(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】電気機械及び電気機械動作方法
(51)【国際特許分類】
H02K 16/02 20060101AFI20221117BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20221117BHJP
H02K 21/16 20060101ALI20221117BHJP
H02P 25/22 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H02K16/02
H02K21/14 M
H02K21/16 M
H02P25/22
(21)【出願番号】P 2019537361
(86)(22)【出願日】2018-01-16
(86)【国際出願番号】 GB2018050116
(87)【国際公開番号】W WO2018130859
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-01
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508317402
【氏名又は名称】マグノマティックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MAGNOMATICS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Park House, Bernard Road, Sheffield, South Yorkshire S2 5BQ Great Britain
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100140327
【氏名又は名称】大塚 千秋
(74)【代理人】
【識別番号】100206117
【氏名又は名称】日野 光章
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【氏名又は名称】三品 明生
(72)【発明者】
【氏名】カルバリー、 スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】クメリセック、 ぺテル
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-210903(JP,A)
【文献】特開2003-164127(JP,A)
【文献】中国特許第103378711(CN,B)
【文献】欧州特許出願公開第2660440(EP,A2)
【文献】Shuangxia Niu, S.L. Ho, W.N.Fu,"Design of a Novel Electrical Continuously Variable Transmission System Based on Harmonic Spectra Analysis of Magnetic Field",IEEE TRNSACTIONS ON MAGNETICS,vol.49 No.5,米国,IEEE,2013年05月07日,2161-2164
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 16/02
H02K 21/14
H02K 21/16
H02P 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械において、
第1回転子であって、第1の数の極対を有する第1磁場を生成する第1回転子と、
複数の磁極片を含む第2回転子であって、前記第1磁場を変調して第2の数の極対を有する第2磁場を生成するように前記複数の磁極片が配置された、第2回転子と、
前記第1の数の極対及び前記第2の数の極対と相互作用するように配置された第3磁場を生成するように配置された1つ以上の巻線を含む固定子と、
を含み、
前記磁極片の数は、前記第1の数の極対と前記第2の数の極対との和であり、前記第1の数の極対は、前記第2の数の極対と同一ではなく、
前記第3磁場は、前記第1の数の極対と前記第2の数の極対とを含み、
前記1つ以上の巻線の電流の振幅及び/又は位相角を異ならせることは、前記第1回転子と前記第2回転子との間のトルク比を変化させる、電気機械。
【請求項2】
前記第2回転子は、前記第1回転子と前記固定子との間に配置される、請求項1に記載の電気機械。
【請求項3】
前記一つ以上の巻線は、第1巻線セット及び第2巻線セットを含み、
前記第1巻線セットは、前記第2の数の極対と相互作用するように配置され、
前記第2巻線セットは、前記第1の数の極対と相互作用するように配置される、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項4】
前記第1巻線セットの電流の周波数を変化させることは、前記電気機械の速度比を変化させる、請求項3に記載の電気機械。
【請求項5】
前記第2巻線セットの電流の振幅及び/又は位相角を変化させることは、前記電気機械のトルク比を変化させる、請求項3または請求項4のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項6】
前記第1巻線セット及び前記第2巻線セットのそれぞれは別個の電流入力を受信するように配置される、請求項3~5のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項7】
前記第1巻線セット及び前記第2巻線セットのそれぞれに対する別個の電流入力は、個別ドライバによって供給される、請求項6に記載の電気機械。
【請求項8】
前記一つ以上の巻線は単一巻線を含む、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項9】
前記単一巻線は、ドライバから電流入力を受信するように配置される、請求項8に記載の電気機械。
【請求項10】
前記ドライバは、多相ドライバである、請求項9に記載の電気機械。
【請求項11】
前記単一巻線は複数のコイルを含み、前記複数のコイルそれぞれのコイルは、各ドライバから電流入力を受信するように配置される、請求項8に記載の電気機械。
【請求項12】
前記第1回転子は出力軸に連結される、請求項1~11のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項13】
前記第2回転子は入力軸に連結される、請求項1~12のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項14】
前記磁極片のうち少なくとも1つは強磁性材料で形成される、請求項1~13のいずれ
か一項に記載の電気機械。
【請求項15】
前記第1の数の極対及び前記第2の数の極対の間には実質的に磁気結合が存在しない、請求項1~
14のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項16】
前記第1回転子は、前記電気機械の1つへ又は電気機械の1つから機械的動力を伝達するように配置され、前記第2回転子は、機械的動力を前記電気機械の他方へ又は他方から伝達するように配置される、請求項1~
15のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項17】
前記第1回転子、前記第2回転子、及び前記固定子は、ギア方式でトルクを伝達するように配置される、請求項1~
16のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項18】
電気機械の速度比及び/又はトルク比が変化される、請求項1~
17のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項19】
前記固定子は、前記一つ以上の巻線を介して前記電気機械へ及び/又は前記電気機械から電力を伝達するように配置される、請求項1~
18のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項20】
請求項1~
19のいずれか一項に記載の電気機械を含む車両パワートレイン。
【請求項21】
請求項1~
20のいずれか一項に記載の電気機械
と、前記電気機械を動作させ
る制御手段
とを含むシステム。
【請求項22】
前記制御手段は、前記第1回転子の要求される速度及び/又はトルク
、並びに、前記第2回転子の要求される速度及び/又はトルクのうち少なくとも1つを示す少なくとも1つの命令を受信するように構成される、請求項
21に記載の
システム。
【請求項23】
前記制御手段は、前記命令に基づいて前記第1回転子、前記第2回転子、及び前記固定子の間の要求される速度比及び/又はトルク比を算出するように構成される、請求項
22に記載の
システム。
【請求項24】
前記制御手段は、前記第1回転子、前記第2回転子、及び前記固定子の間の要求される速度比及び/又はトルク比を達成するために、前記固定子上の一つ以上の巻線のうち1つ以上で電流の特性を決定するように構成される、請求項
23に記載の
システム。
【請求項25】
前記制御手段は、前記少なくとも1つの巻線で前記電流の特性を示す命令をドライバに提供するように構成され、前記ドライバは、前記電流を供給するように配置される、請求項
24に記載の
システム。
【請求項26】
電気機械を動作させる方法において、
前記電気機械は、
第1回転子であって、第1の数の極対を有する第1磁場を生成する第1回転子と、
複数の磁極片を含む第2回転子であって、前記第1磁場を変調して第2の数の極対を有する第2磁場を生成するように前記複数の磁極片が配置される、第2回転子と、
前記第1の数の極対及び前記第2の数の極対と相互作用するように配置された第3磁場を生成するように配置された1つ以上の巻線を含む固定子と、
を含み、
前記磁極片の数は、前記第1の数の極対と前記第2の数の極対との和であり、前記第1の数の極対は、前記第2の数の極対と同一ではなく、
前記第3磁場は、前記第1の数の極対と前記第2の数の極対とを含み、
前記1つ以上の巻線の電流の振幅及び/又は位相角を異ならせることは、前記第1回転子と前記第2回転子との間のトルク比を変化させ、
前記方法は、前記電気機械に、及び/又は電気機械から、機械的動力を伝達するステップを含む、方法。
【請求項27】
前記一つ以上の巻線は単一巻線を含み、前記単一巻線
は前記第3磁場を生成するように配置される、請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
前記電気機械は制御手段を含み、前記方法は、前記制御手段が前記第3磁場の要求される特性を示す命令を受信するステップをさらに含む、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
前記要求される特性は、第1の数の極対を有する第3磁場の成分の要求される特性及び第2の数の極対を有する第3磁場の成分の要求される特性を含む、請求項
28に記載の方法。
【請求項30】
前記第3磁場の要求される特性を生成するために、前記単一巻線の磁気原動力(magneto motive force)を算出するステップをさらに含む、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
前記第3磁場の要求される特性を生成するために、前記単一巻線の磁気原動力を算出するステップは、
前記第1の数の極対を有する前記第3磁場の成分の要求される特性を生成するために、前記単一巻線の磁気原動力を算出するステップと、
