(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】X線検査装置、X線検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20221117BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20221117BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20221117BHJP
G01T 1/17 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G01N23/04
G01T7/00 B
G01T1/20 G
G01T1/20 L
G01T1/17 E
(21)【出願番号】P 2018149536
(22)【出願日】2018-08-08
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】598123150
【氏名又は名称】セメス株式会社
【氏名又は名称原語表記】SEMES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】77,4sandan 5-gil,Jiksan-eup,Seobuk-gu,Cheonan-si,Chungcheongnam-do,331-814 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】田村 恵美
(72)【発明者】
【氏名】パク ゾンソン
(72)【発明者】
【氏名】パク ピルギュ
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-136102(JP,A)
【文献】特開2007-333509(JP,A)
【文献】特開2017-032508(JP,A)
【文献】特開2008-298556(JP,A)
【文献】特開2000-321221(JP,A)
【文献】特開平04-336044(JP,A)
【文献】特開2010-158377(JP,A)
【文献】米国特許第06175609(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0230150(US,A1)
【文献】伊藤 良平、ほか,散乱X線補正処理''Intelligent‐Grid''の開発,Konica Minolta Technology Report,2016年01月,Vol. 13,pp. 52-56,https://www.konicaminolta.jp/about/research/technology_report/2016/pdf/13_ito.pdf
【文献】川村 隆浩、ほか,新画像処理「Virtual Grid(バーチャルグリッド)技術」の開発,FUJIFILM RESEARCH & DEVELOPMENT,2015年,No. 60,pp. 21-27,https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2019-10/45d1768b65cade53fa7519b4fe814e47/rd_report_ff_rd060_004.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01T 1/00-G01T 1/40
G01T 7/00-G01T 7/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が載置されるステージと、
前記対象物に対してX線を照射するX線管と、
前記対象物を透過したX線が入射するX線検出器と、
前記X線を遮蔽する板材を含む格子状の散乱線防止グリッドと、
前記散乱線防止グリッドを用いて前記X線検出器に入射する散乱X線の散乱線データを生成し、前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前から退避した位置に配置して前記対象物を透過したX線により検出データを生成し、前記検出データを前記散乱線データにより補正して前記対象物の画像データを生成するコントロール部と、
を有
し、
前記コントロール部は、前記対象物の無い状態で前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前の第1の位置に配置したときにX線を照射して得られる前記X線検出器の検出データに基づいて、前記X線検出器の検出面において、前記散乱線防止グリッドを通過してX線が照射される照射領域と、前記散乱線防止グリッドにより遮られてX線が照射されない非照射領域とを把握し、
前記コントロール部は、被検査物と同じ構造を有するテストサンプルを前記対象物とし、前記散乱線防止グリッドを前記第1の位置に配置した時の前記X線検出器による第1の検出データと、前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前から退避した第2の位置に配置したときの前記X線検出器による第2の検出データとを取得し、前記第1の検出データに含まれる前記照射領域のデータを補間処理して前記第1の検出データに含まれる前記非照射領域のデータを算出し、前記第1の検出データと前記第2の検出データとを比較して前記散乱線データを生成するX線検査装置。
【請求項2】
対象物が載置されるステージと、
前記対象物に対してX線を照射するX線管と、
前記対象物を透過したX線が入射するX線検出器と、
前記X線を遮蔽する板材を含む格子状の散乱線防止グリッドと、
前記散乱線防止グリッドを用いて前記X線検出器に入射する散乱X線の散乱線データを生成し、前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前から退避した位置に配置して前記対象物を透過したX線により検出データを生成し、前記検出データを前記散乱線データにより補正して前記対象物の画像データを生成するコントロール部と、
を有し、
前記コントロール部は、前記対象物の無い状態で前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前の第1の位置に配置し
たときにX線を照射して得られる前記X線検出器の検出データに基づいて、前記X線検出器の検出面において、前記散乱線防止グリッドを通過してX線が照射される照射領域と、前記散乱線防止グリッドにより遮られてX線が照射されない非照射領域とを把握し、
前記コントロール部は、被検査物と同じ構造を有するテストサンプルを前記対象物とし、前記散乱線防止グリッドを前記第1の位置に配置した時の前記X線検出器による第1の検出データと、前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前から退避した第2の位置に配置したときの前記X線検出器による第2の検出データとを取得し、前記非照射領域に前記X線が照射されるように前記散乱線防止グリッドを移動させ
