(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】聴覚検査用イヤープローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/12 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
A61B5/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017238357
(22)【出願日】2017-12-13
【審査請求日】2020-11-25
(32)【優先日】2016-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517301461
【氏名又は名称】インターアコースティックス アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】クレン ラーベク ノルガード
(72)【発明者】
【氏名】ピート ブレイ
(72)【発明者】
【氏名】ヒシャム サウド
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0161924(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0191004(US,A1)
【文献】特開2016-135238(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0324478(US,A1)
【文献】米国特許第04057051(US,A)
【文献】特開2016-135237(JP,A)
【文献】国際公開第2016/145522(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヤープローブ組立体であって、
近位側部および遠位側部を備えたハウジング構造体と、
前記ハウジング構造体内に配置された
少なくとも3つの変換器を含み、前記3つの変換器は、第1のサウンドポートを有する第1の変換器
と、第2のサウンドポートを有する第2の変換器と
、第3のサウンドポートを有する第3の変換器と、を含み
、
前記第1のサウンドポート、前記第2のサウンドポート、及び前記第3のサウンドポートの長手方向軸線は、互いに平行であり、
チャネル構造体
は、少なくとも、前記第1のサウンドポート
を受け入れるよう構成された
第1の変換器入口
と、前記第2のサウンドポートを受け入れるよう構成された第2の変換器入口と、前記第3のサウンドポートを受け入れるよう構成された第3の変換器入口と、を有し、前記チャネル構造体は、前記ハウジング構造体の前記近位側部から突き出ており、
前記
チャネル構造体は、
複数のチャネルを有し、前記第1
、前記第2
および第3の変換器と前記イヤープローブ
組立体の先端部分との間の音響経路を形成し、前記先端部分は、前記チャネル構造体と結合するよう構成され、
前記先端部分は、
一組の一体形音響チャネルを更に有し、前記
一組の一体形音響チャネルは、取り外し可能な仕方で前記チャネル構造体の
各チャネルに結合するよう構成され、
前記第1の変換器は、第1のメンブレンを有し、前記第2の変換器は、第2のメンブレンを有し、前記第1および前記第2の変換器は、前記第1のメンブレンが前記第2のメンブレンに実質的に垂直になるように前記ハウジング構造体内に配置され、前記第1のメンブレンは前記第1のサウンドポートの長手方向軸線を実質的にたどり、前記第2のメンブレンは前記第2のサウンドポートの長手方向軸線に実質的に垂直な方向をたどり、
前記第1の変換器及び前記第2の変換器は、前記第1の変換器の底面と、前記第2の変換器の上面が向き合うように配置され、
前記チャネル構造体は、前記第1の変換器、前記第2の変換器、及び前記第3の変換器に夫々対応する3つの平行なチャネルを有し、
前記3つの平行なチャネル各々は、対応する前記変換器の前記各サウンドポートと同一の長手方向軸線を共有し、前記第1、第2、第3の変換器に対応する前記第1、第2、第3の変換器入口を有し、前記先端部分の基端において前記先端部分の対応する音響チャネルと接続し、
前記チャネル構造体
の遠位端は、前記第1、第2の変換器の前記第1、第2のサウンドポートを受け入れるように構成されている、イヤープローブ組立体。
【請求項2】
前記第1の変換器の遠位端部が前記第2の変換器の遠位側部と実質的に面一をなすよう構成されている、請求項
1に記載のイヤープローブ組立体。
【請求項3】
前記ハウジング構造体の回路板が前記第1の変換器および前記第2の変換器を覆うよう配置されている、請求項1
または2に記載のイヤープローブ組立体。
【請求項4】
前記ハウジング構造体の頂端部内に設けられている回路板が前記第1の変換器の遠位端部に連結された状態で前記ハウジング
構造体の
長手方向軸線に沿って前記第2の変換器の底端部まで延び、前記底端部内の前記回路板は、前記第2の変換器に接続されている、請求項
2または3記載のイヤープローブ組立体。
【請求項5】
前記ハウジング構造体は、前記近位側部に設けられた実質的に平坦な表面領域を有し、前記先端部分の遠位側部は、前記実質的に平坦な表面に当接するよう構成され、
前記ハウジング構造体の前記チャネル構造体は、前記チャネル構造体の少なくとも一部分が前記先端部分内に実質的に収納されるよう前記先端部分の前記音響チャネル中に延びている、請求項1~
4のうちいずれか一に記載のイヤープローブ組立体。
【請求項6】
前記先端部分の近位表面と遠位表面との間の距離は、前記先端部分の長さを定め、前記チャネル構造体は、前記先端部分の前記長さの少なくとも半分を占めるよう前記先端部分中に延びている、請求項1~
5のうちいずれか一に記載のイヤープローブ組立体。
【請求項7】
前記チャネル構造体は、実質的に三角形の周囲を備え、前記先端部分は、前記チャネル構造体の前記三角形
の周囲に取り外し可能な仕方で嵌合するよう構成された対応の三角形開口部を有する、請求項1~
6のうちいずれか一に記載のイヤープローブ組立体。
【請求項8】
前記チャネル構造体は、前記チャネル構造体を前記ハウジング構造体内にロックするよう前記ハウジング構造体の内方側部上に位置している前記ハウジング構造体の一部に係合するよう構成された第1の係合構造体を有する、請求項1~
7のうちいずれか一に記載のイヤープローブ組立体。
【請求項9】
前記チャネル構造体は、第2の係合構造体を更に有し、前記第2の係合構造体は、前記先端部分と係合するよう構成されている、請求項1~
8のうちいずれか一に記載のイヤープローブ組立体。
【請求項10】
