(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】光給電コンバータ
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0232 20140101AFI20221117BHJP
H01L 31/054 20140101ALI20221117BHJP
H02J 50/30 20160101ALI20221117BHJP
【FI】
H01L31/02 C
H01L31/02 D
H01L31/04 620
H02J50/30
(21)【出願番号】P 2022560213
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2022024829
【審査請求日】2022-10-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000161862
【氏名又は名称】株式会社京都セミコンダクター
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】磯村 尚友
(72)【発明者】
【氏名】大村 悦司
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-224375(JP,A)
【文献】特開平10-117012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0318620(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0108082(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102184999(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104037178(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/119
H02J 50/30
H04B 10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
前記円錐状凹部は、この円錐状凹部に入射した光を、前記円形受光部の直径以下の外径、且つ前記複数の直線状のアイソレーション溝が前記円形受光部の周方向に連なって形成された無効領域の外径よりも大きい内径を有する円環状に変換するように形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の光給電コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルを介して入力される光を電力に変換して給電する光給電コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
給電設備がない遠隔地、給電による微弱な電磁界がノイズとなる環境、防爆を必要とする環境、電気的相互影響がある超高電圧設備内等、特殊な環境では電源ケーブルを介して電子機器類を作動させる電力を供給できない場合がある。そのため、電子機器類の傍まで光ファイバケーブルを介して送られる光を受けて、光電変換によって光電流を生成して給電する光給電コンバータが利用されている。
【0003】
光給電コンバータは光電変換用の半導体受光素子を有する。この半導体受光素子の出力電圧は、通常1V未満である。光給電コンバータからの給電を受ける機器が高い入力電圧を必要とする場合には、出力電圧を高くした光給電コンバータが利用される。例えば特許文献1のように、半導体受光素子の円形受光部をアイソレーション溝によって複数の扇形のフォトダイオードに分割し、これらを直列に接続することによって出力電圧を高くすることが可能である。
【0004】