ることを行い前記第1の検出データを取得し、
前記第1の検出データと前記第2の検出データとを比較して前記散乱線データを生成する
X線検査装置。
【請求項3】
前記コントロール部は、前記テストサンプルに対して、
前記被検査物よりも多くの前記X線を照射して前記散乱線データを生成する、請求項
1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記被検査物は、ウェハに含まれる半導体チップであり、
前記テストサンプルは、前記ウェハに含まれ前記半導体チップと同じ構造を有するテストチップである、
請求項
1~3の何れか一項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記X線検出器は、マトリックス状に配列された複数の検出素子を有し、
前記散乱線防止グリッドを構成する板材の厚さは、前記検出素子の配列ピッチよりも大きい、
請求項1~
4の何れか一項に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記散乱線防止グリッドの格子サイズは、前記検出素子の配列ピッチより大きい、請求項
5に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記コントロール部は、前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の検出面内で移動させ、前記散乱線防止グリッドを移動して取得した複数のデータに基づいて前記散乱線データを生成する、
請求項1~
6の何れか一項に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記X線検出器は、入射したX線を他の波長の光に変換し、その光を電荷に変換することによりX線を検出する間接変換型のX線検出器である、請求項1~
7の何れか一項に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記X線検出器は、入射するX線のX線光子をカウントしたカウント値を出力する直接変換型のX線検出器であり、複数の検出チップを有し、前記複数の検出チップは、隣り合う検出チップの間にギャップを有して二次元配列されている、請求項1~
7の何れか一項に記載のX線検査装置。
【請求項10】
前記散乱線防止グリッドは第1の散乱線防止グリッドであり、
前記第1の散乱線防止グリッドと前記X線検出器との間に配置された第2の散乱線防止グリッドを更に有し、
前記第2の散乱線防止グリッドは、前記X線検出器に対して固定され、
前記第2の散乱線防止グリッドは、隣り合う2つの前記検出チップの間に配置された板材による格子状である、
請求項
9に記載のX線検査装置。
【請求項11】
被検査物の画像データを生成するX線検査装置におけるX線検査方法であって、
前記X線検査装置は、対象物が載置されるステージと、前記対象物に対してX線を照射するX線管と、前記対象物を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線を遮蔽する板材を含む格子状の散乱線防止グリッドと、を有し、
前記散乱線防止グリッドを用いて前記X線検出器に入射する散乱X線の空間状態に応じた散乱線データを生成する工程と、
前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前から退避した第2の位置に配置するとともに被検査物を前記対象物とした検出データを生成する工程と、
前記検出データを前記散乱線データにより補正して前記対象物の画像データを生成する工程と、
を含
み、
前記対象物の無い状態で前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前の第1の位置に配置したときにX線を照射して得られる前記X線検出器の検出データに基づいて、前記X線検出器の検出面において、前記散乱線防止グリッドを通過してX線が照射される照射領域と、前記散乱線防止グリッドにより遮られてX線が照射されない非照射領域とを把握し、
前記被検査物と同じ構造を有するテストサンプルを前記対象物とし、前記散乱線防止グリッドを前記第1の位置に配置した時の前記X線検出器による第1の検出データと、前記散乱線防止グリッドを前記第2の位置に配置したときの前記X線検出器による第2の検出データとを取得し、前記第1の検出データに含まれる前記照射領域のデータを補間処理して前記第1の検出データに含まれる前記非照射領域のデータを算出し、前記第1の検出データと前記第2の検出データとを比較して前記散乱線データを生成するX線検査方法。
【請求項12】
被検査物の画像データを生成するX線検査装置におけるX線検査方法であって、
前記X線検査装置は、対象物が載置されるステージと、前記対象物に対してX線を照射するX線管と、前記対象物を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線を遮蔽する板材を含む格子状の散乱線防止グリッドと、を有し、
前記散乱線防止グリッドを用いて前記X線検出器に入射する散乱X線の空間状態に応じた散乱線データを生成する工程と、
前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前から退避した第2の位置に配置するとともに被検査物を前記対象物とした検出データを生成する工程と、
前記検出データを前記散乱線データにより補正して前記対象物の画像データを生成する工程と、
を含み、
前記対象物の無い状態で前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前の第1の位置に配置し
たときにX線を照射して得られる前記X線検出器の検出データに基づいて、前記X線検出器の検出面において、前記散乱線防止グリッドを通過してX線が照射される照射領域と、前記散乱線防止グリッドにより遮られてX線が照射されない非照射領域とを把握し、
前記被検査物と同じ構造を有するテストサンプルを前記対象物とし、前記散乱線防止グリッドを前記第1の位置に配置した時の前記X線検出器による第1の検出データと、前記散乱線防止グリッドを前記第2の位置に配置したときの前記X線検出器による第2の検出データとを取得し、前記非照射領域に前記X線が照射されるように前記散乱線防止グリッドを移動させ
ることを行い前記第1の検出データを取得し、
前記第1の検出データと前記第2の検出データとを比較して前記散乱線データを生成する
X線検査方法。
【請求項13】
前記テストサンプルに対して、前記被検査物よりも多くの前記X線を照射して前記散乱線データを生成する、請求項
