(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】格子状構造形非鉄金属溶解用ルツボ
(51)【国際特許分類】
H05B 6/24 20060101AFI20221117BHJP
H05B 6/16 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H05B6/24
H05B6/16
(21)【出願番号】P 2022129287
(22)【出願日】2022-08-15
【審査請求日】2022-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592040882
【氏名又は名称】浜松ヒートテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢田 詔久
(72)【発明者】
【氏名】竹下 裕市
(72)【発明者】
【氏名】綿貫 雅敏
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-093090(JP,A)
【文献】特表2014-522474(JP,A)
【文献】特開2002-303416(JP,A)
【文献】特開2017-173033(JP,A)
【文献】特開2004-108666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/16-6/34
F27B 11/00-15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒形状の誘導加熱用非鉄金属溶解用ルツボであって、
側壁部の内部に、
縦方向に延伸し円周方向に等間隔に配設した金属製縦バーと、
前記金属製縦バーの内側または外側に設置された金属製リングと、
からなる格子状構造を備え、
前記格子状構造の両側が非鉄金属溶解用耐火物で覆われ、
誘導コイルの内部に内包させたときに、
前記格子状構造が、
誘導コイルからの高周波磁束によって誘導加熱されて、
非鉄金属溶解用ルツボが高温となることにより
非鉄金属溶解用ルツボ内部に載置された非鉄金属材料を溶解するようにしたことを特徴とする格子状構造形非鉄金属溶解用ルツボ。
【請求項2】
前記格子状構造は、
前記金属製縦バーが鉄系金属の丸棒からなり、
前記金属製リングが銅系金属の輪からなり、
前記金属製縦バーの内側または外側に、前記金属製リングが多段に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の格子状構造形非鉄金属溶解用ルツボ。
【請求項3】
前記格子状構造は、
前記縦バーが鉄系金属の丸棒からなり、
前記金属製リングが異種または同種材の鉄系金属のリングからなり、
前記金属製縦バーの外側または内側を囲うように、前記金属製リングが多段に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の格子状構造形非鉄金属溶解用ルツボ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導コイルからの高周波磁束によって誘導加熱され、
内部に載置されたアルミニウムなどの非鉄金属を溶解するようにした格子状構造形非鉄金属溶解用ルツボに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な脱炭素化社会の流れが加速しており、産業用途においては様々なアプリケーションにおいて電動化に向けた研究開発が推進されている。
それらのモノづくりを支える生産現場においても「市場・設計・製造における“人・設備・製品”と“情報”のデータを紐付け・一元化し、“理論値”と“実効値”の差異およびそのバラつきをリアルタイムに見える化する仕組み、いわゆる「スマートファクトリー」の構想が盛んに進められている。
そのような中、生産現場における鋳造工程は熱エネルギー多消費工程であり、しかもトライ&エラーや熟練者の経験値に頼る側面が強い工程である。
資源が乏しい我が国の基幹となるモノづくりにおいて、世界中の製造工場をリードし業績に貢献しながら顧客に提供する価値を高めるためには「スマートファクトリー」構築は重要な位置付けである。
また将来動向は、消費者のニーズに応える生産方法として多品種少量生産方式が注目されており、それを鋳造現場に導入して生産性を高めるためにはIoT と組み合わせた省力且つ自動化、そして導電性金属を効率よく溶解する誘導加熱式鋳造工程の構築が重要となる(非特許文献1参照)。
【0003】
また、低圧鋳造工程の電動化を目指して、高性能な電磁ポンプ式融解アルミ揚程装置の研究開発も進められている(非特許文献2参照)。
【0004】
一方、アルミインゴットを誘導加熱により融解する誘導加熱(IH)コイルシステムは様々な機関で研究開発されており、今日広く市場投入されている。
鋳造工程におけるアルミニウム溶解用IH コイルは、非導電性セラミックルツボを用いたアルミニウム直接誘導加熱タイプと、導電性金属ルツボを用いたアルミニウム間接誘導加熱タイプに分類される。
前者は、アルミインゴットにIH コイルによる高周波磁束が鎖交することでアルミニウム自体が誘導加熱される方式である。
後者は、鋳鉄ルツボにIH コイルによる高周波磁束が鎖交することでルツボ自体が誘導加熱され、アルミニウム材料は鋳鉄ルツボからの熱伝導によって間接誘導加熱される方式である。
IH コイルの磁気回路においても、コイル外周部にヨークを備えるタイプとヨークレスのタイプに分類される。
今日、アルミニウム溶解工程においては、鋳鉄ルツボによる間接誘導加熱方式が広く研究開発されている(非特許文献3参照)。
【0005】
一方、鋳鉄ルツボは溶融アルミニウムへ鉄の成分が溶出してしまうため、アルミニウムダイカスト製品の製造品質が低下するという問題がある。
その対策として、鋳鉄ルツボの内表面にアルミニウム溶損に強い特殊被膜を形成する技術や、高耐熱特殊コーティング処理技術が用いられている(非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】熊野希一・松浦佑介・漆谷勇人:「アルミダイカストハイブリッド溶解炉の開発」、JTEKT Engineering Journal No. 1015、pp. 63-67 (2017).
