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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】殺菌消毒装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20221117BHJP
   B05B 3/02 20060101ALI20221117BHJP
   B05B 7/06 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A61L2/18
B05B3/02 H
B05B7/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020120180
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022017092
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2021-04-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302052194
【氏名又は名称】新耕産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】小野 元嗣
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-105294(JP,A)
【文献】登録実用新案第3066673(JP,U)
【文献】実開昭62-057696(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0136184(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールを含む薬液を収容した薬液容器と、2酸化炭素ガスが加圧充填されたガスボベと、前記薬液容器及びガスボンベが接続されたスプレーガンと備え、該スプレーガンの先端ノズルから噴出される前記2酸化炭素ガスの作用により前記薬液を対象空間に噴霧する殺菌消毒装置において、
前記2酸化炭素ガスの噴出量を増減し、前記薬液の噴霧量を調節する調節弁と、
前記スプレーガンが取り付けられ、該スプレーガンを前記対象空間の床面上で上下方向の軸周りに回転させる取り付け台と、
前記スプレーガンの回転方向を所定の角度毎に自動反転させる反転切換部と
を備え、
前記取り付け台は、前記スプレーガンが連結され、モータの駆動によって上下方向の軸回りに回転する回転台を有し、
前記反転切換部は、
前記回転台の上面に上下方向の軸周りに所定角度に亘って形成された溝と、
前記溝に取り外し可能に取り付けられ、前記回転台の回転に応じて移動する押し片と、
前記押し片の移動経路上に配置され、前記回転台の回転方向を正逆に切り換える切換レバーと
を有し、
前記押し片が前記切換レバーに当接した場合、前記モータの回転方向が正逆に切り換えられ、前記回転台の回転方向が反転する
殺菌消毒装置。
【請求項2】
前記調節弁は、前記ガスボンベから延びるガスホースと前記スプレーガンとの接続部に
介装してある請求項1に記載の殺菌消毒装置。
【請求項3】
前記薬液容器は、可撓性を有する薬液ホースを介して前記スプレーガンに接続してある
請求項1又は2に記載の殺菌消毒装置。
【請求項4】
前記スプレーガンは、仰角を変更可能として前記取り付け台に取り付けてある請求項1から3のいずれか一つに記載の殺菌消毒装置。
【請求項5】
タイマー設定部と、該タイマー設定部の設定に応じて開閉動作し、前記スプレーガンへの2酸化炭素ガスの給断を切り換える電磁切換弁とを更に備える請求項1から4のいずれか一つに記載の殺菌消毒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、殺菌消毒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アルコールを主成分として含む薬液を微粒子化して噴霧することにより、対象空間を殺菌消毒する殺菌消毒装置が開示されている。
【0003】
