(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ドア駆動装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/655 20150101AFI20221117BHJP
B61D 19/02 20060101ALI20221117BHJP
E05F 15/635 20150101ALI20221117BHJP
【FI】
E05F15/655
B61D19/02 D
E05F15/635
(21)【出願番号】P 2018173502
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】上田 晋司
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-229436(JP,A)
【文献】特開平8-144632(JP,A)
【文献】特開平5-256343(JP,A)
【文献】特開平4-97090(JP,A)
【文献】特公昭49-29864(JP,B1)
【文献】特公昭48-13670(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0319583(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0298706(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0194783(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
B61D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの開口幅方向に延びるベース部材と、
前記ベース部材に押し当てられ、前記ベース部材に沿って回転しながら移動する回転移動体と、
前記ドアの開口幅方向に延びてモーターの動力で回転する回転軸と、
前記回転軸の軸方向に対して相対移動可能であり、かつ、前記回転軸と共に回転し、前記回転移動体と接触することによって前記回転軸の回転力を前記回転移動体に伝達する伝達部材
と、
前記回転移動体を回転可能に保持するとともに、ドアリーフを保持する保持体と、を備える、
ドア駆動装置。
【請求項2】
ドアの開口幅方向に延びるベース部材と、
前記ベース部材に押し当てられ、前記ベース部材に沿って回転しながら移動する2つの回転移動体と、
前記ドアの開口幅方向に延びてモーターの動力で回転する回転軸と、
2つの前記回転移動体それぞれに対応するように設けられ、前記回転軸の軸方向に対して相対移動可能であり、かつ、前記回転軸と共に回転し、前記回転移動体と接触することによって前記回転軸の回転力を前記回転移動体に伝達する2つの伝達部材
と、
前記回転移動体を回転可能に保持するとともに、ドアリーフを保持する2つの保持体と、を備え、
2つの前記伝達部材は、2つの前記回転移動体の回転方向が互いに反対となるように前記回転移動体に回転力を伝達する
ドア駆動装置。
【請求項3】
前記モーターは、前記ドアの開口幅方向における中央部に配置される
請求項2に記載のドア駆動装置。
【請求項4】
前記保持体は、前記回転移動体を保持する本体部と、前記本体部に設けられて前記ベース部材で支持される第1被支持部と、前記本体部に設けられた前記回転軸で支持される第2被支持部とを備える
請求項1~3のいずれか一項に記載のドア駆動装置。
【請求項5】
前記伝達部材は、前記回転軸の回転中心軸を中心として回転する第1のギアを有し、
前記回転移動体は、前記第1のギアに噛み合う第2のギアを有する
請求項1~4のいずれか一項に記載のドア駆動装置。
【請求項6】
ドアの開口幅方向に延びるベース部材と、
前記ベース部材に押し当てられ、前記ベース部材に沿って回転しながら移動する2つの回転移動体と、
前記ドアの開口幅方向に延びてモーターの動力で回転する回転軸と、
2つの前記回転移動体それぞれに対応するように設けられ、前記回転軸の軸方向に対して相対移動可能であり、かつ、前記回転軸と共に回転し、前記回転移動体と接触することによって前記回転軸の回転力を前記回転移動体に伝達する2つの伝達部材とを備え、
前記モーターは、前記ドアの開口幅方向における中央部に配置され、
2つの前記伝達部材は、2つの前記回転移動体の回転方向が互いに反対となるように前記回転移動体に回転力を伝達する
ドア駆動装置。
【請求項7】
