(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】実装ヘッド
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
(21)【出願番号】P 2022505658
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2020049184
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 眞介
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0256090(US,A1)
【文献】特開2000-216140(JP,A)
【文献】特開2016-149567(JP,A)
【文献】特開平10-275833(JP,A)
【文献】特開2020-025141(JP,A)
【文献】特開平06-268030(JP,A)
【文献】特開2016-122726(JP,A)
【文献】特開2008-294146(JP,A)
【文献】特開2012-199358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップを接合対象にボンディングする実装ヘッドであって、
底面が前記チップを吸引保持する吸着面として機能する実装ツールと、
前記実装ツールの前記吸着面とは反対側の面に配置され、前記実装ツールを加熱するヒータと、
前記ヒータに設定された複数の冷却エリアそれぞれに冷媒を導くとともに互いに独立した複数の冷却流路を有し、前記複数の冷却エリアを互いに独立して冷却可能な冷却機構と、
前記ヒータおよび前記冷却機構の駆動を制御するコントローラと、
を備え
、
前記ヒータは、前記吸着面と同形のセラミックスの内部に発熱抵抗体を埋め込んだ単一のセラミックヒータであり、
前記コントローラは、前記ヒータの加熱時に、
度分布が均一になるように、複数の前記冷却流路に流す前記冷媒の流量を互いに独立して制御する、
ことを特徴とする実装ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の実装ヘッドであって、
前記コントローラは、予め、温度分布と、前記ヒータの駆動条件と、複数の前記冷却流路に流す前記冷媒の流量と、との関係を記録した条件データを記憶しており、前記条件データに基づいて、前記ヒータおよび前記冷却機構の駆動を制御する、ことを特徴とする実装ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の実装ヘッドであって、
前記冷却流路の流路断面積は、前記ヒータに近づくにつれて段階的に大きくなる、ことを特徴とする実装ヘッド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の実装ヘッドであって、
前記コントローラは、前記チップの加熱処理、および、前記加熱処理の後に行われる前記チップの冷却処理の両方において、複数の前記冷却流路に前記冷媒を流させる、ことを特徴とする実装ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、チップを基板にボンディングする実装ヘッドを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、チップと基板、または、チップとチップとの接合方法として、半田材やAuバンプ等の接合部材を用いて両者を接合する方法が一般的に行われている。これらの接合方法では、チップの底面には、導電金属からなる接合部材が形成されており、この接合部材を、接合対象である基板または他のチップの電極に付着させた状態で、接合部材を溶融・凝固させて配線部の接続を行っている。かかる接合を行うために、実装ヘッドは、保持したチップを加熱しつつ、接合対象に加圧し、接合部材を溶融させる。
【0003】
そのため、実装ヘッドには、チップのサイズなどを考慮して、所望の性能のヒータが設けられている。チップは、素早く加熱、冷却する必要があるので、一般的には、セラミックヒータなどのような熱容量が小さく、かつ高い熱応答性のあるヒータが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、チップは、極力、均一に加熱されることが求められる。しかし、実装ヘッドに搭載されるセラミックヒータ等のヒータは、その表面温度を完全に均一にすることは難しく、領域によって温度がバラついていた。その結果、チップを均一に加熱できないという問題があった。
