IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越ポリマー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-弾性ローラ及び画像形成装置 図1
  • 特許-弾性ローラ及び画像形成装置 図2
  • 特許-弾性ローラ及び画像形成装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】弾性ローラ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 13/00 20060101AFI20221117BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20221117BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20221117BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
F16C13/00 B
F16C13/00 A
G03G15/00 551
G03G15/02 101
G03G15/20 515
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017057760
(22)【出願日】2017-03-23
(65)【公開番号】P2018159452
(43)【公開日】2018-10-11
【審査請求日】2019-10-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】石川 幸宗
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 侑紀
【合議体】
【審判長】平瀬 知明
【審判官】内田 博之
【審判官】小川 恭司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-114115(JP,A)
【文献】特開2011-237681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、
前記軸体の外周面上に設けられ、厚さ1.5mm未満の発泡弾性層と、
前記発泡弾性層上に設けられた被覆層と、
を備え、
前記発泡弾性層がシリコーンゴム及び中空ガラスビーズを含有し、
ローラ表面のアスカーC硬度が80以上である、弾性ローラ。
【請求項2】
前記中空ガラスビーズの平均粒径が、60μm以下である、請求項1に記載の弾性ローラ。
【請求項3】
前記中空ガラスビーズの含有量が、前記発泡弾性層の全量基準で0.8~25.0質量%である、請求項1又は2に記載の弾性ローラ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の弾性ローラを備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性ローラ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンター、複写機、ファクシミリ及びこれらの複合機等の画像形成装置において、現像ローラ、帯電ローラ、定着ローラ、加熱ローラ等の種々の弾性ローラが用いられている。これらの弾性ローラは、軸体上に弾性体を含む弾性層を形成したものが一般的である。
【0003】
このような弾性ローラとして、例えば、特許文献1にはアスカーC硬度45度以上で表面マイクロ硬度45度以下の特性を備える加圧ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-221823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の画像形成装置では、画像形成の精密化・高速化に伴って、弾性ローラにより精細な特性が求められている。
【0006】
本発明は、使用環境下での熱膨張を十分に抑制し、精細な特性を長期間維持することが可能な弾性ローラ、及び当該弾性ローラを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、軸体と、軸体の外周面上に設けられ、厚さ1.5mm未満の発泡弾性層と、発泡弾性層上に設けられた被覆層と、を備える弾性ローラに関する。一態様において、発泡弾性層はシリコーンゴム及び中空ガラスビーズを含有している。また、弾性ローラは、ローラ表面のアスカーC硬度が80以上である。
【0008】
一態様において、中空ガラスビーズの平均粒径は60μm以下であってよい。
【0009】
一態様において、中空ガラスビーズの含有量は、発泡弾性層の全量基準で5~20質量%であってよい。
【0010】
本発明の他の一側面は、上記弾性ローラを備える、画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用環境下での熱膨張を十分に抑制し、精細な特性を長期間維持することが可能な弾性ローラ、及び当該弾性ローラを備える画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る弾性ローラの概略を示す正面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面を示す断面図である。
