(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】防汚組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 230/08 20060101AFI20221117BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20221117BHJP
C09D 143/04 20060101ALI20221117BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20221117BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C08F230/08
C09D5/16
C09D143/04
C09D133/14
C09D133/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017205168
(22)【出願日】2017-10-24
【審査請求日】2020-10-16
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515168776
【氏名又は名称】ヨトゥン アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブレンドヴァン, モルテン
(72)【発明者】
【氏名】ボーマン, ヒャルタン トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ダーリン, マリト
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-102193(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164283(WO,A1)
【文献】特開2002-256176(JP,A)
【文献】特開2010-084099(JP,A)
【文献】特開2010-144106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00- 20/70
C08F120/00-120/70
C08F220/00-220/70
C08L 33/00- 33/26
C09D 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アクリル酸エチルジエチレングリコール(EDEGA);及び
(ii)(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル
をコモノマーとして含むシリルエステル共重合体。
【請求項2】
前記共重合体における(i):(ii)の比率が、5:95~60:40(モル/モル)の範囲にある、請求項1に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項3】
成分(ii)が、メタクリル酸トリイソプロピルシリル(TISMA)である、請求項1又は2に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項4】
前記シリルエステル共重合体における(i)の量が2~40モル%である、請求項1又は2に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項5】
前記シリルエステル共重合体における(i)の量が2~30モル%である、請求項4に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項6】
前記シリルエステル共重合体における(i)の量が5~25モル%である、請求項4に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項7】
前記シリルエステル共重合体における(ii)の量が前記共重合体の5~60モル%である、請求項1~6のいずれか1項に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項8】
前記シリルエステル共重合体における(ii)の量が前記共重合体の15~50モル%である、請求項7に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項9】
前記シリルエステル共重合体における(ii)の量が前記共重合体の20~45モル%である、請求項7に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項10】
前記シリルエステル共重合体が、式(I)で表される1種以上の親水性コモノマーをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のシリルエステル共重合体。
【化1】
式中、R
1は、H又はCH
3であり、R
2は少なくとも1個の酸素又は窒素原子を含むC3~C18の置換基である。ただし、式(I)で表される前記親水性コモノマーはEDEGAではない。
【請求項11】
R
2が少なくとも1個の酸素原子を含むC3~C18の置換基である、請求項10に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項12】
1種以上の前記親水性コモノマーは、式(CH
2CH
2O)
n-R
3で表されるR
2基を含み、R
3は、C1~C10アルキル基又はC6~C10アリール基であり、nは1~6の範囲の整数であり、ただし、前記コモノマーはEDEGAではない、請求項10又は11に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項13】
nが1~3である、請求項12に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項14】
式(I)で表される1種以上の親水性コモノマーが存在し、該親水性コモノマーが式(CH
2CH
2O)
n-R
3で表されるR
2基を含み、R
3はアルキル基であり、nは1~3の範囲の整数であり、ただし、前記コモノマーはEDEGAではない、請求項10~13のいずれか1項に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項15】
R
3がCH
3又はCH
2CH
3である、請求項14に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項16】
nが1又は2である、請求項14に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項17】
式(I)で表される1種以上の親水性コモノマーが、メタクリル酸メトキシエチル(MEMA)、アクリル酸メトキシエチル(MEA)、メタクリル酸エトキシエチル(EEMA)、及びアクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFA)の中から
選択される、請求項
10に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項18】
式(II)で表される1種以上の非親水性コモノマーをさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載のシリルエステル共重合体。
【化2】
式中、R
1′は、H又はCH
3であり、R
2’は、C1~C8の炭化水素(hydrocarbyl)基である。
【請求項19】
R
2’がC1~C8のアルキル基である、請求項18に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項20】
R
2’がメチル、エチル、n-プロピル、2-エチルヘキシル又はn-ブチルである、請求項18又は19に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項21】
式(II)で表される1種以上の非親水性コモノマーが、メタクリル酸メチル(MMA)及びアクリル酸n-ブチル(n-BA)の中から