【0006】
また、チップの種類によっては、チップ内の領域によって加熱温度を変えたい場合もある。例えば、耐熱温度が低い保護部分を有するチップの場合、当該保護部分のみ、加熱温度を低く抑え、その他の部分は、加熱温度を高く保ちたい。しかし、一つのチップを、一つのヒータで加熱する構成の場合、所望の部分だけ加熱温度を低く抑えることはできなかった。
【0007】
そこで、複数のヒータを設けることも考えられる。かかる構成とすることで、チップの表面温度を部分的に制御することができ、所望の温度分布が得られる。しかし、ヒータを複数設けた場合、リード線等の増加に伴う設置スペースの増加という別の問題を招く。また、ヒータの回路数が増えるほど、過熱等を防止するための安全機構も煩雑化する。
【0008】
ここで、特許文献1には、ヒータと、チップを保持するコレットと、を有し、コレットとチップとの接触密度を粗密に分布させている加熱ヘッドが開示されている。かかる技術によれば、加熱ヘッドからチップへ伝達される熱容量に分布が発生する。したがって、接触密度の分布を調整することで、チップの表面温度の分布を調整できる。
【0009】
しかし、特許文献1では、所望の温度分布を得るため、コレットの機械的構成を変更している。そのため、必要な温度分布が変わる度に、コレットを機械的に変更させる必要があり、汎用性に乏しかった。
【0010】
そこで、本明細書では、チップを所望の温度分布で、より簡易に加熱できる実装ヘッドを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で開示する実装ヘッドは、チップを接合対象にボンディングする実装ヘッドであって、底面が前記チップを吸引保持する吸着面として機能する実装ツールと、前記実装ツールの前記吸着面とは反対側の面に配置され、前記実装ツールを加熱するヒータと、前記ヒータに設定された複数の冷却エリアそれぞれに冷媒を導くとともに互いに独立した複数の冷却流路を有し、前記複数の冷却エリアを互いに独立して冷却可能な冷却機構と、前記ヒータおよび前記冷却機構の駆動を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記ヒータの加熱時に、所望の温度分布が得られるように、複数の前記冷却流路に流す前記冷媒の流量を互いに独立して制御する、ことを特徴とする。
【0012】
この場合、前記コントローラは、予め、温度分布と、前記ヒータの駆動条件と、複数の前記冷却流路に流す前記冷媒の流量と、との関係を記録した条件データを記憶しており、前記条件データに基づいて、前記ヒータおよび前記冷却機構の駆動を制御してもよい。
【0013】
また、前記冷却流路の流路断面積は、前記ヒータに近づくにつれて段階的に大きくしてもよい。
【0014】
また、前記コントローラは、前記チップの加熱処理、および、前記加熱処理の後に行われる前記チップの冷却処理の両方において、複数の前記冷却流路に前記冷媒を流させてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本明細書で開示する実装ヘッドによれば、ヒータの温度分布を冷媒で調整できるため、チップを所望の温度分布で、より簡易に加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】実装ヘッドに組み込まれた保持ブロックの底面図である。
【
図4】ヒータの温度分布を均等にしたい場合の温度調整の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実装ヘッド10の構成について説明する。
図1は、実装ヘッド10の構成を示すブロック図である。また、
図2は、実装ヘッド10に組み込まれた保持ブロック16の底面図である。さらに、
図3Aは、
図2のA-A断面図であり、
図3Bは、
図2のB-B断面図である。なお、以下では、実装ヘッド10の軸方向を「Z方向」と呼び、Z方向と直交する方向を「X方向」、Z方向およびX方向の双方に直交する方向を「Y方向」と呼ぶ。
