(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】無機発光素子
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20221117BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20221117BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221117BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221117BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H05B33/22 C
H05B33/14 Z
H05B33/22 A
H01L27/32
H05B33/10
G09F9/30 365
(21)【出願番号】P 2018161399
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一貴
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/001542(WO,A1)
【文献】特開2014-179344(JP,A)
【文献】特開2013-235846(JP,A)
【文献】特表2009-500861(JP,A)
【文献】特表2017-516317(JP,A)
【文献】特開2017-168420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H05B 33/14
H01L 27/32
H05B 33/10
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正孔輸送層に含有される正孔輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(HTL))が、発光層に含有される発光材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(EML))よりも高く、
発光材料および、正孔輸送材料と
電子輸送層に含有される電子輸送材料の両方またはどちらか一方が無機ハロゲン化物である、発光素子。
【請求項2】
電子輸送層に含有される電子輸送材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(ETL))が、発光層に含有される発光材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(EML))よりも低く、
発光材料および、
正孔輸送層に含有される正孔輸送材料と電子輸送材料の両方またはどちらか一方が無機ハロゲン化物である、発光素子。
【請求項3】
[Ec(HTL)-Ec(EML)]の値が1.0eV以上である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
[Ev(EML)-Ev(ETL)]の値が1.0eV以上である、請求項2に記載の発光素子。
【請求項5】
電子輸送層に含有される電子輸送材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(ETL))が、発光層に含有される発光材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(EML))よりも低い、請求項1又は3に記載の発光素子。
【請求項6】
無機ハロゲン化物の少なくとも一つが結晶性の金属ハロゲン化物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項7】
結晶性の金属ハロゲン化物が式A
mB
nX
pで表される金属ハロゲン化物である、請求項6に記載の発光素子。
(式中、AはCs
+、Rb
+、K
+、Na
+,Li
+からなる群から選択される陽イオンであり、BはPb
2+、Sn
2+、Ge
2+からなる群から選択される陽イオンであり、XはCl
-、Br
-、I
-からなる群から選択される陰イオンである。mは0以上の整数、nは正の整数、pは2以上の整数である。)
【請求項8】
結晶性の金属ハロゲン化物が式A
1B
1X
3または式A
4B
1X
6で表される金属ハロゲン化物である、請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
結晶性の金属ハロゲン化物がCsPbBr
3、CsPbCl
3、CsPbI
3、Cs
4PbBr
6、CsSnBr
3、PbBr
2からなる群から選択される金属ハロゲン化物である、請求項6に記載の発光素子。
【請求項10】
電子注入層をさらに有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項11】
電子注入層が、有機溶媒に溶解した金属ナトリウムから製造される、請求項10に記載の発光素子。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の発光素子を備えた表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、特に無機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置は、高精細、高応答速度、高コントラスト、広視野角、薄型などの表示装置に期待される要素を備えており、液晶表示装置及びプラズマパネル表示装置に続く次世代の表示装置として注目されている。有機EL表示装置に用いられる有機ELパネルは、有機材料に電流を流すと発光するエレクトロルミネッセンスを利用した発光素子(有機EL素子)を、ガラス板などの基板に配置し、格子状に配置した電極(配線)によって発光素子を制御することで画像を表示させることができる。
【0003】
従来の有機ELの発光層の発光材料として、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)や、トリス(2-フェニルピリジナト)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)などが用いられてきた。しかしながらこれらの発光材料を用いた発光素子は、量子効率がそれほど高いものではなく、かつ広い色域を実現できるものではなかった。
【0004】
また、従来の有機ELは、有機化合物を使用していることから、短寿命であるという問題があった。
【0005】
さらに、従来の有機ELにおける電子注入層は、注入障壁が高く、電子の注入効率が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Shiwei Zhuang,Xue Ma, Daqiang Hu, Xin Dong, Baolin Zhang,Ceramics international,44(5),4685-4688(2018).
【文献】Fang Yuan, Jun Xi, Hua Dong, Kai Xi, Wenwen Zhang, Chenxin Ran, Bo Jiao, Xun Hou, Alex K.―Y. Jen, and Zhaoxin Wu, Physica status solidi (RRL), 12, (5), 1800090(2018).
