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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】コンクリートの熱膨張係数の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20221117BHJP
   G01N 25/16 20060101ALI20221117BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20221117BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20221117BHJP
   G01B 11/06 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
G01N33/38
G01N25/16 C
G01B11/02 Z
G01B11/16 Z
G01B11/06 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018179363
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020051812
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】大野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】三谷 裕二
(72)【発明者】
【氏名】小亀 大佑
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-121321(JP,A)
【文献】特開平11-118430(JP,A)
【文献】特開2008-116352(JP,A)
【文献】石関 浩輔、他2名,収縮低減剤による若材齢線膨張係数の抑制効果,コンクリート工学年次論文集,日本,2011年,Vol.33,No.1,Page.485-490
【文献】宮澤伸吾,コンクリートの熱膨張係数,コンクリート工学,日本,2018年,Vol.56,No.5,Page.368-372
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/38
G01N 25/16
G01B 11/02
G01B 11/16
G01B 11/06
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記長さ変化測定装置EまたはE と、下記のコンクリートの供試体を用いて、単位温度変化あたりのコンクリート供試体の長さ変化を、30℃→50℃→70℃→50℃→30℃の順にそれぞれ1~3時間保持して、前記各温度における保持時間の終了時に測定してコンクリートの熱膨張係数を得る、コンクリートの熱膨張係数の測定方法。
<長さ変化測定装置E
1個以上のレーザー変位計、長さ変化測定用の供試体を載置するための台座、および、該供試体の位置決め治具、を少なくとも含む長さ変化測定装置
<長さ変化測定装置E
2個以上のレーザー変位計、長さ変化測定用の供試体を支持するための3点以上の支持部材、および、該支持部材の一部を埋設してなる台座、を少なくとも含む長さ変化測定装置
<コンクリートの供試体>
乾燥収縮が終了したコンクリートの供試体で、かつ、全面を封緘した供試体であって、直径10~30cm、および厚さ5~20mmの円板状供試体、または、1辺の長さが10~30cm、および厚さが5~20mmの四角板状供試体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの熱膨張係数を短期間で簡易に精度よく測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの線膨張係数は、コンクリートに温度変化を与えた際に生じる長さ変化を測定して、単位温度変化あたりの長さ変化に換算して得られるコンクリートの特性値である。現在、コンクリートの線膨張係数の測定方法は規格化されていないため、多くの測定方法が提案されている(非特許文献1)。これらの中で、従来、行われているコンクリートの線膨張係数の測定方法は、乾燥収縮が収束した10cm×10cm×40cmのコンクリート供試体をアルミ製テープで封緘して恒温槽に入れ、温度履歴を与えて、試験体中の埋込型ひずみ計によりコンクリートの長さ変化を測定し、単位温度変化あたりのコンクリートの長さ変化を算出する方法である(以下「従来法」という。)。しかし、この方法では、温度ひび割れを防止するため、試験体の昇温および降温速度が1℃/時と極めて遅く、また、コンクリートの内部と表層の温度を均一にするため、図1に示すように、5℃の昇温および降温の度に5時間その温度を保持しなければならず、測定に長時間を要する。