11又は12に記載のX線検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、X線検査装置、X線検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線検査装置は、様々な分野で利用されている。X線検査装置は、被検査物として例えば半導体ウェハに形成された半導体チップの構造を検査するために用いられる。(例えば、特許文献1を参照)。X線検査装置は、半導体チップを透過したX線を検出器にて検出し、被検査物におけるX線の吸収量に基づいて、半導体チップの断層画像や3D画像のデータを生成し、半導体チップの構造を検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被検査物や検査装置の筐体等で散乱したX線が散乱線として検出器に入射する場合がある。このような散乱線は、被検査物の検査画像に対してノイズとして作用し、画像データにおいて画質低下の要因となる。
【0005】
本開示の目的は、散乱線の影響を低減したX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によるX線検査装置は、対象物が載置されるステージと、前記対象物に対してX線を照射するX線管と、前記対象物を透過したX線が入射するX線検出器と、前記X線を遮蔽する板材を含む格子状の散乱線防止グリッドと、前記散乱線防止グリッドを用いて前記X線検出器に入射する散乱X線の散乱線データを生成し、前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前から退避した位置に配置して前記対象物を透過したX線により検出データを生成し、前記検出データを前記散乱線データにより補正して前記対象物の画像データを生成するコントロール部と、を有する。
【0007】
上記のX線検査装置において、前記コントロール部は、前記対象物の無い状態で前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前の第1の位置に配置し、前記X線検出器の検出データに基づいて、前記X線検出器の検出面において、前記散乱線防止グリッドを通過してX線が照射される照射領域と、前記散乱線防止グリッドにより遮られてX線が照射されない非照射領域とを把握し、前記検出データに含まれる前記照射領域のデータを補間処理して前記検出データに含まれる前記非照射領域のデータを算出することが好ましい。
【0008】
上記のX線検査装置において、前記コントロール部は、前記対象物の無い状態で前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前の第1の位置に配置し、前記X線検出器の検出データに基づいて、前記X線検出器の検出面において、前記散乱線防止グリッドを通過してX線が照射される照射領域と、前記散乱線防止グリッドにより遮られてX線が照射されない非照射領域とを把握し、前記非照射領域に前記X線が照射されるように前記散乱線防止グリッドを移動させ、前記散乱線データを生成することが好ましい。
【0009】
上記のX線検査装置において、前記コントロール部は、テストサンプルを前記対象物とし、前記散乱線防止グリッドを前記第1の位置に配置した時の前記X線検出器による第1の検出データと、前記散乱線防止グリッドを前記第2の位置に配置したときの前記X線検出器による第2の検出データとを取得し、前記第1の検出データと前記第2の検出データとを比較して前記散乱線データを生成することが好ましい。
【0010】
上記のX線検査装置において、前記コントロール部は、前記テストサンプルに対して、前記被検査物よりも多くの前記X線を照射して前記散乱線データを生成することが好ましい。
【0011】
上記のX線検査装置において、前記被検査物は、ウェハに含まれる半導体チップであり、前記テストサンプルは、前記ウェハに含まれ前記半導体チップと同じ構造を有するテストチップであることが好ましい。
【0012】
上記のX線検査装置において、前記X線検出器は、マトリックス状に配列された複数の検出素子を有し、前記散乱線防止グリッドを構成する板材の厚さは、前記検出素子の配列ピッチよりも大きいことが好ましい。
【0013】
上記のX線検査装置において、前記散乱線防止グリッドの格子サイズは、前記検出素子の配列ピッチより大きいことが好ましい。
上記のX線検査装置において、前記コントロール部は、前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の検出面内で移動させ、前記散乱線防止グリッドを移動して取得した複数のデータに基づいて前記散乱線データを生成することが好ましい。
【0014】
上記のX線検査装置において、前記X線検出器は、入射したX線を他の波長の光に変換し、その光を電荷に変換することによりX線を検出する間接変換型のX線検出器であることが好ましい。
【0015】
上記のX線検査装置において、前記X線検出器は、入射するX線のX線光子をカウントしたカウント値を出力する直接変換型のX線検出器であり、複数の検出チップを有し、前記複数の検出チップは、隣り合う検出チップの間にギャップを有して二次元配列されていることが好ましい。
【0016】
上記のX線検査装置において、前記散乱線防止グリッドは第1の散乱線防止グリッドであり、前記第1の散乱線防止グリッドと前記X線検出器との間に配置された第2の散乱線防止グリッドを更に有し、前記第2の散乱線防止グリッドは、前記X線検出器に対して固定され、前記第2の散乱線防止グリッドは、隣り合う2つの前記検出チップの間に配置された板材による格子状であることが好ましい。
【0017】
本開示の一態様によるX線検査方法は、被検査物の画像データを生成するX線検査装置におけるX線検査方法であって、前記X線検査装置は、対象物が載置されるステージと、前記対象物に対してX線を照射するX線管と、前記対象物を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線を遮蔽する板材を含む格子状の散乱線防止グリッドと、を有し、前記散乱線防止グリッドを用いて前記X線検出器に入射する散乱X線の空間状態に応じた散乱線データを生成する工程と、前記散乱線防止グリッドを前記第2の位置に配置するとともに被検査物を前記対象物とした検出データを生成する工程と、前記検出データを前記散乱線データにより補正して前記対象物の画像データを生成する工程と、を含む。
【0018】
上記のX線検査方法において、前記対象物の無い状態で前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前の第1の位置に配置し、前記X線検出器の検出データに基づいて、前記X線検出器の検出面において、前記散乱線防止グリッドを通過してX線が照射される照射領域と、前記散乱線防止グリッドにより遮られてX線が照射されない非照射領域とを把握し、前記検出データに含まれる前記照射領域のデータを補間処理して前記検出データに含まれる前記非照射領域のデータを算出することが好ましい。