ドアの開口幅方向に延びるベース部材と、
前記ベース部材に押し当てられ、前記ベース部材に沿って回転しながら移動する回転移動体と、
前記ドアの開口幅方向に延びてモーターの動力で回転する回転軸と、
前記回転軸の軸方向に対して相対移動可能であり、かつ、
前記回転軸の回転中心軸を中心として前記回転軸と共に回転し、前記回転移動体と接触することによって前記回転軸の回転力を前記回転移動体に伝達する伝達部材とを備える
ドア駆動装置。
【請求項8】
ドアの開口幅方向に延びるベース部材と、
前記ベース部材に押し当てられ、前記ベース部材に沿って回転しながら移動する2つの回転移動体と、
前記ドアの開口幅方向に延びてモーターの動力で回転する回転軸と、
2つの前記回転移動体それぞれに対応するように設けられ、前記回転軸の軸方向に対して相対移動可能であり、かつ、
前記回転軸の回転中心軸を中心として前記回転軸と共に回転し、前記回転移動体と接触することによって前記回転軸の回転力を前記回転移動体に伝達する2つの伝達部材とを備え、
2つの前記伝達部材は、2つの前記回転移動体の回転方向が互いに反対となるように前記回転移動体に回転力を伝達する
ドア駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアリーフを移動させるドア駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドア駆動装置として、特許文献1に記載の技術が知られている。同文献に記載のドア駆動装置は、可逆ねじと、可逆ねじに沿って往復する往復台とを備える。往復台は、可逆ねじに摺動するナットを有する。可逆ねじが回転すると、往復台が可逆ねじに沿って移動する。往復台は、その移動に基づいて、ドアリーフを移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のドア駆動装置は、可逆ねじを備える。これに対して、ラックアンドピニオンの構造を備えたドアリーフを移動させるドア駆動装置が知られている。このドア駆動装置では、ピニオンはモーターの動力で回転及び移動する。ピニオンとモーターとは一体に移動する。そして、ピニオンの移動により、ドアリーフを移動させる。このような構造のドア駆動装置では、ドアリーフを移動させる移動体(ピニオン及びモーターを含む構造体)の小型化が難しい。そこで、本発明は、小型化できるドア駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決するドア駆動装置は、ドアの開口幅方向に延びるベース部材と、前記ベース部材に押し当てられ、前記ベース部材に沿って回転しながら移動する回転移動体と、前記ドアの開口幅方向に延びてモーターの動力で回転する回転軸と、前記回転軸の軸方向に対して相対移動可能であり、かつ、前記回転軸と共に回転し、前記回転移動体と接触することによって前記回転軸の回転力を前記回転移動体に伝達する伝達部材とを備える。この構成によれば、回転移動体にモーターを組み込んで一体として動作させる必要がないため、回転移動体を含む移動体の小型化が可能である。
【0006】
(2)上記課題を解決するドア駆動装置は、ドアの開口幅方向に延びるベース部材と、前記ベース部材に押し当てられ、前記ベース部材に沿って回転しながら移動する2つの回転移動体と、前記ドアの開口幅方向に延びてモーターの動力で回転する回転軸と、2つの前記回転移動体それぞれに対応するように設けられ、前記回転軸の軸方向に対して相対移動可能であり、かつ、前記回転軸と共に回転し、前記回転移動体と接触することによって前記回転軸の回転力を前記回転移動体に伝達する2つの伝達部材とを備え、2つの前記伝達部材は、2つの前記回転移動体の回転方向が互いに反対となるように前記回転移動体に回転力を伝達する。この構成によれば、1つの回転軸によって、2つの回転移動体を互いに反対方向となるように移動できるため、両開きのドア構造を簡潔にできる。
【0007】
(3)上記ドア駆動装置において、前記モーターは、前記ドアの開口幅方向における中央部に配置される。この構成によれば、ドア駆動装置について、開口幅方向における寸法を短くできる。
【0008】
(4)上記ドア駆動装置において、前記回転移動体を回転可能に保持するとともに、ドアリーフを保持する保持体をさらに備える。回転移動体に直接にドアリーフが取り付けられる構造の場合、ドアリーフの移動が安定しない虞がある。この点、上記構成によれば、保持体にドアリーフが締結されるため、ドアリーフの移動が安定する。
【0009】