また非特許文献2では、レーザー変位計を用いてコンクリートの弱材齢線膨張係数等を測定している。しかし、供試体は10×100×400mmと大きく、また、セメントペーストと模擬コンクリート(実際はモルタル)しか測定できず、しかも、供試体を水中に浸漬した状態で、水温を変えながら長さを測定するという特殊な方法と装置を用いるため、装置1台につき1水準の供試体しか測定できない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「マスコンクリートのひび割れ制御に関する研究委員会報告書」、日本混コンクリート工学協会建築学会 編集、91頁(表-3.3.2)、2006年2月22日発行
【文献】寺本ら、「超高強度コンクリートの若材齢線膨張係数に関する研究」、コンクリート工学年次論文集、Vol.29、No.1、pp.633-638、2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、コンクリートの熱膨張係数を短期間で簡易に精度よく測定できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的にかなう測定方法を検討した結果、特定の長さ変化測定装置を用いて単位温度変化あたりのコンクリートの長さ変化を測定すれば、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記の構成を有するコンクリートの熱膨張係数の測定方法である。
【0006】
[1]下記長さ変化測定装置EまたはE と、下記のコンクリートの供試体を用いて、単位温度変化あたりのコンクリート供試体の長さ変化を、30℃→50℃→70℃→50℃→30℃の順にそれぞれ1~3時間保持して、前記各温度における保持時間の終了時に測定してコンクリートの熱膨張係数を得る、コンクリートの熱膨張係数の測定方法。
<長さ変化測定装置E
1個以上のレーザー変位計、長さ変化測定用の供試体を載置するための台座、および、該供試体の位置決め治具、を少なくとも含む長さ変化測定装置
<長さ変化測定装置E
2個以上のレーザー変位計、長さ変化測定用の供試体を支持するための3点以上の支持部材、および、該支持部材の一部を埋設してなる台座、を少なくとも含む長さ変化測定装置
<コンクリートの供試体>
乾燥収縮が終了したコンクリートの供試体で、かつ、全面を封緘した供試体であって、直径10~30cm、および厚さ5~20mmの円板状供試体、または、1辺の長さが10~30cm、および厚さが5~20mmの四角板状供試体
【発明の効果】
【0007】
本発明のコンクリートの熱膨張係数の測定方法は、コンクリートの熱膨張係数を短期間で簡易に精度よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)は従来法における温度履歴(昇温および降温)のパターンを示す図であり、(B)は従来法で測定した、普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの温度と供試体の長さ変化率の関係を示す図である。
図2】1個のレーザー変位計を有する長さ変化測定装置Eの上に、供試体を載置した状態の一例を示す概略図であって、左の図は該測定装置の平面図、右の図は該測定装置の側面図である。
図3】2個のレーザー変位計を有する長さ変化測定装置Eの上に、供試体を載置した状態の一例を示す概略図であって、左の図は該測定装置の平面図、右の図は該測定装置の側面図である。
図4】支持部材の下部の一部を、台座に埋め込んだ状態で設置してなる長さ変化測定装置Eの支持部材の上に、供試体を載置した状態の一例を示す概略図であって、左の図は該測定装置の平面図、右の図は該測定装置の側面図である。ただし、図4では、レーザー変位計の記載は省略した。
図5】2個のレーザー変位計を、対向して配置してなる長さ変化測定装置Eの一例を示す概略図であって、左の図は該測定装置の平面図、右の図は該測定装置の側面図である。
図6】2個のレーザー変位計を、該レーザー変位計から照射されたレーザーが90°の角度で交差するように配置してなる、長さ変化測定装置Eの一例を示す概略図であって、左の図は該測定装置の平面図、右の図は該測定装置の側面図である。ただし、紙面に対し後方に位置するレーザー変位計の記載は省略した。