分割されて直列に接続された複数のフォトダイオードによって構成された半導体受光素子の出力電圧は、フォトダイオードが多いほど高くなる。一方、その出力電流は、分割されない場合よりも小さくなり、分割数が多いほど小さくなる。その上、この出力電流は、光電変換により生成される光電流が最小のフォトダイオードによって制限される。それ故、複数のフォトダイオードの光電流を互いに等しくするために、これら複数のフォトダイオードが同形状且つ同面積となるように円形受光部が等分される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、円形受光部を同形状且つ同面積で分割するために、一定幅の直線状の複数のアイソレーション溝が、円形受光部の中心から径方向に放射状に形成されているので、複数のアイソレーション溝が円形受光部の中心近傍に集中する。そして、円形受光部の分割数が多いほど、即ちアイソレーション溝が多いほど隣り合うアイソレーション溝が近づき、円形受光部の中心から離隔した位置で複数のアイソレーション溝が幅方向(周方向)に連なるようになる。
【0007】
こうして、複数のアイソレーション溝が周方向に連なって、円形受光部の中心近傍にアイソレーション溝の幅を一辺とする正多角形状の領域が形成される。アイソレーション溝では光電変換をすることができないので、この正多角形状の領域は光電流を生成できない無効領域である。この無効領域は、円形受光部の分割数が多いほど大きくなる。
【0008】
ここで、光ファイバケーブルを介して入力される入射光の光強度分布は、一般的にはガウス分布であり、光軸から離隔するほど光強度が低下すると共に、光軸に対して回転対称状の光強度分布である。この光を、同形状且つ同面積となるように等分された円形受光部に均等に入射させるために、光軸が円形受光部に対して垂直にこの円形受光部の中心を通るように光を入射させる。
【0009】
しかし、入射光の光軸近傍の光強度が高い部分が、円形受光部の中心近傍に形成された無効領域に照射され、光電流に変換されず無駄になるので、光給電コンバータの出力を大きくすることができない。
【0010】
そこで、本発明は、円形受光部がその中心に対して放射状に等分されて直列に接続された半導体受光素子に、光ファイバケーブルを介して入力される光のうち、無駄になる光を減少させて均等に入射させることができる光給電コンバータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明の光給電コンバータは、光ファイバケーブルを介して入力される光を半導体受光素子によって光電流に変換して出力する光給電コンバータにおいて、前記半導体受光素子は、半導体基板の第1面側に光電流を生成するために形成された円形受光部に対して、この第1面に対向する前記半導体基板の第2面側から前記円形受光部に光を入射させる裏面入射型受光素子であり、前記円形受光部は、この円形受光部の中心から延びる複数の直線状のアイソレーション溝によって受光面積が互いに等しくなるように分割され、且つ複数の導電性部材によって直列に接続された複数のフォトダイオードを備え、前記半導体基板の前記第2面側には、前記第1面側ほど縮径する円錐状に前記半導体基板を凹入させた円錐状凹部が、この円錐状凹部の対称軸線が前記円形受光部の中心を通るように形成され、前記第2面側から入射させた光が前記円錐状凹部によって円環状に変換されて、前記円形受光部の前記複数のフォトダイオードに夫々等しい光量が入射するように構成されたことを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、光ファイバケーブルを介して入力される光が、円錐状凹部によって円環状に変換されて複数のフォトダイオードに均等に入射するので、複数のフォトダイオードの出力のばらつきを小さくすることができる。また、光電流を生成しない複数のアイソレーション溝が集中している円形受光部の中心近傍には、円環状の光が入射しないようにすることができるので、光電変換されずに無駄になる光を減少させることができる。従って、複数のフォトダイオードを直列に接続して形成された円形受光部を有する半導体受光素子の光電流を大きくすることができ、光給電コンバータが給電する電力を大きくすることができる。
【0013】
請求項2の発明の光給電コンバータは、請求項1の発明において、前記光ファイバケーブルを介して入力される光を平行光に変換して前記円錐状凹部に入射させるコリメータレンズを備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、円錐状に広がりながら進行する光をコリメータレンズによって平行光に変換するので、円錐状凹部への入射角を一定にすることができる。それ故、入力される光が円形受光部からはみ出ないように、円形受光部の直径に合わせた平行光のビーム径となる光ファイバケーブルとコリメータレンズの間の距離を、容易に設定することができる。従って、入力される光の全部を円形受光部に入射させて、半導体受光素子の光電流を大きくすることができ、光給電コンバータが給電する電力を大きくすることができる。