【0018】
この実装ヘッド10は、チップ(図示せず)を、基板または他のチップである接合対象(図示せず)に接合するボンディング処理に用いられる。チップの底面には、導電金属からなるバンプが突出形成されている。バンプは、接合対象の電極に、接合される接合部材である。チップを接合対象に接合する際には、このバンプを、接合対象の電極に溶着する。
【0019】
具体的には、実装ヘッド10は、チップを吸引保持した状態で、接合対象に対して水平方向および鉛直方向に相対移動し、チップを搬送する。実装ヘッドは、チップのバンプを接合対象の電極に押し付けるとともに、当該チップを加熱し、バンプを溶融させる。そして、バンプの溶融後、チップを冷却し、バンプを凝固させれば、チップの接合対象への溶着は、完了となる。
【0020】
こうした実装ヘッド10は、
図1に示すように、実装ツール12と、ヒータ14と、保持ブロック16と、本体18と、が軸方向に積層配置されて構成される。実装ツール12は、その底面が、チップを吸引保持する吸着面12aとして機能する。この実装ツール12の吸着面12aには、チップを吸引保持するための吸引凹部23が形成されている。吸引凹部23は、吸引孔22介して、真空源24に接続されている。そして、真空源24は、必要に応じて、吸引凹部23に吸引力を発生させる。
【0021】
ヒータ14は、実装ツール12の吸着面12aと反対側の面、すなわち、実装ツール12の上面に配置される。このヒータ14は、実装ツール12、ひいては、チップを加熱する。ヒータ14の構成は、特に限定されない。ただし、ヒータ14は、チップを素早く加熱、冷却するため、熱容量が小さく、かつ、高い熱応答性のあるものが望ましい。本例では、ヒータ14として、窒化アルミニウム等のセラミックスの内部に、白金又はタングステン等により構成された発熱抵抗体を埋め込んだセラミックヒータを採用している。このヒータ14は、四角い板状部材である。駆動ドライバ26は、必要に応じて、ヒータ14に電流を印加し、ヒータ14を発熱させる。
【0022】
ヒータ14の上面には、さらに、当該ヒータ14を保持する保持ブロック16が設けられている。保持ブロック16は、実装ヘッド10の本体18と、ヒータ14との間に介在するブロック状部材である。この保持ブロック16は、断熱性を有する材料、例えば、セラミックス等で構成され、ヒータ14から本体18への伝熱を阻害する断熱層としても機能する。
【0023】
実装ヘッド10には、さらに、ヒータ14を冷却する冷却機構35が、設けられている。この冷却機構35は、ヒータ14に設定された複数の冷却エリアE1,E2を互いに独立して冷却できる。すなわち、本例では、ヒータ14を、X方向中心線を境界として二つの冷却エリア、すなわち、第一冷却エリアE1および第二冷却エリアE2に区分けし、この二つの冷却エリアE1,E2を互いに独立して冷却する。なお、以下では、第一冷却エリアE1と第二冷却エリアE2とを区別しない場合は、添え字a,bを省略して、単に「冷却エリアE」と呼ぶ。他部材でも同じである。
【0024】
こうした冷却を可能にするために、冷却機構35は、二つの冷却流路28a,28bを有する。二つの冷却流路28a,28bは、互いに独立しており、二つ冷却流路28a,28bは、連通していない。各冷却流路28は、保持ブロック16および本体18に形成された1以上の冷却孔29で構成される。本例では、
図2、
図3A、
図3Bに示すように、一つの保持ブロック16に、四つの冷却孔29a~29dを設けている。四つの冷却孔29a~29dは、X方向に二つ、Y方向に二つ並ぶ、2行2列配置である。第一冷却エリアE1と対向する位置に設けられた二つの冷却孔29a,29bは、保持ブロック16の外部において、合流し、一つの電動レギュレータ38aに連通している。この二つの冷却孔29a,29bは、ともに、ヒータ14の第一冷却エリアE1に冷媒を導く第一冷却流路28aとして機能する。また、第二冷却エリアE2と対向する位置に設けられた二つの冷却孔29c,29dも、保持ブロック16の外部において、合流し、一つの電動レギュレータ38bに連通している。この二つの冷却孔29c,29dは、ヒータ14の第二冷却エリアE2に冷媒を導く第二冷却流路28bとして機能する。なお、冷媒は、ヒータ14を冷却できるのであれば、その種類は限定されない。したがって、例えば、空気等のガスを冷媒として利用してもよい。また、冷媒は、気体に限らず水、油などの液体や、フロンガスを用いてもよい。