前記第2の数の極対を有する前記第3磁場の成分の要求される特性を生成するために、前記単一巻線の磁気原動力を算出するステップと、
をさらに含む、請求項
30に記載の方法。
【請求項32】
前記第3磁場の要求される特性を生成するための前記単一巻線の磁気原動力は、
前記第1の数の極対を有する前記第3磁場の成分の要求される特性を生成するための単一巻線の磁気原動力と、
前記第2の数の極対を有する前記第3磁場の成分の要求される特性を生成するための単一巻線の磁気原動力の和である、請求項
31に記載の方法。
【請求項33】
前記第3磁場の要求される特性を生成するために、前記単一巻線の算出された磁気原動力から前記単一巻線の要求電流を算出するステップをさらに含む、請求項
30~
32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記単一巻線は、ドライバから電流入力を受信するように配置され、
前記方法は、前記制御手段が単一巻線に必要な電流を供給するようにドライバに命令を送信するステップをさらに含む、請求項
33に記載の方法。
【請求項35】
前記単一巻線は、複数の空間的に分布されたコイルを含み、
前記方法は、前記第3磁場の要求される特性を生成するために、前記算出された単一巻線の磁気原動力からそれぞれのコイルの要求電流を算出するステップをさらに含む、請求項
30~
32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
それぞれのコイルは、それぞれのドライバから電流入力を受信するように配置され、
前記方法は、前記制御手段がそれぞれのコイルに必要な電流を供給するように、各ドライバに命令を送信するステップをさらに含む、請求項
35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、電気機械及び電気機械動作方法に関する。電気機械の実施形態は、磁気歯車部材(magnetic geared member)を含む。
【背景技術】
【0002】
ほとんどのギアリングソリューションは、機械式ギアリング配置を使用してきたが、従来の機械式配置の高トルク(high-torque)伝達を提供する、より小型で、より軽量で、より効率的かつ安価なギアリングソリューションに対する関心及び需要が高まっている。磁気歯車配置(magnetic gearing arrangement)は、このようなソリューションの一例である。
【0003】
磁気歯車は、磁場を用いて機械的な接触なしにトルクを伝達する。1つの形態において、磁気歯車は3つの主な構成要素を有し、その全ては互いに対して回転することができる。1つの既存の配置では、3つの構成要素のうち半径方向内側の1つが、第1の数の極対(pole pair)を有する第1磁場を生成する。3つの構成要素のうち半径方向外側の1つは、第2の数の極対を有する第2磁場を生成する。3つの構成要素のうち半径方向中間の1つは自体の磁場を生成しない。その代わりに、非磁性及び非伝導性の構造によって支持される複数の強磁性磁極片(ferromagnetic pole piece)を有する。この第3の構成要素は、第1の構成要素と第2の構成要素との間の磁気回路の受動部分(passive part)として動作する。磁極片の役割は、第1及び第2磁場をギア方式に相互作用するように変調することである。その結果、遊星機械式ギア配置(epicyclic mechanical gear arrangement)と類似の方式で、3つの構成要素間でギア方式によりトルクを伝達することができる。
【0004】
他の形態の磁気歯車装置は、2つの永久磁石構成要素及び1つの変調リング構成要素を有する受動ギアと、磁気歯車の周りに巻回された固定子を有するモータジェネレーターと、回転する永久磁石回転子、回転する変調回転子、及び磁石と巻線の静的アレイ(static array of magnets and winding)を有する一体型ギア(integrated gear)を有するモータジェネレーターと、3つの回転子、2つの永久磁石アレイと変調回転子及び回転子のうち1つの回転を制御するための固定子巻線を有する可変磁気歯車と、及び/又は1つの永久磁石回転子、変調回転子、及び変調した磁場と結合して回転速度及びそれに伴うギア比を制御することのできる固定子巻線を有する可変磁気歯車を含む。
【0005】
磁気歯車100の一例が
図1に示されている。この場合、外部構成要素110には、事実上、モータジェネレーターの固定子となる一組の巻線115が提供される。この配置は、運転モード又は発電モードでの動作と共に、ギアトルク伝達を可能にすることによって、磁気歯車と一般的な電気機械の機能を組み合わせる。この場合、第1磁場は、内部構成要素130上の永久磁石135によって生成される。第2磁場は、外部構成要素110上の巻線115に流れる電流によって生成される。上述したように、第3構成要素120は、複数の強磁性磁極片(pole piece)125を有する。第3構成要素120は、第1及び第2磁場をギア方式で相互作用するように変調する。その結果、トルクは、ギア方式で3つの構成要素110,120,130のうち任意の2つの間で、又は、遊星機械式ギア配置(epicyclic mechanical gear arrangement)に類似の方式により、それら3つの全ての間で伝達することができる。また、遊星機械式ギア配置に類似の方式で、構成要素110,120,130間の速度比は、第2磁場が回転する速度を変えることによって変化される。第2磁場が回転する速度は、外部構成要素110上の巻線115に流れる電流の周波数を変えることによって変化される。その結果、可変の速度比を有するギア方式で3つの構成要素110,120,130の全ての間でトルクが伝達されることができる。
【0006】
図1に示したような磁気歯車配置は、「混合型」電気ハイブリッド自動車において使用される。混合型電気ハイブリッド自動車は、中速から高速の走行速度で、車両のエネルギー貯蔵システムから電力を補充するために車両エンジンの機械的動力を使用する車両である。これは、バッテリがその最小の充電限界値に達したときにのみ、エネルギー貯蔵システムの電力がエンジンの機械的動力で補充される他のタイプの電気ハイブリッド自動車とは対照的である。
【0007】
混合型電気ハイブリッド自動車では、内部構成要素130は、一般的に機械的動力を、車輪に伝達し、車輪から伝達される。中間構成要素120は、通常、車両のエンジンから機械的動力を伝達する。外側構成要素110は、固定されて一般的に車両のエネルギー貯蔵システムに電力を伝達し、車両のエネルギー貯蔵システムから電力が伝達される。
【0008】
有利には、無段変速機(continuously variable transmission)(CVT)を提供するために、内部構成要素130と中間構成要素120との間の速度比を前述した方式で制御することができる。これは、エンジンが内部構成要素の速度、すなわち、車輪への出力が中間構成要素の速度、すなわち、エンジンからの入力と本質的に分離されているため、エンジンが最も効率的な動作点で自由に動作できることを意味する。その結果、ハイブリッド自動車は、最も効率的な領域でエンジン動作地点をシフトすることなく、車輪速度の要求を満たすことができる。
【0009】
しかし、電気機械100におけるトルク比は変わらない。これは、トルク比が機械式ギアシステムの幾何学的形状と固定子巻線によって形成される複数の極性によって決定されているためである。その結果、速度比が変化することにより、機械の3つの構成要素110,120,130の全てに電力が強制的に流れるようになる(構成要素120,130のうち少なくとも1つの速度がゼロではないことを仮定する)。これは、電力が外部構成要素110へ強制的に流れることを意味する。すなわち、電力は外部構成要素110上の巻線115を介して流れることになる。したがって、外部構成要素110上の巻線115を介して電気機械100又は外部に流れる電力はゼロではない。
【0010】
電気機械100の正味電力の流れが負である場合、すなわち、外部構成要素110が配置から電力を除去しなければならない場合、配置から除去しなければならない電力量が、車両の制限された容量のエネルギー貯蔵システムに格納するには多すぎる場合がある。余剰電力を管理するために、完全にバランスの取れた「単独(islaneded)」電力システムを提供するために、余剰分は出力軸速度の駆動軸に戻る。余剰分は、第2電気機械を介して駆動軸に戻る。したがって、2つの電気機械がパワートレイン(power train)上に提供され、それぞれが電力の流れを制御し、車両のエネルギー貯蔵システム又は車両のエネルギー貯蔵システムから電力を伝達するための各インバータを有する。
【0011】
精巧であるが、このアクセス方法にはいくつかの短所がある。1つの短所は、2台の電気機械が必要とされるため、システムが非常に複雑になることである。他の短所は、電気機械がそれぞれ自体のインバータを必要とすることである。車両のパワートレインのような複雑さは、車両のコスト及びサイズ、重量、信頼性、及び動的性能に悪影響を及ぼすため、好ましくない。
【0012】
したがって、本発明の実施形態のうち少なくとも一部の目的は、これらの問題を解決することにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
一側面によれば、次を含む電気機械を提供する。電気機械は、第1回転子(前記第1回転子は、第1の数の極対を有する第1磁場を生成する)と、複数の磁極片を含む第2回転子(前記複数の磁極片は、第1磁場を変調して第2の数の極対を有する第2磁場を生成するように配置される)と、第1の数の極対及び第2の数の極対と第3磁場を生成するように配置された1つ以上の巻線を含む固定子とを含み、第1の数の極対及び第2の数の極対と第3磁場との相互作用は、第1回転子と第2回転子との間のトルク比を変化させる。
【0014】
第1回転子は、複数の永久磁石を含み得る。永久磁石は、第1磁場を生成するために配置され得る。
【0015】
第1回転子は、1つ以上の回転子巻線を含み得る。1つ以上の回転子巻線は、第1磁場を生成するために配置される。
【0016】
第3磁場と第1の数の極対及び第2の数の極対との相互作用は、選択的に予め決定されたトルク比に応じて、第1回転子及び第2回転子のそれぞれに互いに独立的に印加されるトルクを変化させることができる。
【0017】
第2回転子は、第1回転子と固定子との間に配置され得る。
【0018】
前記一つ以上の巻線は、第1巻線セット及び第2巻線セットを含み得る。第1巻線セットは、第2の数の極対と相互作用するように配置され、第2巻線セットは、第1の数の極対と相互作用するように配置され得る。
【0019】
第1巻線セットは、第2の数の極対を有する磁場を生成するように配置され得る。
【0020】
第2巻線セットは、第1の数の極対を有する磁場を生成するように配置され得る。
【0021】
第1回転子は、電気機械又の1つにまたは1つから機械的動力を伝達するように配置され、第2回転子は、機械的動力を電気機械の他方にまたは他方から伝達するように配置され得る。
【0022】
第1回転子及び第2回転子は、電気機械に機械的動力を伝達するように配置され得る。
【0023】
第1回転子及び第2回転子は、電気機械から機械的動力を伝達するように配置され得る。
【0024】
第1回転子、第2回転子、及び固定子は、ギア方式でトルクを伝達するように配置される。
【0025】
機械の速度比及び/又はトルク比は変化され得る。