【文献】青山真大・小堀幸伸・西村浩:「アルミニウム自動注湯用電磁ポンプの高出力化とパイプ揚程代替実験による実機検証」、電気学会論文誌D、Vol. 141、No.11、pp. 865-878 (2021).
【文献】田中和士:「IH 式アルミ溶解保持炉の開発」、中部電力技術開発ニュース、No. 143、pp. 7-8 (2011-7).
【文献】古川キャステック(株) アルミ溶湯耐溶損材トケナイト紹介HP http://www.furukawacastec.co.jp/tokenaito/index.html (2022 年6 月1 日アクセス)
【文献】M. Aoyama、W. Thimm、M. Knoch and L. Ose、"Proposal and Challenge of Halbach Array Type Induction Coil for Cooktop Applications、" in IEEE Open Journal of Industry Applications、vol. 2、pp. 168-177、2021、doi: 10.1109/OJIA.2021.3092972.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、鋳鉄ルツボの内表面にアルミニウム溶損に強い特殊被膜を形成する技術は熱サイクル疲労による歪みや熱膨張率の違いにより被膜に亀裂が発生する。
そのうえ生産現場では特殊被膜等を形成できる熟練作業者が、高齢化により不在になり皮膜形成自体が困難である。
本発明の目的は、上記の課題に鑑みて、誘導加熱による磁束を通しやすい金属材料で骨組み(格子状構造)を形成し、その周りに不定形耐火物を施工してルツボを成形する新しい格子状構造形非鉄金属溶解用ルツボを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の格子状構造形非鉄金属溶解用ルツボ(ルツボという場合がある)は、下記の特徴を有する。
(1)有底円筒形状の誘導加熱用非鉄金属溶解用ルツボであって、
有底円筒形状の誘導加熱用非鉄金属溶解用ルツボであって、
側壁部の内部に、
縦方向に延伸し円周方向に等間隔に配設した金属製縦バーと、
前記金属製縦バーの内側または外側に設置された金属製リングと、
からなる格子状構造を備え、
前記格子状構造の両側が非鉄金属溶解用耐火物で覆われ、
誘導コイルの内部に内包させたときに、
前記格子状構造が、
誘導コイルからの高周波磁束によって誘導加熱されて、
非鉄金属溶解用ルツボが高温となることにより
非鉄金属溶解用ルツボ内部に載置された非鉄金属材料を溶解するようにしたことを特徴とする格子状構造形非鉄金属溶解用ルツボ。
(2)前記格子状構造は、
前記金属製縦バーが鉄系金属の丸棒からなり、
前記金属製リングが銅系金属の輪からなり、
前記金属製縦バーの内側または外側に、前記金属製リングが多段に配置されたことを特徴とする。
(3)前記格子状構造は、
前記縦バーが鉄系金属の丸棒からなり、
前記金属製リングが異種または同種材の鉄系金属のリングからなり、
前記金属製縦バーの外側または内側を囲うように、前記金属製リングが多段に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の格子状構造形非鉄金属溶解用ルツボは、誘導加熱用非鉄金属溶解用ルツボであって、金属材料で骨組み(格子状構造)を形成し、その周りに非鉄金属溶解用不定形耐火物を施工して成形したものであるので、熱サイクル疲労による歪みや亀裂がない。
すなわち、側壁部の内部に、縦方向に延伸し円周方向に等間隔に配設した金属製縦バーと、
前記金属製縦バーの内側または外側に設置された金属製リングと、
からなる格子状構造を備え、
前記格子状構造の両側が非鉄金属溶解用不定形耐火物で覆われ、
誘導コイルの内部に内包させたときに、
前記格子状構造が、
誘導コイルからの高周波磁束によって誘導加熱され、ルツボ全体が高温になることにより内部に載置されたアルミニウム材料などの非鉄金属材料を溶解することができる。
また、消費者のニーズに応える生産方法としての多品種少量生産方式や、
鋳造現場に導入して生産性を高めるためのIoT と組み合わせた省力且つ自動化、等に適合している。