図3図1のIII-III線に沿った断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されるものではない。
【0014】
図1は、本実施形態に係る弾性ローラの概略を示す正面図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面を示す断面図である。図3は、図1のIII-III線に沿った断面を示す断面図である。本実施形態に係る弾性ローラ1は、軸体2と、軸体2の外周面上に設けられた発泡弾性層3と、発泡弾性層3上に設けられた被覆層4と、を備えている。
【0015】
弾性ローラ1のローラ表面のアスカーC硬度は、80以上である。なお、本明細書中、アスカーC硬度は、以下に示す測定方法により測定される値を示す。
【0016】
<アスカーC硬度の測定方法>
SRIS(日本ゴム協会標準規格)0101に準拠し、アスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)を用いて、ロール表面のアスカーC硬度を測定する。より具体的には、ロール表面にアスカーC硬度計の押針を当接し、定圧荷重(9.8N)負荷することにより測定される硬度を、アスカーC硬度とする。
【0017】
弾性ローラ1において、ローラ表面のアスカーC硬度の上限は特に限定されず、例えば95以下であってよく、86以下であってもよい。弾性ローラ1のローラ表面のアスカーC硬度は、例えば、発泡弾性層3を構成する発泡体の発泡倍率の変更、発泡体の組成変更、発泡体の成形条件の変更等により調整することができる。
【0018】
軸体2は、公知の弾性ローラに用いられる軸体であってよい。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属で構成されていてよい。このような軸体2は芯金と言い換えることができる。また、軸体2は、必ずしも金属製である必要は無く、例えば、樹脂材料で構成されていてもよい。樹脂材料は、例えば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であってよく、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に導電性付与剤を配合した導電性樹脂であってもよい。
【0019】
軸体2は一つの材質で構成されていてよく、2以上の材質から構成されていてもよい。軸体2は、例えば、芯材と、芯材を覆う外覆層と、から構成されていてよい。具体的には、例えば、軸体2は、金属製の芯材にメッキ処理が施されたものであってよい。
【0020】
軸体2の外周面には、発泡弾性層3との接着性を向上させるため、又は後述のプライマー処理の効果を向上させるため、粗面化処理が施されていてよい。粗面化処理の方法は特に限定されず、軸体2の材質等に応じて、公知の方法から適宜選択してよい。粗面化処理の方法の具体例としては、サンドブラスト、研磨加工等が挙げられる。
【0021】
軸体2の外周面には、発泡弾性層3との接着性を向上させるためのプライマー処理が施されていてよい。プライマー処理の方法は特に限定されず、軸体2の材質及び発泡弾性層3の組成等に応じて、公知の方法から適宜選択してよい。プライマーとしては、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性やシリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂等を好適に用いることができる。
【0022】
軸体2の外径は、画像形成装置の形態に応じて適宜変更してよい。軸体2の外径は、例えば6~40mmであってよく、好ましくは10~30mmである。軸体2の長さは、画像形成装置の形態に応じて適宜変更してよい。軸体2の長さは、例えば100~600mmであってよく、好ましくは130~500mmである。
【0023】
発泡弾性層3は、軸体2の胴体部の外周面上に設けられており、シリコーンゴム及び中空ガラスビーズを含有する発泡体から構成されている。シリコーンゴムは、例えば、後述するシリコーン生ゴムの架橋物であってよい。
【0024】
中空ガラスビーズは、各種ガラスから構成される中空状の粒子であってよい。中空ガラスビーズは、球形又は不定形であってよいが、シリコーンゴムへの分散性に優れる観点からは球形であることが好ましい。
【0025】
中空ガラスビーズを構成するガラスは特に限定されず、例えば、ソーダ石灰ガラス、低アルカリガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス及びアルミノ珪酸ガラスからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。これらのうち、耐衝撃性に優れ、熱膨張が少ないことから、硼珪酸ガラス及びアルミノ珪酸ガラスが好ましい。
【0026】