(5)上記ドア駆動装置において、前記保持体は、前記回転移動体を保持する本体部と、前記本体部に設けられて前記ベース部材で支持される第1被支持部と、前記本体部に設けられた前記回転軸で支持される第2被支持部とを備える。この構成によれば、保持体は、ベース部材と回転軸とにより支持されるため、ベース部材および回転軸に沿う移動が安定する。
【0010】
(6)上記ドア駆動装置において、前記伝達部材は、前記回転軸の回転中心軸を中心として回転する第1のギアを有し、前記回転移動体は、前記第1のギアに噛み合う第2のギアを有する。この構成によれば、ギアで回転動力を伝達するため、接触のみで回転動力を伝達する場合に比べて、回転動力伝達の際の滑りの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
上記ドア駆動装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~
図10を参照して、ドア駆動装置について説明する。
鉄道の車両1にはドアが設けられる。ドアは、ドア開口部2を開閉するドアリーフ3を有する。ドア駆動装置10は、ドアリーフ3を移動させる。ドアリーフ3は、車両の前後方向に沿って移動する。ドア駆動装置10は、鉄道の車両1においてドア開口部2の周辺に取り付けられる。
【0014】
例えば、ドア駆動装置10は、ドア開口部2の上の壁に設置される。ドアリーフ3は、ガイドレールからハンガー(図示省略)により吊り下げられて、車両1の前後方向に延びるガイドレールにより前後方向に案内される。そして、ドアリーフ3は、ドア駆動装置10の動力に基づいて移動する。
【0015】
図2及び
図3に示されるように、ドア駆動装置10は、ベース部材11と、モーター21の動力により回転する回転軸13と、回転移動体32と、伝達部材31とを備える。回転移動体32は、好ましくは、ドアリーフ3を移動させる移動体30の構成要素とされる。
【0016】
ベース部材11は、ドアリーフ3の開口幅方向DTに延びる。すなわち、ベース部材11は、その延長方向DXとドアリーフ3の開口幅方向DTとが一致するように設置される。ベース部材11は、その延長方向DXに配列される歯12(
図9参照)を有する。ベース部材11の歯12は、前述の回転移動体32と噛み合う。具体的には、ベース部材11は、ラックアンドピニオン構造のラックとして構成される。
【0017】
回転軸13は、ベース部材11の延長方向DXに沿って延びる。回転軸13は、ベース部材11に平行に配置される。回転軸13の回転中心軸CXを回転中心として回転する。回転中心軸CXは、ベース部材11の延長方向DXに沿うように延びる。回転軸13は、後述の駆動装置20の動力により回転する。回転軸13は、回転中心軸CXを中心とする円周に沿う周面14を有する。周面14(
図7参照)には、回転中心軸CXに平行な少なくとも1つの溝15が設けられている。
【0018】
図4に示されるように、駆動装置20は、モーター21と、減速装置22とを備える。減速装置22は、モーター21の出力軸21aに取り付けられる出力ギア23と、出力ギア23に噛み合う第1減速ギア24と、第1減速ギア24に噛み合う第2減速ギア25とを備える。出力ギア23、第1減速ギア24、及び第2減速ギア25は、一対の箱27aからなるケース27に回転可能に収容される。出力ギア23は、モーター21の出力軸21aと一体に回転する。第1減速ギア24は、出力ギア23の回転に基づいて回転する。第2減速ギア25は、第1減速ギア24の回転に基づいて回転する。第2減速ギア25は、回転軸13と一体に回転する。モーター21の回転動力は、出力ギア23、第1減速ギア24及び第2減速ギア25を介して回転軸13に伝達される。このようにして、回転軸13は、モーター21の動力で回転する。
【0019】
図5~
図9を参照して、移動体30及び伝達部材31について説明する。
移動体30は、回転軸13の回転動力に基づいて移動する。回転軸13の回転動力は、伝達部材31を介して移動体30に伝達される。
【0020】
伝達部材31は、回転軸13の軸方向に対して相対移動可能であり、かつ、回転軸13と共に回転し、移動体30の回転移動体32と接触することによって回転軸13の回転力を移動体30の回転移動体32に伝達する。そして、伝達部材31は、回転軸13の回転力を移動体30の回転移動体32に伝達することにより、移動体30から力を受けて、移動体30と共に移動する。
【0021】
