に容易に識別させる事が可能となる。従って特に腕時計の装飾性と視認性の両立を図る事が出来る。
【0060】
更に、2つの部材2、3の互いの貼り合わせ面の少なくともどちらかに、文字、図形、記号の何れかが凹状に形成される。本実施例では、部材3の貼り合わせ面の面上に、アルファベットA~Eから成る文字4が凹状に形成されている。文字又は図形又は記号としては、アルファベット、ひらがな、カタカナ、漢字、数字、漢数字、符号等のあらゆる文字や、ブランドロゴを含む。また図形としては、円や三角形又は四角形といった基本的な図形や、より複雑な幾何学模様、又はブランドや製造者を示すトレードマークも含む。
【0061】
文字4、図形、記号の凹状形成は、レーザ走査により行えば良い。なおレーザ走査に対する耐性の点から、部材2、3の材料はサファイア単結晶、ルビー単結晶、ダイヤモンド単結晶がより好ましい。また部材2、3の組み合わせとしては、無色のサファイア単結晶同士の組み合わせや、片方をピンク色を有するルビー単結晶に変える組み合わせなど、どちらでも良い。材料コストの面からサファイア単結晶同士の組み合わせの方がより安価である。なおルビー単結晶を一方の部材に用いる場合は、レーザ走査に適した材料であるルビー単結晶を上面側の部材3に用いることが好ましい。
【0062】
更に文字4等の凹状の箇所にも、前記発光材5が配置される。よって、文字4、図形、記号の何れかが発光して出射された特定波長を有する光が、部材2の表面2a及び部材3の表面3aでの反射、又は光の一部が接着剤と部材2又は3の境界面で反射を繰り返しながら、傾斜面3bから出射される。なお表面2a、傾斜面3b、及び表面3aには、表面粗さRaが0.1μm以下となるように鏡面研磨を施す。Raの測定は表面粗さ測定機により行えば良い。従って、傾斜面3bからの光の出射により、文字4、図形、記号の何れかが図6に示すように傾斜面3bから目視により観察される。
【0063】
図3より傾斜面3bの幅W3bは、文字4(又は図形や記号の何れか)の高さ寸法T4以上に設定されている。また、傾斜面3bの傾斜角度θは、部材3の表面3aを基準として約20度前後に設定される。以上の設定により、部品6を斜めから見た時に、傾斜面3bから文字4(又は図形や記号の何れか)を図6に示すように目視により観察する事が可能となり、装飾性を向上させることが可能となる。なお高さ寸法T4とは、複数の文字や図形又は記号が形成されている場合、全ての文字や図形又は記号が収まる高さ寸法を指すものとする。
【0064】
更に、部材2の周縁部の全周に、傾斜面3bが形成される事により、あらゆる角度から部品6を見ても、文字4や図形又は記号を目視により傾斜面3bから観察する事が可能となる。従って、部品6の装飾性を更に向上させることが出来る。
【0065】
部材2と3は接着剤により、互いの外形が一致するように厚さ方向に重ね合わせて、貼り合わされている。接着剤は、部材2、3を重ね合わせた状態で固定できれば材料は限定されず、例えば紫外線硬化樹脂を用いることができる。また、部材2、3を重ね合わせた状態で、水に近い粘度(20℃で20cps)の接着剤を、毛細管現象を利用して部材2、3の間に行き渡らせて、貼り合わせても良い。接着剤の透過率は、分光光度計で透過率を測定した際に、例えば400nm~800nmの波長範囲での透過率が所定値(例えば80%以上)を満足すれば良い。なお貼り合わせの際は、貼り合わせ面への異物や気泡の混入が無いように留意する。
【0066】
更に、部品6を同一材料の部材2、3で構成することにより、熱膨張係数や格子定数などの物性を同一にすることができ、部品6における撓みや反りの発生を抑制することが可能となる。
【0067】
なお文字4(または図形、記号)は、部材2の貼り合わせ面上に、凹状に形成しても良い。
【0068】
また、2つの部材2と3は必ずしも同一な平面形状を有していなくても良く、互いの形状が異なっていても良い。
【0069】
部材3の平面形状を異形とした場合も、同様に傾斜面3bを外周の周縁部に沿って設ければ良い。
【0070】
(実施例3)
次に、図7及び図8を参照して、本発明の実施例3に係る部品を説明する。なお、前記実施例1の部品1又は実施例2の部品6と同一箇所には同一番号を付し、重複する説明は省略又は簡略化して記載する。
【0071】
実施例3の部品7は1つの部材2で構成される共に、部材2の外周周縁部の全周に亘って形成されている傾斜面2dが、全周に亘って30°毎に形成されたカット面2eから成る点である。更に、カット面2e同士が出会う稜線2fが、部品7の厚さ方向で凹部2cと合わせられている点である。その傾斜面2dは、表面2aに対して一定の傾斜角度θで以て外周周縁部全周に幅W2dで形成される。
【0072】
このような部品7の構成に依れば、前記部品1又は部品6が有する各効果に加えて、部品7を腕時計の窓材として使用する事により、部品7を平面方向(図7の方向)から見た時に、発光材5の発光により稜線3dが発光したように観察可能となり、文字盤の時字の位置を使用者に更に容易に識別させる事が可能となる。従って、特に腕時計の装飾性と視認性の両立を、更に図る事が出来る。