前記第2の係合構造体は、前記チャネル構造体から円形突出部として延びるとともに前記先端部分の溝と嵌合するよう構成された突出フランジとして形成されている、請求項
9記載のイヤープローブ組立体。
【請求項11】
前記第1の変換器は、マイクロフォンであり、前記第2の変換器は、受信器である、請求項1~
10のうちいずれか一に記載のイヤープローブ組立体。
【請求項12】
前記イヤープローブ
組立体は、前記イヤープローブ
組立体の先端部
分の前記音響チャネルのうちの1つを通って音響信号を送信するとともに前記音響チャネルのうちの1つを通って被験者の聴覚系によって放出された音響信号を受信するよう構成されている、請求項1~
11のうちいずれか一に記載のイヤープローブ組立体。
【請求項13】
前記チャネル構造体は、少なくとも2つの独立し、音響的に分離された音響経路を有し、前記音響経路の各々は、少なくとも2つの独立し、音響的に分離された前記先端部分の音響チャネルに接続されるように構成されている、請求項1~12のうちいずれか一に記載のイヤープローブ組立体。
【請求項14】
前記チャネル構造体の3つの前記音響経路各々の中に音響フィルタが配置され、前記イヤープローブ組立体のインパルス応答特性を改善する、請求項1~13のうちいずれか一に記載のイヤープローブ組立体。
【請求項15】
前記チャネル構造体の3つの前記音響経路各々の中に交換可能なワックスフィルタが配置されている、請求項1~14のうちいずれか一に記載のイヤープローブ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容、すなわち本発明は、患者の聴覚系の機能を検査する診断装置に関する。特に、本発明は、この診断装置の改良型のイヤープローブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
聴力診断分野内において、乳児ならびに成人の効率的かつ正確な聴覚検査を実施することができるということは、非常に重要である。ヒトの聴力損失(難聴)を評価する際、音響信号を放出して患者の聴覚系からの反応を集めるよう制御されるように構成されている聴力診断装置が一般的に用いられている。種々の聴覚検査目的で用いられる種々の診断装置が存在する(例えば、米国特許出願公開第2004/0171966号明細書)。
【0003】
例えば耳音響放射(OAE)、聴性誘発電位(AEP)、音圧反射率(AR)、耳音響反射(OR)またはティンパノメトリ(鼓膜聴力検査)の使用による乳児または成人の聴覚系における難聴を診断するには、音響プローブを患者の外耳道中に挿入することが必要である場合が多い。典型的には、かかる音響プローブは、少なくとも1つの変換器(トランスデューサ)、場合によっては2つの変換器から成り、変換器は、刺激信号を発生してこれを患者の聴覚系に放出するよう構成されている。ヒトの聴覚系は、放出信号を反射することによって刺激信号に応答する場合があり、OAE測定中、この放出信号は、音響プローブの第3の変換器によって特定される。測定された放出信号は、信号中に導入されるノイズによって容易に影響を受け、したがって、信号を正確に送って記録し、しかも測定値中に導入されるノイズを制限する音響プローブが好ましい。
【0004】
現行の聴力診断装置は、測定値中に導入されるノイズを特に制限するために設計を最適化することを常時目指している。通常、音響プローブは、手持ち型器具の一体形部分を形成することによって直接手持ち型器具に連結されまたはケーブルによって手持ち型器具に連結され、このケーブルは、一端が手持ち型器具に連結され、他端が音響プローブに連結される。しかしながら、両方の形式の器具について幾つかの欠点が存在し、したがって、それにより、聴力診断測定セットアップを最適化するための別の改良策が必要である。
【0005】
手持ち型器具は、この中に実質的に組み込まれた音響プローブを備えた状態で、大々的に用いられており、診断測定値の精度を最適化するよう開発されている。しかしながら、手持ち型器具では、測定値中に誤差を導入する恐れが依然として存在し、と言うのは、手持ち型器具は、患者の耳に直接当てて配置され、しかも音響プローブが耳の中に挿入された状態で手持ち型器具を動かすと、それによりノイズを導入する恐れが高まるからである。ノイズを挿入する同様な恐れがケーブル取り付け型音響プローブ技術にも存在し、この場合、音響イヤープローブを調節するためのケーブルの動きによりノイズが導入されるとともに変換器の不安定性が生じ、これは、イヤープローブを外耳道に当てて適正に配置することがノイズを導入する恐れを制限するためになぜ必要であるかということである。
【0006】
さらに、診断的聴力測定を実施する際、器具が使用後に十分にはクリーニングされていない場合、2人の患者の相互汚染の恐れが手持ち型器具の使用時に高まる。すなわち、手持ち型器具の大部分が測定中、患者の皮膚に接触し、したがって、診断的聴覚検査を実施した後に相当なクリーニングを必要とする。ケーブル取り付け型音響プローブ技術では、かかる相互汚染は、ケーブルが患者の器具の手持ち部分との間に距離を生じさせるので制限できる。しかしながら、かかるケーブル技術では、外耳道への確実な結合が必要であり、と言うのは、測定中のケーブルが動くと、それにより望ましくないノイズが導入される場合があるからである。
【0007】
誤差のある測定の恐れは、デブリが音響イヤープローブの音響管に入るようになっている場合に更に高まる。音響管に入ってこの中に取り込み状態になったデブリは、音響経路を閉塞させる場合があり、それによりプローブの較正パラメータおよび次の診断測定が影響を受ける。
【0008】
加うるに、診断的聴力測定中、特に乳児を検査する場合、手持ち型器具を操作するのに利用できる空間が制限される。すなわち、例えば乳児を検査する場合、乳児は、通常、親の腕の中にまたは寝台に横たわり、オペレータは、制限された広さの空間の中で器具を操作する必要があり、これは、乳児の耳の近くに配置されるべき大型手持ち型器具では困難な場合がある。したがって、手持ち型器具およびイヤープローブの再位置決めが測定に先立って必要な場合があり、それにより乳児を起こして次の測定中にノイズを導入するお恐れが高まる。さらに、一体形イヤープローブを有する手持ち型器具では、オペレータは、手持ち型器具を定位置に保つ必要があり、その間、オペレータはそれと同時に、器具を傾けて測定スクリーンが見えるようにする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かくして、一体形イヤープローブまたはケーブル取り付け型音響イヤープローブを有する手持ち型器具の欠点は、多く、したがって、より正確な測定およびより効率的な診断用環境セットアップを可能にする改良型診断器具を提供するためにこれら欠点のうちの少なくとも幾つかを軽減する解決手段を提供する必要が存在する。