【0025】
四つの冷却孔29は、互いに、同じ構成をしている。すなわち、冷却孔29は、主部30と、ヒータ14の上面に接触する面状流路を形成する終端部32と、主部30と終端部32との間に介在する中間部34と、を有する。主部30は、保持ブロック16の上面から下方に延びている。中間部34は、保持ブロック16の下端近傍に位置している。この中間部34の流路断面積(すなわち水平断面積)は、主部30の流路断面積よりも、十分に大きい。本例では、中間部34は、底面視において、Y方向外側に開いた略コ字状となっている。
【0026】
終端部32は、保持ブロック16の底面に形成された凹部であり、ヒータ14の上面に沿って広がる面状の流路として機能する。この終端部32のY方向端部は、外部空間に連通しており、冷媒が外部に排出できるようになっている。終端部32の形状は、特に限定されないが、本例では、
図2に示すように、底面視で、中間部34を完全にカバーする略矩形である。
【0027】
この
図2から明らかなとおり、終端部32の流路断面積は、中間部34の流路断面積よりも大きい。別の言い方をすれば、本例では、各冷却流路28の流路断面積は、ヒータ14に近づくにつれて段階的に大きくなっている。かかる構成とすることで、冷媒が、主部30から中間部34を経て終端部32に進む過程で、段階的に面方向に広がる。そして、これにより、冷媒が、ヒータ14の上面付近において、均等に分散するため、ヒータ14を、より均等に冷却できる。
【0028】
冷却機構35は、さらに、電動レギュレータ38および流量計36を有する。電動レギュレータ38は、冷却流路28と同様に、複数設けられており、この複数の電動レギュレータ38は、互いに独立して駆動する。また、各電動レギュレータ38は、対応する冷却流路28に流れる冷媒の流量Fa,Fbを調整する。したがって、各冷却流路28に流れる冷媒の流量Fは、互いに独立して制御可能である。流量計36は、電動レギュレータ38と冷却流路28との間に設けられており、各冷却流路28に流れる冷媒の流量Fを計測する。
【0029】
コントローラ20は、上述した真空源24や、駆動ドライバ26、電動レギュレータ38の駆動を制御する。かかるコントローラ20は、物理的には、プロセッサ42とメモリ44とを有するコンピュータである。
【0030】
コントローラ20は、チップを吸引保持したいタイミングでは、真空源24を駆動して、吸引凹部23に吸引力を作用させる。また、コントローラ20は、チップを加熱する際、すなわち、チップのバンプを溶融させるタイミングには、駆動ドライバ26を駆動して、ヒータ14を昇温させる。また、コントローラ20は、バンプの溶融後、当該バンプを固化させたいタイミングでは、ヒータ14をOFFにするとともに、冷却機構35を駆動して、冷却流路28に冷媒を送り、ヒータ14を空冷させる。
【0031】
ところで、通常、ヒータ14は、内蔵されている発熱抵抗体の分布のばらつき等に起因して、その表面温度に、若干のバラつきが生じる。このバラつきは、取り扱うチップのサイズが大きくなるほど、より顕著に生じやすい。一方、多くのチップは、接合の際、均等に加熱されることが求められている。この均熱の精度要求は、チップの高精度化に伴い、より厳しくなっている。そのため、単一のヒータでチップを加熱する場合、求められる均熱精度を満たすことが難しい場合があった。
【0032】
また、チップの中には、加熱時の温度分布を、積極的に、偏らせたい場合もある。例えば、チップの中には、局所的に耐熱性が低い保護部分を有するものもある。かかるチップは、保護部分は低温に保たれ、その他の部分は高温になるような温度分布で加熱されることが望まれる。
【0033】
そこで、チップを所望の温度分布で加熱するために、ヒータ14を複数、設けることも考えられる。この場合、チップの互いに異なるエリアを加熱する複数のヒータ14を、互いに独立して駆動することで、チップの温度分布を、所望の温度分布に近づけることができる。
【0034】