【0019】
上記のX線検査方法において、前記対象物の無い状態で前記散乱線防止グリッドを前記X線検出器の直前の第1の位置に配置し、前記X線検出器の検出データに基づいて、前記X線検出器の検出面において、前記散乱線防止グリッドを通過してX線が照射される照射領域と、前記散乱線防止グリッドにより遮られてX線が照射されない非照射領域とを把握し、前記非照射領域に前記X線が照射されるように前記散乱線防止グリッドを移動させ、前記散乱線データを生成することが好ましい。
【0020】
上記のX線検査方法において、テストサンプルを前記対象物とし、前記散乱線防止グリッドを前記第1の位置に配置した時の前記X線検出器による第1の検出データと、前記散乱線防止グリッドを前記第2の位置に配置したときの前記X線検出器による第2の検出データとを取得し、前記第1の検出データと前記第2の検出データとを比較して前記散乱線データを生成することが好ましい。
【0021】
上記のX線検査方法において、前記テストサンプルに対して、前記被検査物よりも多くの前記X線を照射して前記散乱線データを生成することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本開示の一形態によれば、散乱X線の影響を低減したX線検査装置及びX線検査方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図6A】第一実施形態の処理を示すフローチャート。
【
図6B】第一実施形態の処理を示すフローチャート。
【
図9A】X線検出器及びグリッドの一部拡大平面図。
【
図9B】X線検出器及びグリッドの一部拡大平面図。
【
図10A】第二実施形態の処理を示すフローチャート。
【
図10B】第二実施形態の処理を示すフローチャート。
【
図11】第三実施形態のX線検査装置の概略構成図。
【
図13A】X線検出器及び第1,第2グリッドの一部拡大断面図。
【
図13B】X線検出器及び第1,第2グリッドの一部拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、各形態を説明する。
なお、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、または別の図面中のものと異なる場合がある。また、断面図では、理解を容易にするために、一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。
【0025】
(第一実施形態)
以下、第一実施形態を説明する。
図1は、X線検査装置1の概略構成図である。この
図1においてXYZ直交座標系を設定し、その座標系を用いて動作を説明する。
図1には、X軸、Y軸、Z軸の各軸と、各軸を中心とする回転方向(軸回り、周方向)を矢印にて示す。また、各部材について、移動可能な方向について実線にて示している。
【0026】
図1に示すように、X線検査装置1は、照射ボックス(「照射BOX」と表記)10と、コントロール部50とを有している。
照射ボックス10には、ステージ11、X線管12、変位計13、X線検出器14,15、回転ステージ16、支持アーム17,散乱線防止グリッド24,25、遮蔽ユニット20を有している。
【0027】
コントロール部50は、モータ制御部51,52,53,54、X線管制御部55、変位測定部56、画像処理部57、グリッド制御部58を有している。
ステージ11は、被検査物70が載置される載置面11aを有し、水平方向(X軸方向及びY軸方向)に移動自在なXYステージである。ステージ11は、アクチュエータとしてのモータを含むステージ移動機構(図示略)を有し、そのステージ移動機構により載置面11aと平行な水平方向に移動する。コントロール部50のモータ制御部51は、ステージ11のモータを制御する。これにより、X線検査装置1は、載置面11aに載置された被検査物70を所定の検査対象位置へと導く。
【0028】
被検査物70は、例えば、ステージ11に載置された対象物の内の一部とすることができる。対象物は、例えば半導体チップが形成されたウェハである。つまり、ウェハに形成された半導体チップが被検査物70である。X線検査装置1は、このような被検査物70の構造を検査するために利用される。
【0029】
ステージ11の材料としては、X線に対して透過性を有するものを用いることができる。なお、ステージ11は、上述した水平方向(X軸方向及びY軸方向)の他、Z軸方向(載置面11aに対する垂直方向、上下方向)に移動可能としてもよい。また、ステージ11は、Z軸回り(周方向)に回転可能としてもよい。
【0030】
X線管12は、ステージ11の上方に配置されている。X線管12は、被検査物70にX線を照射する。X線管12としては、特に限定されるものではなく、X線検査において従来使用されているものを用いることができる。コントロール部50のX線管制御部55は、X線管12におけるX線の発生・停止を制御する。
【0031】
X線管12は、移動機構18に接続されている。移動機構18は、アクチュエータとしてのモータを含む。X線管12は、移動機構18によりZ軸方向に移動可能に支持される。モータ制御部53は、移動機構18のモータを制御する。このモータ制御部53と移動機構により、X線管12のZ軸方向の位置が変更される。
【0032】
変位計13は、被検査物70の上面までの距離を測定するために用いられる。変位計13としては、例えば被検査物70までの距離を非接触にて測定するレーザ変位計を用いることができる。コントロール部50の変位測定部56は、変位計13により、被検査物70の上面までの距離を測定する。この変位計13による測定結果に基づいて、モータ制御部53は、X線管12と遮蔽ユニット20との距離を指定距離とする。X線管12のX軸方向の位置は、拡大率に応じて変更される。拡大率は、X線の焦点(発生箇所)からX線検出器14,15までの距離を、焦点から被検査物70までの距離で除した値で表される。
【0033】
X線検出器14は、ステージ11を挟んでX線管12と対向する位置に配置されている。例えば、X線検出器14は、ステージ11の直下に位置する回転ステージ16の面上に配置されている。このX線検出器14は、その検出面がX線管12から照射されるX線の軸方向(Z軸方向)に対して垂直となるように配置されている。
【0034】
X線検出器15は、ステージ11を挟んでX線管12と対向する位置の周辺に配置されている。例えば、X線検出器15は、回転ステージ16に第1端部(基端)が固定された支持アーム17の第2端部(先端)に取着されている。また、X線検出器15は、その検出面がX線管12から出射されるX線の軸線方向(Z軸方向)に対して斜めとなるように配設されている。詳述すると、X線検出器15は、被検査物70を斜めに通過したX線が検出面に対して垂直に入射するように配設されている。