したがって、上述の問題のうちの少なくとも幾つかを取り扱う技術を提供する必要がある。本発明は、少なくとも、先行技術に代わる解決手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的および別の目的は、近位側部および遠位側部を備えたハウジング構造体を含むイヤープローブ組立体によって達成され、少なくとも、第1の変換器および第2の変換器がハウジング構造体内に配置される。第1の変換器は、第1のサウンドポートを有し、第2の変換器は、第2のサウンドポートを有する。イヤープローブ組立体は、第1のサウンドポートおよび第2のサウンドポートをそれぞれ受け入れるよう構成された少なくとも第1の変換器入口および第2の変換器入口を有する少なくとも1つのチャネル構造体を更に含み、チャネル構造体は、ハウジング構造体の近位側部から突き出ている。変換器のうちの少なくとも1つによって患者の外耳道に放出された音を案内するため、少なくとも1つのチャネル構造体は、第1および第2の変換器とイヤープローブの先端部分との間の音響経路を形成し、先端部分は、チャネル構造体と結合するよう構成されている。先端部分は、1組の一体形音響チャネルを更に有し、1組の一体形音響チャネルは、取り外し可能な仕方でチャネル構造体に結合するよう構成されている。
【0011】
したがって、音響的に封止されるとともにチャネル構造体に連結された1組の一体形音響チャネルを備えた取り外し可能な先端部分を有するイヤープローブが提供される。これにより、ノイズを制限するとともに少なくとも1つまたは2つ以上の変換器と先端部分との間の音響経路を効果的に封止し、それにより変換器によって放出される音響信号を最適化するとともに患者の聴覚系によって放出される信号の別の変換器による別の測定を最適化する例えば診断装置の効果的なイヤープローブの提供が可能である。
【0012】
難聴検査に用いられる診断装置では、測定中に導入されるクロストーク成分を回避することが特に重要であり、と言うのは、刺激に対する応答としての聴覚系により放出される信号が小さく、そして測定装置のエレクトロニクスからのクロストークによって容易に汚染されるからである。かくして、診断装置の音響プローブの潜在的なクロストークを減少させるため、イヤープローブ組立体は、一実施形態では、第1の変換器が第1のメンブレンを有し、第2の変換器が第2のメンブレンを有するよう構成されるのが良く、この場合、第1および第2の変換器は、第1のメンブレンが第2のメンブレンに実質的に垂直に位置するようハウジング構造体内に配置される。第1および第2の変換器のかかる配置により、イヤープローブ組立体内の機械的クロストークが減少する。すなわち、第2の変換器(例えば、受信器)により生じる信号は、第1の変換器に信号(受信器の機械的振動に起因する)を導入する場合があり、第1の変換器は、測定変換器(例えば、マイクロフォン)であるのが良い。第2の変換器から第1の変換器(すなわち、測定変換器)へのクロストークがあれば、これにより聴力診断装置により実施される聴力測定値に望ましくない信号成分が導入される場合がある。
【0013】
さらに、第1の変換器のメンブレンと第2の変換器のメンブレンの相互垂直配置によって、イヤープローブ組立体のハウジング構造体内のスペースの取り方が最適化される。かかる構成では、第1および第2の変換器は、必要な空間の広さが制限された状態でよく、しかも小さなハウジング構造体が達成されるよう配置されるのが良い。
【0014】
したがって、イヤープローブ組立体の実施形態では、ハウジング構造体は、ハウジング構造体の長手方向軸線を定める頂端部および底端部を有する。さらに、第2の変換器は、ハウジングの頂端部に向いた頂端部およびハウジングの底端部に向いた底端部を有するのが良い。第1の変換器は、ハウジング構造体の近位側部および遠位側部にそれぞれ向いていて第1の変換器のサウンドポートの長手方向軸線を定める近位側部および遠位側部を有するのが良く、サウンドポートの長手方向軸線は、ハウジング構造体の長手方向軸線に実質的に垂直に配置されている。かくして、第1の変換器と第2の変換器は、第1の変換器の底側部が第2の変換器の頂端部に向き、第1の変換器の頂側部がハウジング構造体の頂端部に向くよう互いに対して配置される。これにより、イヤープローブの良好な音響性能の実現が可能であり、この場合、例えば第1の変換器と第2の変換器との間における例えば機械的振動に起因して導入されるクロストークが少ない。さらに、第1および第2の変換器を収容するのに必要なハウジング構造体内の空間が狭く、それにより、診断装置を取り扱うオペレータにとって取り扱うのが容易なイヤープローブ組立体の小さなハウジング構造体の実現が事実上可能である。
【0015】
さらに、一実施形態では、第1の変換器の遠位端部は、第2の変換器の遠位側部と実質的に面一をなすよう配置される。第1および第2の変換器を実質的に互いに面一をなした状態にすることにより、空間最適化技術においてハウジング構造体の少なくとも遠位側部上に実質的に平坦な表面領域が実現される。
【0016】
別の実施形態では、ハウジング構造体の回路板、例えばプリント回路板(PCB)が第1の変換器および第2の変換器を覆うよう配置される。これにより、イヤープローブ組立体の単純な組立てプロセスが実現でき、この場合、電気部品をPCBにはんだ付けする際における変換器の過熱および損傷の恐れが軽減する。さらに、PCBを変換器上に直接取り付けることにより、第1の変換器と第2の変換器をイヤープローブ組立体の残りの部品への連結に先立って容易に組立てることができる。
【0017】
したがって、一実施形態では、第1および第2の変換器は、PCBおよびチャネル構造体と一緒に組立てられる。この組み合わせ構造体を組立て後「クリック」してハウジング構造体に係合させ、次に電気部品、例えば電線をPCBにはんだ付けする。その結果、電気部品は、グルーまたは他の適当な手段の使用により、例えば、取り付け要素および/または構造体をPCBおよびPCBに固定されるべき電気部品に追加することによる機械的固定によってハウジング内にしっかりと固定できる。
【0018】
より詳細には、回路板は、一実施形態では、ハウジング構造体の頂端部内において回路板が第1の変換器の遠位端部に連結されるよう配置されるのが良い。ここから、回路板は、ハウジングの長さ方向に沿って第2の変換器の底端部まで延びるのが良く、回路は、この底端部内において、第2の変換器に接続される。これにより、回路板は、変換器の外形をたどることができ、それにより空間が最適化される。