図7】4個のレーザー変位計を、該レーザー変位計から照射されたレーザーが90°の角度で交差するように配置してなる、長さ変化測定装置Eの一例を示す概略図であって、左の図は該測定装置の平面図、右の図は該測定装置の側面図である。ただし、紙面に対し前方および後方に位置するレーザー変位計は省略した。
図8】長さ変化測定装置Eに、供試体を載置した様子を示す写真である。なお、(A)の台座の中心にあるピンは支持部材ではなく、台座を固定するためのネジである。
図9】(A)および(B)はそれぞれ、実施例1および2における温度と供試体の長さ変化率の関係を示す図である。また、各図中の回帰係数は線膨張係数を表す。
図10】(C)および(D)はそれぞれ、実施例3および4における温度と供試体の長さ変化率の関係を示す図である。また、各図中の回帰係数は線膨張係数を表す。
図11】(E)および(F)はそれぞれ、実施例5および6における温度と供試体の長さ変化率の関係を示す図である。また、各図中の回帰係数は線膨張係数を表す。
図12】(G)は、実施例7における温度と供試体の長さ変化率の関係を示す図である。また、各図中の回帰係数は線膨張係数を表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、前記長さ変化測定装置EまたはEを用いて、単位温度変化あたりのコンクリートの長さ変化を測定してコンクリートの熱膨張係数を得る、コンクリートの熱膨張係数の測定方法である。
以下、本発明について、長さ変化測定装置、およびコンクリートの熱膨張係数の測定方法に分けて詳細に説明する。
【0010】
1.長さ変化測定装置E
長さ変化測定装置Eは、図2~4に例示するとおり、1個以上のレーザー変位計4、長さ変化測定用の供試体を載置するための台座2、および、該供試体1の位置決め治具3を少なくとも含む装置である。
前記レーザー変位計は、特に制限されず、反射型や透過型等の市販のレーザー変位計が挙げられる。本発明では、レーザー変位計の数を増やせばデータ数が増え、その分、測定精度は向上するが、装置はコスト高になるため、レーザー変位計の数は、好ましくは1~4個、より好ましくは2~4個である。前記レーザー変位計は、台座上に載置した円板状(図2~4)または四角板状の供試体の中心に向けてレーザーを照射できるように設置する。レーザー変位計の設置位置は、例えば、図2図3に示す位置が挙げられる。
【0011】
また、台座2は、長さ変化測定用の供試体を載置するために用いる。台座の形状は、特に限定されず、例えば、図2~4に示す正方形の板状や、円板状である。また、測定精度の向上のために、台座は水平に保たれていることが好ましい。
さらに、当該台座は、熱や衝撃による変形を防止するため、好ましくはインバー鋼材を用いて製造する。また、台座は、供試体を支持するための支持部材5を設置してもよい。支持部材を設置すると、供試体と台座の間の熱の移動を遮断または低減できるため、長さ変化の測定精度が向上する。
支持部材の形状は、特に制限されず、図4に示すような球状(図4では、支持部材の下部の一部が、台座に埋め込まれている。)や柱状等が挙げられる。なお、支持部材を柱状にする場合は、供試体と点で接触するように、好ましくは、供試体に接する支持部材の面を半球状にする。
支持部材の数は、供試体を安定して載置できるため3点以上が好ましい。なお、支持部材を多くすると装置の製造に手間がかかるため、支持部材の数は3個または4個がより好ましい。また、前記支持部材は、供試体を安定して載置するためには、正三角形または正方形を形成するように設置するのが好ましい。図4は、支持部材が正方形を形成するように設置した例である。さらに、支持部材は、熱や衝撃による変形を防止するため、好ましくはインバー鋼材を用いて製造する。
【0012】
位置決め治具3は、供試体の長さ変化を測定する際に、供試体の載置位置を決めて固定するために用いるもので、例えば、図2図3に示すように、台座上に倒立した状態で設置してなる2本のピン等が挙げられる。図2図3では、円板状の供試体を台座に載置した場合、円板状の供試体の中心と台座の中心が一致するように、位置決め治具は円板状の供試体の周囲の側面と接触する位置に設置する。なお、当該位置決め治具は、台座上のほかに台座の外側に設置してもよい。さらに、当該位置決め治具は、熱や衝撃による変形を防止するため、好ましくはインバー鋼材を用いて製造する。