中空ガラスビーズの平均粒径は、例えば60μm以下であってよく、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。これにより、発泡弾性層3の均一性がより向上する傾向がある。中空ガラスビーズの平均粒径は、10μm以上であってよく、20μm以上であってもよい。
【0027】
なお、本明細書中、中空ガラスビーズの平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)にて測定される値を示す。
【0028】
中空ガラスビーズの比重は、例えば0.1以上であってよく、0.2以上であることが好ましい。また、中空ガラスビーズの密度は、例えば1.3以下であってよく、0.5以下であることが好ましい。
【0029】
中空ガラスビーズは、適宜調製してもよく市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、商品シリーズ名「Sphericel」(Potters-Ballotini(ポッターズ・バルティーニ)株式会社製)の、商品名「110P8」(硼珪酸ガラス、平均粒径12μm、比重1.10g/cm)、商品名「60P18」(硼珪酸ガラス、平均粒径18μm、比重0.60g/cm)、商品名「34P30」(硼珪酸ガラス、平均粒径35μm、比重0.34g/cm)、商品名「25P45」(硼珪酸ガラス、平均粒径45μm、比重0.25g/cm)等があげられる。また、他の市販品としては、例えば、商品シリーズ名「Q-CEL」、「Ceramic Multi Cellular」及び「Extendospheres」(いずれも、Potters-Ballotini(ポッターズ・バルティーニ)株式会社製)、並びに、商品シリーズ名「Glass Bubbles」(ソーダ石灰硼珪酸ガラス)(住友スリーエム株式会社製)等も挙げられる。
【0030】
中空ガラスビーズは、その表面がシランカップリング剤で表面処理されていてもよい。これにより、発泡弾性層3を構成するシリコーンゴムとの接着性が向上し、発泡弾性層3から脱落し難くなる傾向がある。シリコーンカップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルシランカップリング剤、アミノ基を有するアミノシランカップリング剤、エポキシ基を有するエポキシシランカップリング剤、ビニル基を有するビニルシランカップリング剤、メルカプト基を有するメルカプトシランカップリング剤等が挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリルシランカップリング剤としては、例えば、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等あが挙げられる。
【0032】
アミノシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルエチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトシキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトシキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジオクチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジブチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ジブチルアミノプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N,N-ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、トリメトキシシリル-3-プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル-3-プロピルベンジルアミン、トリメトキシシリル-3-プロピルピペリジン、トリメトキシシリル-3-プロピルモルホリン、トリメトキシシリル-3-プロピルイミダゾール、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
発泡弾性層3における中空ガラスビーズの含有量は、例えば、発泡弾性層3の全量基準で0.8質量%以上であってよく、好ましくは4.0質量%以上、より好ましくは8.0質量%以上であってよい。このような含有量であると、発泡弾性層3の熱膨張がより小さくなる傾向がある。また、中空ガラスビーズの含有量は、例えば、発泡弾性層3の全量基準で25.0質量%以下であってよく、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは16.0質量%以下であってよい。このような含有量であると、発泡弾性層3の硬度がより向上する傾向がある。
【0034】
発泡体は、例えば、シリコーン生ゴムと、発泡剤と、架橋剤と、中空ガラスビーズとを含有するシリコーン組成物を、発泡及び硬化させたものであってよい。すなわち、発泡体は、上記シリコーン組成物の発泡硬化物であってよい。