具体的には、伝達部材31は、回転軸13と一体に回転しかつ回転軸13に対して軸方向に摺動する摺動部材41と、摺動部材41に結合する第1ベベルギア51(第1のギア)とを備える。第1ベベルギア51は、移動体30の回転移動体32に固定される第2ベベルギア56(第2のギア)に噛み合う。すなわち、伝達部材31は、第1ベベルギア51を介して回転動力を移動体30の回転移動体32に伝達する。
【0022】
図6及び
図7に示されるように、摺動部材41は、回転軸13が挿通する挿通孔42を有する。摺動部材41の取り付け後において、挿通孔42の中心軸CYと回転軸13の回転中心軸CXとは一致する(
図7参照)。挿通孔42の内周面42aは、中心軸CYを中心とする円周に沿うように構成される。内周面42aには、中心軸CYに沿って延びる溝43が少なくとも1つ設けられている。当該溝43の溝幅は、回転軸13の溝15の溝幅と等しい。摺動部材41の溝43及び回転軸13の溝15により、円柱状の空間が形成される。この空間に、円柱状のロッドまたは球状のボールが収容される。この構造により、摺動部材41は、回転軸13に対して中心軸CYを中心とする円周方向の回転が制限され、かつ回転軸13に沿って移動可能となる。また、摺動部材41は、リング状のベアリング45(
図10参照)を介して保持体33に保持される。これにより、摺動部材41は、中心軸CYを中心として、保持体33に対して回転する。
【0023】
第1ベベルギア51は、摺動部材41に結合する結合部52と、回転軸13が挿通する挿通孔53と、挿通孔53の周りの設けられる傘歯54とを備える。第1ベベルギア51は、摺動部材41に結合して、摺動部材41と一体に回転及び移動する。すなわち、第1ベベルギア51は、摺動部材41及び回転軸13と一体となって回転中心軸CXを中心として回転する。また、第1ベベルギア51は、摺動部材41とともに回転軸13に沿って移動する。
【0024】
図6に示されるように、移動体30は、ベース部材11に噛み合う回転移動体32を備える。さらに、移動体30は、回転移動体32を保持する保持体33を備える。移動体30の回転移動体32は、伝達部材31から回転動力を受けることにより回転する。移動体30の回転移動体32はベース部材11に噛み合っている。これにより、回転移動体32が回転すると、移動体30はベース部材11に沿って移動する。
【0025】
具体的には、回転移動体32は、伝達部材31とベース部材11とに噛み合う。例えば、回転移動体32は、ベース部材11に噛み合うピニオンギア55と、伝達部材31の第1ベベルギア51に噛み合う第2ベベルギア56とを有する。ピニオンギア55の回転中心軸CAは、回転軸13の回転中心軸CXに垂直に交差する。第2ベベルギア56の回転中心軸は、ピニオンギア55の回転中心軸CAと同軸とされる。すなわち、第2ベベルギア56は、回転軸13の回転中心軸CXに垂直に交差する線を中心として回転する。そして、第2ベベルギア56は、ピニオンギア55に固定される。すなわち、ピニオンギア55と第2ベベルギア56とは一体に回転する。
【0026】
保持体33は、回転移動体32を保持する本体部61と、ベース部材11で支持される第1被支持部64と、回転軸13で支持される少なくとも1つの第2被支持部67とを有する。本実施形態では、保持体33は、2つの第2被支持部67を有する。
【0027】
保持体33の本体部61には、ピニオンギア55を収容する凹部62と、凹部62の底面62aから突出する支軸63とが設けられている。支軸63は、凹部62の中心部に設けられる。支軸63の中心軸は、ピニオンギア55の回転中心軸CAと一致する。保持体33に設けられる締結部78(後述参照)は、ドアリーフ3に結合する。このため、移動体30が移動することに伴ってドアリーフ3が開閉する。
【0028】
図8及び
図9に示されるように、第1被支持部64は、本体部61において凹部62の横に設けられる。第1被支持部64は、本体部61と一体に形成される。第1被支持部64は、ベース部材11が挿通する挿通孔65を有する。挿通孔65は、凹部62の内周面62bに交差するように延びる。挿通孔65と凹部62とが交差する部分で、挿通孔65と凹部62とが繋がる。ここでは、挿通孔65と凹部62とが繋がっている部分を「交差開口部66」という。交差開口部66において、ピニオンギア55とベース部材11とが噛み合う。ベース部材11は、一対の筒状の摺動部材72を介して第1被支持部64に挿通する。摺動部材72は、第1被支持部64の挿通孔65に固定される。
【0029】