【0035】
回転ステージ16は、Z軸回り(周方向)に回転自在なθステージである。回転ステージ16は、アクチュエータとしてのモータを含む回転機構(図示略)を有している。コントロール部50のモータ制御部54は、回転機構のモータを制御し、X線検出器14,15を周方向に回転させる。
【0036】
X線検出器14,15は、例えば平板状の検出器(FPD:Flat Panel Detector)である。この検出器としては、例えば、間接変換型の検出器や直接変換型の検出器を用いることができる。間接変換型の検出器は、X線をシンチレータ(Scintillator)で他の波長の光に変換し、その光をアレイ状のフォトダイオードやCCD(Charge-coupled Device)で電荷に変換することによりX線を検出する。直接変換型の検出器は、X線を変換部(例えばアモルファスセレン(a-Se)等の半導体)で電荷に変換することによりX線を検出する。
【0037】
本実施形態のX線検査装置1は、遮蔽ユニット20を有している。遮蔽ユニット20は、ステージ11とX線管12との間に配設されている。なお、遮蔽ユニット20は省略されてもよい。
【0038】
本実施形態の遮蔽ユニット20は、フィルタ21と遮蔽板22とを含む。
フィルタ21は、X線に含まれる所定の波長域を吸収(カット)するものである。X線は、連続的な波長域を含む。長い波長域のX線は、被検査物70の特性劣化を招く。例えば、半導体メモリのような半導体チップでは、X線の吸収により半導体シリコンが電荷を蓄積することにより、半導体メモリの内部に形成されたトランジスタのしきい値電圧を変化させるおそれがある。このため、本実施形態のX線検査装置1は、フィルタ21により被検査物70に影響を与える波長域のX線を吸収することで、被検査物70の特性劣化を抑えてX線検査を行うことができる。
【0039】
なお、フィルタ21は、複数枚のフィルタ板を含むものとしてもよい。互いに異なる波長域のX線を吸収するフィルタ板を用意し、選択した1又は複数のフィルタ板にX線を透過させることで、被検査物70に照射するX線の波長域を変更することができる。
【0040】
遮蔽板22は、概略矩形平板状に形成されている。遮蔽板22の材料としては、X線が通過し難い金属材料、例えば鉛(Pb)等を用いることができる。遮蔽板22は、複数の孔部を有している。孔部は、所望の位置に設けられ、X線を通過させる。この孔部を通過したX線は、被検査物70に照射される。X線は、被検査物70を透過してX線検出器14,15に入射する。モータ制御部52は、遮蔽板22の孔部を通過したX線がX線検出器14,15に入射するように、遮蔽板22の位置を制御する。
【0041】
散乱線防止グリッド24は、X線検出器14に対応して設けられる。散乱線防止グリッド24は、X線検出器14に対する散乱X線の入射を防止するために設けられる。散乱線防止グリッド24は、図示しない支持部材により移動可能に支持される。
【0042】
散乱線防止グリッド25は、X線検出器15に対応して設けられる。散乱線防止グリッド24は、X線検出器15に対する散乱X線の入射を防止するために設けられる。散乱線防止グリッド24は、図示しない支持部材により移動可能に支持される。
【0043】
図2に示すように、グリッド制御部58は、散乱線防止グリッド25を、X線検出器15の直前の第1の位置と、X線検出器15の直前から退避した第2の位置とに切替配置する。
図2において、実線は第1位置に配置された散乱線防止グリッド25を示し、破線は第2の位置に配置された散乱線防止グリッド25を示す。同様に、グリッド制御部58は、
図1に示す散乱線防止グリッド24を、X線検出器14の直前の第1の位置と、X線検出器14の直前から退避した第2の位置とに切替配置する。
【0044】
図3及び
図4は、散乱線防止グリッド25の概略構成を示す。なお、
図1に示す散乱線防止グリッド24は、
図3及び
図4に示す散乱線防止グリッド25と同じ構造であるため、図面及び説明を省略する。
【0045】
散乱線防止グリッド25は、板材25a,25bと、板材25a,25bを保持する保持部材25c,25dと、を含む。板材25a,25bは、互いに直交し、格子状の散乱線防止グリッドを構成する。板材25a,25bは、例えば、タングステン(W)やモリブデン(Mo)の薄板である。板材25a,25bは、上下の保持部材25d,25cにより形状が保持されている。保持部材25c,25dの材料としては、高いX線透過率を有する材料、例えばカーボンを用いることができる。板材25a,25bの厚さは、例えば100μmであり、100~300μmの格子ピッチにて配列されている。
【0046】
図4に示すように、X線検出器15は、行列状(マトリックス状)に配列された複数の検出素子15aを有している。検出素子15aの大きさは、例えば、100μm×100μm~200μm×200μm程度である。従って、各検出素子15aのサイズと比べて、散乱線防止グリッド25の格子が大きく、X線検出器15に入射する全ての散乱X線を除くことはできない。また、散乱線防止グリッド25自体が、X線検出器15の検出素子15aに対して、X線の入射を遮蔽する遮蔽物となる。このため、散乱線防止グリッド25をX線検出器15の直前に配置したのみでは、高解像度のデータを得ることができない。
【0047】
そこで、本実施形態では、散乱線防止グリッド25を用いてX線検出器15に入射する散乱X線の空間構造を把握し、被検査物70を検出した検出データを補正する。本実施形態のコントロール部50の画像処理部57は、散乱線防止グリッド25を用いてX線検出器15に入射する散乱X線の散乱線データを生成する。そして、コントロール部50(画像処理部57)は、被検査物70を検出した検出データを散乱線データにより補正し、被検査物70の画像データを生成する。これにより、散乱X線の影響を低減し、高解像度の画像データを得るものである。
【0048】
本実施形態のX線検査装置1におけるX線検査方法について、
図6A及び
図6Bに示すフローチャートを参照して詳述する。
先ず、
図2に実線で示すように、散乱線防止グリッド25をX線検出器15の直前の位置(第1の位置)に配置する(ステップ101)。次に、
図1に示すステージ11に対象物(サンプル)が無いことを確認する(ステップ102)。そして、X線を照射してX線検出器15の検出データを取得する(ステップ103)。この検出データにより、X線検出器15において、散乱線防止グリッド25を通過したX線が照射される照射領域と、散乱線防止グリッド25により遮蔽されてX線が照射されない非照射領域とを把握する(ステップ104)。
【0049】
次に、ステージ11にテストサンプルを配置する(ステップ105)。テストサンプルは、被検査物と構造が同じものが好ましい。被検査物は、例えば、半導体チップである。