【0035】
シリコーン生ゴムは特に限定されず、公知のシリコーン生ゴムであってよい。シリコーン生ゴムとしては、例えば、ビニル基含有シリコーン生ゴム(より具体的には、例えば、ビニル基含有ジメチルシリコーン生ゴム、ビニル基含有フェニルシリコーン生ゴム、ビニル基含有フルオロシリコーン生ゴム等)又はその変性物等が挙げられる。
【0036】
シリコーン生ゴムは、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋型シリコーンゴム等であってよい。シリコーン生ゴムとしては、市販品を用いてよく、例えば、信越化学工業株式会社製「KE-551U」、「KE-571-U」、「KE-1571-U」、「KE-951-U」、「KE-541-U」、「KE-551-U」、「KE-561-U」、「KE-961T-U」、「KE-1541-U」、「KE-1551-U」、「KE-941-U」、「KE-971T-U」等を用いてよい。
【0037】
シリコーン生ゴムの配合量は、例えば、シリコーン組成物の全量基準で40~80質量%であってよく、50~70質量%であることが好ましい。
【0038】
発泡剤は特に限定されず、公知のシリコーンゴム用発泡剤を用いてよい。発泡剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)等の有機アゾ発泡剤が好適に用いることができる。
【0039】
発泡剤の配合量は、発泡体の発泡倍率に応じて適宜変更してよい。発泡体の発泡倍率は、例えば、110%以上であってよく、150%以上であってもよい。また、発泡体の発泡倍率は、例えば、500%以下であってよく、350%以下であってもよい。発泡剤の配合量は、このような発泡倍率を達成できる量であってよい。
【0040】
架橋剤は特に限定されず、公知のシリコーンゴム用架橋剤を用いてよい。架橋剤としては、例えば、付加反応架橋剤、有機過酸化物架橋剤等が挙げられる。付加反応架橋剤としては、例えば、1分子中に珪素原子と結合する水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、例えば、直鎖状、環状又は分枝状のアルキル基を有するものであってよい。また、有機過酸化物架橋剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス-2,4-次クロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0041】
架橋剤の配合量は、例えば、シリコーン組成物の全量基準で0.5~10.0質量%であってよく、1.0~5.0質量%であることが好ましい。
【0042】
中空ガラスビーズの配合量は、例えば、シリコーン組成物の全量基準で0.8質量%以上であってよく、好ましくは4.0質量%以上、より好ましくは8.0質量%以上であってよい。また、中空ガラスビーズの配合量は、例えば、シリコーン組成物の全量基準で25.0質量%以下であってよく、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは16.0質量%以下であってよい。
【0043】
シリコーン組成物は、上記以外の成分をさらに含んでいてよい。例えば、シリコーン組成物は、煙霧質シリカ、沈降性シリカ等の補強性シリカ充填剤をさらに含んでいてよい。また、シリコーン組成物は、硬化補助剤をさらに含んでいてもよい。硬化補助剤は、例えば過酸化物であってよい。過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス-2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等が例示される。
【0044】
また、シリコーン組成物は、反応抑制剤をさらに含んでいてよい。反応抑制剤としては、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0045】
また、シリコーン組成物は、硬化促進剤をさらに含んでいてよい。硬化促進剤としては、例えば、白金触媒が挙げられる。白金触媒としては、例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金を固体触媒(例えば、白金黒、アルミナ、シリカ、カーボン等)に担持させたもの、白金とオレフィン、アルコール又はビニルシロキサンとの錯体、等が挙げられる。
【0046】
また、シリコーン組成物は、耐熱向上剤、硬度を調整するための非補強性シリカ、充填材、着色剤、熱伝導性向上剤等をさらに含んでいてもよい。
【0047】
発泡弾性層3は、軸体2の外周面上に配置したシリコーン組成物を加熱して発泡及び硬化させることにより形成してよい。硬化温度は、例えば、100~300℃であってよく、150~250℃であってよい。
【0048】
発泡弾性層3は、軸体2の外周面上に形成されたシリコーン組成物の発泡硬化物を研削又は研磨して、所定の厚みに成形したものであってもよい。研削又は研磨は、例えば、円筒研削盤による外形研削であってよい。
【0049】