【0073】
(実施例4)
次に、図9図11を参照して、本発明の実施例4に係る部品を説明する。なお、前記部品1、6、7と同一箇所には同一番号を付し、重複する説明は省略又は簡略化して記載する。
【0074】
実施例4の部品8は図9及び図10に示すように、部材2と部材3で構成されており、部材2と部材3は互いに貼り合わされている。図9は平面図、図10は側面図である。
【0075】
部品8では、部材3の外周周縁部の全周に亘って形成されている傾斜面3bが、全周に亘って30°毎に形成されたカット面3cから成る。更に、部材2の側面2sの全周に亘って、15°毎で計24箇所に凹部2cが形成されている。また、カット面3c同士が出会う稜線3dが、部品8の厚さ方向で凹部2cと合わせられている。
【0076】
その傾斜面3bは、表面3aに対して一定の傾斜角度θで以て外周周縁部全周に幅W3bで形成されている。幅W3bは、文字4(又は図形や記号の何れか)の高さ寸法T4以上に設定されている。
【0077】
更に凹部2c内部には、図示しない前記発光材5が配置されている。なお、図9図10では図の見易さを優先して、発光材5の図示を省略している。
【0078】
このような部品8の構成に依れば、前記部品1、6、7が有する各効果に加えて、特殊光源ライトの照射時に側面2sが発光したように、かつ凹部2cでピンポイントの発光が観察可能となり、部品8の製造コストを抑制しつつ識別認知性と装飾性を共に向上させることが可能となる。
【0079】
部材3は、サファイア単結晶、ルビー単結晶、ダイヤモンド単結晶又はガラスの何れかで形成される。更に、2つの部材2、3の互いの貼り合わせ面の少なくともどちらかに、文字、図形、記号の何れかが凹状に形成される。本実施例では、部材3の貼り合わせ面の面上に、アルファベットA~Eから成る文字4が凹状に形成されている。
【0080】
文字4等の凹状の箇所にも、前記発光材5が配置される。よって、文字4、図形、記号の何れかが発光して出射された特定波長を有する光が、部材2の表面2a及び部材3の表面3aでの反射、又は光の一部が接着剤と部材2又は3の境界面で反射を繰り返しながら、傾斜面3bから出射され、図11に示すように目視により観察される。
【0081】
以上の部品1、6、7、8を腕時計や宝飾品、バッグ、装身具(リング、ネックレス、イヤリング、ブレスレット等)、タグ、又はファスナーに備える事で、部品1、6、7、8を他製品へ展開する事が出来る。特に、タグやファスナー等に備える事で、更に他製品等にも本発明に係る部品1、6、7、8を使用する事が可能となる。従って発光材5の発光により、部品1、6、7、8を備えた製品の装飾性を向上させることが可能になると共に、発光を真贋判定にも使用することが可能なので、これら製品の偽造防止効果も得られる。
【0082】
部品1、6、7、8を一例として、腕時計の文字盤を保護するカバー部品として用いる場合、部品1、6、7、8の外形寸法としては、高さ2.2mm前後、直径30mm前後~約33mm程度、部材2、3のそれぞれの厚さを1mm前後~2mm程度、幅W2d、W3bを2.5mm程度に設定すれば良い。もちろん、部品1、6、7、8を備える腕時計、宝飾品、バッグ、装身具、タグ、ファスナーの仕様に応じて、寸法は種々設定可能である。
【0083】
なお、上記各実施例1~4はその技術的思想により種々変更可能であり、例えば部品6は少なくとも部材2のみで形成可能である。また、文字4(または図形、記号)の形成は任意であり、形成しなくても良い。
【0084】
また部材2の外形形状は板状部材に限定されず、例えばリング形状でも良い。その場合、リングの内周側面に、前記溝2bや凹部2cを形成して発光材5を配置しても良い。
【0085】
または、部材2又は3の貼り合わせ面のどちらか一方の周縁面上に、発光材5を配置するか発光材のリング部材を配置しても良い。
【0086】
更に、部品1に部材3を備えると共に、その部材3の外周周縁部に図4のような傾斜面3bを形成すると共に、傾斜面2dを有さない円形平板に部材2を変更しても良い。また、部品7に部材3を備えると共に、その部材3の外周周縁部に図9のような傾斜面3bを形成すると共に、傾斜面3bを有さない円形平板に部材2を変更しても良い。
【符号の説明】
【0087】
1、6、7、8 部品
2 第一の部材
2a 第一の部材の表面
2b 溝
2c 凹部
2d 傾斜面
2e カット面
2f 稜線
W2d 傾斜面の幅
2s 第一の部材の側面
3 第二の部材
3a 第二の部材の表面
3b 傾斜面
3c カット面
3d 稜線
W3b 傾斜面の幅
4 文字
T4 文字の高さ
5 発光材
θ 傾斜面の傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11