【0026】
第1巻線セットの電流の周波数変化は、電気機械の速度比を変化させ得る。
【0027】
第1巻線セットによって生成された磁場が回転する速度変化は、電気機械の速度比を変化させ得る。
【0028】
第2巻線セットの電流の位相角及び/又は大きさの変化は、電気機械のトルク比を変化させ得る。位相角は、第1磁場に相対的に測定され得る。
【0029】
トルク比及び速度比は、電気機械に供給された正味電力(net electrical power)が実質的にゼロになるよう逆に変化される。
【0030】
トルク比及び速度比は、外部ソースから電気機械に供給された正味電力が実質的にゼロになるよう逆に変化される。
【0031】
トルク比は、電気機械に供給された正味電力が実質的に正の値になるよう増加され得る。
【0032】
トルク比は、外部ソースから電気機械に供給された正味電力が実質的に正の値になるよう増加され得る。
【0033】
トルク比は、電気機械に供給された正味電力が実質的に負の値になるよう減少され得る。
【0034】
トルク比は、外部ソースから電気機械に供給された正味電力が実質的に負の値になるよう減少され得る。
【0035】
第1の数の極対の数は9であり得る。第2の数の極対の数は6であり得る。15磁極片があり得る。
【0036】
固定子は、1つ以上の巻線を介して電気機械へ及び/又は電気機械から電力を伝送するように配置され得る。
【0037】
固定子は、複数の歯を含み得る。様々な歯のうち少なくとも1つの歯は、放射状で内側に突出している。少なくとも1つの歯は、1つ以上の巻線を保有し得る。
【0038】
機械のトルク比及び/又は速度比は、1つ以上の巻線で電流を変化させることにより変化される。
【0039】
1つ以上の巻線は、ドライバに電気的に結合され得る。ドライバは、コントローラに電気的に結合され得る。
【0040】
1つ以上の巻線は、インバータに接続され得る。インバータは、AC/DCインバータであってもよい。インバータは、DCリンクに接続される。DCリンクは、エネルギー貯蔵装置に接続される。エネルギー貯蔵装置は、バッテリ、キャパシタ及び/又は燃料電池のうち少なくとも1つを含み得る。DCリンクは、DC/DCコンバータを介してエネルギー貯蔵装置に接続される。少なくとも1つの他の巻線は、AC/DCインバータを介してDCリンクに接続される。
【0041】
1つ以上の巻線は、AC/ACコンバータに接続される。AC/ACコンバータは、マトリックスコンバータであってもよい。AC/ACコンバータは、AC/DCコンバータに接続される。変換されたAC/DCは、DC/DCコンバータを介してエネルギー貯蔵装置に接続される。1つ以上の他の巻線がAC/ACコンバータに接続される。
【0042】
1つ以上の巻線には、非正弦波電流が印加され得る。非正弦波電流は、第1の数の極対及び第2の数の極対の共倍数に対して実質的に周期的に繰り返される。倍数は最小公倍数であってもよい。
【0043】
第1巻線セット及び第2巻線セットのそれぞれは、個別電流入力を受信するように配列され得る。
【0044】
第1巻線セット及び第2巻線セットのそれぞれに対する個別電流入力は、個別ドライバによって供給され得る。
【0045】
1つ以上の巻線は多相の空間的に分布された巻線であり得る。多相電流は、多相の空間的に分布された巻線に印加され得る。
【0046】
1つ以上の巻線は、3相空間的に分布された巻線であり得る。多相電流は、3相空間の分散巻線に印加され得る。3相の120度変位電流は、3相空間分配された巻線に印加され得る。
【0047】
第1巻線及び第2巻線セットのうち少なくとも1つは、多相空間的に分布された巻線であり得る。多相電流は、多相空間的に分布された巻線に印加され得る。
【0048】
第1巻線及び第2巻線セットのうち少なくとも1つは、3相空間の分散巻線であり得る。多相電流は、3相空間の分散巻線に印加され得る。3相の120度変位電流は、3相空間の分配された巻線に印加され得る。
【0049】
電気機械は、車両パワートレインに使用され得る。電気機械は、ハイブリッド自動車パワートレインに使用されてもよい。
【0050】
第2回転子は、入力軸に連結され得る。入力軸は、エンジンに連結され得る。
【0051】
第1回転子は、出力軸に連結される。出力軸は、駆動軸及び/又はプロペラ軸に連結され得る。
【0052】
電気機械は、線形電気機械であり得る。電気機械は、軸方向磁束機械(axial flux machine)であり得る。
【0053】
複数の磁極片のうち少なくとも1つは、非磁性材料で形成され得る。磁極片のうち少なくとも1つは、強磁性材料で形成され得る。磁極片のうち少なくとも1つは、軸方向に積層された複数のラミネーション(lamination)で形成され得る。磁極片のうち少なくとも1つは、軟磁性複合材料で形成され得る。
【0054】
一実施形態において、第1の数の極対の数は第2の数の極対の数と同一である。
【0055】
一実施形態において、第1の数の極対の数は第2の数の極対の数より多い。
【0056】
一実施形態において、磁極片の数は第1及び第2の数の極対の数の和である。
【0057】
一実施形態において、第1の数の極対及び第2の数の極対の間には実質的な磁気結合がない。
【0058】
全ての側面の選択的機能は、これを防止する確実な技術的非互換性がない限り、他の側面の選択的な機能であってもよい。
【0059】
第2側面によれば、第1側面に係る電気機械を動作させる方法が提供され、方法は、電気機械及び/又は電気機械から機械的動力を伝達する。
【0060】
第3側面によれば、第1側面に係る電気機械を動作させるためのコンピュータ手段が提供される。
【0061】
コンピュータ手段は、第1回転子の要求される速度及び/又はトルク及び/又は第2回転子の要求される速度及び/又はトルクのうち少なくとも1つを示す少なくとも1つの命令を受信するように構成される。
【0062】
コンピュータ手段は、命令に基づいて第1回転子、第2回転子、及び固定子の間の要求される速度比及び/又はトルク比を算出するように構成される。
【0063】
コンピュータ手段は、第1回転子、第2回転子、及び固定子の間の要求される速度比及び/又はトルク比を達成するために、固定子の上一つ以上の巻線のうち少なくとも1つから電流の特性を決定するように構成される。特性は、電流の位相角、周波数及び/又は振幅のうち少なくとも1つであり得る。
【0064】
コンピュータ手段は、少なくとも1つの巻線で電流の特性を示す命令をドライバに提供するように構成され、ドライバは、電流を供給するように配置される。
【0065】
ドライバは、コントローラに電気的に接続される。コントローラは、コンピュータ手段を含み得る。
【0066】
コンピュータ手段は、少なくとも1つの巻線で電流の特性を示す命令をドライバに提供するように構成される。
【0067】
命令は、印加される電流の要求される周波数、振幅及び/又は位相角のうち少なくとも1つを示し得る。
【図面の簡単な説明】
【0068】
本発明が具体化される特定の実施形態は、添付の図面を参照して単に例示的に次のように説明される。
【
図1】従来技術の磁気歯車放射状場機械(magnetically geared radial field machine)の構成要素の軸方向図である。
【
図2】第1実施形態である電気機械の構成要素の軸方向図である。
【
図3】
図2に示す電気機械の固定子上の第1巻線セットのパターンである。
【
図4】
図2に示す電気機械の固定子上の第2巻線セットのパターンである。
【
図5】
図2に示す電気機械の内部回転子に代替できる内部回転子の等角図である。
【
図6】電気機械200の回転子に隣接するエアギャップ又は領域における磁束密度が角度位置に応じてどのように変化するかを示すグラフである。
【
図7】
図2に示す磁極片によって適用される理想的な変調関数を示すグラフである。
【
図8】
図2に示す磁極片によって適用された実際の変調関数を近似化したグラフである。
【
図9】固定子の内部表面に隣接するエアギャップで
図2に示す電気機械の変調した磁束の高調波成分を示すグラフである。
【
図10】
図2に示す電気機械に対する第1及び第2巻線セットの磁気力とシステムトルクとの間の関係を示すグラフである。
【
図11】第1巻線セットによって設定された磁場が電気機械で0度にあるとき、第1巻線セットに対する磁気原動力のパターンを示すグラフである。
【
図12】第1巻線セットによって設定された磁場が電気機械で0度にあるとき、第2巻線セットに対する磁気原子力のパターンを示すグラフである。
【
図13】第1及び第2巻線セットの磁気原動力パターンの重複を示すグラフである。
【
図14】第1及び第2巻線セットに対するMMFパターンの和を示すグラフである。
【
図15】
図14に示す第1及び第2巻線セットに対するMMFパターンの和の高調波成分を示すグラフである。
【
図16】
図2に示す電気機械が他の実施形態により接続されることができる電気構造を示す概略図である。
【
図17】
図2に示す電気機械が他の実施形態により接続されることができる電気構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
装置(apparatus)
図2は、第1実施形態に係る磁気歯車放射状場機械(magnetically geared radial field machine)200を示す。機械200は、運転モード又は発電モードで使用することができ、例えば、混合型ハイブリッド電気自動車のパワートレインなど、複数の異なるパワートレイン配置(power train arrangements)(図示せず)で使用される。
【0070】
機械200は、外部固定子210、磁極片回転子220、及び内部回転子230を有する。固定子210、内部回転子230、及び磁極片回転子220は、環状であり、固定子210が磁極片回転子220の周りにリングを形成し、磁極片回転子220が内部回転子230の周りにリングを形成するよう同軸に取り付けられている。すなわち、内部回転子230は、磁極片回転子220の半径方向内側にあり、磁極片回転子220は、外部固定子210の半径方向内側にある。次に、これらのそれぞれについて順に説明する。
【0071】
固定子210は、その巻線の構成及び動作を除いて、従来の電気機械固定子と同様である。固定子210は、電磁鋼板のラミネーション(lamination)から形成され、ラミネーションは機械の軸に垂直な平面にある。固定子210は、スロット型固定子である。固定子210は、半径方向内側に歯214を突出させる半径方向の外側環状本体212を有するよう形成される。歯214は、第1巻線セット240及び第2巻線セット250を収容するために隣接する歯214の間のスロット216を介して本体212の周りに均等に離隔されている。この実施形態において、54個の歯214が存在するため、54個のスロット216が存在する。第1巻線セット240は、スロット216で固定子210の外側環状体212と第2巻線セット250との間に半径方向にある。第1巻線セット240及び第2巻線セット250は3相巻線である。第1巻線セット240及び第2巻線セット250の正確な巻線パターンについて、それぞれ
図3及び
図4を参照しながら説明する。
【0072】
第1巻線セット240は、
図3に示された巻線パターンに応じてスロット216に巻線される。