更には鋳造現場において熟練作業者不足による特殊被膜等を形成できない事態にも対応することができる。
また、アルミニウム溶湯へ鉄分が溶出することもなく、アルミニウムダイカスト製品の鋳造品質が低下することもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】Fig. 1.はMeasured resistance values with or without crucible.についての説明である。
【
図2】Fig. 2.はEstimated efficiency from resistance についての説明である。
【
図3】Fig. 3.はMeasured resistance values with or without crucible or Al.についての説明である。
【
図4】Fig. 4. はResistance values of “Outer iron bars & Inner copper rings”.についての説明である。
【
図5】Fig. 5 は、「外側鉄バー・内側銅リング」タイプ(実施例1)の格子状構造形ルツボを製造する様子である。
【
図6】Fig. 6(a)は実施例1のルツボの外観である。Fig. 6(b)は、Proposed crucible with IH-coil の説明である。
【
図7】Fig. 7 はMeasured values of prototype. についての説明である。
【
図8】Fig. 8 はImpedance with series connected capacitors について説明である。
【
図9】実施例1のルツボにおいて、直列結線したときのインピーダンス特性についての説明である。
【
図10】Fig. 10. はemperature measurement points. についての説明である。
【
図11】Fig. 11.はMeasured Applied voltage and load current waveforms. についての説明である。
【
図12】Fig. 12.はTemperature transition of each measured temperature points. についての説明する。
【
図13】Fig. 13. はThermographic temperature distribution. についての説明である。
【
図14】fig.14 は、実施例1のルツボの(a)上面図、(b)正面図である。
【
図15】fig.15 は、実施例1のルツボをIHコイルの内部に設置した(a)上面図、(b)正面図である。
【
図16】fig.16 は、実施例2のルツボをIHコイルの内部に設置した(a)上面図、(b)正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のルツボについて説明する
本発明のルツボは、有底円筒形状の誘導加熱に使用する非鉄金属溶解用ルツボであって、
側壁部に格子状構造(メッシュ型の骨組みという場合がある)が配置された格子状構造形非鉄金属溶解用ルツボである。
【0012】
fig.14 は、実施例1のルツボの(a)上面図、(b)正面図である。
fig.15 は、実施例1のルツボをIHコイルの内部に設置した(a)上面図、(b)正面図である。
fig.16 は、実施例2のルツボをIHコイルの内部に設置した(a)上面図、(b)正面図である。
なお、本明細書中において、図面の表記を「Fig」と表現する。
【0013】
本発明の格子状構造形ルツボ10は、間接誘導加熱方式に分類される。
すなわち、誘導コイル30(IH コイルという場合がある)からの高周波磁束が、ルツボの格子状構造に鎖交して格子状構造20を形成する金属材料を誘導加熱し、その発熱を伝熱させることで、ルツボ中に載置されたアルミニウム材料などの非鉄金属材料を加熱する仕組みである。
このようなルツボにおいて誘導加熱効率を向上させるためには、格子状構造20の材質としてIH コイル30との高磁気結合および高発熱の両方が求められる。
【0014】
本発明の実施例として、格子状構造20を、
「外側鉄系金属バー・内側銅系金属リング」タイプとしたルツボ(実施例1)と、
「外側鉄系金属リング・内側鉄系金属バー」タイプとしたルツボ(実施例2)を試作した。