【文献】Taehwan Jun, Junghwan Kim, Masato Sasase, and Hideo Hosono, Advanced Materials, 30(12),1706573 (2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、塗布により製造でき、寿命が長く、高い量子効率を有し、広い色域を実現でき、さらに高い電子の注入効率を有する発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、正孔輸送層に含有される正孔輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(HTL))を、発光層に含有される発光材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(EML))よりも高くすること、電子輸送層に含有される電子輸送材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(ETL))を、発光層に含有される発光材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(EML))よりも低くすること、の両方またはどちらか一方により上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
上記の通り、本発明の発光素子は、正孔輸送層に含有される正孔輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(HTL))が、発光層に含有される発光材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(EML))よりも高いこと、電子輸送層に含有される電子輸送材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(ETL))が、発光層に含有される発光材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(EML))よりも低いこと、の両方またはどちらか一方を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の発光素子の発光材料および、正孔輸送材料と電子輸送材料の両方またはどちらか一方は、無機ハロゲン化物であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の発光素子の無機ハロゲン化物の少なくとも一つは、結晶性の金属ハロゲン化物であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の発光素子の正孔輸送材料、発光材料および電子輸送材料は、式AmBnXpで表される金属ハロゲン化物であることが好ましい(式中、AはCs+、Rb+、K+、Na+,Li+、からなる群から選択される陽イオンであり、BはPb2+、Sn2+、Ge2+からなる群から選択される陽イオンであり、XはCl-、Br-、I-からなる群から選択される陰イオンである。mは0以上の整数、nは正の整数、pは2以上の整数である)。
なお、m、n、pは分数または小数で記すことも可能であるが、整数で表示した形式に読み替えるものとする。また、一般に金属ハロゲン化物の元素組成は組成のばらつきなどにより厳密に整数にならない場合があるが、本発明の金属ハロゲン化物はこれらのばらつきや誤差を許容する。
【0014】
さらに、本発明の発光素子の正孔輸送材料、発光材料および電子輸送材料は、式A1B1X3または式A4B1X6で表される金属ハロゲン化物であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の発光素子の正孔輸送材料、発光材料および電子輸送材料は、CsPbCl3、CsPbBr3、CsPbI3、Cs4PbCl6、Cs4PbBr6、Cs4PbI6、CsSnCl3、CsSnBr3、CsSnI3、Cs4SnCl6、Cs4SnBr6、Cs4SnI6、PbCl2、PbBr2、PbI2、SnCl2、SnBr2、SnI2、Cu-Sn-Iからなる群から選択される金属ハロゲン化物であることがより好ましい。
【0016】
さらに、本発明の発光素子は、電子注入層をさらに有することが好ましい。
【0017】
また、本発明の発光素子の電子注入層は、有機溶媒に溶解した金属ナトリウムから製造されることがより好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、塗布により製造でき、寿命が長く、高い量子効率を有し、広い色域を実現でき、さらに高い電子の注入効率を有する発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の発光素子の一態様を示す図である。なお、図中「青」「緑」「赤」とは、各々の色の発光を出す発光材料を示す。
【
図2】本発明に用いられる一態様の無機ハロゲン化物の結晶構造を示す図である。
【
図4】本発明の表示装置の一態様を示す図である。なお、対極は図中では省略している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0021】
[発光素子]
図1は、本発明の発光素子の一態様を示す図である。この態様では、上から順に、封止材(Encapsulant)、陰極(Cathode)、電子輸送層(Electron Transport Layer、ETL)、発光層(Emissive Layer、EML)、正孔輸送層(Hole Transport Layer、HTL)、陽極(Anode)、基板(Substrate)で発光素子が構成されている。陰極と電子輸送層の間には電子注入層(Electron Injection Layer、EIL)があってもよく、正孔輸送層と陽極の間には、正孔注入層(Hole Injection Layer、HIL)があってもよい。かつ、この他の複数の層を有していてもよい。
【0022】