図3は、9個の隣接ブロックを示す。各ブロックは、固定子210のスロット216を示す。各ブロックには、U、V及びWの文字のうち2つが互いに積み重ねたものを有する。文字U、V、及びWは、それぞれ第1巻線セット240の相巻線を示す。例えば、Uは第1相を示すことができる。Wは第2相、Vは第3相である。各文字の後に、正数の「+」又は負数の「-」の符号が付されている。正の符号は、それぞれの相巻線の電流が紙面に垂直方向、かつ紙面から出る方向に流れていることを表す。負の符号は、それぞれの巻線の電流が紙面に垂直な方向、かつ紙面に向かう方向に流れていることを示す。全ての3つの位相は、9個の隣接するスロット216にわたって全体のコイル又は巻線を完成する。このパターンは、6回繰り返されて、固定子210の54個のスロット216に第1巻線セット240を定義する。その結果、3相の120度変位電流が第1巻線セット240に印加されるとき、固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップに生成された磁場は6個の極対を有する。これは、
図3の巻線パターンが固定子210の周囲に6回繰り返されているためである。
【0073】
当業者が理解するように、第1巻線セット240について
図3に示された巻線パターンは、部分スロット(fractional-slot)巻線パターンである。これは、磁極(magnetic pole)及び電気位相当たりのスロット216の数がごく僅かであるためである。特に、
図3の巻線パターンは、固定子210が54個のスロット216を有するため、部分スロット巻線パターンである。第1巻線セット240によって設定された磁場は、12極(6極対)を有する。位相数は3である。したがって、極性及び位相当たりスロット216の数は1.5である。
【0074】
第2巻線セット250は、
図3に示されたものと同じフォーマットに従う、
図4に示された巻線パターンによりスロット216に巻線されている。しかし、この場合に、
図4は、隣接する6個のブロックのみを示す。これは、第2巻線セット250の3つの全ての位相が6個の隣接ブロック又はスロット216にわたって全体の巻線又はコイルを完成するためである。したがって、このパターンは、9回繰り返されて固定子210の54個のスロット216のそれぞれに第2巻線セット250を定義する。その結果、3相の120度変位電流が第2巻線セット250に印加されるとき、固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップに生成される磁場は9個の極対を有する。
【0075】
当業者が理解するように、第2巻線セット250に対する
図4に示された巻線パターンは、一体型スロット(又は、整数スロット)巻線パターンである。これは、磁極及び電気位相当たりのスロット216の数が整数であるためである。具体的に、
図4に示す巻線パターンは、固定子210が54個のスロットを有するため、一体型スロット巻線パターンである。第2巻線セット250によって設定された磁場は、18極(9極対)を有する。位相の数は3である。したがって、極性及び位相当たりスロット216の数は1である。
【0076】
他の実施形態で、第1巻線セット240及び第2巻線セット250によって生成された磁場が互いに相互作用しなければ、第1巻線セット240及び第2巻線セット250に対する巻線パターンの任意の組合せを使用することができる。各巻線セットは、一体型スロット巻線、部分スロット巻線パターン、集中部分スロット巻線、又は、分散部分スロット巻線である。
【0077】
他の実施形態では、固定子210は108個のスロット216を有する。この実施形態において、第2巻線セット250は、108個のスロット216の半分を占め、第1巻線セット240は、スロット216のそれぞれの1つを占めている。この実施形態において、第1巻線240及び第2巻線250セットは、一体型スロット巻線である。しかし、第1及び第2巻線セットによって生成された磁場は、第1巻線セットが第2巻線セットの1.5倍の極対を有するとき相互作用しない。すなわち、第1及び第2巻線セットによって生成された磁場は、それぞれの極対の間に非整数倍の関係があることから、相互作用しない。
【0078】
図2をさらに参照すると、磁極片回転子220は、非磁性及び非導電性の環状維持構造物(図示せず)から形成される。維持構造物(retaining structure)は、機械の軸と平行した方向に維持構造物の本体部を貫通して延びる複数のスロットを有するように形成される。スロットは、維持構造物の周りに均等に離隔されている。それぞれのスロットは、電気鋼鉄(electric steel)のような強磁性材料の磁極片222を維持するように配置される。磁極片222は、機械200が動作しないときに非磁性化される。この実施形態において、維持構造物は、維持構造物の周りで均一に離隔した15個のスロットを有する。したがって、維持構造物は、15個の磁極片222を有している。使用時に、磁極片回転子220は、機械動力を機械に伝達するための入力軸に連結される。入力軸は、従来のエンジン又は他の原動機に連結される。
【0079】
さらに
図2を参照すると、内部回転子230は、その半径方向最外面の周りに配置された18個の永久磁石対232を有する。それぞれの永久磁石対232は、単一永久磁石を半分に分割することによって生成される。それぞれの永久磁石対内のそれぞれの永久磁石233は、第1端部234及び第2端部235を有する。第1端部は、内部回転子230の半径方向の外部表面にある。第2端部235は、第1端部234から半径方向内側に配置される。それぞれの対232内の2つの永久磁石233の第1端部234は互いに接触してもよい。各対232内の2つの永久磁石233の第2端部235は、それぞれ同一の永久磁石対232に属しない永久磁石233の第2端部235とそれぞれ接触してもよい。第1ウェッジ(wedge)236は、それぞれの永久磁石対232の第1端部234と隣接する永久磁石対232の第1端部234間に円周方向に配置される。第2ウェッジ237は、それぞれの永久磁石対234内の永久磁石233の第2端部235間に円周方向に配置される。第1又は第2ウェッジ236,237の少なくとも1つは、鋼鉄で製造される。
【0080】
有利には、永久磁石233がウェッジ236,237によって回転子230上に機械的に固定され、硬化又は乾燥時間を必要とする接着剤のような手段により固定されていないため、内部回転子230の製造にかかる時間は他の手法に比べて短縮される。当業者は、接着剤のような固定手段が使用されれば、他の永久磁石が、別の永久磁石がそれに接近する前に回転子に接着されなければならない(接着剤がセッティングされるようにする)ことを、理解するであろう。これは、永久磁石又は回転子に取付けられている磁石が回転子に配置されている他の永久磁石と共に引力又は反発力によって離脱することを回避するために、実行されなければならない。これにより、各永久磁石233がウェッジ236,237との各位置の設定によって迅速に適所に機械的に固定される内部回転子230よりも、製造工程においてはるかに時間がかかる。
【0081】
図2に示された内部回転子230の一部の実施形態において、永久磁石233は、ウェッジ236,237及び接着剤によって内部回転子230上に適所に固定される。有利には、接着剤は、機械200が動作中であるとき、ウェッジ236,237に対する永久磁石233の移動を制限する。すなわち、機械200が動作中であるとき、それぞれの永久磁石233がそれぞれ拘束されたウェッジ236,237によって生成された孔内でがたつくことを防止する。さらに有利には、内部回転子230を製造するためにかかる時間は、永久磁石233を内部回転子230に固定するための方法として接着剤のみを使用する場合よりも短縮される。これは、永久磁石233が主にウェッジ236,237によって拘束されているため、他の永久磁石が近接する前にそれぞれの永久磁石が回転子に接着される(接着剤がセッティングされるようにする)必要がないためである。代わりに、永久磁石233は、上述したように、より迅速で連続的に固定されることができる。
【0082】
永久磁石対232は、隣接する永久磁石対232によって設定された隣接する磁場の極性が内部回転子230の円周の周りで交互になるように配置される。永久磁石対232は、内部回転子230と磁極片回転子220との間のエアギャップで放射状の磁場(radial magnetic field)(図示せず)を提供する。磁場は18個の永久磁石対によって提供されるため、9極対がある。内部回転子230と磁極片回転子220との間のエアギャップ内の磁束は、基本的な9次高調波を有する。9次高調波は、9極対に該当する。使用時には、内部回転子230は、機械及び/又は機械から機械的な動力を伝達するための出力軸に連結される。出力軸は、駆動軸及び/又はプロペラ軸に連結されてもよい。
【0083】
他の実施形態において、
図5に示された内部回転子300は、機械200の内部回転子230の代わりに使用できる。回転子300は環状である。回転子300は、その半径方向最外面の周りに個別的に配置された18個の永久磁石310を有する。18個の永久磁石は、隣接する永久磁石によって設定された隣接する磁場の極性が内部回転子230の周りで交互するように配置される。したがって、回転子300は、永久磁石310の半径方向外側の空間に放射状磁場(図示せず)を提供する。別の実施形態における磁場も18個の永久磁石によって提供されるため、9個の極対を有する。半径方向の磁場は、内部回転子230を参照して前の段落で説明した放射状の磁場と実質的に同じ特性を有する。その結果、内部回転子300と関連して開示された本発明の任意の部分は、内部回転子230と同じく適用されると見なされてもよく、その逆であってもよい。
【0084】
図6は、電気機械200の軸周りの角度位置と、磁極片回転子220と回転子300との間のエアギャップ内の磁束密度との概略的な関係を示すグラフである。当業者が理解するように、磁束密度は軸周りの角度位置を有する磁束の正の値及び負の値の間で正弦波状に交互に示される。正の値は、N極(north pole)を示す。負の値はS極(south pole)を示す。正弦波は40度ごとに繰り返される。これは、磁束が、回転子300上の隣接している18個の永久磁石310によって提供された磁場の結果であるためである。その結果、磁場は回転子の軸を中心に正から負へ、すなわち、N極からS極へ18回変化する。したがって、360度を9で割った値(極対)が40度になるため、正弦波の周期は40度になる。
【0085】
図2をさらに参照すると、磁極片回転子220によって維持された磁極片222は、事実上、内部回転子230と磁極片回転子220との間のエアギャップ内の磁束に対するフラックスゲートとして作用する。上述したように、この磁束は、内部回転子230上の永久磁石233によって提供された磁場の結果である。理解されるように、磁極片回転子220と内部回転子230との間のエアギャップで内部回転子230により提供された磁束の一部は、磁極片回転子220を通過する。磁極片回転子220を通過できる部分は、磁極片回転子220の磁極片222と関連してエアギャップにおける磁束位置に依存する。磁極片回転子220の軸周りの所定の角度位置で、磁極片回転子220の磁極片222と内部回転子230との間に半径方向にある磁束は、磁極片回転子220を通過する。逆に、所定の角度位置で、磁極片回転子220の磁極片222と内部回転子230との間の放射状でない磁束は、磁極片維持構造体によって実質的に遮断され、磁極片回転子220の半径方向最外面には示されない。これは、磁極片維持構造が磁気的に不透過性であるためである。
【0086】