しかし、ヒータ14を複数設けた場合、その分、発熱抵抗体や温度センサ(例えば熱電対等)から引き出されるリード線が増加し、設置スペースの増加を招く。また、ヒータ14を複数設けた場合、過熱等を防止するための安全回路も、複数設ける必要があり、全体の構成が複雑化する。
【0035】
そこで、本例では、ヒータ14の個数を増やすことなく、所望の温度分布を得るために、互いに独立した複数の冷却流路28を設け、当該複数の冷却流路28に流す冷媒の流量Fを互いに独立して制御することで、ヒータ14の温度分布を調整する。以下、これについて説明する。
【0036】
図4は、ヒータ14の温度分布を均等にしたい場合の温度調整の様子を示す図である。
図4において、クロスハッチングは、ヒータ14の温度分布を示しており、クロスハッチングの目が細かいほど、高温であることを示している。また、矢印は、第一冷却流路28aの冷媒の流量Faおよび第二冷却流路28bの冷媒の流量Fbを示している。
【0037】
図4(a)に示すように、ヒータ14そのものの特性等に起因して、第二冷却エリアE2の温度が、第一冷却エリアE1の温度よりも、高温になりやすいとする。この場合、本例では、ヒータ14の温度を均一にするために、ヒータ14の駆動と並行して、冷却機構35を駆動して、冷却流路28a,28bに、冷却用の冷媒を供給する。このとき、高温の第二冷却エリアE2に流す冷媒の流量Fbが、第一冷却エリアE1に流す冷媒の流量Faよりも、大きくなるように、二つの冷却流路28a,28bの流量Fa,Fbを独立して制御する。これにより、第二冷却エリアE2が、第一冷却エリアE1よりも、積極的に放熱されることになり、第二冷却エリアE2の温度が低下する。その結果、第二冷却エリアE2の温度が、第一冷却エリアE1の温度に近づき、ヒータ14の温度分布を均等に近づけることができる。
【0038】
同様に、
図4(b)に示すように、第一冷却エリアE1の温度が、第二冷却エリアE2よりも、高温になりやすい場合には、高温の第一冷却エリアE1に流す冷媒の流量Faが、第二冷却エリアE2に流す冷媒の流量Fbよりも、大きくなるように、二つの冷却流路28a,28bの流量Fa,Fbを独立して制御する。なお、この場合、冷媒流量Fbは、ゼロでもよい。これにより、第一冷却エリアE1の温度が、第二冷却エリアE2の温度に近づき、ヒータ14の温度分布を均等に近づけることができる。
【0039】
また、
図4(c)に示すように、第一冷却エリアE1の温度が、第二冷却エリアE2と同じ場合には、二つの冷却流路28a,28bに流す冷媒流量Fa,Fbを同じにする。なお、この場合、流量Fa,Fbは、ともに、ゼロでもよい。
【0040】
このように、本例では、二つの冷却流路28a,28bに流す冷媒流量Fa,Fbを調整して、ヒータ14の温度分布を調整している。かかる構成とすることで、ヒータ14を複数設けなくても、所望の温度分布を得られる。なお、複数の冷却流路28の流量を互いに独立して制御する場合、発熱抵抗体から引き出すリード線や安全回路の増加を抑制できる一方で、電動レギュレータ38等の部品が増える。しかし、こうした冷却に関する部品の増数に伴うコストやスペースの増加は、ヒータ14の増数に伴うコストやスペースの増加に比べて、小さい。したがって、本例によれば、コストやスペースの増加を抑えつつ、チップを所望の温度分布で加熱できる。
【0041】
また、本例の冷却流路28は、ヒータ14の温度分布の調整だけでなく、バンプが溶融した後のチップの冷却にも利用される。換言すれば、本例によれば、チップ冷却用の冷却流路を別途、設ける必要がないため、スペースの増加をより抑えることができる。
【0042】
ここで、ヒータ14の温度分布は、ヒータ14に駆動条件(例えば、印可する電流Iの値等)、および、二つの冷却流路28a,28bに流す冷媒の流量Fa,Fbの組み合わせで決まる。コントローラ20は、こうしたヒータ14の温度分布と、ヒータ14の駆動条件と、二つの冷却流路28a,28bに流す冷媒の流量Fa,Fbと、の関係を記録した条件データ46を、ボンディング処理に先立って取得する。
図5は、条件データ46のイメージ図である。ボンディング処理の際、コントローラ20は、この条件データ46に基づいて、チップを加熱する際の印可電流I、流量Fa,Fbを決定する。
【0043】
条件データ46は、実験により取得される。実験では、まず、各冷却エリアEa,Ebの温度が、目標の温度以上になるまで、ヒータ14に電流Iを印可する。このときの各冷却エリアEa,Ebの温度は、温度センサ40(