【0019】
本明細書で説明したようなイヤープローブ組立体のハウジング構造体内における変換器の配置により、突出チャネル構造体を備えた実質的に長手方向のハウジング構造体が提供される。実質的に長手方向のハウジング構造体により、ユーザの外耳道への先端部分の良好な位置合わせが可能であり、と言うのは、少なくともハウジング構造体の近位側部とハウジング構造体の遠位側部との間の方向で定められる「幅方向」における小さなハウジング構造体が小さなモーメントアームを生じさせ、このモーメントアームが先端部分を患者の外耳道中に挿入したときにハウジング構造体を安定化するからである。
【0020】
すなわち、一実施形態では、ハウジング構造体は、近位側部上に実質的に平坦な表面領域を有するのが良く、この場合、先端部分の遠位側部は、実質的に平坦な表面に当接するよう構成される。さらに、このハウジング構造体のチャネル構造体は、先端部分の音響チャネル中に延びるのが良く、その結果、チャネル構造体の少なくとも一部が先端部分内に実質的に収納されるようになっている。これにより、先端部分とチャネル構造体との間における効率的なシールの実現が可能であり、他方、実質的に安定した先端部分をも提供し、これは、先端部分を患者の外耳道内に配置した場合に容易には曲がらない。
【0021】
さらに、これによっても、オペレータがノイズを測定値中に導入する恐れのあるプローブケーブルの保持によってプローブを安定化する必要がないような仕方で耳の中への良好なイヤープローブの配置が可能である。
【0022】
より詳細には、一実施形態では、イヤープローブ組立体は、先端部分の近位表面と遠位表面との間の距離が先端部分の長さを定めるよう構成されているのが良く、チャネル構造体は、先端部分の長さの少なくとも半分を占めるよう先端部分中に延びている。これにより、先端部分の長さに沿う先端部分の実質的に変化する安定性が得られ、その結果、先端部分は、先端部分がハウジング構造体に当接する遠位表面のところでは安定性が高くなり、その近位側部に向かう先端部分の長さに沿って安定性が低くなる(すなわち、可撓性が高くなる)。
【0023】
音響イヤープローブの先端部分を変換器の音響チャネルに取り付ける際、先端部分の音響チャネルと変換器の音響チャネルの正確な位置合わせが達成されるべきである。イヤープローブ組立体の先端部分とチャネル構造体との位置合わせのこの複雑さは、一実施形態において、チャネル構造体が実質的に三角形の周囲を備えるように構成されたイヤープローブ組立体により軽減される。先端部分は、チャネル構造体の三角形周囲に取り外し可能な仕方で嵌合するよう構成された対応の三角形開口部を有する。これにより、三角形の形が先端部分の音響チャネルとチャネル構造体の音響経路との完全な位置合わせを可能にするので、一方向で取り付け可能なイヤープローブ組立体の取り付け構造体の実現が可能である。
【0024】
さらに、一実施形態では、チャネル構造体は、少なくとも2本、好ましくは3本の独立しかつ音響的に分離された音響経路を有し、これら音響経路は各々、先端部分の少なくとも2本、好ましくは3本の独立しかつ音響的に分離された音響チャネルと結合するよう構成されている。
【0025】
一実施形態では、チャネル構造体は、少なくとも3本のチャネルを有するのが良く、各チャネルは、変換器入口の各々をそれぞれ有し、各変換器入口は、先端部分の近位端部内の対応の音響チャネルと結合するよう構成されるとともにチャネル構造体の遠位端部内に第1および第2の変換器の第1および第2のサウンドポートを受け入れるよう構成され、フィルタがチャネル構造体の3本のチャネルの各々内に配置されている。これにより、イヤープローブの衝撃応答の十分な減衰が可能である。
【0026】
一実施形態では、フィルタは、チャネル構造体の3本のチャネルの各々内に挿入されるワックスフィルタであるのが良く、ワックスフィルタは、交換可能であるように構成されている。これにより、使い捨てワックスガードが得られ、この使い捨てワックスガードは、ユーザによって容易に交換可能である。したがって、先端部分は、ワックスが変換器のサウンドポートに入るのを阻止するだけでなく、チャネル構造体のワックスガードは、余剰の保護をもたらす。かくして、ワックスがチャネル構造体中に入り込む場合、これは、ワックスガードによって事前に変換器のサウンドポートに入るのが止められる。
【0027】
本明細書において説明する実施形態は、音響フィルタとワックスフィルタの両方を更に有するのが良く、この場合、ワックスフィルタは、デブリがチャネル構造体の音響チャネルの中に入らないようにしてプローブの音響的特性を向上させるようにし、音響フィルタは、音響イヤープローブの衝撃応答特性を向上させる。音響フィルタは、音響イヤープローブの変換器の周波数応答における共鳴を減衰させ、それにより衝撃応答の長さを減少させる抵抗器として働く。ある特定の測定、例えば、一過性誘発耳音響放射(TEOAE)では、音響イヤープローブの衝撃応答がスピーカアーチファクトと実際のOAE応答とを識別するために2.5~4ms後に完全に遅延すると仮定されており、フィルタが設けられていない場合にはこのようにはならず、測定は、誤った応答結果を示すことになる。したがって、音響フィルタは、変換器の周波数応答の共鳴を減衰させることによって音響プローブ測定値の精度を高める。
【0028】
以下において詳細に説明する実施形態では、チャネル構造体は、第1および/または第2の係合構造体を有するのが良く、この構造体は、イヤープローブ組立体の構成要素相互間の効率的なシールおよびロックを可能にするようハウジングおよび/または先端部分の一部に係合するよう構成されている。
【0029】
注目されるべきこととして、一実施形態では、第1の変換器は、好ましくは、刺激を放出するよう構成された受信器であり、第2の変換器は、検査中の聴覚系からの放出信号を記録するよう構成されたマイクロフォンである。
【0030】
本明細書において説明する実施形態によれば、イヤープローブは、イヤープローブ先端部の音響チャネルのうちの1つを通って音響信号を送信するとともに音響チャネルのうちの1つを通って検査中の患者の聴覚系によって放出された音響信号を受信するよう構成されている。したがって、上述したように、チャネル構造体の音響チャネルおよびイヤープローブ先端部は、互いに音響的に分離されるよう構成されている。
【0031】
さらに、一実施形態では、ハウジング構造体の底端部は、好ましくは、ケーブルに連結され、このケーブルは、聴覚検査セットアップを制御するよう構成された聴覚検査システムに連結される別の端部である。したがって、本明細書において説明する実施形態としての診断的聴覚検査システムは、好ましくは、手持ち型器具を有するものと理解されるべきであり、ケーブルは、この手持ち型器具から、聴覚検査測定を最適化するよう延びる。本明細書において説明する実施形態に従って実質的に構成されるかかる器具によって、先行技術の欠点を実質的に解決する診断装置が提供される。