磁極片回転子220の半径方向最外面を通過して示される磁束は、内部回転子230によって提供された磁束の変調したバージョンと見なすことができる。したがって、固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップの磁場は、内部回転子230と磁極片回転子220との間のエアギャップ内の磁場を変調したバージョンである。
【0087】
図7は、内部回転子230と磁極片回転子220との間のエアギャップで内部回転子230によって生成された磁束に対して、磁極片回転子220の磁極片222によって適用される理想的な変調関数を示すグラフである。磁極片回転子220の半径方向最外面に示される磁束のパターンは、内部回転子230によって生成された変調関数と磁束の積である。y軸は、磁束に適用される機能を示す。x軸は、磁極片回転子220の軸周りの角度位置を示す。グラフは、角度位置が変化するにつれ変調関数が矩形波であることを示す。矩形波は、約24度ごとに周期的に繰り返される。矩形波の上限値は1である。矩形波の下限値は0である。上限値である1は、磁極片222がある磁極片回転子220の軸周りの角度位置を示し、したがって、磁極片回転子220と固定子210との間のエアギャップで磁極片回転子220を介して磁束が浸透される位置を示す。下限値である0は、磁極片222のない磁極片回転子220の軸周りの角度位置を示し、したがって、磁束が磁極片回転子220を透過することのできない位置を示す。理論的に、磁極片回転子220の半径方向最外面に示される磁束は、基本的な6次高調波を有する。これは、6極対がある磁場に対応する。これは、次の式に示す理論的な関係によるものである。
【0088】
【0089】
ここで、Nsは、変調磁界の極対の数であり、Nppは、磁極片222の数であり、Nrは、回転子によって提供された磁場の極対の数である。したがって、磁極片数が15個であり、回転子によって設定された磁場の極対が9である場合、変調磁界の極対の数は6である。上述したように、
図7に示された変調機能は理想的である。しかし、実際に、実際変調機能は、理想化された変調機能から逸脱するであろう。磁極片回転子220の磁極片222が磁束によって飽和する可能性があるため、磁極片222間で磁束が漏れる恐れがあり、及び/又は磁極片222の実際的な幾何学的な形状に起因する可能性がある。
【0090】
図8は、内部回転子230と磁極片回転子220との間のエアギャップにおいて、内部回転子230によって提供された磁束に対して磁極片回転子220の磁極片222により適用された実際の変調関数をよく表す理論変調関数を示す。
図7に示すように、磁極片回転子220の半径方向最外面に示される磁束は、エアギャップで内部回転子230によって提供される変調関数と磁束の積である。y軸は、磁束に適用される機能を示す。x軸は、磁極片回転子220の軸周りの角度位置を示す。変調関数は正弦波である。正弦波は、約24度の周期で繰り返される。正弦波の上限値は1である。正弦波の下限値は0である。変調関数は、正弦項(term)を含むため、磁極片回転子220の半径方向最外面に示される磁束は、単に6次高調波でない複数の高調波構成要素を有する。
図8に示された場合、構成要素の1つは6次高調波である。以下で説明するように、他の構成要素は9次高調波である。したがって、磁極片回転子220の半径方向最外面における磁場は6極対成分及び9極対成分を有する。
【0091】
図8を参照して説明された変調関数は、次の方程式に示される。
【0092】
【0093】
ここで、ωpolesは磁極片回転子220の回転速度をラジアン毎秒で示す。θはラジアン単位の磁極片回転子220の軸周りの角度位置であり、tは時間(秒)である。
【0094】
上述したように、磁極片回転子220の半径方向最外面に示される磁束パターンは、内部回転子230によって提供された磁束と変調機能の積である。
【0095】
したがって、磁極片回転子220の半径方向最外面に示される磁束のパターンは次の式に表現される。
【0096】
【0097】
ここで、Bはテスラ単位における磁束密度である。θはラジアン単位における内部回転子230軸周りの角度位置であり、ωinnerはラジアン毎秒における内部回転子230の回転速度である。式(3)は、磁束密度の様々な高調波構成要素を表示するために次の標準三角法を用いて拡張される。
【0098】
【0099】
式(3)の拡張された形態は次のとおりである。
【0100】
【0101】
したがって、式(5)に定義されるように、磁極片回転子220の半径方向最外面に示される磁束は、3つの三角関数項(trigonometric terms)が存在するため3つの高調波構成要素を有し、これは、6次の高調波次数に対応する最初の項、24次の高調波次数に対応する2番目の項、9次の高調波次数に対応する3番目の項である。三つの構成要素の相対的な大きさは、各三角関数の項の前にあるスカラーにより示される。この場合、9次高調波(1/2)の大きさは6次(1/4)、及び24次(1/4)高調波の大きさよりも大きい。6次及び24次高調波の大きさは同一である。
【0102】
図9は、式(5)と関連して説明された磁束の高調波成分を示すグラフである。説明したように、これは、
図8及び式(2)を参照して説明された変調関数の適用の結果として、磁極片回転子220の半径方向最外面に示される磁束である。グラフのy軸は高調波の大きさである。x軸は高調波次数である。式(5)と共に、6次、9次、及び24次高調波に対するグラフにピークが表示される。また、式(5)と共に、磁束の9次の高調波次数の大きさは、6次及び24次高調波の大きさよりも大きい。磁束の24次の高調波次数の大きさは、6次の高調波次数の大きさと同一である。6次、9次及び24次の高調波次数は、それぞれ6、9、及び24極対を有する磁場に対応する。
【0103】
実質的に、磁束密度の様々な高調波構成要素の相対的な大きさは
図9に示す関係、及び式(5)で説明した関係とは異なる。これは、相対的大きさが機械200の構成要素210,230,240間のエアギャップの大きさ、永久磁石233の大きさ、永久磁石233の形状、磁極片222の大きさ、及び磁極片222の形状に依存する。24次の高調波次数のような高次高調波は、一般的に低次高調波よりも低い磁界浸透の深さ値を有しているため、様々な高調波構成要素の相対的な大きさも
図9に表示された関係と式5に説明された関係とは異なる。したがって、高次高調波は、低次高調波よりも磁束生成部材から短い距離で効率よく消滅する可能性がある。すなわち、高次高調波の大きさは、低次高調波よりもエアギャップを横切ってより急速に減少する。
【0104】
機械200は、固有のギア比(intrinsic gear ratio)を有する。固有のギア比は、内部回転子230の他方、前記磁極片回転子220及び第1巻線セット250によって設定された磁場は固定状態を維持するとき、内部回転子230、磁極片回転子220及び第1巻線セット250によって設定された磁場のうち任意の2つの間の速度比により定義される。この実施形態において、機械200の固有のギア比は、永久磁石233によって設定された磁場内の極対の数に対する磁極片222の数の比である。当業者に明白なように、この実施形態において、機械200の固有の比(intrinsic ratio)は15/9である。したがって、単の一例として、電気機械200が固有の比として動作するとき、磁極片回転子220の速度及び入力トルクがそれぞれ1000RPM及び100Nmであれば、内部回転子の速度及び出力トルク230は、1667RPM及び60Nmになる。
【0105】
他の実施形態(alternative embodiments)において、機械200は、異なる固有の比を有する。本明細書で、トルク比は、機械200に入力されるトルクと機械200から出力されるトルクとの間の比率である。本明細書で、速度比は、出力速度と入力速度との間の比率である。
【0106】
動作モード
次に
図2を参照して、電気機械200の一部の動作モードについて説明する。
【0107】
全てのモードにおいて、第1巻線セット240及び第2巻線セット250のそれぞれは各モータドライバ(図示せず)に接続されている。当業者が理解するように、モータドライバは、巻線に供給される電流の大きさ、周波数、及び形状因子(form factor)(すなわち、波形の形状)を設定するために使用される。以下の動作モードで、各ドライバは、適切な振幅と周波数で巻線セットに電流を供給するためのものである。各ドライバは、3相120度の変位電流をそれぞれの巻線セットに提供する。電流の周波数は、内部回転子230の回転速度に同期している。コントローラ(図示せず)は、ドライバに命令を提供する。各ドライバには、ドライバの各巻線セットに供給される電流の特性に対する指示が提供される。各巻線セット240、250の電流を互いに独立して制御することで、固定子210、磁極片回転子220、及び内部回転子230の間の速度比及びトルク比は、独立的に制御される。
【0108】
他の実施形態において、各ドライバは、その巻線セットにそれぞれ印加される電流の形態をさらに設定する。電流の形状は、電流が実質的に正弦波、実質的に矩形波、又は実質的に複素波になるように制御される。他の形態の電流も使用されてもよい。
【0109】
1つの動作モードで、電気機械200は、純粋な電気モータモードとして動作する。このモードでは、速度及びトルク比も変わらない。このモードは、電気機械200内の様々な磁場がどのように相互作用するかを理解しやすくするために説明される。
【0110】
このモードで、電流は、第2巻線セット250に供給される。巻線250は、9極対を有する磁場を生成する。この磁場は、固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップで生成される。したがって、この磁場の該当磁束は、基本的な9次高調波を有する。当業者が理解するように、第2巻線セット250によって生成された磁場は内部回転子230によって提供され、磁極片回転子220の半径方向最外面に示される磁場の9次高調波に固定される。
【0111】
このモードの動作方式では、第2巻線セット250における位相角及び電流の大きさは、第2巻線セット250によって生成された磁場が永久磁石233によって設定された磁場を「先に進む(lead)」ように制御される。すなわち、第2巻線セット250の電流は、第2巻線セット250によって生成された磁場が内部回転子230によって提供された磁場に先に機械の周りに回転するよう制御される。すなわち、内部回転子230によって提供された磁場は、第2巻線セット250によって生成された磁場に追いつこうと試みる。磁場間の非ゼロ位相角は、内部回転子230に伝えられるトルクを起こす。内部回転子230へのトルクの伝達で内部回転子230が第1方向に回転するようにする。その結果、動力は、9次高調波を介して固定子210と内部回転子230との間で伝えられる。本発明の一実施形態に係る第1動作モードでは、電気機械200は「電力均衡(power balance)」モードとして動作するように制御される。有利には、このモード及び実際に後述する全ての動作モードにおいて、電気機械200の構成要素間のトルク比が変化される。
【0112】
第1モードでは、電気機械200に供給された総電力がゼロになるよう速度比とトルク比は互いに対して反比例に変わる。したがって、有利なことに、機械から電力が除去されないため、機械200から除去された電力を機械的駆動トレインに復帰させるために別途の牽引モータ(traction motor)を有する必要がない。したがって、はるかに簡単化、軽量化、安価化、小型化されたパワートレインが提供される。次に、第1モードにおける電気機械200の第1動作モードについて詳細に説明する。
