(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】異なる開始剤と共に適用されるラテックスの光加硫
(51)【国際特許分類】
C08J 3/24 20060101AFI20221117BHJP
C08L 7/02 20060101ALI20221117BHJP
C08K 5/45 20060101ALI20221117BHJP
A61L 29/04 20060101ALI20221117BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20221117BHJP
A61L 33/06 20060101ALI20221117BHJP
A41D 19/00 20060101ALI20221117BHJP
A41D 19/04 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CEQ
C08L7/02
C08K5/45
A61L29/04 110
A61L31/04 120
A61L33/06 210
A61L31/04 110
A41D19/00 A
A41D19/04 A
(21)【出願番号】P 2020536220
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 TR2018050912
(87)【国際公開番号】W WO2019132845
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-06-03
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(73)【特許権者】
【識別番号】520224133
【氏名又は名称】イルディズ テクニク ユニヴァーシテシ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】アルス,ナーギス
(72)【発明者】
【氏名】ヤチ,ユスフ
(72)【発明者】
【氏名】バティベイ,ゴヌル サーデット
(72)【発明者】
【氏名】シンコ,トゥグチェ
(72)【発明者】
【氏名】アキン,メリケ
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-180370(JP,A)
【文献】特表2015-521080(JP,A)
【文献】特表2000-509089(JP,A)
【文献】特開2002-125985(JP,A)
【文献】特開2004-018599(JP,A)
【文献】Cokbaglan, Lerzan et. al.,2-Mercaptothioxanthone as a Novel Photoinitiator for Free Radical Polymerization,Macromolecules,American Chemical Society,2003年,vol. 36, no.8,p.2649-2653
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28、99/00、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14、
A41D19/00-19/04、A61L29/04、A61L31/04、
A61L33/06、A61L31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム(NR)ラテックス材料で作られている製品の使用者において発生するアレルギー反応を防ぐために、前記製品の製造に使用される、光開始剤と共にラテックスに適用される光加硫方法であって、
A.開始剤特性を有する2-メルカプトチオキサントン(TXSH)を蒸留水に溶解することと、
B.得られた前記2-メルカプトチオキサントンの混合物をラテックスに加えることと、
C.得られた前記混合物を均質になるまで混合することと、
D.ステップcで得られた前記混合物をプレートにコーティングすることと、
E.前記プレートにコーティングされた前記混合物をUV光に曝露し、前記混合物を硬化させることと、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
光開始剤として前記2-メルカプトチオキサントンを使用する、請求項1に記載の光加硫適用方法。
【請求項3】
光加硫プロセスでは、UV-VIS照明を光源とする、請求項1に記載の光加硫適用方法。
【請求項4】
前記2-メルカプトチオキサントン:前記ラテックスの比が、0.001:1~1:1の値を有
する、請求項1~3のいずれか一項に記載の光加硫適用方法。
【請求項5】