【0032】
本発明の観点は、添付の図面と関連して行われる以下の詳細な説明から最も良く理解できる。図は、分かりやすくするために概略的であってかつ単純化されており、これらの図は、特許請求の範囲の記載の理解を高めるよう細部を示し、他の細部は、省かれている。図全体にわたり、同一の参照符号が同一または対応の部分について用いられている。各実施形態の個々の特徴は各々、他の観点または実施形態の任意の特徴または全ての特徴と組み合わせ可能である。これらの観点、特徴および/または技術的作用効果および他の観点、特徴および/または技術的作用効果は、以下に説明する記載内容から明らかであるとともにかかる記載内容を参照すると明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態としてのイヤープローブ組立体を示す図である。
【
図2】
図1のイヤープローブ組立体の部分組立て分解側面図である。
【
図3】一実施形態によるイヤープローブの分解組立て斜視図である。
【
図4】一実施形態によるイヤープローブの部分組立て分解斜視図であり、変換器組立体がハウジング構造体内に設けられている状態を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態としてのイヤープローブ組立体の断面側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態としてのイヤープローブ組立体の部分組立て分解図であり、回路が詳細に見える図である。
【
図7】患者の耳の近くに配置されたイヤープローブ組立体の挿入状体を示す図である。
【
図8】イヤープローブ組立体が挿入された外耳道の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
添付の図面と関連して以下に記載する詳細な説明は、種々の形態の説明として意図されている。詳細な説明は、種々の観点の完全な理解を提供する目的で特定の細部を含む。しかしながら、当業者には明らかなように、これら概念は、これら特定の細部なしで実施できる。装置および方法の幾つかの観点は、種々の構造、機能的ユニット、モジュール、コンポーネント、回路、ステップなど(ひとまとめに「要素」と言う)によって説明される。特定の用途、設計上の制約または他の理由に応じて、これら要素は、電子ハードウェア、コンピュータプログラム、またはこれらの任意の組み合わせを用いて具体化できる。
【0035】
難聴を検査するために使用される診断装置は、一般に、音響プローブ(すなわち、イヤープローブ)が例えばケーブルを介して連結される手持ち型器具および/または据え置き型器具を含み、この音響プローブは、手持ち型器具中に一体化される。据え置き型器具または手持ち型器具は、刺激信号を発生させてこれを音響イヤープローブに送るよう構成されたエレクトロニクスを有し、その結果、音響イヤープローブの変換器の使用によって刺激信号を患者の外耳道中に送り込むことができるようになっている。さらに、手持ち型または据え置き型器具は、音響イヤープローブの第2の変換器によって患者の聴覚系から測定された受信信号を処理するよう構成されている処理ユニットを有するのが良い。処理ユニットは、この信号を処理して検査中の患者の難聴特性を得ることができる。さらに、手持ち型または据え置き型器具は、ディスプレイを有するのが良く、この装置のオペレータは、この器具を作動させて刺激信号を送り出し、そして音響イヤープローブなどの測定変換器によって測定された信号を分析するようになっている。
【0036】
注目されるべきこととして、本明細書全体を通じて、「近位」という用語は、イヤープローブ組立体を測定位置で作動させたときに患者の外耳道の開口に向いた要素(例えば、先端部分、ハウジング構造体、変換器など)の側を定めるものとして理解されるべきである。したがって、「遠位」という用語は、近位側とは反対側であって患者の外耳道の開口から遠ざかる方向に向いた側として理解されるべきである。
【0037】
最初に
図1を参照すると、本発明のイヤープローブ組立体の全体像が示されている。イヤープローブ組立体1は、近位側部21および遠位側部22を備えたハウジング構造体2を含む。ハウジング構造体2は、少なくとも、第1の変換器および第2の変換器を収容するよう構成されており、第1の変換器は、第1のサウンドポートを有し、第2の変換器は、第2のサウンドポート(図示せず)を有する。さらに、イヤープローブ組立体1は、先端部分6を含み、さらに、この先端部分は、1組の一体形音響チャネル61を有する。先端部分6は、取り外し可能な仕方でイヤープローブ組立体1のチャネル構造体(図示せず)と嵌合するよう構成されている。先端部分6は、チャネル構造体と嵌合するよう構成されており、先端部分の側部分63(すなわち、遠位側部)は、ハウジング構造体の近位側部21の一部に当接するようになっている。
【0038】
さらに、ハウジング構造体は、ケーブル9に連結された底端部24内に位置し、このケーブルは、反対側の端が、本明細書において提供される定義に従って難聴測定セットアップの測定を制御するような作動構成の手持ち型器具に結合する。注目されるべきこととして、詳細には図示されていない場合であっても、プローブ先端部は、このプローブ先端部6が実質的にチャネル構造体を収容するよう構成され、その結果、十分な音響的封止または防音効果が得られるようになっている。さらに、取り外し可能なプローブ先端部6により、聴力測定を実施する際に患者相互間の交代が容易であり、それにより交差汚染およびイヤープローブ先端部の詰まりが回避される。
【0039】
したがって、本発明のイヤープローブ組立体は、イヤープローブ先端部6の音響チャネルのうちの1つを通って音響信号を送り、そして音響チャネルのうちの1つを通って患者の聴覚系により放出された音響信号を受け取るよう構成されている。
【0040】
以下の図において、イヤープローブ組立体の実施形態について詳細に説明する。注目されるべきこととして、実質的に同一の要素には同一の符号がつけられている。
【0041】
次に
図2を参照すると、
図1のイヤープローブ組立体1の部分分解組立て図が示されており、先端部分6は、ハウジング構造体2の一部から取り外されている。より詳細に説明すると、