発泡弾性層3の厚さは、1.5mm未満である。本実施形態では、厚さ1.5mm未満の発泡弾性層3を有する弾性ローラ1において、アスカーC硬度及び発泡弾性層3の組成を特定のものとすることで、使用環境下での熱膨張が十分に抑制される。発泡弾性層3の厚さは、1.3mm以下であってもよい。また、発泡弾性層3の厚さは、0.5mm以上であってよく、1.0mm以上であってもよい。
【0050】
発泡弾性層3の外周面上には、被覆層4が設けられていてよい。被覆層4は、発泡弾性層3の外周面を被覆して、ローラ表面を平坦化する層である。
【0051】
被覆層4の組成は、弾性ローラの用途に応じて適宜選択してよい。例えば、被覆層4は、フッ素樹脂を含む層(フッ素樹脂層)であってよい。
【0052】
フッ素樹脂としては、例えば、フッ化エチレン-プロピレンコポリマー(FEP)、フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
【0053】
被覆層4の厚さは特に限定されず、被覆層4の種類及び弾性ローラ1の用途等に応じて適宜調整してよい。例えば、被覆層4がフッ素樹脂層であるとき、被覆層4の厚さは、例えば15~150μmであってよく、20~100μmであってよい。
【0054】
発泡弾性層3と被覆層4との間には、両者を接着する接着剤層が更に設けられていてよい。接着剤層は、接着剤又はその硬化物を含む層であってよい。接着剤としては、例えば、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤等を用いることができる。接着剤層の厚さは特に限定されず、例えば1~100μmであってよく、5~50μmであってよい。
【0055】
上述のとおり、本実施形態に係る弾性ローラ1は、発泡弾性層3の厚さが1.5mm未満であり、発泡弾性層3がシリコーンゴム及び中空ガラスビーズを含有し、ロール表面のアスカーC硬度が80以上である。弾性ローラ1は、このような構成を有することで、使用環境下(例えば、150~200℃)での熱膨張が十分に抑制されている。また、弾性ローラ1は、上記構成を有するため、ローラ端部及びローラ中央部での熱膨張率が均一化され、わずかに熱膨張した場合であっても、ローラ端部及びローラ中央部の間の歪みが小さくなり、精細な特性が維持される。さらに、弾性ローラ1は、中空ガラスビーズを含む発泡弾性層3が断熱層として機能するため、画像形成装置の省エネルギー化を図ることができる。
【0056】
なお、従来の弾性ローラでは、硬度を上げるためには弾性層の比重を上げる必要がある一方、弾性層の比重を上げると熱膨張が大きくなることから、高い硬度と低い熱膨張率とを両立することが困難であった。これに対して、本実施形態に係る弾性ローラでは、アスカーC硬度が80以上の高硬度の弾性ローラでありながら、熱膨張率が十分に低く維持されている。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0058】
例えば、本発明の一側面は、上記弾性ローラ1を備える画像形成装置に関する。画像形成装置において、弾性ローラ1は、例えば、加圧ローラ、定着ローラ等として用いられる。画像形成装置における弾性ローラ1以外の構成要素は、公知の画像形成装置と同様であってよい。
【実施例
【0059】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
実施例1では、ミラブル型シリコーンゴム100質量部、付加架橋剤3.0質量部、有機過酸化物架橋剤3.0質量部、白金触媒1.5質量部、平均粒径12μmの中空ガラスビーズ20.0質量部、及び化学発泡剤(AIBN)1.5質量部の混合物を、シリコーン組成物として用いた。
【0061】
金属製軸体(SUM22に無電解ニッケルメッキを施した軸体、直径23mm)をトルエン洗浄し、プライマーと塗布した。プライマーを塗布して金属製軸体を、ギアーオーブンにて温度180℃で30分間焼成し、常温にて30分間以上冷却した。次いで、金属製軸体とシリコーン組成物とを、押出成形機にて一体押出しして、これをIR炉にて220℃に加熱し、シリコーン組成物を発泡及び硬化させた。その後、円筒研削盤にて外形研削して、厚さ1.0mmの発泡弾性層を形成した。
【0062】
次に、発泡弾性層の外周面に接着剤を塗布し、これを厚さ50μmのPFAチューブに圧入し、温度120℃で1時間加熱することで、PFAからなる被覆層を形成した。以上の方法で、実施例1の弾性ローラ(A-1)を得た。弾性ローラ(A-1)のローラ表面のアスカーC硬度は、84.5であった。
【0063】
得られた弾性ローラ(A-1)について、下記の方法で熱膨張試験を行った。
【0064】
<熱膨張試験>
まず、常温(23℃)時の弾性ローラの外径を測定した。次に、180℃の恒温槽で弾性ローラを加熱し、加熱開始から60分後まで、10分毎に弾性ローラの外径を測定した。初期の外径と加熱後の外径との差から、各時間での熱膨張率を算出し、その最大値を熱膨張率の最大値として評価した。
【0065】
熱膨張試験の結果、弾性ローラ(A-1)の熱膨張率の最大値は10.0%であった。
【0066】
(実施例2)