格子状構造20は、縦バー21として、縦方向に延伸させた鉄系金属の棒材(鉄バーという場合がある)を円周方向に等間隔に16本設置した。
縦バー21には、φ 3 のSS400 磨き鉄製丸棒を用いた。
リング22として、銅または鉄製のリングを、前記縦バーの内側または外側に、ルツボ高さ方向に等間隔に7段(7リング)設置した。
銅系リングとしては、φ 3 のC1100 タフピッチ銅丸棒をリング加工したものを用いた。
本発明のルツボ製造は、まず、ルツボの側壁部となる位置に格子状構造を配置し、その周りに鋳造用石膏(ノリタケG-2)を型枠内に流し込んで有底円筒形状のルツボとする。
【0015】
つぎに、Fig. 1.のMeasured resistance values with or without crucible.について説明する。
上記ルツボを、LCR メータを用いてIH コイルとの磁気結合性能を評価したものである。
Fig. 1.は、実施例のルツボの評価であり、LCR メータ(型式:ZM2376)を用いた抵抗値測定結果である。
Fig. 1 において、”Without Work”はIH コイル単体での抵抗値であり、“Work”はルツボを指している。
【0016】
つぎに、Fig. 2.のEstimated efficiency from resistance について説明する。
Fig.2 においては、下記の(1)式から、誘導加熱効率簡易推定値η est を推定した。
【0017】
(1)式・・・[化1]とする。
【化1】
(1)式において、
R without はコイル単体の抵抗値、
R with はIH コイル内にルツボを内包させた時の抵抗値、である。
なお、(1)式については、非特許文献5に説明がある。
【0018】
前述の(1)式の結果を踏まえ、有底円筒形状11の誘導加熱用非鉄金属溶解用ルツボ10において、側壁部12の内部に、縦方向に延伸し円周方向に等間隔に配設した金属製縦バー21と、前記縦バー21の内側または外側に設置された金属製リング22と、からなる格子状構造20を備え、
前記格子状構造20の両側が非鉄金属溶解用不定形耐火物13で覆われ、
誘導コイル30の内部に内包させたときに、前記格子状構造20が、誘導コイル30からの高周波磁束によって誘導加熱され、内部に載置されたアルミニウムなどの非鉄金属材料を溶解するようにした。
そして、実施例1として、前記格子状構造20として、前記金属製縦バー21が鉄系金属の丸棒からなり、前記金属製リング22が銅系金属のリングからなり、前記金属製縦バー21の内側に、前記金属製リング22が多段に配置したルツボ10を試作した。
また、実施例2として、前記格子状構造20として、前記金属製縦バー21が鉄製の丸棒からなり、前記金属製リング22が鉄製の輪からなり、前記金属製縦バー21の外側を囲うように、前記金属製リング22が多段に配置したルツボ10を試作した。
【0019】
Fig. 2 から「外側鉄バー・内側銅リング」タイプ(実施例1)のほうがIH コイルとフレームワーク間の磁気結合が高いことが確認できる。
鉄系金属バーが外側にあったほうがIH コイルとの磁気結合が強くなり、加熱効率(推定値)が高くなる結果であった。
【0020】
つぎに、Fig. 3.のMeasured resistance values with or without crucible or Al.について説明する。
Fig. 3 は、上記、実施例1及び実施例2のルツボについて、LCR メータを用いて抵抗値を測定した結果である。
Fig. 3(a)に、「外側鉄リング・内側鉄バー」(Outer iron rings and Inner iron bars)の結果を示す(実施例2)。
Fig. 3(b)に、「外側鉄バー・内側銅リング」(Outer iron bars and Inner copper rings)(実施例1)の結果を示す。
Fig. 3 において、ルツボ内に内挿するアルミニウム材料の影響も検討し、図中の”Al-block”はルツボ内に内挿する円柱形アルミブロックを指している。
【0021】
Fig. 3 に示すように、「外側鉄リング・内側鉄バー」タイプ(実施例2)は、ルツボ内に”Al-block”を内挿すると高周波側で抵抗値が下がる。