また、長さ変化測定装置(E)は、レーザー変位計、台座、および位置決め治具を、基盤を用いて一体化して構成することが好ましい。レーザー変位計、台座、位置決め治具、および、これらを設置するために用いる基盤は、熱や衝撃による変形を防止するため、好ましくはインバー鋼材を用いて製造する。
【0013】
2.長さ変化測定装置Eを用いた長さ変化の測定方法
該測定方法は、長さ変化測定装置Eの台座上に、円板状または四角板状の供試体を、該供試体の周囲の側面が位置決め治具と接触するように載置した後、レーザー変位計を用いて供試体の周囲の側面にレーザーを照射して、レーザー変位計と供試体の周囲の側面の間の距離を測定することにより、供試体の長さ変化を測る方法である。
供試体が円板状の場合、供試体の直径は、10~30cmであれば、供試体の製造は容易で、また、後述するように、恒温槽内に静置した供試体の内部と表面の温度は、短時間で均一になる。なお、供試体の直径は、より好ましくは10~20cmである。また、供試体の厚さは、5~20mmであれば供試体は割れ難く、また、恒温槽内に静置した供試体の内部と表面の温度は、短時間で均一になる。なお、供試体の厚さは、より好ましくは6~18mm、さらに好ましくは7~15mm、特に好ましくは8~12mmである。
また、供試体が四角板状の場合、四角板の1辺の長さは、好ましくは10~30cm、より好ましくは10~20cmであり、さらに好ましくは、1辺の長さが10~30cmの正方形、特に好ましくは、1辺の長さが10~20cmの正方形である。1辺の長さが10~30cmの正方形であれば、供試体の製造は容易で、また、恒温槽内に静置した供試体の内部と表面の温度は、短時間で均一になる。また、四角板状の供試体の厚さは、好ましくは5~20mm、より好ましくは6~18mm、さらに好ましくは7~15mm、特に好ましくは8~12mmである。供試体の厚さが5~20mmであれば、供試体は割れ難く、また、恒温槽内に静置した供試体の内部と表面の温度は、短時間で均一になる。
なお、長さ変化測定装置Eの台座に支持部材が設置されている場合、該支持部材上に、円板状または四角板状の供試体の周囲の側面が位置決め治具と接触するように、該供試体を載置する。
【0014】
前記測定方法では、例えば、供試体を恒温槽内に静置した後、恒温槽内を30℃→50℃→70℃→50℃→30℃の順にそれぞれ1~3時間、好ましくは1.5~2.5時間保持して、前記各温度における保持時間の終了時に供試体の長さ変化を測定し、長さ変化率を求める。また、前記供試体は乾燥収縮の影響を排除するため、好ましくは、乾燥収縮が終了(飽和)した供試体で、かつ、全面を封緘した供試体である。供試体の封緘は、例えば、アルミ製テープで被覆する等で行うことができる。
そして、長さ変化の測定精度を向上させるため、好ましくは、供試体は円板状であり、該供試体を時計回りまたは反時計回りに回転して、該供試体の周囲の側面が位置決め治具と接触した状態で、レーザー変位計と供試体の周囲の側面の間の距離を、2回以上、好ましくは3~5回測る。例えば、図1に示す供試体の点aを測定した後、供試体を時計回りに90°回転して点bを測定し、さらに時計回りに90°回転して点cを測定して、3点の平均値を長さ変化として求める。
【0015】
また、本発明の測定方法は、長さ変化をより正確に測定するために、供試体と同じ形状および寸法を有する金属板(基長板)を台座上に載置して、レーザー変位計と該金属板の側面の間の距離(L)を測定した後、該金属板に代えて前記供試体を台座上に載置して、レーザー変位計と供試体の側面の間の距離(L)を測定し、LとLの差(L-L)に基づき長さ変化を求める方法である。
また、前記測定した距離が画面上に表示される測定装置を用いる場合、本発明の測定方法は、供試体と同じ形状および寸法を有する金属板(基長板)を台座上に載置して、レーザー変位計と該金属板の側面の間の距離を測定し、該距離(の表示)をゼロに設定した後、該金属板に代えて前記供試体を台座上に載置して、レーザー変位計と供試体の側面の間の距離を測定し、長さ変化を求める方法である。
前記金属板(基長板)は、温度の変化による長さの変化が同じになるよう、好ましくは台座と同じ材質の金属であり、熱や衝撃による変形を防止するため、より好ましくはインバー鋼材である。
【0016】
3.長さ変化測定装置E
長さ変化測定装置Eは、図5~8に例示するように、2個以上のレーザー変位計4、長さ変化測定用の供試体を支持するための3点以上の支持部材5、および、該支持部材の一部を埋設してなる台座2を少なくとも含む装置である。