選択される、請求項18~20のいずれか1項に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項22】
コモノマーとしてMMAを10~70モル%の量で含む、請求項1~21のいずれか1項に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項23】
コモノマーとしてMMAを30~60モル%の量で含む、請求項22に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項24】
コモノマーとしてアクリル酸n-ブチル(n-BA)を2~20モル%の量で含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項25】
コモノマーとしてアクリル酸n-ブチル(n-BA)を2~15モル%の量で含む、請求項24に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項26】
前記シリルエステル共重合体は、TISMA、EDEGA、並びに、
a.MMA;
b.MMA及びn-BA;又は
c.MMA、n-BA及びTHFA
を含むか
、あるいは、
のみからなる、請求項1~25のいずれか1項に記載のシリルエステル共重合体。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか1項に記載のシリルエステル共重合体、及び、ロジン又はその誘導体を含む、防汚塗料組成物用バインダー。
【請求項28】
請求項1~26のいずれか1項に記載の共重合体、及び、少なくとも1種の防汚剤を含む、防汚塗料組成物。
【請求項29】
前記防汚剤は、酸化第一銅、及び/又は、銅ピリチオンを含む、請求項28に記載の防汚塗料組成物。
【請求項30】
物体を付着物(fouling)から保護する方法であって、
付着物がつきやすい前記物体の少なくとも一部を、請求項28又は29に記載の防汚塗料組成物で被覆することを含む、方法。
【請求項31】
請求項28又は29に記載の防汚塗料組成物で被覆された物体。
【請求項32】
前記物体は、防錆塗膜、結合層(tie layer)、及び、請求項28又は29に記載の防汚塗料組成物で被覆されている、請求項31に記載の物体。
【請求項33】
前記物体は、基材上にあらかじめ存在している防汚塗料組成物を被覆する請求項28又は29に記載の防汚塗料組成物で被覆されている、請求項31に記載の物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋防汚塗料組成物、より具体的には、アクリル酸エチルジエチレングリコール(EDEGA)、並びに、メタクリル酸トリイソプロピルシリル(TISMA)またはアクリル酸トリイソプロピルシリル(TISA)を含む海洋防汚塗料組成物、に関する。本発明はさらに、物体を付着物(fouling)から保護する方法、及び、本発明の防汚組成物で被覆された物体にも関する。
【背景技術】
【0002】
海水中に沈められた表面は、緑藻類、褐藻類、フジツボ、イガイ、チューブワーム等の海洋生物が付着しやすい。船舶、石油プラットフォーム、ブイ等の海洋構造物には、そのような付着物は望ましいものではなく、経済的な影響も及ぼす。該付着物は、表面の生物学的劣化、重量の増加、腐食の加速につながり得る。船舶では該付着物は摩擦抵抗を増やして、速度の低下や燃料消費量の増加の原因になる。また、機動性の低下も引き起こす場合がある。
【0003】
海水に接触する表面が長期間にわたって静止していると付着物のリスクが高くなる。例えば、艤装中の船舶は数カ月間動かないため、付着物のリスクが高くなる。商取引中に長期間動かなかったり低速になっている船舶も付着物のリスクが高い。これらの状況では付着物を防止するため、研磨速度が高い防汚塗料が望ましい。
【0004】
海洋生物の定着及び成長を防止するために防汚塗料が使用される。この塗料は通常、成膜バインダーに加えて顔料、フィラー、溶媒、生物学的活性物質等の各種成分を含有する。
【0005】
現在の市場において最も成功している自己研磨型の防汚システムはシリルエステル化(メタ)アクリル共重合体を利用したものである。このような塗料組成物は、例えばEP0646630,EP0802243,EP1342756,EP1479737,EP1641862,WO00/77102,WO03/070832、及び、WO03/080747に開示されている。
【0006】
防汚塗膜の自己研磨性及び機械的特性を調節するため、シリルエステル化(メタ)アクリル共重合体はしばしば、アクリレート等の他のバインダー、及び、ロジン又はロジン誘導体と共に使用される。酸化銅等の殺生物剤、又は、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]等の有機殺生物剤も含まれる場合がある。
【0007】
親水性アクリレートコモノマーを含むシリルエステル共重合体がすでに開示されている。特許文献1は、親水性アクリレートコモノマーが1~25個のエチレングリコール繰り返し単位を含んでいる防汚塗料を開示している。ある例では、アクリル酸エチルジエチレングリコール(EDEGA)が、9個のグリコール繰り返し単位を持つ他の親水性アクリレートコモノマー、メタクリル酸メチル、及びアクリル酸n-ブチルと共に使用されている。この例ではシリルエステルコモノマーはメタクリル酸トリ(n-ブチル)シリルである。
【0008】
特許文献2は、親水性コモノマーを用いたシリルエステル共重合体を開示しており、ここではシリルエステルコモノマーは、ケイ素に結合した2つの非分岐状のC1/C2基と、少なくとも2つの分岐を有するケイ素に結合した第三の基を有する。前記シリルエステルコモノマーとしては、メタクリル酸セキシル(Thexyl)ジメチルシリル及びアクリル酸セキシルジメチルシリルが例示される。セキシルジメチルシリル系のモノマーは現時点で市販されていないため塗料用のバインダーとしては魅力の低い選択肢となっている。また、(メタ)アクリル酸セキシルジメチルシリルとアクリル酸エチルジエチレングリコール(EDEGA)の組合せも防汚塗料を提供するが、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリルとアクリル酸エチルジエチレングリコール(EDEGA)の組合せと比較すると耐クラッキング性に劣るものとなる。
【0009】
特許文献3は、親水性アクリレート又はメタクリレートコモノマーを持つシリルエステル共重合体を開示している。例示されている重合体の多くは、アクリル酸トリイソプロピルシリルと、メタクリル酸メチルと、少量の、2、4又は6位に水酸基を有する親水性アクリレートまたはメタクリレートとの共重合体である。また、アクリル酸トリイソプロピルシリルと、メタクリル酸メチルと、5、12又は15回繰り返しているポリエチレングリコール単位を有するメタクリル酸ポリエチレングリコールとの共重合体も例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許第0646630号明細書
【文献】国際公開第2014/096102号
【文献】欧州特許第1016681号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、コモノマーとして、メタクリル酸トリイソプロピルシリル(TISMA)又はアクリル酸トリイソプロピルシリル(TISA)と、アクリル酸エチルジエチレングリコール(EDEGA)の双方を挿入したシリルエステル共重合体が、適切な研磨速度を有する自己研磨型防汚システムを提供することを明らかにした。さらに、好ましい実施形態において、前記は、比較低高価な親水性モノマーであるEDEGAを少量使用して達成される。MMAやn-BA等の非親水性(メタ)アクリレートと比較して、EDEGA、及び、MEMAやMEA等の他の親水性モノマーは比較的高価である。しかし、シリルエステル共重合体におけるEDEGAの使用は、本発明者らが想定している規模において他の親水性モノマーと比較して経済的に実現可能である。
【0012】