これは漏れ磁束が生じやすい構造となっており、”Al-block”とも磁気結合していることを意味している。
一方、「外側鉄バー・内側銅リング」タイプ(実施例1)は、”Al-block”との磁気結合は確認されず、漏れ磁束が実施例2のルツボよりも少ないことがわかる。
【0022】
Fig. 3 (a)、(b)に示した結果から、前記(1)式の考えで簡易効率予測すると、Fig.3(b)の「外側鉄バー・内側銅リング」タイプ(実施例1)のほうが誘導加熱効率が高いことがわかる。
格子状形構造に求められる「高磁気結合および高発熱」の観点から、銅は鉄よりも熱伝導率が約5 倍高いため、「外側鉄バー・内側銅リング」タイプ(実施例1)が好ましい。
【0023】
つぎに、Fig. 4. Resistance values of “Outer iron bars & Inner copper rings”.について説明する。
Fig. 4 は、「外側鉄バー・内側銅リング」タイプ(実施例1)のルツボにおいて、外側鉄バーの本数を変更したときに抵抗値がどのように変化していくのかをLCR メータを用いて評価した結果である。
評価の方法としては、円周上に等間隔で、φ 3 のss400 丸鉄棒を16 本等間隔配置している初期状態から、間引きする形で外側鉄バーの本数を減らしていった。
この様子を、Fig. 4 (a)の(a) Model with adjusted number of iron bars の写真に示す。
評価結果をFig.4 (b)、(c)に示す。
Fig.4 (b)のMeasured resistance values with Al-block は、ルツボに”Al-block“を内挿した結果であり、
Fig.4 (c)Measured resistance values without Al-block は、”Al block”を内挿しない結果である。
Fig.4 (b)およびFig.4 (c)の結果から、IH コイルと”Al-block“間の距離が広く磁気結合が弱くなると、外側鉄バー本数が磁気結合に対して大きく影響することが確認できた。
【0024】
つぎに、実施例のルツボを用いた誘導加熱実験について説明する。
Fig.5 に、「外側鉄バー・内側銅リング」タイプ(実施例1)格子状構造形ルツボを製造する様子を示す。
Fig. 5. のPrototyping process.に示すように、縦方向に、外側鉄バーを配置し(実施例1ではφ 3 のSS400 を16本を等間隔に配置)、
この外側鉄バーの内側に、φ 3 のC1100 銅リングを多段に配置して(実施例1ではφ 3のC1100 タフピッチ銅リングを等間隔で7段配置)、格子状構造を骨組み形成し、ルツボ形成用の型枠内に設置した。
つぎに、この型枠内に設置された格子状構造の周囲に鋳造用石膏(ノリタケG-2)を流し込んで、実施例1の有底円筒形状の格子状構造形ルツボ(単に、ルツボという場合がある)を完成させた。
【0025】
Fig. 6(a) Prototype に、実施例1のルツボの外観を示す。
内径φ 36、外径φ 65 、高さ110 mm とした。
Fig. 6(b)に、Proposed crucible with IH-coil を示す。
なお、実験に用いたIH コイルは、角形中空高密度巻であり、8 × 6 1t 角パイプを8 ターン巻とした。
そして内部水冷可能な仕様とした。
【0026】
つぎに、Fig. 7 に、Measured values of prototype. について説明する。
Fig. 7 において、実施例1のルツボにおける、LCR メータで測定した抵抗値とインダクタンスを示す。
Fig. 7 (a)は(a) Resistance であり、Fig. 7 (b)は(b) Inductance である。
Fig. 7 (a)とFig. 3 (b)を比較すると、当初想定通りの特性と判断できる。
【0027】
つぎに、Fig. 8 のImpedance with series connected capacitors について説明する。
Fig. 8 においては、コンデンサ直列結線数変更による共振周波数変更を示し、コンデンサ直列結線数を2個または3個にしたときのインピーダンス測定結果を示す。