ステップB)、C)、D)、E)が室温で実現される、請求項1~4のいずれか一項に記載の光加硫適用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の使用者において発生するアレルギー反応を防ぐために、カテーテル、包帯、または手術用制御手袋などの天然ゴム(NR)ラテックス材料で作られている製品の製造に使用されるラテックスの開始剤及びチオール-エン架橋結合特性の両方を示す単一成分を有する第2のタイプの光開始剤と共に光加硫を適用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加硫は、ポリマー鎖の三次元の結合として定義され、交差結合により物質の加硫を補助することにより、温度または光の下でゴムを互いに形成する。交差結合特性は、加硫をもたらす物質の量、活性、及び反応時間に依存する。光加硫は、チオール-エン交差結合剤及び光開始剤系による、UV光下での天然ゴムの硬化反応である。
【0003】
光加硫は、急速硬化及び反応速度の低下、室温または最小限の熱での製造など、加硫と比較した場合に、優れた特性を有する。さらに、この反応で使用される化学物質及び製品の毒性効果が低いことが重要である。
【0004】
既知の最新技術では、カテーテル、包帯、または手術制御手袋は、天然ゴム(NR)ラテックス材料で作られている。浸漬NRラテックス材料は、柔軟性、耐性、回復性などの重要な特性を有するが、1970年代に最初に使用者に発生したラテックスアレルギーの増大により、この特性の重要性が低下している。
【0005】
NRラテックス製品のアレルギーは、I型ラテックス過敏症、天然ゴムタンパク質に起因する。IV型ラテックス過敏症は、ゴム添加剤物質が原因で発生する。接触により発生するアレルギーは、鼻腔の流れ、及び目の焼け、接触への曝露24~96時間後の赤みとして観察される。
【0006】
ゴムをタイヤ形態に変換させるには、135~160℃で硫黄により加硫する必要がある。反応を加速または減速する物質、ならびに耐性及び硬度を増加させる物質、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、安価な物質は、ほとんどが、ゴムへの添加物質として加えることができる。1920年代以降、硫黄加硫プロセスにおいて、反応温度を低下させ、かつ反応時間を短縮させるための促進剤として、ジチオカルバメート及びチオ尿素が使用されている。
【0007】
現在の技術では、特に医療用手袋及び外科用手袋内に残留物として存在する促進剤が健康問題を引き起こし得るという懸念から、過酸化物による硬化または高エネルギー放射線(IR波、Γ線)のような方法による代替的交差結合プロセスの開発が試行されている。
【0008】
近年、実験室規模のUVで硬化するラテックス配合物が開発され、物理的特性の脆弱性、投資コスト及び製造コストが高いこと、ならびにアクリルモノマーの使用などの問題が発生している。別の方法であるチオールーエン-反応により、NRラテックスのUV予備加硫では、触媒を使用することなく生体適合性の外科用手袋を製造するための新しいアプローチが形成される。
【0009】
光加硫の結果として形成される配合物には、ラテックス、開始剤、チオール-エン交差結合剤及び溶媒を含む。光加硫プロセスでは、開始剤及びチオールーエン交差結合剤の使用が重要であり、開始剤がUV光と相互作用して硬化が実現する。光加硫を実現するために、2-SH及び3-SHを含む化合物がチオールーエン交差結合剤として使用される。これらの交差結合剤のほとんどは、強い臭気を有する。また、硬化を実現した結果、黄変が発生する。溶媒として有機溶媒を使用することにより、グリーンケミストリーの面で別の欠点となる。
【0010】
その結果、上記の欠点及び欠陥のために、関連する技術分野における改善が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の欠点を排除し、かつ関連する技術分野に新しい利点をもたらすための、異なる開始剤と共にラテックスの光加硫に関する。
【0012】
本発明の目的は、天然ゴム(NR)ラテックス材料で作られた製品の使用者において生じるアレルギー反応を防止するために、製品の製造において使用されるラテックスに異なる開始剤と共に光加硫を適用することである。
【0013】
本発明の目的は、光重合法により、単一成分の光開始剤を交差結合剤として使用することにより、光加硫プロセスを実現することである。
【0014】
本発明の目的は、光加硫プロセスにおいて追加の交差結合剤及び添加物質を使用しないことにより、アレルギー問題を引き起こすことのないラテックス材料から製品を得ることにある。
【0015】