【0014】
請求項3の発明の光給電コンバータは、請求項1又は2の発明において、前記円錐状凹部は、この円錐状凹部に入射した光を、前記円形受光部の直径以下の外径、且つ前記複数の直線状のアイソレーション溝が前記円形受光部の周方向に連なって形成された無効領域の外径よりも大きい内径を有する円環状に変換するように形成されたことを特徴としている。
上記構成によれば、円錐状凹部によって変換された円環状の光は、円形受光部の中心近傍に形成される光電流を生成できない無効領域を避けて、全て円形受光部に入射する。従って、光ファイバケーブルを介して入力される光の全部を円錐状凹部に入射させることによって、光を無駄なく利用して、光給電コンバータが給電する電力を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光給電コンバータによれば、円形受光部がその中心に対して放射状に等分されて直列に接続された半導体受光素子に、光ファイバケーブルを介して入力される光のうち、無駄になる光を減少させて均等に入射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に係る光給電コンバータの斜視図である。
【
図2】
図1の光給電コンバータが有する半導体受光素子への光の入射の説明図である。
【
図3】
図2の半導体受光素子の円形受光部を示す平面図である。
【
図4】基台に固定された
図3の半導体受光素子のIV-IV線断面図である。
【
図5】光ファイバケーブルを介して入力される光の光強度分布図である。
【
図6】
図3のVI-VI線断面における半導体受光素子に入射して円環状に変換される光の説明図である。
【
図7】円錐状凹部の円錐面への平行光の入射角と円錐状凹部の頂点から円形受光部の中心までの距離をパラメータとして円環状の光の内径を等高線状に示すグラフである。
【
図8】半導体受光素子に入射して円環状に変換される光の他の例の説明図である。
【
図9】円錐状凹部の形成用のエッチングマスクの説明図である。
【
図10】エッチングによって円錐状凹部を形成する説明図である。
【
図11】本発明の実施例2に係る光給電コンバータの半導体受光素子に入射して円環状に変換される光の説明図である。
【
図12】実施例2に係る光給電コンバータの半導体受光素子に入射して円環状に変換される光の他の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1、
図2に示すように、光給電コンバータ1は、例えばシングルモードの光ファイバケーブルOCを介して入力される光(入射光L1)を光電流に変換して外部に給電するための1対の出力端子部2a,2bを有する。1対の出力端子部2a,2bが装備された基台3には、受光した光から光電変換により光電流を生成するための半導体受光素子10と、この半導体受光素子10の保護及び遮光のためのカバー5が夫々固定されている。半導体受光素子10は、生成した光電流を出力するために、配線部3a,3bを介して対応する出力端子部2a,2bに接続されている。
【0019】
光ファイバケーブルOCを介して入力される入射光L1は、波長が例えば1.5μm程度の赤外光である。この入射光L1は、光ファイバケーブルOCの出射端Eから出射された後は、進行するほど照射範囲が広がる円錐状のビームである。
【0020】
カバー5は、入射光L1が通る光学系として、例えば屈折率が1.45の光学ガラス製のコリメータレンズ6を有する。コリメータレンズ6は、入射光L1を平行光L2に変換して半導体受光素子10に入射させる。半導体受光素子10は、光電変換を行う円形受光部12を有し、この円形受光部12が形成されている側と反対側から光が入射される裏面入射型受光素子である。
【0021】