従って本発明の目的は、物体が長期間にわたって静止して海水と接触する状況下(例えば、一度に数週間または数カ月動かない船)において付着物を防止するのに適切な研磨速度を有する防汚塗料組成物を、好ましくは既存の塗料よりも低コストで、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の目的は、メタクリル酸トリイソプロピルシリル(TISMA)又はアクリル酸トリイソプロピルシリル(TISA)と、アクリル酸エチルジエチレングリコール(EDEGA)をコモノマーとして含むシリルエステル共重合体の使用によって達成される。
【0014】
第一の態様において、本発明は、(i)アクリル酸エチルジエチレングリコール(EDEGA);及び(ii)(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリルをコモノマーとして含むシリルエステル共重合体であって、好ましくは、前記共重合体における(i):(ii)の比率が、5:95~60:40(モル/モル)の範囲にある、シリルエステル共重合体を提供する。
【0015】
好ましい態様において、本発明は、(i)アクリル酸エチルジエチレングリコール(EDEGA);及び(ii)メタクリル酸トリイソプロピルシリル(TISMA)をコモノマーとして含むシリルエステル共重合体であって、好ましくは、前記共重合体における(i):(ii)の比率が、5:95~60:40(モル/モル)の範囲にある、シリルエステル共重合体を提供する。
【0016】
好ましくは、前記シリルエステル共重合体における(i)の量が2~40モル%である。好ましくは、前記シリルエステル共重合体における(ii)の量が5~60モル%である。
【0017】
ある実施形態において、前記シリルエステル共重合体が、式(I)で表される1種以上の親水性コモノマーをさらに含む。
【0018】
【0019】
式中、R1は、H又はCH3であり、R2は少なくとも1個の酸素又は窒素原子、好ましくは少なくとも1個の酸素原子、を含むC3~C18の置換基である。ただし、前記親水性コモノマーはEDEGAではない。
【0020】
ある実施形態において、前記シリルエステル共重合体は、式(II)で表される1種以上の非親水性コモノマーをさらに含む。
【0021】
【0022】
式中、R1′は、H又はCH3であり、R2′は、C1~C8の炭化水素(hydrocarbyl)基、好ましくはC1~C8のアルキル基、最も好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、2-エチルヘキシル又はn-ブチル、である。
【0023】
好ましい実施形態において、前記シリルエステル共重合体は、コモノマーとしてメタクリル酸メチル(MMA)を10~70モル%の量で含む。
【0024】
また本発明は、ここで記載した共重合体を、溶媒に分散して含む防汚塗料組成物も提供する。前記防汚塗料は、さらに、防汚剤、好ましくは酸化第一銅、及び/又は、銅ピリチオン、を含んでもよい。
【0025】
また本発明は、物体を付着物から保護する方法であって、付着物がつきやすい前記物体の少なくとも一部を、ここで定義した防汚塗料組成物で被覆することを含む、方法も提供する。
また本発明は、ここで定義した防汚塗料組成物で被覆された物体にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(定義)
「海洋防汚塗料組成物」、「防汚塗料組成物」、または、単に「塗料組成物」という用語は、海洋環境での使用に適した組成物を意味する。前記防汚塗料組成物は、例えば殺生物剤といった防汚剤を必要とする。
【0027】
炭化水素(hydrocarbyl)基という用語は、C原子およびH原子のみを含むあらゆる基を意味するもので、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アリールアルキル基等が含まれる。
【0028】
「(メタ)アクリレート」という用語はメタクリレート又はアクリレートを意味する。
以下の文章で使用する「ロジン」という用語は「ロジン又はその誘導体」を含むものとして使用されている。
【0029】
「バインダー」という用語は、シリルエステル共重合体と他の成分を含む前記組成物の一部を定義するもので、これらが一緒になって、該組成物に実質と強度を付与するマトリックスを形成する。通常、ここで使用する「バインダー」との用語は、前記シリルエステル共重合体と、これと共に含まれる場合があるロジンを意味する。
【0030】
本発明の防汚塗料組成物は、コモノマーとして、アクリル酸エチルジエチレングリコール(EDEGA)、及び、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、すなわちTISMA又はTISA、好ましくはTISMAを含むシリルエステル共重合体を含有する。追加の(メタ)アクリル酸シリルコモノマー、親水性(メタ)アクリレートコモノマー、及び/又は、非親水性(メタ)アクリレートコモノマーが、追加的に存在してもよい。これらの用語はここで定義される。
【0031】
(シリルエステル共重合体)
前記シリルエステル共重合体は、コモノマーとして、少なくとも、例えばTISMA等の(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリルと、アクリル酸エチルジエチレングリコール(EDEGA)を含むが、追加して、ここで記載するような(メタ)アクリル酸シリルコモノマー、親水性(メタ)アクリレートコモノマー、及び/又は、非親水性(メタ)アクリレートコモノマーを含有しても良い。
【0032】
シリルエステル共重合体中のあるコモノマーのモル%を示す時、該モル%は、前記共重合体中に存在する各コモノマーの合計量(モル)に対する値である。すなわち、TISMAとEDEGAのみがシリルエステル共重合体に含まれるコモノマーである場合、TISMAのモル%は、(TISMA(モル)/(TISMA(モル)+EDEGA(モル)))×100%と計算される。TISMA、EDEGA及びメタクリル酸メチル(MMA)のみが存在する場合、TISMAのモル%は、(TISMA(モル)/(TISMA(モル)+EDEGA(モル)+MMA(モル)))×100%と計算される。前記共重合体の重量割合も同様に計算される。好ましくは、前記共重合体は、コモノマーである(メタ)アクリル酸シリル、親水性(メタ)アクリレート及び非親水性(メタ)アクリレートが、>90重量%、好ましくは>95重量%、特に>98重量%である。
【0033】
成分(i)は、以下の構造を有するアクリル酸エチルジエチレングリコール(EDEGA)である。
【0034】
【0035】
成分(i)は、前記共重合体の2~40モル%、好ましくは前記共重合体の2~30モル%、特に前記共重合体の5~30モル%、就中5~25モル%を構成することが好ましい。
【0036】
前記シリルエステル共重合体を調製するのに使用されるEDEGAは、≧90%、好ましくは≧95%、又は、特に≧97%の純度で使用されるのが好ましい。高純度のEDEGAの使用は、乾燥した組成物の最終物性の観点からある種の利点を提供すると考えられる。
【0037】
成分(ii)は、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、好ましくはTISMAであり、前記共重合体の5~60モル%、好ましくは15~50モル%、特に20~45モル%を構成することが好ましい。
【0038】
(i):(ii)の比率(モル/モル)は、5:95~60:40の範囲、好ましくは10:90~50:50の範囲、特に20:80~50:50の範囲、最も好ましくは30:70~50:50の範囲にあることが好ましい。一実施形態においては、前記共重合体における(ii)のモル量は、前記共重合体における(i)のモル量と同じか、または、該(i)のモル量よりも大きいことが好ましい。
【0039】
共重合体中の(i)+(ii)の量は、好ましくは最大85重量%、例えば最大80重量%、特に最大78重量%である。共重合体中の(i)+(ii)の量は、30~85重量%、または、40~80重量%の範囲であってよい。
【0040】
共重合体中の(i)+(ii)の量は、好ましくは最大75モル%、例えば最大70モル%、特に最大65モル%である。共重合体中の(i)+(ii)の量は、30~75モル%、例えば35~70モル%、または、特に35~65モル%の範囲であってよい。