【0113】
第1モードでは、電流は第1巻線セット240に印加される。上述したように、第1巻線セット240の巻線パターンは6回繰り返され、このように磁場は、固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップで6極対に生成される。該当磁束は、基本的な6次高調波を有する。当業者が理解するように、第1巻線セット240によって生成された磁場は、磁極片回転子220の外周に示される変調された永久磁石磁場の6次高調波に固定及び/又は相互作用する。
【0114】
第1モードでは、機械的パワーは磁極片回転子220を介して電気機械200に入力される。磁極片回転子220は、入力軸に連結される。入力軸は、従来におけるエンジン又は他の原動機に接続されて駆動される。第1巻線セット240における電流の周波数は、それが生成している磁場が固定的に維持されるよう(すなわち、回転しないように)制御されることができる。磁極片回転子220を回転させると、9極対を有する磁極片回転子220の半径方向内側面に回転磁場が発生する。回転磁場は、磁極方222による6極対磁界の変調(第1巻線セット240によって生成)によって生成される。当業者が理解するように、永久磁石233により生成された回転磁場及び磁場は全9極対を有するため、回転磁場は、内部回転子230上の永久磁石233を回転させるように作用する。その結果、2つの磁界は互いに固定され、磁極片回転子220を介して機械200に入力される全ての損失を除いた全ての動力が内部回転子230に伝えられる。その結果、トルクは、第1巻線セットによって生成された磁場からの6極対を9極対に「変換(converting)」させる磁極片による6次及び9次高調波間の相互作用を介して内部ポーターに伝えられる。第1巻線セット240によって生成された磁場が固定されているため、内部回転子230は、一定の速度比で回転される。これは当業者に明らかなように、この場合に速度比は、機械の固有のギア比によって完全に定義される。また、内部回転子230は、一定のトルク比で回転される。以下で説明されたように、トルク比は機械の固有のギア比によって完全に定義される。
【0115】
しかし、第1巻線セット240によって生成された磁場は、第1巻線セット240内の電流の周波数を変化させることで回転させることができる。これは、電気機械200内の構成要素間の速度比が機械の固有のギア比から既知の方式により変化するようにする。しかし、トルク比は固定されたまま維持されるが、その理由は、
図1に示す磁気歯車を参照して上述したように、トルクがこのような方式により部材間で伝えられるとき、トルク比は、本質的に機械の幾何学的形状(機械の固有のギア比)によって定義される。その結果、電力は機械に出入りする。電力の流れる方向は、機械の正確な動作条件により決定される。例えば、速度比が増加すると、電力は第1巻線セット240を介して機械に流れるようになる。しかし、速度比が減少すると、電力は第1巻線セット240を介して機械から流出される。有利には、第1モードでは、第2巻線セット250に電流が印加され、同じ正の電力が第2巻線セット250を介して機械に流入又は流出される。これは、第1巻線セット240を介して機械200に出入りする電力の均衡を合わせる。電力の流れは、第2巻線セット250に電流を印加して9次高調波を介して内部回転子230に直接トルクを伝達することでバランスをとる。9次高調波を介して内部回転子230に印加されたトルクは、6次及び9次高調波間の相互作用を介して伝えられるトルクとは無関係である。その結果、機械200内の構成要素間のトルク比は、これ以上固定されない。代わりに、機械200内の構成要素間のトルク比は、機械200に供給される総電力がゼロになるよう速度比が減少して反比例して変化する。結果的に、速度比とトルク比は、機械の固有非によってこれ以上完全に定義されない。
【0116】
第2動作モードでは、他の実施形態によれば、電気機械200は、「電力ブーストモード(power boost mode)」として動作する。このモードで、内部回転子230上のトルクは、固有の比(intrinsic ratio)で発生するトルク以上に増加する。上述したように、機械200への正味電力の流れは速度比に依存する。固有の比によって定義されたよりも大きい場合、すなわち、速度比が増加するとき内部回転子230上に出力速度を与える速度比の場合、第1巻線セット240に供給される電力は正(positive)である。これは、電力がドライバから電気機械に流れているためである。内部回転子230の出力トルクを増加させるために、第2巻線セット250も正の電力の流れに動作し、内部回転子230にモータトルクを提供する。機械200に供給される総電力は、これら2種類の肯定的な寄与の和である。逆に、固有の比で生じる速度よりも低い出力速度を提供する速度比に対して、すなわち、速度比が減少するとき、第1巻線セット240は機械200からドライバに電力を復帰させる。しかし、内部回転子230のトルクを増加させるために、内部回転子230にモータトルクを提供するために第2巻線セット250は正の電力の流れとして動作する。機械200に供給された総電力は、これら2種類の競争寄与の和であり、正味で正(net positive)又は負又はゼロであってもよい。機械200に供給された総電力が正味ゼロ(net zero)であれば、機械200は前述した第1動作モードで動作する。
【0117】
つまり、電力ブーストモード(power boost mode)では、磁束の6次及び9次高調波構成要素間の相互作用を介して伝えられる機械の機械的電力出力量は、本質的に電力で補充される(正味電力機械200は、説明したように負であってもよい)。余分電力は、第2巻線セット250を介して機械200に供給される。
【0118】
第2モードにおける動作中に、トルクは、第1モードのように6次及び9次高調波間の相互作用を介して機械200の構成要素間で伝えられる。また、第1モードと同様に、構成要素間の速度比は、第1巻線セット240の周波数を変化させることによって変更される。その動作に加えて、電流は第2巻線セット250に印加される。このモードで、位相角及び第2巻線セット250への電流の大きさは、9次高調波のみを介して内部回転子230にトルクを伝達するように制御される。当業者が理解するように、位相角及び電流の大きさは、9次高調波を介して内部回転子230に伝えられるトルクの量を変化させるように制御される。その結果、6次高調波と9次高調波との間の相互作用を介して内部回転子230に伝えられたトルクは、9次高調波を介して内部回転子230に伝えられたトルクによって補充され、電力ブーストモードを提供する。
【0119】
第3動作モードでは、他の実施形態によれば、電気機械200は、「発電(power generation)」モードで動作する。これは、電力ブーストモードの逆である。この実施形態において、固定子210上の巻線を介して機械200に供給される電力量を増加させたり、機械200に供給される順電力量を減少させたりするために、トルク比が内部回転子230上のトルクを減少させるように変化する。
【0120】
このモードにおける動作中に、トルクは、第1モードのように6次及び9次高調波間の相互作用を介して機械200の構成要素の間で伝えられる。電流は第2巻線セット250に供給され、この電流は、電気機械の構成要素間の全体トルク比を減少させるように制御される。「脱落した(missing)」トルクは、第2巻線セット250を介して電気エネルギーとして機械200の外部に伝えられる。第2動作モードのように、第1巻線セット240からの電力寄与は、機械200の速度比に依存する。内部回転子230が固有の比で観察されるものよりも速く回転するような速度比であれば、正の電力が自然に第1巻線セット240に供給される。このモードで、第2巻線セット250の電流は、内部回転子230上のトルクを減少させるように配置され、電力が第2巻線セット250を介して復元される。第2巻線セット250を介して復帰した電力が第1巻線セット240に供給された電力よりも大きいとき、機械200の正味電力は負の電力発電となる。内部回転子230の速度が固有の比で観察される速度よりも遅い速度比に対して、第1巻線セット240も電力を復帰させる。第2巻線セット250の電流は、内部回転子230上のトルクを減少させるように配置されているため、電力も第2巻線セット250を介して復元される。その結果、機械200は、巻線240及び250の両方のセットから電力を発電するようになる。
【0121】
上記の説明は、理想的な無損失システムについて与えられていることに留意しなければならない。当業者は、実際に、常に電力損失があることを理解するのであろう。特に、発電モードにおける低電力条件において、電力損失は、ドライバに戻される電力よりも大きい場合もあり、結果的に、システムは電力を戻すことができない場合もある。
【0122】
第3モードにおける1つの動作方式で、磁極片回転子220における機械的動力入力は一定に維持され、内部回転子230における機械的動力出力はトルク比を減少させることによって減少される。
【0123】
第3モードにおける他の動作方式で、磁極片回転子220において機械200に入力された全ての機械的パワーは、電気エネルギーに変換される。この場合、内部回転子230に伝えられた正味トルクはゼロである。
【0124】
つまり、電気機械200の主な利点は、機械200内の構成要素間のトルク及び速度比が変化することができ、これらは互いに独立的に変わることができるということである。これは、トルクが独立的に制御可能な2つの高調波(6次及び9次)を介して内部回転子230に伝えられることができるためである。その結果、電気機械が駆動トレインの一部を形成するとき、電気機械200が車輪(wheel)のトルク要件及び速度要件の両方を満足させることができるため、第2電気機械200に対する必要性が軽減される。
【0125】
図10は、第1巻線セット240の磁気原動力の可変値に対する第2巻線セット250の磁気原動力とシステムギア比との間の関係を示すグラフを示す。磁気原動力は磁場を発生させる巻線の特性である。磁気回路の磁気原動力は、電気回路の電圧と同等に見なすことができる。それは、巻線回数(number of winding turns)と巻線電流の関数である。第1巻線セット240の所定の磁気原動力に対して、第2巻線セット250の磁気原動力を変化させることは、制御された方式によりシステムギア比を変化させるため、グラフは、第2巻線セット250の電流がシステムギア比を制御するために使用され得ることを示す。
【0126】
代替実施形態では、第1巻線セット240によって設定された磁場と永久磁石233によって設定された磁場との間の位相角は、機械に印加されたトルクの方向を変えるために変化される。
【0127】
代替実施形態では、第1巻線セット240の電流は、システムギア(速度)比を制御するために用いられる。これはまた、
図10に示されたように、これは第2巻線セット250の所定の磁気原動力に対して第1巻線セット240の磁気原動力を変化させることで、システムギア(速度)比を変化させることを示す。要するに、第1巻線セット240又は第2巻線セット250の巻線のうち1つの固定された磁気原動力の場合、他のセットの磁気原動力はシステムギア(速度)比を変更するために使用される。これは、固定された磁気原動力を有する巻線セットが固定されたトルク寄与度を提供するが、可変的な磁気原動力を有する巻線セットは可変的なトルク寄与度を提供する。したがって、システムギア(速度)比が変更される。いずれかのセットにおける磁気力の大きさは、巻線の各セットで電流の振幅を制御することによって制御される。