この装置は、塗装用として普及しているスプレーガンを用い、このスプレーガンに前述した薬液を収容する薬液タンクを取付け、またキャリアガスとしての2酸化炭素ガスのガスボンベを接続して構成されており、スプレーガンの先端ノズルから2酸化炭素ガスを噴射し、このとき発生する負圧の作用により薬液タンク内の薬液を吸い上げ、微粒子化して噴霧する。
【0004】
噴霧される薬液粒子は、高濃度のアルコールを主成分としており、引火、爆発の危険性を有するが、2酸化炭素ガスにより包まれて対象空間内の酸素から遮断された状態で均等に拡散するから、火気の有無に配慮せずに殺菌消毒作業を実施することができる。またアルコールは速乾性を有しており、対象空間の壁面、床面等への付着後、長く残留することがないから、拭き取りを含めた後処理の手間を削減し、対象空間の殺菌消毒作業を、高能率に、しかも良好に実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3754407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような殺菌消毒は、種々の対象空間に対して実施され、例えば、製薬会社のクリーンルーム、病院の病室等を対象とする場合、多くの薬液散布による確実な殺菌消毒処理が必要とされるのに対し、救急車の車室、食品店の厨房等を対象とする場合、後処理を含めて短時間で完了する殺菌消毒処理が必要とされる。特許文献1に開示された殺菌消毒装置は、対象空間毎に異なる要求に応えることを想定していない。
【0007】
また、特許文献1に開示された殺菌消毒装置は、対象空間内に持ち込み、スプレーガンを手に持って薬液を噴霧する態様で使用されるが、作業者は、マスク、ゴーグル等の保護具を装着する必要があり、負担が大きいという問題がある。
【0008】
本開示の目的は、対象空間毎の異なる要求に応え、種々の対象空間に良好に対応し得る殺菌消毒装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る殺菌消毒装置は、アルコールを含む薬液を収容した薬液容器と、2酸化炭素ガスが加圧充填されたガスボンベと、前記薬液容器及びガスボンベが接続されたスプレーガンと備え、該スプレーガンの先端ノズルから噴出される前記2酸化炭素ガスの作用により前記薬液を対象空間に噴霧する殺菌消毒装置において、前記2酸化炭素ガスの噴出量を増減し、前記薬液の噴霧量を調節する調節弁を備える。
【0010】
また、前記調節弁は、前記ガスボンベから延びるガスホースと前記スプレーガンとの接続部に介装してある。
【0011】
また、前記薬液容器は、可撓性を有する薬液ホースを介して前記スプレーガンに接続してある。
【0012】
また、前記スプレーガンが取り付けられ、該スプレーガンを前記対象空間の床面上で上下方向の軸周りに回転させる取り付け台を更に備える。
【0013】
また、前記スプレーガンの回転方向を所定の角度毎に自動反転させる反転切換部を備える。
【0014】
また、前記スプレーガンは、仰角を変更可能として前記取り付け台に取り付けてある。
【0015】
また、タイマー設定部と、該タイマー設定部の設定に応じて開閉動作し、前記スプレーガンへの2酸化炭素ガスの給断を切り換える電磁切換弁とを更に備える。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、対象空間毎の異なる要求に応え、種々の対象空間を夫々に適切な条件で殺菌消毒することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1に係る殺菌消毒装置の側面図である。
図2】実施の形態1に係る殺菌消毒装置の上方から見た平面図である。
図3】スプレーガンの構成を示す側面図である。
図4】調節ダイヤルの一例を示す平面図である。
図5】先端ノズルの縦断面図である。
図6】実施の形態2に係る殺菌消毒装置の全体構成を示す模式図である。
図7】回転台の構成を示す上方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づき説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る殺菌消毒装置の側面図、図2は、同じく上方から見た平面図である。
【0019】