【0041】
(追加の親水性(メタ)アクリレートコモノマー)
ある実施形態においては、前記共重合体は、式(I)で表される追加のコモノマーを1種以上含んでもよい。
【0042】
【0043】
式中、R1は、H又はCH3であり、R2は少なくとも1個の酸素又は窒素原子、好ましくは少なくとも1個の酸素原子、を含むC3~C18の置換基である。ただし、式(I)で表される前記コモノマーはEDEGA(これは、成分(i)という別の成分である)ではない。ここで使用されるように、この構造は「親水性」(メタ)アクリレートコモノマーを定義する。
【0044】
上記式で示されるように、「親水性(メタ)アクリレート」という用語は、式(I)中のR2基が、少なくとも1個の酸素又は窒素原子、好ましくは少なくとも1個の酸素原子、を含むことが必要である。以下で詳細に説明するように、R2′単位がC及びH原子のみからなる追加の非親水性(メタ)アクリレートコモノマーもまた、存在してよい。
【0045】
ある実施形態では、前記シリルエステル共重合体は、R2基が式(CH2CH2O)n-R3で表され、ここでR3が、C1~C10炭化水素基、好ましくはC1~C10アルキル基又はC6~C10アリール基であり、nが1~6、好ましくは1~3、の範囲の整数である、上記式(I)で表される少なくとも1つのコモノマーを含有する。好ましくは、R2基は式(CH2CH2O)n-R3で表され、ここでR3はC1~C10アルキル基、好ましくはCH3又はCH2CH3、であり、nは1~3、好ましくは1又は2、の範囲の整数である。
【0046】
ある実施形態では、前記シリルエステル共重合体は、メタクリル酸メトキシエチル(MEMA)、アクリル酸メトキシエチル(MEA)、及び、メタクリル酸エトキシエチル(EEMA)の中から1種以上を含む。
【0047】
ある実施形態では、前記シリルエステル共重合体は、R2が少なくとも1個の酸素又は窒素原子、好ましくは少なくとも1個の酸素原子、を含む飽和環式基である、上記式(I)で表される少なくとも1つのコモノマーを含有する。より好ましくは、R2はW-R10基であり、R10は、環状エステル(例えば、場合によりアルキル置換されていてよいオキソラン、オキザン、ジオキソラン、ジオキサンなど)であり、WはC1~C4アルキレンであり、最も好ましくは、以下の構造を有するアクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFA)である。
【0048】
【0049】
式(I)で表される親水性(メタ)アクリレートが存在する場合、それの特に好ましい量は、2~25モル%、好ましくは2~20モル%、例えば5~15モル%である。式(I)で表されるコモノマーの混合物が存在する場合、これらの量は、共重合体中の式(I)で表されるコモノマーのモル分率の合計を指す。
【0050】
式(I)で表されるコモノマーが存在する場合、特に好ましいコモノマーは、メタクリル酸メトキシエチル(MEMA)、アクリル酸メトキシエチル(MEA)、メタクリル酸エトキシエチル(EEMA)、アクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFA)、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFMA)、及び、メタクリル酸エチルジエチレングリコール(EDEGMA)を含む。
【0051】
ある好ましい実施形態においては、前記コモノマーは、式(I)で表されるコモノマーを実質的な量では含有しない。すなわち、前記共重合体は、そのような親水性コモノマーを10モル%未満、特に5モル%未満、特に2モル%未満含有する。
【0052】
(追加の非親水性(メタ)アクリレートコモノマー)
前記シリルエステル共重合体は、式(II)で表される追加の非親水性(メタ)アクリレートコモノマーを1種以上含んでもよい。
【0053】
【0054】
式中、R1′は、H又はCH3であり、R2′は、C1~C8の炭化水素基、好ましくはC1~C8のアルキル基、最も好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、又は、2-エチルヘキシルである。式(II)によって表されるコモノマーは、ここで、「非親水性」コモノマーとして言及する。
【0055】
本発明のすべての実施形態において、前記シリルエステル共重合体は、好ましくは、コモノマーとして追加の非親水性メタクリレート及び/又は非親水性アクリレートを1種以上含む。1種以上の非親水性(メタ)アクリレートコモノマーが存在する場合、前記シリルエステル共重合体中のこれら(メタ)アクリレートコモノマーの合計量は、好ましくは最大で80モル%、好ましくは最大70モル%、例えば20~70モル%の範囲、例えば30~60モル%の範囲、特に35~60モル%の範囲である。
【0056】
ある好ましい実施形態において、コモノマーとしてTISMA、EDEGA及び式(II)により表される非親水性(メタ)アクリレートコモノマーは、あわせて、前記シリルエステル共重合体中のコモノマーの>80モル%、好ましくは>85モル%、特に>90モル%を構成する。
【0057】
ある好ましい実施形態において、前記シリルエステル共重合体は、非親水性コモノマーであるメタクリル酸メチル(MMA)及び/又はアクリル酸n-ブチル(n-BA)の中から1種以上を含む。
【0058】
本発明のすべての実施形態において、TISMA及びEDEGAに加えてメタクリル酸メチル(MMA)が含まれることが好ましい。MMAが存在する場合、MMAは前記共重合体の10~70モル%、好ましくは30~60モル%の量で存在することが好ましい。ある好ましい実施形態では、TISMA、EDEGA及びMMAはあわせて、前記シリルエステル共重合体中のコモノマーの>80モル%、好ましくは>85モル%、特に>90モル%を構成する。
【0059】
特に好ましい実施形態において、前記共重合体は、TISMA20~60モル%、EDEGA2~40モル%、及び、MMA10~70モル%を含有し、特に、TISMA20~50モル%、EDEGA5~30モル%、及び、MMA30~60モル%を含有する。これらの実施形態では、追加の(メタ)アクリル酸シリル、親水性(メタ)アクリレート、及び/又は、非親水性(メタ)アクリレートコモノマーが含まれてもよい。
【0060】
n-BAが存在する場合、n-BAは、2~20モル%、特に2~15モル%の量で存在することが好ましい。
【0061】
ある実施形態においては、前記シリルエステル共重合体は、コモノマーとしてTISMA、EDEGA、MMA、及び、少なくとも1種の親水性または非親水性(メタ)アクリレートコモノマーを含む。ある実施形態では、前記シリルエステル共重合体は、モノマーとして、TISMA、EDEGA、MMA;TISMA、EDEGA、MMA及びn-BA;又は、TISMA、EDEGA、MMA、n-BA及びTHFAを含むか、あるいは、これらから実質的になるか、あるいは、これらからなる。
【0062】
(追加の(メタ)アクリル酸シリルコモノマー)
前記シリルエステル共重合体は、追加の(メタ)アクリル酸シリルコモノマーを含んでもよい。これが存在する場合、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル以外の追加の(メタ)アクリル酸シリルコモノマーは、前記共重合体の最大10モル%、好ましくは前記共重合体の最大5モル%を構成することが好ましい。これが存在する場合、適切な(メタ)アクリル酸シリルコモノマーは、好ましくは式(III)で表される。
【0063】
【0064】
式中、R4及びR5はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐状C1-4アルキル基から選択され、
R6、R7及びR8はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐状C1-C20アルキル基、C3-C12シクロアルキル基、場合により置換されたC6-C20アリール基、及び、-OSi(R9)3基からなる群より選択され、
各R9は独立して、直鎖状又は分岐状C1-4アルキル基であり、
nは0~5の整数であり
Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、(メタクリロイルオキシ)アルキレンカルボニルオキシ基、(アクリロイルオキシ)アルキレンカルボニルオキシ基等の、エチレン性不飽和基である。(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリルは共重合体中に必ず存在するから、これは式(III)から除外されるものと考えられるべきことは理解されるであろう。
【0065】
「アルキル」という用語は、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、及びブチル等の直鎖状または分岐状のアルキル基を含むものである。特に好ましいシクロアルキル基は、シクロヘキシルおよび置換されたシクロヘキシルを含む。
【0066】
置換されたアリール基の例には、ハロゲン、1~約8の炭素原子を有するアルキル基、アシル基、又はニトロ基から選択される1種以上の置換基で置換されたアリール基が含まれる。特に好ましいアリール基は、置換又は未置換のフェニル、ベンジル、フェンアルキル(phenalkyl)又はナフチルが挙げられる。
【0067】
理想的には、好ましいシリルエステルモノマーは、nが0の式(III)で表される化合物、すなわち、式X-SiR6R7R8で表される化合物に基づいたものである。
【0068】
シリルエステル官能基を含有するモノマーの例は周知である。一般式(III)で定義されるモノマーには次のものが含まれる。アクリル酸及びメタクリル酸のシリルエステルモノマー、例えば(メタ)アクリル酸トリエチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ-n-プロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリ-n-ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ-tert-ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ-sec-ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ-n-ペンチルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソペンチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ-n-ヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸トリ-n-オクチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ-n-ドデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリフェニルシリル、(メタ)アクリル酸トリ-(p-メチルフェニル)シリル、(メタ)アクリル酸トリベンジルシリル、(メタ)アクリル酸エチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n-プロピルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n-ブチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸イソブチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n-ペンチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸ネオヘキシルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸セキシルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n-オクチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n-デシルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸ドデシルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸フェニルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸ベンジルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸フェネチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸(3-フェニルプロピル)ジメチルシリル、(メタ)アクリル酸p-トリルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジエチルシリル、(メタ)アクリル酸n-ブチルジイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸n-オクチルジイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸メチルジ-n-ブチルシリル、(メタ)アクリル酸メチルジシクロヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸メチルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ノナメチルテトラシロキシ、(メタ)アクリル酸ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル、(メタ)アクリル酸トリス(トリメチルシロキシ)シリル、及び、WO2014/064048及びWO03/080747に記載されている他の化合物。
【0069】
前記シリルエステル共重合体がアクリル酸トリイソプロピルシリルを含む場合、それは、メタクリル酸トリイソプロピルシリルを追加して含んでもよいし、逆でもよい。前記式(III)は、アクリル酸トリイソプロピルシリル及びメタクリル酸トリイソプロピルシリル以外のシリルエステルコモノマーの存在を含むことを意図している。
【0070】
(前記シリルエステル共重合体の物性)
オルガノシリルエステル基を有する重合体は、溶液重合、バルク重合、乳化重合、及び懸濁重合等の各種方法のいずれかによって、通常の方法又は制御重合法を用いて、重合開始剤の存在下、モノマー混合物を重合することで得ることができる。オルガノシリルエステル基を有するこの重合体を用いた塗料組成物を調製する際には、前記重合体を有機溶媒で希釈して、適切な粘度を示す重合体溶液とすることが好ましい。この観点から、溶液重合を用いることが望ましい。
【0071】
重合開始剤の例としては、ジメチル2,2′-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2′-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1′-アゾビス(シアノシクロヘキサン)等のアゾ化合物等のアゾ化合物や、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシジエチルアセテート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert-アミルパーオキシピバレート、tert-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ(tert-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、過酸化ベンゾイル等の過酸化物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用されるか、これらの化合物2種以上の混合物として使用される。
【0072】