図2は、ハウジング構造体2の一部をなすチャネル構造体5を示している。すなわち、図示の実施形態では、少なくとも1つのチャネル構造体5がハウジング構造体2の近位側部21から突き出るよう構成されている。チャネル構造体5は、以下に更に詳細に説明するハウジング構造体内の第1および第2の変換器の第1のサウンドポートおよび第2のサウンドポートをそれぞれ受け入れるよう構成された第1の変換器入口および第2の変換器入口を有する。少なくとも1つのチャネル構造体5は、第1および第2の変換器から先端部分6まで音響経路51を形成している。イヤープローブは、チャネル構造体5に結合するよう構成され、1組の一体形音響チャネル61は、チャネル構造体5に結合している。
【0042】
少なくとも
図1で最も良く理解できるように、ハウジング構造体2は、近位側部21上に実質的に平坦な表面領域を有し、先端部分6の遠位側部63は、ハウジング構造体の近位側部21を形成する実質的に平坦な表面に当接するよう構成されている。
【0043】
図2で分かるように、チャネル構造体5は、少なくとも3本のチャネル52,53,54を有するのが良く、各チャネル52,53,54は、その遠位端部が第1の変換器か第2の変換器かのいずれかのサウンドポートを受け入れるよう構成され、反対側の近位端部が先端部分6の対応の音響チャネル61に結合するよう構成されている。したがって、チャネル52,53,54は、先端部分の一体形音響チャネル61内に収納されるよう構成され、それにより、ハウジング構造体の変換器と患者の外耳道との間の封止音響経路が構成されている。
【0044】
さらに、
図2で理解されるように、チャネル構造体5は、先端部分6と嵌合するよう構成された係合構造体59(第2の係合構造体としても示されている)を更に有する。
【0045】
本明細書において説明するチャネル構造体5および先端部分6を含むイヤープローブ組立体の構成では、効果的な音響シールが達成されるだけでなく、十分に安定したイヤープローブ組立体が達成される。すなわち、チャネル構造体が先端部分内に実質的に納められることにより、耳との適正な位置合わせが可能であり、と言うのは、ハウジング構造体に対するプローブ先端部の「モーメントアーム」が最小限に抑えられるからである(さらに詳細に説明する)。したがって、プローブが耳の中に挿入されたときにノイズを生じさせるイヤープローブの例えば上方および/または下方運動による意図しない曲げの恐れが減少する。
【0046】
本発明の実施形態としてイヤープローブが
図3に詳細に示されており、
図3は、イヤープローブ組立体1の分解組立て図である。
図3で理解されるように、イヤープローブ組立体は、少なくとも、第1の変換器3および第2の変換器4を含み、これら変換器は、ハウジング構造体2内に配置されている。好ましくは、第3の変換器7もまた、第1の変換器3および第2の変換器4と関連して配置されている。変換器3,4,7の配置状体が
図4および
図5に最も良く示されており、これらの図を参照してこれらの変換器について詳細に説明する。
【0047】
図3は、さらに、チャネル構造体5を示しており、このチャネル構造体は、その内方側部上に音響経路を構成する少なくとも2本、好ましくは3本の独立しかつ音響的に分離されたチャネル52,53,54を有する。音響経路は各々、先端部分の少なくとも2本、好ましくは3本の独立しかつ音響的に分離された音響チャネル61と結合するよう構成されている。先端部分6の音響チャネル61が
図3に示され、音響チャネル61は、先端部分6の近位側部中に開口している。イヤープローブ先端部6の遠位側部のところに、音響チャネルは、チャネル構造体5の分離された音響チャネル52,53,54を受け入れるよう構成された開口部を形成している。
【0048】
さらに、
図3および
図4は、本発明の実施形態としてのチャネル構造体5を詳細に示している。理解されるように、チャネル構造体5は、ハウジング構造体の内方側部27上のハウジング構造体2の一部と係合してチャネル構造体5をハウジング構造体2内にロックするよう構成された第1の係合構造体55を有する。
【0049】
より詳細に説明すると、
図5および
図6に更に詳細に最も良く示されているように、チャネル構造体5の第1の係合構造体55は、チャネル構造体5のベース部分56から突き出た階段状フランジ構造体を有する。換言すると、チャネル構造体5のベース部分56は、チャネル構造体5の実質的に三角形のベース(例えば
図4参照)を形成している。遠位側から突出部が形成され、この突出部は、第1の直径を有する第1の段部57を形成し、この第1の段部は、第1の段部よりも大きな第2の直径を有する第2の段部58に連続的に合体している。
図5で最も良く分かるように、第1の係合部材55を形成するプレート型フランジ突出部の第1の段部57と第2の段部58との間の移行部は、ハウジング構造体2内に引っ込むよう構成され、その結果、第2の段部58は、ハウジング構造体2に設けられている突出部26に当接し、それにより、第1の係合部材55は、ハウジング構造体の組立て時にハウジング構造体内に保持される。
【0050】
したがって、チャネル構造体5は、図示のように、実質的に三角形の周囲を備えるのが良く、先端部分6は、チャネル構造体5の三角形の周囲と取り外し可能な仕方で嵌合するよう構成された対応の三角形の開口部を有する。このように、「一方向」取り付けが達成される。すなわち、チャネル構造体5および先端部分6の実質的に三角形の形状により、先端部分の音響チャネル61とチャネル構造体5のチャネル52,53,54の容易な位置合わせが可能である。
【0051】
また
図3に示されている別の実施形態では、チャネル構造体5は、第2の係合構造体59を有し、この第2の係合構造体は、先端部分6と嵌合するよう構成されている。したがって、例えば
図5および
図6を参照すると、第2の係合構造体59は、チャネル構造体5からの円形突出部として延びる突出フランジとして形成されている。第2の係合構造体59は先端部分6の溝67と嵌合するよう構成されている。さらに、第2の係合構造体59と第1の係合構造体55の第1の段部57との間の空間は、先端部分の突出部64を受け入れるよう構成されている。したがって、イヤープローブ組立体の第1および第2の係合構造体は、チャネル構造体がハウジング構造体にしっかりと連結され、更にイヤープローブ先端部がイヤープローブ先端部にしっかりと連結されるようにする。
【0052】
次に
図5および