【0128】
本発明の開示の実施形態で他のいずれかのモードに応じて使用され得る更なる動作モードでは、第1又は第2巻線セット240,250のうち1つの電流は、永久磁石233と共に第1又は第2巻線セット240,250の磁気結合を増加(boost)及び/又は抑制(suppress)するように制御される。特に、この効果は後述されるが、第1又は第2巻線セットのうち1つの電流の位相角及び振幅を制御することによって達成される。後述するように、電流を制御することにより第1又は第2巻線240,250のうち他の1つと相互作用する永久磁石233の磁場は増加又は抑制される。電流は、また、機械200の特定部分で磁束密度を増加又は減少させたり、及び/又は機械の磁気飽和を減少又は増加させたりすることによって回路の磁気抵抗を減少又は増加させるために制御される。
【0129】
例えば、第1巻線セット240及び内部回転子230によって生成された磁場間で伝えられるトルクに影響を及ぼすために、第2巻線セット250内の電流は、永久磁石233によって生成された磁場を増加及び/又は抑制するように制御される。1つの動作モードで、第2巻線セット250における電流は、磁場と永久磁石233によって生成された磁場間の位相角が0度又は180度になるよう制御される。両方の場合において、ゼロトルクが第2巻線セット250によって生成された磁場と永久磁石233によって生成された磁場との間で伝えられる。これは、トルクが位相角のサイン(sine)に比例するためである。しかし、第2巻線セット250によって生成された磁場は、内部回転子230と磁極片回転子220との間のエアギャップ内に依然として存在する。結果的に、エアギャップ内の磁場は、第2巻線セット250によって生成された磁場と永久磁石233によって生成された磁場の和である。したがって、第1巻線セット240により生成された磁場と永久磁石233によって生成された磁場との間で伝えられる最大トルクがエアギャップ内の磁場の振幅に依存するため、エアギャップ内の磁場を増加及び/又は抑制することによって、これらの2つの磁界間で伝えられる最大トルクが増加及び/又は減少する。言い換えれば、永久磁石233によって発生した磁場を増加及び/又は抑制することにより、永久磁石233によって生成された磁場は、第2巻線セット250によって生成された磁場と永久磁石233によって生成された磁場と間の位相角が0度であるとき増加(boosting)する。永久磁石233によって生成された磁場は、第2巻線セット250によって生成された磁場と永久磁石233によって生成された磁場との間の位相角が180度であるとき抑制される。
【0130】
前述するように、逆に、第2巻線セット250及び内部回転子230によって生成された磁界間で伝えられるトルクに影響を及ぼすようにするため、第1巻線セット240の電流は、永久磁石233によって生成された磁場を増加及び/又は抑制するように制御される。これは、前述したように、磁極片回転子220と内部回転子230との間のエアギャップにおいて9極対を有する磁場を引き起こすため、第1巻線セット240(6極対を有する)によって生成された磁場は磁極片回転子220により変調される。1つの動作モードで、第1巻線セット240の電流は、この磁場と永久磁石233によって生成された磁場との間の位相角が0度又は180度になるよう制御される。場合の両方において、ゼロトルクが第1巻線セット240によって生成された磁場と永久磁石233によって生成された磁場との間で伝えられる。これは、トルクが位相角のサインに比例するためである。しかし、第1巻線セット240によって生成された磁場は、内部回転子230と磁極片回転子220との間のエアギャップ内に依然として存在する。したがって、エアギャップの合成磁場は、第1巻線セット240によって生成された磁場と永久磁石233によって生成された磁場の和である。したがって、第2巻線セット250によって生成された磁場と永久磁石233によって生成された磁場との間で伝えられる最大トルクがエアギャップ内の磁場の振幅に依存するため、エアギャップ内の磁場を増加及び/又は抑制することで、これらの2つの磁界間で伝えられる最大トルクが増加及び/又は減少される。言い換えれば、永久磁石233によって発生した磁場を増加及び/又は抑制することで、永久磁石233によって生成された磁場は、第1巻線セット240によって生成された磁場と永久磁石233によって生成された磁場と間の位相角が0度であるとき増加(boosting)される。第1巻線セット240によって生成された磁場と永久磁石233によって生成された磁場と間の位相角が180°であるとき、永久磁石233によって生成された磁場は抑制される。
【0131】
代替固定子配置(Alternative stator arrangements)
固定子210は、デュアル高調波固定子(dual harmonic stator)の一例である。デュアル高調波固定子は、2つの互いに異なる極対構成要素、又は高調波を有する磁場を設定するために適切に巻線されたものである。デュアル巻線固定子は、2つの巻線を有している。本発明の開示において、巻線は、空間的及び時間的に変わる磁場を生成するための、電気機械の固定子の周りのコイル配置(arrangement)である。空間的及び時間的に変わる磁場は、時間により制御される電流の使用によって生成される。電流は、巻線の個別セクションで等しい必要はない。電流は、巻線の個別コイルで等しい必要はない。
【0132】
一実施形態において、電気機械200の固定子210は、固定子210の固定子本体と構造的に類似の固定子本体を有する固定子に代替されるが、1つの巻線しか固定子本体の周りに配置されない。歯214の各歯は、巻線の単一コイルを保有する。動作時に、それぞれのコイルには自体の電力電子装置(power electronics)が提供される。各コイルには、個別的に制御可能な電流が適用される。固定子と磁極片回転子220との間のエアギャップで所望する磁界パターンが合成される。具体的に、各コイルに印加された電流は、その電力電子装置によって個別的に制御されて、6及び9極対構成要素を有するエアギャップ内に磁場を生成する。各コイルに印加された電流は、先に説明した方式でトルク及び速度比を変化させるように個々に制御される。
【0133】
次に、固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップに所望する磁場パターンを合成する方法について説明する。選択的に、マイクロ・プロセッサの形態を取る制御手段は、固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップで所望する磁場パターンを合成する方法を行うように配置される。まず、固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップで所望する磁場を発生させるMMFパターンが算出される。上述したように、磁気原動力(MMF)は、磁場を発生させる特定物質の特性である。本発明の開示において、固定子210上の1つ又は複数の巻線はMMFを生成する。MMF単位は、アンペアターン(AT)である。この実施形態で、固定子と磁極片回転子220との間のエアギャップでの所望する磁場パターンは、
図2に示された前述した実施形態の第1巻線セット240と第2巻線セット250によって設定されたものである。したがって、固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップで所望する磁場を発生させる全体MMFパターンを決定するため、第1巻線セット240及び第2巻線セット250それぞれのMMFパターンを算出することが適切である。
【0134】
MMFは、次の式により算出される。
【0135】
【0136】
ここでNは巻数であり、Iは回路の電流である。
【0137】
第1及び第2巻線セット240,250のそれぞれのコイルは、歯214のそれぞれの歯に既知の巻線回数を有する。したがって、式(6)を用いて、第1及び第2巻線セット240,250に対するそれぞれの巻線パターンに関する固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップ内のMMFパターンが算出される。
【0138】
第1及び第2巻線セット240,250の3相のそれぞれにおける電流を考慮しなければならない。当業者が理解するように、任意の時間に、各位相の電流値は公示されており、
図3及び
図4にそれぞれ示された巻線パターンに適用され、それぞれ第1巻線セット240及び第2巻線セット250に対するMMFパターンを算出することができる。
【0139】
電気機械200で第1巻線セット240によって設定された磁場が0度であるとき、第1巻線セット240に対する結果的なMMFパターンは
図11に示されている。
図11に示すx軸は、電気機械200の軸を中心にした角度で位置する。
図11に示すy軸は、MMFの大きさを示す。
図11は、概略360度に6回繰り返される概略的な正弦波を示す。したがって、
図11は、第1巻線セット240に対するMMFパターンの6極対特性を示す。第1巻線セット240によって設定された磁場が電気機械200で他の角度に回転すればパターンは変化するが、6極対の本質は残る。
【0140】
電気機械200で第2巻線セット250によって設定された磁場が0度であるとき、第2巻線セット250に対する合成されたMMFパターンは
図12に示されている。
図12に示すx軸は、電気機械200の周りの角度で位置する。
図12に示すy軸はMMFの大きさを示す。
図12は、360度に9回繰り返される概略的な正弦波を示す。したがって、
図12は、第2巻線セット250に対するMMFパターンの9極対特性を示す。第2巻線セット250によって設定された磁界が電気機械200で他の角度に回転すればパターンは変化するが、9極対の本質は残る。
【0141】
第1巻線セット240及び第2巻線セット250の巻線に対する正味MMFパターンは、それぞれのMMFパターンの和である。一旦合算されれば、合算されたMMFパターンは、それぞれ6次及び9次極対構成成分及び各構成成分に分解され、独立的に相互作用する。
【0142】
図13は、
図11及び
図12に関して前述した第1巻線セット240及び第2巻線セット250に対するMMFパターンを同一軸上に重ねて示す図である。x軸とy軸は、
図11及び12に示す通りである。
【0143】
図14は、
図11及び
図12に関して前述した第1巻線セット240及び第2巻線セット250に対するMMFパターンの和を示す。x軸とy軸は、
図11及び12に示す通りである。
図14は、所定の時間で固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップで所望する磁場を発生させる正味MMFパターンを示す。
図14に示されたパターンは、第1巻線セット240及び第2巻線セット250それぞれによって設定された磁場の構成成分が電気機械200で他の角度に回転するにつれて変わる。第1巻線セット240及び第2巻線セット250それぞれによって設定された磁場の構成成分は、同一方向又は互いに異なる方向に回転する。第1巻線セット240及び第2巻線セット250によって設定された磁場の構成成分の相対的な大きさは、電気機械200の動作要求に適するように変化し得る。
【0144】