一対の第2被支持部67は、本体部61からピニオンギア55の回転中心軸CAに沿う方向に突出する。一対の第2被支持部67は、回転軸13の回転中心軸CXに沿う方向において凹部62を間に挟み、かつベース部材11の延長方向DXに間隔をあけて配列される(
図5参照)。一対の第2被支持部67のそれぞれには、回転軸13が挿通する挿通孔68が設けられる。一方の第2被支持部67は、伝達部材31の摺動部材41を介して回転軸13に支持される。他方の第2被支持部67は、別の摺動部材74を介して回転軸13に支持される。別の摺動部材74は、伝達部材31の摺動部材41の構造と同じ構造を有する(
図6参照)。摺動部材41,74は、ベアリング45,75(
図10参照)を介して第2被支持部67の挿通孔68,68に挿通する。摺動部材41,74及びベアリング45,75は、ブラケット76,76及び抜け留め部材77,77により、第2被支持部67に取り付けられる。なお、ブラケット76,76は、ドアリーフ3に締結される締結部78を有する。
【0030】
図10を参照して、ドア駆動装置10の作用を説明する。
回転軸13が回転すると、回転軸13の回転と共に伝達部材31が回転する。伝達部材31が回転すると回転移動体32が回転する。回転移動体32が回転すると、回転移動体32のピニオンギア55とベース部材11との噛み合いにより移動体30が開口幅方向DTに移動する。移動体30が移動すると、移動体30とともに伝達部材31が回転軸13に沿って移動する。このため、回転移動体32には、伝達部材31を介して回転軸13から回転動力が伝達され続けられる。このように、ドア駆動装置10によれば、ねじの回転に基づいてナットを推進させるスライド機構とは異なる構造により、移動体30を移動できる。要するに、移動体30は、回転動力をベース部材11に噛み合うピニオンギア55の回転動力に変換することにより推進する。また、移動体30を推進させる動力である回転軸13の回転動力は、伝達部材31を介して回転移動体32に伝達される。このように、移動体30は、モーター21等の駆動源を備えないため、駆動源を備える参考の移動体に比べて、小型化できる。
【0031】
以下に、ドア駆動装置10の効果を説明する。
(1)ドア駆動装置10は、ベース部材11と、回転移動体32と、ドアリーフ3の開口幅方向DTに延びるモーター21の回転軸13と、伝達部材31とを備える。回転移動体32は、ベース部材11に押し当てられベース部材11に沿って回転しながら移動する。伝達部材31は、回転軸13の回転中心軸CX(軸方向)に対して相対移動可能であり、かつ、回転軸13と共に回転し、回転移動体32と接触することによって回転軸13の回転力を回転移動体32に伝達する。この構成によれば、回転移動体32にモーター21を取り付けて一体として動作させる必要がないため、ベース部材11に沿って移動する物(すなわち回転移動体32を含む移動体30)の小型化が可能である。また、ボールねじの回転によりナットを移動させるスライド機構を備えるドア駆動装置10の場合、ボールねじとナットとの噛み合い関係が精密に規定されている必要があるが、上記構成によれば、精密に規定された部品を用いる必要がない。このため、ドア駆動装置10を構成する部品の加工が容易である。
【0032】
(2)ドア駆動装置10は、2つの回転移動体32と、2つの回転移動体32それぞれに設けられる2つの伝達部材31を備える。2つの伝達部材31は、2つの回転移動体32の回転方向が互いに反対となるように回転移動体32に回転力を伝達する。この構成によれば、1つの回転軸13によって、2つの回転移動体32を互いに反対方向となるように移動できるため、両開きのドア構造を簡潔にできる。
【0033】
(3)上記ドア駆動装置10において、モーター21は、ドアの開口幅方向DTにおける中央部に配置される。この構成によれば、ドア駆動装置10について、開口幅方向DTにおける寸法を短くできる。
【0034】
(4)ドア駆動装置10は、さらに、回転移動体32を保持する保持体33を備える。この構成によれば、回転移動体32に直接にドアリーフ3が取り付けられる構造の場合、ドアリーフ3の移動が安定しない虞がある。この点、上記構成によれば、保持体33にドアリーフ3が締結されるため、ドアリーフ3の移動が安定する。
【0035】
(5)保持体33は、回転移動体32を保持する本体部61と、本体部61に設けられてベース部材11で支持される第1被支持部64と、本体部61に設けられた回転軸13で支持される第2被支持部67とを備える。この構成によれば、保持体33は、ベース部材11と回転軸13とにより支持されるため、ベース部材11および回転軸13に沿う移動が安定する。