これらの図に示す如く実施の形態1に係る殺菌消毒装置は、キャリアガスとしての2酸化炭素ガスが加圧充填されたガスボンベ1と、該ガスボンベ1の吐出口に減圧弁10及びガスホース11を介して接続されたスプレーガン2とを備えている。
【0020】
ガスボンベ1は、台車3に搭載されている。台車3は、一対の車輪30、30と支持脚31とにより、床面と略平行をなして支持される台座32を備えている。この台座32には、車輪30,30の上位置から上方に向けて把持パイプ33が立設されており、把持パイプ33の脚部間に保持箱34が設けられている。
【0021】
ガスボンベ1は、台座32の上面中央部に吐出口を上向きとして載置され、高さ方向の中途部を保持箱34に突設されたサポート35により支えて、図1に示す如く、台座32上に直立姿勢で固定されている。サポート35は、図2に示す如く、ガスボンベ1の胴部周面を3点で接触支持する凹部を備えており、ガスボンベ1は安定した姿勢を保って固定される。なお、サポート35の両側の端部間に図示しないベルトを架設し、該ベルトの締め付けによりガスボンベ1の固定をより確実に行わせるようにしてもよい。
【0022】
このように固定されたガスボンベ1の外側は、衝突物から保護するために箱形の外装カバー4により覆ってある。外装カバー4は、開閉可能であり、ガスボンベ1は、図2中に2点鎖線により示す如く外装カバー4を開放して台車3に着脱される。
【0023】
ガスボンベ1の吐出口は、外装カバー4の上方に突出し、保持箱34の一面に対向しており、開閉弁12により開閉可能である。ガスボンベ1の内部に加圧充填された2酸化炭素ガスは、開閉弁12を開操作することで吐出口から吐き出され、減圧弁10及びガスホース11を経てスプレーガン2に送給される。
【0024】
減圧弁10は、図1中に破線により示す如く保持箱34の上部に収容保持されている。減圧弁10の入側は、保持箱34の一面から突出し、ガスボンベ1の吐出口に接続されている。減圧弁10の出側は、保持箱34の他面から突出し、可撓性を有するガスホース11の一端部に接続されており、ガスホース11の他端部に、後述するスプレーガン2が接続されている。保持箱34の他面の上部には、ガンフック36が設けてあり、非使用状態にあるスプレーガン2は、図1に示す如く、ガンフック36に掛止して保管される。なお図2においては、ガスホース11及びスプレーガン2の図示を省略してある。
【0025】
減圧弁10は、入側から送り込まれる高圧のガスを所定圧に減圧して出側に送り出す作用をなす公知の弁であり、ガスボンベ1内の2酸化炭素ガスを、0.2~0.5MPa程度の一定圧力に減圧し、出側に接続されたガスホース11を経てスプレーガン2に送り出すように設定されている。保持箱34の上面には、減圧弁10の出側圧力を検出する圧力計13が、図2に示す如く、上方からの視認可能に取付けてある。
【0026】
図3は、スプレーガンの構成を示す側面図である。スプレーガン2は、銃身部20、握り部21及びトリガ22を備えている。ガスホース11は、握り部21の基端に接続されており、この接続部には調節弁5が介装されている。銃身部20の先端には、先端ノズル6が取り付けられ、銃身部20及び握り部21の内部には、図示しないガス通路が設けられており、ガスホース11から送り込まれる2酸化炭素ガスは、調節弁5を経てガス通路に流入し、トリガ22の引き操作により銃身部20の先端の先端ノズル6に送給される。
【0027】
調節弁5は、握り部21の基端に連設された筒形のバルブボディ50と、該バルブボディ50の周面に設けられた調節ダイヤル51とを備えている。調節ダイヤル51は、バルブボディ50の外側で把持して回転操作することができ、この操作によりバルブボディ50に内蔵された弁体の向きを変えて調節弁5の開度を増減し、ガス通路を経て先端ノズル6に送給される2酸化炭素ガスのガス量を調節することができる。
【0028】
図4は、調節ダイヤル51の一例を示す平面図である。図示の調節ダイヤル51は、円板状をなし、バルブボディ50と直交する軸周りに回転操作可能である。調節ダイヤル51の表面には、開度を示す数字0~3を付した目盛線52が形成され、またバルブボディ50の外周には、三角矢印形のアイマーク53が形成されており、調節弁5の開度は、アイマーク53に合わせた目盛線52の数字により外部から確認可能である。
【0029】