【0028】
つぎに、実施例1のルツボにおいて、EPCOS 社製フィルムコンデンサ(500 μ F ± 5%、耐圧250 Vrms)を用いて直列結線したときのインピーダンス特性について説明する。
インピーダンス特性の実験は、Fig.9 のExperimental setup. のように結線し、コンデンサ500 μ F を用いて行った。
この実験ではFig. 9 に示すようにハーフブリッジインバータを用いた。
【0029】
つぎに、Fig. 10. Temperature measurement points. について説明する。
Fig. 10. に示すように、各箇所の温度計測点を示す。
溶解対象となるアルミブロックには、その上面から11 mm の深さの位置に熱電対を埋包
させている。
【0030】
つぎに、Fig.11. Measured Applied voltage and load current waveforms. について説明する。
Fig.11 の誘導加熱実験では、駆動条件を、
(a)Fc = 3kHz、E = 6 Vdc、Duty = 0.5
(b)Fc = 5kHz、E = 10 Vdc、Duty = 0.5
(c)Fc = 10kHz、E = 20 Vdc、Duty = 0.5 とした。
なお、IH coil は水冷可能な仕様であるが、今回の実験では自然空冷とした。
【0031】
つぎに、Fig.12.のTemperature transition of each measured temperature points. について説明する。
Fig.12 は、Fig.11に示す上記の駆動条件で、各箇所の温度を測定した結果である。
Fig.12. に示すように、いずれの駆動条件においても、実施例1のルツボの温度上昇とアルミブロックの温度上昇を確認できた。
Fig. 12 の誘導加熱実験では、駆動条件を、
(a)Fc = 3kHz、E = 6 Vdc、Duty = 0.5
(b)Fc = 5kHz、E = 10 Vdc、Duty = 0.5
(c)Fc = 10kHz、E = 20 Vdc、Duty = 0.5 とした。
【0032】
つぎに、Fig. 13. のThermographic temperature distribution. について説明する。
Fig. 13 に、サーモグラフィカメラによる温度分布を計測した結果を示す。
Fig. 13 からも実施例1のルツボの発熱を確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、非鉄金属溶解用IH コイルシステムにおいて、鋳鉄ルツボの熱サイクル疲労や溶融アルミニウムへの鉄分溶出の課題を解決するために、格子状構造形ルツボを提案するものである。
すなわち、格子構造材質や格子形状の検討を行ない、IH コイルとの高磁気結合および高発熱の両立を実現することができる。
また、併せて、小型試作機を製作し、ハーフブリッジインバータを用いて誘導加熱の基礎実験も行ない、提案するルツボにおいて鋳鉄ルツボと同様にルツボからの熱伝導によって
間接誘導加熱できる。
以上のことから、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0034】
10:格子状構造形非鉄金属溶解用ルツボ
11:有底円筒形状
12:側壁部
13:耐火物
20:格子状構造
21:縦バー
22:リング
30:誘導コイル
【要約】 (修正有)
【課題】誘導加熱による磁束を通しやすい金属材料で格子状構造を形成し、その周りに不定形耐火物を施工してルツボを成形する新しい非鉄金属溶解用ルツボを提案する。
【解決手段】有底円筒形状11の誘導加熱用非鉄金属溶解用ルツボ10であって、側壁部12の内部に、縦方向に延伸し円周方向に等間隔に配設した金属製縦バー21と、前記金属製縦バーの内側または外側に設置された金属製リング22と、からなる格子状構造20を備え、前記格子状構造の両側が非鉄金属溶解用耐火物13で覆われ、誘導コイル30の内部に内包させたときに、前記格子状構造が、誘導コイルからの高周波磁束によって誘導加熱されて、非鉄金属溶解用ルツボが高温となることにより、非鉄金属溶解用ルツボ内部に載置された非鉄金属材料を溶解するようにした。
【選択図】
図15