カバー5は、コリメータレンズ6の光軸6aが半導体受光素子10の円形受光部12に対して垂直に且つ円形受光部12の中心Cを通るように基台3に固定される。光ファイバケーブルOCは、カバー5の挿入孔5aに差し込まれ、その出射端Eがコリメータレンズ6から所定の距離だけ離隔した位置となるように固定される。このとき、入射光L1の光軸OAがコリメータレンズ6の光軸6aに一致するように、出射端Eが位置決めされる。
【0022】
図3、
図4に示すように、円形受光部12は、例えば光吸収層を備えた円形のPIN型フォトダイオードが、その中心Cから径方向に延びる複数の直線状のアイソレーション溝13によって形状及び面積が同じ複数の扇形のフォトダイオード14に等分されている。ここでは円形受光部12が、30本のアイソレーション溝13によって30個のフォトダイオード14に等分されている。
【0023】
複数の直線状のアイソレーション溝13は、形状及び受光面積が等しい複数の扇形のフォトダイオード14となるように、円形受光部12の中心Cから一定幅で放射状に形成されている。また、円形受光部12の外周に沿って円環状のアイソレーション溝15が形成され、複数の直線状のアイソレーション溝13が円環状のアイソレーション溝15によって接続されている。そして、複数のアイソレーション溝13によって電気的に分離された複数のフォトダイオード14が、基台3に形成された導電性部材4によって直列に接続されて、円形受光部12が形成されている。この円形受光部12の直径をD1とする。
【0024】
こうして円形受光部12には、中心Cを囲むように形状及び受光面積が等しい複数の扇形のフォトダイオード14が形成されている。アイソレーション溝13では光電流を生成できないので、アイソレーション溝13の幅を小さく且つ直線状に形成して、円形受光部12の面積に占めるアイソレーション溝13の面積を小さくすることが好ましい。尚、
図3ではアイソレーション溝13とフォトダイオード14の符号を一部省略している。
【0025】
円形受光部12の中心C近傍において、複数の直線状のアイソレーション溝13が集中している。そのため、中心C側ほど隣り合うアイソレーション溝13が近づいて、中心Cから離隔した位置で複数のアイソレーション溝13が幅方向に連なっている。これにより複数のアイソレーション溝13が円形受光部12の周方向に連なって、中心C近傍にアイソレーション溝13の幅を一辺とする正多角形状の領域が形成されている。アイソレーション溝13では光電変換をすることができないので、この正多角形状の領域は光電流を生成できない無効領域Iである。無効領域Iは、円形受光部12の分割数が多いほど大きくなる。この無効領域Iの外径をD2とする。
【0026】
フォトダイオード14は、半絶縁性の半導体基板20の第1面20aに積層されたn型半導体層21と光吸収層22とp型半導体層23を有する。半導体基板20は例えばInP基板であり、n型半導体層21は例えばn-InP層であり、光吸収層22は例えばInGaAs層であり、p型半導体層23は例えばp-InP層であるが、これに限定されるものではない。また、フォトダイオード14はPIN型に限定されるものではない。尚、n型半導体層21、光吸収層22、p型半導体層23の厚さは適宜設定することができ、0.5~10μm程度の厚さに形成される場合が多い。
【0027】
アイソレーション溝13,15は、n型半導体層21と光吸収層22とp型半導体層23が積層された半導体基板20を、半導体基板20が露出するようにp型半導体層23側からエッチングすることによって形成される。これにより、円形受光部12が電気的に分離された複数のフォトダイオード14に分割される。尚、アイソレーション溝13,15は、例えば半導体基板20側ほど幅が狭くなるように側壁が傾斜状に形成されてもよい。
【0028】
複数のフォトダイオード14は、p型半導体層23と光吸収層22を貫通してn型半導体層21に到達する接続孔17を夫々有する。そして、絶縁性の保護膜24が、複数のフォトダイオード14の表面と、これらフォトダイオード14の接続孔17の側壁を覆うように形成されている。この保護膜24は、複数の直線状のアイソレーション溝13及び円環状のアイソレーション溝15の内壁部及び底部を覆っている。
【0029】