中空ガラスビーズとして、平均粒径35μmの中空ガラスビーズを用いたこと以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ(A-2)を作製した。弾性ローラ(A-2)のローラ表面のアスカーC硬度は、84.3であった。
【0067】
得られた弾性ローラ(A-2)について、実施例1と同様に熱膨張試験を行ったところ、弾性ローラ(A-2)の熱膨張率の最大値は10.0%であった。
【0068】
(実施例3)
発泡弾性層の厚さを1.2mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ(A-3)を作製した。弾性ローラ(A-3)のローラ表面のアスカーC硬度は、83.6であった。
【0069】
得られた弾性ローラ(A-3)について、実施例1と同様に熱膨張試験を行ったところ、弾性ローラ(A-3)の熱膨張率の最大値は10.5%であった。
【0070】
(実施例4)
発泡弾性層の厚さを1.4mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ(A-4)を作製した。弾性ローラ(A-4)のローラ表面のアスカーC硬度は、83.2であった。
【0071】
得られた弾性ローラ(A-4)について、実施例1と同様に熱膨張試験を行ったところ、弾性ローラ(A-4)の熱膨張率の最大値は10.5%であった。
【0072】
(実施例5)
中空ガラスビーズとして、平均粒径35μmの中空ガラスビーズを用い、発泡弾性層の厚さを1.2mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ(A-5)を作製した。弾性ローラ(A-5)のローラ表面のアスカーC硬度は、83.5であった。
【0073】
得られた弾性ローラ(A-5)について、実施例1と同様に熱膨張試験を行ったところ、弾性ローラ(A-5)の熱膨張率の最大値は10.0%であった。
【0074】
(実施例6)
中空ガラスビーズの配合量を10質量部に変更し、中空ガラスビーズの平均粒径を35μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ(A-6)を作製した。弾性ローラ(A-6)のローラ表面のアスカーC硬度は、83.0であった。
【0075】
得られた弾性ローラ(A-6)について、実施例1と同様に熱膨張試験を行ったところ、弾性ローラ(A-6)の熱膨張率の最大値は10.8%であった。
【0076】
(実施例7)
中空ガラスビーズの配合量を10質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ(A-7)を作製した。弾性ローラ(A-7)のローラ表面のアスカーC硬度は、83.4であった。
【0077】
得られた弾性ローラ(A-7)について、実施例1と同様に熱膨張試験を行ったところ、弾性ローラ(A-7)の熱膨張率の最大値は11.0%であった。
【0078】
(実施例8)
中空ガラスビーズの配合量を10質量部に変更し、中空ガラスビーズの平均粒径を35μmに変更し、発泡弾性層の厚さを1.4mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ(A-8)を作製した。弾性ローラ(A-8)のローラ表面のアスカーC硬度は、82.6であった。
【0079】
得られた弾性ローラ(A-8)について、実施例1と同様に熱膨張試験を行ったところ、弾性ローラ(A-8)の熱膨張率の最大値は10.5%であった。
【0080】
(比較例1)
発泡弾性層の厚さを1.6mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ(B-1)を作製した。弾性ローラ(B-1)のローラ表面のアスカーC硬度は、79.5であった。
【0081】
得られた弾性ローラ(B-1)について、実施例1と同様に熱膨張試験を行ったところ、弾性ローラ(B-1)の熱膨張率の最大値は10.5%であった。
【0082】
(比較例2)
化学発泡剤の配合量を2質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ(B-2)を作製した。弾性ローラ(B-2)のローラ表面のアスカーC硬度は、78.3であった。
【0083】
得られた弾性ローラ(B-2)について、実施例1と同様に熱膨張試験を行ったところ、弾性ローラ(B-2)の熱膨張率の最大値は9.5%であった。
【0084】
(比較例3)
中空ガラスビーズの配合量を0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ(B-3)を作製した。弾性ローラ(B-3)のローラ表面のアスカーC硬度は、79.5であった。
【0085】
得られた弾性ローラ(B-3)について、実施例1と同様に熱膨張試験を行ったところ、弾性ローラ(B-3)の熱膨張率の最大値は11.0%であった。
【0086】
実施例の弾性ローラでは、アスカーC硬度が80以上の高硬度の弾性ローラでありながら、十分に低い熱膨張率を達成することができた。一方、比較例の弾性ローラでは、高い硬度と低い熱膨張率とを両立することができなかった。
【符号の説明】
【0087】
1…弾性ローラ、2…軸体、3…発泡弾性層、4…被覆層。
図1
図2
図3