有機溶媒の例としては、キシレン、トルエン、メシチレン(mesitylene)等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸アミル、酢酸エチレングリコールメチルエーテル等のエステル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;n-ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール;ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のエーテルアルコール;ホワイトスピリット等の脂肪族炭化水素;場合により2種以上の溶媒の混合物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用されるか、これらの化合物2種以上の混合物として使用される。前記共重合体は好ましくはランダム共重合体である。
【0073】
以上のようにして得られたオルガノシリルエステル基を有する重合体は、重量平均分子量が5000~70000、好ましくは10000~60000であることが好ましい。Mwは実施例のセクションで説明するように測定される。
【0074】
シリルエステル共重合体は重合体溶液として提供されてよい。重合体溶液は固形分が30~90重量%、好ましくは40~85重量%、より好ましくは47~75重量%となるよう調節されることが望ましい。
【0075】
本発明の目的の防汚塗料組成物は、前記シリルエステル共重合体を、塗料組成物全体に対して0.5~45重量%(乾燥固形分)、例えば1.0~30重量%、特に5~25重量%含有することが好ましい。
【0076】
前記共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が少なくとも15℃、好ましくは少なくとも20℃、例えば少なくとも22℃であることが好ましい。これらの値は、実施例のセクションで記載するTg試験に従って測定される。80℃未満の値、例えば75℃未満の値、例えば50℃未満の値が好ましい。
【0077】
本発明の防汚塗料組成物は、場合により、本発明のシリルエステル共重合体と他のシリルエステル共重合体(例えばUS4593055、EP0646630、WO2009/007276、及びEP2781567に記載されているもの)の混合物を含んでもよい。
【0078】
(ロジン成分)
ロジンは、防汚塗料組成物の自己研磨性及び機械的物性を調節するために使用することができる。本発明の防汚塗料組成物は、ロジンを少なくとも0.5重量%(乾燥固形分)、例えば少なくとも1重量%含有することが好ましい。ロジン成分に関する上限値は25重量%、例えば15重量%であってもよい。
【0079】
本発明で使用するロジンは、ロジン、又は、その塩等のその誘導体、例えば以下で記載するようなものであってもよい。ロジン成分の例には、ウッドロジン、トール油ロジン、ガムロジン;ロジン誘導体、例えば、水素化および部分水素化ロジン、不均化ロジン、二量化ロジン、重合ロジン;ロジン及び水素化ロジンの、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、グリセロールエステル、メチルエステル、ペンタエリスリトールエステル、及び他のエステル;ロジン及び重合ロジンの、樹脂酸(resinate)銅、樹脂酸亜鉛、樹脂酸カルシウム、樹脂酸マグネシウム、他の金属の樹脂酸塩;WO97/44401に記載されているようなロジン誘導体が挙げられる。好ましくはガムロジン、及び、ガムロジンの誘導体である。
【0080】
本発明において、防汚組成物は全体として、ロジン成分を0.5~25重量%、好ましくは1~15重量%(乾燥固形分)、好ましくは2~7重量%(乾燥固形分)含有することが好ましい。
【0081】
シリルエステル共重合体とロジン成分の相対量を変えることで防汚塗料の物性を調節することができる。
従って、ある好ましい実施形態では、本発明は、以上で定義したシリルエステル共重合体と、ロジン又はその誘導体を含むバインダーを提供する。
【0082】
(他のバインダー成分)
シリルエステル共重合体と、場合により使用するロジンに加えて、防汚塗膜の物性を調節するために追加のバインダーを使用することができる。本発明のシリルエステル共重合体とロジンに加えて使用可能なバインダーの例には以下が含まれる。
【0083】
一価の有機残基に結合した二価金属で酸基が封止された酸官能化重合体(例えば、EP0204456及びEP0342276に記載されているようなもの);または、水酸基に結合した二価金属(例えばGB2311070及びEP0982324に記載されているようなもの);または、アミン(例えばEP0529693に記載されているようなもの);
親水性共重合体、例えば、GB2152947に記載されているような(メタ)アクリレート共重合体や、EP0526441に記載されているようなポリ(N-ビニルピロリドン)共重合体や他の共重合体;
(メタ)アクリル重合体及び共重合体、特にアクリレートバインダー、例えばポリ(アクリル酸n-ブチル)、ポリ(アクリル酸n-ブチル-コ-イソブチルビニルエーテル)や、WO03/070832及びEP2128208に記載されているような他のもの;
ビニルエーテル重合体及び共重合体、例えばポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(エチルビニルエーテル)、ポリ(イソブチルビニルエーテル)、ポリ(塩化ビニル-コ-イソブチルビニルエーテル);
脂肪族ポリエステル、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(2-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(4-ヒドロキシ吉草酸)、ポリカプロラクトン、前述した単位から選択される単位を2種以上含む脂肪族ポリエステル共重合体;
例えばEP1033392及びEP1072625に記載されているような金属含有ポリエステル(ただし、金属は銅ではない);
アルキド樹脂及び変性アルキド樹脂;
例えばWO2011/092143に記載されているような炭化水素系樹脂、例えば、C5脂肪族モノマー、C9芳香族モノマー、インデンクマロンモノマー、もしくはテルペン、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーの重合のみから形成される炭化水素系樹脂;
WO2009/100908に記載されているようなポリオキサレート、及び、WO96/14362に記載されているような他の縮合重合体。
【0084】
ロジンとシリルエステル共重合体に加えて他のバインダーが存在する場合には、シリル共重合体:バインダーの重量比は30:70~95:5、好ましくは40:60~80:20、特に50:50~70:30の範囲であってよい。これらの好ましい比率はシリル共重合体と追加のバインダーの量のみに関し、すなわちロジンは含んでいない。
特に適切な追加のバインダーは(メタ)アクリル重合体及び共重合体である。
【0085】
(殺生物剤)
防汚塗料は、追加して、表面の海洋付着物を予防したり、表面から海洋付着物を除去できる化合物を含有する。従来、防汚塗料組成物は、金属銅、酸化第一銅、チオシアン酸銅等の銅殺生物剤を含有する。
【0086】
酸化第一銅は、通常、粒径分布が0.1~70μm、平均粒径(d50)が1~25μmである。酸化第一銅は(表面酸化を防止するため)安定化剤を含有してもよい。市販されている酸化第一銅の例としては、Nordox AS社のNordox酸化第一銅レッドペイントグレード、Nordox XLT;古河ケミカルズ(株)の酸化第一銅;アメリカンケメット社(American Chemet Corporation)のRed Copp 97N、Purple Copp、Lolo Tint 97N、Chemet CDC、Chemet LD;スピエス-ウラニア(Spiess-Urania)社の酸化第一銅レッド;Taixing Smelting Plant Co.,Ltd.の酸化第一銅・ばい焼、酸化第一銅・電解が挙げられる。
【0087】