各フォトダイオード14は、p型半導体層23上の保護膜24が部分的に除去されて露出したp型半導体層23に接続されたアノード電極27と、接続孔17の底部の保護膜24が除去されて露出したn型半導体層21に接続されたカソード電極28を備えている。アノード電極27とカソード電極28は、例えばリフトオフ法を用いて金属積層膜を選択的に堆積させることによって形成される。金属積層膜は、例えばチタン、クロムのような密着層と、例えば金、銀、アルミニウムのような低抵抗率層によって構成されている。
【0030】
隣り合うフォトダイオード14のうちの一方のアノード電極27と他方のカソード電極28とが、導電性ペースト8を介して基台3の導電性部材4によって接続されたことによって、円形受光部12の複数のフォトダイオード14が直列に接続されている。図示を省略するが、導電性部材4の代わりに、例えば金を主成分とする導電性ワイヤによって複数のフォトダイオード14が直列に接続されていてもよく、保護膜24上に選択的に形成された複数の配線によって複数のフォトダイオード14が直列に接続されていてもよい。
【0031】
直列に接続された複数の扇形のフォトダイオード14によって円形受光部12が形成されているので、半導体受光素子10が出力する光電流は小さくなるが、その出力電圧を高くすることができる。従って、この半導体受光素子10を備え、光ファイバケーブルOCを介して入力される入射光L1を光電変換して給電する光給電コンバータ1は、高い電圧で給電することができる。
【0032】
図2、
図5に示すように、光ファイバケーブルOCの出射端Eから出射された入射光L1は、例えば頂角θ(全角)が14°の円錐状に広がりながら進行する。この入射光L1の光強度分布は、光軸OAに垂直な平面P上においてガウス分布になり、光軸OAから離隔するほど光強度が低下すると共に光軸OAに対して回転対称の光強度分布になる。尚、光強度が光軸OA上の光強度の1/e
2になるところを入射光L1の最外周としている。
【0033】
図6に示すように、入射光L1をコリメータレンズ6に入射させる場合に、入射光L1の光軸OAをコリメータレンズ6の光軸6aに一致させる。コリメータレンズ6は、入射光L1を平行光L2に変換して裏面入射型の半導体受光素子10に入射させる。平行光L2の光強度分布は、入射光L1がコリメータレンズ6に入射したときの光強度分布が維持されている。
【0034】
半導体受光素子10は、円形受光部12が形成された半導体基板20の第1面20aに対向する半導体基板20の第2面20b側(裏面側)に、第1面20a側ほど縮径するように半導体基板20を円錐状に凹入させて形成された円錐状凹部16を有する。この円錐状凹部16の対称軸16aの延長線(対称軸線)が、円形受光部12に対して垂直に且つ円形受光部12の中心Cを通るように、円錐状凹部16が形成されている。コリメータレンズ6の光軸6aは、円形受光部12の中心Cを通るように位置合わせされているので、円錐状凹部16の対称軸線に一致する。そして、入射光L1の光軸OAをコリメータレンズ6の光軸6aに一致させたので、光軸OAは平行光L2の光軸になり、光軸OAが円錐状凹部16の対称軸線に一致する。
【0035】
円錐状凹部16の円錐面16bに入射した平行光L2は、光軸OAから離隔するように屈折し、円環状の光L3に変換される。コリメータレンズ6で変換された平行光L2のビーム径をDbとする。また、円錐状凹部16の頂点から距離Tだけ離隔した円形受光部12に入射する円環状の光L3の外径をDo、内径をDiとする。
【0036】
円錐状凹部16の円錐面16bの傾斜角度(円錐底面と母線のなす角度)をαとすると、平行光L2の円錐面16bへの入射角がαである。半導体基板20の空気に対する屈折率をnとし、円錐面16bに入射した平行光L2の出射角をβとすると、スネルの法則から下記(1)式が成り立つ。
β=sin-1((sin(α))/n) ・・・(1)
以下ではn=3.2として説明するが、屈折率nはこれに限定されるものではない。
【0037】
円錐状凹部16によって変換された円環状の光L3が円形受光部12に入射するときの径方向のビーム幅をtとすると、このビーム幅は下記(2)式で表される。
t=(Db/2)×(cos(β)/(cos(α)×cos(α-β)) ・・・(2)
【0038】
そして、円環状の光L3の内径Di、外径Doは下記(3),(4)式のようになる。
Di=2×T×tan(α-β) ・・・(3)
Do=Di+2×t ・・・(4)