【0036】
(6)伝達部材31は、回転軸13の回転中心軸CXを中心として回転する第1ベベルギア51(第1のギア)を有する。回転移動体32は、第1ベベルギア51(第1のギア)に噛み合う第2ベベルギア56(第2のギア)を有する。この構成によれば、ギアで回転動力を伝達するため、接触のみで回転動力を伝達する場合に比べて、回転動力伝達の際の滑りの発生を抑制できる。
【0037】
<他の実施形態>
上記実施形態は、上記構成の例に限定されない。上記実施形態は、以下のように変更され得る。なお、以下の変形例では、上記実施形態の構成と実質的に構成の変更ない構成については、上記実施形態の構成と同一の符号をつけて説明する。
【0038】
・上記実施形態において、回転軸13の断面構造は、上記例に限定されない。回転軸13において回転中心軸CXに垂直な断面の形状は、回転軸13の回転に基づいて伝達部材31に回転動力を加えることができる形状であればよい。具体的には、回転軸13の断面は、非円形であればよく、多角形、突起を有する構造、溝を有する構造、等に構成され得る。
【0039】
・上記実施形態において、伝達部材31の回転中心軸は、回転軸13の回転中心軸CXに平行であれば、当該回転中心軸CXと一致しなくてもよい。伝達部材31の回転中心が回転軸13と一致しない構造の場合、伝達部材31は、回転軸13と平行の軸部材により支持される。この軸部材は、保持体33に設けられる。そして、回転軸13には歯車が設けられ、伝達部材31は、回転軸13の当該歯車に噛み合う歯車が設けられる。なお、このような構成によれば、回転軸13と伝達部材31とは外歯同士が噛み合うため、回転軸13の回転方向と伝達部材31の回転方向とは反対方向になる。ドア駆動装置10の動作は、実質的に実施形態に示された例に準ずる。
【0040】
・上記実施形態において、ベース部材11は、ラックアンドピニオン構造のラックとして構成されているが、例えば、ローラを案内するレールとして構成され得る。この構成の場合、回転移動体32は、レールに接触するローラとして構成される。回転移動体32としてのローラは、ベース部材11としてのレールに接触し、摩擦で回転して、ベース部材11に沿って移動する。
【0041】
・上記実施形態では、第1ベベルギア51と第2ベベルギア56との噛み合いにより回転軸13の回転力が回転移動体32に伝達されるが、回転力の伝達構造は、ベベルギアに限定されない。例えば、フェイスギアまたはウォームギアによって回転力を伝達してもよい。
【0042】
・上記実施形態において、伝達部材31は、上記構成に限定されない。例えば、伝達部材31は、第1ベベルギア51に代えて、回転中心軸CXに対して傾斜する面を有する円錐台形状の第1ローラとして構成され得る。この場合、回転移動体32は、円錐台形状の第1ローラとの接触により回転する円錐台形状の第2ローラを備える。回転移動体32の第2ローラは、ピニオンギア55と同軸の回転軸を有する。この構成により、回転軸13の回転動力が、伝達部材31の第1ローラの回転動力を介して回転移動体32の第2ローラに伝達され、回転移動体32の第2ローラとともにピニオンギア55が回転し、移動体30が移動する。
【0043】
・上記実施形態では、ドア駆動装置10は、鉄道車両のドアリーフ3を移動させるが、移動させる対象は、これに限定されない。例えば、ドア駆動装置10は、バスのドアリーフや店舗のドアリーフの移動に適用できる。
【符号の説明】
【0044】
CA…回転中心軸、CX…回転中心軸、CY…中心軸、DX…延長方向、DT…開口幅方向、1…車両、2…ドア開口部、3…ドアリーフ、10…ドア駆動装置、11…ベース部材、12…歯、13…回転軸、14…周面、15…溝、20…駆動装置、21…モーター、21a…出力軸、22…減速装置、23…出力ギア、24…第1減速ギア、25…第2減速ギア、27…ケース、27a…箱、30…移動体、31…伝達部材、32…回転移動体、33…保持体、41…摺動部材、42…挿通孔、42a…内周面、43…溝、45…ベアリング、51…第1ベベルギア、52…結合部、53…挿通孔、54…傘歯、55…ピニオンギア、56…第2ベベルギア、61…本体部、62…凹部、62a…底面、62b…内周面、63…支軸、64…第1被支持部、65…挿通孔、66…交差開口部、67…第2被支持部、68…挿通孔、72…摺動部材、74…摺動部材、75…ベアリング、76…ブラケット、77…抜け留め部材、78…締結部。