図4Aには、「0」の目盛線52をアイマーク53に合わせた状態が示してある。このとき調節弁5は閉となり、先端ノズル6への2酸化炭素ガスの送給は遮断される。図4Bには、「3」の目盛線52をアイマーク53に合わせた状態が示してある。このとき調節弁5は全開となり、先端ノズル6への2酸化炭素ガスの送給量は、最大量、例えば、75L/minとなる。2酸化炭素ガスの送給量は、「2」、「1」の目盛線52をアイマーク53に合わせることで順次減少し、例えば、「2」の場合に60L/min、「1」の場合に40L/minとなる。
【0030】
調節ダイヤル51は、「0」から「3」の目盛線52の間で、連続的又は段階的に回転操作可能とすることができる。また調節弁5の開度調節は、調節ダイヤル51の回転操作に限らず、ボタン操作、レバー操作等の他の操作によって行わせてもよい。
【0031】
先端ノズル6は、筒形のノズルボディ60と、ノズルボディ60の先端に固定されたノズルヘッド61とを備えている。ノズルボディ60の周面には、これと略直交する方向に延びる連絡管62が接続されており、この連絡管62の先端部に薬液容器7が取り付けられている。
【0032】
薬液容器7は、図3中に断面を示すように、ボトル形の容器本体70と、該容器本体70の開口部を周縁への螺合により封止する蓋板71と、蓋板71の中央部を内外に貫通して容器本体70の底面近傍にまで延びる吸い上げ管72とを備え、吸い上げ管72の外側端部を連絡管62の端部にカプラ73を介して接続し、先端ノズル6に着脱自在に取り付けられている。
【0033】
容器本体70の内部には、殺菌消毒用の薬液74が収容されている。薬液74は、例えば、アルコールを主成分とする液剤に水溶性の殺菌消毒剤を混合し、アルコールの濃度が65~80体積%となるように調整した組成を有する。混合される殺菌消毒剤は、殺菌対象となる菌種に応じて適宜に選択すればよい。薬液容器7は、薬液74の種類を変えて複数用意し、図1に示す如く、台車3の保持箱34に設けた保管部に保管しておき、対象となる場所又は菌種に応じて適宜に交換して用いることができる。
【0034】
図5は、先端ノズル6の縦断面図である。本図に示す如く、ノズルボディ60の基端部には、スプレーガン2を連結するための連結孔63が形成され、同じく中途部の外周面には、連絡管62を接続するための接続孔64が形成されている。接続孔64は、ノズルボディ60の軸心部に形成された薬液通路65により、また連結孔63は、薬液通路65の外側に等配をなして形成された複数のガス通路66により、ノズルボディ60の先端部に夫々連通させてある。
【0035】
ノズルヘッド61は、薬液通路65の端部にねじ込み固定された内ノズル67と、該内ノズル67の外側を囲繞する外ノズル68とを備えている。外ノズル68は、周縁に設けた鍔部を、ストッパ環69によりノズルボディ60の端面との間に挾持して固定されている。内ノズル67及び外ノズル68は、夫々の先端に向けて漏斗状に縮径された形状を有しており、内ノズル67の先端には、小径の液噴射口67aが形成され、外ノズル68の先端には、液噴射口67aとの間に環状のガス噴射口68aが形成されている。薬液通路65は、内ノズル67の内部に連通し、ガス通路66は、外ノズル68と内ノズル67との間の環状空間に連通している。
【0036】
以上の如く構成された実施の形態1に係る殺菌消毒装置は、ガスボンベ1の上端の開閉弁12を開放し、スプレーガン2の握り部21を把持して先端ノズル6の先端を対象空間内に向け、トリガ22を引き操作して使用される。これにより、ガスボンベ1の内部の2酸化炭素ガスは、減圧弁10により所定圧力に減圧された後、ガスホース11、調節弁5及びスプレーガン2を経て先端ノズル6に達し、ノズルボディ60に形成されたガス通路66を経てノズルヘッド61の外ノズル68内に導入され、該外ノズル68の先端に設けたガス噴射口68aから外部に噴射される。
【0037】
このような2酸化炭素ガスの噴射により、内ノズル67先端の液噴射口67aの周辺に負圧が発生し、内ノズル67の内部、薬液通路65、接続孔64及び連絡管62の内部が負圧となる結果、連絡管62に接続された薬液容器7の内部の薬液74は、吸い上げ管72中に吸い上げられ、接続孔64及び薬液通路65を経て内ノズル67の先端に開口する液噴射口67aに達し、微小径の粒子となって噴霧される。
【0038】