図1センサ)で取得する。温度センサ40は、ヒータ14表面の複数の測定点の温度を取得できるのであれば、その形態は、限定されない。したがって、温度センサ40は、赤外線を利用して、非接触で温度を測定する放射温度計でもよい。この場合、赤外線を走査することで、複数の測定点の温度を取得する。また、温度センサ40は、ヒータ14の表面に接触して温度を測定する接触式の温度センサ、例えば、サーミスタ等でもよい。この場合、温度センサ40は、ヒータ14の表面に複数、設けられてもよい。また、温度を測定する測定点は、一つの冷却エリアE1,E2につき、1以上あれば、その数、位置は、限定されない。
【0044】
コントローラ20は、得られた複数の測定点の温度と、その測定点における目標の温度と、を比較する。そして、測定点の温度が、目標温度より高い場合には、当該測定点が属する冷却エリアを冷却する冷却流路28の冷媒の流量Fを、徐々に増加する。そして、最終的に、測定点の温度が目標温度に達した際の冷媒流量Fと、ヒータ14の印可電流Iを、条件データ46に記録する。
【0045】
ボンディング処理の際には、コントローラ20は、この条件データ46を参照し、目標の温度分布に対応する電流Iおよび流量Fa,Fbで、ヒータ14および冷却機構35を駆動する。このように、事前に条件データ46を取得しておくことで、ボンディングの際に、対象面の温度測定を改めて行う必要がなく、ボンディング処理に要する時間を短縮できる。
【0046】
なお、これまで説明した構成は一例であり、互いに独立した複数の冷却流路28を有し、コントローラ20が、ヒータ14の加熱時に、所望の温度分布が得られるように、複数の冷却流路28に流す冷媒の流量Fを互いに独立して制御するのであれば、その他の構成は、変更されてもよい。例えば、上述の説明では、ヒータ14の温度分布が均等になるように冷媒流量Fa,Fbを制御しているが、チップや基板の種類によっては、温度の偏りが積極的に発生するように冷媒流量Fa,Fbを制御してもよい。
【0047】
また、上述の例では、冷却流路28を二つ設けているが、これらは、より多数であってもよい。例えば、上述の例では、二つの冷却孔29で一つの冷却流路28を構成しているが、一つの冷却孔29で一つの冷却流路28を構成してもよい。すなわち、一つの冷却孔29に一つの電動レギュレータ38を設け、全体として、互いに独立した四つの冷却流路28を設けてもよい。また、冷却エリアの区分けも、適宜変更可能である。例えば、上述の例では、ヒータ14は、二つの冷却エリアE1,E2に区分けされているが、2×2や、3×3等のようにマトリックス状に区分けされてもよい。また、ヒータ14は、その中心に位置する略矩形の冷却エリアと、当該中心の冷却エリアの周囲を取り囲む略ロ字状の冷却エリアと、に区分けされてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 実装ヘッド、12 実装ツール、12a 吸着面、14 ヒータ、16 保持ブロック、18 本体、20 コントローラ、22 吸引孔、23 吸引凹部、24 真空源、26 駆動ドライバ、28a,28b 冷却流路、29a~29d 冷却孔、30 主部、32 終端部、34 中間部、35 冷却機構、36a,36b 流量計、38a,38b 電動レギュレータ、40 温度センサ、42 プロセッサ、44 メモリ、46 条件データ。
【要約】
チップを接合対象にボンディングする実装ヘッド(10)は、底面が前記チップを吸引保持する吸着面(12a)として機能する実装ツール(12)と、前記実装ツール(12)の上面に配置され、前記実装ツール(12)を加熱するヒータ(14)と、前記ヒータ(14)に設定された複数の冷却エリア(Ea),(Eb)それぞれに冷媒を導くとともに互いに独立した複数の冷却流路(28a),(28b)を有し、前記複数の冷却エリア(Ea),(Eb)を互いに独立して冷却可能な冷却機構(35)と、前記ヒータ(14)および前記冷却機構(35)の駆動を制御するコントローラ(20)と、を備え、前記コントローラ(20)は、前記ヒータ(14)の加熱時に、所望の温度分布が得られるように、複数の前記冷却流路(28a),(28b)に流す前記冷媒の流量を互いに独立して制御する。