図5は、ダイシング前のウェハ71を示す。このウェハ71は、複数の半導体チップ71aと、複数のテストチップ71bとを含む。テストチップ71bは、半導体チップ71aをともに形成されるチップであり、半導体チップ71aと同じ構造である。このテストチップ71bは、例えば、半導体チップ71aを形成する工程において半導体チップ71aに対する検査の条件設定等に利用される。なお、テストチップ71bとしては、例えば、ウェハ71の状態で行う試験により不良と判断された半導体チップを用いることができる。このテストチップ71bをテストサンプルとして、X線が照射される位置に配置する。そして、テストサンプルにX線を照射してX線検出器15の検出データ(第1の検出データ)を取得する(ステップ106)。
【0050】
次に、散乱線防止グリッド25を、
図2に破線で示すように、X線検出器15の直前から退避した位置(第2の位置)に配置する(ステップ107)。そして、テストサンプルにX線を照射してX線検出器15の検出データ(第2の検出データ)を取得する(ステップ108)。
【0051】
第1の検出データと第2の検出データとを取得する際には、被検査物としての半導体チップ71aを検査するときよりも多くのX線がX線検出器15に入射するように、例えば、照射時間(検査時間)を設定し、十分高い統計量の散乱線データを取得する、つまり十分多い量のX線をX線検出器15に入射するようにする。
【0052】
X線は、物体を透過する高いエネルギーを持つ。このため、半導体チップ71aを被検査物とした場合、X線は、半導体チップ71aに特性劣化等の影響を与える。このため、半導体チップ71aの検査では、半導体チップの照射量を抑える必要がある。一方、テストチップ71bは、検査の条件設定等に利用されるため、照射量を抑える必要がない。このように、照射量を抑える必要のないテストチップ71bを用いることで、十分な量の透過X線をX線検出器15に入射させることができる。
【0053】
次に、散乱線防止グリッド25を配置したときの検出データ(第1の検出データ)と、散乱線防止グリッド25を配置していないときの検出データ(第2の検出データ)とを比較し、X線検出器15に入射する散乱X線の散乱線データを生成する(ステップ109)。
【0054】
第1の検出データは、テストチップ71bを透過した透過X線を含み、散乱X線の影響の少ない検出データである。第2の検出データは、テストチップ71bを透過した透過X線と散乱X線とを含む検出データである。従って、第1の検出データと第2の検出データとを比較することにより、散乱X線の検出データ、つまり散乱線データを得ることができる。
【0055】
なお、散乱線防止グリッド25を配置したときの検出データにおいて、
図3及び
図4に示すように、散乱線防止グリッド25により覆われた検出素子15aには、X線が入射しない。このため、第1の検出データにおいて、非照射領域のデータが欠落している。散乱X線の空間周波数は低いため、この欠落したデータを、近傍のデータ、つまり照射領域のデータを用いて補間することにより、生成することができる。補間方法としては、例えば、線形補間、スプライン補間、等の公知の補間方法を用いることができる。このようにして、X線検出器15に入射する散乱X線のデータ(散乱線データ)が得られる。
【0056】
次に、テストサンプルを外し(ステップ110)、評価サンプルを配置する(ステップ111)。本実施形態において、評価サンプルは、
図5に示す半導体チップ71aである。そして、半導体チップ71aにX線を照射してX線検出器15の検出データを取得する(ステップ112)。
【0057】
次に、取得した半導体チップ71aの検出データを、上述の散乱線データにより補正して、半導体チップ71aの画像データを生成する(ステップ113)。このように、散乱X線の影響を低減した画像データが得られる。
【0058】
次に、全ての評価サンプルについて画像データを生成したか否かを判定する(ステップ114)。本実施形態では、
図5に示すウェハ71に含まれる検査対象の全ての半導体チップ71aについて、画像データを生成したか否かを判定する。検査対象の全ての半導体チップ71aについて処理を終了していない場合、上述のステップ111に移行し、次の評価サンプルである半導体チップ71aを配置する。このように、ステップ111~113の処理を繰り返し実行し、検査対象の全ての半導体チップ71aの画像データを生成すると、処理を終了する。
【0059】
図5に示すように、ウェハ71には、複数の半導体チップ71aが形成されている。各半導体チップ71aを順次被検査物70として配置し、その配置した半導体チップ71aの検出データを上述の散乱線データにより補正して、散乱X線の影響を低減した半導体チップ71aの画像データを生成する。このように、散乱X線の影響を低減でき、高画質の画像データが得られる。
【0060】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1-1)X線検査装置は、被検査物70が載置されるステージ11と、被検査物70に対してX線を照射するX線管12と、被検査物70を透過したX線が入射するX線検出器14,15と、X線を遮蔽する板材を含む格子状の散乱線防止グリッド24,25とを有している。コントロール部50は、散乱線防止グリッド24,25を用いてX線検出器14,15に入射する散乱X線の空間状態に応じた散乱線データを生成する。また、コントロール部50は、散乱線防止グリッド24,25をX線検出器14,15の直前から退避した位置に配置して被検査物70を透過したX線により検出データを生成する。そして、コントロール部50は、検出データを散乱線データにより補正して被検査物70の画像データを生成する。この構成により、散乱X線の影響を低減した高画質な画像データを得ることができる。
【0061】
(1-2)X線検査装置1では、散乱X線によるノイズの影響を低減できるため、高画質(高解像度)の画像データが得られる。このため、同じ画質(解像度)を得るために、照射するX線の量を抑えることができる。
【0062】
(1-3)X線検査装置1は、X線検出器15の直前に散乱線防止グリッド25を配置し、対象物の無い状態でのX線検査装置1による検査データにより、散乱線防止グリッド25によりX線が照射される照射領域とX線が照射されない非照射領域とを把握する。これにより、高い位置精度を必要とせず、散乱線防止グリッド25の配置のための機器のコストダウンを可能にできる。
【0063】
(第二実施形態)
以下、第二実施形態を説明する。
なお、この実施形態において、上記実施形態と同じ構成部材については同じ符号を付してその説明の一部又は全てを省略する場合がある。
【0064】
図7に示すように、X線検査装置1aは、照射ボックス(「照射BOX」と表記)10と、コントロール部50aとを有している。