噴霧される薬液74の粒子径は、ノズルヘッド61、特に、ガス噴射口68a及び液噴射口67aの適正設計により、15~20μmに設定さる。このような粒子径で噴霧される薬液74は、対象空間の全域に広く行き渡り、緩やかに沈降しつつ漂った後、対象空間の床面、壁面等に付着し、この間に、主成分としてのアルコール、及び添加された殺菌消毒剤の作用により殺菌消毒がなされる。
【0039】
薬液74は、2酸化炭素ガスにより包まれた状態で噴霧され、主成分であるアルコールの粒子が対象空間内の酸素から遮断されるから、噴霧直後の引火の虞を回避しつつ高い殺菌消毒作用を得ることができる。また噴霧された薬液74は、速乾性を有するアルコールを主成分としており、対象空間の各部への付着後、長く残留することなく速やかに蒸発する。従って、残留水分による新たな雑菌の繁殖を引き起こす虞がなく、拭き取りを含めた後処理の手間を削減することができる。
【0040】
また噴霧される薬液74の量は、キャリアガスとしての2酸化炭素ガスの噴射量に対応する。本開示の殺菌消毒装置は、調節弁5を備えており、この調節弁5の前述した操作により、先端ノズル6への2酸化炭素ガスの送給量、即ち、先端ノズル6からの2酸化炭素ガスの噴射量を増減調節することができ、薬液74の噴霧量を変更することができる。
【0041】
前述した如く2酸化炭素ガスの噴射量を、75L/min、60L/min、40L/minとした場合、薬液74の噴霧量は、夫々、120mL/min、100mL/min、60mL/minとなり、対象空間の要求に応じて噴霧量を変更して対応することができる。例えば、確実な殺菌消毒処理が必要とされる対象空間では、薬液74の噴霧量を多くすればよく、短時間での殺菌消毒処理が必要とされる対象空間では、薬液74の噴霧量を少なくすることで後処理を含めた処理時間を短縮することができる。
【0042】
薬液74の噴霧量は、調節弁5の調節ダイヤル51の操作により簡便に調節することができる。調節弁5は、スプレーガン2の握り部21とガスホース11との接続部に設けられているから、調節ダイヤル51の操作による噴霧量の調節は、殺菌消毒の作業中に適宜に実施することができる。
【0043】
以上の如き殺菌消毒処理において、連続噴射される2酸化炭素ガスが、減圧弁10での減圧に伴う体積膨張により、ガスボンベ1の吐出口近傍において凍結を引き起こす虞があるが、この凍結までの時間は、2酸化炭素ガスの送出量を適正に定めることにより遅らせることができる。必要とされる2酸化炭素ガスの連続噴射の必要時間は、対象空間が過度に広い場合を除いて数分程度である。この程度の連続噴射は、凍結を引き起こすことなく実現することができ、ガスホース11、スプレーガン2及び先端ノズル6の最適設計により15分以上の連続噴射が可能なことが確かめられている。
【0044】
なお、前述した凍結の虞は、ガスボンベ1の外側を覆う外装カバー4を開放し、ガスボンベ1の周壁と外気との間で熱交換を行わせることで緩和されるから、特に、2酸化炭素ガスの噴射量が多い条件下での長時間の殺菌消毒作業に際しては、図2中に2点鎖線で示すように、外装カバー4を開放するのが望ましい。
【0045】
2酸化炭素ガスを加圧充填してあるガスボンベ1は、1Kg、3Kg、5Kg等、種々の内容量のものが市販されており、適宜に選択して用いることができる。例えば、5Kgの内容量を有する大型のガスボンベ1を用いた場合であっても、減圧弁10、ガスホース11、スプレーガン2、先端ノズル6を含めた装置重量は、20Kg前後に止まり、図1に示すような簡素な構成の台車3に一括して搭載し、把持パイプ33を把持して台車3を傾け、車輪30、30の転動により自在に移動させることができ、例えば、病院内の複数の病室、複数台の救急車の車内の殺菌消毒処理を、速やかに、且つ容易に実施することができる。
【0046】
(変更形態)
以上の実施の形態1において薬液容器7は、スプレーガン2に取り付けてあるが、作業者により背負って搬送されるか、又は台車3に搭載されてガスボンベ1と共に搬送される大容量の薬液容器7を用い、この薬液容器7を、可撓性を有する適長の薬液ホースを介してスプレーガン2に接続して前述した薬液噴霧を行なわせる構成としてもよい。この構成によれば、作業者は、軽量のスプレーガン2だけを手持ちすればよく、労力負担を軽減することができる。