陽極に高電位が印加されるとともに陰極に低電位が印加されると、正孔と電子がそれぞれ正孔輸送層と電子輸送層を介して発光層に移動し、発光層で互いに結合して発光する。電子輸送層は、電子輸送能力がある有機物質や、電子輸送能力がある有機ホスト物質にLi、Na、K、又はCsのようなアルカリ金属およびアルカリ金属からなる化合物、又はMg、Sr、Ba、又はRaのようなアルカリ土類金属およびアルカリ土類金属からなる化合物がドープされた有機層であってもよいが、これに限定されない。また電子輸送材料として、結晶性の金属ハロゲン化物やアモルファス金属ハロゲン化物を用いることも可能である。アモルファス金属ハロゲン化物の例としては、Cu-Sn-Iが挙げられる。正孔輸送層は、正孔輸送能力を有する有機物質や、正孔輸送能力を有する有機ホスト物質にドーパントがドープされた有機層であってもよいが、これに限定されない。また正孔輸送材料として、結晶性の金属ハロゲン化物やアモルファス金属ハロゲン化物を用いることも可能である。なお本発明におけるアルカリ土類金属とはベリリウムとマグネシウムを含む第2族元素を表す。
【0023】
電子注入層は、例えば、LiF又はLi2O、あるいはLi、Na、Ca、Mg、Sr、Baなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属などの無機物から形成することができる。正孔注入層は、正孔注入物質をホストとし、p型ドーパントを含むことができる。
【0024】
電極材料の例としては、Ag、Al、Mg、Caなどの金属、Mg-Agなどの合金、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide、ITO)、IZO(In2O3-ZnO)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)などの酸化物などが挙げられる。一般に透明金属酸化物が陽極に、金属が陰極に用いられるが、逆でもよく、透明金属酸化物を陰極に、金属を陽極に用いてもよい。
【0025】
MgやCaなどの仕事関数の低い金属は、EILとしての効果も有している。一方でMgやCaなどの金属は機械的強度が低いので、一般的にはAlなどで補強を行う。
【0026】
また、AlやAgは反射層を兼ねている。光の取出し方向は、一般に反射層と反対側に設計されるが、陰極側と陽極側のいずれでもよい。
【0027】
透明有機発光ダイオード(透明OLED)を作成する際には、Mg-Ag膜、薄いAg膜などが用いられる。Ag膜の下に、ITO膜などがあってもよく、Ag膜を上下からITO膜で挟み込んだ構造であってもよい。
【0028】
また、上記の材料による膜は、一般には真空成膜で製造されるが、ナノサイズに微細化し、溶媒に分散させたインクから製膜させることも可能である。特に金属ハロゲン化物はその多くが、原料を溶媒に溶解させることで得られたインクから製膜することが可能である。インクを用いることで、種々の塗布法の適用が可能になる。塗布法の例としては具体的には、スピンコート法、インクジェット法、静電塗布法、超音波霧化を用いる方法、スリットコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。
【0029】
本発明の発光素子の一態様では、正孔輸送層に含有される正孔輸送材料の伝導体下端のエネルギー準位(Ec(HTL))が、発光層に含有される発光材料の伝導体下端のエネルギー準位(Ec(EML))よりも高いことを特徴とする。このとき、Ec(HTL)-Ec(EML)の値は、EML上の電子が熱で励起されたときにこの障壁を乗り越えられる数を十分に小さくするために、0.1eV以上であることが好ましく、0.5eV以上であることがより好ましく、1.0eV以上であることが更に好ましい。
【0030】
また本発明の発光素子の一態様では、電子輸送層に含有される電子輸送材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(ETL))が、発光層に含有される発光材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(EML))よりも低いことを特徴とする。このとき、Ev(EML)-Ev(ETL)の値は、EML上の電子が熱で励起されたときにこの障壁を乗り越えられる数を十分に小さくするために、0.1eV以上であることが好ましく、0.5eV以上であることがより好ましく、1.0eV以上であることが更に好ましい。
【0031】
さらに本発明の発光素子の一態様では、正孔輸送層に含有される正孔輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(HTL))が、発光層に含有される発光材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(EML))よりも高く、さらに電子輸送層に含有される電子輸送材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(ETL))が、発光層に含有される発光材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(EML))よりも低いことを特徴とする。
【0032】
上記により、「EMLとHTLの界面において正孔移動度が電子移動度より早いこと、EMLとETLの界面において電子移動度が正孔移動度より早いこと、の両方またはどちらか一方を満たす必要がある」という条件を満足することができる。すなわち、p型やn型ではない両性半導体であっても、エネルギー準位を適切な組み合わせにすることにより、本発明の実施が可能となる。
図1には本発明の発光素子のうち発光層が一層の場合の形態を例示したが、本発明はこれに限定されない。発光層を複数有していてもよく、発光層と別な発光層の間に電荷発生層(Charge Generation Layer、CGL)を有していても良い。発光層を複数有する場合の各々の発光層を構成する発光材料は、同一であっても良いが、異なっていても良く、一部が同一であっても良い。また、一つの発光層が複数の発光材料を含んでいても良い。単一の発光素子から複数の発光色が得られる発光素子を用いる場合には、カラーフィルター等との組み合わせにより、色情報を再現できる表示装置を構成することができる。
【0033】
また本発明の発光素子の正孔輸送材料、発光材料および電子輸送材料は、無機ハロゲン化物であることが好ましく、アモルファス性の金属ハロゲン化物であってもよいが、結晶性の金属ハロゲン化物であることがより好ましい。本発明の発光素子の正孔輸送材料、発光材料および電子輸送材料の態様として、式A
mB
nX
pで表される金属ハロゲン化物が挙げられる(記号の意味は前記と同様である)。式A
mB
nX
pで表される金属ハロゲン化物としては、式A
1B
1X
3または式A
4B
1X
6で表される金属ハロゲン化物が挙げられる。さらに本発明の発光素子の正孔輸送材料、発光材料および電子輸送材料の態様として、CsPbCl
3、CsPbBr
3、CsPbI
3、Cs
4PbCl
6、Cs
4PbBr