図6を参照して変換器組立体について詳細に説明する。上述したように、イヤープローブ組立体1は、少なくとも2つの変換器3,4を含み、第1の変換器3は、第1のメンブレン(図示せず)を有し、第2の変換器4は、第2のメンブレン(図示せず)を有する。変換器3,4相互間のクロストークを減少させるため、第1の変換器3および第2の変換器4は、第1の変換器3の第1のメンブレンが第2の変換器4の第2のメンブレンに実質的に垂直に位置するようハウジング構造体2内に配置されている。すなわち、第1の変換器3の第1のメンブレンは、第1の変換器3の第1のサウンドポートの長手方向軸線によって定められた第1の変換器の長手方向軸線35を実質的にたどり、第2の変換器4の第2のメンブレンは、ハウジング構造体2の長手方向軸線25を実質的にたどる。このように、第1のメンブレンと第2のメンブレンは、互いに垂直に配置され、それにより、少なくとも、変換器相互間の機械的クロストークが減少する。
【0053】
より詳細に説明すると、一実施形態では、ハウジング構造体は、ハウジング構造体の長手方向軸線25を定める頂端部23および底端部24を有する。第2の変換器4は、ハウジング構造体2の頂端部23に向いた頂端部42およびハウジング構造体2の底端部24に向いた底端部43を有する。さらに、第1の変換器3は、ハウジング構造体2の近位側部21および遠位側部22にそれぞれ向いた近位側部32および遠位側部33を有する。第1の変換器の近位側部32および遠位側部33は、第1の変換器3の第1のサウンドポート31の長手方向軸線35を定める。かくして、第1のサウンドポート31の長手方向軸線35は、ハウジング構造体の長手方向軸線25に実質的に垂直である。さらに、変換器3,4は、第1の変換器の底側部が第2の変換器の頂端部に向くとともに第1の変換器の頂側部が、ハウジング構造体の頂端部に向くよう配置されている。
【0054】
本明細書において説明する変換器の構成では、変換器相互間のクロストークが最小限に抑えられるだけでなく、スペースの最適化が達成される。すなわち、変換器を上述したように配置すると、実質的に平坦な変換器配列体を得ることができる。すなわち、ハウジングの小さな幅が達成され、それにより患者の耳と容易に位置合わせされるより安定したイヤープローブ組立体の実現が可能である。
【0055】
したがって、この実施形態の別の改造例では、第1の変換器の遠位端部は、第2の変換器の遠位側部と実質的に面一をなすよう配置される。これにより、変換器組立体の実質的に平坦な表面領域が作られ、それにより、変換器をイヤープローブハウジング構造体22内に配置するのに必要な空間が狭くてすむ。
【0056】
したがって、ハウジング構造体2の近位側部21と遠位側部22との間の距離によって定められるハウジング構造体2の幅(
図8には点線28として示されている)をこの実質的に「扁平な」変換器組立体により減少させることができる。例えば
図5および
図6に示されているように、イヤープローブ組立体は、先端部分の近位表面と遠位表面との間の距離が先端部分6の長さ(点線65で示されている)を定めるよう構成されている。図示のように、チャネル構造体5は、少なくとも一実施形態では、先端部分6の長さの少なくとも半分を占めるよう先端部分6中に延びている。しかしながら、注目されるべきこととして、チャネル構造体は、多少先端部分6中に延びても良い。チャネル構造体5が先端部分中に実質的に延びるようにチャネル構造体5を提供することによって、耳の中に良好なプローブ配置が可能であり、と言うのは、先端部分のモーメントアームが減少するからである。このように、診断装置のオペレータは、プローブケーブルを保持することによってイヤープローブを安定化する必要はなく、それによりノイズが減少する。
【0057】
図6に最もよく示された別の実施形態では、イヤープローブ組立体は、第1の変換器3および第2の変換器4を実質的に覆うようハウジング構造体2内に配置された回路板8を含む。
【0058】
さらに詳細には、一実施形態では、回路板8は、ハウジング構造体2の頂端部23内で回路板が第1の変換器3の遠位端部に接続されるようハウジング構造体2内に配置されている。ここから、回路板8は、ハウジング構造体2の長手方向に沿って第2の変換器4の底端部43まで延びている。回路板8は、この底端部43内で第2の変換器4に接続されている。
【0059】
PCBを上述したように変換器と接続した状態に配置することにより、単純化された組立てプロセスが得られ、PCBは、ハウジング構造体中への挿入に先立って変換器に取り付けられる。さらに、はんだ付け中における変換器の過熱および損傷の恐れが減少する。
【0060】
例えば
図5および
図6に最も良く示された実施形態では、イヤープローブ組立体1は、上述したように、チャネル構造体の遠位端部内の第1の変換器3および第2の変換器4の第1のサウンドポート31および第2のサウンドポート41を受け入れるよう構成されている。
図5に示されている実施形態では、フィルタ66がチャネル構造体5のチャネル53に配置されている。イヤープローブ組立体のこの断面図では詳細に示されていないが、チャネル構造体5の3本のチャネル52,53,54の各々内にはフィルタ66が配置されるのが良い。注目されるべきこととして、イヤープローブ組立体は、このフィルタなしで製作可能である。しかしながら、例えば、フィルタは、ワックスがイヤープローブ組立体の変換器中に入るのを阻止するワックスフィルタとして構成されるのが良い。
【0061】
さらに、例えば
図6を参照すると、音響イヤープローブは、音響フィルタ68とワックスフィルタ66の両方を有するのが良く、ワックスフィルタは、デブリがチャネル構造体の音響チャネルの中に入らないようにしてプローブの音響的特性を向上させるようにし、音響フィルタは、音響イヤープローブの衝撃応答特性を向上させる。音響フィルタは、音響イヤープローブの変換器の周波数応答における共鳴を減衰させ、それにより衝撃応答の長さを減少させる抵抗器として働く。したがって、音響フィルタは、変換器の周波数応答の共鳴を減衰させることによって音響プローブ測定値の精度を高める。
【0062】
次に
図7および
図8を参照して、本明細書において説明した実施形態としてのイヤープローブ組立体の実質的に組み合わされた構造的利点について診断セットアップの観点で説明する。イヤープローブ組立体1は、例えば成人または乳児の患者の耳100内に挿入されるよう構成され、この患者の聴覚系の機能を測定すべきである。イヤープローブ組立体1の先端部分6を患者の外耳道103中に挿入し、ハウジング構造体2を耳の外形101と実質的に位置合わせする。したがって、イヤープローブ組立体1は、ハウジング構造体2が耳の外形と位置が合う実質的に平坦な表面領域を有するよう構成され、それにより、イヤープローブの再位置決めに起因してノイズを導入する恐れを減少させる耳との確実かつ安定した位置合わせが達成される。
【0063】