【0047】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る殺菌消毒装置は、対象空間内の殺菌消毒を無尽で実施し得るように構成されている。図6は、実施の形態2に係る殺菌消毒装置の全体構成を示す模式図である。本図に示す殺菌消毒装置は、実施の形態1と同様、2酸化炭素ガスが加圧充填されたガスボンベ1と、ガスボンベ1から送給される2酸化炭素ガスをキャリアガスとして薬液を噴霧するスプレーガン2とを備え、更に、運転操作のための操作盤8と、スプレーガン2の取り付け台9とを備えている。
【0048】
ガスボンベ1は、実施の形態1と同様、周囲を外装カバー4で囲って台車3に搭載されており、台車3と共に適宜に移動可能である。ガスボンベ1の上端の吐出口には、減圧弁(図示せず)を介して出力ホース100の一端が接続されており、ガスボンベ1内の2酸化炭素ガスは、減圧弁での減圧を経て出力ホース100に送り出される。台車3は、実施の形態1と同様の構成を有しており、説明を省略する。
【0049】
操作盤8は、電源スイッチ80、運転切換スイッチ81及びタイマー設定部82が設けられた操作面を有しており、例えば、室内の壁面、専用の基台に前記操作面を正面に向けて設置し、商用電源に接続して用いられる。電源スイッチ80は、操作盤8の各部を商用電源に接続するためのスイッチである。運転切換スイッチ81は、手動運転、自動運転及び運転停止を選択するためのスイッチである。タイマー設定部82は、自動運転の開始時刻、運転時間、終了時刻等を設定するために設けてある。
【0050】
操作盤8の上、下面には、入側接続部83,出側接続部84が夫々突設されている。入側接続部83には、前述した出力ホース100の他端が、出側接続部84には、第1連結ホース101の一端が夫々接続されている。入側接続部83と出側接続部84とは、操作盤8の内部に設けられた電磁切換弁85に接続されており、出力ホース100内の2酸化炭素ガスは、電磁切換弁85が開となることで第1連結ホース101に送り出される。
【0051】
運転切換スイッチ81の操作により自動運転が選択された場合、電磁切換弁85は、開始時刻において開となり、運転時間の経過後に閉となる。また電磁切換弁85は、手動運転が選択された場合には開となり、運転停止が選択されている場合には閉となる。
【0052】
取り付け台9は、三脚90により高さ調節を可能として床面上に支持された駆動ボックス91を備えている。駆動ボックス91の上面には、回転台92が設けてある。回転台92は、駆動ボックス91に内蔵されたモータ(図示せず)により駆動され、上下方向の軸周りに回転する。回転台92には、支持脚93が立設されており、該支持脚93に保持体94が支持されている。保持体94は、支持脚93の上端部に横軸周りでの揺動自在に枢支されており、枢支部でのロックナット95の締め付けにより適宜の傾き角度で固定可能である。
【0053】
駆動ボックス91の側面には、入側接続部96が突設され、回転台92の側面には、出側接続部97が突設されている。入側接続部96には、前述した第1連結ホース101の他端が、出側接続部97には、第2連結ホース102の一端が夫々接続されている。入側接続部96と出側接続部97とは、駆動ボックス91内で回転台92の回転軸心を通るガス通路を介して連通しており、第1連結ホース101内の2酸化炭素ガスは、第2連結ホース102に送り出される。
【0054】
スプレーガン2は、図3に示す如く取り付けられた薬液容器7を保持体94に保持させることにより、薬液容器7を支持体として取り付け台9に取り付けられる。このように取り付けられたスプレーガン2には、第2連結ホース102の他端が接続されており、スプレーガン2は、第2連結ホース102から送り込まれる2酸化炭素ガスをキャリアガスとして薬液容器7内の薬液を前述の如く噴霧する。
【0055】
スプレーガン2を保持する保持体94は、前述の如く、適宜の傾き角度で固定することができ、スプレーガン2の仰角は、保持体94の傾き角度を変えることで変更することができる。また保持体94は、回転台92に立設された支持脚93に支持されており、スプレーガン2による薬液噴霧は、回転台92と共に回転しつつ、適宜の仰角で実施される。
【0056】