前記レーザー変位計は、長さ変化測定装置Eのレーザー変位計と同じである。また、長さ変化の測定精度が向上するため、レーザー変位計を2個以上設置する。レーザー変位計が1個では、長さ変化の測定精度が低下するおそれがある。また、レーザー変位計を増やせばデータ数が増え、その分、さらに測定精度が向上するが、装置はコスト高になる。したがって、レーザー変位計は、好ましくは2~6個、より好ましくは2~4個設置する。
【0017】
レーザー変位計は、長さ変化の測定精度が向上し、また、供試体の載置が容易なため、好ましくは、支持部材が形成する正三角形または正方形の中心から等間隔の位置に、レーザー照射面を該中心に向けて設置する。また、長さ変化の測定精度がさらに向上するため、より好ましくは、2~6個の前記レーザー変位計を、該レーザー変位計から照射されたレーザーが60~300°の角度で交差するように配置する。
レーザー変位計を設置する態様は、レーザー変位計を2個設置する場合、例えば、図5に示すように、レーザー変位計を対向して設置するか、図6に示すように、レーザーが90°の角度で交差するように設置し、また、レーザー変位計を4個設置する場合、図7に示すように、2組のレーザー変位計を対向して設置する。
【0018】
長さ変化測定装置(E)では、支持部材は必須の治具であり、供試体を台座から離して、供試体と台座の間に空間を設けるために用いる。この空間を設けることにより、長さ変化を測定する際の供試体の温度低下を低減できる。
なお、支持部材の形状、数、配置する形(位置の形状)、および材質は、長さ変化測定装置Eと同じである。
【0019】
台座は、支持部材の一部(下部)を埋設して固定してなるものである。ちなみに、図5~7に示す台座は正方形の板状であり、図8に示す台座は円板状である。なお、台座は水平に保たれていることが好ましく、材質はインバー鋼材が好ましいことは、長さ変化測定装置Eと同じである。
【0020】
長さ変化測定装置Eでは、支持部材上への供試体の載置を容易にするため、供試体載置補助治具を用いてもよい。該供試体載置補助治具は、図8に示すような、台座の外側に設置された2本のピンが挙げられる。図8の長さ変化測定装置Eの支持部材の上に、例えば、直径10cmの円板状の供試体を載置する場合、前記2本のピンと接触するように前記供試体を支持部材の上に載置すれば、供試体の中心と支持部材が形成する正方形の中心が一致するように供試体を載置できる。
なお、供試体載置補助治具は、図8に示すように台座の外側に設置するほか、台座上に設置してもよい。また、供試体載置補助治具は、熱や衝撃による変形を防ぐため、好ましくはインバー鋼材を用いて製造する。
【0021】
長さ変化測定装置(E)もまた、図5~8に示すように、2個以上のレーザー変位計、台座、および、必要に応じて、供試体載置補助治具を一体化して構成するのが好ましい。また、台座等の材質はインバー鋼材が好ましいことは、長さ変化測定装置Eと同じである。
【0022】
4.長さ変化測定装置Eを用いた長さ変化の測定方法
該測定方法は、長さ変化測定装置Eの支持部材上に、円板状または四角柱状の供試体の中心が、前記支持部材が形成する正三角形または正方形の中心と一致するように載置した後、レーザー変位計を用いて供試体の周囲の側面にレーザーを照射して、レーザー変位計と供試体の周囲の側面の間の距離を測定することにより、供試体の長さ変化を求める方法である。
例えば、図8に示すように、長さ変化測定装置Eの支持部材(台座上の球状の4点)上に、円板状の供試体を、該供試体の中心と支持部材が形成する正方形の中心が一致するように載置した後(図8(B))、レーザー変位計を用いて供試体の周囲の側面にレーザーを照射して、レーザー変位計と供試体の周囲の側面の間の距離を測定することにより、供試体の長さ変化を測る。
なお、前記供試体の形状、大きさ、および厚さは、長さ変化測定装置(E)を用いた長さ変化の測定方法の場合と同じである。
また、前記測定方法では、例えば、供試体を恒温槽内に静置した後、恒温槽内を30℃→50℃→70℃→50℃→30℃の順にそれぞれ1~3時間、好ましくは1.5~2.5時間保持して、前記各温度における保持時間の終了時に供試体の長さ変化を測定し、長さ変化率を求める。また、前記供試体は乾燥収縮の影響を排除するため、好ましくは、乾燥収縮が終了(飽和)した供試体で、かつ、全面を封緘した供試体である。供試体の封緘は、例えば、アルミ製テープで被覆する等で行うことができる。
【実施例
【0023】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.使用材料