6、Cs
4PbI
6、CsSnCl
3、CsSnBr
3、CsSnI
3、Cs
4SnCl
6、Cs
4SnBr
6、Cs
4SnI
6、PbCl
2、PbBr
2、PbI
2、SnCl
2、SnBr
2、SnI
2からなる群から選択される金属ハロゲン化物が挙げられる。これらの無機ハロゲン化物の結晶構造の一例を
図2に示す。
【0034】
また、本発明の発光素子は、電子注入層をさらに有することが好ましい。その態様を
図3に示す。さらに、本発明の発光素子の電子注入層は、金属ナトリウムが有機溶媒に溶解した材料から作製される金属ナトリウム膜が好ましく、金属ナトリウムを溶解する有機溶媒としては、例えば、N,N’-ジメチルエチレン尿素、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N’-ジメチルプロピレン尿素が挙げられる。
本発明の発光素子は、高い量子効率を有し、広い色域を実現できる表示装置を実現することができる。また、種々の真空成膜法や塗布法で製造可能であり、素子の厚みが薄いことから、大面積で柔軟な表示装置の作製を可能にする。加えて、本発明の表示装置は、高精細、高応答速度、高コントラスト、広視野角、薄型などの有機ELディスプレイが備える特長を兼ね備える。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であればこれから様々な変形及び均等な実施の形態が可能である。
【0036】
よって、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義される本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形や改良形態も本発明に含まれる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
(発光素子の作製-1)
以下の構成の発光素子を作製した。
ITO/PbBr2/CsPbBr3/CsPbCl3/Ag
(陽極/HTL/EML/ETL/陰極)
この発光素子は、正孔輸送層に含有される正孔輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(HTL))が、発光層に含有される発光材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(EML))よりも高く、その差は1.2eVである。さらに電子輸送層に含有される電子輸送材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(ETL))が、発光層に含有される発光材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(EML))よりも低く、その差は0.6eVであるという構成を有している。
また、正孔輸送材料、発光材料、電子輸送材料は、全て無機ハロゲン化物である。
両極に電圧を印加したところ、発光が確認された。
【0039】
[実施例2]
(発光素子の作製-2)
以下の構成の発光素子を作製した。
ITO/CsSnBr3/CsPbBr3/CsPbCl3/Ag
(陽極/HTL/EML/ETL/陰極)
この発光素子は、正孔輸送層に含有される正孔輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(HTL))が、発光層に含有される発光材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(EML))よりも高くはなく、その差は0.1eV以下であるが、電子輸送層に含有される電子輸送材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(ETL))が、発光層に含有される発光材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(EML))よりも低く、その差は0.7eVであるという構成を有している。
また、正孔輸送材料、発光材料、電子輸送材料は、全て無機ハロゲン化物である。
両極に電圧を印加したところ、発光が確認された。
【0040】
[実施例3]
(発光素子の作製-3)
以下の構成の発光素子を作製した。
ITO/PEDOT:PSS/CsPbBr3/ZnO/Al
(陽極/HTL/EML/ETL/陰極)
PEDOTは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を意味しており、PSSはポリスチレンスルホン酸を意味している。すなわちこれらは有機化合物である。
この発光素子は、正孔輸送層に含有される正孔輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(HTL))が、発光層に含有される発光材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(EML))よりも高く、その差は1.0eVであり、電子輸送層に含有される電子輸送材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(ETL))が、発光層に含有される発光材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(EML))よりも低く、その差は2.2eVであるという構成を有している。
両極に電圧を印加したところ、発光が確認された。
【0041】
[実施例4]
(発光素子の作製-4)
以下の構成の発光素子を作製した。
ITO/Cu-Sn-I/CsPbBr3/Bphen/LiF/Al
(陽極/HTL/EML/ETL/EIL/陰極)
Bphenは、バソフェナントロリンを意味している。すなわちこれは有機化合物である。
この発光素子は、正孔輸送層に含有される正孔輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(HTL))が、発光層に含有される発光材料の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec(EML))よりも高く、その差は0.5eVであり、電子輸送層に含有される電子輸送材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(ETL))が、発光層に含有される発光材料の価電子帯上端のエネルギー準位(Ev(EML))よりも低く、その差は0.8eVであるという構成を有している。
両極に電圧を印加したところ、発光が確認された。