銅殺生物剤の代わりに、一連の有機殺生物剤、例えば、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]や、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]を使用できる。本発明において、あらゆる公知の殺生物剤を使用できる。防汚剤、防汚成分、殺生物剤、毒性物質などの用語は、表面への海洋付着物を防止する作用を果たす公知の化合物を記述するのに業界において使用されている。本発明の防汚剤は、海洋防汚剤である。
【0088】
塗料組成物は、銅殺生物剤、好ましくは酸化第一銅(Cu2O)及び/又は銅ピリチオンを含有してよい。本発明の塗料組成物は、WO2014/064048に記載されているような他の殺生物剤を含有してもよい。好ましい殺生物剤は、酸化第一銅、チオシアン酸銅、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、亜鉛エチレンビス(ジチオカルバメート)[zineb]、2-(tert-ブチルアミノ)-4-(シクロプロピルアミノ)-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン[cubutryne]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[DCOIT]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N′,N′-ジメチル-N-フェニルスルファミド[ジクロロフルアニド]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N′,N′-ジメチル-N-p-トリルスルファミド[トリルフルアニド]、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]、トリフェニルボランピリジン[TPBP]、及び、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]である。
【0089】
別種の殺生物剤は異なる海洋付着生物に対して作用することが業界では知られているので、殺生物剤の混合物を使用することができる。
【0090】
別の実施形態においては、防汚塗料は銅フリーのものである。この実施形態では、好ましい殺生物剤の組合せは、亜鉛ピリチオン、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチオゾリン-3-オンから選択される1種以上と、トラロピリルの組合せを含む。
【0091】
殺生物剤が存在する場合、その合計量は、塗料組成物の70重量%以下、例えば4~60重量%、例えば5~60重量%を構成してよい。銅が存在する場合、殺生物剤の適切な量は塗料組成物中20~60重量%であってよい。銅を回避する場合、低量、例えば0.1~20重量%、例えば0.2~15重量%で使用してよい。殺生物剤の量は目的用途および使用する殺生物剤によって変動することは理解されるであろう。
【0092】
ある殺生物剤は、徐放のために、不活性な担体でカプセル化または担持してもよく、他の物質に結合させてもよい。これらの割合は、存在する活性な殺生物剤の量に関係するもので、使用する担体に関係するものではない。
【0093】
(他の成分)
シリルエステル共重合体、及び、前述した任意成分に加えて、本発明の防汚塗料組成物は、場合により、他のバインダー、無機または有機顔料、増量剤及びフィラー、添加剤、溶媒、シンナーから選択される1種以上の成分をさらに含有してもよい。
【0094】
顔料の例は、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、リン酸亜鉛等の無機顔料;フタロシアニン化合物、アゾ顔料、カーボンブラック等の有機顔料である。
【0095】
増量剤及びフィラーの例は、ドロマイト、プラストライト、方解石、石英、バライト、マグネサイト、アラゴナイト、シリカ、ワラストナイト、タルク、亜塩素酸塩、雲母、カオリンおよび長石等の鉱物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム及びシリカ等の合成無機化合物;未被覆又は被覆された中空および中実のガラスビーズ、未被覆又は被覆された中空および中実のセラミックビーズ、ポリメタクリル酸メチル、ポリ(メタクリル酸メチル-コ-ジメタクリル酸エチレングリコール)、ポリ(スチレン-コ-ジメタクリル酸エチレングリコール)、ポリ(スチレン-コ-ジビニルベンゼン)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルといった高分子材料からなる多孔性で小径のビーズ、等の高分子および無機マイクロスフィアである。
【0096】
防汚塗料組成物に添加できる添加剤の例は、補強剤、チキソトロピー剤、増粘剤、沈降防止剤、湿潤および分散剤、可塑剤、および溶剤である。
【0097】
補強材の例はフレーク及び繊維である。繊維としては、珪素含有繊維、炭素繊維、酸化物繊維、炭化物繊維、窒化物繊維、硫化物繊維、リン酸塩繊維、鉱物繊維等の、天然および合成無機繊維;金属繊維;セルロース繊維、ゴム繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド、ポリエステル繊維、ポリヒドラジド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエチレン繊維等の天然および合成有機繊維、並びに、WO00/77102に記載されているような他の繊維が挙げられる。好ましくは、前記繊維は平均長が25~2000μm、平均厚が1~50μm、前記平均長と前記平均厚の割合が少なくとも5である。
【0098】
チキソトロピー剤、増粘剤、および沈降防止剤の例は、ヒュームドシリカ等のシリカ、有機変性クレー、アミドワックス、ポリアミドワックス、アミド誘導体、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、硬化ヒマシ油ワックス、エチルセルロース、ステアリン酸アルミニウム、およびこれらの混合物である。
【0099】
可塑剤の例は、塩素化パラフィン、フタル酸エステル、リン酸エステル、スルホンアミド、アジピン酸およびエポキシ化植物油である。
【0100】
脱水剤および乾燥剤の例は、無水硫酸カルシウム、半水硫酸カルシウム、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸亜鉛、モレキュラーシーブおよびゼオライト;オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリプロピル、オルトギ酸トリイソプロピル、オルトギ酸トリブチル、オルト酢酸トリメチルおよびオルト酢酸トリエチル等のオルトエステル;ケタール;アセタール;エノールエーテル;ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチルおよびホウ酸トリ-tert-ブチルのようなオルトホウ酸塩;トリメトキシメチルシラン、テトラエチルシリケート、エチルポリシリケート等のシリケート;p-トルエンスルホニルイソシアネート等のイソシアネートである。
好ましい脱水剤および乾燥剤は、シリケート及び無機化合物である。
【0101】
防汚塗料組成物の貯蔵安定性に寄与する安定化剤の例は、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-カルボジイミド)等のカルボジイミド化合物、特許EP2725073に記載されているような他の安定化剤である。
【0102】
一般に、これら任意成分のいずれも、防汚組成物の0.1~20重量%、通常0.5~20重量%、好ましくは0.75~15重量%の範囲の量で存在してよい。これら任意成分の量は最終用途に応じて変動することが理解されるであろう。
【0103】
防汚組成物は溶媒を含むことが極めて好ましい。この溶媒は、好ましくは揮発性であり、好ましくは有機物である。有機溶媒およびシンナーの例は、キシレン、トルエン、メシチレン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル等のエステル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;n-ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のエーテルアルコール類;ホワイトスピリット等の脂肪族炭化水素;任意に、溶媒およびシンナー2種以上からなる混合物である。