(1)セメント
(i)普通ポルトランドセメント(略号:NC)
(ii)高炉セメントB種(略号:BB)
(iii)中庸熱ポルトランドセメント(略号:MC)
(iv)低熱ポルトランドセメント(略号:LC)
前記セメントは、すべて太平洋セメント社製である。
(2)膨張材(略号:EX)
太平洋ハイパーエクスパン(太平洋マテリアル社製)
(3)収縮低減剤(略号:SR)
テトラガードAS21(太平洋マテリアル社製)
(4)細骨材(略号:S)
山砂、表乾密度2.56g/cm
(5)粗骨材
(i)砂岩砕石、表乾密度2.61g/cm(略号:G1)
(ii)石灰砕石、表乾密度2.71g/cm(略号:G2)
(6)水(略号:W)
水道水
(7)減水剤(略号:LS)
リグニンスルホン酸系AE減水剤、商品名 ポゾリスNo.70[登録商標]、BASF社製
(8)AE剤
商品名 マスターエア404[登録商標]、BASF社製
【0024】
2.長さ変化測定用のコンクリートの供試体の作製
表1に示す配合に従い、前記の各材料を容量50リッターのパン型ミキサに一括して投入し、2分間混練した後、混練物を内径10cm、高さ20cmの型枠に打設して成形しコンクリートを得た。なお、AE剤の使用量を調整して、コンクリート中の空気量を4.5%、スランプを15cmにした。
次に、該コンクリートを20℃で1日間湿空養生した後に脱型し、さらに20℃で7日間水中養生した。水中養生した後、コンクリートの高さ方向の中央部付近を切断して、直径10cm、厚さ1cmのコンクリートの円盤を各配合につき各3個、合計で6×3=18個作製した。
さらに、該円盤の乾燥収縮が終了するまで、配合N-SR以外は該円盤を20℃相対湿度60±5%の環境下で56日間乾燥した後、また、配合N-SRは該円盤を20℃相対湿度60±5%の環境下で91日間乾燥した後、該円盤の全面をアルミ製テープで被覆して、長さ変化測定用の供試体を作製した。
【0025】
【表1】
【0026】
3.長さ変化測定装置Eを用いた供試体の長さ変化の測定
前記供試体を20℃で1時間静置した後、該供試体の周囲の側面が、図2に示す長さ変化測定装置Eの位置決め治具3と接触するように、前記供試体1を台座2に載置した状態で、レーザー変位計4を用いて、レーザー変位計と供試体の周囲の側面の間の距離(基長)を測定した。次に、該供試体を恒温槽内に静置した後、恒温槽内を30℃→50℃→70℃→50℃→30℃の順にそれぞれ2時間保持して、前記と同様に、供試体の長さ変化を測定し、長さ変化率を求めた。なお、本実施例では、1個の供試体に対して3箇所(図2の点a、点b、および点c)でレーザー変位計と供試体の周囲の側面の間の距離を測定して、この平均値を当該供試体の長さ変化として算出し、さらに、この3個の供試体の長さ変化(平均値)を平均して、実施例1~7の線膨張係数(単位温度あたりの供試体の長さ変化率)を求めた。
また、比較のため、従来法を用いて、乾燥収縮が収束した供試体(10cm×10cm×40cm)をアルミ製テープで封緘して恒温槽に入れ、図1(A)に掲載の温度履歴を与えて、供試体中の埋込型ひずみ計により供試体の長さ変化を測定し、単位温度変化あたりの供試体の長さ変化を算出して、比較例1~7の線膨張係数を求めた。
これらの結果を表2および図9~12に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2に示すように、コンクリートの線膨張係数は、本発明の熱膨張係数の測定方法と従来法とでは、誤差が3.9%以下と極めて小さく、ほぼ同じ値が得られる。また、長さ変化率の測定時間は、従来法では、図1(A)に示すように7日間要するが、本発明では、18時間(=30℃→50℃→70℃→50℃→30℃の順にそれぞれ2時間保持と、恒温槽の昇温および降温に8時間(昇温および降温速度10℃/hr))と極めて短時間で済む。
また、従来法では、測定に7日間も要するため、測定開始時から終了時までに、コンクリートの水和が進行してコンクリートの物性が変化し、図1(B)に示すように、昇温過程と降温過程では異なる直線が得られ、熱膨張係数(直線の傾き)に差が生じる。これに対し、本発明では測定時間が12時間と短いため、熱膨張係数の差は小さい。
【符号の説明】
【0029】
1 供試体
2 台座
3 位置決め治具
4 レーザー変位計(ただし、黒色の矢印はレーザーを示す。)
5 支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12