これは、本明細書において説明するイヤープローブ組立体の構成によって実質的に達成され、それにより、耳の減少したモーメントアーム102が提供される。すなわち、先端部分6を外耳道103内に挿入したときに外耳道の外側に延びる先端部分6の長さ分102(すなわち、モーメントアーム)が本明細書において説明したような先端部分6内のチャネル構造体5の配置に起因して最小限に抑えられる。さらに、先端部分は、安定性がありしかも容易には「曲げ可能」ではなく、このことは、ハウジングの構成と一緒になって、再位置決めの必要性を制限し、それによりノイズの導入を制限する。
【0064】
注目されるべきこととして、イヤープローブ組立体の第1の変換器は、好ましくは、マイクロフォンであり、第2および第3の変換器は、好ましくは、受信器として構成される。マイクロフォンは、聴覚系の音響応答を測定することを意図しており、この応答は、1つまたは2つ以上の受信器の使用により外耳道中に導入される放出信号によってトリガされる。
【0065】
少なくとも
図3および
図6を参照して、本発明の実施形態としてのイヤープローブ組立体の組立て方法について説明する。上述したように、イヤープローブ組立体は、頂部の高さ位置のところに、ハウジング構造体2から突き出たチャネル構造体5に連結されている先端部分6を含む。イヤープローブ組立体の組立ての際、第1のステップが開口部を備えたハウジング構造体を提供するようになっており、チャネル構造体5は、この開口部内に配置されるべきである。第2のステップが上述のチャネル構造体5および1組の変換器を提供するステップを含む。第1の組立てステップでは、少なくとも、第1および第2の変換器をチャネル構造体に連結する。第2の組立てステップでは、プリント回路板を変換器に取り付け、チャネル構造体5と、第1および第2の変換器と、PCBとを含むプローブ組立体が提供されるようにする。したがって、第3の組立てステップでは、チャネル構造体5を、組をなすPCBと変換器がこれに取り付けられた状態で、ハウジング構造体2の第1のシェル部分内に配置する。第1のシェル部分は、開口部を有し、チャネル構造体5は、この開口部を通って突き出ている。さらに、ハウジング構造体2の第1のシェル部分は、チャネル構造体5の第1の係合部材55をハウジング内に保持するよう構成された突出部26(
図5を比較参照されたい)を更に有する。第4の組立てステップでは、一端がハウジング構造体2に連結され、他端が診断的手持ち型操作器具に連結されたケーブル9をハウジング構造体に連結し、ハウジング構造体2の変換器を制御するよう構成された電線をPCBの裏側にはんだ付けする。その結果、最終ステップでは、ハウジング構造体内部をグルーで満たして種々のコンポーネントをハウジング構造体2内に固定し、第2のシェル構造体(ふたとして形成されている)をハウジング2の第1のシェル構造体に取り付ける。好ましくは、第2のシェル構造体をスナップ動作で第1のシェル構造体に係合させる。
【0066】
本明細書において説明した方法により、特に、PCBと変換器のサブアセンブリにより、組立プロセスが改良されるとともに組立費が減少し、と言うのは、変換器がこのようにPCBおよびチャネル構造体と一緒にハウジング内に容易にかつ正確に配置されるからである。
【0067】
詳細な説明中および/または特許請求の範囲の記載のいずれかに記載された上述した装置の構造的特徴を対話のプロセスによって適当に置換された場合、この方法のステップと組み合わせることができる。
【0068】
原文明細書で用いられる単数形“a”、“an”、および“the”は、別段の指定がなければ、複数形をも含むものである(すなわち「少なくとも1つ」の意味を有するようになっている)。さらに理解されるように、“includes”(訳文では「~を含む」としている場合が多い)、“comprises”(「~を有する」)、“including”(「~を含む」)、および/または“comprising”(「~を有する」)は、原文明細書において用いられる場合、記載した特徴、整数、ステップ、操作、要素、および/またはコンポーネントの存在を特定しているが、1つまたは2つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、コンポーネント、および/またはこれらの群の存在または追加を排除するものではない。また、理解されるように、要素が別の要素に「連結され」または「結合され」と記載されている場合、これは、他の要素に直接的に連結または結合できるが、別段の指定がなければ1つまたは2つ以上の介在する要素が存在しても良い。さらに、本明細書で用いられる「連結され」または「結合され」という表現は、ワイヤレスで接続されまたは結合されることを含む場合がある。原文明細書で用いられる“and/or”(「および/または」)という用語は、関連の列記された要素のうちの1つまたは2つ以上の任意の組み合わせまたは全ての組み合わせを含む。任意の開示された方法のステップは、別段の指定がなければ本明細書に記載された順序そのものには限定されない。
【0069】
理解されるべきこととして、本明細書全体を通じて「一実施形態」または「実施形態」あるいは「観点」または特徴という記載は、この実施形態と関連して説明した特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する「場合がある」として解される。さらに、特定の特徴、構造または特性は、本発明の1つまたは2つ以上の実施形態において適当なものとして組み合わせ可能である。上述の説明は、当業者が本明細書において説明した種々の観点を実施できるようにするために提供されている。これら観点の種々の改造例が当業者には容易に明らかであり、本明細書に規定された属概念原理は、他の観点に適用できる。
【0070】
特許請求の範囲に記載された本発明は、本明細書に示された観点には限定されるものではなく、特許請求の範囲の文言と一致した全範囲を含むものであり、要素を単数形で示していることは、別段の指定がなければ、「1つかつ1つだけ」を意味するものではなく、「1つまたは2つ以上」を意味するものである。別段の指定がなければ、「幾つか」という用語は、1つまたは2つ以上を意味している。
【0071】
したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲の記載に基づいて判断されるべきである。
【符号の説明】
【0072】
1 イヤープローブ組立体
2 ハウジング構造体
3,4,7 変換器
5 チャネル構造体
6 先端部分
8 回路板
9 ケーブル
21 近位側部
22 遠位側部
23 側部分
24 底端部
31,41 サウンドポート
51 音響経路
52,53,54 チャネル
55,57 係合部材
56 ベース部分
59 係合構造体
61 音響チャネル
66 フィルタ