【0039】
図7には、入射角αと距離Tをパラメータとして円環状の光L3の内径Diが等高線状に示されている。入射角αが一定であれば、距離Tが大きくなるほど内径Diが大きくなる。一方、距離Tが一定であれば、入射角αが大きくなるほど内径Diが大きくなる。尚、半導体基板の種類によるが、通常は半導体基板20の厚さが700μm程度であり、距離Tを半導体基板20の厚さ以上にすることはできない。
【0040】
図7及び上記(1)~(4)式を用いることによって、例えば円環状の光L3の内径Diが所望の大きさに設定された場合に、円錐状凹部16の形状とサイズ、及び平行光L2のビーム径Dbを設定することができる。そして、カバー5における光ファイバケーブルOCとコリメータレンズ6の距離を設定することができる。
【0041】
円形受光部12の中心C近傍の無効領域Iに入射する光による光入力の無駄を少なくするために、円環状の光L3の内径Diを無効領域Iの外径D2よりも大きく設定する場合について説明する。アイソレーション溝13の幅を10μm、フォトダイオード14の数を30個とすると、無効領域Iは一辺が10μmの正三十角形なので外周の長さが300μmであり、無効領域Iの外径D2は100μm未満である。
【0042】
円環状の光L3の内径Diを例えば100μmに設定すると、
図7から例えば入射角αが20°、距離Tが470μmになり、円錐状凹部16の形状とサイズが決まり、出射角βが6.1°になる。このとき半導体基板20の第2面20bにおける円錐状凹部16の直径は1264μm、円錐状凹部16の深さは230μmになる。平行光L2の全部が円錐状凹部16を介して直径D1が例えば1200μmの円形受光部12に入射するように、円環状の光L3の外径Doを1200μmとすると、平行光L2のビーム径Dbが1108μmになる。そして、所定の距離としてコリメータレンズ6と光ファイバケーブルOCの出射端Eの間の距離が4513μmに定まる。
【0043】
円環状の光L3の外径Doは円形受光部12の直径D1より小さくてもよいので、平行光L2のビーム径Dbが小さくなるようにコリメータレンズ6と光ファイバケーブルOCの出射端Eの間の距離を小さくして、光給電コンバータ1を小型化することができる。コリメータレンズ6と光ファイバケーブルOCの出射端Eの間の距離を小さくしても、円環状の光L3の内径Diは変わらない。コリメータレンズ6と半導体受光素子10の間の距離は任意に設定できるが、小さいほど光給電コンバータ1の小型化に有利である。
【0044】
例えば
図8に示すように、平行光L2の光軸近傍部分を円錐状凹部16を介して円形受光部12に入射させ、平行光L2の残り部分は円錐状凹部16を介さずに平行光のまま円形受光部12に入射させてもよい。この場合、径方向に広がって進行する光と平行光とが混在する円環状の光L3が、円形受光部12に入射する。少なくとも平行光のままでは無効領域Iに入射する平行光L2の一部の光について、円錐状凹部16によって進行方向を変えることにより、無効領域Iを避けて円形受光部12に均等に入射させることができればよい。特に、無効領域Iに近いほど、円形受光部12の周方向におけるアイソレーション溝13が占める割合が大きいため、光電変換されない高強度の光が多くなるので、円環状の光L3の内径Diを大きくする場合に有用である。
【0045】
図8の場合も上記と同様に、円錐状凹部16に入射して円環状になる光の内径Diを設定して、入射角αと距離Tを設定することができる。例えば内径Diを150μmとして、入射角αを30°とすると距離Tは480μmになり、円錐状凹部16の形状とサイズが決まり、出射角βが9°になる。このとき第2面20bにおける円錐状凹部16の直径は762μm、深さは220μmになる。そして、円錐状凹部16に入射して円環状になる光の外径Doは1081μmになる。
【0046】
一方、平行光L2のビーム径Dbは、円錐状凹部16の直径より大きく、且つ円形受光部12の直径D1以下の範囲内で任意に設定することができる。円環状の光L3の円形受光部12における内径は、円錐状凹部16の形状及びサイズによって、円錐状凹部16に入射して円環状になる光の内径Di又は円錐状凹部16の直径の何れか一方に決まる。また、円環状の光L3の円形受光部12における外径は、円錐状凹部16の形状及びサイズによって、平行光L2のビーム径Db又は円錐状凹部16に入射して円環状になる光の外径Doの何れか一方に決まる。