固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップで所望する磁場を発生させるMMFパターンが上記で説明された方式により算出されれば、パターンの高調波成分(harmonic content)は、当業者に既知の方式で高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを用いて算出される。
図14に示されたMMFパターンの高調波成分が
図15に図示されている。予想通り、
図15は、6次及び9次高調波のピークを示す。このピークは、それぞれ6及び9極対に該当する。
【0145】
固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップで所望する磁場を発生させるMMFパターンを決定した後、それらが同一又は実質的に類似のMMFパターンを生成することができれば、代替の巻線アクセス法が採択され得る。このような代替的な巻線アクセス法の1つは、電気機械200の固定子210が固定子本体の周りに1つの巻線のみが配置されるが、固定子210の固定子本体と構造的に類似の固定子本体に代替される本実施形態の巻線方式である。歯214の各歯は、巻線の単一コイルを保有する。動作時に、各コイルには、コントローラを含むそれ自体の電源電子装置が提供される。それぞれのコントローラは、固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップで所望する磁場を発生させるMMFパターンをもたらすために、そのコイルのMMF寄与度を決定する。そのために、各コントローラは、6次及び9次高調波で要求されるMMF寄与度を決定する。それらを合計する。そして、それぞれのコイルに対応する電流レベルを制御する。
【0146】
そのために要求される算出は、
図3及び
図4に示す巻線パターンから明らかである。例えば、
図3に示された6極対巻線のスロットには「U+U+」が含まれている。したがって、コントローラは、回転子位置からU+U+に必要な位相電流を算出する。この実施形態で、第1スロットのコイルは、
図4に示された9極対の巻線の第1スロットからの「U+」をさらに含む。6極対構成要素のU+は、9極対要素のU+と関連がない。したがって、コントローラは、9極対構成要素のU+に必要な位相電流をさらに算出する。したがって、最初のスロットでコイルに供給されなければならない総電流は、6極対構成要素のU+U+に必要な電流と、9極対構成要素のU+に必要な電流とを合算して算出される。このような方式により、各コントローラは、6次及び9次高調波で要求されるMMF寄与度を決定する。それらを合算する。そして、そのそれぞれのコイルに対応する電流レベルを制御する。
【0147】
他の実施形態において、電気機械200の固定子210は、構造的に類似の固定子本体を固定子210の固定子本体に代替する固定子に代替されるが、1つの巻線しか固定子本体の周りに配置されない。動作時に、巻線に電流が印加される。前述した方式で、電流は、コントローラによって合成されて固定子と磁極片回転子220との間のエアギャップで所望する磁界パターンを生成するようにする。具体的に、印加された電流は、6極対及び9極性構成成分を全て有しているエアギャップで磁場を設定するために合成される。
【0148】
この実施形態の一例として、1つの巻線のコイルは、固定子210と磁極片回転子220との間のエアギャップで所望する磁界パターンに要求されるMMFパターンの対称性を用いるため、「位相(phases)」にグループ化される。1つの巻線のコイルは、電気機械200内の1つの巻線によって設定された磁場の全ての位置に対して、同一の要求されるMMFを有するコイルとグループ化される。この場合、巻線は18相に形成され、それぞれは電気機械200の空間で同一に変位された3つのコイルを有する。これは、3が6と9の最小公約数であるためである。固定子と磁極片回転子220との間のエアギャップで所望する磁界パターンに必要なMMFパターンの3方向対称が
図14に図示されており、これは、MMFパターンが電気機械200の軸の周りに3回繰り返すことを示す。
【0149】
代替実施形態では、任意の数の巻線が固定子の周りに配置され、多相電流を印加することができる。巻線又は巻線に印加される電流は非正弦波であるか、又は、複数の重複正弦波の曲線を含み得る。
【0150】
代替動作方法(Alternative methods of operation)
一実施形態では、トルクを伝達するために用いられる電気機械200内の磁束の2つの高調波は、第1実施形態の電気機械200で使用される高調波と異なるが、電気機械の当業者であれば理解されるように、このような変形が可能である。例えば、2次及び5次高調波を使用してもよい。当業者にわかるように、2つの高調波が機械内で互いに結合しないように選択されなければならない。
【0151】
一実施形態では、内部回転子230上の永久磁石233は、永久磁石233によって提供される磁場と実質的に同じ特性を有する磁場を生成するよう配置された巻線に代替される。電気機械、そのような変更は、当業者に理解し得る。
【0152】
一実施形態では、変調永久磁石磁場に存在する高調波及び高調波の相対的及び絶対的な大きさは、磁極片222の設計を修正することによって変形され、これは当業者に明らかであろう。
【0153】
一実施形態では、それぞれの巻線セットに関する磁束に存在する各高調波の大きさは、それぞれの巻線に利用可能なスロット216の面積量を調整することによって変化される。
【0154】
一実施形態の電気機械200は、固定子巻線内の電流を制御することによって電力を加算及び/又は減算できるCVTシステムである。電流制御は、コントローラを用いて行うことができる。
【0155】
一実施形態において、2つの3相インバータは、第1及び第2巻線セット240,250に電気的に接続される。他の実施形態において、1つのインバータは、第1及び第2巻線セット240,250の両方に電気的に接続される。
【0156】
応用(Applications)
一実施形態において、電気機械200は、風力タービンのパワートレインに用いられる。
【0157】
一実施形態において、電気機械200は、車両のパワートレインに使用され、1つ以上の補助構成要素に電力を供給する。有利には、このような構成要素は、前述した純粋な電気モードで電気機械200によって動力を供給され得る。補助構成要素は、油圧圧縮システム、空気圧縮システム、2次ポンプシステム及び/又は空調圧縮機のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0158】
一実施形態において、電気機械200は、主電源に接続され、変速ドライブとして用いられる。例えば、電気機械200は、産業機械(industrial machinery)に電力を供給するために使用される。産業機械は、ポンプ、粉砕及び/又は製粉作業のうち少なくとも1つを行うように配置された機械装置を含み得る。
【0159】
一実施形態において、電気機械200は、海洋推進パワートレイン(marine propulsion power train)に用いられる。海上運送手段が岸に近いときには、純粋な電気モードで動力の供給を受けることが環境上の理由から有利である場合が多い。上述したように、電気機械200は、純粋な電気モードで船舶用推進装置に動力を供給するために使用される。有利には、電気機械200は、また、エンジンが走行している状態でプロペラが水中に落下したとき、プロペラ上にトルクが突然導入されることに対して強い。少なくとも電気機械200が前述したモードを用いてプロペラ軸上のトルクがエンジン軸に伝えられることを回避するよう管理することができるためである。
【0160】
電力変換(power conversion)
上述したように、既知の混合型電気ハイブリッドパワートレインシステム(図示せず)は、2つの電気機械(これも図示せず)を含む。この場合、それぞれの電気機械200は、専用のインバータを備える。各インバータは、DCをACに変換する。DCは、車両のDCリンクに供給される。DCリンクは、2つのインバータに連結されて2つのインバータ間に電源が流れるようにし、2つの電気機械間に電源が流れるようにする。DCリンク電圧は、一般的に大きさが変わり得る。2つの電気機器の効率にとって潜在的に有益であるが、DCリンクの電圧変化は、DCリンクと車両のエネルギー貯蔵システムとの間にDC/DCコンバータを使用することを必要とする。電力が希望する電圧でエネルギー貯蔵システムに流入及び流出するために、そのようなDC/DCコンバータが必要である。記述された従来のシステムは、「2インバータシステム(two inverter system)」と呼ぶことができる。
【0161】
本発明の開示の実施形態において、電気機械200は、混合型電気ハイブリッドパワートレインシステムの一部である。上述したように、有利には、電気機械200が混合型電気ハイブリッドパワートレインシステムに採用されるとき、第2電気機械200をシステムから除去することができる。
【0162】
本発明の開示の実施形態において、2つのAC/DCコンバータが電気機械と共に用いられる。第1巻線セット240に電流を供給する1つのインバータと、他のインバータは、第2巻線セット250に電流を供給する。このような実施形態が
図16に図示されている。
図16は、エネルギー貯蔵システム、例えば、バッテリがDC/DCコンバータに電気的に接続される。DC/DCコンバータは、DCリンクに電気的に接続される。DCリンクは、2つのインバータに電気的に接続される。インバータのうちの1つは、第1巻線セット240のような第1巻線に電気的に接続され、インバータのうち他方の1つは、第2巻線セット250のような第2巻線に電気的に接続される。
【0163】
他の実施形態において、2つのインバータが除去され、第1及び第2巻線セット240,250は、AC/ACコンバータを介して電気的に接続される。したがって、機械間のDCリンクのための必要性がなく、DC/DCリンクは除去される。AC/ACコンバータは、マトリックスコンバータになり得る。このような実施形態が
図17に図示されている。この図は、エネルギー貯蔵システム、例えば、バッテリはAC/DCコンバータに電気的に接続される。DC/ACコンバータは、バッテリのDC電流をAC電流に変換する。AC電流は、AC/ACコンバータに供給される。AC/ACコンバータは、第1及び第2巻線セット240,250の全てに電気的に接続される。有利なことに、そのような配置はDCリンクがないため、DCリンク上の容量を柔軟にする必要性を回避することができる。より有利には、上述したように、2つのインバータが除去される。したがって、このような配置は、大きさの減少により低コストのコンバータ設計をもたらす。その結果、車両駆動トレインの重量、大きさ、コスト、及びその他の関連要素が減少し得る。
【0164】
代替実施形態において、「生産された(produced)」及び「生産する(produces)」という単語は、「設定する(set up)」及び「設定する(sets up)」という単語に代替される。
【0165】
代替実施形態において、本発明の開示で説明された実施形態は、当業者が理解されるように適切な変更を加える線形磁界機械及び/又は軸方向磁界機械のうち少なくとも1つにおいて使用される。
【0166】
明らかな技術的な不互換性なく可能であれば、本明細書に開示された他の実施形態の特徴は、更なる実施形態において組み合わされてもよく、一部の特徴は任意に省略されてもよい。