本発明の目的は、溶媒として水を使用し、無臭の溶液及び無臭の合成物質を使用することにより、環境に優しいラテックスを得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を実現するために、本発明は、単一成分を有し、かつ開始剤及びチオール-エン架橋特性の両方を有する第2のタイプの光開始剤と共に光加硫を適用する方法に関する。
【0017】
以下に示す詳細な説明により、本発明の構造的及び特徴的な特性ならびにすべての利点がより明確な方法で理解されるため、この詳細な説明を考慮して評価を行うものとする。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この詳細な説明では、天然ゴム(NR)ラテックス材料で作られた製品の使用者において発生するアレルギー反応を防ぐために、この製品の製造に使用されるラテックスに光加硫を、異なる開始剤と共に適用する方法は、いかなる制限的な効果も形成することなく、主題をより理解しやすくするためにのみ実施例を参照して説明する。
【0019】
本発明は、単一成分を有する第2のタイプの光開始剤と共に光加硫を適用する方法に関し、これは開始剤及びチオール-エン交差結合剤特性の両方を有する。
【0020】
したがって、主題の方法は、以下のステップを含む:
A.2-メルカプトチオキサントンを蒸留水で溶解することと、
B.得られた2-メルカプトチオキサントン混合物をラテックスに加えることと、
C.得られた混合物を均質になるまで混合することと、
D.ステップC)で得られた混合物をプレートにコーティングすることと、
E.プレートにコーティングされた混合物をUV光に曝露し、混合物を硬化させること。
【0021】
主題の方法では、2-メルカプトチオキサントン:ラテックスの比は、0.001:1~1:1の値を有し得る。
【0022】
主題の方法では、ステップB、C、D、及びEは、室温で実現される。
【0023】
別の観点から、本発明は、本発明に準拠し、上記のステップが提供される方法によって得られるラテックス製品に関する。ラテックス製品は、ラテックス製品がアレルギーを引き起こす化合物を含まず、したがってこのラテックス製品が抗アレルギー効果を有するという点で、既知の最新技術において存在するラテックス製品とは異なる。
【0024】
本発明の別の項目は、主題の方法によって得られ、アレルギー性光開始剤を含まないラテックスが、診察用手袋、手術用手袋、粘着バンド、気管内チューブ、硬膜外カテーテル注入アダプター、コンドームなどの製品の調製に使用されることである。
【0025】
本明細書の範囲内で、「含む(COMPRISE)」という文言は、「網羅する(COVER)」ことを意味することを目的とする。
【0026】
技術的に適切な場所では、本発明の用途を組み合わせることができる。
【0027】
ここでは、特定の特性/要素を含む方法で用途が記載される。本明細書はさらに、特性/要素を含む、または特性/要素からなる他の用途を網羅する。
【0028】
特許及び用途などの技術的な参照は、参照によって本明細書に含まれる。
【0029】
ここでは、具体的かつ明らかに記載されている用途は、単独で、または1つ以上の他の用途と共に免責事項の基礎を形成し得る。
【0030】
ここで、本発明は、例示の目的のみのためであり、以下に述べる実施例を参照して説明され、いかなる方法であっても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0031】
ラテックスへの光加硫の適用方法:
-2-メルカプトチオキサントン(TXSH)に蒸留水1MLを加え、グラムを変えながら開始剤を秤量し、室温のビーカーに溶解させる。
-水に溶解した2-メルカプトチオキサントン(TXSH)を5グラムのラテックスに加える。
-得られた混合物を、マグネチックスターラーを用いて室温で2時間混合する。
-得られた配合物をガラス板にコーティングする。
-その後、ガラス板にコーティングされた配合物は、UV硬化装置によってUV光に曝露され、硬化プロセスが実現される。
【0032】
主題の方法により、加硫プロセスが実現される。
【実施例2】
【0033】
主題の方法によって得られた製品の特性の決定:
-配合物が合成された後、FTIRスペクトルを利用して、主題の方法の反応能を決定する。決められた期間、配合物を光に曝露させた結果、FTIRスペクトルが得られ、1640CM-1のピークで観察された減少が記録され、変換率の計算が行われる。
-フィルムの機械的特性は、張力-伸張装置によって室温で決定する。厚さが公知であるフィルムは、ダンベル型装置で切断される。
-張力(F)及び伸長量(L)は、デバイスを介して記録される。力の値及び張力は、式1及び式2に従って計算される。その後、力の値及び張力が計算された後、NRラテックスフィルムの張力-伸長のグラフが描画される。