【0047】
次に、円錐状凹部16の形成方法について説明する。
例えば
図9に示すように、半導体基板20の第2面20bに、円錐状の凹部30aを有するエッチングマスク層30を形成する。円錐状の凹部30aは対称軸30bを有する。エッチングマスク層30は、例えば露光量の違いによって厚さを連続的に変化させることによって円錐状に凹入させたフォトレジストである。
【0048】
そして、
図10に示すように例えば反応性イオンエッチングによって、エッチングマスク層30が薄い部分ほど深くエッチングして、エッチングマスク層30の形状が反映された円錐状凹部16が形成される。半導体基板20の第1面20a側に形成された円形受光部12の中心Cに対称軸30bを位置合わせすることによって、対称軸16aが円形受光部12の中心Cに位置合わせされた円錐状凹部16が形成される。円錐状凹部16は、砥石等によって半導体基板20を円錐状に研削、研磨することによって形成されてもよい。また、円錐状凹部16は、半導体基板20の第1面側20aに円形受光部12を形成した後で第2面側20bに形成されるが、円錐状凹部16の形成後に対称軸16aに中心Cが位置合わせされた円形受光部12が形成されてもよい。
【実施例2】
【0049】
上記実施例1の光給電コンバータ1のコリメータレンズ6を省略した場合について、
図11に基づいて説明する。上記実施例1と共通する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
半導体受光素子10には、光ファイバケーブルOCの出射端Eから出射された頂角θの円錐状に広がる入射光L1が入射する。円形受光部12の中心C近傍に形成される無効領域Iへの光の入射を防ぐため、上記と同様に円錐状凹部16によって入射光L1を円環状の光L3’に変換して、円形受光部12に入射させる。
【0050】
円錐状凹部16の形状、サイズは、光軸OA上の光に対して、上記と同様に円環状の光L3’の内径Di、入射角α、距離Tを設定することによって決まる。例えば内径Diを150μm、入射角αを24°とすると出射角βは7.3°になり、
図7から距離Tが580μmになり、円錐状凹部16の底面の直径が539μm、深さが120μmになる。
【0051】
入射光L1の全部が円錐状凹部16を介して円形受光部12に入射するように、出射端Eと半導体受光素子10の間の距離を設定することができる。入射光L1の円錐面16bへの入射角は光軸OAから離隔するほど小さくなり、入射光L1の最外周部分の円錐面16bへの入射角はα-(θ/2)である。また、その出射角γは光軸OA上の光の出射角βよりも小さくなる。そして、円環状の光L3’の外径Doが円形受光部12の直径D1以下になる出射端Eと半導体受光素子10の間の距離を所定の距離として設定する。
【0052】
例えばθ=14°の場合に、入射光L1の全部を直径が539μmの円錐状凹部16に入射させるためには、出射端Eと半導体受光素子10の間の距離が最大で2195μmになる。このとき、ビーム径が円錐状凹部16の直径D1に等しい入射光L1が円錐状凹部16に入射して、円環状の光L3’の外径Doが701μmになる。
【0053】
この外径Doが円形受光部12の直径D1より大きい場合には、出射端Eと半導体受光素子10の間の距離を小さくして円錐状凹部16への入射光L1のビーム径を小さくすることにより、入射光L1の全部が無効領域Iを避けながら円形受光部12に入射させることができる。円環状の光L3’の外径Doは円形受光部12の直径D1以下であればよい。出射端Eと半導体受光素子10の間の距離を変えても、円環状の光L3’の内径Diは変わらない。
【0054】
一方、
図12に示すように、入射光L1の光軸OA近傍部分が円錐状凹部16を介して円形受光部12に入射し、入射光L1の残りの外周側部分が円錐状凹部16を介さずに円形受光部12に入射するようにしてもよい。この場合、径方向への広がり方が異なる光が混在する円環状の光L3’が、円形受光部12に入射する。
【0055】