図7は、回転台92の構成を示す上方からの斜視図である。回転台92は、駆動ボックス91の上面に露出する大径部920と、該大径部920の上部に同軸をなして連設された小径部921とを備える段付き円板形の部材である。前述した出側接続部97は、小径部921の周面から径方向外向きに突設されており、小径部921の上面には、前述した支持脚93を固定するための複数のネジ孔が形成されている。
【0057】
大径部920の上面には、周縁の内側に沿って所定角度に亘る凹溝922が形成されており、この凹溝922には、形成範囲の適宜位置に押し片98が着脱自在に取り付け可能である。図7Aには、押し片98を外した状態が、図7Bには、中心角が略90°離れた位置に2つの押し片98を取り付けた状態が夫々示されている。押し片98は、凹溝922の内面と大径部920の周面とを固定ネジ99の締め付けにより挟持し、大径部920の外周から外向きに突出するように取り付けてあり、回転台92の回転に応じて駆動ボックス91の上面に沿って移動する。
【0058】
また、駆動ボックス91の上面には、押し片98の移動経路上に切換レバー910が突設されている。切換レバー910は、回転台92の回転に応じて移動する押し片98に当接して倒れ、駆動ボックス91内の切換スイッチ(図示せず)を切り換える。切換スイッチは、回転台92の駆動用モータの回転方向を正逆に切り換えるスイッチであり、回転台92の回転方向は、切換レバー910に押し片98が当接する都度反転する。
【0059】
図7Bに示す位置に押し片98が取り付けられている場合、回転台92は、略90°の角度で向きを変えて反復回転する。反復回転の角度範囲は、押し片98の取り付け位置を変えることで凹溝922の形成範囲内で適宜に設定することができる。図7Aに示す如く押し片98が取り付けられていない場合、回転台92は、一方向に連続回転する。
【0060】
以上の如く構成された殺菌消毒装置による自動運転は、取り付け台9に取り付けたスプレーガン2を対象空間に持ち込み、高さ及び仰角を調節して床面上に設置する一方、対象空間外に設置した操作盤8を操作し、タイマー設定部82に必要な設定を行ない、運転切換スイッチ81により自動運転を選択することで開始される。これにより、操作盤8内の電磁切換弁85が所定の開始時刻に開となり、ガスボンベ1内の2酸化炭素ガスが、出力ホース100、第1連結ホース101及び第2連結ホース102を経てスプレーガン2に送給され、送給された2酸化炭素ガスをキャリアガスとして前述した薬液噴霧が所定時間に亘って実行される。なおこのとき、スプレーガン2のトリガは引き操作した位置で固定しておく。
【0061】
スプレーガン2による薬液噴霧は、設定された仰角を保ち、回転台92の回転に応じて平面内での向きを変えて実施されるから、薬液を有効に拡散させ、対象空間の全域を確実に殺菌消毒することができる。なお、対象空間内での薬液の平面的な噴霧範囲は、スプレーガン2の設置位置に応じて回転台92の回転形態(反復回転、連続回転)を選択することで設定される。また、対象空間が広い場合、取り付け台9に取り付けたスプレーガン2を複数用意し、適宜に分散配置することで対応し得る。
【0062】
操作盤8の運転切換スイッチ81を操作して手動運転を選択した場合、電磁切換弁85が開となり、前述した薬液散布が連続して実施され、同様に対象空間を殺菌消毒することができる。手動運転による殺菌消毒は、運転切換スイッチ81の操作により運転停止が選択されるまで継続される。
【0063】
以上の如き実施の形態2に係る殺菌消毒装置によれば、マスク、ゴーグル等の保護具を装着した作業者を対象空間内に配置する必要がなく、作業者の労力負担を軽減することができる。
【0064】
なお、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等な意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 ガスボンベ
2 スプレーガン
5 調節弁
6 先端ノズル
7 薬液容器
8 操作盤
9 取り付け台
11 ガスホース
74 薬液
82 タイマー設定部
85 電磁切換弁
92 回転台
93 支持脚
94 保持体
95 ロックナット
98 押し片(反転切換部)
910 切換レバー(反転切換部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7