コントロール部50aは、モータ制御部51,52,53,54、X線管制御部55、変位測定部56、画像処理部57、グリッド制御部58aを有している。
【0065】
グリッド制御部58aは、散乱線防止グリッド24,25を、X線検出器14,15の直前の位置(第1の位置)と、X線検出器14,15の直前から退避した位置(第2の位置)とに配置するように構成されている。さらに、本実施形態のグリッド制御部58aは、X線検出器14,15の直前において、散乱線防止グリッド24,25をX線検出器14,15の検出面と平行に移動可能に構成されている。
【0066】
コントロール部50aは、グリッド制御部58aにより、散乱線防止グリッド24,25を、X線検出器14,15の直前において移動させ、検出データを取得する。そして、画像処理部57により、散乱線データを算出する。このように算出した散乱線データにより、被検査物70を検出した検出データを補正する。これにより、散乱X線の影響をより低減し、高解像度の画像データを得る。
【0067】
本次子形態のX線検査装置1aにおけるX線検査方法について、
図10A及び
図10Bに示すフローチャートを参照して詳述する。
先ず、
図8に実線で示すように、散乱線防止グリッド25をX線検出器15の直前の位置(第1の位置)に配置する(ステップ201)。次に、
図7に示すステージ11に対象物が無いことを確認する(ステップ202)。そして、X線を照射してX線検出器15の検出データを取得する(ステップ203)。この検出データにより、X線検出器15において、散乱線防止グリッド25を通過したX線が照射される照射領域と、散乱線防止グリッド25により遮蔽されてX線が照射されない非照射領域とを把握する(ステップ204)。
【0068】
次に、ステージ11にテストサンプルを配置する(ステップ205)。テストサンプルは、第一実施形態と同様に、
図5に示すウェハ71のテストチップ71bである。テストチップ71bにX線を照射してX線検出器15の検出データを取得する(ステップ206)。
【0069】
次に、テストサンプルを外し(ステップ207)、散乱線防止グリッド25を移動させる(ステップ208)。このとき、
図9A及び
図9Bに示すように、散乱線防止グリッド25を、X線検出器15の検出面と平行に、2次元方向(
図9A及び
図9Bの左右方向と上下方向)に移動させる。そして、X線を照射してX線検出器15の検出データを取得し(ステップ209)、上記ステップ204にて把握した非照射領域に、X線が照射されることを確認する(ステップ210)。この散乱線防止グリッド25の移動により、X線検出器15の全ての検出素子15aに対して、X線を照射できるようになる。
【0070】
次に、テストサンプルを配置し(ステップ211)、X線を照射してX線検出器15の検出データを取得する(ステップ212)。そして、上述のステップ206にて取得した検出データと、ステップ212にて取得した検出データとに基づいて、散乱線防止グリッド25を検出器15の直前に配置し、テストサンプルを用いた検出データ(第1の検出データ)を算出する(ステップ213)。
【0071】
なお、X線検出器15の全ての検出素子15aに対してX線を照射するように格子状の散乱線防止グリッド25を二次元方向に移動させ、その移動毎に検出データを取得する。従って、ステップ208~212を繰り返し実行する。そして、ステップ213では、取得した検出データに基づいて、第1の検出データを算出する。
【0072】
次に、散乱線防止グリッド25を、
図8の右側に破線で示すように、X線検出器15の直前から退避した位置(第2の位置)に配置する(ステップ214)。そして、テストサンプルにX線を照射してX線検出器15の検出データ(第2の検出データ)を取得する(ステップ215)。
【0073】
次に、散乱線防止グリッド25を配置したときの検出データ(第1の検出データ)と、散乱線防止グリッド25を配置していないときの検出データ(第2の検出データ)とを比較し、散乱線データを生成する(ステップ216)。
【0074】
第1の検出データは、テストチップ71bを透過した透過X線を含み、散乱X線の影響の少ない検出データである。第2の検出データは、テストチップ71bを透過した透過X線と散乱X線とを含む検出データである。従って、第1の検出データと第2の検出データとを比較することにより、散乱X線の検出データ、つまり散乱線データを得ることができる。
【0075】
次に、テストサンプルを外し(ステップ217)、評価サンプルを配置する(ステップ218)。評価サンプルは、
図5に示す半導体チップ71aである。そして、半導体チップ71aにX線を照射してX線検出器15の検出データを取得する(ステップ218)。
【0076】
次に、取得した半導体チップ71aの検出データを、上述の散乱線データにより補正して、半導体チップ71aの画像データを生成する(ステップ220)。このように、散乱X線の影響を低減した画像データが得られる。
【0077】
次に、全ての評価サンプルについて画像データを生成したか否かを判定する(ステップ221)。第一実施形態と同様に、
図5に示すウェハ71に含まれる検査対象の全ての半導体チップ71aについて、画像データを生成したか否かを判定する。検査対象の全ての半導体チップ71aについて処理を終了していない場合、上述のステップ218に移行し、次の評価サンプルである半導体チップ71aを配置する。このように、ステップ218~220の処理を繰り返し実行し、検査対象の全ての半導体チップ71aの画像データを生成すると、処理を終了する。
【0078】
図5に示すように、ウェハ71には、複数の半導体チップ71aが形成されている。各半導体チップ71aを順次被検査物70として配置し、その配置した半導体チップ71aの検出データを上述の散乱線データにより補正して、散乱X線の影響を低減した半導体チップ71aの画像データを生成する。このように、散乱X線の影響を低減でき、高画質の画像データが得られる。
【0079】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(2-1)上述の第一実施形態と同様に、散乱X線の影響を低減した高画質な画像データを得ることができる。
【0080】
(2-2)X線検査装置1aのコントロール部50aは、X線検出器15において、散乱線防止グリッド25を通過したX線が照射される照射領域と、散乱線防止グリッド25により遮蔽されてX線が照射されない非照射領域とを把握する。そして、コントロール部50は、把握した照射領域と非照射領域とに基づいて、散乱線防止グリッド25を、X線検出器15の検出面と平行に、2次元方向に移動させる。この散乱線防止グリッド25の移動により、X線検出器15の全ての検出素子15aに対して、X線を照射できる。従って、各検出素子15aにおいて入射した散乱X線のデータを取得できるため、構造が複雑な被検査物70に対して対応することができる。