少なくとも入射光L1のうちの無効領域Iに入射する部分について、円錐状凹部16によって進行方向を変えることにより、無効領域Iを避けて円形受光部12に均等に入射させることができればよい。特に、無効領域Iに近いほど、円形受光部12の周方向におけるアイソレーション溝13が占める割合が大きいため、光電変換されない高強度の光が多くなるので、円環状の光L3’の内径Diを大きくする場合に有用である。
【0056】
上記光給電コンバータ1の作用、効果について説明する。
光ファイバケーブルOCを介して光給電コンバータ1に入力される入射光L1は、半導体受光素子10に形成された円錐状凹部16によって円環状の光L3,L3’に変換され、円形受光部12が等分された複数のフォトダイオード14に均等に、等しい光量が入射する。従って、複数のフォトダイオード14の出力のばらつきを小さくすることができる。また、光電流を生成しない複数のアイソレーション溝13が集中している円形受光部12の中心C近傍には、円環状の光L3,L3’が入射しないので、入射光L1のうちの光電変換されずに無駄になる光を減少させることができる。従って、複数のフォトダイオード14を直列に接続して形成された円形受光部12を有する半導体受光素子10の光電流を大きくすることができ、光給電コンバータ1が給電する電力を大きくすることができる。
【0057】
また、円錐状に広がりながら進行する入射光L1をコリメータレンズ6によって平行光L2に変換する場合には、円錐状凹部16への入射角αを一定にすることができる。それ故、入力される入射光L1が円形受光部12からはみ出ないように、円形受光部12の直径D1に合わせた平行光L2のビーム径Dbとなる光ファイバケーブルOCの出射端Eとコリメータレンズ6の間の距離を容易に設定することができる。従って、入力される入射光L1の全部を円形受光部12に入射させて、半導体受光素子10の光電流を大きくすることができ、光給電コンバータ1が給電する電力を大きくすることができる。
【0058】
その上、円錐状凹部16は、円錐面16bに入射した光を、円形受光部12の直径D1以下の外径Do、且つ円形受光部12の無効領域Iの外径D2よりも大きい内径Diを有する円環状の光L3,L3’に変換する。円環状の光L3,L3’は円形受光部12の中心C近傍に形成される光電流を生成できない無効領域Iを避けて、全て円形受光部12に入射する。従って、光ファイバケーブルOCを介して入力される入射光L1を無駄なく利用して、光給電コンバータ1が給電する電力を大きくすることができる。
【0059】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0060】
1 :光給電コンバータ
2a,2b:出力端子部
3 :基台
4 :導電性部材
5 :カバー
5a :挿入孔
6 :コリメータレンズ
6a :対称軸
8 :導電性ペースト
10 :半導体受光素子
12 :円形受光部
13 :アイソレーション溝
14 :フォトダイオード
15 :アイソレーション溝
16 :円錐状凹部
16a:対称軸
16b:円錐面
17 :接続孔
20 :半導体基板
21 :n型半導体層
22 :光吸収層
23 :p型半導体層
24 :保護膜
27 :アノード電極
28 :カソード電極
L1 :入射光
L2 :平行光
L3,L3’ :円環状の光
OA :光軸
OC :光ファイバケーブル
E :出射端
I :無効領域
【要約】
【課題】円形受光部がその中心に対して放射状に等分されて直列に接続された半導体受光素子に光ファイバケーブルを介して入力される光のうち、無駄になる光を減少させて均等に入射させることができる光給電コンバータを提供すること。【解決手段】光ファイバケーブルを介して入力される光(L1)を半導体受光素子(10)で光電流に変換して出力する光給電コンバータ(1)は、半導体受光素子(10)には半導体基板(20)の第1面(20a)側の円形受光部(12)に対して裏面である第2面(20b)側から光が入射し、円形受光部(12)はその中心(C)から延びる複数の直線状のアイソレーション溝(13)によって等分され且つ直列に接続された複数のフォトダイオード(14)を備え、半導体基板(20)の第2面(20b)側に、円形受光部(12)に対応させて第1面(20a)側ほど縮径する円錐状凹部(16)が形成され、入射した光が円錐状凹部(16)で円環状に変換されて複数のフォトダイオード(14)に夫々等しい光量で入射するように構成した。