好ましい溶媒は、芳香族溶媒、特にキシレン、および、芳香族炭化水素の混合物である。
【0104】
溶媒の量は可能な限り少ないことが好ましい。溶媒の含量は、組成物の50重量%以下、好ましくは組成物の45重量%以下、例えば40重量%以下であってよいが、15重量%以下、例えば10重量%以下と少なくてもよい。繰り返しになるが、溶媒の含量は、存在する他の成分および塗料組成物の最終用途に応じて変動することを当業者は理解するであろう。
あるいは、前記塗料は、塗料組成物中または水性分散体中において成膜成分のための有機非溶媒中に分散されていてもよい。
【0105】
本発明の防汚塗料組成物は、固形分量が40体積%超、例えば45体積%超、例えば50体積%超、好ましくは55体積%超であることが好ましい。
【0106】
より好ましくは、防汚塗料組成物は、揮発性有機化合物(VOC)の量が500g/L未満、好ましくは400g/L未満、例えば390g/L未満である。VOC量は計算(ASTM D5201-01)または測定することができ、測定するのが好ましい。
【0107】
本発明の防汚塗料組成物は、付着物がつきやすいあらゆる物体表面の全面または部分に塗布することができる。該表面は、永久的または断続的に(例えば、潮の動き、異なる貨物の積載または膨潤によって)水中にあり得る。該物体表面は通常、船体、または、石油プラットフォームもしくはブイなどの固定された海洋物の表面である。塗料組成物の塗布は便宜な手法、例えば塗り(例えば刷毛またはローラーを用いた)または前記物体への塗料のスプレーによって実施することができる。通常、該表面は、塗布を実施する際に海水から離す必要がある。塗料の塗布は当該分野で通常知られているように達成することができる。
【0108】
防汚塗料を物体(例えば船体)に塗布する際、通常、該物体の表面は防汚の単独コートのみによって保護されるわけではない。表面の性質に応じて、防汚塗料は、既存の塗料システムに直接適用してもよい。このような塗料システムは、一般的な各種種類(例えば、エポキシ、ポリエステル、ビニル、アクリルまたはそれらの混合物)の塗料からなる複数の層を含んでもよい。該表面が以前の塗布に由来する清浄で無傷の防汚塗膜である場合、新しい防汚塗料は、通常1回か2回のコートで、例外的なケースではそれ以上のコートで、直接塗布することができる。
【0109】
あるいは、技術者は、被覆されていない表面(例えば、鋼鉄、アルミニウム、プラスチック、コンポジット、ガラス繊維または炭素繊維)から始める場合もある。このような表面を保護するため、全体の塗料システムは、通常、一層または二層の防錆塗膜、一層の結合層(tie-coat)および1層または2層の防汚塗膜を含む。当業者にはこれらの塗膜はよく知られている。
例外的に追加の防汚塗膜が適用される場合もある。
従って、更なる実施形態において、本発明は、エポキシプライマー等の防錆塗膜、結合層、ここで定義した防汚塗料組成物が表面に塗布された基材を提供する。
【0110】
以下では、限定しない以下の実施例を参照して本発明を詳述する。
(材料および方法)
【0111】
【0112】
(共重合体溶液の調製手順の概略)
攪拌機、冷却機、窒素供給口及び投入口を備え、温度が制御された反応器に、ある量の溶媒を投入する。該反応器を、表2に示した反応温度に加熱し、維持する。モノマー、開始剤および溶媒からなる予備混合物を調製する。該予備混合物を、窒素雰囲気下、2時間かけて一定速度で反応器に投入する。反応器をさらに1時間、表2に示した追加反応温度に維持するか、または該温度まで加熱する。次いで、追加開始剤溶液の後添加を反応混合物に添加する。さらに2時間、反応を所定温度に維持した後、室温まで冷却する。
【0113】
(重合体溶液の粘度の測定)
重合体の粘度はASTM D2196-15試験の方法Aに従って、12rpmで、LV-2またはLV-4軸を備えたBrookfield DV-I粘度計を用いて測定する。測定前、重合体を23.0℃±0.5℃に調温する。
【0114】
(重合体溶液の非揮発物含量の測定)
重合体溶液の非揮発物含量はISO 3251に従って測定する。0.5g±0.1gの試験片を取り出し、150℃で30分間、通気性の炉で乾燥する。残留物の重量が非揮発物(NVM)と考えられる。非揮発分含量は重量%で表示する。示した値は3点の平均値である。
【0115】
(重合体の平均分子量分布の測定)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定法により重合体を特定する。分子量分布(MWD)はPolymer Laboratories社の機器PL-GPC 50を用い、Polymer Laboratories社のPLgel 5μm Mixed-Dカラムを2つ連結し、テトラヒドロフラン(THF)を溶出液とし、常温、定常流速1mL/minにて、屈折率(RI)検出器により測定した。前記カラムは、Polymer Laboratories社のポリスチレン標準品EasiVials PS-Hを用いて校正した。Polymer Labs.社のソフトウェアCirrusを用いてデータ処理を行なった。サンプルは、25mgの乾燥重合体に対応する量の重合体溶液をTHF5mLに溶解することで調製した。GPC測定のためにサンプリングする前に、室温で最低3時間は該サンプルを保持した。分析前に、0.45μmのナイロン製フィルタによってサンプルのろ過を行なった。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および、Mw/Mnで表される多分散指数(PDI)を各表に記載する。
【0116】
(ガラス転移温度の測定)
ガラス転移温度(Tg)は示差走査式熱量測定(DSC)法によって測定する。DSC法は、TAインスツルメント社のDSC Q200で行なった。少量の重合体溶液をアルミニウムのパンに移して、50℃で最低10時間、続いて150℃で3時間乾燥させてサンプルを調製した。乾燥重合体約10mgのサンプルについて開放式のアルミニウムのパン中で測定を行い、加熱速度10℃/minおよび冷却速度10℃/minでスキャンを記録し、空のパンを比較対照物とした。TAインスツルメント社のソフトウェアUniversal Analysisを用いてデータ処理を行なった。ASTM E1356-08で定義されているように2回目の加熱時のガラス転移範囲の変化点を重合体のTgとして記載する。
【0117】
(防汚塗料組成物の調製手順の概略)
表4に示した割合で成分を混合した。250mLのペンキ缶のなかでガラスビーズ(径は約2mm)の存在下、加振器を用いて15分間、混合物を分散させた。試験前にガラスビーズはろ別した。
【0118】
(コーン及びプレート型粘度計を用いた塗料粘度の測定)
ISO 2884-1:1999に従って、温度を23℃に設定したデジタル式コーン及びプレート型粘度計を用い、剪断速度10000s-1で作動させ、粘度測定範囲を0~10Pとして防汚塗料組成物の粘度を測定した。3点の測定値の平均値として結果を示す。
【0119】
(防汚塗料組成物の揮発性有機化合物(VOC)含量の計算)
防汚塗料組成物の揮発性有機化合物(VOC)含量はASTM D5201に従って計算する。
【0120】
(海水中回転ディスク上の防汚塗膜の研磨速度の計算)
塗膜の膜厚の経時的な低下を測ることで研磨速度を測定する。この試験ではPVCディスクを用いる。フィルムアプリケーターを用いて上記ディスクに、放射状のストライプ状に塗料組成物を塗布する。表面プロファイラーにより乾燥塗膜の厚みを測定する。PVCディスクをシャフトの上に載せて、海水が中を流れている容器中で回転させる。回転するシャフトの速度を、ディスク上の平均シミュレート速度で16ノットとする。あらかじめろ過し、25℃±2℃に温度調節した天然の海水を使用する。膜厚を測定するためPVCディスクを定期的に取り出す。ディスクは、膜厚を測定する前に洗浄し、室温で一晩乾燥させる。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】