【0081】
(第三実施形態)
以下、第三実施形態を説明する。
なお、この実施形態において、上記実施形態と同じ構成部材については同じ符号を付してその説明の一部又は全てを省略する場合がある。
【0082】
図11に示すように、X線検査装置1bは、照射ボックス(「照射BOX」と表記)10bと、コントロール部50とを有している。
照射ボックス10bには、ステージ11、X線管12、変位計13、X線検出器44,45、回転ステージ16、支持アーム17,第1の散乱線防止グリッドとしての散乱線防止グリッド24,25、遮蔽ユニット20を有している。更に、照射ボックス10bには、第2の散乱線防止グリッドとしての散乱線防止グリッド34,35を有している。
【0083】
X線検出器44,45は、例えば平板状の検出器(FPD:Flat Panel Detector)である。この検出器としては、例えば直接変換型の検出器を用いることができる。直接変換型の検出器は、X線を変換部で電荷に変換することによりX線を検出する。詳述すると、X線検出器44,45は、フォトンカウンティング(Photon Counting)方式の直接変換型X線検出器(光子計数検出器(Photon-Counting Detector:PCD)と呼ばれることがある)である。このX線検出器44,45は、X線を電荷に変換する変換部と、電荷を光子数として出力する処理部とを含む。処理部は、画素毎に収集した電荷を電圧信号に変換し、変換された電圧信号が所定のしきい値電圧よりも大きい場合に1個のフォトンを検出したことを示す検出信号を生成し、検出信号に基づいてフォトン数を画素毎にカウントし、そのカウント値(光子数)を出力する。
【0084】
図13A及び
図13Bに示すように、X線検出器45は、二次元配列された複数の検出器45aにより構成されている。各検出器45aには、二次元配列された複数の検出器が形成されている。
【0085】
フォトンカウンティング方式のX線検出器では、CdZnTeやCdTe等の化合物半導体が用いられることもある。化合物半導体は大きな結晶を成長させるのは難しく、一般に小さなサイズの化合物半導体からなる検出器45aを二次元に配列して、大きな検出面のX線検出器が構成される。検出器45aの大きさ(検出面から視た大きさ)は、例えば20mm×20mmである。複数の検出器45aは、隣り合う検出器45aの間に隙間(ギャップ)45bを開けて配列される。ギャップ45bの大きさは、例えば100μmである。
【0086】
図11に示すように、散乱線防止グリッド24,25は、X線検出器44、45の直前に配設されている。散乱線防止グリッド34,35は、散乱線防止グリッド24,25とX線検出器44,45との間に配設されている。散乱線防止グリッド34,35は、X線検出器44,45に取着された固定の散乱線防止グリッドである。
【0087】
図12に示すように、散乱線防止グリッド25は、X線検出器45の直前の位置(第1の位置)と、X線検出器45の直前から退避した位置(第2の位置)とに切り替えて配置される。
【0088】
図13A及び
図13Bに示すように、X線検出器45を構成する複数の検出器45aは、所定のギャップ45bを開けて二次元配列されている。散乱線防止グリッド35は、検出器45aの間のギャップ45bに合わせて配設されている。これにより、散乱線防止グリッド35が検出器45aを覆うことなく、検出器45aによりX線の検出が可能となる。また、散乱線防止グリッド35により、各検出器45aへの散乱X線の入射を抑制できる。
【0089】
本実施形態のX線検査装置1bにおいて、X線検査のための処理及び散乱線防止グリッド25の移動制御は、第一実施形態と同様である。従って、本実施形態のX線検査装置1bでは、第一実施形態のX線検査装置1と同様に、散乱X線の影響を低減した画像データが得られる。
【0090】
散乱線防止グリッド25は、第一実施形態と同様に、X線検出器45に対して移動可能に支持された可動式の散乱線防止グリッドである。散乱線防止グリッド25と
図5に示すテストチップ71bとを用いることにより、散乱X線の空間構造に応じた散乱線データを得ることができる。この散乱線データを用いて、
図5に示す半導体チップ71aを検査した検査データを補正することにより、高精度(高解像度)の画像データを得ることができる。
【0091】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(3-1)上述の第一,第二実施形態と同様に、散乱X線の影響を低減した高画質な画像データを得ることができる。
【0092】
(3-2)直接変換型のX線検出器は、間接変換型のX線検出器と比べ高分解能である。従って、直接変換型のX線検出器44,45を用いることにより、高い精度で被検査物70を測定することができる。
【0093】
(3-3)X線検出器45を構成する複数の検出器45aは、所定のギャップ45bを開けて二次元配列されている。散乱線防止グリッド35は、検出器45aの間のギャップ45bに合わせて配設されている。これにより、散乱線防止グリッド35が検出器45aを覆うことなく、検出器45aによりX線の検出が可能となる。
【0094】
(3-4)散乱線防止グリッド35は、X線検出器45に固定されているため、被検査物70の検査を行うときにも、X線検出器45の各検出器45aへの散乱X線の入射を抑制できる。
【0095】
尚、上記各実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・第一,第二実施形態のX線検出器14,15を直接変換型の検出器としてもよい。
・第三実施形態において、第二実施形態と同様に、散乱線防止グリッド24,25をX線検出器44,45の検出面と平行に二次元方向に移動させて散乱線データを得るようにしてもよい。
【0096】
・上記各実施形態において、被検査物を半導体チップ71aとし、テストサンプルをテストチップ71bとしたが、その他の物を被検査物及びテストサンプルとしてもよい。
・上記各実施形態では、被検査物とテストサンプルとを備えたウェハ71を対象物としてステージ11に載置したが、被検査物とテストサンプルとをそれぞれステージ11に載置するようにしてもよい。例えば、被検査物とテストサンプルとを、1つ又は複数の半導体チップを含む半導体デバイス(半導体パッケージ)としてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1,1a,1b…X線検査装置、11…ステージ、12…X線管、14,15…X線検出器、44,45…X線検出器、24,25…散乱線防止グリッド、34,35…散乱線防止グリッド、70…被検査物、71…ウェハ(対象物)、71a…半導体チップ(被検査物)、71b…テストチップ(テストサンプル)、50,50a…コントロール部。